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特開2023-62429製造方法、製造支援方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062429
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】製造方法、製造支援方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/357 20170101AFI20230426BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20230426BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230426BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230426BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230426BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20230426BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20230426BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20230426BHJP
【FI】
B29C64/357
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/393
B29C64/295
B29C64/268
B33Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172407
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃寛
(72)【発明者】
【氏名】岩村 卓成
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC01
4F213AC04
4F213AR06
4F213AR07
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF51
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL22
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】廃棄材を用いて安定した品質の付加製造用材料を製造可能とすることで、マテリアルリサイクルの実現に貢献することができる。
【解決手段】 廃棄材または廃棄材から製造された材料である第1の材料の物性値である第1の物性値を取得し、前記第1の物性値に基づいて、前記第1の材料から付加製造用材料を製造する際に用いる第1の製造パラメータを生成し、前記第1の製造パラメータに基づいて、前記第1の材料から前記付加製造用材料を製造する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄材または廃棄材から製造された材料である第1の材料の物性値である第1の物性値を取得し、
前記第1の物性値に基づいて、前記第1の材料から付加製造用材料を製造する際に用いる第1の製造パラメータを生成し、
前記第1の製造パラメータに基づいて、前記第1の材料から前記付加製造用材料を製造する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記第1の製造パラメータは、前記付加製造用材料の製造管理単位である製造ロットごとに生成され、
前記第1の物性値は、前記製造ロットに対応する前記第1の材料の管理単位である廃棄材ロットごとに測定される
ことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記付加製造は、粉末焼結積層造形であり、
前記付加製造用材料は、粉末状の樹脂を含み、
前記第1の物性値は、少なくとも以下のいずれかを含み、
*結晶化速度
*凝固収縮量
*粉末焼結積層造形を試行したときの造形品の反り量
前記付加製造用材料の製造は、少なくとも以下のいずれかを含み、
*結晶化速度を遅延させる性質を持つ結晶化遅延剤の追加
*フィラの追加
前記第1の製造パラメータは、少なくとも以下の1つを含む
*前記結晶化遅延剤の追加量に関する値
*前記フィラの追加量に関する値
ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法であって、
前記第1の材料は、
押出成形により成形された物品の廃棄材を主成分とする材料、または、
押出成形により成形された物品の廃棄材を主成分として製造された材料ペレットである
ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記付加製造用材料の物性値である第2の物性値を取得し、
前記第2の物性値に基づいて、前記付加製造用材料を用いて付加製造を行う際に用いる第2の製造パラメータを生成する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法であって、
前記第2の製造パラメータは、少なくとも以下のいずれかを含む、
*前記付加製造を行う付加製造装置が備える付加製造用材料の加熱用レーザの出力
*前記付加製造を行う付加製造装置が備える付加製造用材料の予熱ヒータの温度
ことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の製造方法であって、
前記第2の製造パラメータは、少なくとも以下のいずれかを含む、
前記付加製造により製造されるオブジェクトの輪切り状の層厚み
前記付加製造により製造されるオブジェクトの造形角度
前記付加製造により製造されるオブジェクトの最大長さ
造形床上におけるオブジェクトの造形位置
ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
