(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062417
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】飲料容器
(51)【国際特許分類】
A61J 9/00 20060101AFI20230426BHJP
A47J 41/02 20060101ALI20230426BHJP
A47J 41/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61J9/00 D
A61J9/00 Q
A47J41/02 102C
A47J41/02 102B
A47J41/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172381
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 志文
(72)【発明者】
【氏名】山下 瑛礼
【テーマコード(参考)】
4B002
4C047
【Fターム(参考)】
4B002AA02
4B002AA12
4B002BA06
4B002BA07
4B002BA21
4B002BA41
4B002BA60
4B002CA14
4B002CA32
4B002CA50
4C047PP04
4C047PP07
4C047PP08
4C047PP09
(57)【要約】
【課題】腐食を防止するとともに、構成部材の一部を消毒可能な断熱性の飲料容器を提供する。
【解決手段】飲料容器1であって、断熱空間のための二重壁12を有し頂部11が開口する有底筒状の下容器10と、下容器10に収容され下容器10に対して着脱可能であり、頂部41が開口する有底筒状の内容器40と、両端が開口し一端が下容器10に接続されるとともに内容器40の頂部41に当接する筒状の上容器20と、を備え、上容器20は高分子材料製またはガラス製であり、内容器40は高分子材料製である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱空間のための二重壁を有し頂部が開口する有底筒状の下容器と、
前記下容器に収容され前記下容器に対して着脱可能であり、頂部が開口する有底筒状の内容器と、
両端が開口し一端が前記下容器に接続されるとともに前記内容器の前記頂部に当接する筒状の上容器と、
を備え、
前記上容器は高分子材料製またはガラス製であり、
前記内容器は高分子材料製である
ことを特徴とする飲料容器。
【請求項2】
前記下容器は、径方向に向けて突出する環状の突出部を有し、
前記内容器は、外周に形成され前記突出部に係合し、前記内容器の弾性変形により前記突出部との係合が解除される係合部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の飲料容器。
【請求項3】
前記下容器と前記内容器との間には、空気による断熱空間が設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の飲料容器。
【請求項4】
前記上容器を前記下容器へ接続する軸力により前記上容器が前記内容器に押し付けられることによって、前記上容器と前記内容器との間がシールされる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の飲料容器。
【請求項5】
前記上容器の他端に接続されるカップ部材をさらに有し、
前記カップ部材の内周には、前記飲み口部材と当接する環状のシール部が設けられる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の飲料容器。
【請求項6】
前記飲み口部材には、ストロー部材または乳幼児の口に含ませるための乳首部材が取り付け可能である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の飲料容器。
【請求項7】
前記下容器の前記頂部には、前記上容器に代えて、前記下容器の開口を塞ぐフタ部材を接続可能である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
二重壁の断熱空間により飲料容器の断熱性を高めるにあたり、耐久性や加工性の観点から二重壁を構成する部材にステンレス等の金属材料を採用することが知られている。
【0003】
特許文献1には、ステンレス製の容器によって形成される二重壁の内部空間が真空の断熱空間となる携帯飲料容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の携帯飲料容器は、ステンレス製の容器が飲料と直接触れるため、塩分を含む飲料を入れると塩分によってステンレス容器が腐食する可能性がある。
【0006】
