(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062401
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】移動式覆土敷設システムと移動式覆土敷設方法
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20230426BHJP
E04H 5/02 20060101ALI20230426BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B09B1/00 A
E04H5/02 Z
E04G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172354
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 光泰
(72)【発明者】
【氏名】長峰 春夫
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 邦洋
(72)【発明者】
【氏名】小野 誠
【テーマコード(参考)】
2E174
4D004
【Fターム(参考)】
2E174BA05
2E174CA06
2E174CA14
2E174CA16
2E174CA43
4D004BB03
(57)【要約】
【課題】被埋立体と覆土の低透水性に影響を与えることなく、工事費の高騰と工期の長期化をもたらさず、屋根体の姿勢を保持しながら移動させることのできる、移動式覆土敷設システムと、この移動式覆土敷設システムを用いた移動式覆土敷設方法を提供する。
【解決手段】埋立て地10に載置されている、複数の被埋立体20の上を移動しながら覆土を敷設する、移動式覆土敷設システム100であり、屋根体40と、屋根体40を支持し、下端に車輪53を備え、上下に伸縮自在な複数の支柱50とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋立て地に載置されている、複数の被埋立体の上を移動しながら覆土を敷設する、移動式覆土敷設システムであって、
屋根体と、
前記屋根体を支持し、下端に車輪を備え、上下に伸縮自在な複数の支柱と、を有していることを特徴とする、移動式覆土敷設システム。
【請求項2】
前記支柱は、軸体と伸縮手段とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項3】
前記移動式覆土敷設システムは、移動方向の前方に設置される第1ウインチをさらに有し、
前記第1ウインチから延びるワイヤが、前記支柱及び/又は屋根体に固定され、該第1ウインチの牽引により前記被埋立体の上面を移動自在であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項4】
前記移動式覆土敷設システムは、移動方向の後方に設置される第2ウインチをさらに有し、
前記第2ウインチから延びるワイヤが、前記支柱及び/又は屋根体に固定され、該第2ウインチの牽引により、前記移動式覆土敷設システムの移動に対して制動力を付与することを特徴とする、請求項3に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項5】
前記車輪がアクチュエータにより駆動され、該アクチュエータの駆動停止により停止されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項6】
複数の前記被埋立体は、前記移動式覆土敷設システムの移動方向と、該移動方向に直交する移動直交方向にそれぞれ、間隔を置いて載置されており、
前記屋根体の端部には、ヒンジ機構を介して鉛直姿勢と水平姿勢に姿勢変更自在な端部屋根体が設けられており、
前記端部屋根体の平面視形状は櫛歯状であり、前記端部屋根体が鉛直姿勢とされ、複数の前記被埋立体の上方と前記間隔を該端部屋根体が閉塞した状態で前記移動式覆土敷設システムが移動することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項7】
前記被埋立体は、直方体もしくは立方体を呈して廃棄物を収容するピットであり、該ピットの内部に前記移動式覆土敷設システムの移動方向に延設する隔壁を備えており、
前記車輪が前記隔壁の上に位置合わせされ、該隔壁に沿って移動することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項8】
前記屋根体は、
前記移動式覆土敷設システムの移動方向に直交する方向に延びる、トラスフレームと、
前記トラスフレームに設置されている、屋根面材とを有し、
前記トラスフレームの端部には、前記埋立て地にある移動路を移動する車輪が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項9】
前記屋根体は、上方に延設する塔体をさらに有し、
前記塔体から延びる複数のワイヤが前記トラスフレームの複数箇所に張設されていることを特徴とする、請求項8に記載の移動式覆土敷設システム。
【請求項10】
埋立て地に載置されている複数の被埋立体の上を、移動式覆土敷設システムを移動させながら覆土を敷設する、移動式覆土敷設方法であって、
前記移動式覆土敷設システムは、屋根体と、該屋根体を支持し、下端に車輪を備え、上下に伸縮自在な複数の支柱とを有しており、
覆土領域の上方に前記屋根体を位置合わせして覆土を敷設し、隣接する覆土領域に前記屋根体を移動させて覆土を敷設し、この施工を繰り返すことを特徴とする、移動式覆土敷設方法。
【請求項11】
前記移動式覆土敷設システムの移動方向の段差には、複数の前記支柱をそれぞれ上下に伸縮させながら前記屋根体の水平姿勢を保持することを特徴とする、請求項10に記載の移動式覆土敷設方法。
【請求項12】
