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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062457
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】パッド及びマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230426BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172452
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】林 青山
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185CC73
(57)【要約】
【課題】病原体や花粉などの異物の呼吸による吸入の予防および他者への病原体の感染抑制があり且つ、感触およびフィット感に優れたマスクを実現できるパッド、並びに感触およびフィット感に優れたマスクを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によると、複合材料を含むパッドが提供される。複合材料は、第1主面および第1主面の裏側の第2主面を含む軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、第1主面および第2主面の上にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する。軟質ウレタンフォーム製スラブフォームは、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および前記第1主面の裏側の第2主面を含み、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、
前記第1主面および前記第2主面の上にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムと
を具備する複合材料を含む、パッド。
【請求項2】
前記スラブフォームは、100%以上800%以下の伸びを示す、請求項1に記載のパッド。
【請求項3】
前記スラブフォームは、10kg/m以上100kg/m以下の密度を有する、請求項1又は2に記載のパッド。
【請求項4】
前記複合材料は、1mm以上15mm以下の厚みを有する、請求項1から3の何れか1項に記載のパッド。
【請求項5】
外面と内面とを含むマスク本体と、
前記マスク本体の前記内面の少なくとも一辺に沿って配置されたパッドとを具備し、
前記パッドは、第1主面および前記第1主面の裏側の第2主面を含み、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、
前記第1主面および前記第2主面の上にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムと
を具備する複合材料を含む、マスク。
【請求項6】
前記スラブフォームは、100%以上800%以下の伸びを示す、請求項5に記載のマスク。
【請求項7】
前記スラブフォームは、10kg/m以上100kg/m以下の密度を有する、請求項5又は6に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッド及びマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
病原体や花粉などの異物の呼吸による吸入の予防および他者への病原体の感染抑制のために、口および鼻を覆うマスクが利用されている。例えば、使い捨て用の不織布マスクやガーゼマスク等が利用されている。顔面形状に合わせてマスクをフィットさせられるようにマスク本体の内面上部に固定されたノーズワイヤーを備えたマスクも多く流通しており、ノーズワイヤーの肌表面への感触を和らげるためにノーズパッドが設けられている。また、ノーズパッドはマスクと顔面とを隙間なく密着させる効果も有している。マスクと眼鏡を併用した場合に、マスク上面から漏れ出た呼気に含まれる水分が眼鏡レンズに付着してレンズが曇る原因となる。レンズが曇ると視覚が妨げられ、事故等を引き起こしかねない。
【0003】
