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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062436
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】弦楽器のネックの撓み修正装置
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/06 20200101AFI20230426BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G10D3/06
G10D1/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172419
(22)【出願日】2021-10-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】521462716
【氏名又は名称】ハイ リバー エンタープライズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】High River Enterprises Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】398068303
【氏名又は名称】ヤマウチマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 祐介
(72)【発明者】
【氏名】福岡 道孝
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA04
5D002CC27
(57)【要約】
【課題】 二つの棒状部材の連結状態をより強固なものにして長寿命の撓み修正装置を提供する。
【解決手段】 弦楽器のネックに設けられる第一の棒状部材11と、第一の棒状部材11の端部に取り付けられる固定部材13,14と、固定部材14に貫通形成された螺子孔14aと、螺子孔14aに螺入される螺子軸部112aを備え固定部材13に取り付けられる第二の棒状部材121と、を有し、固定部材13,14は、第一の棒状部材11の端部と嵌合する嵌合溝13c,14cと、固定部材13,14の側面から第一の棒状部材11の端部を貫通する軸孔13b,14bと、この軸孔13b,14bに嵌挿される軸部材16とを備え、固定部材13,14を軸部材16とともに第一の棒状部材11の端部に固着し、第二の棒状部材12の回転により両固定部材13,14を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に付勢するように構成してある。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器のネックの撓みを修正する撓み修正装置において、
前記ネックの長手方向に沿って設けられる第一の棒状部材と、
この第一の棒状部材の一端側に取り付けられる一端側固定部材及び他端側に取り付けられる他端側固定部材と、
前記他端側固定部材に貫通形成された螺子孔と、
前記第一の棒状部材に沿って設けられるとともに、他端側に前記螺子孔に螺入される螺子軸部を備え、一端部が前記一端側固定部材に取り付けられる第二の棒状部材と、
を有し、
前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材は、前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部と嵌合する嵌合溝と、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材の側面から前記第一の棒状部材の前記一端部及び他端部を貫通する軸孔と、この軸孔に嵌挿される軸部材とを備え、
前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材を前記軸部材とともに前記一端部及び他端部に固着し、
前記第二の棒状部材の回転にともなう前記螺子孔と前記螺子軸部との螺合により、前記一端側固定部材と前記他端側固定部材を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に付勢すること、
を特徴とする弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【請求項2】
前記第一の棒状部材の前記一端部及び他端部を断面角形状に形成し、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材の前記嵌合溝を前記一端部及び他端部と嵌合するコの字状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【請求項3】