複数の前記被埋立体は、前記移動式覆土敷設システムの移動方向と、該移動方向に直交する移動直交方向にそれぞれ、間隔を置いて載置されており、
前記屋根体の端部には、ヒンジ機構を介して鉛直姿勢と水平姿勢に姿勢変更自在な端部屋根体が設けられており、
前記端部屋根体の平面視形状は櫛歯状であり、前記端部屋根体を鉛直姿勢として、複数の前記被埋立体の上方と前記間隔を該端部屋根体にて閉塞した状態で前記移動式覆土敷設システムを移動させ、
移動式覆土敷設システムの移動方向の端にある覆土領域では、前記屋根体を鉛直姿勢から水平姿勢に姿勢変更して、覆土を敷設することを特徴とする、請求項10又は11に記載の移動式覆土敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式覆土敷設システムと移動式覆土敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低レベル放射性廃棄物処分場では、岩盤層を掘削して造成された埋立て地の上に、廃棄物が収容された複数のコンクリート製の被埋立体(コンクリートピット)が載置され、被埋立体の上に覆土が敷設されることにより廃棄物が浅地中処分(ピット処分)される。廃棄物には、液体廃棄物を濃縮した廃液等をセメントなどでドラム缶に固形化した廃棄体や、固体状で放射性レベルの比較的低い廃棄体等が含まれる。
覆土材には、ベントナイトを混合したベントナイト混合土と、一般土があり、被埋立体の周囲にベントナイト混合土が敷設された後、ベントナイト混合土の上方に一般土が敷設されることにより覆土の敷設が完了する。このように、コンクリートピット等の人工構造物である人工バリアと、岩盤や覆土といった天然バリアとにより、生活環境への放射性物質の移行が抑制される。
ところで、覆土施工中の降雨や積雪等がもたらす水分により、ベントナイト混合土中のベントナイトが吸水・膨潤し、その品質の低下や施工性の低下が懸念される。ここで、品質の低下とは、ベントナイトが水分を吸水することにより、転圧・締め固め時に設定しているベントナイト混合土の含水比が高まり、所定の転圧方法によって要求される乾燥密度や有効粘土密度、有効モンモリロナイト湿潤密度等が達成できないことなどを意味する。
一方、施工性の低下とは、撒き出し・敷き均し作業の際に、ベントナイトが水分を吸水・膨潤することにより、ベントナイト混合土の表面が泥濘化し、施工機械の走行が困難(トラフィカビリティの低下)になることや、作業従事者の転倒の危険により、作業を中止する必要が生じること、泥濘化したベントナイト混合土を剥ぎ取る必要が生じること、剥ぎ取りしたベントナイト混合土を廃棄する必要が生じること、剥ぎ取りした後の施工面の乾燥を待ち、整地する必要が生じることなどを意味する。
【0003】
上記課題を解消するべく、覆土の敷設に際して、埋立て地に載置されている複数の被埋立体の上方に、例えば鉄骨ラーメン構造の大型屋根を設置する方法が考えられる。このような鉄骨ラーメン構造の大型屋根の設置において、大型屋根を支持する支柱を固定する方法として、コンクリート基礎にアンカー固定する方法が挙げられる。具体的には、コンクリートピットの天井スラブに後施工アンカーを施工し、後施工アンカーにて支柱を固定することになる。このように、廃棄物を収納する被埋立体の天井スラブを削孔することから、被埋立体(躯体)に影響を及ぼすといった新たな課題が生じ得る。
そこで、被埋立体の天井スラブに後施工アンカーを施工することに代えて、併設される複数の被埋立体の間の間隔(隙間)にある埋立て地の床面にコンクリート基礎を設置し、アンカーにより支柱を固定する方法が考えられる。この場合、被埋立体の群間にコンクリート基礎が残存することになり、覆土に求められる低透水性に影響を与え得るといった別途の課題や、支柱部に固有の覆土が必要になるといった課題が生じ得る。
【0004】
また、一般的な大型屋根としては、大スパンのトラス構造屋根等が適用されることになるが、使用する鋼材量が多くなり、剛強で大規模な支持基礎を必要とし、基礎工事と屋根の建方工事がともに大掛かりなものとなり、工事費が高騰することもまた大きな課題となり得る。そこで、トラス構造に代わり、テント膜を適用した屋根を順次移設していく方法も考えられるが、この場合は、屋根の移設に大型のクレーンが必要となり、屋根の移設費用が高価になることに加えて、屋根の移設作業に時間がかかり、覆土敷設施工の工期が長期化するといった課題が生じ得る。
【0005】
以上のことから、埋立て地に載置されている複数の被埋立体の上に、降雨や積雪等から覆土を防護しながら覆土を敷設する施工において、被埋立体と覆土の低透水性に影響を与えることなく、工事費の高騰と工期の長期化をもたらさない、覆土敷設システムと覆土敷設方法が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1,2には、屋根を移動させながら廃棄物の埋立てを行う方法が提案されている。特許文献1に記載の廃棄物の埋立て処理方法は、埋立て予定地を区画して複数の単位埋立てピットの区画を形成し、単位埋立てピットの上部を覆って単位埋立てピットを閉塞しながら移動する屋根体を形成し、屋根体の下の単位埋立てピットに廃棄物を投棄するとともに、単位埋立てピットに隣接する別途の単位埋立てピットを形成し、屋根体に覆われた単位埋立てピット内に投棄した廃棄物上に覆土を設けて埋立て、廃棄物と覆土による埋立てを順次繰り返しながら単位埋立てピットを連続した廃棄物の埋立て地に形成する埋立て処理方法である。
一方、特許文献2に記載の廃棄物の埋立方法は、廃棄物処分場の上方を部分的に覆う移動屋根を架設し、移動屋根で覆った部分の下方に廃棄物を投入して埋立て、埋立てた廃棄物の上に最終覆土を行った後に移動屋根を移動する工程を、順次繰り返す埋立方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-257528号公報