また、腐敗する可能性がある飲料を入れた後には容器内部を消毒する必要性があるところ、一般的な消毒法として知られる、煮沸、電子レンジによる消毒、及び薬液での消毒のいずれも特許文献1に開示のステンレス製の携帯飲料容器には適さない。
【0007】
煮沸は、熱による変形によって容器の真空構造にダメージを与える可能性がある。容器内に入れた水とともに電子レンジで加熱する消毒法は、容器が金属製であるため適さない。また、次亜塩素酸ナトリウムを含む薬液による消毒法はステンレス容器が腐食する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、腐食を防止するとともに、構成部材の一部を消毒可能な断熱性の飲料容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、断熱空間のための二重壁を有し頂部が開口する有底筒状の下容器と、前記下容器に収容され前記下容器に対して着脱可能であり、頂部が開口する有底筒状の内容器と、両端が開口し一端が前記下容器に接続されるとともに前記内容器の前記頂部に当接する筒状の上容器と、を備え、前記上容器は高分子材料製またはガラス製であり、前記内容器は高分子材料製であることを特徴とする飲料容器。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様では、飲料と接する上容器が高分子材料製またはガラス製であり、内容器が高分子材料製であることから上容器及び内容器が腐食することがなく、上容器及び内容器を断熱構造の下容器から取り外して消毒することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る飲料容器の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る飲料容器の各部材を展開した図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る下容器の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る下容器に内容器を取り付けた状態の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る下容器に内容器及び上容器を取り付けた状態の断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る下容器、内容器、上容器、飲み口部材、乳首部材及びカップ部材による飲料容器の断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る横置き姿勢をとる飲料容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、
図1から
図6を参照して、本発明の実施形態に係る飲料容器1の構成について説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、飲料容器1は、下容器10と、下容器10に接続される上容器20と、上容器20に接続されるカップ部材30と、下容器10に収容される内容器40と、上容器20に取り付けられる飲み口部材50と、乳幼児の口に含ませる乳首部材60と、ストロー部材70と、下容器10に接続されるフタ部材80と、を備える。
【0014】
まず、下容器10について説明する。
図3に示すように、下容器10は、頂部11が開口する有底筒状の容器であり、二重壁12の断熱構造を有するステレンス等の金属製の容器である。
【0015】
二重壁12は、内壁12a及び外壁12bよりなり、内壁12aと外壁12bとの間の空間は真空の断熱空間13となる。下容器10の内周には、径方向内側に突出する環状の突出部14が形成される。突出部14には、内容器40が解除可能に係合する。
【0016】
二重壁12の上側の頂部11には、上容器20またはフタ部材80が接続される接続部15が形成され、接続部15の内周には、上容器20またはフタ部材80と螺合される雌ネジ16が設けられる。なお、接続部15は、内壁12a及び外壁12bよりなる二重壁として形成されてもよい。
【0017】
次に、上容器20について説明する。
図2に示すように、上容器20は、上端21及び下端22のそれぞれが開口する筒状の容器である。上容器20は、下容器10とカップ部材30との間において、下容器10及びカップ部材30の双方から露出する環状の露出部23を有する。上容器20は、透明または半透明のプラスチック等の高分子材料製またはガラス製の容器であるため、露出部23を通じて飲料容器1内の飲料が視認可能である。なお、高分子材料製には、シリコーンゴム等のゴムを含むエラストマー製、プラスチック製、その他ポリマーを主たる成分とする材料が含まれる。
