(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062413
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】列車情報システム
(51)【国際特許分類】
B60L 15/42 20060101AFI20230426BHJP
B61L 27/00 20220101ALI20230426BHJP
【FI】
B60L15/42
B61L27/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172374
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏夫
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CC02
5H125CD02
5H125DD05
5H161AA01
5H161JJ22
(57)【要約】
【課題】入力ミスの発生を可及的に抑制しながら運転士の負担を更に軽減することができる列車情報システムを提供する。
【解決手段】列車情報システムTSは、各車両1
1~1
4に設けられて互いに通信自在な端末装置1
1~1
4を有し、各端末装置2
1~2
4が、予め記憶されている車両運用データに応じて各車両に設けられる各種の機器11a~11nを制御する。列車の先頭車両1
1に、運転士用表示器5aと二次元シンボルリーダー6aとを備え、運転士が携行する運転士行程表7に、列車運行に関する運行情報をコード化した二次元シンボル72が表示される。運転開始時に、二次元シンボルリーダーにより二次元シンボルを読み取らせると、列車運行に関する情報と車両運用データとから初期設定指令が生成されて各端末装置に配信され、各端末装置は、初期設定指令に応じて各種の機器を制御すると共に、各機器の動作状態を運転士用表示器に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両を連結した列車に搭載されてこの列車に乗務する運転士を支援するための列車情報システムであって、
各車両に端末装置が互いに通信自在に夫々備えられ、各端末装置が、予め記憶されている車両運用データに応じて各車両に設けられる各種の機器を制御するものにおいて、
列車の先頭車両に、運転士用表示器と二次元シンボルリーダーとを備え、
運転士が携行する運転士行程表に、列車運行に関する運行情報をコード化した二次元シンボルが表示され、
列車の運転開始時に、二次元シンボルリーダーにより二次元シンボルを読み取らせると、列車運行に関する情報と車両運用データとから初期設定指令が生成されて各端末装置に配信され、各端末装置は、初期設定指令に応じて各種の機器を制御すると共に、各機器の動作状態を運転士用表示器に表示するように構成したことを特徴とする列車情報システム。
【請求項2】
前記運行情報に、この列車が次に利用されるときの列車番号が含まれることを特徴とする請求項1記載の列車情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車両を連結した列車に搭載されてこの列車に乗務する運転士を支援するための列車情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の列車情報システムは、例えば特許文献1で知られている(従来技術の欄参照)。このものは、各車両に端末装置が互いに通信自在に夫々備えられ、各端末装置が、予め記憶されている車両運用データに応じて各車両に設けられる各種の機器を制御する。ここで、「車両運用データ」とは、一般に、列車を構成する各車両の車種、車両番号及び編成、急行または特急といった列車の種別、始発駅、行先(終着駅)、停車駅、列車の各駅の運転区間や速度種別、各駅の着発時刻等の、所定期間内で終日運行される各列車の列車計画を定めたもの(所謂、列車ダイヤ)をいい、このような列車ダイヤはデータ化されてファイル形式で、運行される全ての列車(例えば、先頭車両)の端末装置に付設したストレージ(記憶部)に夫々記憶されている。なお、運用される各列車には、通常、列車ダイヤの種別内で任意に識別番号(所謂、「列車番号」)が割り当てられ、同様に、車両運用データとして記憶される。また、「各種の機器」とは、列車の運行に必要なものとして各車両に備えられるものであり、例えば、各車両に夫々設置される行先表示器、空調機や照明器具、運転士の主幹制御器の操作による力行指令やブレーキ指令に応じて作動する列車の主回路システム等をいう。
【0003】