前記一端側固定部材に螺子孔を形成し、前記第二の棒状部材の前記一端部に螺子部を形成して、前記第二の棒状部材を前記一端側固定部材の前記螺子孔に螺入するようにし、前記第二の棒状部材の回転により、前記他端側固定部材の前記螺子孔と協働して、前記一端側固定部材と前記他端側固定部材を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に付勢することを特徴とする請求項1又は2に記載の弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【請求項4】
前記第二の棒状部材を一端側の第一の部分と他端側の第二の部分とに分割し、前記第一の部分と前記第二の部分とを連結部材によって連結し、前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に連結し、前記螺子軸部を形成した前記第二の部分を前記他端側固定部材の前記螺子孔に螺入したことを特徴とする請求項1又は2に記載の弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【請求項5】
前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に固着し、前記第一の部分の他端部に螺子部を形成して前記連結部材の一端側の螺子孔に螺入したことを特徴とする請求項4に記載の弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【請求項6】
前記第一の部分の一端部に螺子部を形成し、前記一端側固定部材に形成した螺子孔に螺入し、前記第一の部分の他端部を前記連結部材の一端側に固着しことを特徴とする請求項4に記載の弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【請求項7】
前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に固着し、前記第一の部分の他端部を前記連結部材の一端側に固着し、前記第二の部分の前記螺子軸部の一端部を前記連結部材の他端側に形成した螺子孔に螺入したことを特徴とする請求項4に記載の弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【請求項8】
前記第一の棒状部材及び第二の棒状部材の少なくとも一方に、前記第一の棒状部材と前記第二の棒状部材とが接触しないようにする被覆部材を形成したことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のネックの撓み修正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギター、ベース、ウクレレ、バイオリン、チェロ、マンドリン、コントラバスなどの弦楽器において、弦などによるネックの撓みを修正する弦楽器のネックの撓み修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギター、ベース、ウクレレ、バイオリン、チェロ、マンドリン、コントラバスなどの弦楽器においては、弦を張る際に、弦の張力等によってネックが弦楽器の表方向に撓み易い。このようなネックの撓みを修正するために、ネックの内部にはその長手方向に撓み修正装置が埋め込まれている。
【0003】
一般に撓み修正装置は、二つの棒状部材を組み合わせ、ネジの作用によって一方の棒状部材の長さを長短変えることで他方の棒状部材を凹状又は凸状に撓ませ、この棒状部材の撓みによって弦の張力等によるネックの撓みを相殺しようとするものである。
例えば、特許文献1に記載のネックの撓み修正装置においては、特許文献1の図1に示すように、第一棒状部材12の基端部にブロック状の固定部材20が接着等によって取付けられ、この固定部材20に貫通形成されたねじ孔(第一雌ネジ22w)に、ネジ部材25の第一雄ネジ25tが第二棒状部材14の反対方向から螺合されている。
【0004】
また、第一雄ネジ25tに形成された第二雌ネジ25wに第二棒状部材14の第二雄ネジ14tが螺合されている。なお、第二棒状部材14は、図1(A)(C)に示すように、予め若干湾曲している。上記構成のネックの撓み修正装置10はネック2の長溝2sに埋め込まれる。そして、ネジ部材25を緩める方向に回転させることで、第二棒状部材14が引っ張られて図1(B)のように第一棒状部材12を凸形に撓ませ、ネジ部材25を締める方向に回転させることで、第二棒状部材14が圧縮方向に押されて、図1(D)のように第一棒状部材12を凹形に撓ませる。このため、第一棒状部材12の凹湾曲又は凸湾曲の程度を調整することで、弦4によるネック2の撓みを修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-29741号公報(図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載したような従来のネックの撓み修正装置は、第一の棒状部材12と第二棒状部材14とを連結している固定部材20が第一棒状部材12の基端部に接着等によって取付けられていることから、ネジ部材25を回転させることによる修正を繰り返すうちに、固定部材20と第一棒状部材12の基端部との接着等が剥離しやすいという問題がある。なお、接着等に替えて固定部材20と第一棒状部材12の基端部とを溶着又は蝋付けすることも考えらえるが、いずれにしても繰り返し荷重により接着部分、溶着部分又は蝋付け部分が破損すると、ネックの撓み修正装置が機能しなくなり、撓み修正装置を交換する必要が生じる。
