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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062450
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ブーツ
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/04 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
F16J3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172440
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 公哉
【テーマコード(参考)】
3J045
【Fターム(参考)】
3J045AA03
3J045AA06
3J045AA20
3J045BA02
3J045BA03
3J045CB06
3J045CB08
3J045CB14
(57)【要約】
【課題】圧縮されることで生じる復元力の増加が抑制され、かつ端部が自由端となるように使用されても伸長状態に容易に復元できるブーツを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のブーツ1は、軸X方向に沿って延び、軸X方向に伸縮可能な筒状に形成されるブーツであって、軸X方向に沿って蛇腹部側山部21および蛇腹部側谷部22を交互に有する蛇腹部2と、蛇腹部2に軸X方向で隣接して接続され、ブーツ1の軸X方向の一端1aおよび/または他端1bに隣接して設けられた延長部3とを備え、延長部3は、ブーツ1が圧縮状態にあるときに、蛇腹部2の軸X方向の復元力よりも、延長部3の軸X方向の復元力が小さくなるように構成され、延長部3の周方向の一部に、延長部3の周方向の他の部分と比べて剛性の高い高剛性部35が設けられている。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延び、前記軸方向に伸縮可能な筒状に形成されるブーツであって、
前記軸方向に沿って蛇腹部側山部および蛇腹部側谷部を交互に有する蛇腹部と、
前記蛇腹部に前記軸方向で隣接して接続され、前記ブーツの前記軸方向の一端および/または他端に隣接して設けられた延長部と
を備え、
前記延長部は、前記ブーツが圧縮状態にあるときに、前記蛇腹部の前記軸方向の復元力よりも、前記延長部の前記軸方向の復元力が小さくなるように構成され、
前記延長部の周方向の一部に、前記延長部の周方向の他の部分と比べて剛性の高い高剛性部が設けられている、
ブーツ。
【請求項2】
前記延長部は、前記延長部の、前記軸方向の前記蛇腹部と接続された側と反対側の端部の外径が、前記蛇腹部の蛇腹部側谷部の内径より小さくなるように形成され、
前記延長部は、前記ブーツが前記軸方向で圧縮されたときに、前記延長部の少なくとも一部が前記蛇腹部の内部まで変位するように構成される、
請求項1に記載のブーツ。
【請求項3】
前記延長部は、前記蛇腹部に隣接して設けられた延長部側山部と、前記ブーツの前記軸方向の一端および/または他端に隣接して設けられた延長部側谷部と、前記延長部側山部と前記延長部側谷部とを連結する連結部とを備え、
前記連結部は、前記ブーツが前記軸方向で圧縮されるときに、前記連結部の少なくとも一部が前記蛇腹部の内部まで変位するように構成される、
請求項1または2に記載のブーツ。
【請求項4】
前記高剛性部が、前記延長部側山部の周方向の一部に設けられ、前記延長部側山部の径方向内側および/または外側に向かって延びる延出部を有し、前記延長部の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されている、
請求項3に記載のブーツ。
【請求項5】
前記延長部側山部の前記高剛性部は、前記延長部側山部の頂部において最大厚さとなるように形成されている、
請求項4に記載のブーツ。
【請求項6】
前記延長部側山部の前記高剛性部における最大厚さが、前記延長部の他の部分の厚さの1.2~1.5倍である、
請求項4または5に記載のブーツ。
【請求項7】
前記高剛性部が、前記延長部側山部から前記連結部を経て前記延長部側谷部までに亘って、軸を含む平面に沿って延びるように連続的に設けられ、前記延長部から径方向内側および/または外側に突出し、前記延長部側山部から前記連結部を経て前記延長部側谷部までに亘って、軸を含む平面に沿って延びるように連続的に設けられる突出部を有し、前記延長部の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されている、
請求項3に記載のブーツ。
【請求項8】
前記高剛性部が、前記連結部において、前記延長部側谷部に隣接する位置であって、前記ブーツの圧縮時に湾曲する位置に設けられ、前記連結部から径方向内側および/または外側に突出する突起を有し、前記延長部の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されている、
請求項3に記載のブーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーツに関する。
【背景技術】
【0002】
進退部材が対象部材に対して進退移動する際に、進退部材と対象部材との間の接続部分において、進退部材や対象部材を水や埃から保護するために、進退方向に伸縮可能な蛇腹状のブーツが用いられる。たとえば、特許文献1には、自動車のフューエルリッドの開閉装置に適用されたブーツ(特許文献1ではシーリングと称されている)が開示されている。
【0003】
特許文献1のブーツは、フューエルリッドであるフラップに固定されたタペット(進退部材)に取り付けられ、自動車本体に設けられたハウジング(対象部材)に対してタペットが進退移動する際に、タペットのタペットシャンクや、タペットシャンクが挿入されるハウジングの開口を保護するために用いられる。ブーツの一端は、タペットシャンクをブーツの内部に収容するように、タペットのタペットヘッドに取り付けられ、ブーツの他端は、自由端とされている。ブーツは、フラップを閉鎖状態にするときに、ブーツの他端がハウジングに当接して、タペットシャンクやハウジングの開口を保護するための閉空間を形成する。そして、ブーツは、タペットシャンクがハウジング内にさらに深く挿入される際に、進退方向で圧縮されながらも閉空間を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/084599号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、フラップの開放時にフラップがハウジングから離間し、ブーツの他端がハウジングに当接していない状態となり、ブーツの他端が開放した状態になる。ブーツは、そのような状態でもタペットシャンクをできるだけ保護するために、内部に収容されるタペットシャンクよりも長いことが好ましい。しかし、ブーツは、圧縮されることで生じる復元力の増加が抑制されることが好ましい。たとえば、ブーツは、他の部分よりも進退方向の復元力を弱めた部分を形成することによって、ブーツ圧縮時における全体の復元力を抑えることができる。
