(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062432
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/30 20230101AFI20230426BHJP
【FI】
G06Q10/00 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172410
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中土 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】森 俊介
(72)【発明者】
【氏名】助口 聡
(72)【発明者】
【氏名】島田 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】能島 雅史
(72)【発明者】
【氏名】岩村 卓成
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サーキュラーエコノミーのコンセプトに沿った、好適な廃棄材の好適な循環に貢献するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するエコシステムにおけるデザイン支援処理であって、メモリリソースは、第1プログラム及び第2プログラムと、連携プログラムと、を記憶し、廃棄材を用いて製造されたリサイクル材の在庫又は受注を管理するCRMプログラムと、一部に廃棄材を用いてリサイクル材を生産するために用いられるリサイクル材の生産レシピを生成するマテリアルズインフォマティクスプログラムと、リサイクル材を用いて製造される物品であるリサイクル材ベース物品を製造するために用いられる製造プロセスレシピの生成又は製造可否情報を生成する製品製造プロセスインフォマティクスプログラムと、を実行することで、リサイクル材ベース物品のデザインを支援する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステムであって、
前記メモリリソースは、第1プログラムおよび第2プログラム(いずれも以下から選択される)と、連携プログラムと、を記憶し、
*少なくとも、廃棄材を用いて製造されたリサイクル材の在庫又は受注を管理する、CRM(Customer Relationship Management)プログラムと、
*少なくとも一部に廃棄材を用いてリサイクル材を生産するために用いられるリサイクル材の生産レシピを生成する、マテリアルズインフォマティクスプログラムと、
*前記リサイクル材を用いて製造される物品であるリサイクル材ベース物品を製造するために用いられる製造プロセスレシピの生成、又は製造可否情報を生成する、製品製造プロセスインフォマティクスプログラムと、
*前記リサイクル材ベース物品のデザインを支援する、デザイン支援プログラム、
ここで、
前記プロセッサは、前記連携プログラムを実行することで、前記第1プログラムと、前記第2プログラムと、を連携させる、
システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、
前記廃棄材の来歴に関する廃棄材来歴情報を前記メモリリソースに記憶し、
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又は前記デザイン支援プログラムの出力情報は、前記廃棄材来歴情報に基づいて生成される、
システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1プログラムは、前記マテリアルズインフォマティクスプログラムであり、
前記プロセッサは、
前記廃棄材の来歴に関する廃棄材来歴情報を前記メモリリソースに記憶し、
少なくとも、前記廃棄材来歴情報と、前記生産レシピと、に基づいて、リサイクル材来歴情報を生成する、
システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1プログラムは、以下のいずれかであり、
*前記マテリアルズインフォマティクスプログラム、
*前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラム、
*前記デザイン支援プログラム、
前記プロセッサは、
前記リサイクル材又は前記廃棄材に関する物性値をメモリリソースに記憶し、
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又は前記デザイン支援プログラムの出力情報は、前記物性値に基づいて生成される、
システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、
前記リサイクル材の物性値に基づいて、マニュファクチャに出荷した当該リサイクル材の仕様に関するトラストデータを生成する、
システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1プログラムは、前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラムであり、
前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラムが前記製造プロセスレシピを作る場合において、
前記製造プロセスレシピは、マニュファクチャより取得した製造プロセス条件範囲に基づいて生成される、
システム。
【請求項7】
請求項3に記載のシステムであって、
前記リサイクル材ベース物品由来で生じた還流廃棄材を前記廃棄材とする場合、
前記プロセッサは、
前記還流廃棄材に関する前記廃棄材来歴情報を、前記リサイクル材ベース物品の材料となった前記リサイクル材来歴情報に基づいて生成する、
システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1プログラムは、前記CRMプログラムであり、
前記メモリリソースには、過去の前記リサイクル材に関する受注実績情報が記憶され、
前記CRMプログラムは、
前記受注実績情報に基づいて、必要となる前記リサイクル材の仕様および量の予測値を算出し、
前記予測値に基づいて、前記リサイクル材を生産するリサイクラへの生産指示を生成する、
システム。
【請求項9】
請求項2に記載のシステムであって、
前記廃棄材来歴情報は、
前記廃棄材となる前の前記リサイクル材から製造された前記リサイクル材ベース物品のシェアリングサービスを提供するシェアリング組織が管理する物品賃借情報に基づいて生成された情報である、
システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、
前記廃棄材となる前の物品が取り扱われた第1業界と、前記リサイクル材ベース物品を製造するマニュファクチャが属する第2業界と、は、異業種である、
システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、
前記第1プログラムは、以下のいずれかであり、
*前記マテリアルズインフォマティクスプログラム、
*前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラム、
*前記デザイン支援プログラム、
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又はデザイン支援プログラムの出力は、前記第2業界の物品にかかる規制情報に基づいて生成される、
システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又はデザイン支援プログラムの出力情報は、前記第1業界の前記廃棄材となる前の物品にかかる規制情報に基づいて生成される、
システム。
【請求項13】
請求項7に記載のシステムであって、
前記リサイクル材来歴情報には、
前記廃棄材となる前の装置または部品の様子を示すテキスト又は写真又は動画、又は、
リサイクル材の生産工程の写真または動画
が格納され、
マニュファクチャおよびその他の者は、
前記リサイクル材来歴情報に紐付けられているWebのURLにアクセスすることにより、当該リサイクル材来歴情報を参照できる、
システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、
前記リサイクル材ベース物品は、
賃借サービスであるシェアリング又は前記リサイクル材を用いた再製造であるリマニュファクチャリング、が可能な製品の外装部品である、
システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1プログラムは、前記デザイン支援プログラムであり、
前記デザイン支援プログラムの出力は、少なくとも以下のいずれか1つを含む、
*前記リサイクル材ベース物品の色、パターン、又は写真サンプル、
*指定又は候補として選択された前記リサイクル材の仕様、流通量、添加剤追加量、又はコスト、
*前記リサイクル材の来歴情報または前記廃棄材の来歴情報、
システム。
【請求項16】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステムにおける方法であって、
廃棄材の来歴に関する廃棄材来歴情報を、前記メモリリソースに記憶し、
前記プロセッサが、少なくとも一部に廃棄材を用いてリサイクル材を生産するために用いられるリサイクル材の生産レシピを、前記廃棄材来歴情報に基づいて生成する、
方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、
前記廃棄材に関する物性値を、前記メモリソースに記憶し、
前記生産レシピの生成は、さらに前記廃棄材に関する物性値に基づいて行われる、
方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、
前記生産レシピの生成は、前記廃棄材来歴情報及び前記物性値を、機械学習エンジンの入力に与えることで、行われる、
方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法であって、
前記生産レシピの生成は、前記物性値を、前記廃棄材来歴情報に基づいて補正する、ことで行われる、
方法。
【請求項20】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステムにおける方法であって、
リサイクル材の来歴に関するリサイクル材来歴情報を、前記メモリリソースに記憶し、
前記プロセッサが、少なくとも一部に前記リサイクル材を用いて物品を生産するために用いられる製造プロセスレシピを、前記リサイクル材来歴情報に基づいて生成する、
方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、
前記リサイクル材に関する物性値を、前記メモリソースに記憶し、
前記製造プロセスレシピの生成は、さらに前記リサイクル材に関する物性値に基づいて行われる、
方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法であって、
前記製造プロセスレシピの生成は、前記リサイクル材来歴情報及び前記物性値を、機械学習エンジンの入力に与えることで、行われる、
方法。
【請求項23】
請求項21記載の方法であって、
前記製造プロセスレシピの生成は、前記物性値を、前記リサイクル材来歴情報に基づいて補正する、ことで行われる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーキュラーエコノミーの推進に当たり、廃棄材から材料(マテリアル:Material)を製造するマテリアルリサイクルは、4R(Reuse(再利用)、Reduce(削減)、Repair(修理)およびRemanufacture(再製造))と並ぶ重要な概念である。
【0003】
特許文献1は、製品が廃棄されるときの分別技術について開示されている。具体的には、特許文献1には、「有用な資源を効率良く活用するため、製造物に、再使用・再利用し易いように分類、仕分けするための表示を持たせる」ことを目的として、「製造時の情報、使用時の情報及び保守や修理等の保全情報等を製品に持たせ、製品とは別に製品仕様データベースやリサイクル処理方法データベース等を設けて、それらの情報をもとに製品ごとのリサイクルを行う」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マテリアルリサイクルの視点で特許文献1を分析すると、当該文献1は、製品余寿命又は部品余寿命が短い製品を材料として再利用する、ことが開示されているに留まり、サーキュラーエコノミーにおいて重要なその後の工程について開示されていない。
【0006】
よって、特許文献1に開示の技術では、サーキュラーエコノミーのコンセプトに沿った、好適な廃棄材の好適な循環に貢献することは難しい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サーキュラーエコノミーのコンセプトに沿った、好適な廃棄材の好適な循環に貢献することを目的とする。なお、本明細書のその他の目的は、実施形態にて明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。
上記の課題を解決する本発明の一態様に係るシステムは、1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有し、
前記メモリリソースは、第1プログラムおよび第2プログラム(いずれも以下から選択される)と、連携プログラムと、を記憶し、
*少なくとも、廃棄材を用いて製造されたリサイクル材の在庫又は受注を管理する、CRM(Customer Relationship Management)プログラムと、
*少なくとも一部に廃棄材を用いてリサイクル材を生産するために用いられるリサイクル材の生産レシピを生成する、マテリアルズインフォマティクスプログラムと、
*前記リサイクル材を用いて製造される物品であるリサイクル材ベース物品を製造するために用いられる製造プロセスレシピの生成、又は製造可否情報を生成する、製品製造プロセスインフォマティクスプログラムと、
*前記リサイクル材ベース物品のデザインを支援する、デザイン支援プログラム、
ここで、
前記プロセッサは、前記連携プログラムを実行することで、前記第1プログラムと、前記第2プログラムと、を連携させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サーキュラーエコノミーのコンセプトに沿った、好適な廃棄材の好適な循環に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】サーキュラーエコノミーに関連するエコシステムに含まれる組織を示した概要図である。