【0007】
しかし、ネックに埋め込まれた撓み修正装置を交換するのは容易ではなく、ネックや弦楽器そのものを分解する必要が生じ、多大な時間と費用が掛かるという問題がある。そのため、撓み修正装置の寿命は可能な限り永いことが求められ、弦楽器の寿命と同程度であることが理想とされる。
また、特許文献1に記載の撓み修正装置は、一方向の撓み、すなわち、弦の張力などによってネックが上向きに湾曲する撓み(以下、凸状の撓みとする)に対しては修正が可能であるものの、下向きに湾曲する撓み(以下、凹状の撓みとする)に対しては修正を行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記のような要求及び問題点に鑑みてなされたもので、二つの棒状部材の連結状態をより強固なものにするとともに、接着、溶着又は蝋付け部分などの固着部分が破損しにくく、これら固着部分が破損したとしても一定期間に亘って二つの棒状部材の連結状態を維持することで長期に亘って交換の必要が生じず、かつ、凹状及び凸状のいずれの撓みも修正が可能な撓み修正装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撓み修正装置は、請求項1に記載するように、弦楽器のネックの撓みを修正する撓み修正装置において、ネックの長手方向に沿って設けられる第一の棒状部材と、この第一の棒状部材の一端側に取り付けられる一端側固定部材及び他端側に取り付けられる他端側固定部材と、前記他端側固定部材に貫通形成された螺子孔と、前記第一の棒状部材に沿って設けられるとともに、他端側に前記螺子孔に螺入される螺子軸部を備え、一端部が前記一端側固定部材に取り付けられる第二の棒状部材と、を有し、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材は、前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部と嵌合する嵌合溝と、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材の側面から前記第一の棒状部材の前記一端部及び他端部を貫通する軸孔と、この軸孔に嵌挿される軸部材とを備え、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材を前記軸部材とともに前記一端部及び他端部に固着し、前記第二の棒状部材の回転にともなう前記螺子孔と前記螺子軸部との螺合により、前記一端側固定部材と前記他端側固定部材を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に付勢する構成としてある。
【0010】
請求項2に記載するように、前記第一の棒状部材の前記一端部及び他端部を断面角形状に形成し、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材の前記嵌合溝を前記一端部及び他端部と嵌合するコの字状に形成することで、前記第一の棒状部材に対して前記一端側固定部材及び他端側固定部材をより強固に固定することが可能になる。
【0011】
請求項3に記載するように、前記一端側固定部材に螺子孔を形成し、前記第二の棒状部材の前記一端部に螺子部を形成して、前記第二の棒状部材を前記一端側固定部材の前記螺子孔に螺入するようにしてもよい。このようにすることで、前記第二の棒状部材の回転させた際に発生する前記螺子軸部又は螺子部と螺子孔との螺合による前記一端側固定部材と前記他端側固定部材を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に移動させる負荷を、前記他端側固定部材と前記一端側固定部材に分散させることができる。また、前記螺子軸部又は螺子部と螺子孔との螺合部分における変位量も前記他端側固定部材と前記一端側固定部材に分散させることができる。そのため、前記一端側固定部材及び他端側固定部材と前記第一の棒状部材との固着部分の破損をより長期に亘って抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載するように、前記第二の棒状部材は第一の部分と第二の部分の少なくとも二つに分割し、前記第一の部分と前記第二の部分とを連結部材によって連結するようにして、前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に連結し、前記螺子軸部を形成した前記第二の部分を前記他端側固定部材の前記螺子孔に螺入するようにしてもよい。
このようにすることで、前記第一の部分に対する前記第二の部分の取り付けが容易になる。
【0013】