マスクと眼鏡を併用した際のレンズの曇りを防止する手立てが考案されている。例えば、実用新案登録第3226963号公報には、スポンジ製ノーズパッドを含むメガネの曇り防止マスクが開示されている。このメガネの曇り防止マスクでは、スポンジ製ノーズパッドはマスク本体の内面上部に固定され、当該スポンジ製ノーズパッドのマスク本体から離れた面は鼻梁にフィットするよう凹凸状を呈する。マスクを装着した際にノーズパッドが鼻梁及びその両側の形状に合わせて変形し、鼻梁及びその両側とマスク本体の上部との間に隙間がノーズパッドによって塞がる。よって、呼気がマスク本体と鼻梁の間から上に漏れにくく、眼鏡の曇りを防止できる。しかし、このような構造のスポンジの形成には裁断工程が含まれるため、得られるスポンジの表面はカット断面になる。そして、上記マスクではスポンジ表面が顔面の肌に接することになる。すると、スポンジの表面はカット断面であるため接触面は荒い場合があり、好触感でない場合もある。また鼻梁及び頬への形状は個人差がある為、鼻梁にフィットしない場合もあり呼気の漏れが発生する場合もある。
【0004】
また、実用新案登録第3231701号公報には、マスク用ノーズパッドが開示されている。このノーズパッドは、着用者の鼻梁及びその両側の頬上部に当てられるフォーム材と、フォーム材に吸収された薬剤と、マスク本体の内面に対して着脱可能な付着部材とを備える。当該文献では、ノーズパッドに薬剤を含ませることで粘膜及び嗅覚器官等の器官が集中している顔面から効率良く薬剤効果を及ばせることが出来るとしている。しかし、薬剤を含んだフォーム材が顔面の肌に接することになり、不快感を伴いかねない。また、このノーズパッドを装着したマスクを眼鏡と併用した場合に、薬剤によって寧ろ眼鏡の曇りが助長される懸念がある。
【0005】
以上のように曇り止めなどのために、マスク本体の内面上部にスポンジ製ノーズパッドを固定することが考案されているが、人体との接触感覚やフィット感の点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3226963号公報
【特許文献2】実用新案登録第3231701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、病原体や花粉などの異物の呼吸による吸入の予防および他者への病原体の感染抑制があり且つ、感触およびフィット感に優れたマスクを実現できるパッド、並びに感触およびフィット感に優れたマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によると、複合材料を含むパッドが提供される。複合材料は、第1主面および第1主面の裏側の第2主面を含む軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、第1主面および第2主面の上にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する。軟質ウレタンフォーム製スラブフォームは、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する。
【0009】
本発明の他の実施形態によると、外面と内面とを含むマスク本体と、マスク本体の内面の少なくとも一辺に沿って配置されたパッドとを具備するマスクが提供される。パッドは、複合材料を含む。複合材料は、第1主面および第1主面の裏側の第2主面を含む軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、第1主面および第2主面の上にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する。軟質ウレタンフォーム製スラブフォームは、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、病原体や花粉などの異物の呼吸による吸入の予防および他者への病原体の感染抑制があり且つ、感触およびフィット感に優れたマスクを実現できるパッド及び感触およびフィット感に優れたマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】パッドの一例を示す概略断面図。
図2】マスクの一例を概略的に示す平面図。
図3図2のIII-III線に沿った概略断面図。
図4】マスクの他の例を概略的に示す平面図。
図5】マスクのさらに他の例を概略的に示す平面図。
図6】マスクのまたさらに他の例を概略的に示す平面図。
図7】実用新案登録第3231701号公報に係るマスク用ノーズパッドを装着したマスクを概略的に示す平面図。
図8図7のVIII-VIII線に沿った概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