【0006】
ここで、ブーツは、特許文献1のブーツのように進退方向の端部が自由端となっている場合には、外部から力の援助を受けることなく自身の復元力によってのみ伸長状態に復元しなければならない。ところが、他の部分よりも進退方向の復元力を弱めた部分が形成されたブーツは、進退方向の復元力を弱めた部分において、その復元力の弱さのために元の伸長状態に復元できないことがある。
【0007】
本発明は、圧縮されることで生じる復元力の増加が抑制され、かつ端部が自由端となるように使用されても伸長状態に容易に復元できるブーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のブーツは、軸方向に沿って延び、前記軸方向に伸縮可能な筒状に形成されるブーツであって、前記軸方向に沿って蛇腹部側山部および蛇腹部側谷部を交互に有する蛇腹部と、前記蛇腹部に前記軸方向で隣接して接続され、前記ブーツの前記軸方向の一端および/または他端に隣接して設けられた延長部とを備え、前記延長部は、前記ブーツが圧縮状態にあるときに、前記蛇腹部の前記軸方向の復元力よりも、前記延長部の前記軸方向の復元力が小さくなるように構成され、前記延長部の周方向の一部に、前記延長部の周方向の他の部分と比べて剛性の高い高剛性部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧縮されることで生じる復元力の増加が抑制され、かつ端部が自由端となるように使用されても伸長状態に容易に復元できるブーツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るブーツが取り付けられたリッド開閉装置を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るブーツの断面図である。
図3A図1のリッド開閉装置においてリッドが開放位置にある状態におけるリッド開閉装置の部分断面図である。
図3B】リッドが図3Aの状態から車両本体に接近した状態におけるリッド開閉装置の部分断面図である。
図3C】リッドが図3Bの状態から車両本体にさらに接近して閉鎖位置にある状態におけるリッド開閉装置の部分断面図である。
図3D】リッドが図3Cの状態から車両本体にさらに接近して前進位置にある状態におけるリッド開閉装置の部分断面図である。
図4】ブーツ長さとブーツの復元力との関係を模式的に示すグラフである。
図5】高剛性部を有するブーツの側面図である。
図6A図5のVIA-VIA線断面図である。
図6B図5のブーツの軸方向に沿った断面図である。
図7】変形例のブーツの斜視図である。
図8図7のブーツが取り付けられたリッド開閉装置においてリッドが閉鎖位置にある状態におけるリッド開閉装置の部分断面図である。
図9】別の変形例のブーツの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るブーツを説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のブーツは、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0012】
本実施形態のブーツ1は、図1および図2に示されるように、ブーツ1の中心軸となる軸X方向の一端1aから他端1bまで軸X方向に沿って延び、軸X方向に伸縮可能な筒状のブーツである。ブーツ1は、軸X方向で伸長した伸長状態(図1中、二点鎖線の状態)と、軸X方向で圧縮された圧縮状態(図1中、実線の状態)との間で移行可能に構成される。ブーツ1は、伸長状態および圧縮状態において、ブーツ1の径方向内側の内部空間と、任意でその内部空間と連通する他の空間(たとえば、ブーツ1とは異なる筒状部材に接続されている場合の、その異なる筒状部材の内部空間)とを外部環境から保護する(たとえば、水や塵埃などが侵入することを抑制する)。ブーツ1は、たとえば取付対象に取り付けられて、内部空間および任意で他の空間に配置された取付対象の所定の部位を外部環境から保護する。ブーツ1は、取り付けられる取付対象の特定の部位を保護することができれば、特に限定されることはなく、保護が必要な任意の取付対象に適用可能である。
【0013】
ブーツ1は、たとえば、図1に示されるように、基部Bと、基部Bに対して遠位位置(図1中、二点鎖線の位置)と近位位置(図1中、実線の位置)との間で移動可能な可動部Lを有する取付対象Mに適用される。ブーツ1は、ブーツ1の軸X方向の一端1aが、可動部Lに取り付けられ、ブーツ1の軸X方向の他端1bが、可動部Lが遠位位置にあるときに解放された自由端を構成するように、取付対象Mに取り付けられる。ブーツ1は、可動部Lが遠位位置から近位位置に向かって基部Bに接近したときに、ブーツ1の他端1bが基部Bに当接するように配置される。ブーツ1は、ブーツ1の他端1bが基部Bに当接することで、基部Bに設けられた開口部B1を覆う。ブーツ1は、可動部Lが基部Bに接近することで基部Bに当接する位置までは自然長の伸長状態であり、可動部Lがその位置からさらに近位位置に向かって移動することで、可動部Lと基部Bとの間で軸X方向に圧縮された圧縮状態(図1中、実線の状態)に移行する。ブーツ1は、基部Bに当接した状態で、伸長状態と圧縮状態との間で移行する間は、基部Bの開口部B1を覆って、開口部B1内を外部環境から保護する(たとえば、水や塵埃などが侵入することを抑制する)。ブーツ1は、逆に可動部Lが近位位置から遠位位置へと移動すると、ブーツ1自体の復元力によって伸長状態まで復元する。ただし、ブーツ1は、ブーツ1の他端1bが基部Bに取り付けられて、可動部Lと基部Bとの間の相対移動によって伸縮するように、取付対象Mに取り付けられてもよい。
【0014】