【0018】
図1に示すように、露出部23には、飲料容器1内の飲料の量を確認するための複数の目盛線24a~24gよりなる目盛24が設けられる。目盛線24a~24gは、それぞれ鉛直方向に対して斜め方向に向かって直線が引かれ、対向する一対の線からなる。目盛線24b同士の間には100ccを示す「100」の数値が印されている。同様に、目盛線24d同士の間、目盛線24f同士の間にもそれぞれ量を確認するための数値が印されている。後述するように、目盛線24a~24gは、横置き姿勢(
図7参照)時の飲料の液面に対応した目盛線である。
【0019】
図2に示すように、上容器20は、露出部23と、下容器10に接続される下部接続部25と、カップ部材30が接続されると共に飲み口部材50が取り付けられる上部接続部26と、を有する。下部接続部25は、露出部23の下側に形成され、上部接続部26は、露出部23の上側に形成される。下部接続部25の外周には、下容器10に接続される雄ネジ27が設けられる。
【0020】
上部接続部26は、下部接続部25と略同一の外径を有する大径部26aと、大径部26aよりも外径が小さい小径部26bと、を有する。大径部26aの外周には、カップ部材30が接続される雄ネジ28が設けられる。小径部26bの外周には、飲み口部材50が取り付けられる取り付け部29が設けられる。取り付け部29は、例えば、飲み口部材50の内周との接触摩擦により飲み口部材50を係止するための環状の凸部である。
【0021】
次に、カップ部材30について説明する。
図1、
図2及び
図6に示すように、カップ部材30は、上容器20の一端を覆うカップ部31と、指やカラビナを通す穴34が形成され下容器10よりも径方向外側に突出する取手32と、を有する。カップ部31には、外周のグリップを向上させるための凹凸33が設けられる。取手32は、プラスチック等の変形しない素材であってもよいし、弾性変形可能な熱可塑性エラストマー製(ゴム製)であってもよく、ゴム製を採用することで、穴34に指を通す時の質感を向上させることができる。
【0022】
カップ部材30は、飲料を注いで飲むためのカップとなる部材であり、平面状の頂部35を底にして自立することが可能である。カップ部材30の開口端部36の内側には、雌ネジ37(
図6参照)が設けられ、上容器20の雄ネジ28と螺合する。
【0023】
次に、内容器40について説明する。
図2及び
図4に示すように、内容器40は、頂部41が開口する有底筒状の容器であり、弾性変形が可能な高分子材料製である。本実施形態では、内容器40は、シリコーンゴム製や熱可塑性エラストマー製である。内容器40は、上容器20の下端22と当接する頂部41と、下容器10の突出部14に係合する係合部42と、飲料を収容する内容器本体43と、を有する。
【0024】
図4に示すように、係合部42は、下容器10の突出部14に係合可能なように内容器40の外周に設けられる。係合部42の外径W1は、頂部41の外径W2及び内容器本体43の上部側の外径W3よりも小さく形成される。つまり、係合部42は、頂部41及び内容器本体43の双方の外周面から窪んで形成される。
【0025】
内容器本体43の外径は、底部に向かって徐々に小さくなっており、内容器本体43の下部側の外径W4は、内容器本体43の上部側の外径W3よりも小さく形成される。これにより、内容器本体43が突出部14を通過する際に、内容器本体43の上部側が通過する場合に比べて内容器本体43の下部側が通過する方が突出部14との接触による抵抗が小さい。このため、内容器40を下容器10に収容し易い。
【0026】
内容器40を下容器10から取り外す場合は、下容器10の接続部15の内周と内容器40の頂部41の外周との間にできる間隙17に指先を入れて内容器40を内側へ弾性変形させて取り外す。また、頂部41の一部を指先で抓んで上方へ引き上げることでも内容器40が弾性変形し、内容器40を下容器10から取り外すことができる。さらに、係合部42の裏側に形成される傾斜部44に指先をかけて上方に引き上げることでも、内容器40を弾性変形させながら下容器10から取り外すことができる。このように、内容器40が弾性変形することで、係合部42は突出部14との係合が解除される。
【0027】
係合部42が突出部14に係合された状態では、内容器40は、突出部14によって支持され、下容器10の内壁12aと内容器40の内容器本体43との間には空気による断熱空間18が形成される。このため、内容器40の内部の飲料は、断熱空間13及び断熱空間18によって保温または保冷され、下容器10に収容された内容器40は、単に真空の二重構造のみを持つ飲料容器よりも保温・保冷効果が高い。なお、内容器40は、飲料の重さで形状が大きく変形しないように、例えば、内容器本体43の底面の外側に、内壁12aの底面に接触する支持部(図示省略)が形成されてもよい。