【特許文献2】特開2002-113436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載の廃棄物の埋立方法はいずれも、屋根を移動させながら廃棄物の埋立を行う方法であり、この移動屋根を上記廃棄物の浅地中処分に適用することにより、被埋立体と覆土の低透水性に影響を与えることなく、工事費の高騰と工期の長期化をもたらさない覆土の敷設が可能になる。しかしながら、併設される複数の被埋立体の上を移動しながら覆土を敷設するに当たり、屋根の姿勢を保持しながら屋根を移動させる具体的な手段の開示がないことから、このような施工条件での覆土敷設にそのまま適用することはできない。
【0009】
本発明は、埋立て地に載置される複数の被埋立体の上を移動しながら覆土を敷設するシステムと方法に関し、被埋立体と覆土の低透水性に影響を与えることなく、工事費の高騰と工期の長期化をもたらさず、屋根体の姿勢を保持しながら移動させることのできる、移動式覆土敷設システムと、この移動式覆土敷設システムを用いた移動式覆土敷設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による移動式覆土敷設システムの一態様は、
埋立て地に載置されている、複数の被埋立体の上を移動しながら覆土を敷設する、移動式覆土敷設システムであって、
屋根体と、
前記屋根体を支持し、下端に車輪を備え、上下に伸縮自在な複数の支柱と、を有していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、屋根体が、下端に車輪を備えて上下に伸縮自在な複数の支柱によって支持されていることにより、例えば被埋立体から隣接する別途の被埋立体へ支柱が跨ぐ際は支柱を上方へ縮め、その際に他の複数の支柱が屋根体を支持することができ、また、併設される複数の被埋立体の上面の高さレベルが相違する場合は、それぞれの上面の高さレベルに応じて支柱の長さを変化させることができるため、屋根体の姿勢を例えば水平姿勢に保持しながら屋根体を移動させることが可能になる。
また、屋根体を移動させながら屋根体の下方で覆土の敷設を行うことから、アンカーによる支柱の固定が不要になり、被埋立体と覆土の低透水性に影響を与える恐れは生じない。さらに、埋立て地を包囲する大スパンのトラス構造屋根を適用せず、大型のクレーンを適用してテント膜屋根を順次移設していくシステムでないことから、工事費の高騰と工期の長期化をもたらす恐れもない。
【0012】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様において、
前記支柱は、軸体と伸縮手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、支柱が軸体と伸縮手段を備えていることにより、支柱の一定の長さと剛性を軸体が備えながら、支柱の伸縮を伸縮手段にて実行することができる。ここで、伸縮手段には、ジャッキやウインチ等が適用できる。
【0014】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様は、
移動方向の前方に設置される第1ウインチをさらに有し、
前記第1ウインチから延びるワイヤが、前記支柱及び/又は屋根体に固定され、該第1ウインチの牽引により前記被埋立体の上面を移動自在であることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、移動方向の前方にある被埋立体等に設置される第1ウインチの牽引によって、被埋立体の上面を移動自在であることにより、屋根体を所望方向へスムーズに移動させることができる。そして、この屋根体の移動の過程で、被埋立体から他の被埋立体へ移動する(跨ぐ)際には、支柱を適宜上方に縮める操作が行われてよい。
【0016】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様は、
移動方向の後方に設置される第2ウインチをさらに有し、
前記第2ウインチから延びるワイヤが、前記支柱及び/又は屋根体に固定され、該第2ウインチの牽引により、前記移動式覆土敷設システムの移動に対して制動力を付与することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、移動方向の後方にある被埋立体等に設置される第2ウインチの牽引によって、移動式覆土敷設システムの移動に対して制動力を付与することにより、移動する移動式覆土敷設システムを所望位置に停止させることができる。
【0018】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様は、
前記車輪がアクチュエータにより駆動され、該アクチュエータの駆動停止により停止されることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、車輪がアクチュエータにより駆動され、かつアクチュエータの駆動停止により停止されることから、自走式の移動式覆土敷設システムを実現でき、システムの移動と停止を共通のアクチュエータにより実行することができる。ここで、アクチュエータには、サーボモータやステッピングモータ、油圧モータ、空気圧モータ等のモータの他、油圧シリンダや空気圧シリンダ等のシリンダとリンク機構の組み合わせ構造体などが含まれる。
【0020】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様において、
複数の前記被埋立体は、前記移動式覆土敷設システムの移動方向と、該移動方向に直交する移動直交方向にそれぞれ、間隔を置いて載置されており、
前記屋根体の端部には、ヒンジ機構を介して鉛直姿勢と水平姿勢に姿勢変更自在な端部屋根体が設けられており、