【
図2】M&Dサプライヤ組織が有する装置および設備を示す図である。
【
図3】リサイクル材の生産レシピの生成に用いられるInputデータおよびOutputデータの一例を示した図である。
【
図4】リサイクル材ベース物品の製造レシピの生成に用いられるInputデータおよびOutputデータの一例を示した図である。
【
図5】デザインの表示画面の一例を示した図である。
【
図6】デザイン支援処理の一例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
<エコシステムを構成する組織>
図1は、サーキュラーエコノミーに関連するエコシステムに含まれる組織を示した概要図である。エコシステムには、マニュファクチャ組織(以下、マニュファクチャという場合がある)、シェアリング組織、マテリアルアンドデータサプライヤ組織(以下、M&Dサプライヤという場合がある)、回収組織、そしてリサイクル組織(以下、リサイクラという場合がある)、が含まれる。なお、エコシステムには、これらすべての組織が含まれている必要はない。また、エコシステムでは、ある組織が他の組織の役割を兼任してもよい。なお、組織は、例えば会社等の法人、協会および団体などを含む概念である。また、組織は、個人であっても良い。
【0013】
また、エコシステムには、同一種類の製品を作る複数のマニュファクチャが含まれても良い。また、エコシステムには、異なる種類の製品を作る複数のマニュファクチャが含まれても良い。例えば、第1マニュファクチャは、シェアリングサービスの対象製品を作る組織であり、第2マニュファクチャは、高デザイン製品を製造する組織であっても良い。また、第2マニュファクチャは、エシカル消費、ファン消費、又は応援消費に対応する製品を製造する組織であっても良い。なお、ファン消費、応援消費については後述する。また、本明細書で用いる物品とは、製品または部品を含む意味とする。さらに、本実施形態では、マニュファクチャ組織が作る物品は製品である場合を主に説明しているが、部品を製造する場合にも適用できる。
【0014】
<<各組織の役割>>
マニュファクチャ(組織)は、製品を製造し、市場や他の組織(
図1では、シェアリング組織)に製品を供給する組織である。具体的には、マニュファクチャは、リサイクル材を用いて製品を製造し、市場やシェアリング組織に製品を供給する。また、マニュファクチャは、製品来歴、部品来歴および材料来歴を含む廃棄材の来歴情報を管理し、例えばM&Dサプライヤからのリクエストに応じて、かかる来歴情報をM&Dサプライヤに提供する。なお、本明細書では、少なくともリサイクル材を用いて製造された物品(製品)を明記したい場合は、「リサイクル材ベース物品(製品)」と呼ぶ。また、本明細書では、バージン材を用いて製造された物品(製品)と明記したい場合は「バージン材ベース物品(製品)」と呼ぶ。なお、リサイクル材とバージン材の両方を用いて製造された物品は、リサイクル材ベース物品である。単に「製品」、「部品」、「物品」とした場合は、リサイクル材ベースか、バージン材ベースであるか、を問わない。ただし、説明文章を短くするため、文章の前後で明らかにリサイクル材ベースやバージン材ベースであることがわかる場合は、ベースを記載せずに単に「物品」、「製品」、「部品」と記載することがある。
【0015】
また、マニュファクチャは、製品等と、製品等の製造に用いた材料(例えば、リサイクル材)と、の対応を管理するための情報を保有する。なお、マニュファクチャは、製品から廃棄材、廃棄材からリサイクル材、リサイクル材から製品へと状態が遷移、還流する廃棄材の来歴を管理するために、廃棄材の来歴を識別するための識別情報をリサイクラに提供しても良い。
【0016】
シェアリング組織は、シェアリングサービスを提供する組織(提供者)である。シェアリング組織は、シェアリング対象の製品を当該組織の顧客に貸し出す。なお、貸し出しが終わった製品は、シェアリング組織が管理する場所(土地又は建物)に輸送される。
【0017】
また、シェアリング組織は、効率的なシェアリングのため、顧客情報と共に対象製品の保守や貸し出し来歴を物品賃借管理情報として、例えばシェアリング組織が有するプロセッサシステムのメモリリソースに格納して管理している。
【0018】
なお、シェアリング組織は、効率的な廃棄材(例えば、廃製品又は廃部品など)の回収への貢献に加えて、物品賃借管理情報を廃棄材の来歴情報にできる、というマテリアルリサイクルとしてのメリットを有する組織である。廃棄材の来歴情報の活用によるメリットついては後述する。
【0019】
なお、シェアリング組織は、必ずしも貸し出し対象製品の所有権を有さなくても良い。また、シェアリング組織は、顧客間での製品賃貸の仲介を行う組織であっても良い。その場合でも、シェアリング組織は、物品賃借管理情報である廃棄材の来歴情報を有し、顧客とのコネクションを持つことから、廃棄材の回収に貢献することができる。例えば、製品を所有する顧客が廃棄を決めた場合、シェアリング組織は、物品賃借管理情報に「貸し出し不可」や賃借年数あるいは製品の使用環境などを対応付けて更新することで、物品賃借管理情報を廃棄材の来歴情報にすることができる。また、シェアリング組織は、このタイミングで廃棄材の回収を提案することもできる。なお、シェアリング組織の例は、MaaS(Mobility as a Service)サプライヤ、レンタカー業者、家電、建築物、又は衣類を貸し出す組織である。
【0020】
回収組織は、廃棄材を回収し、リサイクラに搬送する組織である。なお、回収組織は、リサイクラの一部であっても良く、他の組織の一部であっても良い。
【0021】
また、回収組織は、回収に加えて、所定の基準に基づいて廃製品又は廃部品を分別(分解を伴っても良い)して別々の搬送ロットに入れる分別処理を行っても良い。すなわち、廃棄材は、廃製品(廃棄された物品の意味)又は廃部品を分解した物質であっても良い。
【0022】
リサイクラ(組織)は、回収組織から受け取った廃棄材からリサイクル材を生産する組織である。なお、リサイクラは、リサイクル材を生産する際に、添加剤を追加したり、バージン材を追加する場合もある。
【0023】
なお、本明細書では、「生産」と「製造」は行為主体をわかりやすくするために区別して用いている。「生産」はリサイクラによって何かを作る行為を指し、「製造」はマニュファクチャが何かを作る行為を指す。その点以外は、「生産」と「製造」は同じ意味である。よって、行為主体を明確にしなくてもよい場合は、リサイクラが何かを作る行為について「製造」を用いることもある。
【0024】
また、リサイクラは、回収組織が回収または分別した廃棄材について、かかる廃棄材に関する来歴の識別情報を対応付けて管理する。なお、リサイクラが廃棄材の来歴を識別する識別情報を取得する手段は特に限定されるものではない。例えば、リサイクラは、廃棄材の来歴を管理するマニュファクチャとの連携により、かかる識別情報を取得すれば良い。また、リサイクラは、前述の通り、シェアリング組織との連携で来歴情報を取得しても良い。エコシステム内におけるトレーサビリティを実現するためには、廃棄材と、廃棄材の来歴と、を紐付けて異なる組織間で管理することが必要となるからである。なお、本明細書における「取得」とは、行為主体が外部から何かしらを受信あるいは受け取ること、および、行為主体が計算、測定、特定あるいは選択などで何かしらを得ること、のどちらの意味も含むこととする。
【0025】
マテリアルアンドデータサプライヤ組織は、リサイクラとマニュファクチャ組織の間に位置する組織である。M&Dサプライヤは、モノとデータに関して以下のことを行う。
*モノ:リサイクル材のトレーディング(流通を制御)。なお、M&Dサプライヤは、流通の一環として在庫をもっても良い。
*データ:出荷したリサイクル材に関連したトラストデータ(例えば、品質や寿命に関する情報)、マニュファクチャへのコンサルティング関連情報(以下、リサイクル材ベース物品の製造レシピという場合がある)、リサイクラへのコンサルティング関連情報(以下、リサイクル材の生産レシピという場合がある)の生成。
【0026】
<<マテリアルアンドデータサプライヤ組織によるメリット>>
以上、開示した技術又は以下に開示する技術により、エコシステムは、下記の循環促進効果を授受することができる。その結果、エコシステムでのリサイクル材利用を促進することで、マテリアル循環量を向上させることができる。
【0027】
循環促進効果1a:廃棄材の物性が安定しない場合でも、M&Dサプライヤは、高品質なリサイクル材を流通させることができる。当該効果は、廃棄材の計測データに基づいてリサイクル材の生産レシピを生成することにより達成される。
【0028】
循環促進効果1b:廃棄材の物性と量の不安定さを、リサイクル材を用いた製造によって吸収しきれない場合でも、マニュファクチャによる製造プロセスを調整する手間を軽減することができる。その結果、当該調整の手間によるリサイクル材の使用中断を軽減することができる。当該効果は、リサイクル材ベース物品の製造に用いられる製造レシピの生成によって達成される。
【0029】
循環促進効果2:M&Dサプライヤは、エコシステム内で製品、廃棄材、リサイクル材、と形を変えて循環するモノのトレーサビリティを途切れさせないことに貢献する。当該効果は、リサイクル材の品質や寿命などを保証するトラストデータや、廃棄材の来歴情報の受信、および、リサイクル材の来歴情報の出力により達成される。
【0030】
循環促進効果3:M&Dサプライヤは、マニュファクチャの量的ニーズおよび仕様的ニーズにマッチするリサイクル材を提供することができ、ニーズにそぐわないリサイクル材の無駄な生産を低減させることができる。当該効果は、ニーズと廃棄材の量に基づいたリサイクル材の先行生産による適量な在庫量の積み増しにより達成される。
【0031】
循環促進効果4:M&Dサプライヤは、リサイクル材ベース物品のデザイン性の向上に貢献できる。これにより、デザインを重視する製品顧客への訴求力強化、および、製品顧客に製品への愛着を持ってもらうことにより、再び廃棄材となるまでの期間の延長を実現する。当該効果は、リサイクル材の情報を考慮した物品のデザインを支援する情報の出力により達成される。
【0032】
循環促進効果5(循環促進効果4とも関連):M&Dサプライヤは、デザイン向上による製品売値の高額化に貢献でき、マニュファクチャのリサイクル材の積極利用を強化する。当該効果は、リサイクル材ベース物品の製造前に、物品デザインを見える化およびリトライを繰り返し行えるようにデザイン支援を行うことで達成される。
【0033】
循環促進効果6:M&Dサプライヤは、エシカル消費、ファン消費を支えるストーリーの信頼性、リアリティを強化する。当該効果は、来歴情報にストーリーに関係する情報を含めることで達成される。
【0034】
なお、ファン消費は、少なくとも所定対象(例えば、電車などの公共交通機関、レース観戦)の愛好者による関連製品の消費(特にモノの購入)を意味する。また、応援消費は、このような対象に関するサービスを応援するために、愛好者や利用者がサービス提供者に直接的または間接的に資金を供給するために行う消費を指す。
【0035】
以下、上記の循環促進効果を提供するマテリアルアンドデータサプライヤ組織の詳細について、
図1~
図6を用いて説明する。
【0036】
<<マテリアルアンドデータサプライヤ組織(M&Dサプライヤ)の詳細>>
図2は、M&Dサプライヤが有する装置および設備を示す図である。M&Dサプライヤは、プロセッサシステム100と、倉庫10と、計測装置20と、を有している。なお、M&Dサプライヤは、必ずしもこれらすべてを有する必要はなく、例えば計測装置20を有していなくても良い。
【0037】
<<<倉庫10>>>
倉庫10は、リサイクラより納品されたリサイクル材を在庫として保有する設備である。継続的に製品を製造するマニュファクチャに対しては、リサイクル材を安定して迅速に供給することが望ましい。しかしながら、リサイクラは、望まれる種類および量のリサイクル材を提供するための大型の製造設備を持っているとは限らず、必要な種類の廃棄材を保有しているとも限らない。そのため、M&Dサプライヤは、リサイクル材の在庫を保管する倉庫10を有することが望ましい。
【0038】
なお、
図1に示すように、廃棄材は、モノとしてM&Dサプライヤを経由しない場合も考えられるが、M&Dサプライヤを経由させても良い。この場合、倉庫10は、廃棄材を一時保管する設備を兼用する。
【0039】
<<<計測装置20(オプション)>>>
リサイクラが十分な計測装置を有する場合、
図1に示すように、リサイクラが廃棄材の物性値を測定し、測定データをM&Dサプライヤに提供する。一方で、リサイクラが十分な計測装置を有していない場合、M&Dサプライヤは、計測装置20を用いて計測を代行することもできる。なお、以後の説明では、単に廃棄材の測定と記載するが、その意味として、廃棄材からリサイクル材に至る間の中間加工材の測定を含むものとしても良い。
【0040】
なお、計測装置20の用途は、廃棄材の物性値の測定以外にもリサイクル材の物性値の測定を行っても良い。また、M&Dサプライヤは、計測結果である物性値を、品質分析、品質管理およびトレーサビリティに用いるデータとして管理する。なお、廃棄材およびリサイクル材の物性値は、後述するリサイクル材の生産レシピおよびリサイクル材ベース物品の製造レシピの生成にも用いられる。なお、計測装置20は、異なる物性値を測定する複数の計測装置20であっても良い。また、リサイクラが所定の物性値を含む計測データを送信する場合、その物性値を測定できる計測装置20は、リサイクラが保有していることになる。
【0041】
<<<プロセッサシステム>>>
プロセッサシステム100は、
図1に示すデータに関して、以下の処理を行う。
*リサイクラに送るためのリサイクル材の生産レシピの生成。
*リサイクラに送るためのリサイクル材の種類ごとの生産量の生成。
*廃棄材の計測データの取得。
*マニュファクチャからのリサイクル材の仕様と必要量の情報を取得。
*トラストデータの送信。
*廃棄材に関する来歴の取得(特に受信)。
*リサイクル材に関する来歴の生成および送信。
*製品の製造レシピの生成。
*製品のデザイン支援に関する情報の生成。
【0042】
次に、
図1に示すデータであって、M&Dサプライヤと関係する各種データの詳細について説明する。具体的には、計測データ、リサイクル材の生産レシピ、リサイクル材の仕様、トラストデータ、廃棄材の来歴およびリサイクル材の来歴、の各々について説明する。