廃棄材または廃棄材から製造された材料から製造された付加製造用材料の物性値である第2の物性値を取得し、
前記第2の物性値に基づいて、前記付加製造用材料から前記付加製造を行う際に用いる第2の製造パラメータを生成する
ことを特徴とする製造支援方法。
【請求項9】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステムであって、
前記メモリリソースは、製造支援プログラムを記憶し、
前記プロセッサは、前記製造支援プログラムを実行することで、
廃棄材または廃棄材から製造された材料である第1の材料の物性値である第1の物性値を取得し、
前記第1の物性値に基づいて、前記第1の材料から付加製造用材料を製造する際に用いる第1の製造パラメータを生成する
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステムであって、
前記メモリリソースは、製造支援プログラムを記憶し、
前記プロセッサは、前記製造支援プログラムを実行することで、
廃棄材または廃棄材から製造された材料から製造された付加製造用材料の物性値である第2の物性値を取得し、
前記第2の物性値に基づいて、前記付加製造用材料から前記付加製造を行う際に用いる第2の製造パラメータを生成する
ことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、
前記第2の製造パラメータは、少なくとも以下のいずれかを含む、
*前記付加製造を行う付加製造装置が備える付加製造用材料の加熱用レーザの出力
*前記付加製造を行う付加製造装置が備える付加製造用材料の予熱ヒータの温度
ことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のシステムであって、
前記第2の製造パラメータは、少なくとも以下のいずれかを含む、
前記付加製造により製造されるオブジェクトの輪切り状の層厚み
前記付加製造により製造されるオブジェクトの造形角度
前記付加製造により製造されるオブジェクトの最大長さ
造形床上におけるオブジェクトの造形位置
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造方法、製造支援方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、3Dプリンターから排出されるリサイクル粉体の再利用に関する技術を開示する。具体的には、特許文献1には、「3Dプリンターにとってローカルな新たな粉体の1次的供給源における新たな粉体の量、3Dプリンターにとってローカルなリサイクル粉体の1次的供給源におけるリサイクル粉体の量、3Dプリンターにとってリモートな新たな粉体の2次的供給源における新たな粉体の量、および3Dプリンターにとってリモートなリサイクル粉体の2次的供給源におけるリサイクル粉体の量を含む、粉体資源に関する情報を記憶するストレージ、および、プロセッサを含み、プロセッサは、印刷ジョブの組に基づいて、3Dプリンターによる新たな粉体およびリサイクル粉体の使用およびリサイクル粉体の生成を予測し、そして、粉体の予測および粉体資源に関する記憶された情報に基づいて、新たな粉体および/またはリサイクル粉体の1次的および2次的供給源の間において新たな粉体資源およびリサイクル粉体資源を管理する、コンピューティングシステム」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6808754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーキュラーエコノミーの推進に当たり、廃棄材から材料(マテリアル:Material)を製造するマテリアルリサイクルは、4R(Reuse(再利用)、Reduce(削減)、Repair(修理)およびRemanufacture(再製造))に含まれる重要な概念である。
【0005】
一方で、特許文献1に開示される技術は、付加製造を行う3Dプリンターに通常用いられる材料の残留粉末を再利用しているに過ぎない。すなわち、同文献に開示される技術は、様々な成分を含む廃棄材を3Dプリンター用の材料とし、付加製造による積層造形を行うことは考慮されていない。そのため、同文献の技術では、廃棄材を用いた付加製造による積層造形を行うことが困難であり、マテリアルリサイクルにおける再利用に貢献することは難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、廃棄材を用いて安定した品質の付加製造用材料を製造可能とすることで、マテリアルリサイクルの実現に貢献することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係る製造方法は、廃棄材または廃棄材から製造された材料である第1の材料の物性値である第1の物性値を取得し、前記第1の物性値に基づいて、前記第1の材料から付加製造用材料を製造する際に用いる第1の製造パラメータを生成し、前記第1の製造パラメータに基づいて、前記第1の材料から前記付加製造用材料を製造する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃棄材を用いて安定した品質の付加製造用材料を製造可能とすることで、マテリアルリサイクルの実現に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】サーキュラーエコノミーに関連するエコシステムの概略構成の一例を示した図である。
図2】システムの概略構成の一例を示した図である。
図3】製造支援処理(AM用材料の製造パラメータ生成)の一例を示したフロー図である。
図4】製造支援処理(AM用材料を用いた付加製造の製造パラメータ生成)の一例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
<エコシステムを構成する組織>