取付対象Mとしては、特に限定されることはないが、たとえば図1に示されるような、車両の燃料補給用または給電用の、リッドLを開閉するリッド開閉装置Mが例示される。取付対象であるリッド開閉装置Mは、図1に示されるように、基部である車両本体の一部(以下、車両本体Bという)と、車両本体に設けられた燃料補給または給電口に隣接する燃料補給または給電空間(図1中、実線で示されたリッドLと車両本体Bとの間の空間)を開閉する可動部であるリッドLとを備えている。リッドLは、燃料補給または給電空間を開放する開放位置(遠位位置、図1中、二点鎖線の位置)と、燃料補給または給電空間を閉鎖する閉鎖位置(近位位置、図1中、実線の位置)との間で移動可能に構成されている。リッドLはさらに、閉鎖位置にあるときに車両本体Bに向かってさらに押圧されることによって、閉鎖位置よりもさらに車両本体B側の前進位置(図1中、実線の位置からさらに下側の位置)に移動することができるように構成されている。
【0015】
リッド開閉装置Mはさらに、リッドLを車両本体Bに対してロック/アンロックするロック部材(図示せず)と、ロック部材をロック位置およびアンロック位置に移動させるロック部材駆動部(図示せず)と、ロック部材駆動部を駆動するために操作される操作部OP(図1参照)とを有している。リッドLには、図1に示されるように、ブーツ1の軸X方向の一端1aが取り付けられるブーツ取付部材L1が設けられている。ブーツ取付部材L1は、ブーツ1の一端1aが取り付けられる被取付部L11と、操作部OPを操作するために操作部OPを押圧する押圧部L12とを有している。リッドLは、閉鎖位置にあるときに車両本体Bに向かってさらに押圧されて前進位置へと移動することで、押圧部L12を介して操作部OPを押圧する(図1において下方に押圧する)。操作部OPが押圧されることで、操作部OPが操作されて、モータなどを有するロック部材駆動部が駆動される。ロック部材駆動部が駆動されることで操作されるロック部材は、リッドLと係合してリッドLを閉鎖位置でロック可能なロック位置と、リッドLとの係合が解除され、リッドLの開放位置への移動を可能とするアンロック位置との間で移動する。
【0016】
リッド開閉装置Mでは、リッドLの移動に伴って、リッドLに取りけられたブーツ1も移動する。ブーツ1は、リッドLが開放位置から閉鎖位置へ移動する途中で、ブーツ1の他端1bが車両本体Bと当接して、車両本体Bの開口部B1を覆う。ブーツ1の他端1bが車両本体Bに当接するときの位置と、閉鎖位置(および前進位置)との間にリッドLが位置する際に、ブーツ1は、軸X方向で圧縮された圧縮状態で、車両本体Bの開口部B1を覆って、車両本体B内に設けられたロック部材駆動部などに開口部B1を介して水や塵埃などが浸入することを抑制する。ブーツ1は、逆にリッドLが閉鎖位置(および前進位置)から開放位置へと移動することで、車両本体Bから離間するとともに、ブーツ1自体の復元力によって伸長状態に復元する。なお、ブーツ1が当接する基部Bは、車両本体に取り付けられ、ロック部材とロック部材駆動部と操作部OPとが収容されたハウジングであってもよい。
【0017】
ブーツ1は、図2に示されるように、軸X方向に沿って蛇腹部側山部21および蛇腹部側谷部22を交互に有する蛇腹部2と、蛇腹部2に軸X方向で隣接して接続され、ブーツ1の軸X方向の他端1bに隣接して設けられた延長部3とを備えている。ブーツ1は、蛇腹部2および延長部3が軸X方向で伸縮することで、軸X方向で伸縮可能に構成される。本実施形態では、ブーツ1には、ブーツ1の一端1aに、取付対象Mの可動部Lに取り付けられる取付部MPが設けられ、ブーツ1の他端1bに、取付対象Mの基部Bに当接可能な当接部APが設けられている。
【0018】
取付部MPは、図1に示されるように、取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1が取り付けられて使用される際に、可動部であるリッドLに設けられたブーツ取付部材L1の被取付部L11に取り付けられる部位である。取付部MPは、ブーツ取付部材L1の被取付部L11に嵌合可能に構成され、被取付部L11に嵌合されて被取付部L11に取り付けられる。取付部MPは、図2に示されるように、ブーツ1の軸X方向の一端1aに設けられ、蛇腹部2に軸X方向で接続される。取付部MPは、環状に形成され、ブーツ1の一端1aにおいて、ブーツ1の径方向内側の内部空間に連通する開口を構成している。取付部MPがブーツ取付部材L1の被取付部L11に嵌合することで、ブーツ1の一端1aの開口が外部環境から閉鎖される。取付部MPは、ブーツ取付部材L1の被取付部L11に嵌合した状態で、ブーツ1が伸縮動作をしても被取付部L11から離脱することが抑制されるように形成されていれば、特に限定されることはなく、弾性変形可能なゴムや合成樹脂などによって形成可能である。ただし、蛇腹部2の一端2aが、ブーツ1の一端1aを構成し、ブーツ取付部材L1の被取付部L11に取り付けられてもよい。
【0019】
当接部APは、図1に示されるように、取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1が取り付けられて使用される際に、基部である車両本体Bに対してリッドLが接近することで、車両本体Bに当接する部位である。当接部APは、図2に示されるように、ブーツ1の軸X方向の他端1bに設けられ、延長部3に軸X方向で接続される。当接部APは、環状に形成され、ブーツ1の他端1bにおいて、ブーツ1の径方向内側の内部空間に連通する開口を構成している。当接部APが車両本体Bに当接することで、ブーツ1の他端1bの開口が外部環境から閉鎖される。当接部APは、車両本体Bに当接可能で、ブーツ1が伸縮動作をしても車両本体Bとの当接状態が解除されることが抑制されるように形成されていれば、特に限定されることはなく、弾性変形可能なゴムや合成樹脂などによって形成可能である。ただし、延長部3の他端3bが、ブーツ1の他端1bを構成し、車両本体Bに当接するように構成されていてもよい。
【0020】
蛇腹部2は、図2に示されるように、一端2aと他端2bとの間で軸X方向に沿って延びる中空の筒状に形成され、軸X方向に伸縮可能に構成される部位である。蛇腹部2の一端2aは、取付部MPに直接または間接的に(本実施形態では直接)接続され、蛇腹部2の他端2bは、延長部3の一端3aに直接または間接的に(本実施形態では直接)接続される。蛇腹部2は、本実施形態では取付部MPおよび延長部3と一体に形成されるが、取付部MPおよび延長部3とは別に形成されてもよい。蛇腹部2は、取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1が取り付けられて使用される際には、リッドLと車両本体Bとの間でブーツ1が圧縮されることに伴って圧縮され、リッドLが車両本体Bから離間することによりブーツ1が伸長することに伴って伸長する。蛇腹部2は、本実施形態では軸X方向に垂直な断面が円形の筒状に形成されているが、断面が四角形などの他の形状の筒状に形成されてもよい。また、蛇腹部2は、軸X方向に伸縮可能であれば、特に限定されることはなく、弾性変形可能なゴムや合成樹脂などによって形成可能である。