運転士が乗車する両先頭車両には、運転士用表示器と車両運用データを記憶させたストレージとが設けられ、この運転士用表示器を介して列車情報システムと運転士(または乗務員或いは保守要員)との間でインタラクションが行われる。そして、運転士が所定の列車を運行するときは、始発駅にてこの運転士が携行する運転士行程表に基づき運転士用表示器を操作する。具体的には、運行しようとする列車の列車番号などの基本情報を手入力する。すると、車両運用データの中から、入力された列車番号が存在するか否かが検索され、この検索された列車番号に対応する車両運用データが運転士用表示器に表示される(例えば、列車番号、行先および始発駅といった各種の情報が表示される)。
【0004】
運転士は、表示された情報と運転士行程表の記載内容とが一致していると、運転士用表示器の操作によりこれを承認する。これにより、列車情報システムが、各種の機器に対して初期設定指令を自動的に配信し、当該列車が営業運転を開始できる状態になる。「初期設定指令」とは、合致した列車の車両運用データに応じて、各車両に夫々設置される行先表示器、空調機、照明器具や車内放送装置などの各種の機器に対する動作指令をいい、これに応じて各種の機器が動作する(例えば、行先表示器に終着駅の名称を表示させ、または、車内放送装置により停車駅、停車時刻などの情報を音声で出力させる)。そして、運転士は、携行する運転士行路表に記載の情報と信号システムの現示等に従って当該列車を運行し、運行中には、先頭車両の端末装置が各種の機器と通信してその情報を収集し、この収集した情報を運転士用表示器に表示するだけでなく、例えば、当該列車の地点情報に応じて車内の案内表示や車内放送が自動的に行われる。然し、このような列車情報システムでは、運転士が、運転士用表示器を操作して列車番号を手入力させているため、入力ミスが発生する虞があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、入力ミスの発生を可及的に抑制しながら運転士の負担を更に軽減することができる列車情報システムを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、複数の車両を連結した列車に搭載されてこの列車に乗務する運転士を支援するための本発明に係る列車情報システムは、各車両に端末装置が互いに通信自在に夫々備えられ、各端末装置が、予め記憶されている車両運用データに応じて各車両に設けられる各種の機器を制御し、列車の先頭車両に、運転士用表示器と二次元シンボルリーダーとを備え、運転士が携行する運転士行程表に、列車運行に関する運行情報をコード化した二次元シンボルが表示され、列車の運転開始時に、二次元シンボルリーダーにより二次元シンボルを読み取らせると、列車運行に関する情報と車両運用データとから初期設定指令が生成されて各端末装置に配信され、各端末装置は、初期設定指令に応じて各種の機器を制御すると共に、各機器の動作状態を運転士用表示器に表示するように構成したことを特徴とする。
【0008】
ここで、「運行情報」とは、列車毎に定められる情報、即ち、列車番号、列車の種別、停車駅、主要な通過駅の名称、各停車駅での着発時刻、主要通過駅での通過時刻などをいい、この運行情報は、運転手が携行する「運転士行路表」にも表示される。そして、運転士が所定の列車を運行するときは、始発駅にて二次元シンボルリーダーにより二次元シンボルを読み取らせると、列車運行に関する情報(即ち、運行情報)が先頭車両の端末装置に入力され、この情報とストレージに記憶された車両運用データとが照合されて、合致するものが初期設定指令として各端末装置に配信されると共に、運転士用表示器に表示される。以降、上記従来例と同様に、運転士は、携行する運転士行路表に記載の情報と信号システムの現示等に従って当該列車を運行する。このように本発明では、従来、手入力していた運行情報を、運転士が常時携行する運転士行路表に二次元シンボルとして表示し、この二次元シンボルを読み取らせる構成を採用することで、入力ミスの発生を可及的に抑制しながら、運転士の負担を更に軽減することが可能になる。
【0009】
ところで、従来では、一台の列車について、出庫から、営業運転、終着駅での折り返し、回送運転等を経て入庫するまでの一日の運用パターンを「列車番号」の連鎖とし(つまり、車両編成を単位として当該編成がどのような列車番号に割り当てて運用するかを示す車両運用計画を作成し)、これを車両運用データとして併せて記憶させている。そして、例えば、終着駅での折返運転に際しては、この車両運用計画通りであるかの確認も行われている。一方、ダイヤ改正が実施されると、これに併せて車両運用計画を含む車両運用データ及び運転士行程表が一新され、一新された車両運用データは、全ての列車のストレージに再度記憶されると共にその検証作業が実施される。即ち、ダイヤ改正があると、「列車番号」の連鎖としての車両運用計画も再度作成され、その検証作業が実施されるため、その作業負担が大きいという問題がある。