【0043】
<<<計測データの例>>>
計測データは、廃棄材又はリサイクル材に関する計測データである。そして、計測データに含まれるデータ項目である物性値は、例えば以下がある。なお、本明細書における物性値とは、狭義の素材としての物性に限らず、「物質が持っている性質を、ある尺度に基づいて数値で示したもののこと」を意味するとする。つまり、廃棄材が持っている性質も対象としても良い。その例が下記長さである。
*色、表面粗さ、長さに関する値(粒径、厚さ、長さ等)、重量、密度、燃焼性UL(Underwriters Laboratories Inc)認証(例えば、UL94)など。
*機械的特性(例えば、ヤング率、応力ひずみ曲線に登場する各点)、衝撃強度(機械的強度の1つ)、熱たわみ温度。
*流動性:MFR(Melt Flow Rate)。
*融点、凝固点、金属のキュリー温度。
*プラスチックの相変化温度(融点、凝固点、結晶化温度、ガラス転移温度)、成形に関する物性値(PVT曲線、粘度)。
*吸光スペクトル、電気抵抗値、比熱。
*主成分と添加物等の組成と組成比率。
【0044】
なお、
図1においてリサイクラが計測を行う場合、かかる計測データは、上記の物性値がデータ項目であれば良い。
【0045】
<<<リサイクル材の生産レシピの例>>>
M&Dサプライヤが生成するリサイクル材の生産レシピには、下記に例示する内容が含まれている。
*添加剤(リサイクル材の物性値を変えるための添加剤)の種類と比率(重量比率でも体積比率でも良い)。添加剤には、着色剤やフィラーも含まれる。なお、比率の代わりに量(体積や重量)で示しても良い。
*リサイクル材の生産に用いる設備の種類および設定値。
*リサイクル材の生産に好適な廃棄材を特定する廃棄材特定ヒント。例えば廃棄材の来歴、リサイクル材の来歴、廃棄材搬送ロット番号、廃棄材となった時期など。
【0046】
<<<リサイクル材の仕様の例>>>
マニュファクチャが製品を製造する際に用いるリサイクル材の仕様は、下記に例示するデータ項目が含まれている。ただし、すべてが必須ではなく、リサイクル材の仕様であれば、その他のデータ項目が含まれていても良い。
*色(許容誤差含む)。
*力学特性(ヤング率、衝撃特性、引張強度)。
*衝撃強度(機械的強度の1つ)、熱たわみ温度。
*流動性(MFR)。
*成分と比率(含む主成分の樹脂名称と比率)。
*密度。
*燃焼性UL認証(例えば、UL94)。
*耐油性、耐溶剤性、耐薬品性。
【0047】
また、上記以外にも、リサイクル材の仕様には、下記に例示するデータ項目が含まれていても良い。
*融点、結晶化温度、結晶化速度。
*主要添加剤の名称と比率。
*準拠するマテリアル材の規格。より好ましくは準拠するリサイクルマテリアル材の規格。
*来歴。例えばLCA(Life Cost Assessment)対応や、仕様として以下が指定された場合に好適である。
**エシカル消費で訴えたいストーリーに適合する来歴が指定された。**ファン消費や応援消費に関連するサービスや物品を来歴適合条件に指定された。
*RoHS(Restriction Of Hazardous Substances Directive)認定等、使用禁止材料が使われていないこと、または使われていないことを示す測定データ。例えば、仕様としてこれら指定がされた場合に、有益である。
【0048】
<<<トラストデータの例>>>
M&Dサプライヤが生成し、マニュファクチャに送るトラストデータは、リサイクル材が仕様内の品質であることを保証するデータであって、例えばリサイクル材の品質や寿命などが含まれる。寿命は、リサイクル材としての寿命でも良く、製品としての寿命でも良い。寿命には、例えばリサイクル材の状態での保管期限、製品を製造した後の製品の寿命(例えば加水分解によって製品が仕様できなくなるまでの期間)がある。また、寿命は、時間以外にも所定のイベント(例えば衝突回数や曲げ、繰り返し応力の回数)の回数であっても良い。なお、保証対象としては、寿命が含まれなくても良い。リサイクル材は、寿命に幅がある場合があり、寿命を保証することが難しい場合があるためである。
【0049】
<<<廃棄材の来歴の例>>>
廃棄材の来歴は、廃棄材となるまでの来歴を示す情報である。廃棄材の来歴は、マニュファクチャ(またはシェアリング組織)が保有する情報であって、所定のタイミング(例えば、M&Dサプライヤからの要求があった時など)でM&Dサプライヤに送られることが考えられる。ただし、他の組織や個人より送られた廃棄材の来歴を処理対象としても良い。廃棄材の来歴の種類には、製品来歴、部品来歴、材料来歴が含まれる。製品、部品、材料の来歴には、下記に例示するデータ項目が1以上含まれている。
*来歴の例:製品使用環境(例えば屋外、屋内、工場、ホテル)、設置年数、使用年数、製品の種類、型番、製品個体名(シリアルナンバーを含む)。なお、各来歴には、上記以外のデータ項目が含まれても良い。また、M&Dサプライヤは必ずしも製品、部品、材料のすべての来歴を、廃棄材の来歴に含めなくても良い。
【0050】
なお、部品の来歴は、その部品が組み込まれていた製品や、当該製品を含むシステムに関する上記の来歴に基づいて作成された来歴でも良い。製品の来歴も同様に、当該製品を含むシステムに関する来歴に基づいて作成された来歴でも良い。また、製品の製造プロセス関連情報(例えば、マニュファクチャが製造時に追加した添加剤など)や工場の場所が含まれても良い。なお、製造プロセス関連情報は、後述する製造コンサル情報(リサイクル材ベース物品の製造レシピ)に含まれる種類の情報が含まれても良い。また、製品来歴(部品来歴)は、シェアリング組織が管理する来歴すなわち物品賃借管理情報でも良い。
【0051】
*製品、部品、材料来歴に共通したバリエーション:エシカル消費の視点では、製品製造方法の情報として、製品製造時に用いた水、化石燃料、電力といったリソースの種類と量が含まれても良い。また、ファン消費の視点では、廃棄材となる前の製品の名称(例えば、所定のチームがどの年に用いていたレーシングカーや、所定の名称で用いられていた船舶)が前述の製品製造方法の情報として含まれていても良い。また、材料来歴には、製品の使用者、用いられていたイベント(例えば、所定の年に使われていた自転車)、が製品の利用情報として含まれてもいても良い。
【0052】
このように、来歴には、製品から廃棄材、廃棄材からリサイクル材、リサイクル材から製品、製品から再び廃棄材と状態を変えて循環した時々における使用環境などの様々な情報が含まれている。つまり、複数回数(複数世代と呼ぶ)循環を経験した廃棄材の来歴には、1世代前の廃棄材の来歴が含まれていたり、1世代前の廃棄材の来歴に基づいて生成された情報が含まれていても良い。
【0053】
<<<リサイクル材の来歴の例>>>
リサイクル材の来歴は、リサイクル材となるまでの来歴を示す情報である。リサイクル材の来歴は、M&Dサプライヤが生成する情報であって、所定のタイミング(例えば、マニュファクチャからの要求があった時など)でマニュファクチャに送られる。なお、リサイクル材の来歴はその他の組織や個人に送信や、印刷後に送付してもよい。具体的には、リサイクル材の来歴の一例としては、リサイクル材の生産レシピの一部である添加剤の種類と量(又は割合)や、リサイクル材を生産したときに原料とした廃棄材の来歴(または、来歴を統計処理した情報)が考えられる。なお、リサイクル材の来歴には、リサイクル材の計測データを含めても良い。当該計測データは、リサイクル材となる「まで」のデータではないが、来歴を得た、製品を製造したり使用する組織や個人にとっては製品となる「まで」の来歴の一部となり得るからである。リサイクル材の来歴は、M&Dサプライヤのプロセッサシステム100が、例えば廃棄材の来歴や、リサイクル材を生産したときの添加剤成分や量(又は生産レシピそのもの)などを用いて生成する。なお、所定ロットのリサイクル材を生産する際、複数の廃棄材の搬送ロットを使う場合には、廃棄材の来歴を演算(例えば、加算、平均、最大、最小、文字列の結合)した値をリサイクル材の来歴として用いても良い。なお、前述の複数世代の循環が行われた場合、当該世代のリサイクル材の来歴に、1世代前のリサイクル材の来歴が含まれていたり、1世代前のリサイクル材の来歴に基づいて生成された情報が含まれていても良い。
【0054】
なお、各種来歴は、その性質上、トラストデータと一部が重複する場合もある。
【0055】
次に、M&Dサプライヤが有するプロセッサシステム100の詳細について説明する。
【0056】
<マテリアルアンドデータサプライヤ組織のプロセッサシステム100の詳細>
M&Dサプライヤが有するプロセッサシステム100は、上記で説明したデータの生成、送信、受信およびこれら以外の各種処理を行うため、メモリリソース40に格納された各種プログラムを、プロセッサ30が読み込み、各プログラムに応じた処理を実行する。なお、プロセッサシステム100は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末(コンピュータ)、スマートフォン、サーバ計算機、ブレードサーバ、クラウドサーバなどの計算機であり、少なくともこれら計算機を1つ以上含むシステムである。すなわち、プロセッサシステム100は、例えばクラウドサーバと、表示用の計算機(例えば、タブレット端末またはスマートフォン)と、を含むシステムも包含する。
【0057】
具体的には、M&Dサプライヤのプロセッサシステム100は、
図2に示すように、1以上のプロセッサ30と、1以上のメモリリソース40と、1以上のNI(Network Interface Device)50(図では複数で例示)と、1以上のUI(User Interface Device)60と、を有している。
【0058】
プロセッサ30は、メモリリソース40に格納されている各種プログラムを読み込んで、各プログラムに対応する処理を実行する演算装置である。なお、プロセッサ30は、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはその他の演算できる半導体デバイスが例である。
【0059】
メモリリソース40は、各種情報を記憶する記憶装置である。なお、メモリリソース40は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの不揮発性あるいは揮発性の記憶媒体である。また、メモリリソース40は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクあるいはSSD(Solid State Drive)などの書き換え可能な記憶媒体であっても良く、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードおよびハードディスクなどであっても良い。
【0060】
NI50は、外部装置との間で情報通信を行う通信装置である。NI50は、例えばインターネットなど所定の通信ネットワーク網を介して外部装置と情報通信を行う。なお、以下で特に言及しない場合は、M&Dサプライヤのプロセッサシステム100と各組織が有する計算機との情報通信は、NI50を介して実行されているものとする。
【0061】
UI60は、ユーザ(オペレーター)の指示をプロセッサシステム100に入力する入力装置およびプロセッサシステム100で生成した情報等を出力する出力装置である。入力装置には、例えばキーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイスやマイクロフォンのような音声入力装置などがある。また、出力装置には、例えばディスプレイ、プリンタ、音声合成装置などがある。なお、以下で特に言及しない場合は、M&Dサプライヤとユーザとの間の情報の入出力は、UI60を介して実行されているものとする。
【0062】
また、本システムの各構成、機能、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、本システムは、各機能の一部または全部を、ソフトウェアにより実現することもできるし、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。また、本システムは、固定的な回路を有するハードウェアを用いても良いし、少なくとも一部の回路を変更可能なハードウェアを用いてもよい。
【0063】
また、本システムは、各プログラムにより実現される機能や処理の一部または全部をユーザ(オペレータ)が実施することで、システムを実現することもできる。
【0064】
なお、以下で説明するメモリリソース40内の各DB(データベース)は、データを格納できる領域であれば、ファイル等やデータベース以外のデータ構造であっても良い。また、プログラムの機能ブロックは、
図2に示す通りに区切られてなくても良い。すなわち、1つのプログラムが複数のプログラムの役割を兼ねても良い。また、その逆であっても良い。すなわち、1以上のプログラムが図示する各プログラムの処理を行えれば良い。
【0065】
また、説明の簡略化のために、各DBに格納したデータは、データを格納したプログラム以外も直接参照できる前提で説明する。もし、そのような前提でないプログラムの場合は、参照したいプログラムが、データを格納したプログラムに何らかのリクエストを送り、返り値として参照対象のデータを得る、とすれば実現可能である。
【0066】
<<CRMプログラム110と、CRMデータDB111>>
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)プログラムは、顧客情報管理の他に、受発注および在庫状況などの管理を行うプログラムである。CRMプログラム110は、顧客であるマニュファクチャ以外にも、リサイクラに関する情報も管理する。なお、受発注の一例が、マニュファクチャからのリサイクル材の受注であり、リサイクラへのリサイクル材の生産指示(発注)である。なお、当該受発注はどちらか1つであっても良い。
【0067】
また、CRMプログラム110は、リサイクラに発注する、リサイクル材の種類ごとの生産量を算出する。また、CRMプログラム110は、マニュファクチャからのリサイクル材の仕様と必要量の情報を取得する。なお、リサイクル材の仕様は、リサイクル材の型番の指定でも良く、仕様そのものでも良い。
【0068】
また、CRMプログラム110は、リサイクラに対するリサイクル材の発注量や、マニュファクチャからのリサイクル材の種類ごとの受注量などを含む過去の実績データを管理(例えば、CRMデータDB111への格納)する。このような実績データは、倉庫10における在庫の増加量の算出や、リサイクル材の生産を依頼するリサイクラを決定するのに用いられる。例えば、CRMプログラム110は、過去の実績データを用いて特定のプラスチックのリサイクル材に関する発注実績が多いリサイクラを特定し、優先的にそのリサイクラに対してプラスチックのリサイクル材の生産を依頼する。これにより、リサイクル材の品質を安定させることができる。