【0021】
蛇腹部2は、図2に示されるように、径方向の外側に向かって突出する環状の蛇腹部側山部21と、径方向の内側に向かって窪む環状の蛇腹部側谷部22とがブーツ1の軸X方向に沿って交互に形成された蛇腹状の形状を有している。蛇腹部側山部21および蛇腹部側谷部22は、軸X方向で交互に連続して配置されることで、蛇腹部2の壁部を構成している。蛇腹部2では、蛇腹部側山部21および蛇腹部側谷部22により構成される壁部を通して、径方向内側に形成された内部空間に水や塵埃などが侵入することが抑制される。取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1が取り付けられて使用される際には、図1に示されるように、ブーツ1がリッドLのブーツ取付部材L1に取り付けられると、蛇腹部2の径方向内側の内部空間にブーツ取付部材L1の押圧部L12が配置される。なお、蛇腹部2は、本実施形態では蛇腹部側山部21および蛇腹部側谷部22を2つずつ備えているが、軸X方向で伸縮可能なように少なくとも1つの蛇腹部側山部21および少なくとも1つの蛇腹部側谷部22を備えていれば、それぞれの数は特に限定されることはなく、3つ以上の蛇腹部側山部21および3つ以上の蛇腹部側谷部22を備えていてもよい。また、蛇腹部2は、少なくとも1つの蛇腹部側山部21および少なくとも1つの蛇腹部側谷部22を備えていればよく、蛇腹部側山部21と蛇腹部側谷部22とを連結する連結部など、蛇腹部側山部21および蛇腹部側谷部22以外の構成を備えていてもよい。
【0022】
延長部3は、図2に示されるように、一端3aと他端3bとの間で軸X方向に沿って延びる中空の筒状に形成され、軸X方向に伸縮可能に構成される部位である。延長部3の一端3aは、蛇腹部2の他端2bに直接または間接的に(本実施形態では直接)接続され、延長部3の他端3bは、当接部APに直接または間接的に(本実施形態では直接)接続される。延長部3は、本実施形態では蛇腹部2および当接部APと一体に形成されるが、蛇腹部2および当接部APとは別に形成されてもよい。また、延長部3は、本実施形態では蛇腹部2の他端2bに接続されてブーツ1の他端1bに隣接して設けられるが、蛇腹部2の一端2aに接続されてブーツ1の一端1aに隣接して設けられてもよいし、軸X方向で蛇腹部2を挟んで両側で蛇腹部2の一端2aおよび他端2bに接続されてブーツ1の一端1aおよび他端1bに隣接して設けられてもよい。延長部3は、取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1が取り付けられて使用される際には、リッドLと車両本体Bとの間でブーツ1が圧縮されることに伴って圧縮され、リッドLが車両本体Bから離間することによりブーツ1が伸長することに伴って伸長する。延長部3は、本実施形態では軸X方向に垂直な断面が円形の筒状に形成されているが、断面が四角形などの他の形状の筒状に形成されてもよい。また、延長部3は、軸X方向に伸縮可能であれば、その構成材料は特に限定されることはなく、弾性変形可能なゴムや合成樹脂などによって形成可能である。
【0023】
本実施形態では、延長部3は、ブーツ1が圧縮状態にあるときに、蛇腹部2の軸X方向の復元力よりも、延長部3の軸X方向の復元力が小さくなるように構成されている。この場合、ブーツ1全体を蛇腹部2のみで形成する場合と比べて、ブーツ1が圧縮されることで生じる、ブーツ1全体の軸X方向の復元力の増加を抑制することができる。ブーツ1をリッド開閉装置Mに適用した場合には、ブーツ1が圧縮されることで生じる軸X方向の復元力の増加が抑制されることで、リッドLが、閉鎖位置にあるときに、ブーツ1の復元力により押圧されて車体表面から浮き上がることが抑制される。
【0024】
延長部3は、ブーツ1が圧縮状態にあるときに、蛇腹部2の軸X方向の復元力よりも、延長部3の軸X方向の復元力が小さくなるように構成されていればよく、その形状は特に限定されない。本実施形態では、延長部3は、図2に示されるように、延長部3の、軸X方向の蛇腹部2と接続された側(本実施形態では一端3a側)と反対側の端部(本実施形態では他端3b)の外径OD1が、蛇腹部2の蛇腹部側谷部22の内径IDより小さくなるように形成されている。延長部3は、図3C図3Dに示されるように、ブーツ1が軸X方向で圧縮されたときに、延長部3の少なくとも一部が蛇腹部2の内部(径方向内側の位置)まで変位するように構成されている。延長部3をこのように構成することで、蛇腹部2および延長部3のそれぞれを構成する部材の肉厚をほぼ同じにしても、蛇腹部2よりも延長部3の軸X方向の復元力を小さくすることができる。これは、以下で詳しく述べるように、延長部3が、軸X方向で圧縮されて、その少なくとも一部が蛇腹部2の内部まで変位する際に、径方向で重なるように湾曲することで、径方向の復元力が増加するが、軸X方向の復元力が径方向の復元力ほど増加しないからである。
【0025】
たとえば、ブーツは、薄肉化することによって、復元力を小さくすることができるが、薄肉化によって耐久性が劣化し、また搬送時や使用時の取り扱いによっては破損してしまう可能性がある。また、逆にブーツを厚肉化とすると、圧縮時のブーツ長さが長くなってしまい、また、ブーツ長さを短くするために圧縮すると復元力が大きくなってしまう。そのため、リッド開閉装置Mの燃料補給または給電空間のようにブーツの配置スペースが小さい場所に適用するのが難しく、また、リッド開閉装置Mに適用できたとしても、リッドLへ作用する反力(復元力)が大きくなり、リッドLの表面がリッドL周辺の車体表面に対して浮き上がり、リッドLの表面とリッドL周辺の車体表面との間に段差が生じ、意匠性が損なわれる可能性がある。
【0026】
本実施形態では、延長部3を、ブーツ1が軸X方向で圧縮されたときに、延長部3の少なくとも一部が蛇腹部2の内部まで変位するように構成することで、延長部3を薄肉化することなく復元力を小さくできるので、薄肉化することによる耐久性の劣化や強度の低下を抑制することができる。さらに、蛇腹部2よりも延長部3の軸X方向の復元力を小さくすることで、ブーツ1全体の軸X方向の復元力を小さくすることができ、それによって、上述したように、リッドLが、閉鎖位置にあるときに、ブーツ1の反力(復元力)により押圧されて車体表面から浮き上がることが抑制される。また、ブーツ1の圧縮時に、延長部3の少なくとも一部が蛇腹部2の内部にまで変位することで、ブーツ1全体を蛇腹部2のみで形成する場合と比べて、圧縮することで生じる復元力の増加を抑えながら、ブーツ1の圧縮時のブーツ長さを短くすることができる。したがって、ブーツ1をリッド開閉装置Mに適用した場合には、ブーツ1の圧縮時のブーツ長さを短くすることができるので、ブーツ1をリッドLと車両本体Bとの間の狭い燃料補給または給電空間にも収容することができる。