図1は、サーキュラーエコノミーに関連するエコシステムの概略構成の一例を示した図である。図示するように、エコシステムには、廃棄材提供者と、リサイクラと、付加製造(AM:Additive Manufacturing)用材料(以下、AM用材料という場合がある)の製造、および、AM用材料を用いた付加製造装置(以下、AM装置や、3Dプリンターという場合がある)による製品製造を支援する本システムと、付加製造装置ユーザ(以下、AM装置ユーザという場合がある)と、が含まれている。
【0012】
廃棄材提供者は、様々な成分を含む廃棄材を回収し、リサイクラに提供(搬送)する組織(例えば、会社等の法人、協会および団体、個人を含む概念)である。なお、廃棄材の出もとは、例えば自動車や家電などであり、廃棄材には様々な成分の材料が含まれている。
【0013】
リサイクラは、廃棄材提供者から受け取った廃棄材を粉砕したり、所定の収集条件(例えば、廃棄材の成分の種類)に基づき分別したり、あるいは廃棄材からリサイクル材(例えば、材料ペレットなど)を生産したりする組織である。また、リサイクラは、廃棄材(以下、材料ペレット等のリサイクル材を含む)を本システムに提供する。なお、リサイクラは廃棄材の粉砕や、収集、分別を他の組織に任せても良い。
【0014】
本システムは、AM装置で使用されるAM用材料を適切に製造するための第1の製造パラメータ(以下、AM用材料の製造レシピという場合がある)と、AM用材料を用いてAM装置で製品を適切に製造するための第2の製造パラメータ(以下、AM装置設定情報という場合がある)と、を生成するシステムである。
【0015】
なお、本システムは、廃棄材の物性値を測定し、測定結果を用いて、第1の製造パラメータを生成する。また、本システムは、第1の製造パラメータを用いて廃棄材から製造されたAM用材料の物性値を測定し、測定結果を用いて、第2の製造パラメータを生成する。
【0016】
AM装置は、付加製造を行うことができる装置である。AM装置は、本システムにより廃棄材から製造されたAM用材料を用いて、例えばSLS(Selective Laser Sintering:粉末焼結積層造形)により製品の付加製造を行う。以後の説明では、この粉末焼結積層造形を想定した説明を行う。
【0017】
なお、3Dプリンター(AM装置)によって製造される製品は、例えば自動車、鉄道、建設機器、医療機器あるいは家電に適用することができる。
【0018】
また、本エコシステムでは、図示するように、AM装置による付加製造時の予熱で物性値が変化した(劣化した)AM用材料についても再生されて再利用される。具体的には、AM装置で使用された使用済みのAM用材料は、再度、本システムでその物性値が測定され、かかる物性値に基づく第1の製造パラメータを用いてAM用材料として再生され、再びAM装置で使用される。
【0019】
<ロットの関係>
なお、本実施形態では、廃棄材ロット(廃棄材のロット)、AM用材料の製造ロット、AM用材料の出荷ロットという用語を用いる。その意味は、一般的なロットの意味であるが、念のために記載すると以下である。
*廃棄材ロット:リサイクラから送られる廃棄材(前述の通り、材料ペレット等のリサイクル材を含む)の管理単位である。リサイクラで廃棄材の出荷単位ごとのロット管理をしている場合は、当該ロットと一致させても良い。
*AM用材料の製造ロット:1以上の廃棄材ロットを用いて製造されたAM用材料の管理単位である。製造ロットIDが同じAM用材料であれば、同じ製造工程や製造パラメータで製造されたことを意味する。
*AM用材料の出荷ロット:AM用材料を、外部のユーザ(例えばAM装置ユーザ)に出荷する搬送単位(例えば、搬送容器に入れられたAM用材料)である。
なお、文脈から明らかな場合は、AM用材料の製造ロットは省略して製造ロットと呼ぶことがある。
【0020】
<廃棄材からAM用材料を製造することが難しい理由>
廃棄材(例えば、製品を粉末状に砕いたもの)には、様々な物性の材料が混合されている。そのため、廃棄材は、その収集条件(例えば、廃棄材となる前の製品種類等に応じた分別の仕方など)に加え、廃棄材となる前の製品時における使用年数や使用環境によっても物性が変化する。そのため、廃棄材は、そのロット(廃棄材を管理する単位)ごとに物性が一律ではなく(所定の誤差範囲に収まらず)、相互に異なっているのが通常である。また、廃棄材の元となった製品は、その製造過程(例えば、射出成形)において添加剤(一例では、後述のフィラや結晶化促進剤など)が混入されている場合がある。
【0021】
そのため、廃棄材は、物性が一律で安定しているバージン材と比べて、廃棄材ロット間の物性値の差が大きい。それ故、廃棄材で製造されるAM用材料の製造ロットも物性値が製造ロット間で差が大きくなってしまう(言い方を変えると、目標とする物性値(より正確には目標とする物性値の範囲である)に製造ロットの物性値を適合させることが難しい、とも言える)。その結果、複雑な形状の製品を製造する付加製造に廃棄材から製造されたAM用材料を用いる場合、例えば反りが発生する等、製品の形状を維持することが困難であった。
【0022】
また、例えば金型を用いた成形(例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形)によって製造された履歴を持つ廃棄材は、成形速度を向上させるために結晶化促進剤が含まれており、通常用いられるSLS用の材料と比べて結晶化速度が速くなる場合がある。そのため、このような履歴を持つ廃棄材がSLSの材料に用いられると、積層造形中の結晶化が進み過ぎ、収縮による反りが発生して形状誤差が生じてしまい、製品の品質を安定させることが困難であった。
【0023】
本実施形態に係るシステムは、このような廃棄材の特性に着目し、廃棄材の物性値に応じて、AM装置で適切に用いることができるAM用材料を生成するための第1の製造パラメータ(AM用材料の製造レシピ)を生成するものである。また、本システムは、第1の製造パラメータに基づき廃棄材から製造したAM用材料を、AM装置で適切に扱うための第2の製造パラメータ(AM装置設定情報)を生成するものである。
【0024】
このようなシステムによれば、少なくとも以下の1つの効果を得ることができる。
(効果1:AM用材料メーカー視点)安定した品質のAM用材料を製造することができる。
(効果2:AM装置ユーザ視点)リサイクル材の含有比率を要件に含む調達規制をクリアしつつ、AM装置によって安定した品質の製品を継続して製造することができる。