【0069】
また、CRMプログラム110は、以下の情報に基づいて、マニュファクチャからの受注前に、かかるリサイクル材の仕様および必要量の予測値を算出し、ニーズが潜在的に高い(かつ製造可能な)リサイクル材の生産をリサイクラに指示する。
*倉庫10の在庫。
*マニュファクチャから過去に受注したリサイクル材の仕様。
*リサイクラが現在保有する(または保有することになる)廃棄材の種類およびその量。
【0070】
なお、CRMプログラム110は、後述の連携プログラム190を介して、リサイクル材の生成に必要な廃棄材の必要量の算出を後述のMIプログラム160にリクエストしても良い。
【0071】
なお、CRMデータDB111は、所定情報を格納するデータベースであって、例えばCRMプログラム110が実行する処理に用いられる顧客管理情報や受発注に関する過去の実績データおよびリサイクル材や廃棄材の仕様などを格納している。
【0072】
また、CRMプログラム110により生成された情報(例えば、リサイクル材の種類ごとの生産量といった発注情報など)は、プロセッサシステム100がリサイクラの従業員に提示するために画面表示したり、印刷したり、従業員が利用するプロセッサシステム(例えばタブレット端末)にデータ送信してもよい。
【0073】
<<計測データ管理プログラム120と、計測データDB121>>
計測データ管理プログラム120は、廃棄材やリサイクル材の計測データ(物性値)を取得し、これを計測データDB121に格納するプログラムである。また、計測データ管理プログラム120は、計測データを加工して、後述のMIプログラム160、製品製造PIプログラム170およびデザイン支援プログラム180が扱いやすい値(計測データ加工値と呼ぶ場合がある)を生成する。なお、以下の説明において、特に計測データ加工値や未加工の計測データと記載しない限りは、計測データは未加工の値や加工後の値両方を含むものとする。
【0074】
計測データの加工について、計測データ管理プログラム120は、例えば計測データとして吸光スペクトルを取得し、多変量解析により吸光スペクトルの測定対象物の成分および比率を計測データ加工値とする。なお、成分の特定に廃棄材の来歴が用いられても良い。来歴の利用により、同じか近い周波数にピークを持つ成分が複数ある場合に、より正確な成分を特定するのに役立つ。
【0075】
なお、計測データは、計測データ管理プログラム120がM&Dサプライヤまたはリサイクラの計測装置から取得し、計測データDB121に格納されれば良い。あるいは、計測装置20のオペレーターがUI60を介して計測データの値をプロセッサシステム100に入力することで、計測データ管理プログラム120により計測データDB121に格納されても良い。このように、計測データDB121には、廃棄材やリサイクル材の計測データが格納される。
【0076】
<<<マテリアルチェーン管理プログラム130と、マテリアルチェーンDB131>>>
マテリアルチェーンDB131は、リサイクル材の生産ロット毎の情報を格納するデータベースであって、下記に例示するデータが格納されている。
*リサイクル材の生産に用いた廃棄材を特定する情報(例えば、廃棄材の搬送ロットの識別情報である搬送ロットIDやそのリスト)。
*リサイクル材の生産に用いた生産レシピの識別情報(例えば、生産レシピID)または生産レシピそのもの。
*リサイクル材の出荷パッケージに付与された識別情報(例えば、出荷パッケージID)のリスト。
*生産年月日、同一の生産ロットで生産された製造量。
【0077】
マテリアルチェーン管理プログラム130は、リサイクル材の生産に用いた廃棄材を特定する情報を、かかる廃棄材に関する来歴の識別情報と共にリサイクラから取得し、マテリアルチェーンDB131に格納する。すなわち、マテリアルチェーン管理プログラム130は、後述の来歴管理プログラム140と協働して、廃棄材、リサイクル材、リサイクル材ベース物品という具合に、状態が還流するマテリアルチェーンに関し、都度の状態における材料成分を管理する。
【0078】
なお、マテリアルチェーンDB131に格納される情報は、リサイクラからの送信情報を取得する以外にも、例えばリサイクラから納品された出荷パッケージに付与されたバーコードやQRコード(登録商標)を読み取ることで取得されても良い。また、マテリアルチェーンDB131には、リサイクル材と製品との対応関係が格納されても良い。マテリアルチェーンプログラム130は、これまで説明した方法にて、当該情報を得る。このような情報を格納するため、マテリアルチェーンDB131は、リサイクル材の前(廃棄材)と、又は/および、後(製品)との対応情報を格納しているといっても良い。
【0079】
<<<来歴管理プログラム140と来歴データDB141>>>
来歴管理プログラム140は、以下の処理を行うプログラムである。
*マニュファクチャまたはシェアリング組織から廃棄材の来歴を取得し、来歴データDB141に格納する。
*リサイクル材の実適用された生産レシピ(実適用生産レシピ)を格納する。なお、本情報は来歴データとして必須ではないが、M&Dサプライヤのプロセッサシステム100が生成した生産レシピが直接的な添加剤成分の指定を含まない場合や、生成した生産レシピと実際に添加された添加剤成分および量と、が異なることがあり得る場合に有益となる。以下の説明では、本情報が含まれている場合を想定して説明を行う。なお、実適用生産レシピには、生産レシピと同等、または、より具体的なリサイクル材の生産工程や生産パラメータを示す情報が格納されている。
*リサイクル材の来歴を生成し、マニュファクチャ(または、製品ユーザ等の組織や個人)からのリクエストに応じて、生成した来歴を送信する。
*リサイクル材ベース物品由来で生じた還流廃棄材を廃棄材としてリサイクル材を生産する場合、かかるリサイクル材の来歴を還流廃廃棄材である廃棄材の来歴に追加する(オプション)。
【0080】
なお、来歴データDB141は、来歴管理プログラム140により取得された来歴データ、実適用生産レシピおよびリサイクラ材の来歴データを格納する。
【0081】
<<<トラストデータプログラム150と、トラストデータDB151>>>
【0082】
トラストデータDB151は、トラストデータを生成するのに用いられるデータを格納するデータベースである。トラストデータDB151には、リサイクル材の生産ロット毎(リサイクル材の出荷パッケージ事でも良い)に下記に例示するデータが格納されている。
*リサイクル材(または廃棄材)の状態での保管期限、製品を製造した後の製品の寿命。
*リサイクル材の状態での所定のイベント(例えば衝突回数や曲げ、繰り返し応力の回数)の回数。
*リサイクル材が準拠する規格(例えばリサイクル関連)の名称。
【0083】
トラストデータプログラム150は、マニュファクチャ等に提示するトラストデータを生成するプログラムである。なお、トラストデータの提示方法は、送信、印刷、表示など特に限定されるものではない。トラストデータの生成処理は、下記に例示する複数通りの種類がある。
*リサイクル材または廃棄材の計測データを計測データDB121から取得し、計測データが示すリサイクル材または廃棄材の物性値が含まれるように生成する。
*保証するデータがリサイクル材の出自を保証するデータの場合には、廃棄材の来歴を来歴データDB141から取得し、かかる来歴が含まれるように生成する。
*リサイクル材の状態での保管期限、製品を製造した後の製品の寿命をトラストデータDB151から取得し、かかる寿命が含まれるように生成する。
*リサイクル材の状態での所定のイベント(例えば衝突回数や曲げ、繰り返し応力の回数)の回数をトラストデータDB151から取得し、かかるイベントの回数が含まれるように生成する。
*保証する対象が所定規格の場合、トラストデータと規格条件を比較し、満たすと判定した規格名称とその規格条件を満たすことを示す情報が含まれるように生成する。*リサイクル材の生産レシピを生成したときに用いたリサイクル材の仕様(マニュファクチャから取得した仕様)を後述のMIデータDB161から取得し、かかる仕様が含まれるように生成する。
【0084】
トラストデータプログラム150は、要求に応じた情報を対応する各DBから取得し、トラストデータに含めたり、加工したりすることでトラストデータを生成する。なお、マニュファクチャからの要求内容に応じてトラストデータの内容は異なる。例えば、マニュファクチャからの要求が所定規格の準拠に関するものであれば、トラストデータプログラム150は、その規格準拠の成否に関するトラストデータを生成する。また、当該成否の代わりとして、規格に関連する物性値を含むトラストデータを生成しても良い。あるいは、マニュファクチャからの要求内容に応じて、トラストデータプログラム150がリサイクル材の計測データを用いた品質判定を行う場合もある。また、マニュファクチャからの問い合わせがあった際、そのエビデンスとなるデータを見せる形態として、トラストデータプログラム150が上記のいずれかのデータをトラストデータとして送る場合もある。
【0085】
<<<マテリアルズインフォマティクスプログラム160とマテリアルズインフォマティクスDB161>>>
以下、マテリアルズインフォマティクスプログラム160をMI(Materials Infomatics)プログラム160とし、マテリアルズインフォマティクスデータDB161をMIデータDB161と略す場合がある。なお、本明細書では、インフォマティクスに関連して「最適解」という用語を用いるが、厳密な最適解だけを意味するのではなく、局所最適解や、準最適解(近似解)、遺伝的アルゴリズムのように複数のパラメータセットでシミュレーションを行い、得られた複数のシミュレーション結果から最も良い結果を選択する、といった一般的な最適化手法における「最適化」の意味も含むものとする。
【0086】
なお、マテリアルズインフォマティクスとは、効果的に材料開発を行うデータ科学を用いた新材料開発手法のことである。
【0087】
図3を用いて説明する。
図3は、リサイクル材の生産レシピの生成に用いられるInputデータ(表の最も左の縦列)およびOutputデータ(表の最も上の横行)の一例を示した図である。なお、縦列と横行とが交差する部分の丸印(○)は、対応する横行のOutputデータを得る際の演算処理に必要なInputデータであることを示しており、バツ印(×)は、かかる演算処理に不要なInputデータであることを示している。また、Optionは、Outputデータを得るための精度をより高めるために用いることができるInputデータであることを示している。MIプログラム160は、与えられた入力(Inputデータ)に基づいて、リサイクル材に関する解探索を行い、最適解(Outputデータ)を出力するプログラムである。また、MIプログラム160は、リサイクラやマニュファクチャから必要な情報を取得して、MIデータDB161に格納する処理も行う。なお、本実施形態における「マテリアルズインフォマティクス」は、リサイクル材の生産のプロセスインフォマティクスを含む場合もある。
【0088】
MIプログラム160は、例えばマニュファクチャから受注したリサイクル材の仕様に応じたリサイクル材の生産レシピを生成する。具体的には、MIプログラム160は、下記に例示するデータをInputデータとして用いた演算処理を行うことで、リサイクル材の生産レシピを生成する。
【0089】
(Input)
*廃棄材計測データ:廃棄材に関する上記の計測データ。また、デザインに関わる成分として廃棄材の色、その他スペクトルデータまたは組成(例えば、主成分と添加剤の種類と比率など)、融点、凝固点、結晶化温度、等金属、ガラス、プラスチックの相変化にかかわる温度、PVT特性、粘度、フィラー含有量など。その他、本明細書で説明する廃棄材の測定データの具体例が含まれても良い。
*要求されるリサイクル材の仕様:本明細書で説明するリサイクル材の仕様の具体例が含まれても良い。例えば、以下である。
**成分と比率(含む主成分の樹脂名称と比率)。
**色(許容誤差含む)。
**力学特性(ヤング率、衝撃特性、引張強度)。
**流動性(MFR)。
*許容するリサイクル材の生産プロセス条件の範囲(拘束条件):廃棄材を溶融する設備の最大温度、押し出し機(リサイクルペレットを作る)の押出し圧力、ペレットを作る成型機で溶融されてから押し出されるまでの時間(成型機のサイクルタイム)など。
*基礎データ:例えば、シミュレーション処理で使う係数や、最適化を求めるときの係数の材料になるデータである。なお、かかる情報は、Inputデータとしては必須の要素ではなく、Outputデータの精度向上のためにoptionとして入力される。
【0090】
*廃棄材の来歴、又は来歴の加工情報:本情報は、Inputデータとしては必須の要素ではなく、Outputデータの精度向上のためにoptionとして入力される。詳細は後述する。
【0091】
なお、リサイクラは、リサイクル材の生成にあたって粉砕や洗浄などの生産プロセスを実行する。そのため、生産プロセス条件には、これらの各生産プロセスを行う設備が拘束条件として生産プロセス条件に含まれる。具体的には、例えば粉砕を行うのに複数種類の装置が存在する場合に、装置種別1は用いることができるが、装置種別2は不可、という条件である。すなわち、そのリサイクラが装置種別1を持っているか持っていないか、が生産プロセス条件として入力される。言い方を変えると、「許容するリサイクル材の生産プロセス条件の範囲(拘束条件)」は、各リサイクラ固有の生産設備差を反映可能な入力である、と言える。
【0092】
なお、MIプログラム160は、Inputデータである廃棄材計測データおよび許容するリサイクル材の生産プロセス条件の範囲を、計測データDB121およびリサイクラから取得する。また、MIプログラム160は、要求されるリサイクル材の仕様をマニュファクチャまたはCRMデータDB111から取得する。
【0093】
また、MIプログラム160は、廃棄材の来歴を来歴データDB141から取得する。
【0094】
MIプログラム160は、リサイクル材の生産レシピに相当するリサイクル材の生産プロセス条件など、下記に例示するデータをOutputデータとして取得する。
【0095】
(Output)
*リサイクル材の生産プロセス条件:指定されたリサイクル材の仕様を満たすリサイクル材を生産するためのプロセス条件である。生産設備などに関する拘束条件が指定されている場合、その範囲の中での条件で解が生成される。