【0027】
延長部3は、ブーツ1が軸X方向で圧縮されたときに、延長部3の少なくとも一部が蛇腹部2の内部まで変位するように構成されていればよく、その構造は特に限定されない。本実施形態では、延長部3は、図2に示されるように、蛇腹部2に隣接して設けられた延長部側山部31と、ブーツ1の軸X方向の一端1aおよび/または他端1b(本実施形態では他端1b)に隣接して設けられた延長部側谷部32と、延長部側山部31と延長部側谷部32とを連結する連結部33とを備えている。延長部側山部31は、径方向外側に突出して環状に形成され、延長部側谷部32は、径方向内側に窪んで環状に形成されている。また、連結部33は、延長部側山部31から延長部側谷部32に向かって縮径しながら軸X方向に沿って延びる筒状に形成されている。本実施形態では、延長部3には、延長部側山部31、延長部側谷部32および連結部33がそれぞれ1つずつ設けられている。連結部33は、図3C図3Dに示されるように、ブーツ1が軸X方向で圧縮されるときに、連結部33の少なくとも一部が蛇腹部2の内部(径方向内側の位置)まで変位するように構成されている。蛇腹部2に隣接して延長部側山部31が設けられ、ブーツ1の一端1aおよび/または他端1b(本実施形態では他端1b)に隣接して延長部側谷部32が設けられることで、ブーツ1の圧縮時に連結部33が径方向内側に湾曲し易くなる。これにより、ブーツ1の径方向外側に延長部3が湾曲するための余分なスペースを確保する必要がなくなる。
【0028】
延長部3は、ブーツ1が軸X方向で圧縮されたときに、延長部3の少なくとも一部が蛇腹部2の内部まで変位するように構成されていればよく、その大きさは特に限定されない。本実施形態では、延長部3は、図2に示されるように、延長部側山部31と延長部側谷部32との間の軸X方向の長さD1が、蛇腹部側山部21と蛇腹部側谷部22との間の軸X方向の長さD2よりも長くなるように形成されている。これにより、ブーツ1の圧縮時に、蛇腹部2が径方向外側へ変形することを抑制しながら、連結部33が容易に変形することができるので、連結部33の少なくとも一部が蛇腹部2の内部へ容易に変位することができる。連結部33の少なくとも一部が蛇腹部2の内部へ容易に変位することができることにより、延長部3の軸X方向の復元力の増加を抑えることができる。
【0029】
また、本実施形態では、延長部3は、図2に示されるように、延長部側山部31の外径OD2が蛇腹部側山部21の外径OD3よりも小さくなるように形成されている。これにより、たとえば取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1を適用した場合に、図3Cに示されるように、ブーツ1が圧縮された際に、基部である車両本体Bに延長部側山部31が当接することを抑制することができるので、ブーツ1の圧縮時のブーツ長さをより短くすることができる。
【0030】
延長部3は、延長部側谷部32において、延長部3の他の部分と比べて剛性が高くなるように形成されていてもよい。延長部側谷部32の剛性を高くすることによって、ブーツ1の圧縮時に延長部側谷部32の変形が抑制され、それに伴って連結部33の湾曲が促進されて、連結部33が蛇腹部2の内部に進入し易くなる。また、延長部側谷部32の変形が抑制されることに伴って、延長部側谷部32に隣接する、ブーツ1の軸X方向の一端1aおよび/または他端1b(本実施形態では他端1b)の変形も抑制されるので、ブーツ1の一端1aおよび/または他端1bの開口の軸が傾斜することが抑制される。これにより、たとえば取付対象Mにブーツ1が取り付けられて使用される場合に、ブーツ1の一端1aおよび/または他端1bの基部Bとの当接面が浮き上がることが抑制されて、ブーツ1の一端1aおよび/または他端1bの開口から水や塵埃などが侵入することが抑制される。
【0031】
延長部側谷部32の剛性を高めるという目的のために、たとえば、図2に示されるように、延長部側谷部32に、延長部側谷部32から径方向内側に延び、延長部側谷部32の軸X周り方向に沿って環状に形成された舌片部34が設けられてもよい。ブーツ1の一端1aおよび/または他端1b(本実施形態では他端1b)に隣接する延長部側谷部32に、径方向内側に延びる舌片部34が設けられることで、ブーツ1の一端1aおよび/または他端1bの開口の大きさを小さくすることができるので、ブーツ1の一端1aおよび/または他端1bの開口から水や塵埃などが侵入することをさらに抑制することができる。
【0032】
つぎに、図3A図3Dおよび図4を参照して、ブーツ1の伸縮動作を説明する。以下では、取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1が適用される場合を例に挙げて、ブーツ1の伸縮動作を説明するが、本発明のブーツは、以下の例に限定されることはなく、他の用途にも適用可能である。また、以下で説明するブーツ1の伸縮動作は一例であり、本発明のブーツの伸縮動作は以下の例に限定されない。
【0033】
図3A図3Dは、車両本体Bに対してリッドLが開放位置(図3A参照)から閉鎖位置(図3C参照)を経て前進位置(図3D参照)へと、または逆に移動した際のブーツ1の伸縮状態の変化を示している。また、図4は、ブーツ1の軸X方向のブーツ長さ(横軸)とブーツ1の軸X方向の復元力(縦軸)との関係を模式的に示している。図4中に示した符号IIIA~IIIDはそれぞれ、図3A図3Dに対応するブーツ長さを示している。なお、図3A図3Dでは、理解を容易にするために、ブーツ1の上側半分の断面のみが示されているが、下側半分の断面も上側半分の断面と同様の挙動を示す。
【0034】
ブーツ1は、リッドLが開放位置にある際に(図3A参照)、ブーツ1の他端1bが車両本体Bに当接しておらず、自然長の伸長状態であり、軸X方向の復元力を有していない(図4参照)。ブーツ1は、リッドLが開放位置から車両本体Bに接近すると、ブーツ1の他端1bが車両本体Bに当接するが、この時点では自然長の伸長状態である。リッドLがこの位置からさらに軸X方向で車両本体Bに接近すると、ブーツ1は、図4に示される段階I、段階II、段階IIIのように復元力が変化しながら、図3B図3Dに示されるように、車両本体Bに対してリッドLにより押圧されることにより軸X方向で圧縮されて圧縮状態となる。逆に、リッドLが前進位置(図3D参照)から軸X方向で車両本体Bから離間する方向に移動すると、図4に示される段階III、段階II、段階Iのように復元力が変化しながら、ブーツ1自体の復元力により軸X方向で伸長して、自然長の伸長状態に復元する。