(効果3:社会的視点)AM装置ユーザが継続的に製品を製造することで、廃棄材のリサイクル量を増加させることができる。また、例えば複雑な形状の製品を製造可能なAM装置による製造で、意匠面からの付加価値を製品に与えることができる。その結果、リサイクルベース製品(廃棄材やリサイクル材を用いて製造された製品)の利用者に製品への愛着を持ってもらい、廃棄材となるまでの期間を長くすることができる。
【0025】
<<AM用材料およびAM用材料を用いたAM装置による製品製造を支援する本システムの詳細>>
図2は、本システムの概略構成の一例を示した図である。図示するように、本システムは、物性調整装置10と、物性測定装置20と、プロセッサシステム100と、を有している。
【0026】
物性測定装置20は、廃棄材の物性値である第1の物性値、および、廃棄材から製造されたAM用材料の物性値である第2の物性値を測定する装置である。具体的には、物性測定装置20は、第1の物性値として、廃棄材の結晶化速度、および、凝固収縮量等を測定する。なお、物性測定装置20は、1以上の装置の集合体であっても良い。
【0027】
より具体的には、物性測定装置20は、例えばDSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)装置である。物性測定装置20は、一定温度に保った廃棄材の結晶化が進む際の熱量の変化を測定する等温DSCを実施し、廃棄物の結晶化速度を示す測定結果を物性値として取得する。
【0028】
また、物性測定装置20は、例えばPVT(Pressure Volume Temperature)測定装置である。具体的には、物性測定装置20は、PVT測定を実施し、温度と圧力を変えながら廃棄材の体積を変え、凝固した前後の体積変化を測定することで、廃棄物の凝固収縮量を示す測定結果を物性値として取得する。
【0029】
なお、第1の物性値は、例えば廃棄材の粉末粒径や密度(重量)を示す値であっても良い。
【0030】
また、物性測定装置20は、第1の物性値と同様の方法により、廃棄材から製造されたAM用材料の物性値である第2の物性値を測定し、AM用材料の結晶化速度および凝固収縮量等を取得する。
【0031】
なお、物性測定装置20は、廃棄材のロットごとに第1の物性値を測定する。また、物性測定装置20は、AM用材料の製造ロットごとに第2の物性値を測定する。なお、第2の物性値の測定は、AM用材料の出荷単位である出荷ロットごとに測定しても良く、廃棄材のロットごとに測定しても良い。
【0032】
物性調整装置10は、AM用材料を製造する装置である。具体的には、物性調整装置10は、プロセッサシステム100により生成された第1の製造パラメータを用いて、廃棄材からAM用材料を製造する。そのため、物性調整装置10は、AM用材料を製造する製造装置とも言える。なお、後述するように、第1の製造パラメータは、廃棄材を用いて製造されるAM用材料がAM装置で適切に用いることができる所定の物性値の範囲内となるように廃棄材に追加される結晶化遅延剤またはフィラの追加量を示す値である。また、第1の製造パラメータには、結晶化遅延剤およびフィラの両方の追加量がセットで含まれていても良い。なお、結晶化遅延剤は、結晶化速度を遅延させる性質を持つ添加剤である。
【0033】
なお、第1の製造パラメータを用いて物性調整装置10で製造されるAM用材料は、その一例として、PBT(Polybutyleneterephthalate)、PA(Polyamide)、PP(Polypropylene)、PET(Polyethyleneterephthalate)およびPPS(Polyphenylenesulfide)や、粉末状の樹脂を含む材料等である。
【0034】
<プロセッサシステム100の詳細>
プロセッサシステム100は、メモリリソース40に格納された各種プログラムをプロセッサ30が読み込むことにより、第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータの生成と、物性測定装置20、物性調整装置10およびAM装置との情報通信(情報の送受信)と、これら以外の各種処理と、を行うシステムである。
【0035】
なお、プロセッサシステム100は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末(コンピュータ)、スマートフォン、サーバ計算機、ブレードサーバ、クラウドサーバなどの計算機であり、少なくともこれら計算機を1つ以上含むシステムである。すなわち、プロセッサシステム100は、例えばクラウドサーバと、表示用のタブレット端末またはスマートフォンと、を含むクラウドシステムも包含する。
【0036】
具体的には、プロセッサシステム100は、図2に示すように、プロセッサ30と、メモリリソース40と、NI(Network Interface Device)50と、UI(User Interface Device)60と、を有している。
【0037】
プロセッサ30は、メモリリソース40に格納されている各種プログラムを読み込んで、各プログラムに対応する処理を実行する演算装置である。なお、プロセッサ30は、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing UNIT)、GPU(Graphics Processing UNIT)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはその他の演算できる半導体デバイスが一例である。
【0038】
メモリリソース40は、各種情報を記憶する記憶装置である。なお、メモリリソース40は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの不揮発性あるいは揮発性の記憶媒体である。なお、メモリリソース40は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクあるいはSSD(Solid State Drive)などの書き換え可能な記憶媒体や、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードおよびハードディスクであっても良い。