マスク用ノーズパッド等の人体に触れる緩衝部材には、好触感および好フィット感が求められる。また、曇り止めの効果が求められる用途では、例えば、低通気性などが更に要求される。本発明に係るパッド及びマスクは、ウレタンフィルムでウレタンフォームを挟むことにより、滑らかで好フィット感があり、且つ通気性が低い複合材料が得られることを見出し、改善されたパッドを得ることで達成されたものである。
【0013】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態によれば、パッドが提供される。パッドは、第1主面およびその裏側の第2主面を含む軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、第1主面および第2主面の上にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する複合材料を含む。軟質ウレタンフォーム製スラブフォームは、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する。
【0015】
上記パッドは、板(slab)形状を有する軟質ウレタンフォーム製の基材を含み、この基材の両面にウレタンフィルムが設けられている。係るパッドの一例を、図1に示す。図1は、実施形態に係るパッドの一例を示す概略断面図である。図示するパッド10は、スラブフォーム1とウレタンフィルム2とを含む複合材料である。パッド10はウレタンフィルム2を一対含み、各ウレタンフィルム2はスラブフォーム1の第1主面1a及びその裏面の第2主面1bにそれぞれ配置されている。図示するように、パッド10は2枚のウレタンフィルム2の間にスラブフォーム1が挟まっている積層構造を有する。また、パッド10は、スラブフォーム1を基材として、その両面がウレタンフィルム2で覆われている複合材料であるともいえる。第1主面1a及び第2主面1bの両面がウレタンフィルム2の表面であるため平滑であり、何れの主面をマスク等との接着面にしてもよい。
【0016】
基材としての軟質ウレタンフォーム製のスラブフォームには、柔軟性が良好な材料を用いる。スラブフォームは、100%以上800%以下の伸びを示すことが望ましい。スラブフォームは、10kg/m以上100kg/m以下の密度を有することが望ましい。
【0017】
熱可塑性ウレタンフィルムとして、例えば、エステル系ウレタンフィルムを用いることが出来る。熱可塑性ウレタンフィルムは、40 Mpa以上の引張強度を有することが望ましい。また、熱可塑性ウレタンフィルムは、300%以上900%以下の引張伸度を示すことが望ましい。熱可塑性ウレタンフィルムとして、例えば、10μm以上100μm以下の範囲内の厚みを有するフィルムを用いることが出来る。
【0018】
パッドは、軟質ウレタンフォーム製スラブフォームを基材とし、その両面にウレタンフィルムを備えた複合材料である。即ち、パッドは、全体的にウレタン製の材料から構成される単一材質から成る。
【0019】
係るパッドは、例えば、マスク用ノーズパッドとして用いることが出来る。また、ノーズパッド以外にも、マスク本体と顔面とをフィットさせる他のパッドとして用いることもできる。例えば、マスク本体の頬に当たる部分にパッドを設け、頬に対するマスクの感触を改善したり頬の後部で隙間が生じるのを防止したりすることが出来る。また、頬に当てるパッドと耳に掛けるための掛け紐とを兼用させてもよい。
【0020】
係るパッドは、スラブフォーム基材の両面にウレタンフィルムを有しているため、感触、接着の容易性、気密性、及び強度などといった性質が、単体のスラブフォームと比較して向上している。そのうえで、パッドは、ウレタンフィルムが貼り付けられていてもスラブ単体と同等の柔軟性を示す。そのため、上記複合材料からなるパッドは、感触およびフィット感が良く、例えば、ノーズパッドとして使用した場合には曇り止めの効果を発揮することができる。
【0021】
スラブフォーム基材はウレタンフォームから切り出した板(スラブ)であるため、その表面はスポンジのカット断面と類似する状態にある。そのため、フォーム成型時の発泡により形成された気泡の状態やフォームの軟らかさによっても異なるが、スラブ表面は肌触りが良くない場合がある。実施形態に係るパッドでは、複合材料の外面がフィルム面であるため、肌での感触に違和感が少ない。
【0022】