【0028】
次に、飲み口部材50、乳首部材60及びストロー部材70について説明する。
図2及び
図6に示すように、飲み口部材50は、上端51及び下端52のそれぞれが開口する筒状の部材である。使用者は、上端51の開口に唇を付けて飲料を直接飲むことができるほか、上端51の開口からカップ部31へ飲料を注ぐことができる。
【0029】
また、飲み口部材50には、乳首部材60またはストロー部材70を取り付けることができる。
図6に示すように、乳首部材60を飲み口部材50に取り付ける場合は、乳首部材60を飲み口部材50の下端52の開口より挿入し、上端51の開口から突き出して飲み口部材50に取り付けられる。この時、乳首部材60は、フランジ状に形成される係合部61が飲み口部材50の内側に形成される係合部54に係合し、飲み口部材50と上容器20とによって挟持される。飲み口部材50に取り付けられた乳首部材60は、カップ部材30の内側に収容される。
【0030】
ストロー部材70(
図2参照)を飲み口部材50に取り付ける場合は、飲み口部材50の上端51の開口よりストロー部材70が挿通される。飲み口部材50に取り付けられたストロー部材70もカップ部材30の内側に収容される。
【0031】
このように、飲料容器1は、飲み口部材50に乳首部材60を取り付けての使用、飲み口部材50にストロー部材70を取り付けての使用、飲み口部材50のみでの使用、カップ部材30での使用という異なる使用態様が可能である。このため、飲料容器1は、乳幼児から大人まで使用することができる。具体的には、乳幼児には、飲料容器1に入れた母乳や調乳したミルクを飲ませることができる。また、子供には、飲料容器1に入れた牛乳やスポーツドリンクを飲ませることができる。また、大人向けに様々な飲料を飲料容器1に入れることができる。飲料容器1は、子供が生まれてから成長する過程において、乳幼児期のみあるいは哺乳期を過ぎた子供のみというような使用の限定がなく、多様な飲料を保温または保冷して持ち運ぶことができる。中でも、哺乳瓶は子供が乳幼児期を過ぎると使わなくなるが、飲料容器1は、乳幼児から大人まで季節を問わずに使用できることから長期にわたって(つまり、ロングライフに)使用可能である。
【0032】
次に、フタ部材80について説明する。
図2に示すように、フタ部材80は、下容器10に接続される部材である。フタ部材80は、下容器10及び内容器40を封止する天板81と、下容器10に接続される接続部82と、を有する。接続部82の外周には、下容器10に接続される雄ネジ83が設けられる。接続部82は、中空でも中実でもどちらでもよい。接続部82の下端が内容器40の頂部41の上端面41a(
図4参照)に密着することによって、フタ部材80と内容器40の間がシールされる。
【0033】
フタ部材80を用いると、下容器10に対して上容器20及びカップ部材30を用いる場合よりも飲料容器1の高さを抑えることができるほか、飲料容器1の全体としての非断熱構造の表面積が小さくなることから飲料の断熱性が高まる。
【0034】
次に、
図5及び
図6を参照して各部材同士による密閉構造について説明する。
【0035】
まず、上容器20と内容器40との間の密閉を説明する。
図5に示すように、上容器20は、上容器20の雄ネジ27と下容器10の雌ネジ16とを螺合して下容器10に取り付けられる。上容器20が下容器10に取り付けられると、上容器20の下端面22aが内容器40の上端面41aと当接し、上容器20を下容器10にネジ入れる軸力によって下端面22aと上端面41aとが密着してシールされる。
【0036】
つまり、上容器20が下容器10に取り付けられると、上容器20と下容器10に収容されている内容器40との内部空間が一体となって飲料を収容する空間が形成される。そして、上容器20の下端面22aと内容器40の上端面41aとが当接して密着しシールされる。このように、高分子材料製の内容器40(上端面41a)がパッキンを兼ねている。
【0037】
次に、下容器10と内容器40との間の密閉を説明する。
図5に示すように、上容器20が下容器10に取り付けられると、上容器20が内容器40を下方に押し付ける力により、内容器40の係合部42に形成される上部水平面45が下容器10の突出部14に押し付けられる。これにより、上部水平面45と突出部14とが密着してシールされる。
【0038】
次に、飲み口部材50による密閉を説明する。
図6に示すように、飲み口部材50の接続部53の内周が上容器20の取り付け部29と当接することにより、飲み口部材50と上容器20との間がシールされる。
【0039】
また、乳首部材60が飲み口部材50と上容器20とによって挟持されると、乳首部材60のフランジ状の係合部61と上容器20の上端21とが当接して密着しシールされる。これにより、上容器20と乳首部材60の内部空間は一体となる。