【0039】
NI50は、外部装置との間で情報通信を行う通信装置である。NI50は、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)など所定の通信ネットワーク網を介して外部装置(本実施形態では、物性測定装置20、物性調整装置10およびAM装置など)と相互通信可能に接続されている。なお、以下で特に言及しない場合、プロセッサシステム100と各装置との情報通信は、NI50を介して実行されているものとする。
【0040】
UI60は、ユーザ(オペレーター)の指示をプロセッサシステム100に出力する入力装置、および、プロセッサシステム100で生成した情報等を出力する出力装置である。入力装置には、例えばキーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイスや、マイクロフォンのような音声入力装置などがある。
【0041】
また、出力装置には、例えばディスプレイ、プリンター、音声合成装置などがある。なお、以下で特に言及しない場合は、プロセッサシステム100に対するユーザの操作(例えば、情報の入力、出力および処理の実行指示など)は、UI60を介して実行されているものとする。
【0042】
また、本システムの各構成、機能、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、本システムは、各機能の一部または全部を、ソフトウェアにより実現することもできるし、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。また、本システムは、固定的な回路を有するハードウェアを用いても良いし、少なくとも一部の回路を変更可能なハードウェアを用いてもよい。
【0043】
また、本システムは、各プログラムにより実現される機能や処理の一部または全部をユーザ(オペレータ)が実施することで、システムを実現することもできる。
【0044】
なお、以下で説明するメモリリソース40内の各DB(データベース)は、データを格納できる領域であれば、ファイル等やデータベース以外のデータ構造であっても良い。
【0045】
<<構成情報DB110>>
構成情報DB110は、AM装置の構成に関する情報を格納するデータベースである。AM装置の構成には、例えばAM装置の種類や各種機構に関する情報(例えば、AM用材料の加熱用レーザの位置、最大出力値、AM用材料の供給機構のサイズおよび位置、粉末状のAM用材料を均すローラのサイズ、位置および駆動方向、AM用材料の予熱ヒータの設定可能温度など)が含まれている。
【0046】
<<対応関係記録DB120>>
対応関係記録DB120は、廃棄材ロット、第1の物性値、AM用材料の製造ロット、第1の製造パラメータ、第2の物性値、第2の製造パラメータおよびAM用材料の出荷ロットの対応関係を示す情報を格納するデータベースである。
【0047】
具体的には、対応関係記録DB120には、以下の対応関係を示す情報が格納されている。
(A)廃棄材ロットの識別情報(IDと記載することがある)と第1の物性値(複数でも良い)の識別情報のペア、のリスト。
(B)(A)が指し示す廃棄材を用いて製造されたAM用材料の製造ロットの識別情報。
(C)(B)が指し示すAM用材料の製造ロットを製造するための第1の製造パラメータの識別情報。
(D)(B)が指し示すAM用材料の製造ロットの第2物性値(複数でも良い)の識別情報。
(E)(B)が指し示すAM用材料の製造ロットに対応する出荷ロットの識別情報のリスト。
なお、上記は廃棄材ロット、AM用材料の製造ロット、AM用材料の出荷ロットとの関係が、多:1:多、の関係を想定した情報の具体例である。複数の廃棄材ロットをまとめてAM用材料を製造した場合、1製造ロットの量が出荷単位としては多くなりすぎるため、複数の出荷ロットに分けて出荷することが想定されるからである。
【0048】
なお、対応関係記録DB120が想定する、廃棄材ロット、AM用材料の製造ロット、および、AM用材料の出荷ロットの関係は上記に限られず、1:1:1(又は多)、多:1:1、あるいは、1:多:多であってもよい。1:1:1(又は多)の関係は、廃棄材ごとの特性を考慮した第1の製造パラメータを生成し、当該パラメータを用いることで製造されるAM用材料の特性均一化が期待できる。
【0049】
<<製品形状情報DB130>>
AM用材料を用いてAM装置で製造される製品の形状を示す情報を格納するデータベースである。
【0050】
<<物性値情報DB140>>
物性値情報DB140は、物性測定装置20で測定された廃棄材の物性値である第1の物性値と、廃棄材を用いて製造されたAM用材料の物性値である第2の物性値と、を格納するデータベースである。
【0051】
具体的には、物性値情報DB140は、第1の物性値として、廃棄材の結晶化速度、凝固収縮量、粉末粒径および密度(重量)のうち、少なくともいずれか1つ、または、これらのうちの2つ以上が含まれるセットを少なくとも1つ以上格納している。ただし、第1の物性値はこれらに限定されるものではない。例えば、廃棄材の物性値と反り量との相関性を第1の物性値としても良い。なお、廃棄材の物性値と反り量との相関性は、例えば事前に測定した廃棄材の物性値と、かかる廃棄材からAM用材料を製造し、そのAM用材料を用いてAM装置で粉末焼結積層造形を試行することで得られたサンプル製品の反り量と、に基づいて算出されれば良い。
【0052】
また、物性値情報DB140には、第2の物性値として、例えばAM用材料の結晶化速度、凝固収縮量、密度(重量)のうち、少なくともいずれか1つ、または、これらのうちの2つ以上が含まれるセットを少なくとも1つ以上格納している。なお、第2の物性値はこれらに限定されるものではない。
【0053】
なお、第1の物性値および第2の物性値は各々、第1の物性値の識別情報および第2の物性値の識別情報に対応付けられて物性値情報DB140に格納されているものとする。
【0054】
<<製造パラメータ情報DB150>>