【0035】
つぎに、ブーツ1の伸長状態から圧縮状態への移行と、圧縮状態から伸長状態への移行について詳しく説明する。
【0036】
リッドLが、ブーツ1の他端1bが車両本体Bに当接したときの位置からさらに車両本体Bに接近すると、図3Bに示されるように、蛇腹部2よりも相対的に軸X方向の復元力の小さい延長部3が先に圧縮される。延長部3の圧縮に伴って、延長部3の延長部側谷部32が軸X方向に沿って蛇腹部2側に変位するとともに、延長部3の連結部33が湾曲して、延長部側山部31に隣接する山部側湾曲部33aおよび延長部側谷部32に隣接する谷部側湾曲部33bを形成しながら、蛇腹部2の内部(径方向内側の位置)に向かって変位する。このとき、延長部3は、延長部側山部31、山部側湾曲部33a、谷部側湾曲部33bおよび延長部側谷部32で湾曲した断面S字形状を呈する。連結部33は、ブーツ1が伸長状態にあるときから、蛇腹部2の内部に向かって移動するに従って、軸Xに対する傾斜角度が大きくなる。連結部33は、図3Bに示されるように、谷部側湾曲部33bが延長部側山部31の径方向内側の位置の周辺まで移動すると、軸Xに対して垂直方向に近い角度で延びる。軸X方向で圧縮された延長部3は、山部側湾曲部33aおよび谷部側湾曲部33bのそれぞれにおいて径方向で重なるように湾曲して、径方向に復元力が作用するように構成される。延長部3は、この径方向の復元力により、延長部側山部31を径方向外側に押し出す。ブーツ1が伸長状態からこの圧縮状態に至るまでは、連結部33の軸X方向の復元力が徐々に増加するとともに、連結部33の増加した復元力により蛇腹部2もわずかに軸X方向で圧縮されて蛇腹部2の軸X方向の復元力が徐々に増加する。したがって、図4に段階Iとして示されるように、ブーツ長さが短くなるに従ってブーツ1の復元力が増加する。
【0037】
リッドLが、図3Bに示された位置からさらに車両本体Bに接近すると、図3Cに示されるように、連結部33の谷部側湾曲部33bが、蛇腹部2の蛇腹部側谷部22の径方向内側の位置まで変位して、連結部33は、軸Xに対して伸長時とは反対側に傾斜する。連結部33が、軸Xに対して伸長時とは反対側に傾斜することで、径方向外側に押し出されていた延長部側山部31が径方向内側に変位するとともに、延長部3の軸X方向の復元力が低下する。それに伴って、延長部3の復元力によりわずかに圧縮されていた蛇腹部2が軸X方向に沿ってわずかに伸長して、蛇腹部2の軸X方向の復元力も低下する。したがって、図4に段階IIとして示されるように、ブーツ長さが短くなるに従ってブーツ1の復元力が低下する。ここでも、延長部3は、図3Cに示されるように、軸X方向で圧縮されたときに、山部側湾曲部33aおよび谷部側湾曲部33bのそれぞれにおいて径方向で重なるように湾曲して、径方向に復元力が作用するように構成される。これにより、延長部3の軸X方向の復元力が小さくなり、ブーツ1の軸X方向の復元力も小さくなる。
【0038】
リッドLが、図3Cに示された閉鎖位置からさらに車両本体Bに接近すると、図3Dに示されるように、延長部3がほぼ変形することなく軸X方向の蛇腹部2側に変位するとともに、蛇腹部2が軸X方向に沿って圧縮されて、連結部33の谷部側湾曲部33bが、蛇腹部2の蛇腹部側山部21の径方向内側の位置まで変位する。蛇腹部2の軸X方向の長さが短くなることによって、蛇腹部2の軸X方向の復元力が増加する。これにより、図4に段階IIIとして示されるように、ブーツ長さが短くなるに従ってブーツ1の復元力が増加する。この段階IIIにおいても、延長部3は、山部側湾曲部33aおよび谷部側湾曲部33bにおいて径方向で重なるように湾曲して、主に径方向に復元力が作用するように構成される。また、蛇腹部2は、軸X方向で重なるように湾曲して、主に軸X方向に復元力が作用するように構成される。これにより、延長部3の軸X方向の復元力が小さくなり、蛇腹部2の軸X方向の復元力が大きくなるので、ブーツ1の軸X方向の復元力は、主に蛇腹部2の増加した復元力によって達成される。
【0039】
リッドLが、逆に、図3Dに示された前進位置から、軸X方向で車両本体Bから離間する方向に移動すると、図3Cに示されるように、延長部3よりも軸X方向の復元力の大きい蛇腹部2が先に伸張する。蛇腹部2は、自然長に近い状態まで伸長して復元力が低下し、延長部3は、蛇腹部2の内部から蛇腹部2の軸X方向の外側に向かって変位する。蛇腹部2の伸長に伴って蛇腹部2の軸X方向の復元力が低下するので、図4の段階IIIとして示されるように、蛇腹部2の伸長とともにブーツ長さが長くなるに従ってブーツ1の復元力が低下する。
【0040】
リッドLが、図3Cに示された閉鎖位置から、軸X方向で車両本体Bから離間する方向に移動すると、図3Bに示されるように、復元力が低下した蛇腹部2に替わって、延長部3の軸X方向の復元力により延長部3が伸長する。このとき、延長部3の谷部側湾曲部33bが、蛇腹部2の内部から蛇腹部2の軸X方向の外部に変位して、連結部33の軸Xに対する角度が徐々に大きくなる。そして、連結部33は、軸Xに対して垂直方向に近い角度で延びるとともに、径方向外側への復元力が作用して延長部側山部31を径方向外側に押し出す。この時点まで、連結部33の軸X方向の復元力が徐々に増加するとともに、連結部33の増加した復元力により蛇腹部2もわずかに軸X方向で圧縮されて蛇腹部2の軸X方向の復元力が徐々に増加する。したがって、図4に段階IIとして示されるように、ブーツ長さが長くなるに従ってブーツ1の復元力が増加する。
【0041】
リッドLが、図3Bに示された位置から、軸X方向で車両本体Bから離間する方向に移動すると、図3Aに示されるように、連結部33は、蛇腹部2の内部から軸X方向の外側の位置まで変位して、軸Xに対して最大圧縮時とは反対側に傾斜する。これにより、連結部33から、山部側湾曲部33aおよび谷部側湾曲部33bが消失して、湾曲していた連結部33が元の状態に復元するとともに、径方向外側に押し出されていた延長部側山部31が元の位置に復元する。この段階では、図4に段階Iとして示されるように、ブーツ長さが長くなるに従ってブーツ1の復元力が低下する。
【0042】