*リサイクル材の仕様に含まれる物性値:Inputの生産プロセス条件で、計測データのある廃棄材を用いてリサイクル材を生産したときのリサイクル材の仕様の指定値に対する物性値である。
*リサイクル材の仕様に含まれない物性値:マニュファクチャから取得したリサイクル材の仕様としては指定されていない物性値である。マニュファクチャが細かな仕様を指定しない場合にも、製品製造のために必要な物性値があるため、リサイクル材の仕様に含まれない物性値についても取得する。当該物性値には、例えばPVT曲線などがある。
【0096】
また、MIプログラム160は、
図3の通り、最適解決定処理と、シミュレーション処理と、を組み合わせて上記OutPutの最適解を得る。その具体例は、
図3の通りでる。なお、SVMは、Support Vector Machineの略である。なお、
図3には記載していないが、ニューラルネットワーク等の機械学習エンジンに、あらかじめ入力と最適解を学習させることで、最適解を得てもよい。この場合、前述の最適解決定処理やシミュレーション処理は必須ではない。
【0097】
なお、MIデータDB161には、リサイクル材の生産レシピなど、MIプログラム160がOutputで得た情報が格納される。
【0098】
なお、生成された生産レシピは、プロセッサシステム100がリサイクラの従業員に提示するために画面表示したり、印刷したり、従業員が利用するプロセッサシステム(例えばタブレット端末)にデータ送信してもよい。当該提示のタイミングは、M&Dサプライヤがリサイクル材の生産をリサイクラに発注するときでも良く、発注前の生産を試行するときでも良い。そして、生産レシピの提示は、MIプログラム160が行っても良く、CRMプログラム110が行っても良い。
【0099】
<<<製品製造プロセスインフォマティクスプログラム170と、製品製造プロセスインフォマティクスデータDB171>>>
以下、製品製造プロセスインフォマティクスプログラム170を製品製造PI(Process Infomatics)プログラム170とし、製品製造プロセスインフォマティクスデータDB171を製品製造PIデータDB171と略す場合がある。
【0100】
図4を用いて説明する。
図4は、リサイクル材ベース物品の製造レシピの生成に用いられるInputデータ(表の最も左の縦列)およびOutputデータ(表の最も上の横行)の一例を示した図である。なお、縦列と横行とが交差する部分の丸印(○)およびバツ印(×)の見方は、
図3の場合と同様である。製品製造PIプログラム170は、与えられた入力値に基づいて、リサイクル材ベース物品の製造レシピに関する解探索を行うプログラムである。また、製品製造PIプログラム170は、マニュファクチャから必要な情報を取得して、製品製造PIデータDB171に格納する処理も行う。
【0101】
また、製品製造PIプログラム170は、製造レシピの解探索において、入力値(例えば、マニュファクチャの受注に含まれるリサイクル材の仕様等および製品、部品の仕様等)に基づき、各リサイクル材を用いた場合にその製品の仕様を満たすことができるか否かの製造可否判定を行い、判定結果である製造可否情報を生成する。
【0102】
製品製造PIプログラム170は、例えばマニュファクチャから受注したリサイクル材ベース物品の仕様に応じたリサイクル材ベース物品の製造レシピを生成する。具体的には、製品製造PIプログラム170は、下記に例示するデータをInputデータとして用いた演算処理を行うことで、リサイクル材ベース物品の製造レシピを生成する。
【0103】
(Input)
*リサイクル材の仕様または物性値、形状:マニュファクチャから受注したリサイクル材ベース物品の製造に用いるリサイクル材の仕様または物性値や形状である。なお、リサイクル材の形状は、鍛造、切削といった、溶かさない加工の場合が対象となる。
*製品、部品の仕様:リサイクル材ベース物品である製品、部品の仕様であって、例えば射出成型の場合、成形後の形状や目標形状との誤差、色(色の誤差)、表面粗さ、シボ、所定条件で力を加えたときの湾曲量などである。なお、リサイクル材の仕様の例にて説明した項目が製品、部品の仕様としても当てはまるのであれば、当該項目が含まれても良い。
【0104】
*許容する製品、部品の製造プロセス条件の範囲(拘束条件):リサイクル材ベース物品を製造するマニュファクチャの製造設備や製造方法といった製造プロセスに関する拘束条件である。当該項目には、シミュレーション処理を行う上で必要な固定された条件、最適解の範囲を限定する拘束条件、の少なくともどちらかが含まれる。具体的には、例えば特開2020-157629に開示されている製造プロセス条件(射出成型における例)が一例として用いられる。なお、製造プロセス条件には、金型の形状、金型形状の最大修正量が含まれても良い。また、鍛造等のプレス機を使う加工の場合には、金型やダイの形状(最大修正量)、プレス機による最大プレス力が製造プロセス条件に含まれる場合もある。また、射出成型機に設定できるパラメータの範囲(例えば射出速度や保圧の最大値)が拘束条件で含まれる場合もある。これらが製造プロセス条件のInputとして入力されると、例えばプレス機によるプレス中、プレス後の材料の変形や物性値の変化を得ることができる。また、切削の場合、製造プロセス条件には、工具の種類やNCプログラムが含まれても良い。また、その他、部品の組み立ての手順やロボットの仕様が製造プロセス条件の対象とされても良い。なお、一般的に、金型形状の修正やNCプログラムの修正は多大な工数を要するため、これらは固定された条件である。一方で、射出成型機、プレス機、NC加工装置、3Dプリンタといった製造設備固有の製造や設備の健全性に影響を及ぼす製造パラメータ(説明済の例も含めて、例えば最大プレス量、最大射出速度、最大保圧、金型の耐熱温度や耐圧)は拘束条件の例である。当該条件を超えると、そもそもその設備ではその製造レシピは実現できなかったり、実現すると設備の機能不全につながるからである。
【0105】
*基礎データ:例えば、シミュレーション処理で使う係数や、最適化を求めるときの係数の材料になるデータである。なお、樹脂の射出成型の場合、MFR、PVT特性、などが基礎データに含まれる。また、添加されるバージン材については基礎データとして持っていても良い。かかる情報は、Inputデータとしては必須の要素ではなく、Outputデータの精度向上のためにoptionとして入力されても良い。
*リサイクル材の来歴、又は来歴の加工情報:本情報は、Inputデータとしては必須の要素ではなく、Outputデータの精度向上のためにoptionとして入力される。詳細は後述する。
【0106】
なお、製品、部品の仕様に関し、意匠デザインに関連する仕様について、下記に例示する。
*シルバーストリーク(銀白色の筋が出る不良)。
*ヒケ・シンクマーク(成形品の表面がくぼむ不良)。
*ショートショット(成形品の一部が欠ける不良)。
*ウエルドマーク(樹脂の合流部分に現れる線状の不良)。
*樹脂焼け、黒条(成形品の表面に黒い燃焼物が発生する不良)。
*曇り・光沢不良(透明度不良により成形品の表面が曇っている不良)。透明度の低下も含む。
*色むら・変色(成形品の色が不均一な不良、材料であるバージン材やリサイクル材の色から変化する不良)。
*ジェッティング(成形品表面にミミズのはった跡のような模様がでる不良)。
*フローマーク(成形品表面にゲートを中心とした波状の模様がでる不良)。
*擦り傷・すり傷(成形品の側面にこすれた跡がでる不良)。
*気泡・ボイド(成形品の肉厚部の中央に孔ができる不良)。
【0107】
なお、仕様としては、こうした現象の程度を示す内容でも良く、こうした現象を踏まえて変化し得る値、例えば色や透明度(透過スペクトルを含む)を指定しても良い。製品製造PIプログラム170は、これらが発生するかどうか、発生程度を事前にシミュレートし、仕様を満たす製造レシピをOutputデータとして得る。
【0108】
なお、製品製造PIプログラム170は、Inputデータであるリサイクル材の仕様または物性や形状、製品、部品の仕様、許容する製品、部品の製造プロセス条件の範囲をマニュファクチャから取得する。なお、リサイクル材の仕様は、CRMデータDB111から取得されても良い。また、その他の値も各種DBから取得されても良い。
【0109】
また、製品製造PIプログラム170は、リサイクル材の来歴を来歴データDB141から取得する。
【0110】
製品製造PIプログラム170は、製品、部品の形状や物性値など、下記に例示するデータをOutputデータとして取得する。
(Output)
*製品、部品の形状、物性値:Inputの仕様、条件等を満たす製品、部品(リサイクル材ベース物品)の形状または物性値である。
*製品、部品の製造プロセス条件:Inputの仕様、条件等を満たす製品、部品を製造するためのプロセス条件である。製造設備などに関する拘束条件が指定されている場合、その範囲の中で解が生成される。
【0111】
製品製造PIプログラム170は、MIプログラム160の場合と類似するが、
図4の通り、最適解決定処理と、シミュレーション処理と、を組み合わせて上記OutPutの最適解を得る。その具体例は、
図4の通りでる。なお、
図4には記載していないが、ニューラルネットワーク等の機械学習エンジンに、あらかじめ入力と最適解を学習させることで、最適解を得ても良い。この場合、前述の最適解決定処理やシミュレーション処理は必須ではない。なお、製造可否判定において、製造不可と判定されたリサイクル材の仕様等による製品、部品の形状や物性値については、Outputデータに含まれない。この場合、製品製造PIプログラム170は、製造不可と判定したリサイクル材の仕様等について、製造不可を示す製造可否情報を生成する。なお、製造可否情報は、
図4への記載を省略したが、当該情報もOutputの一つである。
【0112】
なお、製品製造PIデータDB171には、製品、部品の形状または物性値など、製品製造PIプログラム170がOutputデータとして得た情報が格納される。
【0113】
また、このような製品製造PIプログラム170による製品、部品の形状や物性値あるいは製品、部品の製造プロセス条件を求める技術は、例えば特開2020-157629号公報に開示されており、かかる技術が用いられても良い。また、同文献に開示される技術に基づき、本実施形態においても、製造設備、装置の個体差を補正条件としてInputデータに含めても良い。
【0114】
また、上記文献以外にも、WO2021/014748に記載される技術(金属の鍛造と切削条件の最適化を行う技術)が用いられても良い。
【0115】
なお、製品製造PIプログラム170は、例えば、マニュファクチャからの受注前の問い合わせ又は、リサイクル材の受注時に、製造レシピを生成し、マニュファクチャに送る。また、製品製造PIプログラム170は、マニュファクチャにリサイクル材の搬送パッケージを送る際に製造レシピを生成し、対応する製造ロットの製品製造プロセスとして当該製造レシピを送っても良い。また、製品製造PIプログラム170は、MIプログラム160により製造可能とされた新仕様のリサイクル材の宣伝用として製造レシピを生成し、製品製造プロセスとして製造レシピをマニュファクチャに送っても良い。
【0116】
<<<インフォマティクスプログラム160における来歴の考慮例>>>
計測データを得るための計測装置20は、コスト、計測スループット、精度の視点から、必ずしもMIプログラム160や製品製造PIプログラム170が望む精度での物性値や、そもそもの物性値が得られない場合が生じる可能性がある。そうした課題を補うため、廃棄材やリサイクル材の来歴や来歴加工情報で、不足する精度や物性値を補うことが考えられる。
【0117】
MIプログラム160の場合、廃棄材の計測データと、廃棄材の来歴が考慮対象となり、以下の例が考えられる(併用しても良い)。
*機械学習エンジン(特にニューラルネットワーク)の学習として、追加の入力として来歴、出力として最適解(例えば、実際のリサイクル材の計測データや最適化処理で得た最適解)を与える。例えば、来歴に屋外での設置時間が含まれていれば、設置時間に比例した紫外線による劣化が廃棄材に発生しているため、機械学習はその劣化の程度を考慮した学習が可能となるため、最適解の質が高まる。また、廃棄材となる前の物品の種類がわかることで、物品種類事に添加剤や樹脂の比率が異なる場合でも効果的に学習ができるため、最適解の質が高まる。なお、このような学習をする場合、所望の来歴がない場合は、「当該項目の来歴なし」を意味する入力を与えることで、来歴なしの場合と来歴ありの場合の両方に適用できる機械学習エンジンを構築しても良い。また、計測データを学習時の入力としても良い。なお、学習フェーズの後、運用フェーズ(追加学習が実施される運用フェーズも含む)で実際に出力を求める際は、学習時の機械学習エンジンへの入力と同じ項目を機械学習エンジンへの入力に与える。例えば、学習時に廃棄材の来歴と、廃棄材の計測データと、を入力としていた場合は、運用フェーズでもこれらを入力で与える。
*廃棄材の計測データを来歴で補正する。例えば、廃棄材の赤外線スペクトルを測定データとした場合、紫外線による劣化の程度により、特定波長のスペクトルが変化してしまい、結果として廃棄材の成分特定の精度が悪化する虞がある。よって、廃棄材の来歴を、赤外線スペクトルの分析時に考慮することで、廃棄材の成分特性の精度向上が期待できる。より具体的な処理としては、赤外線スペクトル自体を来歴に基づいて補正しても良いが、無補正の赤外線スペクトルに基づいて得られた成分を来歴に基づいて補正しても良い。
【0118】
製品製造PIプログラム170の場合、リサイクル材の計測データと、リサイクル材の来歴が考慮対象となるが、廃棄材の計測データと来歴を考慮してもよい。例えば、以下が例である(併用しても良い)。MIプログラム160の場合と同様な理由により、精度の悪化や取得できない物性値を補う。
*機械学習エンジン(特にニューラルネットワーク)の学習として、追加の入力として来歴(リサイクル材の来歴、又は廃棄材の来歴)、出力として最適解(例えば、実際の物品やサンプル品の計測データや、最適化処理で得た最適解)を与える。なお、入力には計測データを与えても良い。また、学習フェーズの後、運用フェーズ(追加学習が実施される運用フェーズも含む)で実際に出力を求める際は、学習時の機械学習エンジンへの入力と同じ項目を機械学習エンジンへの入力に与える。例えば、学習時にリサイクル材の来歴と、リサイクル材の計測データと、を入力としていた場合は、運用フェーズでもこれらを入力で与える。
*リサイクル材の計測データを来歴(リサイクル材の来歴、又は廃棄材の来歴)で補正する。