この場合、請求項5に記載するように、前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に固着し、前記第一の部分の他端部に螺子部を形成して前記連結部材の一端側の螺子孔に螺入するようにしてもよい。また、請求項6に記載するように、前記第一の部分の一端部に螺子部を形成し、前記一端側固定部材に形成し螺子孔に螺入し、前記第一の部分の他端部を前記連結部材の一端側に固着し、前記第二の部分の前記螺子軸部を前記他端側固定部材の前記螺子孔に螺入するようにしてもよい。また、請求項7に記載するように、前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に固着し、前記第一の部分の他端部を前記連結部材の一端側に固着し、前記第二の部分の前記螺子軸部の一端部を前記連結部材の他端側に形成した螺子孔に螺入するようにしてもよい。
【0014】
請求項5~7に記載するように構成することで、前記第二の部分を回転させれば、前記第二の部分の螺子軸部と前記他端側固定部材の螺子孔との螺合によって前記第二の部分を進退移動させるだけでなく、前記第一の部分の他端部の螺子部と前記連結部材の螺子孔との螺合、前記第一の部分の一端部の螺子部と前記一端側固定部材の螺子孔との螺合又は前記第二の部分の螺子軸部と前記連結部材の螺子孔との螺合によって、前記一端側固定部材と前記他端側固定部材を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に移動させる負荷を、二か所に分散させることができ、かつ、変位量も二か所に分散させることができる。そのため、前記一端側固定部材及び他端側固定部材と前記第一の棒状部材との固着部分の破損をより長期に亘って抑制することができる。
【0015】
さらに請求項8に記載するように、前記第一の棒状部材及び第二の棒状部材の少なくとも一方に、前記第一の棒状部材と前記第二の棒状部材とが接触しないようにする被覆部材を形成するとよい。
このような被覆部材を形成することで、演奏中に金属で形成された第一の棒状部材と第二の棒状部材とが接触することによる異音の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のように構成されているので、凸状の撓みだけでなく、凹状の撓みの修正も可能である。また、第一の棒状部材と一端側及び他端側の固定部材との固着部分が破損しにくく、撓み修正装置の寿命を延ばすことができる。さらに、たとえ前記固着部分が破損しても、前記軸部材で第一の棒状部材と第二の棒状部材の連結を維持することができるので、撓み修正装置の寿命をさらに延ばすことが可能になる。
また、前記第二の棒状部材を回転させることにより両端の前記一端側固定部材と他端側固定部材とに作用する負荷及び変位量を二か所に分散させて、撓み修正装置の寿命をさらに延ばすことが可能になる。
このように本発明によれば、凸状の撓みだけでなく凹状の撓みの修正も可能な撓み修正装置であって、楽器の寿命と同程度の寿命を有する撓み修正装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の撓み修正装置の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図6は、本発明の撓み修正装置の一実施形態にかかり、図1は撓み修正装置の組立正面図である。また、図2図6図1の撓み修正装置の各構成部材の説明図で、図2は第一の棒状部材に係り、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその拡大右側面図、図3は第二の棒状部材の正面図、図4はスリーブの正面図、図5は固定部材に係り、(a)はその側面図、(b)はその正面図、図6は軸部材の側面図である。
なお、以下の説明において「一端側」と記載する場合は図1の右側を、「他端側」と記載する場合は図1の左側を示すものとする。
【0018】
[第一の棒状部材11]
撓み修正装置1は、第一の棒状部材11と第二の棒状部材12とを組み合わせて構成され、第一の棒状部材11に対する第二の棒状部材12の相対的な長さを長短調整することで、第一の棒状部材11を凹状又は凸状に撓ませ、これによってネックの撓みを修正するものである。
第一の棒状部材11は、図2に示すように、断面角形状の棒状の本体部分111と、この本体部分111の一端(図の右端)に突出形成された断面角形状の一端部112と、本体部分111の他端(図の左端)に突出形成された断面角形状の他端部113とを有している。第一の棒状部材11は、ステンレスや鋼などの金属で形成することができるが、チタン合金(例えば15-3-3-3チタン合金など)で形成するのが好ましい。
第一の棒状部材11の一端部112及び他端部113は、図2に示すように本体部分111より細幅に形成されていて、後述する固定部材13,14のコの字形の溝13c,14cと嵌合するようになっている。
本体部分111には、軽量化のほか、撓みやすさや撓みの形態の調整を目的として、長手方向に複数の孔111aが形成されている。また、一端部112及び他端部113の側面には後述する軸部材16が嵌挿される軸孔112a,113aが貫通形成されている。
【0019】
[第二の棒状部材12及びスリーブ15]
