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特開2023-62470電気剥離粘着シートおよびこれを用いた接合体の剥離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062470
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】電気剥離粘着シートおよびこれを用いた接合体の剥離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230426BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230426BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20230426BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20230426BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20230426BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J7/21
C09J5/00
C09J7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172471
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】高岡 慎弥
(72)【発明者】
【氏名】川田 智史
(72)【発明者】
【氏名】天野 泰之
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA06
4J004CB01
4J004CB04
4J004CC03
4J004CE01
4J004DB03
4J004FA01
4J004FA04
4J004FA08
4J040DF021
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA32
4J040MA02
4J040MA05
4J040PA00
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】電圧印加によって剥離する際の作業性に優れる電気剥離粘着シートを提供する。
【解決手段】複数の空隙を含む導電性空隙含有基材から構成される導電性基材層と、前記導電性基材層の少なくとも一方の表面側に積層される電気剥離性粘着剤層と、を有する、電気剥離粘着シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空隙を含む導電性空隙含有基材から構成される導電性基材層と、
前記導電性基材層の少なくとも一方の表面側に積層される電気剥離性粘着剤層と、
を有する、電気剥離粘着シート。
【請求項2】
前記導電性基材層を構成する前記導電性空隙含有基材に含まれる複数の空隙の少なくとも一部に、前記電気剥離性粘着剤層の少なくとも一部が侵入してなる、請求項1に記載の電気剥離粘着シート。
【請求項3】
前記導電性基材層および前記電気剥離性粘着剤層が、空隙を有さない導電層を介して積層される、請求項1に記載の電気剥離粘着シート。
【請求項4】
前記導電性空隙含有基材が、導電性不織布、導電性織布、および導電性発泡材からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気剥離粘着シート。
【請求項5】
前記導電性基材層の厚さが、15μm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電気剥離粘着シート。
【請求項6】
前記導電性基材層が、当該導電性基材層の面広がり方向において、前記電気剥離性粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さない、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気剥離粘着シート。
【請求項7】
前記導電性基材層の両面側にそれぞれ前記電気剥離性粘着剤層が積層してなる積層構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気剥離粘着シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電気剥離粘着シートと、前記電気剥離粘着シートに接着された被着体と、を含む、接合体の剥離方法であって、
電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性基材層に挿入して、前記導電性基材層を通電することを含む、剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気剥離粘着シートおよびこれを用いた接合体の剥離方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートの特性の一つとして、例えば、仮固定用テープ、表面保護フィルム、塗装用または装飾用マスキングテープ、再剥離可能なメモ等の用途において、再剥離性が求められる場合がある。
再剥離性粘着シートは、被着体に貼付された際に、運搬時、貯蔵時、加工時等においては被着体から剥離しない程度の粘着力が求められる一方、機能を果たし終えた後には、容易に除去しうる再剥離性が求められる。
【0003】
このような再剥離性粘着シートとして、例えば、特許文献1には、電解質を含有する第1の粘着剤層と、第2の粘着剤層と、前記第1および第2の粘着剤層の間に位置して前記第1の粘着剤層と電気的に接続している通電用基材と、を含む積層構造を有する両面粘着シートに係る発明が記載されている。
特許文献1によれば、前記両面粘着シートは、電圧を印加することで、電解質を含有する第1の粘着剤層の接着力が低下することが記載されている。すなわち、特許文献1に記載の両面粘着シートは、電気剥離粘着シートといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/064925号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の中、より容易に電圧印加によって粘着力を低下させることができ、剥離時の作業性に優れる電気剥離粘着シートが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下の態様の電気剥離粘着シート等を提供する。
[1]複数の空隙を含む導電性空隙含有基材から構成される導電性基材層と、
前記導電性基材層の少なくとも一方の表面側に積層される電気剥離性粘着剤層と、
を有する、電気剥離粘着シート。
[2]前記導電性基材層を構成する前記導電性空隙含有基材に含まれる複数の空隙の少なくとも一部に、前記電気剥離性粘着剤層の少なくとも一部が侵入してなる、上記[1]に記載の電気剥離粘着シート。
[3]前記導電性基材層および前記電気剥離性粘着剤層が、空隙を有さない導電層を介して積層される、上記[1]に記載の電気剥離粘着シート。
[4]前記導電性空隙含有基材が、導電性不織布、導電性織布、および導電性発泡材からなる群から選択される少なくとも1つを含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の電気剥離粘着シート。
[5]前記導電性基材層の厚さが、15μm以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の電気剥離粘着シート。