【0040】
また、
図6に示すように、カップ部材30の内周には、飲み口部材50の上端51の外周部51aに対応するように、外周部51aの形状と一致するシール部38が環状に形成される。カップ部材30が上容器20に対して下限位置まで螺合されると、外周部51aとシール部38とが当接して密着しシールされ、外側へと飲料が漏れることが防止される。
【0041】
飲み口部材50は、例えば、ゴム等の弾性変形可能な材料によって形成され、外周部51aとシール部38とが当接する時に外周部51aがシール部38の形状に広範に沿うように変形してより密着する。他方、飲み口部材50の内側に形成される係合部54は、プラスチック等の変形しない材料によって形成され、乳首部材60の係合部61を確実に圧縮し、乳首部材60との密着性が高められる。このように、飲み口部材50は、弾性変形可能なパーツ(図示省略)と非変形パーツ(図示省略)とが組み合わされた構成でもよいし、単一の部材による構成でもよい。
【0042】
ここで、飲み口部材50にストロー部材70を取り付けた場合や、飲み口部材50のみを上容器20に取り付けた場合は、飲み口部材50の開口から飲料がカップ部材30の内部へと移動可能である。しかしながら、上記のように、外周部51aとシール部38との間はシールされているため、シール部38から下方へと飲料が漏れることが防止される。
【0043】
また、カップ部材30が上容器20に対して下限位置まで螺合されると、乳首部材60の先端部63は、カップ部31の内側の底の中央部39と当接しシールされる。このため、飲料が乳首部材60から漏れることが防止される。
【0044】
なお、飲み口部材50は、上容器20と別体ではなく一体であってもよい。この場合、カップ部材30のシール部38と当接するように上容器20の上端21が延伸され、上容器20によってシール部38がシールされる。
【0045】
ところで、上容器20及び内容器40は飲料と接する容器であり、下容器10は飲料と接しない容器である。
【0046】
このため、飲料容器1内に人工乳、乳飲料、スポーツドリンク、スープ、おかゆ等の塩分を含む飲料を入れても、下容器10が飲料と接しないことから下容器10は飲料に含まれる塩分によって腐食しない。他方、上容器20、カップ部材30、内容器40等の下容器10以外の部材は、飲料に含まれる塩分によって腐食しない高分子材料製であるため、多様な飲料を収容することができる。
【0047】
また、容器が金属製である場合、煮沸による消毒では真空構造の二重壁がダメージを受ける可能性があり、また、薬液による消毒では薬液によって金属が腐食する可能性がある。さらに、金属材料は、電子レンジに入れてマイクロ波を当てると火花が生じて火災の原因となることから、金属製の容器には電子レンジでの消毒法を施すことができない。
【0048】
しかし、金属製である下容器10は、飲料と接しないことから消毒が不要である。他方、飲料と接する下容器10以外の部材は、煮沸、薬液、電子レンジのいずれの消毒法も可能な高分子材料製であるため、簡易に消毒が可能である。
【0049】
つまり、飲料容器1は、加工性、耐久性に優れるという金属材料の有用性の下に二重壁12の断熱構造を有し、「腐食の可能性がある」及び「簡易に消毒を施せない」という金属材料の難点を、下容器10が飲料に接しない構造とすることで解消している。これにより、飲料容器1には、塩分を含む飲料や腐敗する可能性がある飲料を入れることが可能であり、高い保温・保冷効果の下に飲料を持ち運ぶことができる。さらに、飲料容器1は、飲み口部材50を通じて複数の飲み方に対応できるため、ロングライフに使用可能である。
【0050】
また、飲料が腐敗するとガスが生じて内側から膨張圧力がかかって容器の破損や事故につながるところ、内容器40は、裏返して洗うことが可能であるため洗浄が容易であり、洗い残しによる残渣がなくなる。その結果、飲料容器1では次に入れた飲料が腐敗するリスクが低減されることから容器の破損や事故のリスクが低減される。
【0051】
次に、
図7を参照して露出部23に設けられる目盛24及び目盛線24a~24gについて説明する。
【0052】
図7に示すように、飲料容器1は、下容器10と取手32とを設地させて安定した静置状態を取ることができる。当該静置状態は、飲料容器1内の飲料の量を確認するための姿勢であり、飲料容器1を斜め横向きに静置することから横置き姿勢と呼ぶ。横置き姿勢は、飲料容器1を斜めに静置する姿勢や水平に静置する姿勢を含み、飲料容器1を直立させる姿勢は含まない。
【0053】