前記端部屋根体の平面視形状は櫛歯状であり、前記端部屋根体が鉛直姿勢とされ、複数の前記被埋立体の上方と前記間隔を該端部屋根体が閉塞した状態で前記移動式覆土敷設システムが移動することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、屋根体の端部において、ヒンジ機構を介して鉛直姿勢と水平姿勢に姿勢変更自在な平面視形状が櫛歯状の端部屋根体が設けられ、端部屋根体が鉛直姿勢とされ、複数の被埋立体の上方と被埋立体の間の間隔を端部屋根体が閉塞した状態で移動式覆土敷設システムが移動することにより、移動方向前方からの雨水や雪の浸入(吹き込み)を抑制することができる。
ここで、平面視形状が櫛歯状の端部屋根体は、全体が櫛歯状であってもよいし、端部屋根体が大きく二分割され、鉛直姿勢の際に複数の被埋立体の上方に位置する上方分割体と、上方分割体の下端に取り付けられて被埋立体の間の複数の間隔に入り込む複数の下方分割体とのユニットであってもよい。
また、端部屋根体の姿勢変更は、その回動軸を回動させるモータ等のアクチュエータや、ウインチによる牽引等により実行できる。
【0022】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様において、
前記被埋立体は、直方体もしくは立方体を呈して廃棄物を収容するピットであり、該ピットの内部に前記移動式覆土敷設システムの移動方向に延設する隔壁を備えており、
前記車輪が前記隔壁の上に位置合わせされ、該隔壁に沿って移動することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、被埋立体が廃棄物を収容して、内部に移動式覆土敷設システムの移動方向に延設する隔壁を備えたピットであり、車輪が隔壁の上に位置合わせされて隔壁に沿って移動することにより、ピットの上を移動式覆土敷設システムが移動する際の荷重が隔壁に支持されることで、移動式覆土敷設システムの重量によるピットの破損が防止される。ここで、ピットは、例えば鉄筋コンクリート製のピットであり、移動式覆土敷設システムの移動直交方向に複数の隔壁(隔壁は移動方向に延設している)が設けられている場合、移動式覆土敷設システムは全ての隔壁もしくは一部の隔壁に対応する位置に支柱及び車輪を備えた構成となる。
【0024】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様において、
前記屋根体は、
前記移動式覆土敷設システムの移動方向に直交する方向に延びる、トラスフレームと、
前記トラスフレームに設置されている、屋根面材とを有し、
前記トラスフレームの端部には、前記埋立て地にある移動路を移動する車輪が設けられていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、屋根体が、移動式覆土敷設システムの移動方向に直交する方向に延びるトラスフレームを基本骨格とすることにより、この一方向にのみ長いトラスフレームとなることから、使用する鋼材量を可及的に低減しながら、剛性のある屋根体を形成できる。また、トラスフレームの端部において、埋立て地にある移動路を移動する車輪が設けられていることにより、支柱の下部にある車輪の他に、屋根体の端部にある車輪も利用することができ、移動式覆土敷設システムの安定的な移動を実現できる。ここで、屋根面材には、鉄板等の板材やシート材等が適用できる。
【0026】
また、本発明による移動式覆土敷設システムの他の態様において、
前記屋根体は、上方に延設する塔体をさらに有し、
前記塔体から延びる複数のワイヤが前記トラスフレームの複数箇所に張設されていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、屋根体の備える塔体から延びる複数のワイヤがトラスフレームの複数箇所に張設されていることにより、複数の支柱のみにより屋根体が支持される形態に比べて、より一層安定的な屋根体の支持構造を形成することができる。
【0028】
また、本発明による移動式覆土敷設方法の一態様は、
埋立て地に載置されている複数の被埋立体の上を、移動式覆土敷設システムを移動させながら覆土を敷設する、移動式覆土敷設方法であって、
前記移動式覆土敷設システムは、屋根体と、該屋根体を支持し、下端に車輪を備え、上下に伸縮自在な複数の支柱とを有しており、
覆土領域の上方に前記屋根体を位置合わせして覆土を敷設し、隣接する覆土領域に前記屋根体を移動させて覆土を敷設し、この施工を繰り返すことを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、本発明の移動式覆土敷設システムを利用して、覆土領域の上方に屋根体を位置合わせして覆土を敷設し、隣接する覆土領域に屋根体を移動させて覆土を敷設し、この施工を繰り返すことにより、姿勢を保持された屋根体によって降雨や積雪等から覆土を防護しながら覆土を敷設し、この屋根体の移動と覆土を埋立て地の全域に亘って順次行うことで、埋立て地における高品質で効率的な覆土施工を実現することができる。
ここで、覆土材が上記するベントナイト混合土と一般土を含む場合、本態様の施工方法において、埋立て地の全域にベントナイト混合土のみを順次施工する方法(埋立て地の全域への一般土の覆土は、別途行う方法)であってもよいし、覆土領域に対してベントナイト混合土と一般土の覆土を一セットとして行い、移動式覆土敷設システムを移動させながら埋立て地の全域に複数セットの覆土を実施する方法であってもよい。
【0030】
また、本発明による移動式覆土敷設方法の他の態様において、
前記移動式覆土敷設システムの移動方向の段差には、複数の前記支柱をそれぞれ上下に伸縮させながら前記屋根体の水平姿勢を保持することを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、移動方向に段差がある場合でも、複数の支柱をそれぞれ上下に伸縮させながら屋根体の水平姿勢を保持できることから、屋根体の安定的な姿勢保持と移動を実現できる。ここで、「段差」には、支柱の車輪が走行する複数の被埋立体の上面の高さレベルの相違や、既に覆土された領域と覆土されていない被埋立体の上面の高さレベルの相違の他に、被埋立体の間の間隔を支柱が跨ぐこと等が含まれる。