[6]前記導電性基材層が、当該導電性基材層の面広がり方向において、前記電気剥離性粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さない、上記[1]~[5]のいずれかに記載の電気剥離粘着シート。
[7]前記導電性基材層の両面側にそれぞれ前記電気剥離性粘着剤層が積層してなる積層構造を有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の電気剥離粘着シート。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の電気剥離粘着シートと、前記電気剥離粘着シートに接着された被着体と、を含む、接合体の剥離方法であって、
電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性基材層に挿入して、前記導電性基材層を通電することを含む、剥離方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば電圧印加によって剥離する際の作業性に優れる電気剥離粘着シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図2】本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図3】本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図4】本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図5】本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る接合体の断面模式図である。
図7】本発明の別の一実施形態に係る接合体の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができる。
【0010】
なお、本明細書に記載された数値範囲は、上限値および下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは20~120、より好ましくは40~90」と記載されている場合、「20~90」との範囲や「40~120」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは20以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは120以下、より好ましくは90以下である」と記載されている場合、「20~90」との範囲や「40~120」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
【0011】
本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
また、電気剥離性粘着剤組成物の「有効成分」とは、電気剥離性粘着剤組成物に含まれる成分のうち、水や有機溶媒の希釈溶媒を除いた成分を意味する。
【0012】
本明細書において、電気剥離性粘着シートを構成する各層の厚さは、JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠して測定された値を意味し、例えば、定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製、製品名「PG-02J」)を用いて測定できる。
本明細書において、質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定された値である。
【0013】
本明細書において、対象物が「導電性」であるか、もしくは「非導電性(絶縁性)」であるかの判断は、以下の試験方法に基づいて行うことができる。
[導電性か否かを判断する試験方法]
電圧印加装置及び豆電球を直列につないだ電気回路の途中に、リード線を介して対象物を接続して電気回路を作成する。なお、リード線は、その先端を対象物の表面に接触させて被着体と接続させる。直流電源装置で2.5Vの電圧を印加して、作成した電気回路に流した際の豆電球の点灯の有無を目視で観察する。豆電球の点灯を確認した場合は、対象物を「導電性」と判断する。一方で、豆電球の点灯が確認できなかった場合は、対象物を「非導電性(絶縁性)」と判断する。
【0014】
<電気剥離粘着シート>
本発明に係る電気剥離粘着シートは、複数の空隙を含む導電性空隙含有基材から構成される導電性基材層と、前記導電性基材層の少なくとも一方の表面側に積層される電気剥離性粘着剤層と、を有する。
【0015】
例えば、本発明の電気剥離粘着シートが有する電気剥離性粘着剤層を導電性被着体に貼付した後、当該導電性被着体を剥離する場合、電圧印加装置の一方の端子を導電性被着体に電気的に接続する。そして、電圧印加装置の他方の端子は、導電性基材層に電気的に接続する必要があるが、本発明の電気剥離粘着シートが有する導電性基材層は、複数の空隙を含む導電性空隙含有基材から構成されるため、電圧印加装置の一方の端子を直接導電性基材層に挿入し易い。その結果、前記電気剥離粘着シートによれば、端子を取り付ける作業が非常に簡便となり、剥離時の作業性に優れる。
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。なお、図面は理解促進のために例を模式的に示したものであり、実際の寸法と異なることがある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図1に示す電気剥離粘着シート100は、導電性基材層10の一方の面側に、電気剥離性粘着剤層20が積層されている。この際、導電性基材層10は、複数の空隙10aを含む導電性空隙含有基材から構成されている。電気剥離粘着シート100は、電気剥離性粘着剤層20を介して、被着体(例えば、導電性被着体)に接着されることで、接合体を形成することができる。また、電圧印加装置の一方の端子を導電性基材層10に、もう一方の端子を被着体(導電性被着体)に取り付け、電圧を印加することで電気剥離性粘着剤層20および被着体(導電性被着体)を電気剥離することができる。この際、電気剥離性粘着剤層20への電圧印加装置の端子の取り付けは、端子を単に差し込むことにより行うことができ、非常に簡便であり作業性に優れる。
【0018】
電気剥離粘着シートの構成は適宜変更することができる。
図2は、本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図2に示す電気剥離粘着シート101は、導電性基材層11の一方の面側に、電気剥離性粘着剤層20が積層されている。この際、導電性基材層11を構成する導電性空隙含有基材が有する空隙に電気剥離性粘着剤層が侵入しており、電気剥離性粘着剤層の空隙充填部11aが形成されている。本形態においても、接合体が形成された場合において、導電性基材層11に電圧印加装置の一方の端子を差し込むことができるため、端子取り付けの作業性が高い。そして、電圧を印加した場合、電気剥離性粘着剤層20と空隙充填部11aとは構成材料が接続していることから、印加された電圧は、導電性基材層11から直接電気剥離性粘着剤層20に伝わり、および/または空隙充填部11aを介して直接電気剥離性粘着剤層20に伝わることで、被着体(導電性被着体)を電気剥離することができる。本実施形態によれば、導電性基材が有する空隙により印加電圧が遮断され、粘着力の低下が不十分となる現象を抑制することができる。
【0019】