【0010】
本発明においては、前記運行情報に、この列車が次に利用されるときの列車番号が含まれる。これによれば、夫々の列車番号毎に列車情報システム内の「運行情報」が生成されるため、「列車番号」の連鎖としての情報を不要にできる(ひいては、車両運用データの検索なども不要にできる)。結果として、従来、ダイヤ改正の際に行っていた、車両運用データルの列車情報システムのストレージへの書き込み作業とその検証作業を不要にすることができて作業負担を著しく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の列車情報システムを搭載した列車を説明する図。
【
図2】運転士が携行する運転士行路表を説明する図。
【
図3】始発駅での営業運転開始の手順を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、列車を4両編成のもの、二次元シンボルをQRコード(登録商標)とし、列車に乗務する運転士を支援するための本発明の列車情報システムの実施形態について説明する。
【0013】
図1を参照して、本実施形態の列車情報システムTSは、各車両1
1~1
4に夫々搭載される端末装置2
1~2
4を備え、各端末装置2
1~2
4が車両間伝送路3を介して互いに通信自在に接続されている。なお、各端末装置2
1~2
4や車両間伝送路3としては、公知のものが利用されるため、ここでは、詳細な説明は省略する。各車両1
1~1
4には、各端末装置2
1~2
4の指令を受けて動作する各種の機器11a~11nが備えられている。「各種の機器」とは、列車の運行に必要なものとして各車両1
1~1
4に備えられるものであり、例えば、各車両1
1~1
4に夫々設置される行先表示器、空調機や照明器具、運転士の主幹制御器の操作による力行指令やブレーキ指令に応じて作動する列車の主回路システム等をいう。
【0014】
各車両11~14のうち、列車の運転(折返運転を含む)時、運転士が乗車して先頭となる車両(以下、「先頭車両11」,「先頭車両14」という)には、記憶装置としてのストレージ4a,4bと運転士表示器5a,5bとが設けられている。各ストレージ4a,4bには、車両運用データが記憶されている。ここにいう「車両運用データ」とは、列車を構成する各車両11~14の車種、車両番号及び編成、急行または特急といった列車の種別、始発駅、行先、停車駅、列車の各駅の運転区間や速度種別、各駅の着発時刻等の、所定期間内で終日運行される各列車の列車計画を定めたもの(所謂、列車ダイヤ)をいう。運転士表示器5a,5bは、列車情報システムTSと運転士(乗務員や保守要員を含む)との間でインタラクションを行うものであり、例えば、タッチ式のディスプレイ51を備える。そして、ディスプレイ51には、列車番号、行先および始発駅といった各種の情報が表示され、また、各種の機器11a~11nの動作状態なども確認できるようになっている。先頭車両11,先頭車両14にはまた、QRコード(登録商標)を読み取る二次元シンボルリーダー6a,6bが設けられ、二次元シンボルリーダー6a,6bで読み取ったQRコードを、通信回線(図示せず)を介して両先頭車両11,14の両端末装置21,24に送信できるようにしている。二次元シンボルリーダー6a,6bとしては、公知のものが利用されるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0015】
一方、列車に乗務する運転士は、帳票として印刷された運転士行路表7を携行する。運転士行路表7には、
図2に示すように、列車運行に関する運行情報71が記載されている。運行情報71は、列車毎に定められる情報、即ち、列車番号、列車の種別、停車駅、主要な通過駅の名称、各停車駅での着発時刻、主要通過駅での通過時刻などである。そして、本実施形態では、運転士行路表7には、付帯情報として運行情報をコード化したQRコード72を併記している。この場合、運行情報には、この列車が次に利用されるときの「列車番号」を含むようにしてもよい。なお、QRコード72の詳細仕様は、JIS X 510により規格化され、QRコード生成処理の詳細については同規格に準拠するものとする。そして、運転士の乗務時、以下の手順で列車を運行する。
【0016】
図3も参照して、始発駅にて先頭車両1
1に乗車した運転士は、先ず、タッチ式のディスプレイ51を操作して「列車番号」の設定情報をクリアした後(S1)、運転士が携行する運転士行路表7のQRコード72を二次元シンボルリーダー6aで読み取らせる。すると、列車運行に関する情報(即ち、運行情報)が当該先頭車両1