また、例えば、マスク本体へのパッドの接着に接着剤を用いる場合、ウレタンフィルムを有さないスラブフォーム単体に接着剤を塗布すると、接着剤がスラブフォームに含浸し、軟質ウレタンフォームの性質が変化し得る。その結果、例えば、気密性が悪化したり感触が変化したりするおそれがある。例えば、両面テープを用いてパッドを接着することもできるが、スラブ表面に気泡があり面が粗いため、テープからスラブが剥がれやすい。実施形態に係るパッドでは、外面がフィルム面であるため、接着剤を用いてもスラブフォームへの含浸が無いのでスラブフォームの性質が変化せず、両面テープに対し面として貼り付くので剥がれが抑制される。即ち、当該パッドをマスク用パッドとして容易かつ確実にマスクに装着させることができる。
【0023】
以上のとおり、実施形態に係るパッドは、表裏両側の主面にウレタンフィルムを備えているため、一方の主面にてマスク本体に対し良好な接着性を示すと同時に他方の主面にて好感触を示すことができる。また、スラブフォームの第1主面側と第2主面側とでパッドの構造に差がないため、何れの面をマスク本体との接着面とすることが出来る。従って、マスク本体へ接着させる際に表裏に留意する必要がないので、マスクへの装着を効率的に行うことが出来る。
【0024】
ウレタンフォーム単体だけでは通気量が10cc/cm2/s~150cc/cm2/sあり、鼻と密着していても眼鏡レンズの曇りを抑制する効果は薄い。通気性の無いウレタンフィルムを両面に用いる事で複合体状態でも通気量を0cc/cm2/sにする事が出来る。この複合体のノーズパットを用い、鼻と密着する事で、表裏両側からの通気がなくなり眼鏡レンズの曇りを軽減する事が可能となる。一般の軟質ウレタンフォームは連通がある為、通気性を有する。実施形態に係るパッドでは、厚みの薄いスラブフォームを用いておりマスク上面から漏れ出た呼気は、厚みのあるノーズパッドより相対的に少なくすることが可能となる。
【0025】
実施形態に係るパッドでは、スラブフォーム両面にウレタンフィルムが積層されていることにより、引張強度および引裂き強度が単体の軟質ウレタンフォームより向上している。加えて、スラブウレタンはNOガスに曝されると劣化し黄変するが、ウレタンフィルムの積層によりNOガスによる劣化と黄変が大幅に減少する。
【0026】
軟質ウレタンフォーム製のスラブフォームにウレタンフィルムを貼り付けても、軟質ウレタンフォームの柔軟性が損なわれず、複合体はスラブフォーム単体と同等のたわみを示す。従って、複合体は、100%以上800%以下の伸びを示す。
【0027】
係るパッドが含む複合材料は、例えば、1mm以上15mm以下の厚みを有し得る。用途に応じてパッドの形状は異なり得るが、例えば、マスク用ノーズパッドに用いられる場合は、厚み1mm以上15mm以下、幅5mm以上40mm以下、及び長さ20mm以上200mm以下の寸法を有する帯形状のパッドであり得る。
【0028】
ウレタンフィルムは、フレームラミネート法によりスラブフォームの両面に設けることができる。
【0029】
実施形態に係るパッドをマスク用ノーズパッド等のマスク用部材としてマスクに備え付けるには、例えば、両面テープ、ホットメルト接着剤、接着糊あるいは粘着剤などの接着剤、及び熱融着などの接着手段を用いてマスク本体の内面に貼り付けることができる。
【0030】
第1実施形態に係るパッドは、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、その両面にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する複合材料を含む。上記パッドは、感触およびフィット感に優れたマスクを提供することができる。
【0031】
[第2実施形態]
第2実施形態によれば、マスクが提供される。マスクは、外面と内面とを含むマスク本体と、マスク本体の内面の少なくとも一辺に沿って配置されたパッドとを具備する。パッドは、第1主面およびその裏側の第2主面を含む軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、第1主面および第2主面の上にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する複合材料を含む。軟質ウレタンフォーム製スラブフォームは、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する。
【0032】
言い換えると、係るマスクは、第1実施形態に係るパッドを具備するマスクである。パッドは、例えば、ノーズパッドとしてマスクに具備され得る。パッド自体の詳細は、第1実施形態にて説明したものと重複するため、省略する。