図3は、本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図3に示す電気剥離粘着シート102は、導電性基材層10、導電層40、および電気剥離性粘着剤層20がこの順に積層される。すなわち、導電性基材層10および電気剥離性粘着剤層20が、導電層40を介して積層される。本形態においても、接合体を形成された場合において、導電性基材層10に電圧印加装置の一方の端子を差し込むことができるため、端子取り付けの作業性が高い。そして、電圧を印加した場合、印加された電圧は、導電性基材層10から導電層40を介して電気剥離性粘着剤層20に伝わる。これにより、被着体(導電性被着体)を電気剥離することができる。本実施形態によれば、導電層40を介することで、電気剥離性粘着剤層20に均一に電圧が印加され、粘着力を均等に低下させることができ、電気剥離性を向上させることができる。
【0020】
図4は、本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図4に示す電気剥離粘着シート103は、導電性基材層10の両面に、電気剥離性粘着剤層21および22が積層される。本形態においても、接合体を形成された場合において、導電性基材層10に電圧印加装置の一方の端子を差し込むことができるため、端子取り付けの作業性が高い。本実施形態によれば、2つの電気剥離性粘着剤層21および22を有することから、2つの被着体の接着および剥離を行うことができる。なお、前記剥離は、電気剥離性粘着剤層21と被着体との間で行ってもよいし、電気剥離性粘着剤層22と被着体との間で行ってもよい。
【0021】
図5は、本発明の別の一実施形態に係る電気剥離粘着シートの断面模式図である。
図5に示す電気剥離粘着シート104は、導電性基材層10の一方の面側に、電気剥離性粘着剤層20が積層され、もう一方の面側に非電気剥離性粘着剤層30が積層される。すなわち、非電気剥離性粘着剤層30、導電性基材層10、電気剥離性粘着剤層20を有する。本実施形態によれば、電気剥離性粘着剤層20および非電気剥離性粘着剤層30を有することから、2つの被着体の接着および剥離を行うことができる。なお、前記剥離は、電気剥離性粘着剤層20と被着体との間で行われる。
【0022】
一実施形態において、導電性基材層が、当該導電性基材層の面広がり方向において、前記電気剥離性粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さないことが好ましい。
従来の電気剥離粘着シートは、基材と導電層との積層構造の構成を有する通電用基材が、その面広がり方向において延出部を有しており、当該延出部に電圧印加装置の一方の端子を取り付けていた。しかしながら、延出部を有することで、例えば、電子部品の仮固定用途に用いた場合、通電用基材の延出部が他の部材と接触してしまい、電子機器の誤作動および不具合の原因となることがあった。これに対し、本実施形態に係る電気剥離粘着シートは、延出部を実質的に有さない、好ましくは延出部を有さないことから、延出部による他の部材と接触等の問題が生じないことから好ましい。
【0023】
なお、本明細書において、「導電性基材層の面広がり方向」とは、導電性基材層が隣接する電気剥離性粘着剤層との接触面の延長方向を意味し、通常、導電性基材層の厚さ方向に対して垂直方向である。また、「電気剥離性粘着剤層よりも伸びて露出する延出部を実質的に有さない」とは、電気剥離性粘着剤層の両端の厚さ方向に対して垂直方向の延長線に対して、電気剥離性粘着剤層の両端が伸びて露出する延出部がそれぞれ5mm未満、より好ましくは2mm未満、さらに好ましくは1mm未満、よりさらに好ましくは100μm未満、特に好ましくは10μm未満、特に好ましくは電気剥離性粘着剤層の両端が伸びて露出する延出部が存在しないことを意味する。
【0024】
図2のように、本発明の一実施形態において、導電性基材層を構成する前記導電性空隙含有基材に含まれる複数の空隙の少なくとも一部に、前記電気剥離性粘着剤層の少なくとも一部が侵入してなることが好ましい。これにより、導電性基材が有する空隙により印加電圧が遮断され、粘着力の低下が不十分となる現象を抑制することができる。
【0025】
導電性空隙含有基材に含まれる複数の空隙は、その一部が電気剥離性粘着剤層を構成する材料に侵入されていても、その全部が電気剥離性粘着剤層を構成する材料に侵入されていてもよい。導電性空隙含有基材への侵入率は、全空隙に対して、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または80%以上であることが好ましい。また、導電性空隙含有基材への侵入率は、全空隙に対して、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、または50%以下であることが好ましい。なお、導電性空隙含有基材への侵入率は、任意に選択した1箇所における断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を画像処理して測定することができる。
【0026】
なお、導電性空壁含有基材に含まれる空隙は、その一部が非電気剥離性粘着剤層を構成する材料に侵入されていても、その全部が非電気剥離性粘着剤層を構成する材料に侵入されていてもよい。例えば、電気剥離粘着シートが非電気剥離性粘着剤層、導電性基材層、電気剥離性粘着剤層がこの順に積層された構成を含む場合、電気剥離の際には電気剥離性粘着剤層で剥離が生じる。換言すれば、電気剥離は非電気剥離性粘着剤層では生じない。よって、導電性空壁含有基材に含まれる空隙に、非電気剥離性粘着剤を構成する材料を侵入させることで、非電気剥離性粘着剤層および導電性基材層間の接着力をより強くすることができ、取り扱いに優れる等の効果を有しうる。
【0027】
導電性空隙含有基材に含まれる複数の空隙に、電気剥離性粘着剤層または非電気剥離性粘着剤層の少なくとも一部を侵入させる方法としては、例えば、電気剥離性粘着剤または非電気剥離性粘着剤層の原料組成物(好ましくは塗布液)を、導電性空隙含有基材に塗布して、乾燥する方法が挙げられる。
【0028】
以下、本発明の各構成について説明する。
【0029】
[導電性基材層]
導電性基材層は、複数の空隙を含む導電性空隙含有基材から構成される。
導電性空隙含有基材は、複数の空隙を含む。導電性空隙基材を用いることにより、電圧の印加による剥離の際に、高い作業性を実現することができる。
【0030】
導電性空隙含有基材としては、特に制限されないが、導電性不織布、導電性織布、導電性発泡材が挙げられる。すなわち、一実施形態において、導電性空隙含有基材は、導電性不織布、導電性織布、および導電性発泡材からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0031】
前記導電性不織布および導電性織布は、少なくとも導電糸を含有していればよく、さらに非導電糸を含有していてもよい。
【0032】
前記導電糸としては、特に制限されないが、非導電糸と前記非伝導糸表面の少なくとも一部を被覆する金属被膜を含むものであることが好ましい。
前記非導電糸としては、特に制限されないが、綿、麻、天然パルプ、リンターパルプ等の天然繊維;ガラス繊維等の無機繊維;キュプラ、レーヨンなどの再生繊維;ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;ナイロン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリエステル;アクリル繊維、アラミド繊維、フェノール繊維等の化学繊維等が挙げられる。これらの非導電糸は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記金属被膜としては、特に制限されないが、アルミニウム、銅、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等が挙げられる。これらの金属、金属被膜は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電糸の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる非導電性糸の表面にニッケルを被覆してなる導電糸、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる非導電性糸の表面に銅を被覆してなる導電糸、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる非導電性糸の表面にニッケルおよび銅を被覆してなる導電糸等が挙げられる。これらの導電糸は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