第二の棒状部材12は、図3に示すように、一端側(図の右側)の第一の部分121と、他端側(同左側)の第二の部分122とに分割されている。第一の部分121及び第二の部分122はそれぞれ丸棒状に形成されている。第一の部分121及び第二の部分122は、ステンレスや鋼などの金属で形成することができるが、チタン合金(例えば64チタン合金など)で形成するのが好ましい。
第一の部分121の両端には螺子部121a,121bが形成されている。
第二の部分122はその全長が螺子軸部122aとして形成され、螺子軸部122aの他端側にはレンチ孔122cを有する頭部122bが形成されている。
第一の部分121と第二の部分122とは図4に示す連結部材としてのスリーブ15によって連結される。スリーブ15はステンレスや鋼、チタン合金、純チタンなどの金属で形成することができる。
スリーブ15は、一端側に螺子孔15aが形成され、他端側には螺子孔15bが形成されている。そして、第一の部分121の他端側の螺子部121bをスリーブ15の螺子孔15aに螺入し、第二の部分122の螺子軸部122aの一端を螺子孔15bに螺入することで、第一の部分121と第二の部分122とがスリーブ15を介して連結される。
なお、上記構成の第一の棒状部材11及び第二の棒状部材12のいずれか一方は、演奏時に接触して異音を発生させること防止するために、少なくとも接触する可能性がある部分を樹脂などで被覆するのが好ましい。
【0020】
[固定部材13,14及び軸部材16]
第一の棒状部材11の一端部112には一端側固定部材13が取り付けられ、他端部113には他端側固定部材14が取り付けられる。この実施形態において一端側固定部材13と他端側固定部材14は同一形状、同一大きさ、同一構成であるので、以下の説明では固定部材13,14として説明する。
固定部材13,14は、スリーブ15はステンレスや鋼、チタン合金などの金属で形成することができるが、純チタンで形成するのが好ましい。
図5(a)に示すように、側面視してコの字状の溝13c,14cが形成されていて、このコの字状の溝13c,14cが角形状に形成された第一の棒状部材11の一端部112及び他端部113に嵌装されるようになっている。また、固定部材13,14の一端面から他端面に向けて螺子孔13a,14aが形成され、第二の部分122の螺子軸部122aと螺合できるようになっている。
さらに、螺子孔13a,14aと交差する方向に、コの字形の溝13c,14cを横断して軸部材16が挿入される軸孔13b,14bが貫通形成されている。
【0021】
[第一の部分121,第二の部分122,スリーブ15及び固定部材13との連結構造]
図1の符号I,II,IIIの一点鎖線円で示す部分は、符号Iが第一の部分121の一端部と固定部材13との連結部分を、符号IIが第一の部分121の他端部とスリーブ15の一端部との連結部分を、符号IIIが第二の部分122の螺子軸部122aの一端部とスリーブ15の他端部との連結部分を示している。
第一の部分121の両端には螺子部121a,121bが形成され、固定部材13には螺子孔13aが形成され、スリーブ15の両端には螺子孔15a,15bが形成されていて、螺子部121a,121b及び螺子軸部122aが螺子孔13a,15a,15bに螺入できるようになっている。
【0022】
上記の各々を螺合した状態で、符号IIで示す部分及び符号IIIで示す部分を蝋付けや溶着等により第一の部分121とスリーブ15及び第二の部分122とスリーブ15を固着すると、第二の部分の回転はスリーブ15を介して第一の部材121に伝達され、固定部材13の螺子孔13aに螺子部121aで螺合された第一の部分121を固定部材13に対して進退移動させる。
このような連結構造によれば、第二の棒状部材12を回転させることで、螺合によって進退移動する部分が、固定部材14と第二の部分122の螺子軸部122aとの螺合部分と符号Iで示す部分の二か所になり、進退移動の際の負荷と変位量を二か所に分散することができる。
【0023】
また、符号Iで示す部分及び符号IIIで示す部分を蝋付けや溶着等により第一の部分121と固定部材13及び第二の部分122とスリーブ15を固着すると、第二の部分の回転はスリーブ15に伝達され、螺子孔15aに螺子部121bで螺合された第一の部分121をスリーブ15に対して進退移動させる。
また、符号Iで示す部分及び符号IIで示す部分を蝋付けや溶着等により第一の部分121と固定部材13及びスリーブ15を固着すると、第二の部分の回転により、螺子軸部122aでスリーブ15の螺子孔15bに螺合された第二の部材122をスリーブ15に対して進退移動させる。
【0024】
上記のような連結構造であれば、第二の棒状部材12は回転によりその長さが長短変化する。そして、このような連結構造においても、第二の棒状部材12を回転させることで、螺合によって進退移動する部分が、固定部材14と第二の部分122の螺子軸部122aとの螺合部分と符号IIで示す部分又は符号IIIで示す部分の二か所になり、進退移動の際の負荷と変位量を二か所に分散することができる。
進退移動の際の負荷と変位量の分散は、固定部材13,14と第一の棒状部材11との固着部分の作用する負荷を軽減し、前記固着部分を破損しにくくして、撓み修正装置1の寿命をさらに長くすることができる。
【0025】
[撓み修正装置1の組立]