【0119】
<<<デザイン支援プログラム180と、デザインデータDB181>>>
デザイン支援プログラム180は、マニュファクチャから取得したリサイクル材ベース物品や当該物品を含む製品のデザイン情報を用いて、当該物品の色やパターンなどのデザインを提案するための表示情報を生成する。なお、デザイン支援プログラム180により生成される表示情報には、例えばリサイクル材ベース物品を含む製品または部品の製品3D形状を示すイメージ情報が含まれる。また、表示情報には、リサイクル材ベース物品の製造に用いたリサイクル材で製造された物品やサンプル(又はリサイクル材自体)の色、パターンおよび写真サンプルなどの意匠パラメータと、リサイクル材の仕様、流通量および添加剤(例えば、着色剤など)の含有量、生産コスト、廃棄材の来歴などを示す情報を含むパラメータ情報が含まれる。なお、意匠パラメータは、意匠上の特徴を示すパラメータで、後程例を示すが、これら例以外であっても良い。
【0120】
なお、表示用計算機と、サーバ計算機とからプロセッサシステム100が構成される場合、表示処理そのものは表示用の計算機で行われるが、サーバ計算機側が表示処理の一部を実行しても良い。例えば、表示対象のデータをサーバ計算機が生成している場合、表示用計算機からの表示関連指示に基づいて、表示対象データを送ること、が表示処理の一部とみなされても良い。
【0121】
再び
図5の説明に戻る。
図5は、デザイン提案のための表示画面の一例を示した図である。図示するように、デザイン提案のための表示画面には、リサイクル材ベース物品を含む製品3D形状のイメージ情報(図示する例は、バスの模型あるいはバス)200と、意匠パラメータを含むパラメータ情報210と、を含む表示情報が表示されている。
【0122】
また、デザイン支援プログラム180は、表示されたイメージ情報200に含まれるリサイクル材ベース物品と、パラメータ情報210に含まれるレコードの1つが指定または選択されると、指定されたリサイクル材ベース物品のイメージを、指定された意匠パラメータに変更して表示する。
【0123】
このようなデザインを提案するための表示情報は、デザイン支援プログラム180と、後述の連携プログラム190を介したCRMプログラム110、MIプログラム160および製品製造PIプログラム170と、の連携により実現される。なお、連携プログラム190は、各プログラム間における処理のリクエストや情報の受け渡しなどの連携を行うプログラムである。連携プログラム190の詳細については後述する。
【0124】
以下、デザイン支援プログラム180と、連携プログラム190を介したCRMプログラム110、MIプログラム160および製品製造PIプログラム170と、の連携によるデザイン支援処理について説明する。
【0125】
図6は、デザイン支援処理の一例を示したフロー図である。かかる処理は、UI60を介してプロセッサ30がユーザ(例えば、オペレーターなど)からの実行指示を受け付けると開始される。なお、当該例では、顧客ニーズが多く潜在的に選択されやすいリサイクル材を
図5で提案しつつ、在庫量が少ない場合は実際に発注される前に先行発注するフローである。その他のバリエーションは後程説明する。
【0126】
処理が開始されると、デザイン支援プログラム180は、連携プログラム190を介して、顧客ニーズの多いリサイクル材とその仕様を特定するリクエストをCRMプログラム110に出力する(ステップS10)。CRMプログラム110は、デザイン支援プログラム180からのリクエストを取得すると、受注に関する過去の実績データを用いて、例えば受注数の多いリサイクル材と、その仕様とを特定する。なお、CRMプログラム110は、受注数の多い複数のリサイクル材を特定しても良い。
【0127】
次に、デザイン支援プログラム180は、連携プログラム190を介して、特定されたリサイクル材の在庫量を確認するリクエストをCRMプログラム110に出力する(ステップS20)。CRMプログラム110は、デザイン支援プログラム180からのリクエストを取得すると、特定したリサイクル材の在庫量をCRMデータDB111に格納されている在庫情報から特定する。
【0128】
次に、CRMプログラム110は、特定した各リサイクル材について、その在庫量が所定以下か否かを判定する(ステップS30)。そして、在庫量が所定以下ではないと判定した場合(ステップS30でNo)、CRMプログラム110は、処理をステップS80に移行する。一方で、在庫量が所定以下と判定した場合(ステップS30でYes)、CRMプログラム110は、処理をステップS40に移行する。なお、複数のリサイクル材が特定されている場合、上記の判定は、リサイクル材ごとに行われれば良い。
【0129】
ステップS40では、CRMプログラム110は、特定したリサイクル材について所定数以上の生産が可能か否かを判定する。具体的には、CRMプログラム110は、特定したリサイクル材の生産に用いる廃棄材の在庫量に基づき、リサイクル材の生産可能数を算出することで、かかる判定を行う。なお、CRMプログラム110は、リサイクル材の生産に必要な廃棄材の仕様数については、連携プログラム190を介して、MIプログラム160に算出するようリクエストを出力しても良い。
【0130】
そして、生産可能ではないと判定した場合(ステップS40でNo)、CRMプログラム110は、判定対象のリサイクル材については本フローの処理を終了する。すなわち、充分な量を生産できないリサイクル材については、デザイン提案の候補から除外される。
【0131】
一方で、生産可能と判定した場合(ステップS40でYes)、CRMプログラム110は、処理をステップS50に移行する。
【0132】
ステップS50では、デザイン支援プログラム180は、連携プログラム190を介して、特定されたリサイクル材のうち、廃棄材を用いて生産可能と判定されたリサイクル材の生産レシピの生成をMIプログラム160にリクエストする。MIプログラム160は、特定されたリサイクル材の生産に用いる廃棄材の計測データを計測データDB121から取得する。また、MIプログラム160は、リサイクル材の仕様、許容するリサイクル材の生産プロセス条件の範囲および廃棄材の来歴と、廃棄材の計測データ等をInputデータとして上記の演算処理を行うことで、最適な生産レシピを生成する。
【0133】
次に、CRMプログラム110は、生成された生産レシピと共に、リサイクル材の生産をリサイクラに発注する(ステップS60)。なお、ステップS60の処理は必須ではなく、CRMプログラム110は、例えばオペレーターからの指示を取得するまでリサイクラへの発注を保留しても良い。
【0134】
次に、CRMプログラム110は、リサイクル材の流通量およびコストを算出する(ステップS70)。具体的には、CRMプログラム110は、リサイクル材の在庫が充分ある場合にはその在庫量を用い、廃棄材を用いた生産を発注している場合には廃棄材の在庫量に基づくリサイクル材の生産量を用いて、かかるリサイクル材の流通量を算出する。また、CRMプログラム110は、過去の実績データに基づいて、リサイクル材の生産コストを算出する。
【0135】
次に、製品製造PIプログラム170は、特定されたリサイクル材を用いて所定デザイン(例えば、マニュファクチャから取得したリサイクル材ベース物品のデザインあるいは顧客ニーズの多い所定のデザイン)のリサイクル材ベース物品を、製造可能か否かを判定する(ステップS80)。具体的には、製品製造PIプログラム170は、リサイクル材の仕様と、製品、部品の仕様すなわち所定デザインのリサイクル材ベース物品の仕様と、許容するリサイクル材の製造プロセス条件の範囲等と、をInputデータとして上記の演算処理を行う。また、製品製造PIプログラム170は、製品、部品の仕様を満たす形状や物性値および製造プロセス条件をOutputデータとして取得できた場合には、かかるリサイクル材を用いて、リサイクル材ベース物品を製造可能と判定する。なお、製品製造PIプログラム170が直接、製造可能可否を出力する場合、本ステップは、製品製造PIプログラム170が、当該出力を行うことである。
【0136】
そして、製造可能ではないと判定した場合(ステップS80でNo)、製品製造PIプログラム170は、判定対象のリサイクル材については本フローの処理を終了する。すなわち、顧客ニーズの多いデザインに対応するリサイクル材ベース物品の製造に用いることができないリサイクル材については、デザイン提案の候補から除外される。
【0137】
一方で、製造可能と判定した場合(ステップS80でYes)、製品製造PIプログラム170は、かかるリサイクル材をデザインの提案に用いるリサイクル材候補として特定し、処理をステップS90に移行する。
【0138】
次に、デザイン支援プログラム180は、デザイン支援に用いる表示情報を生成する(ステップS90)。具体的には、デザイン支援プログラム180は、リサイクル材ベース物品を製造可能と判定されたリサイクル材(リサイクル材候補)を用いて製造された場合のリサイクル材ベース物品の製品3D形状を示すイメージ情報200を生成する。
【0139】
また、デザイン支援プログラム180は、意匠パラメータを取得する。もし、意匠パラメータがリサイクル材に係る場合、デザイン支援プログラム180は、リサイクル材候補の仕様に基づいて意匠パラメータを取得する。また、もし、意匠パラメータがリサイクル材で製造された物品やサンプルに係る場合、デザイン支援プログラム180は、リサイクル材候補の仕様、又は製品製造PIプログラム170が出力する物品の物性値に基づいて意匠パラメータを取得する。なお、事前に製造したサンプルの写真をメモリリソース40に格納し、デザイン支援プログラム180は、意匠パラメータとして当該写真を取得しても良い。また、デザイン仕様プログラムは、CRMプログラム110(またはMIプログラム160)により算出されたリサイクル材候補の流通量と生産コストを取得する。また、デザイン支援プログラム180は、リサイクル材の生産レシピに基づいて、添加剤(例えば、着色剤など)の含有量を取得する。また、デザイン支援プログラム180は、リサイクル材候補の生産に用いた廃棄材の来歴を取得する。また、デザイン支援プログラム180は、これらの情報を含むパラメータ情報210の表示情報を生成する。なお、添加剤を添加するタイミングはリサイクル材を生産するタイミングと、物品を製造するタイミングの両方があり得る。よって、デザイン支援プログラム180は、添加剤量について、各タイミングで添加される量の和を表示してもよい。このようにすれば、廃棄材からの添加剤追加量が明確になる。なお、物品の製造タイミングでの添加剤の添加量は、製品製造PIプログラム170からの出力を用いても良い。
【0140】
また、デザイン支援プログラム180は、生成したイメージ情報200およびパラメータ情報210の表示情報を出力して表示する。
【0141】
なお、こうした所定処理は時間がかかるため、デザイン支援プログラム180は、ユーザによる操作の前に、所定のタイミング(例えば、1日に1回)で候補となるリサイクル材の適用可否について、上記処理の実行を製品製造PIプログラム170にリクエストしても良い。こうすることで、デザイン支援プログラム180の応答性を向上させることができる。
【0142】
なお、
図5の例では、リサイクル材ベース物品である対象Aと、パラメータ情報210のレコードの1つが指定(または選択)されると、デザイン支援プログラム180は、かかる対象Aの色やパターンを指定されたリサイクル材を用いて製造された場合の意匠パラメータに変更して表示する。
【0143】
また、デザイン支援プログラム180は、
図6のように顧客ニーズが高いリサイクル材を優先させる以外に、所定の基準(例えば、顧客ニーズの高い色、リサイクル材の流通量あるいはファン消費、応援消費、エシカル消費を促す来歴の有無、顧客が指定した意匠パラメータの範囲など)に基づき、リサイクル材の提案順位を算出し、パラメータ情報210に対応付けて表示しても良い。
【0144】
このように、デザイン支援プログラム180と、CRMプログラム110と、の連携により、デザイン視点の顧客ニーズに応じたリサイクル材の生産が可能となる。言い換えれば、顧客ニーズの少ないリサイクル材の不要な生産を低減することができる。そのため、リサイクル材を生産するリサイクラは、顧客ニーズの少ないリサイクル材の生産および在庫の保有を回避することができるため、コストの改善を図ることができ、企業体力を維持することができる。
【0145】
また、デザイン支援プログラム180と、CRMプログラム110と、の連携により、顧客ニーズの多いリサイクル材の在庫や仕様を確認することができ、例えば顧客ニーズの多いリサイクル材の中から在庫が豊富なリサイクル材を提案することができる。
【0146】
また、デザイン支援プログラム180と、MIプログラム160と、の連携により、在庫の少ないリサイクル材については廃棄材からリサイクル材を生産するレシピを生成することにより、顧客ニーズの多いデザインのリサイクル材を安定して供給できるようになる。言い換えれば、これらのプログラムの連携に基づき、安定して生産できるリサイクル材を採用しやすいデザインを提案することができる。
【0147】
また、デザイン支援プログラム180と、製品製造PIプログラム170と、の連携により、そのリサイクル材を用いて顧客ニーズに応じたデザインの製品(リサイクル材ベース物品)を製造できるかどうかを確認することができる。そのため、安定して生産できるリサイクル材を採用しやすいデザインを提案することができる。
【0148】
また、デザイン支援プログラム180と、製品製造PIプログラム170と、の連携により、リサイクル材を採用したときの環境負荷増や資源循環の困難さにつながる添加剤の量を、デザインを行いながら確認できる。
【0149】
なお、デザイン支援プログラム180は、製品に関連する法律、規制、規格に基づき生成された制約ルールに応じたデザインの提案を行っても良い。また、提案内容には、バージン材を100%とする材料や一部をバージン材とする提案が含まれても良い。こうすることで、既存の製品の改良だけではなく、新製品の企画、設計時にも適用可能なデザインやリサイクル材の可能性を探索する目的でデザイン支援プログラム180を使用することができる。
【0150】
また、意匠パラメータは、色やパターンに限られず、下記のものであっても良い。
*反射率、透過率(スペクトル指定も可能)。
*表面凹凸模様(種類(ヘアライン、表面ざらつき加工、木目加工)、と模様の幾何学的パラメータ(模様の大きさ、深さ、向き)。
*表面色模様(模様の種類と幾何学的パラメータ)。
*形状揺らぎ(ハンドメイド製品で温かみをイメージさせる一因である、全体形状に対する各特長部位の形状ばらつき)。