導電性糸の含有量は、導電性不織布の全質量または導電性織布の全質量に対して、30質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%であることが好ましい。また、導電性糸の含有量は、導電性不織布の全質量または導電性織布の全質量に対して、99質量%下、90%以下、80%以下、70%以下であることが好ましい。
【0034】
導電糸、または導電糸および非導電糸を絡み合せることで導電性不織布を得ることができ、縦横に織ることで導電性織布を得ることができる。
【0035】
前記導電性発泡材としては、特に制限されないが、導電性フィラーを含む発泡樹脂が挙げられる。
【0036】
前記導電性フィラーとしては、特に制限されないが、黒鉛、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、グラフェン、グラファイト、炭素繊維等の炭素材料;アルミニウム、銅、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金、亜鉛等の金属材料;酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の金属酸化物材料等が挙げられる。これらの導電性フィラーは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記導電性フィラーの平均粒径としては、特に制限されないが、1~100μmであることが好ましく、5~80μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書において、「粒径」とは、粒子の輪郭線上のうち2点間の距離のうち最も長い距離を意味する。また、「平均粒径」とは、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した一視野中に存在する200の粒子の粒径の平均値を意味する。
【0037】
前記発泡樹脂を構成する樹脂としては、特に制限されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合ポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合ポリマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリウレタン系樹脂;アクリル系ゴムやその他のエラストマー等のゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの樹脂を発泡することで発泡樹脂を得ることができる。
【0038】
前記発泡樹脂の発泡剤としては、特に制限されないが、アニオン性界面活性剤であることが好ましい。前記アニオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
導電性基材層の厚さとしては、例えば、15μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、また、50μm以上、100μm以上、200μm以上、または300μm以上であることが好ましい。また、導電性基材層の厚さとしては、2000μm以下、1500μm以下、1000μm以下、800μm以下、または750μm以下であることが好ましい。
【0040】
[導電層]
電気剥離粘着シートは空隙を有さない導電層を有していてもよい。導電層は、電気剥離性粘着剤層への電圧の印加を均一にさせる機能等を有する。これにより、粘着力を均等に低下させることができ、電気剥離性を向上させることができる。当該導電層は、通常、導電性基材層および電気剥離性粘着剤層の間に配置される。すなわち、電気剥離粘着シートが導電層を有する場合、導電性基材層、導電層、および電気剥離性粘着剤層がこの順に配置された構成を含む。換言すると、電気剥離粘着シートは、導電性基材層および電気剥離性粘着剤層が、空隙を有さない導電層を介して積層される。なお、本明細書において、「空隙を有さない」とは、直径1μm以上の空隙を有さないことを意味する。なお、本明細書において、空隙の「直径」とは、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した画像において観察される空隙の輪郭線上のうち2点間の距離のうち最も長い距離を意味する。
【0041】
導電層としては、特に制限されないが、金属材料から形成される層、導電性ポリマーから形成される層であることが好ましい。これらの導電層は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記金属材料としては、例えば、アルミニウム、銅、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の単体金属;ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、リン青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、クロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等の合金;スズドープ酸化インジウム等が挙げられる。これらの金属材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
導電層の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、または60μm以上であることが好ましい。また、導電層の厚さとしては、1000μm以下、700μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、150μm以下、または100μm以下であることが好ましい。
【0043】
前記導電層は単層構造であってもよいが、2層以上を積層した積層構造であってもよい。この場合、積層した導電層の厚さは、上記導電層の厚さになることが好ましい。
【0044】
[電気剥離性粘着剤層]
電気剥離性粘着剤層は、電圧印加前は被着体(通常、導電性被着体)と接着し、電圧を印加することで被着体との接着力が低下する機能を有する。
【0045】
電気剥離性粘着剤層の厚さは、用途等に応じて適宜調整されうるが、好ましくは0.5~120μm、より好ましくは1~100μm、更に好ましくは10~90μm、より更に好ましくは20~80μm、特に好ましくは30~70μmである。
【0046】
導電性基材層の厚さと電気剥離性粘着剤層の厚さとの厚さ比(導電性基材層/電気剥離性粘着剤層)は、1.5以上、2.0以上、3.0以上、5.0以上、8.0以上、10.0以上、又は12.0以上であることが好ましい。また、前記厚さ比(導電性基材層/電気剥離性粘着剤層)は、100以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、25以下、20以下、又は15以下であることが好ましい。