【0032】
また、本発明による移動式覆土敷設方法の他の態様において、
複数の前記被埋立体は、前記移動式覆土敷設システムの移動方向と、該移動方向に直交する移動直交方向にそれぞれ、間隔を置いて載置されており、
前記屋根体の端部には、ヒンジ機構を介して鉛直姿勢と水平姿勢に姿勢変更自在な端部屋根体が設けられており、
前記端部屋根体の平面視形状は櫛歯状であり、前記端部屋根体を鉛直姿勢として、複数の前記被埋立体の上方と前記間隔を該端部屋根体にて閉塞した状態で前記移動式覆土敷設システムを移動させ、
移動式覆土敷設システムの移動方向の端にある覆土領域では、前記屋根体を鉛直姿勢から水平姿勢に姿勢変更して、覆土を敷設することを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、複数の被埋立体の上方と被埋立体の間の間隔を、平面視形状が櫛歯状の端部屋根体が閉塞した状態で移動式覆土敷設システムが移動することにより、移動方向前方からの雨水や雪の吹き込みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の移動式覆土敷設システムと移動式覆土敷設方法によれば、埋立て地に載置される複数の被埋立体の上を移動しながら覆土を敷設するシステムと方法に関し、被埋立体と覆土の低透水性に影響を与えることなく、工事費の高騰と工期の長期化をもたらさず、屋根体の姿勢を保持しながら移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施形態に係る移動式覆土敷設システムが適用される埋立て地において、複数の被埋立体が載置されている状態を示す平面図である。
【
図2】
図1のII方向矢視図であって、実施形態に係る移動式覆土敷設システムの側面図である。
【
図4】
図1のIV-IV矢視図であって、実施形態に係る移動式覆土敷設システムの移動方向から見た正面図である。
【
図5】実施形態に係る移動式覆土敷設システムの移動直交方向における雨水処理設備を説明する図である。
【
図6】実施形態に係る移動式覆土敷設システムの移動方向における雨水処理設備を説明する図である。
【
図7】(a)、(b)はいずれも、支柱の備える車輪の例を示す正面図と側面図である。
【
図8】
図2に続いて、実施形態に係る移動式覆土敷設システムが次の覆土領域に移動し、覆土している状況を説明する側面図である。
【
図9】実施形態に係る移動式覆土敷設方法の一例の工程図である。
【
図10】
図9に続いて、実施形態に係る移動式覆土敷設方法の一例の工程図である。
【
図11】
図10に続いて、実施形態に係る移動式覆土敷設方法の一例の工程図である。
【
図12】
図11に続いて、実施形態に係る移動式覆土敷設方法の一例の工程図である。
【
図13】
図12に続いて、実施形態に係る移動式覆土敷設方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施形態に係る移動式覆土敷設システムと移動式覆土敷設方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0037】
[実施形態に係る移動式覆土敷設システム]
はじめに、
図1乃至
図8を参照して、実施形態に係る移動式覆土敷設システムの一例を、覆土敷設対象の埋立て地とともに説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る移動式覆土敷設システムが適用される埋立て地において、複数の被埋立体が載置されている状態を示す平面図である。また、
図2は、
図1のII方向矢視図であって、実施形態に係る移動式覆土敷設システムの側面図であり、
図3は、
図1のIII-III矢視図であり、
図4は、
図1のIV-IV矢視図であって、実施形態に係る移動式覆土敷設システムの移動方向から見た正面図である。さらに、
図8は、
図2に続いて、実施形態に係る移動式覆土敷設システムが次の覆土領域に移動し、覆土している状況を説明する側面図である。
【0038】
図1に示す埋立て地10は、低レベル放射性廃棄物処分場において、岩盤Gを所定深度まで掘削することにより造成され、平面視略矩形の床付け面11とその周囲の法面12とを有する。
【0039】
直方体状でコンクリート製のピット20(被埋立体の一例)の内部には、
図1、
図3及び
図4に示すように、東西方向と南北方向に延びる複数の隔壁22が設けられており、ピット20の内部に低レベル放射性廃棄物が収容されている。
【0040】
図1に示すように、各ピット20の形状及び寸法と内部構成はいずれも同一であり、東西方向に同一幅の間隔25(隙間)を介して5基のピット20が床付け面11に載置され、5基のピット20で一つの群を形成し、複数群(図示例は8つの群)の各ピット20が隙間25を介して南北方向に載置されている。
【0041】
従って、各群を構成するピット20は南北方向に相互に対応しており、各ピット20の備える南北方向に延びる複数の隔壁22は、いずれも同一直線上に配設されている。
【0042】
ここで、図示例は、低レベル放射性廃棄物処分場におけるコンクリート製のピットを覆土するシステムであるが、廃棄物は低レベル放射性廃棄物以外の産業廃棄物や一般廃棄物等であってもよく、従って、産業廃棄物等を埋立対象とする廃棄物処分場が覆土対象であってよい。
【0043】
図1に示すように、平面視矩形の埋立て地10の東西方向の幅t1は、例えば150m乃至200m程度(例えば180m程度)であり、南北方向の幅t3は、例えば250m乃至300m程度(例えば290m程度)である。
【0044】
