(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062475
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】アルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230426BHJP
A23D 9/04 20060101ALI20230426BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20230426BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20230426BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230426BHJP
A61K 36/899 20060101ALN20230426BHJP
A61K 31/05 20060101ALN20230426BHJP
A61P 3/04 20060101ALN20230426BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20230426BHJP
A61P 39/06 20060101ALN20230426BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L7/10 H
A23D9/04
A23D9/007
A23D9/00 516
A23L33/105
A61K36/899
A61K31/05
A61P3/04
A61P37/02
A61P39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172478
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000227489
【氏名又は名称】日東富士製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 瑠里
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康人
(72)【発明者】
【氏名】高柳 雅義
(72)【発明者】
【氏名】長井 誠
(72)【発明者】
【氏名】大島 秀男
【テーマコード(参考)】
4B018
4B023
4B026
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD14
4B018MD49
4B018ME01
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF01
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4B023LC09
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4B026DC05
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4B026DX01
4C088AB73
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4C088ZB07
4C088ZC21
4C206CA19
4C206MA01
4C206MA04
4C206ZB07
4C206ZC21
(57)【要約】
【課題】イネ科の穀物から脂溶性溶剤を使用してアルキルレゾルシノール含有組成物を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】アルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法が、イネ科の穀物のフスマに脂溶性溶剤を添加混合して、フスマ中の脂溶性成分を溶出させる溶剤混合工程と、この溶剤混合工程で得られた混合物を圧搾して、この脂溶性成分を含有する脂溶性溶剤を回収する圧搾工程を含み、この溶剤混合工程において、このイネ科の穀物のフスマ100質量部に対し、この脂溶性溶剤を1~190質量部加え、この圧搾工程を60kgf以上の面圧力下で行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科の穀物のフスマに脂溶性溶剤を添加混合して、フスマ中の脂溶性成分を溶出させる溶剤混合工程と、
該溶剤混合工程で得られた混合物を圧搾して、前記脂溶性成分を含有する脂溶性溶剤を回収する圧搾工程を含み、
前記溶剤混合工程において、前記イネ科の穀物のフスマ100質量部に対し、前記脂溶性溶剤を1~190質量部加え、前記圧搾工程を60kgf以上の面圧力下で行うことを特徴とするアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法。
【請求項2】