【0047】
電気剥離性粘着剤層は、特に制限されないが、(メタ)アクリル系ポリマーおよびイオン性化合物を含む。その他、架橋剤、粘着付与剤、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0048】
((メタ)アクリル系ポリマー)
(メタ)アクリル系ポリマーは、電気剥離性粘着剤層に粘着性を付与する機能等を有する。
(メタ)アクリル系ポリマーは、特に制限されないが、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位および官能基含有モノマー由来の構成単位を含む。その他、必要に応じて、他のモノマー由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0049】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、炭素数1~30のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、アルキル(メタ)アクリレートは、炭素数1~20のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、炭素数1~16のアルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、炭素数1~12のアルキル(メタ)アクリレートであることがさらに好ましく、炭素数4~8のアルキル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
なお、アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖アルキル基であってもよい。
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート(n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート)、ブチル(メタ)アクリレート(n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート)、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、および2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートの少なくとも1つを含むことがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートおよびブチル(メタ)アクリレートの少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。なお、上述のアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、または70質量%以上であることが好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有割合は、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有割合は、99.99質量%以下、99.90質量%以下、99.0質量%以下、97.0質量%以下、95.0質量%以下、90.0質量%以下、または85質量%以下であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有割合を上記のようにすると、電圧印加前の粘着性をより良好にできる、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有割合を確保できる、凝集力をより向上させうる等の観点から好ましい。
【0051】
官能基含有モノマーとしては、特に制限されないが、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0052】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、特に制限されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
なお、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましく、2~4であることが特に好ましい。また、前記アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖アルキル基であってもよい。
上述のヒドロキシ基含有モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
カルボキシ基含有モノマーとしては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;2-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのカルボキシ基含有モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
エポキシ基含有モノマーとしては、特に制限されないが、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのエポキシ基含有モノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上述のうち、官能基含有モノマーは、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましく、ヒドロキシ基含有モノマーを含むことがより好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を含むことがさらに好ましい。
【0056】
官能基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、0.01質量%以上、0.10質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、または15質量%以上であることが好ましい。また、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下であることが好ましい。官能基含有モノマー由来の構成単位の含有割合を上記のようにすると、凝集力をより向上できる、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量を確保できる、電圧印加前の粘着性をより良好なものにできる等の観点から好ましい。
【0057】
他のモノマー
他のモノマーは、上記アルキル(メタ)アクリレートおよび上記官能基含有モノマー以外のモノマーである。
他のモノマーとしては、特に制限されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの他のモノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
他のモノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、0質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、または15質量%であることが好ましい。また、他のモノマー由来の構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位の全量(100質量%)に対して、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、または5質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、5万~200万であることが好ましく、10万~150万であることがより好ましく、20万~120万であることがさらに好ましく、30万~100万であることが特に好ましく、40万~90万であることが最も好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル系ポリマーの含有量は、電気剥離性粘着剤層の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは25~97質量%、より好ましくは30~95質量%、更に好ましくは40~93質量%、より更に好ましくは50~90質量%、特に好ましくは60~87質量%である。(メタ)アクリル系ポリマーの含有量が上記範囲であると、電圧印加前は高粘着性を有する、電圧印加によって容易に粘着性を低下させうる等の観点から好ましい。
【0061】
(イオン性化合物)
イオン性化合物は、電圧の印加により、電気剥離性粘着剤層内を移動し、接着表面の組成変化を引き起こすこと等により、接着力の低下を生じさせる機能等を有する。これにより、接合体の電気剥離が可能となる。
【0062】
イオン性化合物としては、特に制限されないが、アルカリ金属塩、有機第四級アンモニウム塩、およびイオン液体からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0063】
前記アルカリ金属塩としては、特に制限されないが、常温(25℃)では固体であるが、液体中でカチオン(アルカリ金属イオン)とアニオンとに電離する化合物が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、例えば、MCl、MBr、MI、MAlCl、MAlCl、MBF、MPF、MSCN、MClO、MNO、CHCOOM、C19COOM、CFCOOM、CCOOM、MCHSO、MCFSO、MCSO、MCOSO、MC13OSO、MC17OSO、M(CFSON、M(CSON、M(CSON、M(CSON、M(CFSOC、MAsF、MSbF、MNbF、MTaF、M(CN)N、M(CFSO)(CFCO)N、M(CHPO、M(CPO、MCH(OCOSO、MC(CH)SO、M(CPF、CHCH(OH)COOM、M(FSON等が挙げられる。この際、Mは、アルカリ金属原子であり、好ましくはLi、Na、またはKであり、より好ましくはNa、Kであり、さらに好ましくはNaである。
【0064】
これらのうち、アルカリ金属塩は、下記一般式(b-1)で表されるアルカリ金属塩を含むことが好ましい。
【化1】
【0065】
上記式(b-1)中、Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、フッ素化アルキル基である。フッ素化アルキル基の炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~4、よりさらに好ましくは1~3、特に好ましくは1~2である。本明細書において、「フッ素化アルキル基」とは、アルキル基が有する少なくとも一つの水素原子が、フッ素原子に置換された基を意味する。この際、前記フッ素化アルキル基は直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。フッ素化アルキル基としては、アルキル基が有するすべての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素数の好適な範囲は、上記のフッ素化アルキル基の炭素数の好適範囲と同じである。
は、フッ素原子、またはパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子、-CF、-C、-C、または-Cであることがより好ましく、フッ素原子または-CFであることがさらに好ましい。
【0066】
Mは、アルカリ金属原子(リチウム原子(Li)、ナトリウム原子(Na)、カリウム原子(K)、ルビジウム原子(Rb)、セシウム原子(Cs)、フランシウム原子(Fr))であり、好ましくはLi、NaまたはKであり、より好ましくはNaまたはKであり、さらに好ましくはNaである。
【0067】
上述のアルカリ金属塩は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
前記有機第四級アンモニウム塩としては、特に制限されないが、常温(25℃)では固体であり、下記一般式(b-2)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
【0069】
上記一般式(b-2)中、R11~R14は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。Xは、F、Cl、Br、I、ClO、BF、PF、または[(R15N]SO(R15は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基)ある。
【0070】
具体的な有機第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムブロミドまたはアンモニウムクロリド;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムテトラフルオロボレート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムパークロレート;テトラブチル、テトラプロピル、テトラエチル、テトラメチル、トリエチルブチル、トリエチルプロピル、トリエチルメチル等のアンモニウムサルフェート等が挙げられる。
なお、有機第四級アンモニウム塩は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
前記イオン液体としては、特に制限されないが、常温(25℃)で液体である溶融塩であって、有機カチオンとその対イオンであるアニオンとから構成される化合物が挙げられる。
【0072】
イオン液体を構成する有機カチオンとしては、例えば、下記一般式(b-3-i)~(b-3-viii)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化3】
【0073】
上記式中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基である。
また、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-(CO)-Rで表される基(nは1~20の整数、Rは炭素数1~20のアルキル基)、アミノ基である。
、R、およびRにおける前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
およびRにおける前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。当該アルケニル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0074】
なお、前記一般式(b-3-i)~(b-3-ii)のいずれかで表されるカチオンの炭素原子と結合している少なくとも一つの水素原子は、炭素数1~20のアルキル基に置換されていてもよい。具体的な当該アルキル基としては、上述のとおりである。
【0075】
前記一般式(b-3-i)で表されるカチオン、および当該カチオンの少なくとも一つの水素原子が前記アルキル基で置換されたカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-i-1)~(b-3-i-11)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化4】