図1に示す撓み修正装置1は、図2図6に示す構成部材を以下の手順で組み合わせることで形成される。
まず、第一の棒状部材11の一端部112に固定部材13の溝13cを嵌め込み、他端部113に固定部材14の溝14cを嵌め込む。そして、軸部材16を各軸孔13b,112a,14b,113aに挿入し、第一の棒状部材11の両端に固定部材13,14を連結する。この後、第一の棒状部材11の両端と固定部材13,14及び軸部材16を蝋付けや溶着等で固着する。
次いで、第二の棒状部材12の第一の部分121の一端側の螺子部121aを固定部材13の螺子孔13aに螺入し、他端側の螺子部121bをスリーブ15の螺子孔15aに螺入する。また、第二の部分122の螺子軸部122aを固定部材14の螺子孔14aに螺入し、螺子軸部122aの一端をスリーブ15の螺子孔15bに螺入する。
第一の部分121,第二の部分122,スリーブ15及び固定部材13との連結構造及びその作用は、符号I,II,IIIを参照しつつ説明したとおりである。
【0026】
[撓み修正装置1の作用]
上記のようにして組み立てられた撓み修正装置1は以下のように作用する。
第二の棒状部材12の頭部122bのレンチ孔122c(図3参照)に図示しないレンチを差し込み、時計周り方向に回転させると、螺子軸部122aと固定部材14の螺子孔14aとの螺合により、第二の棒状部材12の第二の部分122が一端側(図の右側)に移動して二つの固定部材13,14を互いに遠ざける方向に押圧する。
また、第二の部分122とともにスリーブ15が回転し、スリーブ15の螺子孔15aから第一の部分121の螺子部121bが繰り出されて、これによっても二つの固定部材13,14は互いに遠ざける方向に押圧される。これにより、第一の棒状部材11が上向き凸方向に湾曲する。
レンチを反時計周り方向に回転させれば、上記と逆の作用によって第一の棒状部材11は下向き凹状に湾曲する。
【0027】
本発明の撓み修正装置1においては、固定部材13,14と第一の棒状部材11の両端とが、同形に形成された一端部112及び他端部113と溝13c,14cとが嵌合する構成としてあるため、撓み変形を繰り返しても両者の固着部分に作用する負荷が比較的小さく、前記固着部分の寿命を延ばすことができるほか、前記固着部分が疲労破損したとしても、両者は軸部材16により連結されているので、ただちに第一の棒状部材11と第二の棒状部材12とが分離してしまうことが無く、これによっても撓み修正装置1の寿命をさらに延ばすことが可能になる。
また、第二の棒状部材12が長短変化するように構成したり、二つの固定部材13,14の両方で負荷及び変位量が分散されるようにしたりすることで、長期に亘って前記固着部分の疲労破損を抑制でき、撓み修正装置1の寿命をさらに延ばすことができる。
【0028】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明のものに限定されるものではない。
例えば、上記の説明では第二の棒状部材12を二つに分割して連結部材であるスリーブ15によって第一の部分121と第二の部分122とを連結するようにしているが、例えば分割することなく第一の棒状部材11に固定部材13,14を介して第二の棒状部材12を組み付けることができるような場合は、必ずしも分割する必要はない。
【0029】
また、上記の説明では、一端側の固定部材13に螺子孔13aを形成し、第二の棒状部材12の一端部に螺子部121aを形成して両者を螺合させているが、凸状及び凹状の撓みのいずれか一方のみを修正すればよい場合には、このような螺合は必ずしも必要なく、例えば固定部材13に孔を形成して第二の棒状部材12の一端部を挿し込むようにしてもよい。この場合、前記孔を有底として第二の棒状部材12の一端を前記孔の底部に突き当てるようにしてもよいし、前記孔を貫通孔として第二の棒状部材12の一端部の一部を前記貫通孔から突出させ、突出させた部分を潰すなどして前記貫通孔から脱出しないように形成してもよい。
による推進
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ギター、ベース、ウクレレ、バイオリン、チェロ、マンドリン、コントラバスに限らず、他の弦楽器の撓み修正装置として広範囲に適用が可能であり、また、ネックに限らず胴部やその他の部位の撓み修正や弦楽器以外の楽器の撓み修正にも適用が可能である。さらに、本発明の撓み修正装置は、弦の張力などの物理的負荷による撓みのほかに、湿度や温度、気候などの変化による撓みの修正にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】撓み修正装置の組立正面図である。
図2】第一の棒状部材に係り、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその拡大右側面図である。
図3】第二の棒状部材の正面図である。
図4】スリーブの正面図である。
図5】固定部材に係り、(a)はその側面図、(b)はその正面図である。
図6】軸部材の側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 撓み修正装置