*弾性率。
*重量、重心。
*熱伝導率。
*意匠上の特徴的な形状箇所の幾何学的値。
【0151】
また、デザイン支援プログラム180は、MIプログラム160との連携により、異なるリサイクル材(第1のリサイクル材および第2のリサイクル材)を組み合わせたマーブルパターンなどのデザインを提案しても良い。
【0152】
また、デザイン支援プログラム180は、MIプログラム160との連携により、今までにない特性を持つリサイクル材をシミュレーション上で作ることもできる。そのため、デザイン支援プログラム180は、マニュファクチャのニーズ把握のために仮想的に色、パターン、写真のサンプルを作り、これらに基づいてデザインを提案してもよい。
【0153】
また、デザイン支援プログラム180は、仮想的に生成した色やパターンのマテリアル材(リサイクル材)の生産レシピについて、連携プログラム190を介して、MIプログラム160に生成指示を出力する。また、M&Dサプライヤは、仮想的なマテリアル材を実際に少量作り、提案を受け入れたマニュファクチャにサンプルとして送るようにしても良い。なお、デザイン支援プログラム180は、連携プログラム190を介して、CRMプログラム110に過去の受注に関する実績データに基づいたマニュファクチャの嗜好色や嗜好パターンなどを解析させても良い。この場合、デザイン支援プログラム180は、解析結果から導出されたマニュファクチャの嗜好色などを参考に仮想的な色やパターンを算出し、連携プログラム190を介して、MIプログラム160に生産レシピの生成を指示する。
【0154】
また、マニュファクチャから意匠デザインの取得が難しい場合、デザイン支援プログラム180は、意匠パラメータの範囲を取得し、その応答として、
図5に示すデザインの表示情報をマニュファクチャに送ってもよい。
【0155】
なお、デザインデータDB181には、様々なデザインに関する情報を格納するデータベースである。例えば、デザインデータDB181には、マニュファクチャから取得したデザイン情報(例えば、製品3D形状データ、部品3D形状データ)、色、パターン、写真サンプルなどが格納される。また、3DCGデータを用いる場合には、テクスチャーマッピングやバンプマッピング(形状表面に張り付ける画像や表面に疑似的に凹凸を作るための画像)が格納される。
【0156】
なお、色、パターン、写真サンプルなどは、リサイクラまたはM&Dサプライヤがサンプルで成形した成形物を撮影した写真であっても良く、MIプログラム160や製品製造PIプログラム170で仮想的に作られたパターンや写真サンプルでも良い。
【0157】
以上の表示により、マニュファクチャ(またはシェアリング組織)の従業員は、リサイクル材ベース物品のデザイン性を向上させることができる。また、今まで採用したことがないリサイクル材であっても、デザイン性を向上させつつ採用することに貢献できるため、リサイクル材の流通量を増加させることができる。別な視点で言えば、デザイン支援プログラム170による表示は、リサイクル材の拡販につなげることができる。
【0158】
<<<連携プログラム190>>>
連携プログラム190は、複数のプログラムで実行される処理の連携を行うプログラムである。例えば、連携プログラム190は、MIプログラム160、製品製造PIプログラム170、デザイン支援プログラム180からの出力データを他のプログラムの入力データにすることで、デザインを加味したリサイクル材の製造、リサイクル材を用いた製品製造を効率的に行うことを支援する。
【0159】
なお、MIプログラム160、製品製造PIプログラム170およびデザイン支援プログラム180間では、同じ意味を持つデータ値であっても、相互に異なる単位を扱っている場合がある。よって、連携プログラム190は、これらのプログラムの出力値の加工を行った上で、他のプログラムに入力するように加工しても良い。
【0160】
以上、本システムについて説明した。このようなシステムによれば、上記の循環促進効果1~6を達成することができる。その結果、本システムによれば、マテリアルリサイクルをより進化させることでサーキュラーエコノミーを推進することができる。
【0161】
<ユースケースの詳細>
ここでは、上記実施形態で説明したサーキュラーエコノミーに関連するエコシステムを異業界(異業種間)間に適用した場合のユースケースについて説明する。
【0162】
<<自動車から建築へ>>
自動車業界は、回収・分別が進んでいる業界の一つであると同時に、最先端、高級な材料を用いる業界でもある。一方で、建築物は高いデザイン性が求められる業界である。
【0163】
このような業界間でもM&Dサプライヤにより、好適にリサイクル材の供給が可能となる。例えば、自動車フロントガラスの代替物である透過性プラスチック部品や、ライトの透明部品は、紫外線により黄色(飴色)に変色したり、砂等の微細物が混じった環境での利用により表面に傷が多数発生したりすることがあり、その場合は車検が通らない可能性が出てくる。
【0164】
また、建築物である駅では、採光用途では一般的にガラス(当然ながら樹脂より密度が高い)が用いられている。一方で、駅における建築物デザインでは、ステンドグラスやすりガラスの適用といった、必ずしも透明度が高いガラスを用いないことでデザイン性を高めたり、駅利用者の秘匿性を高めたりすることがある。
【0165】
よって、デザイン支援プログラム180により、リサイクル材ベース資材(リサイクル材で製造された建築資材を指す)を用いた建築物の採光性(経年変化を含めて)や軽量化に伴う耐震性を確認することで、リサイクル材ベース資材の個性を生かした建築物を製造(建築)することができる。
【0166】
すなわち、本システムによりサーキュラーエコノミーが促進されれば、廃棄材となる前の物品(資材)が取り扱われた業界(上記例では、自動車業界)と、当該リサイクル材ベース物品(資材)を製造するマニュファクチャが属する業界(上記例では、建設業界)と、が異業種(異業界)であっても、円滑な循環サイクルを実現するエコシステムを構築することができる。
【0167】
なお、建築物の一例は、ビル(ショッピングセンター)、駅舎、学校、エレベータ、等が考えられる。なお、学校への適用は、サーキュラーエコノミーを身近にするという学習的意義も生まれる。また、リサイクル材ベース資材で傷等の劣化が進んだモノについては、本発明の適用により、再度リサイクル材ベース資材に製造しなおしても良い。
【0168】
<<異業界間>>
上記自動車から建築のユースケースを汎用化し、異業界間で廃棄材とリサイクル材の還流を促進することもできる。従来、製品(リサイクル先)として用いられてきたバージン材よりも高機能で高価格であった素材が、経年変化等で製品(リサイクル前)として用いることができなくなり、廃棄材となった場合でも、有効活用ができるということである。このようなことは、特にリサイクル材になる前の製品と、リサイクル材となった後の製品と、が異業界である場合により発生しやすい。より詳しく言えば、リサイクル材となる前の製品が属していた業界における規格等の制約ルールに比べて、リサイクル材として製造された製品が属する業界仕様(制約ルール)が緩い場合には、適用する余地があるということである。この趣旨でも、デザイン支援プログラム180は、前述の提案に用いるために、各業界の規格などのルールを参照してもよい。
【0169】
また、上記の生産レシピ、製品製造レシピまたは製造可否情報あるいはデザイン支援プログラム180の出力情報は、廃棄材となる前の物品が属する業界における規制情報を加味して生成されても良い。
【0170】
<<リマニュファクチャリング>>
リマニュファクチャリングのためにマニュファクチャに戻された製品は、分解して整備される。こうした特性を利用し、M&Dサプライヤ(特に、デザイン支援プログラム180)が提案するリサイクル材を用いて意匠的デザインにかかわる外装部品を製造し、当該リサイクル材利用部品(リサイクル材ベース物品)を用いて組み立てる。すなわち、リサイクル材ベース物品は、賃借サービスであるシェアリングやリサイクル材を用いた再製造であるリマニュファクチャリングが可能な製品の外装部品となる。なお、外装部品とは、製品の利用者が製品を利用中に視認できる部品である。よって、例えば冷蔵庫であれば、外部パネルに加えて、冷蔵庫を開けたときの収納スペースに露出しているパネルも含む。
【0171】
さらに、<<異業界間>>で説明したスキームを用いれば、バージン材で製造した外装部品よりもデザイン性を高めた部品を製造し、リマニュファクチャリング製品に使うことができる。結果として、バージン製品よりも意匠性と機能性が高い製品を製造することができる。
【0172】
仮に、3年前に販売されたモバイルパソコン(例えば、外装は有色のポリカーボネート樹脂とABS樹脂の混合樹脂)のリマニュファクチャリングを想定する。そして、異業界の製品である屋根材で用いられている透明度が高いポリカーボネートの廃棄材からリサイクル材を作ると想定する。もし3年前には存在しないデザインコンセプトとして、スケルトンデザインが流行または流行の兆しが見えるのであれば、透明度が高いポリカーボネート廃棄材からリサイクル材を作り、当該リサイクル材で外装を製造、組付けを行うことで、モバイルパソコンの高価値化に貢献することができる。
【0173】
なお、ここで言うリマニュファクチャリングには、リファービッシュも含まれる概念である。
【0174】
<<アップサイクリング>>
アップサイクルという用語は、例えば「古くなったことで価値が下がったモノを用いて、当該価値が下がったモノよりも価値が高い新しいモノを作る」ことを意味する場合がある。そうした場合、異業界で法律等のルールを満たさずに価値がゼロとなった部品を、ゼロ以上であり、場合によってはバージン製品よりも製品価格を高めることができる本実施形態は、アップサイクルである、とも言える。
【0175】
<<エシカル消費>>
エシカル消費を強化する一つの情報として、なぜその製品を購入することがエシカルであるかを示すストーリーを整理、強化することが必要である。よってリサイクル材を用いた製品をエシカル消費視点で販売する場合、リサイクル材来歴やトラストデータには、単なる数字やテキストではなく、廃棄材となる前の製品または部品の状態や様子を示した写真や動画を含めても良い。この場合、これらのデータは、マニュファクチャを含む製品ユーザがアクセスできることが好ましいため、例えばWeb URLにより、これらデータにアクセスできることがより望ましい。製品に当該URLを張り付けたり、間接的に他のWEBページから参照したりすることが一例としてある。
【0176】
<リサイクル材を用いた製品の製造装置(設備)>
<<廃棄材が樹脂の場合>>
樹脂の場合、射出成型機、ブロー成形機が一例である。より製造数が少ないのであれば、3Dプリンタが用いられても良い。また、ブロー成型の金型の代わりとして木型を用いたり、砂や石膏上に型を転写したものを成形用型として用いたりしても良い。金型よりも成型精度が落ちるが、形状変更が容易であるため、エシカル消費を支えるストーリーに形状をより適合させることが可能となる。また、簡易金型が用いられても良い。
【0177】
<<廃棄材が金属の場合>>
旋盤、フライス盤、マシニングセンタ、プレス機、鍛造、鋳造、LMD(Liquid Metal Deposition)が一例である。ここで、より製造数が少ないのであれば、金型が不要な鍛造、プレス成型以外が好適である。
【0178】
<バリエーション>
以上、本実施形態について説明した。なお、上記の実施形態には、以下のバリエーションを適用してもよい。
*M&Dサプライヤは、モノとしてリサイクル材の提供の代わりに、リサイクル材ベース部品として部品を製造し、マニュファクチャに提供しても良い。この場合、製品製造レシピは、M&Dサプライヤが活用することになる。
*プロセッサシステム100から、MIプログラム160、製品製造PIプログラム170、又はデザイン支援プログラム180の少なくとも1つが省略されても良い。例えば、デザイン支援プログラムが省略されても良い。
*データベースや各プログラムで説明した情報や処理は、すべてが必須ではない。
*リサイクル材を用いた物品箇所(リサイクル材ベース物品またはリサイクル材ベース部品の該当箇所)について、意匠パラメータを自動で変化させることで、リサイクル材や物品の意匠デザイン上の変化を簡単に確認できるようにしても良い。
*廃棄材の計測データと、リサイクル材の計測データと、に基づいて、リサイクル材の品質や機能に関する向上の程度を示す指標が計算されても良い。
*上記指標を用いて、リサイクラや生産レシピの質指標が計算されても良い。さらに、マテリアルリサイクルにおいては、過剰なバージン材や添加剤の追加は環境負荷増加の要因となるため、これらの量をさらに考慮して、前述の質指標が計算されても良い。
*M&Dサプライヤを複数の組織で構成しても良い。例えば、リサイクル材のトレードを行っていた第1組織(CRMプログラム110も利用)に対して、第2組織がM&Dサプライヤ保有の設備や処理の残りを担当しても良い。また、計測データの計測は第2組織以外の組織(第1組織や第1組織とも異なる第3組織)が担っても良い。
【0179】
<<連携のバリエーション>>
連携プログラム190による、MIプログラム160、製品製造PIプログラム170、CRMプログラム110およびデザイン支援プログラム180と、の連携は、
図6で説明した処理以外であっても良い。これまで説明した内容の連携も含めると、下記が考えられる。
【0180】
<<<デザイン支援プログラム180から他のプログラムへの影響>>>
*デザイン支援プログラム180から、製品製造PIプログラム170への影響:デザイン支援プログラム180で更新又は指定された意匠パラメータを、製品製造PIプログラム170の入力にする。これにより、意匠パラメータに適したリサイクル材ベース物品の製品製造レシピを生成することができる。
*デザイン支援プログラム180から、MIプログラム160への影響:更新又は指定された意匠パラメータのうち、リサイクル材としての仕様とみなせるパラメータを抽出し、MIプログラム160に入力する。これにより、意匠パラメータに適したリサイクル材の生産レシピを生成することができる。
*デザイン支援プログラム180から、CRMプログラム110への影響:デザイン支援プログラム180の利用に際して登録された利用者登録情報を、CRMプログラム110に送り(すなわち、CRMデータDB111に格納し)、CRMプログラム110が持つ受発注以外の処理と連携させる。
【0181】
<<<製品製造PIプログラム170から他のプログラムへの影響>>>