【0076】
前記一般式(b-3-ii)で表されるカチオン、および当該カチオンの少なくとも一つの水素原子が前記アルキル基で置換されたカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-26)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。これらのうち、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-15)のいずれかで表されるカチオンであることが好ましく、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-3)および(b-3-ii-9)~(b-3-ii-10)のいずれかで表されるカチオンであることがより好ましく、下記式(b-3-ii-1)~(b-3-ii-3)のいずれかで表されるカチオンであることがさらに好ましく、下記式(b-3-ii-2)で表されるカチオンであることが特に好ましい。
【0077】
【化5】
【0078】
前記一般式(b-3-iii)で表されるカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-iii-1)~(b-3-iii-6)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化6】
【0079】
前記一般式(b-3-iv)で表されるカチオンとしては、例えば、下記式(b-3-iv-1)~(b-3-iv-6)のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化7】
【0080】
前記一般式(b-3-v)~(b-3-viii)のいずれかで表されるカチオンとしては、例えば、下記式のいずれかで表されるカチオンが挙げられる。
【化8】
【0081】
上述のうち、イオン液体を構成する有機カチオンは、一般式(b-3-ii)で表されるカチオンであることが好ましい。
【0082】
イオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、SCN、ClO 、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、CSO 、(CFSO、(CSO、(CSO、(CSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、C19COO、(CHPO 、(CPO 、CHOSO 、COSO 、COSO 、C13OSO 、C17OSO 、CH(OCOSO 、C(CH)SO 、(CPF 、CHCH(OH)COO、(FSO、B(CN) 、C(CN) 、N(CN) 、p-トルエンスルホネートアニオン、2-(2-メトキシエチル)エチルサルフェートアニオン等が挙げられる。
これらのうち、イオン液体を構成するアニオンは、(CFSOまたは(FSOであることが好ましい。
【0083】
上述のうち、イオン性化合物としては、アルカリ金属塩およびイオン液体の少なくとも1つを含むことが好ましく、イオン液体を含むことがより好ましい。
【0084】
イオン性化合物の含有量は、電気剥離性粘着剤層の有効成分の全量(100質量%)に対して、3質量部以上、5質量部以上、7質量部以上、9質量部以上、11質量部以上、13質量部以上、または15質量部以上であることが好ましい。また、イオン性化合物の含有量は、電気剥離性粘着剤層の有効成分の全量(100質量%)に対して、200質量部以下、180質量部以下、160質量部以下、150質量部以下、130量部以下、120質量部以下であり、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、または30質量部以下であることが好ましい。イオン性化合物の含有量が上記のとおりであると、電圧印加によって容易に粘着性を低下させうる、電圧印加前において高粘着性を有する等の観点から好ましい。
【0085】
(架橋剤)
電気剥離性粘着剤層は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤は、電圧印加前に高粘着性を付与する、電圧印加によって容易に粘着性を低下できる等の機能を有する。
【0086】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
架橋剤の含有量は、電気剥離性粘着剤層に含まれる(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.001~10.0質量部であることが好ましく、0.005~7.0質量部であることがより好ましく、0.010~5.0質量部であることがさらに好ましく、0.015~2.0質量部であることが特に好ましく、0.020~1.0質量部であることが最も好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲であると、電圧印加前は高粘着性を有する、電圧印加によって容易に粘着性を低下させうる等の観点から好ましい。
【0088】
[非電気剥離性粘着剤層]
電気剥離粘着シートは非電気剥離性粘着剤層を有していてもよい。非電気剥離性粘着剤層は、被着体と接着する機能等を有する。なお、非電気剥離性粘着剤層は、電圧を印加しても電気剥離しない。当該非電気剥離性粘着剤層は、通常、導電性基材層の表面側に積層される電気剥離性粘着剤層とは反対面側に積層される。すなわち、電気剥離粘着シートが非電気剥離性粘着剤層を有する場合、非電気剥離性粘着剤層、導電性基材層、および電気剥離性粘着剤層がこの順に配置された構成を含む。
【0089】
非電気剥離性粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーを含む。その他、架橋剤等をさらに含んでいてもよい。なお、非電気剥離性粘着剤層は、通常、イオン性化合物を含まない。
前記(メタ)アクリル系ポリマーおよび前記架橋剤としては、上述のものが用いられうる。
【0090】
非電気剥離性粘着剤層の厚さは、用途等に応じて適宜調整されうるが、0.5~120μmであることが好ましく、1~100μmであることがより好ましく、5~80μmであることがさらに好ましく、7~70μmであることが特に好ましく、10~60μmであることが最も好ましい。
【0091】
[剥離材]
電気剥離粘着シートは剥離材を有していてもよい。剥離材は、電気剥離粘着シートの最外面に積層され、電気剥離粘着シートが使用前に意図せず他の部材と接着させないようにする機能、取り扱いを向上させる機能等を有する。なお、使用時は電気剥離粘着シートから剥離材を剥離して被着体と接着させる。すなわち、剥離材は、電気剥離粘着シートの少なくとも一方の最外面に積層される。
【0092】
剥離材は、特に制限されないが、剥離用基材および前記剥離用基材の片面または両面に積層された樹脂層を含む。
【0093】
前記剥離用基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0094】
前記樹脂層としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、イソプレン系樹脂やブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー等が挙げられる。
【0095】
剥離材の厚さは、特に制限されないが、5~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、10~100μmであることがさらに好ましい。
【0096】
<接合体>