1の端末装置2
1に入力され、端末装置2
1にて運行情報とストレージ4aに記憶された車両運用データとが照合され、合致するものがある場合、その運行情報がディスプレイ51に表示される(S2)。この場合に表示される運行情報としては、始発駅名、ダイヤ種別、列車番号、折返運転時の列車番号、臨時停車駅がある場合にはその駅名などが挙げられる。次に、運転士は、ディスプレイ51に表示されたものと運転士行路表7に記載されたものとが一致しているかを確認し、一致している場合には、ディスプレイ51を操作して設定確認処理を行う(S3)。これにより、端末装置2
1は、これを承認すると共に、車両間伝送路3を介して初期設定指令として各端末装置2
2~2
4に配信し、当該列車が営業運転を開始できる状態になる。
【0017】
「初期設定指令」とは、合致した列車の車両運用データに応じて、各車両12~14に夫々設置される行先表示器、空調機、照明器具や車内放送装置などの各種の機器11a~11nに対する動作指令をいい、初期設定指令に応じて各端末装置22~24は各種の機器11a~11nを動作させる(例えば、行先表示器に終着駅の名称を表示させ、または、車内放送装置により停車駅、停車時刻などの情報を音声で出力させる)。そして、運転士は、携行する運転士行路表7に記載の情報と信号システムの現示等に従って当該列車を運行し、運行中には、例えば、先頭車両器11の端末装置21が、両間伝送路3を介して各端末装置22~24と通信し、各端末装置22~24が各種の機器11a~11nの作動を制御したときの情報を収集し、この収集した情報を運転士用表示器7に表示するだけでなく、例えば、車内の案内表示や車内放送を自動的に行う。また、QRコード72で表示される運行情報に当該列車が次に利用されるときの「列車番号」が含まれている場合、各車両11~14に夫々設置される各種の機器11a~11n、特に、次の先頭車両14の行き先表示装置および車内案内表示装置に対して、例えば、終点到着手前の区間にて、次の運用の行き先や列車種別などを表示させることができる。
【0018】
以上の実施形態によれば、従来、ディスプレイ51に手入力していた運行情報を、運転士が常時携行する運転士行路表7に二次元シンボルとしてのQRコード72を表示し、このQRコード72を読み取らせる構成を採用することで、入力ミスの発生を可及的に抑制しながら、運転士の負担を更に軽減することが可能になる。なお、現在の電子技術によれば、運転士行路表7に記載される運行情報71をスマートフォンやタブレットなどの電子媒体等に記録し、例えば、無線通信手段等を用いて列車情報システムTSに転送する方式も想定できるが、本実施形態のように、現状、紙媒体で運用されている運転士行路表7の形式を大幅に変更することなく、比較的安価な二次元シンボルリーダー6a,6bを追加して、これに伴うソフトウェアの変更を行うだけで列番設定作業の効率化を図るとともに、ダイヤ改正時のメンテナンス作業を大幅に削減でき、有用である。
【0019】
また、運行情報をQRコード化する際に、バイトモードによりコード化すれば、バイナリデータをそのままコード化することができるため、多くの情報量を小面積のコードで表すことができ、有利である。更に、運行情報に、この列車が次に利用されるときの列車番号が含まれることで、夫々の列車番号毎に列車情報システム内の「運行情報」が生成されるため、「列車番号」の連鎖としての情報を不要にできる(ひいては、車両運用データの検索なども不要にできる)。結果として、従来、ダイヤ改正の際に行っていた、車両運用データの列車情報システムのストレージへの書き込み作業とその検証作業を不要にすることができて作業負担を著しく軽減することができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、二次元シンボルをQRコード(登録商標)としたが、これに限定されるものではなく、例えば、PDF417、マイクロPDF417、データマトリックス、マキシコード、QRコード、アズデックコード、GS1合成シンボルがISO/IEC規格化され利用されており、用途に応じて使い分けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
TS…列車情報システム、11~14…車両(列車を編成するもの)、11a~11n…各種の機器、21~24…端末装置、3…車両間伝送路、4a,4b…ストレージ、5a,5b…運転士用表示器、6a,6b…二次元シンボルリーダー、7…運転士行路表、71…運行情報、72…QRコード(二次元シンボル)。