上記平面規模の埋立て地10に対して、移動式覆土敷設システム100は、埋立て地10と同程度の東西方向の幅t1を備え、南北方向の幅t2は例えば50m程度と埋立て地10の幅t3よりも格段に狭い幅を備えている。この構成により、例えば、埋立て地10と同程度の平面積のシステムを構築する際の課題、すなわち、大スパンのトラス構造屋根等が必要となり、そのために使用する鋼材量が多くなり、剛強で大規模な支持基礎が必要となり、基礎工事と屋根の建方工事がともに大掛かりなものとなることに起因して、工事費が高騰するといった課題は生じない。
【0045】
移動式覆土敷設システム100がカバーする範囲が覆土領域となり、この覆土領域における覆土が終了した際に、移動式覆土敷設システム100が南側へX1方向に移動して停止し、隣の覆土領域における覆土を実施する。
図1に示す例では、はじめに、北側の法面12と1群の各ピット20の側方の隙間25への覆土を実施する。次に、移動式覆土敷設システム100を2群に対応する位置に移動させ、1群のピット20の上方と2群のピット20の間の隙間25への覆土を実施し、以後、移動式覆土敷設システム100を3群乃至8群に対応する位置に移動させて順次覆土を実施することにより、埋立て地10に載置されている全てのピット20の上方及び側方への覆土の敷設を行う。
【0046】
図2に示すように、移動式覆土敷設システム100は、屋根体40と、屋根体40を支持する複数の支柱50を有する。
【0047】
屋根体40は、
図1に示す平面規模で水平方向に広がるトラスフレーム41と、トラスフレーム41の上方を包囲する屋根面材42とを有する。トラスフレーム41は、多数の形鋼材や角パイプ等が相互に溶接接合もしくはボルト接合されることにより形成される。一方、屋根面材42は、鋼板やシート材等により形成される。
【0048】
図示例の屋根体40は、移動方向の南側の端部にヒンジ機構47を備え、ヒンジ機構47を介して、
図2に示す鉛直姿勢と水平姿勢(
図12参照)に姿勢変更自在な端部屋根体44を備えている。
【0049】
端部屋根体44も、トラスフレーム45と屋根面材46とを有し、
図2に示す鉛直姿勢では、屋根面材46が移動方向である南側からの雨や雪の吹き込みを抑制するようになっている。
【0050】
屋根体40の北側には、屋根面材42の北側端部が屈曲して鉛直姿勢の壁面43を形成し、北側からの雨や雪の吹き込みを抑制するようになっている。尚、
図3等に示すように、移動式覆土敷設システム100は埋立て地10の法面12の上方を移動し、屋根体40の東西方向の端部は、埋立て地10の外周の平地と同程度の高さレベルに設定されていることから、東西方向の隙間は殆どなく、東西方向からの雨や雪の吹き込みの恐れはない。
【0051】
屋根体40は、上方に延設する塔体48をさらに有し、塔体48から延びる複数のワイヤ49が、トラスフレーム41と屋根面材42の複数箇所に張設されている。この塔体48からのトラスフレーム41及び屋根面材42の張設により、屋根体40を下方の支柱50のみならず上方の塔体48から支持することができる。
【0052】
また、屋根体40には、
図3及び
図4に示すように、東西方向に延びる除雪用スクレーパ42aが南北方向に移動自在に取り付けられている。屋根体40は、例えば移動方向反対側となる北側に数%の勾配(例えば3%勾配)を有しており、雨水が北側へ排水され、除雪用スクレーパ42aにより屋根上の積雪が北側へ除雪されるようになっている。
【0053】
支柱50は、軸体51と、油圧ジャッキ52(伸縮手段の一例)を有し、下端に車輪53を有している。油圧ジャッキ52を伸縮させることにより、支柱50は下方へY1方向に延び、上方へY2方向に縮むようになっている。ここで、軸体51は、剛性を備え、かつ多様な長さに設定できるH形鋼等の形鋼材や、複数の形鋼材によるトラス架構体、鋼管や角形鋼管等により形成される。また、伸縮手段としては、図示例の油圧ジャッキ52の他にも、ウインチやチェーンブロック等が適用されてもよい。
【0054】
例えば、
図2に示すように、複数の支柱50は各群(
図1では、1群と2群)のピット20の上面を南側へ移動するが、既に覆土が完了した位置や、各群のピット20の上面のレベルは相互に相違している。さらに、各群のピット20間には隙間25があることから、支柱50が隙間25を跨いでピット20間を移動する必要がある。
【0055】
支柱50が、油圧ジャッキ52の作動によって上下に伸縮自在であることにより、各支柱50が相互に高さレベルの異なる場所に立設する場合でも、各支柱50の長さを調整することで屋根体40の水平姿勢を保持することが可能になる。
【0056】
さらに、移動式覆土敷設システム100が、随時高さレベルが異なる場所を移動する際に、各支柱50の長さを随時調整することにより、屋根体40の水平姿勢を保持しながらの移動を実現できる。この移動に際して、各群のピット20間の隙間25を支柱50が跨ぐ際には、隙間25の手前で支柱50を上方へY2方向に縮める等することにより、支柱50が隙間25を跨ぐ際に、移動前方のピット20の壁面に支柱50が干渉することを防止できる。
【0057】
移動式覆土敷設システム100は、移動方向の前方に設置される第1ウインチ60をさらに有する。例えば、東西方向に配設されている5基のピット20に対してそれぞれ仮固定される、5つの第1ウインチ60を備えている。
【0058】
図1に示す例では、移動方向の前方にある2群のピット20の上面に第1ウインチ60が仮固定され、第1ウインチ60から延びるワイヤ61が各支柱50に固定されており、第1ウインチ60の移動方向であるY3方向への牽引により、移動式覆土敷設システム100が各ピット20の上面を移動する。移動式覆土敷設システム100の移動に応じて、第1ウインチ60は移動方向にある別の群のピット20の上面に盛替えられる。
【0059】
ここで、図示を省略するが、移動式覆土敷設システム100は、移動方向の後方に第2ウインチをさらに有していてもよい。第2ウインチは、既に施工済みの後方の覆土等に仮固定され、第2ウインチから延びるワイヤが支柱50に固定される。第2ウインチの牽引により、移動式覆土敷設システム100の移動に対して制動力を付与することができ、移動する移動式覆土敷設システム100を所望位置に停止することが可能になる。