前記イネ科の穀物のフスマとして、イネ科の穀物を段階的に剥皮して、アリューロン層の外側の果皮と皮の間の画分を採取して得たものを用いる、請求項1に記載のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法。
【請求項3】
前記イネ科の穀物のフスマが、ライ麦フスマ及び小麦フスマの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法。
【請求項4】
前記溶剤混合工程の前に、前記イネ科の穀物のフスマを水洗処理することにより、フスマに付着する夾雑物を除去する水洗工程を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法。
【請求項5】
前記溶剤混合工程を5~40℃の温度で、10分~24時間行う、請求項1~4のいずれか1項に記載のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法。
【請求項6】
前記脂溶性溶剤が、油脂、エタノール、及びヘキサンの少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法。
【請求項7】
前記圧搾工程において、圧搾物を0.1~2.0mmのフィルターでろ過することにより、アルキルレゾルシノールを含有する脂溶性溶剤を回収する、請求項1~6のいずれか1項に記載のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識の高まりから、食物繊維、ビタミン、ミネラル等の栄養素に富む小麦、ライ麦等の穀物の有効利用が検討されている。穀物には、アルキルレゾルシノールが含まれている。アルキルレゾルシノールはイネ科の穀物、ナッツ類の種皮から抽出されたり、合成されたりする化合物であり、抗肥満、抗酸化、抗免疫等の作用を有することが知られている。特許文献1には、アルキルレゾルシノールは小麦外皮のアリューロン層に近い部位に局在していることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、小麦フスマからのアルキルレゾルシノールの抽出に関し、小麦フスマと原料油脂の混合物を振盪又は攪拌した後、遠心分離によりアルキルレゾルシノールを回収することが記載されている。しかしながら、当該遠心分離法により抽出されるアルキルレゾルシノールの量は僅かであった。
引用文献3には、大麦又はその発酵物から脂溶性溶剤を使用してアルキルレゾルシノールを抽出することが記載されている。しかしながら、アルキルレゾルシノールを効率的に抽出するための具体的な条件が十分に検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/065869号
【特許文献2】特開2016-136909号公報
【特許文献3】特開2020-28227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イネ科の穀物からの効率的なアルキルレゾルシノールの抽出が求められていたが、当該抽出を実現できる具体的な条件が知られていなかった。
本発明の発明者らは、イネ科の穀物のフスマに特定範囲の量の脂溶性溶剤を添加混合し、得られた混合物を特定範囲の加圧下で圧搾して、当該脂溶性成分を含有する脂溶性溶剤を回収し、アルキルレゾルシノール含有組成物を効率的に製造できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。本発明が解決しようとする課題は、下記の手段により解決される。
【0007】
本発明のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法は、イネ科の穀物のフスマに脂溶性溶剤を添加混合して、フスマ中の脂溶性成分を溶出させる溶剤混合工程と、該溶剤混合工程で得られた混合物を圧搾して、前記脂溶性成分を含有する脂溶性溶剤を回収する圧搾工程を含み、前記溶剤混合工程において、前記イネ科の穀物のフスマ100質量部に対し、前記脂溶性溶剤を1~190質量部加え、前記圧搾工程を60kgf以上の面圧力下で行う。
好ましくは、前記イネ科の穀物のフスマとして、イネ科の穀物を段階的に剥皮して、アリューロン層の外側の果皮と皮の間の画分を採取して得たものが用いられる。
好ましくは、前記イネ科の穀物のフスマは、ライ麦フスマ及び小麦フスマの少なくとも1種を含む。
本発明のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法は、好ましくは、前記溶剤混合工程の前に、前記イネ科の穀物のフスマを水洗処理することにより、フスマに付着する夾雑物を除去する水洗工程を更に含む。
好ましくは、前記溶剤混合工程は5~40℃の温度で、10分~24時間実施される。
好ましくは、前記脂溶性溶剤は、油脂、エタノール、及びヘキサンの少なくとも1種を含む。