本発明の一形態によれば、接合体が提供される。前記接合体は、上述の電気剥離粘着シートと、前記電気剥離粘着シートに接着された被着体と、を含む。
【0097】
図6は、本発明の一実施形態に係る接合体の断面模式図である。
図6に示す接合体200は、電気剥離粘着シート100が有する電気剥離性粘着剤層20が被着体50と接着した構成を有する。この際、前記被着体50は、通常、導電性被着体である。
【0098】
図6の接合体200は、高い作業性で電気剥離性粘着剤層20と被着体(導電性被着体)50とを剥離することができる。具体的には、電圧印加装置の一方の端子61を、導電性基材層10に直接差し込むことによって、導電性基材層10に挿入することができる。その結果、端子取り付けの作業性が大幅に向上する。なお、電圧印加装置のもう一方の端子62は被着体(導電性被着体)50に接続される。
【0099】
図7は、本発明の別の一実施形態に係る接合体の模式図である。
図7に示す接合体201は、電気剥離粘着シート103が有する電気剥離性粘着剤層21および22が、それぞれ被着体51および52と接着した構成を有する。この際、前記被着体51および52は、少なくとも一方が導電性被着体である。図7の接合体201においても、被着体51が導電性被着体である場合、高い作業性で電気剥離性粘着剤層21と被着体51とを剥離することができる。
【0100】
[電気剥離粘着シート]
電気剥離粘着シートは上述したものが用いられる。
【0101】
[被着体]
被着体としては、導電性被着体および非導電性被着体が挙げられる。前記導電性被着体は、電気剥離粘着シートの電気剥離性粘着剤層と接着する。また、電気剥離粘着シートが非電気剥離性粘着剤層を有する場合、導電性被着体は、非電気剥離性粘着剤層と接着していてもよい。なお、電気剥離時は、導電性被着体に電圧印加装置の一方の端子が取り付けられて電圧が印加される。
【0102】
導電性被着体としては、特に制限されないが、アルミニウム、スズドープ酸化インジウム、銅、鉄、銀、白金、金等の金属、これらの合金等が挙げられる。これらの導電性被着体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、導電性被着体は積層されていてもよい。
【0103】
非導電性被着体としては、特に制限されないが、シリコン基板、ガラス基板等が挙げられる。これらの非導電性被着体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、非導電性被着体は積層されていてもよい。
【0104】
[接合体の構成]
接合体の構成は、電気剥離粘着シートの構成や使用用途によって異なり適宜設定されうる。通常、電気剥離粘着シートが有する電気剥離性粘着剤層に被着体が接着される。電気剥離粘着シートが2以上の電気剥離性粘着剤層を有する場合、さらに非電気剥離性粘着剤層を有する場合には、被着体はこれらに接着されてもよい。
【0105】
<接合体の剥離方法>
本発明の一形態によれば、上述の接合体の剥離方法が提供される。前記接合体の剥離方法は、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を前記導電性基材層に挿入して、前記導電性基材層を通電することを含む。
【0106】
接合体を剥離(電気剥離)する場合、電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、一方の端子を導電性基材層に挿入する。この際、「挿入」とは、導電性基材層に差し込む、突き刺す等を意味する。
【0107】
電圧印加装置と接続した二つの端子のうち、もう一方は、電気剥離性粘着剤層に被着された導電性被着体に接続される。
【0108】
電圧印加装置と接続した二つの端子を介して印加することで、電気剥離性粘着剤層の接着力が低下し、接合体を剥離することができる。
【実施例0109】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
アルキル(メタ)アクリレートであるブチルアクリレート(BA)およびメチルアクリレート(MA)、およびヒドロキシ基含有モノマーである2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)を共重合してなるアクリル系ポリマー(BA/MA/2-HEA=60/20/20質量%)100質量部(有効成分比)と、イオン液体(製品名「AS-210」、(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン(TFSI)、第一工業製薬株式会社製)16部(有効成分比)と、イソシアネート系架橋剤(製品名「コロネートL」、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物(TDI-TMP)、東ソー株式会社製)0.4部(有効成分比)と、を混合して粘着剤組成物塗布液を調製した。
【0111】
剥離材(製品名「SP-PET381031」、リンテック株式会社製)の剥離処理面上に、粘着剤組成物塗布液を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、乾燥温度100℃、2分間で乾燥して電気剥離性粘着剤層を形成した。
【0112】
導電性空隙含有基材(製品名「Sul-80-7860N」、導電糸として銅およびニッケルの被膜を有するポリエチレンテレフタレートを有する不織布、厚さ:600μm、セーレン株式会社製)の一方の表面側に、電気剥離性粘着剤層を貼り合わせ、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、168時間シーズニングを行い、電気剥離粘着シートを製造した。
【0113】
[評価]
製造した電気剥離粘着シートのアルミニウム板に対する電圧印加前後の接着力を評価した。
電気剥離粘着シートを25mm×75mmの大きさに裁断して試験シートを作製した。
23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、電気剥離粘着シートが有する剥離材を除去し、表出した電気剥離性粘着剤層に導電性被着体であるアルミニウム板(製品名「A105OP」、75mm×70mm×1mm、パルテック株式会社製)を貼付した。この際、重さ2kgのローラを用いて1往復させて圧着し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下、30分間放置したものを測定サンプルとした。
【0114】
測定サンプルについて、電圧印加前の接着力を測定した。具体的には、測定サンプルを引張試験機であるテンシロン(株式会社オリエンテック製)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で接着力を測定したところ、6N/25mmであった。
【0115】
また、測定サンプルについて、電圧印加後の接着力を測定した。具体的には、電圧印加装置KH-100H(株式会社高砂製作所製)を用いて、一方の電極を導電性基材層に差し込み、もう一方の電極をアルミニウム板に接続した。次いで、10Vで60秒間、測定サンプルに電圧を印加した。60秒後、電圧印加前と同様の方法で電圧印加後の接着力を測定したところ、0N/25mmであった。電圧の印加によって、接着力が低下していることが分かる。
【符号の説明】
【0116】
10、11、 導電性基材層
10a 空隙
11a 空隙充填部
20、21、22 電気剥離性粘着剤層
30 非電気剥離性粘着剤層
50、51、52 被着体
61、62 端子
100、101、102、103、104 電気剥離粘着シート
200、201 接合体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7