【0060】
図示例の移動式覆土敷設システム100は、第1ウインチ60を駆動手段としており、不図示の第2ウインチを制動手段としているが、例えば、車輪が不図示のモータ等のアクチュエータにより駆動され、アクチュエータの駆動停止により車輪が停止される形態が適用されてもよい。
【0061】
図3及び
図4に示すように、各群の複数(図示例は5基)のピット20は、移動方向である南方向に直交する移動直交方向である東西方向にそれぞれ、隙間25を置いて埋立て地10の床付け面11に載置されている。そして、東西方向に延びる屋根体40を支持する複数の支柱50は、各群の各ピット20の備える南北方向に延びる隔壁22の上に位置合わせされており、隔壁22に沿って車輪53が移動するようになっている。
【0062】
このように、車輪53が隔壁22の上に位置合わせされて隔壁22に沿って移動することにより、ピット20の上を移動式覆土敷設システム100が移動する際の荷重が隔壁22に支持されることで、移動式覆土敷設システム100の重量によるピット20の破損が防止される。
【0063】
また、上記するように、各群を構成するピット20が南北方向に相互に対応するように配設され、各ピット20の備える南北方向に延びる複数の隔壁22がいずれも同一直線上に配設されていることにより、南方向へ移動する各支柱50の車輪53は、常に各群のピット20の隔壁22の上に位置合わせされた状態で移動することができる。
【0064】
図3及び
図5に示すように、東西方向の各法面12には、南北方向に延びる移動路13が造成されており、屋根体40の東西方向の端部近傍を支持する支柱50の車輪53が、対応する移動路13を移動するようになっている。すなわち、屋根体40の東西方向に張り出す端部領域が、移動路13を移動する支柱50により支持されていることにより、屋根体40の全域が複数の支柱50にて安定的に支持されながら移動することが可能になる。
【0065】
また、屋根体40の東西方向の端部は、下方へ湾曲した湾曲面を有しており、東西方向の法面12の側方の平地には排水溝15Aが設けられており、屋根体40の湾曲面を介して流れ出す雨水や雪水等が排水溝15AへY4方向に排水されるようになっている。
【0066】
法面12の最上段の平地には排水溝15Aが設けられ、法面12における覆土の天端に対応する位置には別途の排水溝15Bが設けられ、各排水溝15A、15Bを繋ぐように法面12の表面には法面遮水シート16Aが敷設される。
【0067】
さらに、覆土の天端領域の端部には別途の排水溝15Cが設けられ、各排水溝15B、15Cを繋ぐように覆土の表面には覆土面遮水シート16Bが敷設される。ここで、覆土は天端領域と摺り合わせ領域を備えており、摺り合わせ領域を介してピット20の上面に摺り付いている。覆土の天端領域には、排水溝15Cへ向かう排水勾配が設けられており、覆土の天端領域に流れ込んだ雨水等は覆土面遮水シート16Bの上面を排水溝15Cへ向かってY5方向に排水され、ピット20の上面へ流れ込まないようになっている。
【0068】
また、
図6に示すように、埋立て地10の北側の法面12においても、
図5と同様に排水溝15A,15B,15Cが設けられ、排水溝15A,15Bを繋ぐ法面遮水シート16Aと、排水溝15B,15Cを繋ぐ覆土面遮水シート16Bが敷設される。
【0069】
屋根体40を北側へ流れ出た雨水等は、排水溝15AへY6方向に排水される。また、覆土の天端領域に流れ込んだ雨水等は覆土面遮水シート16Bの上面を排水溝15Cへ向かってY7方向に排水され、ピット20の上面へ流れ込まないようになっている。
【0070】
図8には、車輪の例を示しており、(a)、(b)はいずれも、左側に正面図を示し、右側に側面図を示している。
【0071】
図8(a)に示す車輪53Aは、移動直行方向に二つの車輪が併設されている形態であり、ピット20の上面に設置される溝形鋼等からなるレール28の上を二つの車輪53Aが走行することにより、重量のある屋根体40を支持する支柱50の安定的な走行を実現できる。また、レール28の左右の縦片により、車輪53Aの逸脱を防止できる。
【0072】
一方、
図8(b)に示す車輪53Bは、移動方向に二つの車輪が併設されている形態であり、ピット20の上面に設置される溝形鋼等からなるレール28の上を二つの車輪53Bが走行することにより、重量のある屋根体40を支持する支柱50の安定的な走行を実現できる。この形態でも、レール28の左右の縦片により、車輪53Bの逸脱を防止できる。
【0073】
図4に戻り、屋根体40を形成する端部屋根体44は、東西方向に配設されている各ピット20の上面よりも上方の空間を閉塞する上方分割体44Aと、各ピット20の間の隙間25を閉塞する下方分割体44Bを有し、全体の平面視形状(正面視形状)が櫛歯状を呈している。
【0074】
ここで、上方分割体44Aと下方分割体44Bは、相互に別体に製作され、組み付けられる形態であるが、その全体が一体に形成されている形態であってもよい。ただし、図示例のように上下の分割体により形成されることで、例えば移動方向に亘ってピット20間の隙間25の高さ寸法等が異なる場合に、下方分割体44Bのみを取り替えて対応できることから好ましい。
【0075】
図4から明らかなように、移動式覆土敷設システム100の南方向への移動の際に、鉛直姿勢の端部屋根体44が複数のピット20の上方とピット20間の隙間25を閉塞することにより、移動方向前方の南側からの雨水や雪の吹き込みを抑制することができる。
【0076】
図2は、北側の法面12と、1群のピット20の間の隙間25とその後方において、側面視段状に覆土1が敷設されている状態を示している。この状態から、各支柱50を随時上下に伸縮させながら屋根体40の水平姿勢を保持し、第1ウインチ60による牽引によって移動式覆土敷設システム100が南側へ移動する。そして、