【0033】
実施形態に係るマスクの例を、図面を参照しながら説明する。図2図6は各々、係るマスクの例を概略的に示す平面図である。図2及び図4-6は、マスク本体の内面側、つまりマスクを正しく着用した際に顔面に面する側から見た平面図である。図3は、図2に示すIII-III線に沿った断面図である。
【0034】
図2及び図3に示すマスク100は、第1実施形態に係るパッドをノーズパッドとしてのみ含んだ例である。当該マスク100は、マスク本体101と、一対の掛け紐102と、ノーズパッド11とを含む。
【0035】
ここではマスク本体101を矩形形状で表しているが、マスク本体101の形状は特に限られず、例えば、鼻および口を含めた顔面下部を覆うための立体的な構造を有することが出来る。また、マスク本体101は、立体的な構造に展開できるように折り目を含んだりプリーツ加工されたりしたものであり得る。
【0036】
ノーズパッド11は、マスク本体101の内面に外周の一辺に沿って設けられている。ノーズパッド11は、マスク本体101の長辺に沿い得る。ノーズパッド11が沿う辺と交差する二辺のそれぞれに沿って、顔面へマスク100を固定する際に耳に掛けるための掛け紐102が装着されている。
【0037】
マスク100は、ノーズパッド11として第1実施形態に係るパッドを備えているため、ノーズパッド11が沿う内面上部の感触および顔面フィット感が良好で、この箇所からの呼気中の水分の漏れを防止して眼鏡レンズの曇り防止を達成できる。
【0038】
図7及び図8に、実用新案登録第3231701号公報に係るマスク用ノーズパッドを装着したマスクを示す。図7はマスク本体の内面側の平面図であり、図8図7に示すVIII-VIII線に沿った断面図である。図示するマスク110に装着されたマスク用ノーズパッド111は鼻梁および頬を含む顔面形状に合わせた厚みのある形状を有する。これに対し第1実施形態に係るパッドを用いたノーズパッド11は図3に示すとおり厚みが薄く、マスク100上面から漏れ出る呼気を、実用新案登録第3231701号公報に係る厚みのあるノーズパッド111を使用した場合より相対的に少なくできる。
【0039】
さらにフィット性を向上させるために図4に示すように、マスク100はノーズワイヤー103を含んでもよい。ノーズワイヤー103にノーズパッド11を複合化させることで、より良好なフィット感と肌へのあたりのソフト感とを両立できる。ノーズワイヤー103は、例えば、ノーズパッド11が沿うマスク本体101の辺と同じ辺に沿い得る。
【0040】
第1実施形態に係るパッドの用途は、ノーズパッドに限られない。例えば、図5に示す例のように、頬当てパッド(チークパッド)としての用途を挙げることができる。図5に示すマスク100は、頬当てパッド12を更に含む。頬当てパッド12は、第1実施形態に係るパッドである。頬当てパッド12は、例えば、図示するようにノーズパッド11が沿う辺と交差する二辺にそれぞれ沿って配置され得る。
【0041】
頬当てパッド12により、マスク100における頬と接触する部分においても好感触およびフィット感が得られ、頬の後ろ側からの異物(病原体や花粉など)の侵入を低減できる。
【0042】
また、第1実施形態に係るパッドは、掛け紐としても使用され得る。図6に、頬当てパッドと掛け紐とを兼用するパッドを備えたマスクを例示する。図6に示すマスク100は、一対の頬当て-掛け紐兼用パッド13を含む。大文字アルファベット“D”の形状を有する頬当て-掛け紐兼用パッド13は、第1実施形態に係るパッドの態様の一つである。頬当て-掛け紐兼用パッド13は、頬当てパッドとして機能する頬当て部13aと、顔面へのマスク固定のために耳に掛ける掛け紐として機能する掛け紐部13bとを含む。頬当て-掛け紐兼用パッド13は、例えば、図示するようにノーズパッド11が沿う辺と交差する二辺にそれぞれ頬当て部13aが沿うように配置され得る。
【0043】
頬当て部13aとマスク本体101との接着面積が多いため、頬当て-掛け紐兼用パッド13がマスク本体101から外れてマスク100を着用できなくなるという破損が生じにくい。また、頬当て部13aにより、頬と接触する部分においても好感触およびフィット感が得られ、頬の後ろ側からの異物の侵入を低減できる。さらに、掛け紐部13bが好感触な部材であるため、着用者の耳に対する不快感や違和感が軽減される。
【0044】
マスク本体は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂製の不織布であり得る。或いは、マスク本体は、例えば、ガーゼで形成され得る。また、マスク本体は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂からなる1層以上の不織布フィルターを内包し得る。