前記圧搾工程において、好ましくは、圧搾物が0.1~2.0mmのフィルターでろ過され、アルキルレゾルシノールを含有する脂溶性溶剤が回収される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルキルレゾルシノール含有組成物の製造方法により、イネ科の穀物から脂溶性溶剤を使用してアルキルレゾルシノール含有組成物を効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について更に詳細に説明する。
<イネ科の穀物>
本発明で使用されるイネ科の穀物として、ライ麦、小麦、大麦、カラス麦、イネ、キビ、アワ、ヒエ、及びトウモロコシが挙げられる。本発明で使用されるイネ科の穀物は、好ましくはライ麦フスマ及び小麦フスマの少なくとも1種である。
本発明で使用されるイネ科の穀物のフスマは、これらの穀物粒の外皮部を含む。当該フスマは、これらの穀物粉の製造過程で生じる、穀物粒から胚乳を除去した残部、あるいはこの残部から更に胚芽を除去して得られる部分を含む。
【0010】
前記イネ科の穀物のフスマとして、好ましくは、前記イネ科の穀物の穀物粒を段階的に2回以上剥皮して、アリューロン層の外側の果皮と皮の間の画分を採取して得たものが用いられる。前記イネ科の穀物粒は、好ましくは1回の剥皮により1.5~3.5質量%が削られる。アルキルレゾルシノールが局在している、アリューロン層の外側の果皮と皮の間の画分として、好ましくは1~5回目の剥皮で得られた画分、より好ましくは2回目及び3回目の剥皮で得られた画分が前記溶剤混合工程に付される。6回目以降の剥皮で得られた画分が前記溶剤混合工程に付されてもよいが、6回目以降の剥皮で得られた画分のアルキルレゾルシノールの含有量は少ない。
【0011】
各剥皮工程で得られた各画分に含まれる灰分の含有量は、好ましくは3質量%以上である。当該各画分に含まれる粗蛋白の含有量は、好ましくは12質量%以上である。当該各画分に含まれる全脂質の含有量は、好ましくは4質量%以上である。当該各画分には食物繊維が含まれていても、含まれていなくてもよいが、好ましくは食物繊維が含まれている。
【0012】
<脂溶性溶剤>
本発明で使用される脂溶性溶剤として、
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の低級アルコール、
1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、
ジエチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、
酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、
油脂、ヘキサン、クロロホルム等の有機溶媒が挙げられる。これらの脂溶性溶剤の1種又は2種以上が使用される。
【0013】
前記油脂として、中鎖脂肪酸(MCT)オイル、サラダ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、ラード、牛脂、乳脂肪、ヤシ油、パーム核油、なたね油、大豆油、コーン油、米油、綿実油、ひまわり油、ごま油、オリーブ油、それらの分別油、水素添加油、及びエステル交換油等、食品分野で通常使用される油脂が挙げられる。これらの油脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明で使用される脂溶性溶剤は、好ましくは油脂、エタノール、及びヘキサンの少なくとも1種を含み、より好ましくは油脂を含み、更に好ましくはMCTオイルを含む。本発明で使用される脂溶性溶剤の総量に占める油脂、エタノール、及びヘキサンの少なくとも1種の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0015】
本発明は、イネ科の穀物のフスマに脂溶性溶剤を添加混合して、フスマ中の脂溶性成分を溶出させる溶剤混合工程を含む。前記イネ科の穀物のフスマ100質量部に対する前記脂溶性溶剤の使用量は1~190質量部である。前記脂溶性溶剤の使用量が多すぎると、前記脂溶性溶剤中の抽出されたアルキルレゾルシノールの濃度が低下する。また、前記脂溶性溶剤の使用量が少なすぎると、イネ科の穀物のフスマにアルキルレゾルシノールが吸収されてしまう。好ましい前記使用量は5~150質量部であり、より好ましい前記使用量は10~130質量部であり、特に好ましい前記使用量は15~100質量部である。
【0016】
前記溶剤混合工程が行われる温度は、好ましくは5~40℃であり、より好ましくは10~35℃であり、更に好ましくは15~30℃であり、特に好ましくは20~25℃である。さらに、前記溶剤混合工程が行われる時間は、好ましくは10分~24時間であり、より好ましくは10分~12時間であり、更に好ましくは10分~6時間である。
【0017】
本発明は、好ましくは、前記溶剤混合工程の前に、前記イネ科の穀物のフスマを水洗処理することにより、フスマに付着する夾雑物を除去する水洗工程を更に含む。好ましい水洗時間は30~90分である。前記イネ科の穀物のフスマの水洗によりアルキルレゾルシノールの抽出効率がより向上する。