*製品製造PIプログラム170から、MIプログラム160への影響:製品製造PIプログラム170の入力である製品製造レシピの拘束条件と、出力である製品製造レシピと、の間のマージン量(ベクトル値でも可)を求め、MIプログラム160の入力であるリサイクル材の仕様をマージン量に基づいて補正(例えば、製品製造レシピ(のパラメータ)と、リサイクル材(のパラメータ)と、の関係を参照しつつ)する。これにより、より製品製造レシピのロバスト性が高くなるようなリサイクル材の生産レシピをMIプログラム160に生成させることができる。マニュファクチャのより高位なニーズは、狙った仕様の物品が製造できることであり、リサイクル材の仕様はその手段と考えられる。よって、廃棄材から物品までの生産レシピ、製品製造レシピを全体で最適化することで、リサイクル材の仕様が固定されている場合と比較してより自由度が増す。
*製品製造PIプログラム170から、デザイン支援プログラム180への影響:マニュファクチャの製造設備に係る拘束条件を満たせず、製造に用いることができないリサイクル材は、デザイン支援プログラム180への情報送信から除外する。デザイン支援プログラム180が生成した複数の意匠パラメータ案を、製品製造PIプログラム170が前述のマージン量に基づいて評価し、評価の高い意匠パラメータ案をデザイン支援プログラム180に送信する。これにより、よりロバストに物品製造が可能な意匠デザインを提案することができる。
*製品製造PIプログラム170から、CRMプログラム110への影響:事前に格納してある、マニュファクチャの製造設備に係る拘束条件を用いて、登録されているリサイクル材の仕様を評価する。マニュファクチャの製造設備が変化することで、受注される見込みが低い仕様を持つリサイクル材を廃番にしたり、反対に受注される可能性が上がったリサイクル材の在庫を増加させることができる。
【0182】
<<<MIプログラム160から他のプログラムへの影響>>>
*MIプログラム160から、デザイン支援プログラム180への影響:MIプログラム160で生成した生産レシピから、環境負荷情報(特に環境負荷が高いことがわかる情報)を抽出し、デザイン支援プログラム180に送信し、表示させる。
*MIプログラム160から、製品製造PIプログラム170へのフィードバック:MIプログラム160で生成されたリサイクル材の仕様を、製品製造PIプログラム170の入力にする。これにより、新しい仕様のリサイクル商品を、マニュファクチャの製造設備の拘束条件を用いて実際に製造できるかを確認することができる。
*MIプログラム160から、CRMプログラム110への影響:MIプログラム160で生成されたリサイクル材の仕様をCRMプログラム110に送り、仕様として登録させる。これにより、MIプログラム160の出力に基づいて生産した、試作リサイクル材をCRMプログラム110で管理することができる。よって、CRMプログラム110で、試作品を試行しているマニュファクチャや、試作品を生産したリサイクラをまとめて管理することができる。
【0183】
<<<CRMプログラム110から他のプログラムへの影響>>>
*CRMプログラム110から、MIプログラム160への影響:MIプログラム160が生成するリサイクル材の仕様と、実際のリサイクル材の仕様と、の差が少ないリサイクラを求める。マテリアルズインフォマティクスと相性の良いリサイクラの存在は、MIプログラム160の進化や、リサイクル材の試作から製品に至るまでの時間短縮に貢献する。
*CRMプログラム110から、製品製造PIプログラム170への影響:製造設備の拘束条件が未入力である第1マニュファクチャ向けの製造可否を判断する場合、当該マニュファクチャと類似する第2マニュファクチャ(製造設備の拘束条件を入力済のマニュファクチャである)を1以上選択し、製品製造PIプログラム170に送信する。これにより、第1マニュファクチャの製造設備の拘束条件が登録されていないが、CRMデータDB111に登録されている場合に、第2マニュファクチャの製造設備の拘束条件を用いて製品製造レシピを生成したり、所定のリサイクル材を用いた製造可否判定結果を生成することができる。例えば、第1マニュファクチャの従業員がデザイン支援プログラム180を利用し、その延長で製品製造PIプログラム170が実行されるような場合に好適である。なお、第2マニュファクチャが複数選択された場合、対応する製造設備の拘束条件も複数あるため、これらを統計演算で1つの拘束条件にまとめても良い。特定マニュファクチャの製造設備の情報の漏洩防止にもつながる他、より標準的な拘束条件となることが期待される。なお、「類似」のマニュファクチャの求め方としては、同業種であったり、同じ種類の生産設備の保有の有無、物品の大きさ、などに基づいて判断することが一例である。
*CRMプログラム110から、デザイン支援プログラム180への影響:CRMデータDB111に登録されているリサイクル材の在庫、コスト等の情報をデザイン支援プログラム180に送り、表示させる。これにより、デザイン支援プログラム180の利用者に対して、リサイクル材の流通量やコストを考慮しながらデザインしてもうことに貢献できる。
図5は、その一例である。
【0184】
また、最後に、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、同一の技術的思想の範囲内において様々な変形例が含まれる。各実施形態の構成、情報、プログラムの一部について、削除、他の構成の追加や置換をすることが可能である。
【0185】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【0186】
<まとめ>
以上、本実施形態は以下を説明した。
【0187】
<<視点1>>
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステム及び方法であって、
前記メモリリソースは、第1プログラムおよび第2プログラム(いずれも以下から選択される)と、連携プログラムと、を記憶し、
*少なくとも、廃棄材を用いて製造されたリサイクル材の在庫又は受注を管理する、CRM(Customer Relationship Management)プログラムと、
*少なくとも一部に廃棄材を用いてリサイクル材を生産するために用いられるリサイクル材の生産レシピを生成する、マテリアルズインフォマティクスプログラムと、
*前記リサイクル材を用いて製造される物品であるリサイクル材ベース物品を製造するために用いられる製造プロセスレシピの生成、又は製造可否情報を生成する、製品製造プロセスインフォマティクスプログラムと、
*前記リサイクル材ベース物品のデザインを支援する、デザイン支援プログラム、
ここで、
前記プロセッサは、前記連携プログラムを実行することで、前記第1プログラムと、前記第2プログラムと、を連携させる、
システム及び方法。
【0188】
<<視点2(オプション)>>
前記プロセッサは、
前記廃棄材の来歴に関する廃棄材来歴情報を前記メモリリソースに記憶し、
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又は前記デザイン支援プログラムの出力情報は、前記廃棄材来歴情報に基づいて生成される。
【0189】
<<視点3(オプション)>>
前記第1プログラムは、前記マテリアルズインフォマティクスプログラムであり、
前記プロセッサは、
前記廃棄材の来歴に関する廃棄材来歴情報を前記メモリリソースに記憶し、
少なくとも、前記廃棄材来歴情報と、前記生産レシピと、に基づいて、リサイクル材来歴情報を生成する。
【0190】
<<視点4(オプション)>>
前記第1プログラムは、以下のいずれかであり、
*前記マテリアルズインフォマティクスプログラム、
*前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラム、
*前記デザイン支援プログラム、
前記プロセッサは、
前記リサイクル材又は前記廃棄材に関する物性値をメモリリソースに記憶し、
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又は前記デザイン支援プログラムの出力情報は、前記物性値に基づいて生成される。
【0191】
<<視点5(オプション)>>
前記プロセッサは、
前記リサイクル材の物性値に基づいて、マニュファクチャに出荷した当該リサイクル材の仕様に関するトラストデータを生成する。
【0192】
<<視点6(オプション)>>
前記第1プログラムは、前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラムであり、
前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラムが前記製造プロセスレシピを作る場合において、
前記製造プロセスレシピは、マニュファクチャより取得した製造プロセス条件範囲に基づいて生成される。
【0193】
<<視点7(オプション)>>
前記リサイクル材ベース物品由来で生じた還流廃棄材を前記廃棄材とする場合、
前記プロセッサは、
前記還流廃棄材に関する前記廃棄材来歴情報を、前記リサイクル材ベース物品の材料となった前記リサイクル材来歴情報に基づいて生成する。
【0194】
<<視点8(オプション)>>
前記第1プログラムは、前記CRMプログラムであり、
前記メモリリソースには、過去の前記リサイクル材に関する受注実績情報が記憶され、
前記CRMプログラムは、
前記受注実績情報に基づいて、必要となる前記リサイクル材の仕様および量の予測値を算出し、
前記予測値に基づいて、前記リサイクル材を生産するリサイクラへの生産指示を生成する。
【0195】
<<視点9(オプション)>>
前記廃棄材来歴情報は、
前記廃棄材となる前の前記リサイクル材から製造された前記リサイクル材ベース物品のシェアリングサービスを提供するシェアリング組織が管理する物品賃借情報に基づいて生成された情報である。
【0196】
<<視点10(オプション)>>
前記廃棄材となる前の物品が取り扱われた第1業界と、前記リサイクル材ベース物品を製造するマニュファクチャが属する第2業界と、は、異業種である。
【0197】
<<視点11(オプション)>>
前記第1プログラムは、以下のいずれかであり、
*前記マテリアルズインフォマティクスプログラム、
*前記製品製造プロセスインフォマティクスプログラム、
*前記デザイン支援プログラム、
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又はデザイン支援プログラムの出力は、前記第2業界の物品にかかる規制情報に基づいて生成される。
【0198】
<<視点12(オプション)>>
前記生産レシピ、前記製造プロセスレシピ又は製造可否情報、又はデザイン支援プログラムの出力情報は、前記第1業界の前記廃棄材となる前の物品にかかる規制情報に基づいて生成される。
【0199】
<<視点13(オプション)>>
前記リサイクル材来歴情報には、
前記廃棄材となる前の装置または部品の様子を示すテキスト又は写真又は動画、又は、
リサイクル材の生産工程の写真または動画
が格納され、
マニュファクチャおよびその他の者は、
前記リサイクル材来歴情報に紐付けられているWebのURLにアクセスすることにより、当該リサイクル材来歴情報を参照できる。
【0200】
<<視点14(オプション)>>
前記リサイクル材ベース物品は、
賃借サービスであるシェアリング又は前記リサイクル材を用いた再製造であるリマニュファクチャリング、が可能な製品の外装部品である。
【0201】
<<視点15(オプション)>>
前記第1プログラムは、前記デザイン支援プログラムであり、
前記デザイン支援プログラムの出力は、少なくとも以下のいずれか1つを含む、
*前記リサイクル材ベース物品の色、パターン、又は写真サンプル、
*指定又は候補として選択された前記リサイクル材の仕様、流通量、添加剤追加量、又はコスト、
*前記リサイクル材の来歴情報または前記廃棄材の来歴情報。
【0202】
<<視点16>>
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステム及び方法であって、
廃棄材の来歴に関する廃棄材来歴情報又は/及び前記廃棄材に関する物性値を、前記メモリリソースに記憶し、
前記プロセッサが、少なくとも一部に廃棄材を用いてリサイクル材を生産するために用いられるリサイクル材の生産レシピを、前記廃棄材来歴情報又は/及び前記物性値に基づいて生成する。
【0203】
<<視点17(オプション)>>
前記生産レシピの生成は、前記廃棄材来歴情報及び前記物性値を、機械学習エンジンの入力に与えることで、行われる。
方法。
【0204】
<<視点18(オプション)>>
前記生産レシピの生成は、前記物性値を、前記廃棄材来歴情報に基づいて補正する、ことで行われる。
【0205】
<<視点19>>
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有するシステム及び方法であって、
リサイクル材の来歴に関するリサイクル材来歴情報又は/及び前記リサイクル材に関する物性値を、前記メモリリソースに記憶し、
前記プロセッサが、少なくとも一部に前記リサイクル材を用いて物品を生産するために用いられる製造プロセスレシピを、前記リサイクル材来歴情報又は/及び前記物性値に基づいて生成する。
【0206】
<<視点20(オプション)>>
前記製造プロセスレシピの生成は、前記リサイクル材来歴情報及び前記物性値を、機械学習エンジンの入力に与えることで、行われる。
【0207】
<<視点21(オプション)>>
前記製造プロセスレシピの生成は、前記物性値を、前記リサイクル材来歴情報に基づいて補正する、ことで行われる。
【符号の説明】
【0208】
100・・・マテリアルズアンドデータサプライヤ組織のプロセッサシステム、30・・・プロセッサ、40・・・メモリリソース、50・・・NI(Network Interface Device)、60・・・UI(User Interface Device)、110・・・CRMプログラム、111・・・CRMデータDB、120・・・計測データ管理プログラム、121・・・計測データDB、130・・・マテリアルチェーン管理プログラム、131・・・マテリアルチェーンDB、140・・・来歴管理プログラム、141・・・来歴データDB、150・・・トラストデータプログラム、151・・・トラストデータDB、160・・・MIプログラム、161・・・MIデータDB、170・・・製品製造PIプログラム、171・・・製品製造PIデータDB、180・・・デザイン支援プログラム、181・・・デザインデータDB、190・・・連携プログラム、10・・・倉庫、20・・・計測装置