図8に示すように、2群の各ピット20の上方で移動式覆土敷設システム100が停止し、1群から2群の途中位置に亘る覆土領域を屋根体40にて上方から包囲し、当該覆土領域に対して、ブルドーザM1や振動ローラM2等の重機を稼働させることにより覆土2の敷設を行う。
【0077】
移動式覆土敷設システム100によれば、屋根体40が、下端に車輪53を備えて上下に伸縮自在な複数の支柱50によって支持されていることにより、ピット20から隣接する別のピット20へ支柱50が跨ぐ際は支柱50を上方へ縮め、その際に他の複数の支柱50が屋根体40を支持することができ、また、併設される複数のピット20の上面の高さレベルが相違する場合は、それぞれの上面の高さレベルに応じて支柱50の長さを変化させることができるため、屋根体40の姿勢を例えば図示例の水平姿勢に保持しながら屋根体40を移動させることが可能になる。
【0078】
また、屋根体40を移動させながら屋根体40の下方で覆土の敷設を行うことから、アンカーによる支柱の固定が不要となり、ピット20への影響や覆土の低透水性への影響の恐れはない。さらに、埋立て地10を包囲する大スパンのトラス構造屋根を適用せず、大型のクレーンを適用してテント膜屋根を順次移設していくシステムでないことから、工事費の高騰と工期の長期化をもたらす恐れもない。
【0079】
[実施形態に係る移動式覆土敷設方法]
次に、
図9乃至
図13を参照して、実施形態に係る移動式覆土敷設方法の一例について説明する。ここで、
図9乃至
図13は順に、実施形態に係る移動式覆土敷設方法の一例の工程図である。
【0080】
図9は、
図2に対応した図であり、埋立て地10の北側端部から南側へ向かって、移動式覆土敷設システム100が移動と停止、覆土を1セットとして、これを順次繰り返す施工方法の施工初期の状態を示している。
【0081】
図9に示すように、移動式覆土敷設システム100を1群の各ピット20の上に停止させ、屋根体40の下方を覆土領域として、北側の法面12から1群の各ピット20の東西方向の隙間25に亘り、ブルドーザM1や振動ローラM2等の重機を稼働させることによって覆土1を敷設する。
【0082】
次に、
図10に示すように、移動式覆土敷設システム100を2群の各ピット20の埋上方へX2方向に移動させる。ここで、
図10は、
図8に対応した図である。
図10に示すように、屋根体40により1群と2群の各ピット20を包囲し、屋根体40の下方を覆土領域として、1群のピット20の上面と2群の各ピット20の東西方向の隙間25に亘り覆土2を敷設する。
【0083】
以後、各群の覆土の敷設を順次行い、
図11に示すように、移動式覆土敷設システム100の屋根体40により、7群と8群の各ピット20が包囲され、7群までの覆土の敷設が完了する。
【0084】
8群の上方と南側の法面12への覆土の敷設を行うに当たり、
図12に示すように、これまで鉛直姿勢を保持してきた端部屋根体44を、ヒンジ機構47を介してX3方向に回動させて水平姿勢とし、端部屋根体44を支持する支柱50を法面12上にある移動路13に載置する。
【0085】
ここで、ヒンジ機構47を介した端部屋根体44の回動は、不図示のモータ等のアクチュエータによってヒンジ機構47を回動させてもよいし、南側の法面12の上方に不図示のウインチを設置し、ウインチから延びるワイヤを端部屋根体44に固定して上方へ牽引してもよいし、南側の平地にクレーンを設置し、クレーンにて端部屋根体44を上方へ吊り上げてもよい。
【0086】
このように、最後の8群のピット20の上方への覆土や南側の法面12への覆土に際して、
図12の状態では、移動式覆土敷設システム100をそれ以上南側へ移動できないことから、端部屋根体44を水平方向へ展開させてこれらの覆土領域を包囲するようにした後に覆土を敷設する。
【0087】
法面12への覆土を行うことにより移動式覆土敷設システム100の南側への移動を可能にした上で、
図13に示すように移動式覆土敷設システム100を南側へX4方向に移動させ、最後に8群の上方への覆土を行うことにより、埋立て地10の全域における覆土が完了する。
【0088】
以上で説明する覆土敷設方法では、埋立て地10の全域に覆土材であるベントナイト混合土を順次施工する方法として説明している。従って、その後、
図13に示す一般土の覆土レベルまで、一般土の覆土を実施することにより、低レベル放射性廃棄物処分場における廃棄物の浅地中処分が完了する。ここで、ベントナイト混合土と一般土の覆土を一セットとして、移動式覆土敷設システム100を移動させながら埋立て地10の全域に複数セットの覆土を実施する方法を適用してもよい。
【0089】
図示する移動式覆土敷設方法によれば、移動式覆土敷設システム100を利用して、覆土領域の上方に屋根体40を位置合わせして覆土を敷設し、隣接する覆土領域に屋根体40を移動させて覆土を敷設し、この施工を繰り返すことにより、姿勢を保持された屋根体40により、降雨や積雪等から覆土を防護しながら覆土を敷設し、この屋根体40の移動と覆土を埋立て地の全域に対して順次行うことで、埋立て地における高品質で効率的な覆土施工を実現することができる。
【0090】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0091】
10:埋立て地
11:床付け面
12:法面
13:移動路
15A,15B,15C:排水溝
16A:法面遮水シート
16B:覆土面遮水シート
20:被埋立体(ピット)
22:隔壁
25:間隔(隙間)
28:レール
40:屋根体
41:トラスフレーム
42:屋根面材
42a:除雪用スクレーパ
43:壁面
44:端部屋根体
44A:上方分割体
44B:下方分割体
45:トラスフレーム
46:屋根面材
47:ヒンジ機構
48:塔体
49:ワイヤ
50:支柱
51:軸体
52:伸縮手段(油圧ジャッキ)
53,53A,53B:車輪
60:第1ウインチ
61:ワイヤ
100:移動式覆土敷設システム
G:岩盤
M1:ブルドーザ
M2:振動ローラ