飲料容器1が横置き姿勢にある時、下容器10の接地部10aと、取手32の接地部32aと、が設地面100と接する。接地部32aは、設地面100に対して所定の幅を有するため、飲料容器1の横置き姿勢が安定する。このように、取手32は、飲料容器1が横置き姿勢を取るための部位としても用いられる。なお、取手32によらず、下容器10またはカップ部材30の外周に、飲料容器1に横置き姿勢を取るための部位を設けてもよい。また、取手32とは異なる部材を飲料容器1に設けて、飲料容器1に横置き姿勢を取らせてもよい。
【0054】
また、
図7では、乳首部材60を取り付けた飲料容器1内に、異なる容量の飲料を入れた場合の飲料の液面S1~S7が表されている。以下では、液面S1~S7について、
図1に示す目盛線24a~24gと対応させて説明する。
【0055】
図7に示す液面S1は、50ccの飲料を入れた場合の液面であり、目盛線24aが対応する。液面S2は、100ccの飲料を入れた場合の液面であり、目盛線24bが対応する。液面S3は、150ccの飲料を入れた場合の液面であり、目盛線24cが対応する。液面S4は、200ccの飲料を入れた場合の液面であり、目盛線24dが対応する。液面S5は、250ccの飲料を入れた場合の液面であり、目盛線24eが対応する。液面S6は、300ccの飲料を入れた場合の液面であり、目盛線24fが対応する。液面S7は、350ccの飲料を入れた場合の液面であり、目盛線24gが対応する。
【0056】
このように、目盛線24a~24gは、飲料容器1が横置き姿勢を取る状態での飲料の液面に対応して設けられている。以下では、目盛24が露出部23に設けられる理由について説明する。
【0057】
図1または
図6を参照すると、金属製の下容器10は不透明な部材であるため、飲料容器1を直立させると、飲料の液面が下容器10の高さを超えない場合には、露出部23を通じて飲料の液面を横から視認することができない。また、飲料の液面がカップ部材30の高さにある場合も、カップ部材30が不透明な部材であると、露出部23を通じて飲料の液面を横から視認することができない。
【0058】
他方、
図7に示すように、飲料容器1を横置き姿勢に静置すると、飲料の量にかかわらず、露出部23を通じて飲料の液面を視認することができる。そこで、使用者が飲料容器1を横置き姿勢にさせ、目盛24を用いて飲料の量を確認できるように露出部23に目盛24が設けられている。
【0059】
このように、飲料容器1は、加工性、耐久性に優れる金属製の下容器10による高い断熱性と、透明または半透明な高分子材料製の上容器20による飲料の量の確認構造と、を併せ持つ。
【0060】
なお、使用者が露出部23を介して飲料を視認するにあたり、露出部23により液面の高さが屈折して見えることを考慮して、目盛線24a~24gは、露出部23の内周に設けられる。
【0061】
また、乳首部材60を取り付けなかった場合は、飲み口部材50の開口からカップ部材30の内側へと飲料が移動可能である。このため、同じ容量の飲料を入れた場合であっても、乳首部材60を取り付けた場合の液面S3~S7に比べて、乳首部材60を取り付けない場合の飲料の液面の高さは、液面S3~S7よりもそれぞれ低くなる。このため、露出部23の一側に乳首部材60を取り付けた場合の目盛線を設け、露出部23の他側に乳首部材60を取り付けない場合の目盛線を設けてもよい。この時、露出部23の一側には乳首部材60を表すアイコンを目盛線と共に表示し、露出部23の他側には飲み口部材50を表すアイコンを目盛線と共に表示してもよい。
【0062】
また、目盛線24a~24gは、直線状の目盛線に限られず、破線状、波線状でもよい。また、透明ではない飲料が入れられた時に、飲料の色によって目盛線が視認できるように透明または半透明な目盛線でもよい。さらに、目盛線に替えて、例えば、点(ドット)による目盛であってもよいし、数値だけの目盛であってもよい。
【0063】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0064】
飲料容器1は、断熱空間のための二重壁12を有し頂部11が開口する有底筒状の下容器10と、上端21及び下端22が開口し下端22が下容器10の頂部11に接続される筒状の上容器20と、を有し、下容器10は金属製であり、上容器20は透明または半透明な高分子材料製またはガラス製である。
【0065】
この構成によれば、飲料容器1は、加工性、耐久性に優れる金属製の下容器10が二重壁12による断熱構造を備え、また、上容器20が透明または半透明であることから、使用者は、上容器20を介して飲料の量を視認可能である。
【0066】
上容器20には、飲料容器1内の飲料の量を確認するための目盛24が設けられる。
【0067】
この構成によれば、使用者は、上容器20を通じて飲料の量を視認するにあたり、目盛24によって飲料の量を確認することができる。
【0068】