製造パラメータ情報DB150は、AM用材料の製造に用いられる製造レシピに相当する第1の製造パラメータと、AM用材料をAM装置で使用するためのAM装置の設定情報に相当する第2の製造パラメータと、を格納するデータベースである。なお、第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータは各々、第1の物性値および第2の物性値を用いて、後述の製造支援プログラム160を読み込んだプロセッサ30により生成される。また、生成された第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータは各々、第1の製造パラメータの識別情報および第2の製造パラメータの識別情報に対応付けられて製造パラメータ情報DB150に格納されているものとする。
【0055】
<<<第1の製造パラメータ>>> 具体的には、製造パラメータ情報DB150は、第1の製造パラメータとして、例えば結晶化遅延剤の追加量に関する値、フィラの追加量に関する値のうち、少なくともいずれか一方、または、これらを1つのセットとして格納している。なお、これらの追加量は、絶対値であっても良く、廃棄材の量に対する割合であっても良い。
【0056】
<<<第2の製造パラメータ(AM装置への設定可能な項目)>>>
また、製造パラメータ情報DB150は、第2の製造パラメータとして、AM装置のコントローラに設定可能な項目、例えばAM装置のレーザパワーおよび予熱温度を格納している。なお、レーザパワーは、AM用材料を用いた粉末焼結積層造形を行う3Dプリンター(本願のAM装置)において、レーザ機構(AM用材料の加熱用レーザを出射するレーザ光源)により粉末状のAM用材料が薄く敷かれた床(以下、造形床という場合がある)に照射されるレーザ光の出力強度である。かかる3Dプリンターは、造形床上のAM用材料にレーザ光を照射することで、AM用材料を選択的に溶融、凝固させ、自由造形を実現する。また、予熱温度は、造形床に敷かれた粉末状のAM用材料の結晶化温度を制御するために、AM装置が備える予熱ヒータが造形中のオブジェクト、AM用材料を加熱する際の装置(ヒータ)の温度である。なお、より好ましくは、予熱温度は、図1のAM装置の中心の円環を含む領域(部屋)AM02の温度である。当該部屋には、造形中のオブジェクトが、レーザで溶融されなかったAM用材料と共に格納されている。なお、ヒータは、造形中のオブジェクトの温度を制御できれば、直接造形中のオブジェクトを加熱しても良く、当該部屋のAM用材料を介して造形中の製品を加熱してもよい。また、本明細書では「オブジェクト」という言葉を使うが、この言葉はAM装置により製造される存在を指し、製品や製品を構成する部品を指す。当該予熱温度、レーザパワーは、AM装置のコントローラAM01に対して設定され、設定されたコントローラAM01は、AM装置のレーザ光源やヒータを制御する。
【0057】
前述の制御により、造形中の結晶化速度(より具体的には結晶化による収縮量)の制御を行うことができ、結果として、反りの発生の軽減が可能となる。
【0058】
<<<第2の製造パラメータ(スライサーソフトへの設定可能な項目)>>>
なお、AM装置ユーザが、図1で図示を省略したスライサーソフト(又はスライサーソフトを実行中のプロセッサシステム)を用いている場合、第2の製造パラメータとして、スライサーソフトの設定値を格納しても良い。なお、スライサーソフトは、オブジェクトの3D形状データに基づき3Dプリンター用のスライス情報(例えば、Gコード)を生成するソフトウェアである。AM装置のコントローラAM01は、生成されたスライス情報を通信またはユーザの操作で受信し、当該情報に基づいて、AM装置のレーザ光源、ローラ、造形床の動作を制御する。
【0059】
スライサーソフトは、スライス情報を生成するための設定値として、以下を保持している。ただし、すべてを保持している必要はない。
*スライス(オブジェクトの輪切り状)の間隔(オブジェクトの輪切り状の層厚み)。なお、典型的には、オブジェクトは造形床と平行に切られてスライスとなる。
*オブジェクトの造形角度(より正確には、オブジェクトの3D形状データが前提とするXYZ軸のいずれかと、造形床(つまりスライスの面)との角度)。
*造形床上におけるオブジェクトの造形位置(配置)。
*造形できるオブジェクトの最大長さ。
【0060】
なお、製造パラメータ情報DB150には、これらスライサーソフトの設定値が第2の製造パラメータとして格納されていても良い。結晶化に由来する収縮がより顕著になるのは、オブジェクトをスライスに分解したときの各スライスの最も長い箇所であるため、前述の設定値の制御を行うことで、反りに由来する製品形状の変化を軽減することができる。
【0061】
<<製造支援プログラム160>>
製造支援プログラム160は、廃棄材を用いてAM装置による製品製造を支援するためのプログラムである。具体的には、製造支援プログラム160は、第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータを生成する。なお、製造支援プログラム160は、第1の製造パラメータ生成用のプログラムと、第2の製造パラメータ製造用のプログラムと、の集合であっても良い。そして、製造支援プログラム160は、どちらか片方のプログラムのみであっても良い。なお、製造支援プログラム160は、第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータと、その識別情報とを、製造パラメータ情報DB150に格納する。また、製造支援プログラム160は、第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータの識別情報を、対応関係記録DB120に格納する。
【0062】
より具体的には、製造支援プログラム160は、物性測定装置20から取得した第1の物性値を用いて、廃棄材ロットから製造するAM用材料(の製造ロット)がAM装置で適切に用いることができる所定の物性値の範囲内となるように、結晶化遅延剤やフィラの追加量を算出する。なお、この結晶化遅延剤やフィラの追加量が第1の製造パラメータであり、AM用材料の製造レシピとなる。
【0063】