11 第一の棒状部材
111 本体部分
111a 孔
112 一端部
112a 軸孔
113 他端部
113a 軸孔
12 第二の棒状部材
121 第一の部分
121a 螺子部(一端側)
121b 螺子部(他端側)
122 第二の部分
122a 螺子軸部
122b 東部
112c レンチ孔
13,14 固定部材
13a,14a 螺子孔
13b,14b 軸孔
13c,14c 溝
15 スリーブ
15a 螺子孔(一端側)
15b 螺子孔(他端側)
16 軸部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
弦楽器のネックの撓みを修正する撓み修正装置において、
前記ネックの長手方向に沿って設けられる第一の棒状部材と、
この第一の棒状部材の一端側の一端部に取り付けられる一端側固定部材及び他端側の他端部に取り付けられる他端側固定部材と、
前記他端側固定部材に貫通形成された螺子孔と、
前記第一の棒状部材に沿って設けられるとともに、他端側に前記螺子孔に螺入される螺子軸部を備え、一端部が前記一端側固定部材に取り付けられる第二の棒状部材と、
を有し、
前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材は、前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部と嵌合する嵌合溝と、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材の側面から前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部を貫通する軸孔と、この軸孔に嵌挿される軸部材とを備え、
前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材を前記軸部材とともに前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部に固着し、
前記第二の棒状部材の回転にともなう前記螺子孔と前記螺子軸部との螺合により、前記一端側固定部材と前記他端側固定部材を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に付勢すること、
を特徴とする弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記第一の部分の一端部に螺子部を形成し前記一端側固定部材に形成した螺子孔に螺入し、前記第一の部分の他端部を前記連結部材の一端側に固着しことを特徴とする請求項4に記載の弦楽器におけるネックの撓み修正装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撓み修正装置は、請求項1に記載するように、弦楽器のネックの撓みを修正する撓み修正装置において、前記ネックの長手方向に沿って設けられる第一の棒状部材と、この第一の棒状部材の一端側の一端部に取り付けられる一端側固定部材及び他端側の他端部に取り付けられる他端側固定部材と、前記他端側固定部材に貫通形成された螺子孔と、前記第一の棒状部材に沿って設けられるとともに、他端側に前記螺子孔に螺入される螺子軸部を備え、一端部が前記一端側固定部材に取り付けられる第二の棒状部材と、を有し、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材は、前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部と嵌合する嵌合溝と、前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材の側面から前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部を貫通する軸孔と、この軸孔に嵌挿される軸部材とを備え、
前記一端側固定部材及び前記他端側固定部材を前記軸部材とともに前記第一の棒状部材の前記一端部及び前記他端部に固着し、前記第二の棒状部材の回転にともなう前記螺子孔と前記螺子軸部との螺合により、前記一端側固定部材と前記他端側固定部材を互いに引き寄せる方向又は引き離す方向に付勢する構成としてある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
この場合、請求項5に記載するように、前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に固着し、前記第一の部分の他端部に螺子部を形成して前記連結部材の一端側の螺子孔に螺入するようにしてもよい。また、請求項6に記載するように、前記第一の部分の一端部に螺子部を形成し前記一端側固定部材に形成し螺子孔に螺入し、前記第一の部分の他端部を前記連結部材の一端側に固着するようにしてもよい。また、請求項7に記載するように、前記第一の部分の一端部を前記一端側固定部材に固着し、前記第一の部分の他端部を前記連結部材の一端側に固着し、前記第二の部分の前記螺子軸部の一端部を前記連結部材の他端側に形成した螺子孔に螺入するようにしてもよい。