【0045】
掛け紐は、例えば、ナイロンやポリウレタン等の樹脂から形成され得る。ノーズワイヤーは、例えば、ポリエチレン等の樹脂や金属を含み得る。
【0046】
第2実施形態に係るマスクは、マスク本体とその内面の少なくとも一辺に沿うパッドとを具備する。パッドは、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、その両面にそれぞれ配置された一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する複合材料を含む。上記マスクは、感触およびフィット感に優れる。
【0047】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、発明を実施する形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0048】
(例1)
厚み3mmの、50 kg/m3の密度を有する軟質ウレタンフォーム50SH(株式会社東洋クオリティワン製)から成るスラブフォームを準備した。準備したスラブフォームをそのままパッドとした。
【0049】
(例2)
厚み6mmの、50 kg/m3の密度を有する軟質ウレタンフォーム50SH(株式会社東洋クオリティワン製)から成るスラブフォームを準備した。厚みが3mmとなるよう、準備したスラブフォームの両面に対し熱プレスを実施した。プレス後のスラブフォームをパッドとした。
【0050】
(例3)
厚み3 mmの、両面スキン付マイクロセルウレタンフォームN2830GS(株式会社東洋クオリティワン製)から成るウレタンフォームを準備した。準備したウレタンフォームをそのままパッドとした。
【0051】
(例4)
厚み3.2mmの、50 kg/mの密度を有する軟質ウレタンフォームLDN(株式会社東洋クオリティワン製)から成るスラブフォームを準備した。熱可塑性ウレタンフィルムとして、厚み33 μm、伸び300%~900%のエステル系ウレタンフィルム シルクロン(登録商標;大倉工業株式会社製)を準備した。準備したスラブフォームの片側の主面に、準備したウレタンフィルムをフレームラミネートにより積層させて複合材料を作製し、パッドとした。
【0052】
(例5)
厚み3.2mmの、50 kg/mの密度を有する軟質ウレタンフォームLDN(株式会社東洋クオリティワン製)から成るスラブフォームを準備した。熱可塑性ウレタンフィルムとして、厚み33 μmのオレフィンフィルムを準備した。準備したスラブフォームの両側の主面に、準備したオレフィンフィルムをフレームラミネートにより積層させて複合材料を作製し、パッドとした。
【0053】
(例6)
厚み3.2mmの、50kg/mの密度を有する軟質ウレタンフォームLDN(株式会社東洋クオリティワン製)から成るスラブフォームを準備した。熱可塑性ウレタンフィルムとして、厚み33μm、伸び300%~900%のエステル系ウレタンフィルム シルクロン(登録商標;大倉工業株式会社製)を準備した。準備したスラブフォームの両側の主面に、準備したウレタンフィルムをフレームラミネートにより積層させて複合材料を作製し、パッドとした。
【0054】
(例7-13)
スラブフォームを下記表1に記載の品番の軟質ウレタンフォームに変更し、その両面に積層させたウレタンフィルムを表1に示す厚みのシルクロン(登録商標;大倉工業株式会社製)に変更したことを除き、例6と同様に複合材料を作製し、パッドとした。
【0055】
また、各例で作製したパッドをノーズパッドとして不織布マスクに接着した。具体的には、接着剤を用いてマスク本体の内面における一方の長辺に沿って、パッドを15mm×100mmの寸法に裁断したノーズパッドを貼り付けた。例4で作製したパッドについては、ウレタンフィルムを設けなかった主面を不織布面に接着した。
【0056】
下記表1に、各例で準備したパッドに用いた軟質ウレタンフォーム製スラブフォーム及び熱可塑性樹脂フィルムの詳細、及び得られたパッドの詳細をまとめる。軟質ウレタンフォームの詳細としては、その材料、品番、密度、厚み、JIS K6400-2D法:2012に準じた25%圧縮時の硬さ、引張強度、伸度、及び引裂強さを示す。樹脂フィルムの詳細としては、その材質、厚み、及び基材としてのスラブフォーム上の配置、つまり片面に積層したか両面に積層したか或いは積層しなかったかを示す。
【0057】