また、製造支援プログラム160は、第1の製造パラメータを用いたAM用材料の製造指示を物性調整装置10に出力(送信)する。なお、本明細書における出力とは、他の装置への送信以外も指す。例えば、出力は、物性調整装置10のオペレータが利用する表示用計算機に当該パラメータを表示させることでも良い。また、出力の他の例は、当該オペレータのために、当該パラメータを紙に印刷することでも良く。出力は、物性調整装置10に直接または間接的に第1の製造パラメータを入力できるのであれば、どのような具体的手段であっても良い。なお、当該出力には、製造に用いる廃棄材ロットの識別情報、AM用材料の製造ロットに付与される製造ロットの識別情報が含まれても良い。
【0064】
また、製造支援プログラム160は、物性測定装置20から取得した第2の物性値を用いて、AM用材料の製造ロット(又は出荷ロット)を用いてAM装置で適切に製品を製造するためのレーザパワーおよび予熱温度を算出する。なお、このレーザパワーおよび予熱温度が第2の製造パラメータである。なお、製造支援プログラム160は、温度が高い順に融点(凝固点)>結晶化温度の関係が成立する前提で、予熱温度が融点と結晶化温度との間の温度となるように第2の製造パラメータを生成する。結晶化温度は結晶化速度が最も速い温度であるため、結晶化温度を超えていたとしても、結晶化は進むからである。ただし、結晶化温度より離れると、結晶化速度は遅くなる。
【0065】
また、製造支援プログラム160は、第2の製造パラメータを出力する。なお、当該出力は、AM装置ユーザが所有するAM装置やスライサーソフトに当該パラメータを入力できれば、どのような具体的手段であっても良い。なお、以下がその一例である。
*(図1の例)AM装置ユーザから、AM装置の構成情報と、AM用材料の製造ロットまたは出荷ロットと、を含むリクエストを、プロセッサシステム100が受信する。その後、プロセッサシステム100が、第2の製造パラメータをAM装置ユーザの表示用計算機に送信する。
*AM用材料の出荷ロットと、第2の製造パラメータを出力した媒体(紙や不揮発メモリが例)と、をまとめて出荷する。
【0066】
なお、製造支援プログラム160による第1の製造パラメータと第2の製造パラメータとの生成単位は、対応関係記録DB120で述べた通りである。
【0067】
また、製造支援プログラム160は、第1の物性値に基づいて、AM用材料の所定の製造ロットの製造で用いる廃棄材ロットを、複数の廃棄材ロットの候補から選択しても良い。AM用材料の製造ロットごとに、目標とする第2の物性値の範囲を変化させる場合には、より適した廃棄材を選択することで、過剰な添加剤の追加を回避することができる。例えば、AM装置ユーザが所有するAM装置の構成情報に基づいて、目標とする第2の物性値の範囲を変化させることが考えられる。
【0068】
なお、製造支援プログラム160は、例えば所定の演算式(例えば2次関数など)で示される関数に対して、予め基礎実験などの物理シミュレーションを実施することで関数の係数を算出し、算出した係数を含む演算式に第1の物性値や第2の物性値を入力することで第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータを算出する。なお、第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータの算出方法については特に限定されるものではない。
【0069】
また、製造支援プログラム160は、物性測定装置20から第1の物性値および第2の物性値を取得すると、これらを物性値情報DB140に格納する。また、前述の通り、製造支援プログラム160は、生成した第1の製造パラメータおよび第2の製造パラメータを製造パラメータ情報DB150に格納する。なお、一部は説明済みだが、製造支援プログラム160は、第1の製造パラメータに基づきAM用材料の製造指示を物性調整装置10に出力しても良い。また、製造支援プログラム160は、物性調整装置10で製造されたAM用材料を用いて、第2の製造パラメータに基づく製品の製造指示をAM装置に出力しても良い。また、実際の製造指示は、製造支援プログラム160以外のオペレータやプログラムが判断し、指示を出しても良い。
【0070】
以上、プロセッサシステム100の詳細について説明した。
【0071】
<製造支援処理のフロー>
図3および図4は、製造支援処理の一例を示したフロー図である。具体的には、図3は、AM用材料の製造パラメータの生成に関する製造支援処理の一例を示した図である。また、図4は、AM用材料を用いた付加製造の製造パラメータの生成に関する製造支援処理の一例を示した図である。
【0072】
<<図3の第1の製造パラメータ生成と出力>>
図3の製造支援処理は、例えばNI50を介してプロセッサシステム100のユーザ(オペレーター)から処理の実行指示を受け付けると、製造支援プログラム160を読み込んだプロセッサ30により実行される。なお、ユーザからの実行指示には、例えばAM用材料の製造に用いる廃棄材ロットを指定する情報が含まれても良い。
【0073】
製造支援処理が開始されると、プロセッサ30は、対応関係記録DB120を参照しつつ、指定された廃棄材ロットに対応する第1の物性値を物性値情報DB140から取得する(ステップS10)。また、プロセッサ30は、取得した第1の物性値を用いて、AM用材料の所定の製造ロットに関する第1の製造パラメータを生成する(ステップS20)。具体的には、プロセッサ30は、指定された廃棄材から製造されるAM用材料がAM装置で適切に用いることができる所定の物性値の範囲内となるように、結晶化遅延剤やフィラの追加量を第1の製造パラメータとして算出する。
【0074】
また、次に、プロセッサ30は、生成した第1の製造パラメータを出力する(ステップS30)。なお、このステップで、併せて、指定されたロットの廃棄材からAM用材料を製造する指示を出力しても良い。また、プロセッサ30は、かかるステップの処理を行うと、本フローの処理を終了する。
【0075】
なお、各ステップで行われる処理は、本フロー図より前に説明した内容が行われても良い。本処理の実行開始契機や指定情報についても同様である。
【0076】
<<図4の第2の製造パラメータ生成と出力>>