上容器20の上端21に接続されるカップ部材30をさらに有し、カップ部材30は、飲料容器1内の飲料の量を確認するための横置き姿勢を取るために設地面100に接地される接地部32aを有し、目盛24は、飲料容器1の横置き姿勢時の飲料の液面に対応した目盛線24a~24gである。
【0069】
この構成によれば、使用者は、接地部32aによって飲料容器1横置き姿勢をとらせることで、飲料がどのような量であっても上容器20を通じて飲料の液面が視認可能である。そして、使用者は、上容器20に設けられた横置き姿勢時の飲料の液面に対応した目盛線24a~24gによって飲料の量を確認することができる。
【0070】
また、飲料容器1は、以下の構成、作用、及び効果を備える。
【0071】
断熱空間のための二重壁12を有し頂部11が開口する有底筒状の下容器10と、下容器10に収容され下容器10に対して着脱可能であり、頂部41が開口する有底筒状の内容器40と、上端21及び下端22が開口し下端22が下容器10に接続されると共に内容器40の頂部41に当接する筒状の上容器20と、を備え、上容器20は高分子材料製またはガラス製であり、内容器40は高分子材料製である。
【0072】
この構成によれば、飲料と接する内容器40及び上容器20は、高分子材料製(またはガラス製)であるため薬液等での消毒が可能であり、飲料と接しない下容器10は、二重壁12による断熱空間を有するため高い断熱性がもたらされる。よって、飲料容器1は、内容器40及び上容器20が簡易に消毒可能であり、下容器10の消毒が不要である。また、飲料容器1は、内容器40及び上容器20が金属材料と比べて腐食の可能性がない高分子材料製(またはガラス製)であるため、塩分を含む飲料を入れることができる。
【0073】
下容器10は、径方向に向けて突出する環状の突出部14を有し、内容器40は、外周に形成され突出部14に係合し、内容器40の弾性変形により突出部14との係合が解除される係合部42を有する。
【0074】
この構成によれば、内容器40は、弾性変形により突出部14との係合が解除されるため、使用者は、指先で内容器40に力を加えて突出部14との係合を解除することができ、下容器10から内容器40を着脱することが容易である。
【0075】
下容器10と内容器40との間には、空気による断熱空間18が設けられる。
【0076】
この構成によれば、下容器10の二重壁12の内部空間による断熱空間13に加えて、下容器10と内容器40との間の断熱空間18が設けられるため、内容器40内の飲料の保温・保冷効果が高い。
【0077】
上容器20を下容器10へ接続する軸力により上容器20が内容器40に押し付けられることによって、上容器20と内容器40との間がシールされる。
【0078】
この構成によれば、上容器20と内容器40との間に別部材としてのパッキンが不要であり、飲料容器1の構成を簡易なものにできる。
【0079】
上容器20の上端21に接続されるカップ部材30をさらに有し、カップ部材30の内周には、飲み口部材50と当接する環状のシール部38が設けられる。
【0080】
この構成によれば、カップ部材30の内周に設けられるシール部38により、カップ部材30と飲み口部材50とがシールされるため、カップ部材30に別部材としてのパッキンが不要である。このため、飲料容器1の構成を簡易なものにできる。
【0081】
飲み口部材50には、ストロー部材70または乳幼児の口に含ませるための乳首部材60が取り付け可能である。
【0082】
この構成によれば、飲料を飲ませる対象が乳幼児である場合は、飲み口部材50に乳首部材60を取り付け、飲料を飲ませる対象が子供である場合は、飲み口部材50にストロー部材70を取り付けることができる。このため、飲料を飲ませる対象が乳幼児からさらに成長して子供になっても飲料容器1を使用することができ、子供の誕生から長期にわたって飲料容器1を使用することできる。
【0083】
下容器10の頂部11には、上容器20に代えて、下容器10の開口を塞ぐフタ部材80を接続可能である。
【0084】
この構成によれば、下容器10にフタ部材80を接続すると、飲料容器1の高さを抑えることができる。また、上容器20を用いる場合よりも非断熱空間の割合が小さくなるため、飲料の断熱性が向上する。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0086】
例えば、下容器10以外の各容器や部材も断熱構造のための二重壁を有していてもよく、カップ部材30やフタ部材80の天板81が二重壁を有していてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 飲料容器
10 下容器
12 二重壁
12a 内壁
12b 外壁
13 断熱空間
14 突出部
20 上容器
24 露出部
30 カップ部材
32a 接地部
40 内容器
50 飲み口部材
60 乳首部材
70 ストロー部材
80 フタ部材
100 設地面