パッドの詳細としては、その形態、作製後の厚み、作製後の密度、接着性、外観、及び両面平滑性を示す。形態については、例1及び3では何ら処理をせずスラブフォームをそのままパッドとしたため“単体”と表記し、例2では熱プレスに供したスラブフォームをパッドとしたため“熱プレス”と表記し、例4-13ではスラブフォーム基材に対しフィルム積層を行ってパッドを作製したため“積層”と表記する。接着性については、例1,2,4では接着剤を塗布した面からスラブフォーム内へ接着剤が浸透してしまったため「×」と表記し、他の例についてはそのような不具合がなかったため「○」と表記している。外観については、フィルム表面に皺が確認された場合は「×」、皺が確認されなかった場合を「○」と表記している。なお、例1-3についてはフィルム積層を行ってなく、何れの面にもウレタンスラブフォームが露出していたため、外観の評価の対象外としている。両面平滑性については、例3に用いた両面スキン付きマイクロセルウレタンフォーム N2830GSは元よりウレタンフォームのスキンを両面に有し片側のスキンに起伏を有する製品であったため、そして例4では片面にのみウレタンフィルムを設けたため、それぞれ両面平滑性を満たしているといえず「×」と表記している。他の例については両面平滑性を満たしていたため「○」と表記している。
【0058】
【表1】
【0059】
ノーズパッドを設けた各マスクに対し、触感、柔軟性、及びフィット感について、官能評価試験を行った。具体的には、5名のパネラーに各性質について下記表2に示す5段階の評価をしてもらった。その結果を、下記表3に示す。表3では、5名のパネラーによる評価点数に応じた、次の基準の4段階評価を示している:平均点数3.5~5.0なら二重丸;平均点数2.5~3.4なら「○」;平均点数1.5~2.4なら「△」;平均点数1~1.4なら「×」。
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すとおり、例1-3で作製したパッドをノーズパッドに用いたマスクでは、触感、柔軟性、及びフィット感の何れについても満足な結果が得られなかった。これら例1-3では、200kPaを超える引張強度を有するウレタンフォーム製スラブフォームをウレタンフィルムと積層させずに単体でノーズパッドとして用いた。例4-7については、触感は良好であったものの、柔軟性およびフィット感については良い結果が得られなかった。これら例4-7では、ウレタンフィルム又はオレフィンフィルムを基材としての軟質ウレタンフォーム製スラブフォームの片面または両面に積層させたものの、パッドの基材に用いたスラブの引張強度が200kPaを超えていた。
【0063】
例8-13に係るマスクでは、触感、柔軟性、及びフィット感の何れについても良好な結果が得られた。例8-13では、50kPa以上200kPa以下の範囲内の引張強度を有する軟質ウレタンフォーム製スラブフォームを基材とし、その表裏両面にウレタンフィルムを積層させたパッドを用いた。
【0064】
例1-13における結果から、熱可塑性ウレタンフィルムを設けることで触感が良好な複合材料が得られ、50kPa以上200kPa以下の範囲内の引張強度を有する軟質ウレタンフォーム製スラブフォームを基材に用いることで、柔軟性およびフィット感に優れた複合材料が得られることが分かる。このような複合材料は、マスク用ノーズパッドなどの人体と接触する箇所や部材に用いるパッドとして好適に用いることができる。
【0065】
以上説明した少なくとも1つの実施形態および実施例によれば、パッドは、軟質ウレタンフォーム製スラブフォームと、一対の熱可塑性ウレタンフィルムとを具備する複合材料を含む。軟質ウレタンフォーム製スラブフォームは、第1主面および第1主面の裏側の第2主面を含み、50kPa以上200kPa以下の引張強度を有する。一対の熱可塑性ウレタンフィルムは、第1主面および第2主面の上にそれぞれ配置されている。上記パッドは、感触およびフィット感に優れたマスクを提供することができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0067】
1…スラブフォーム、2…ウレタンフィルム、10…パッド、11…ノーズパッド、12…頬当てパッド、13…頬当て-掛け紐兼用パッド、13a…頬当て部、13b…掛け紐部、100…マスク、101…マスク本体、102…掛け紐、103…ノーズワイヤー、110…マスク、111…ノーズパッド。
図1
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図8