以上の説明から分かるように、ブーツ1は、自然長の伸長状態と最も圧縮された圧縮状態との間に、圧縮率の増加(または低下)に伴って軸X方向の復元力が低下(または増加)した後に増加(または低下)に転じる極小復元力状態(図4中、段階IIと段階IIIとの間の状態)を有するように構成される。ブーツ1は、全圧縮過程の中の極小復元力状態において、圧縮状態を準安定的に維持することができる。取付対象であるリッド開閉装置Mにブーツ1が適用される場合に、リッドLの閉鎖位置をこの極小復元力状態に対応する位置に設定することで、閉鎖位置にあるリッドLが車体表面から浮き上がることをさらに抑制することができる。
【0043】
ブーツ1は、上述のように、軸X方向の端部(本実施形態では他端1b)が自由端となるように使用されると、圧縮状態から伸長状態に復元する際に、外部から力の援助を受けることなくブーツ1自体の復元力のみによって伸長状態に復元する必要がある。ブーツ1は、ブーツ自体の復元力のみによって容易に伸長状態に復元するという目的のために、図5図10に示されたブーツ1では、延長部3の周方向の一部に、延長部3の周方向の他の部分と比べて剛性の高い高剛性部35が設けられている。延長部3は、ブーツ1が圧縮状態にあるときに、蛇腹部2の軸X方向の復元力よりも、延長部3の軸X方向の復元力が小さくなるように構成されているが、延長部3の周方向の一部に高剛性部35が設けられることで、伸長状態に容易に復元することができる。具体的に説明すると、延長部3の周方向の一部の剛性を、同じ周方向の他の部分と比べて高くすることで、延長部3が伸長状態に復元する際の復元動作のタイミングを周方向でずらすことができ、復元動作を容易にすることができる。たとえば、本実施形態では、図3Cに示された状態から図3Bに示された状態への移行に関して上述したように、延長部3の周方向のすべての部位で同時に軸X方向に伸張しようとすると、延長部側山部31の周方向全体を同時に径方向外側に押し出す必要がある。そうするためには、延長部側山部31の外径を広げる必要があり、大きな復元力が必要となる。それに対して、延長部3の周方向の一部に高剛性部35を設けることで、高剛性部35が設けられた周方向位置の軸X方向の延長線上にある延長部側山部31が先に、延長部側山部31の直径を広げることなく径方向外側に変位して、その変位した部分に追従して延長部側山部31の周方向の他の部位が変位するので、それほど大きな力を要することなく復元動作を行なうことができる。
【0044】
高剛性部35は、延長部3の周方向の一部に設けられて、延長部3の復元動作のタイミングを周方向でずらすことができればよく、高剛性部35の周方向における位置は特に限定されない。高剛性部35は、図5図9に示された例では、延長部3の周方向の1箇所にのみ設けられているが、延長部3の周方向の複数個所に設けられてもよい。高剛性部35は、延長部3の周方向の複数個所に設けられる場合は、軸Xに対して非対称な位置(軸Xに対して点対称な位置から周方向にずれた位置)に設けられることが好ましい。高剛性部35が軸Xに対して非対称な位置に設けられることで、高剛性部35が設けられた複数の周方向位置で復元動作が行なわれる際に、延長部側山部31の複数の部位を正反対の方向に押し出すことによって延長部側山部31の外径が広がることが抑制されるので、延長部側山部31を部分的に容易に径方向外側に押し出すことができ、延長部3の復元動作を容易にすることができる。
【0045】
高剛性部35は、延長部3の周方向の一部に設けられて、延長部3の復元動作のタイミングを周方向でずらすことができればよく、高剛性部35の軸X方向における位置は特に限定されない。たとえば、図5および図6A~6Bに示された実施形態では、高剛性部35は、延長部側山部31の周方向の一部に設けられ、延長部側山部31の径方向内側および/または外側(図示された例では径方向内側)に向かって延びる延出部35aを有し、延長部3の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されている。延長部側山部31に高剛性部35が設けられることで、延長部3の復元時に延長部側山部31が径方向外側に変位して、その後元の位置に戻ろうとする復元力が高まり、全体として復元し易くなる。また、肉厚を厚くすることで剛性を高めることで、他の部材を用いて剛性を高めるのと比べて、高剛性部35を容易に形成することができる。さらに、金型を用いてブーツ1を製造する場合には、金型の成型が容易であり、ブーツ1を容易に製造することができる。
【0046】
延長部側山部31に設けられる高剛性部35は、延長部3の他の部分よりも厚い肉厚に形成されていればよく、その肉厚は特に限定されない。ただし、高剛性部35が設けられた延長部側山部31の部位の復元力を高めるという観点から、延長部側山部31の高剛性部35における最大厚さが、延長部3の他の部分の厚さの1.2倍以上であることが好ましく、1.25倍以上であることがさらに好ましい。また、高剛性部35が設けられた延長部側山部31の部位の圧縮時の変形を容易にするという観点から、延長部側山部31の高剛性部35における最大厚さが、延長部3の他の部分の厚さの1.5倍以下であることが好ましく、1.4倍以下であることがさらに好ましく、1.3倍以下であることがよりさらに好ましい。また、延長部側山部31の高剛性部35は、図6Bに示されるように、軸X方向において延長部側山部31の中で最も外径の大きい部位である、延長部側山部31の頂部31aにおいて最大厚さとなるように形成されていることが好ましい。延長部側山部31の頂部31aにおいて最大厚さとなるように高剛性部35を形成することで、高剛性部35が設けられた延長部側山部31の部位の圧縮時の変形を容易にすることができる。
【0047】
延長部側山部31に設けられる高剛性部35は、延長部側山部31の周方向の一部に設けられていればよく、その周方向の長さは特に限定されない。ただし、高剛性部35は、高剛性部35が設けられた延長部側山部31の部位の復元力を高めるという観点から、高剛性部35の周方向の長さは、延長部側山部31の周方向の長さの1/20以上であることが好ましく、1/15以上であることがさらに好ましく、1/10以上であることがよりさらに好ましい。また、延長部側山部31の径方向外側への押し出しの非対称性を高めるという観点から、高剛性部35の周方向の長さは、延長部側山部31の周方向の長さの1/4以下であることが好ましく、1/6以下であることがさらに好ましく、1/8以下であることがよりさらに好ましい。また、高剛性部35は、図6Aに示されるように、延長部側山部31の周方向において、最大厚さ部位から周方向の両側に向かって厚さが連続的に小さくなるように形成されていることが好ましい。これにより、延長部3が、圧縮状態から伸長状態に復元する際に、延長部側山部31の周方向で最大厚さ部位から周方向の両側に徐々に復元するので、より容易に伸長状態に復元することができる。