図4の製造支援処理は、前述の通り、NI50を介してAM装置ユーザ(又はAM装置ユーザの表示用計算機)からリクエストを受け付けると、製造支援プログラム160を読み込んだプロセッサ30により実行される。
【0077】
プロセッサ30は、対応関係記録DB120を参照しながら、物性調整装置10で製造されたAM用材料の製造ロット(出荷ロットでも良い)に関する第2の物性値を物性値情報DB140から取得する(ステップS40)。また、プロセッサ30は、取得した第2の物性値を用いて第2の製造パラメータを生成する(ステップS50)。具体的には、プロセッサ30は、AM用材料を用いてAM装置で適切に製品を製造するためのレーザパワーおよび予熱温度を第2の製造パラメータとして算出する。なお、プロセッサ30は、AM装置で使用されるスライサーソフトの設定値を第2の製造パラメータとして生成しても良い。
【0078】
また、次に、プロセッサ30は、第2の製造パラメータを出力し(ステップS60)、本フローの処理を終了する。
【0079】
以上が処理である。なお、各ステップで行われる処理は、本フロー図より前に説明した内容が行われても良い。本処理の実行開始契機や指定情報についても同様である。
【0080】
このような本実施形態に係るシステムによれば、廃棄材を用いて安定した品質の付加製造用材料を製造可能とすることで、マテリアルリサイクルの実現に貢献することができる。特に、本システムによれば、廃棄材ロットごとに変化する(異なる)結晶化速度と凝固収縮量に応じて、反りを軽減(抑制)する好適な量の結晶化速度遅延剤またはフィラの追加量を得ることができ、安定した品質のAM用材料を製造することができる。また、本システムによれば、AM用材料の製造による調整では吸収しきれない製造ロットごとの個体差に適したAM装置での製造パラメータ(第2の製造パラメータ)を得ることができるため、パラメータ調整のための試作回数を低減することもできる。なお、吸収しきれない理由としては、環境規制や、コスト視点で添加剤の追加量の上限が存在したり、又はAM用材料の製造工程の誤差が存在する場合が一つの理由である。
【0081】
また、本システムによれば、リサイクル材の含有比率を要件に含む調達規制をクリアしつつ、AM装置によって安定した品質の製品を継続して製造することができる。また、本システムによれば、AM装置のユーザが継続的に製品を製造することで、廃棄材のリサイクル量を増加させることができる。また、本システムによれば、複雑な形状の製品を製造可能なAM装置による製造で、意匠面からの付加価値を製品に与えることができ、リサイクルベース製品(廃棄材やリサイクル材を用いて製造された製品)の利用者に製品への愛着を持ってもらうことで、廃棄材となるまでの期間を長くすることができる。
【0082】
なお、前述した押出成形によって製造された製品履歴を持つ廃棄材(押出成形により成形された物品の廃棄材を主成分とする材料、または、かかる廃棄材を主成分として製造された材料ペレット)は、例えばブロー成形や射出成形の場合に比べて結晶化促進剤やフィラの含有量が少ない。これは、押出成形がブロー成形や射出成形に比べて遅い結晶化速度でも製造が可能であることに起因する。そのため、押出成形由来の廃棄材を積極的に用いることで、AM用材料の製造時に必要となる結晶化遅延剤やフィラの追加量を節約することができ、その結果、AM用材料の製造コストおよび製品の製造コストを低減することができる。
【0083】
なお、押出成形由来の廃棄材を判別する方法の一例としては、例えば廃棄材の外形に基づき判別する方法がある。押出成形品は、比較的、細長い形状である場合が多いため、このような特徴に基づく判別方法が一つの有効な方法である。なお、自動判別の方法の一つとしては、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラによる廃棄材の撮像画像を解析することが考えられる。
【0084】
また、別の判別方法としては、例えば廃棄材の提供組織あるいはリサイクラから廃棄材の組成や、廃棄材となる前の製品に関する成形方法などの情報提供を受ける方法がある。また、別の判別方法としては、例えば押出成形由来の廃棄材を主に提供する提供組織やリサイクラからの廃棄材を専用に管理することも有効である。
【0085】
<バリエーション>
以上、本実施形態について説明してきた。なお、本実施形態には、以下のバリエーションが考えられる。
*AM用材料や廃棄材の主成分は樹脂以外であっても良い。例えば、金属やグラフファイバー、カーボンファイバー、セラミックス、無機材料、ゴム、である。
*SLS以外の付加製造の造形方式を採用してもよい。例えば、材料押出堆積法、マテリアルジェッティング、バインダージェッティング、光造形方式、である。
*AM装置で1以上予熱されて劣化した材料を、物性調整装置10で調整し、再生したAM用材料として、再びAM装置ユーザに出荷しても良い。この場合の物性調整装置10は、熱劣化した物性を回復させる添加剤を追加する。
*AM装置ユーザに出荷するAM用材料は、廃棄材由来のAM用材料に加えて、前述の再生したAM用材料、又はバージンの材料ペレット由来のAM用材料を混ぜた材料をAM用材料として出荷しても良い。廃棄材由来のAM用材料だけでは好適な品質まで調整しきれない場合に好適である。
【0086】
また、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、同一の技術的思想の範囲内において様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0087】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0088】
100・・・プロセッサシステム、30・・・プロセッサ、40・・・メモリリソース、50・・・NI(ネットワークインターフェースデバイス)、60・・・UI(ユーザインターフェースデバイス)、110・・・構成情報DB、120・・・対応関係記録DB、130・・・製品形状情報DB、140・・・物性値情報DB、150・・・製造パラメータ情報DB、160・・・製造支援プログラム、10・・・物性調整装置、20・・・物性測定装置、N・・・ネットワーク
図1
図2
図3
図4