【0048】
高剛性部35は、たとえば、図7および図8に示される変形例のように、連結部33において、延長部側谷部32に隣接する位置であって、ブーツ1の圧縮時に湾曲する位置(谷部側湾曲部33b)に設けられ、連結部33から径方向内側および/または外側(図示された例では径方向外側)に突出する突起35bを有してもよい。高剛性部35は、突起35bを有することで、延長部3の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されている。延長部側谷部32に隣接する谷部側湾曲部33bに高剛性部35が設けられることで、高剛性部35が設けられた谷部側湾曲部33bの部位の復元力が高まり、それにより延長部側山部31を径方向外側に押し出す力が増加して、延長部3がより容易に伸長状態に復元することができる。ここでも、肉厚を厚くすることで剛性を高めることで、他の部材を用いて剛性を高めるのと比べて、高剛性部35を容易に形成することができる。さらに、金型を用いてブーツ1を製造する場合には、金型の成型が容易であり、ブーツ1を容易に製造することができる。
【0049】
延長部側谷部32に隣接して設けられる高剛性部35は、延長部3の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されていればよく、その肉厚は特に限定されない。ただし、高剛性部35が設けられた延長部3の周方向の部位の復元力を高めるという観点から、高剛性部35の肉厚は、延長部3の他の部分の肉厚の1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましく、1.5倍以上であることがよりさらに好ましい。また、高剛性部35が設けられた延長部3の周方向の部位の圧縮時の変形を容易にするという観点から、高剛性部35の肉厚は、延長部3の他の部分の肉厚の2倍以下であることが好ましく、1.8倍以下であることがさらに好ましく、1.6倍以下であることがよりさらに好ましい。
【0050】
高剛性部35は、谷部側湾曲部33bにおいて連結部33の周方向の一部に設けられていればよく、その周方向の長さは特に限定されない。ただし、高剛性部35は、高剛性部35が設けられた連結部33の部位の復元力を高めるという観点から、高剛性部35の周方向の長さは、連結部33の周方向の長さの1/20以上であることが好ましく、1/15以上であることがさらに好ましく、1/10以上であることがよりさらに好ましい。また、延長部側山部31の径方向外側への押し出しの非対称性を高めるという観点から、高剛性部35の周方向の長さは、連結部33の周方向の長さの1/4以下であることが好ましく、1/6以下であることがさらに好ましく、1/8以下であることがよりさらに好ましい。
【0051】
高剛性部35は、たとえば、図9に示される変形例のように、延長部側山部31から連結部33を経て延長部側谷部32までに亘って、軸Xを含む平面に沿って延びるように連続的に設けられてもよい。高剛性部35は、延長部3から径方向内側および/または外側(図示された例では径方向外側)に突出する突出部35cを有し、突出部35cは、延長部側山部31から連結部33を経て延長部側谷部32までに亘って、軸Xを含む平面に沿って延びるように連続的に設けられている。高剛性部35は、突出部35cを有することで、延長部3の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されている。延長部3の軸X方向の略全長に亘って高剛性部35が設けられることで、高剛性部35が設けられる延長部3の周方向の部位の復元力が高まり、それにより延長部側山部31を径方向外側に押し出す力が増加して、延長部3がより容易に伸長状態に復元することができる。なお、本実施形態では、高剛性部35は、蛇腹部2に設けられることなく、延長部3のみに設けられている。
【0052】
延長部側山部31から連結部33を経て延長部側谷部32までに亘って設けられる高剛性部35は、延長部3の他の部分と比べて厚い肉厚に形成されていればよく、その肉厚は特に限定されない。ただし、高剛性部35が設けられた延長部3の周方向の部位の復元力を高めるという観点から、高剛性部35の肉厚は、延長部3の他の部分の肉厚の1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましく、1.5倍以上であることがよりさらに好ましい。また、高剛性部35が設けられた延長部3の周方向の部位の圧縮時の変形を容易にするという観点から、高剛性部35の肉厚は、延長部3の他の部分の肉厚の2倍以下であることが好ましく、1.8倍以下であることがさらに好ましく、1.6倍以下であることがよりさらに好ましい。
【0053】
高剛性部35は、連結部33の周方向の一部に設けられていればよく、その周方向の長さは特に限定されない。ただし、高剛性部35は、高剛性部35が設けられた連結部33の部位の復元力を高めるという観点から、高剛性部35の周方向の長さは、連結部33の周方向の長さの1/20以上であることが好ましく、1/15以上であることがさらに好ましく、1/10以上であることがよりさらに好ましい。また、延長部側山部31の径方向外側への押し出しの非対称性を高めるという観点から、高剛性部35の周方向の長さは、連結部33の周方向の長さの1/4以下であることが好ましく、1/6以下であることがさらに好ましく、1/8以下であることがよりさらに好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 ブーツ
1a ブーツの軸方向の一端
1b ブーツの軸方向の他端
2 蛇腹部
2a 蛇腹部の軸方向の一端
2b 蛇腹部の軸方向の他端
21 蛇腹部側山部
22 蛇腹部側谷部
3 延長部
3a 延長部の軸方向の一端
3b 延長部の軸方向の他端
31 延長部側山部
31a 頂部
32 延長部側谷部
33 連結部
33a 山部側湾曲部
33b 谷部側湾曲部
34 舌片部
35 高剛性部
35a 延出部
35b 突起
35c 突出部
AP 当接部
B 基部(車両本体)
B1 開口部
D1 延長部側山部と延長部側谷部との間の軸方向の長さ
D2 蛇腹部側山部と蛇腹部側谷部との間の軸方向の長さ
ID 蛇腹部側谷部の内径
L 可動部(リッド)
L1 ブーツ取付部材
L11 被取付部
L12 押圧部
M 取付対象(リッド開閉装置)
MP 取付部
OD1 延長部の他端の外径
OD2 延長部側谷部の外径
OD3 蛇腹部側山部の外径
OP 操作部
X 軸
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9