【0018】
前記脂溶性溶剤として親水性の有機溶媒が使用される場合、水洗処理された前記フスマは乾燥されても、乾燥されなくてもよい。前記脂溶性溶剤として親油性の有機溶媒が使用される場合、水洗処理された前記フスマは、好ましくは乾燥される。
【0019】
<圧搾工程>
本発明は、前記溶剤混合工程で得られた混合物を圧搾して、前記脂溶性成分を含有する脂溶性溶剤を回収する圧搾工程を含む。前記圧搾工程は通常使用される圧搾機により行われてよい。当該圧搾機として、油圧式圧搾機、モーター駆動圧搾機、スクリュー式圧搾機等が挙げられる。前記圧搾工程は60kgf以上の面圧力下で行われる。前記面圧力が低すぎると、アルキルレゾルシノールの抽出効率が低下する。好ましい前記面圧力の下限は65kgfである。前記面圧力の上限は特に限定されないが、現実的には500kgfである。好ましい前記面圧力の上限は400kgfであり、より好ましい前記面圧力の上限は350kgfであり、更に好ましい前記面圧力の上限は300kgfである。
【0020】
好ましくは、前記圧搾工程は21t以上の全圧力下で行われる。より好ましい前記全圧力の下限は22tであり、更に好ましい前記全圧力の下限は24tであり、特に好ましい前記全圧力の下限は26tである。前記全圧力が大きくなると、アルキルレゾルシノールの抽出効率がより向上する。前記全圧力の上限は特に限定されないが、現実的には300tである。好ましい前記全圧力の上限は200tであり、より好ましい前記全圧力の上限は150tであり、更に好ましい前記全圧力の上限は100tである。
【0021】
前記圧搾工程において、好ましくは得られた圧搾物は0.1~2.0mmのフィルターでろ過され、アルキルレゾルシノールを含む脂溶性成分を含有する脂溶性溶剤が回収される。回収された前記脂溶性成分を含有する脂溶性溶剤から、アルキルレゾルシノールが精製される。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに測定ないし算出された。
<搾油量>
搾油された油の量を、秤で測定した。
【0024】
<アルキルレゾルシノールの含有量>
回収された脂溶性溶剤中のアルキルレゾルシノール量を高速液体クロマトグラフィーによる分析法で定量した。なお、以下、アルキルレゾルシノールのことを「ARs」又は「AR」という場合がある。
具体的には、分析カラムとして、ジーエルサイエンス株式会社製ODS-4(充填されたシリカゲルの粒径5μm、カラムの寸法250×4.6mm)を使用し、流速1mL/min、検出波長275nm、カラム温度40℃、移動相(89v/v%メタノール→(5分間)→92v/v%メタノール→(25分間)→100%メタノールのグラジエント)で実施した。アルキルレゾルシノールの標準品としては、市販のオリベトール(炭素数5の直鎖状のアルキル鎖を有するAR:シグマ・アルドリッチ社製)を用いた。オリベトールを使用したアルキル鎖長の異なる各ARの定量は、予め各ARの溶出位置を特定しておき、実測されたピーク面積について、それぞれの分子量をオリベトールの分子量で除した値を係数として、その係数で乗じることにより、換算して行った。
【0025】
<全脂質の含有量>
ライ麦粒の外皮を段階的に剥皮した際の各剥皮工程で得られた各画分に含まれる全脂質の含有量を、新・食品分析法(発行者:光琳、平成8年11月30日発行)に記載されている1-4-3酸分解法に則って測定した。
【0026】
<食物繊維の含有量>
上記各画分に含まれる食物繊維の含有量を、プロスキー法(No.985.29, Total Dietary Fiber in Foods, "Official Method of Analysis", AOAC, 15th ed., 1990, P.1105-1106)により測定した。
なお、上記各画分に含まれる食物繊維の含有量は、酵素HPLC法(AOAC2001.03)によっても測定され得る。
【0027】
[実施例1~4及び比較例1~2]
ライ麦フスマ100質量部に対し、表1に示される質量のMCTオイル(日清オイリオ株式会社製)を添加し、ホバート・ジャパン株式会社製ミキサーN50を使用して、速度1の回転速度で、室温で20分間攪拌した。得られた混合物を、株式会社サン精機製直圧式大型電動搾油装置を使用して、面圧力276kgf(全圧力100t)で30分間圧搾し、圧搾物を200μmのフィルターでろ過して、アルキルレゾルシノール(ARs)を含む脂溶性成分を含有するMCTオイルを回収し、搾油量、及び当該MCTオイルに含まれるARsの含有量を測定した。
【0028】
【0029】
MCTオイルを使用せずにライ麦フスマを圧搾した比較例1では、ARsを含むMCTオイルは回収されなかった。また、ライ麦フスマ100質量部に対して190質量部より多いMCTオイルを使用してライ麦フスマを圧搾した比較例2で回収されたMCTオイル中のARs濃度は低かった。一方、ライ麦フスマに特定範囲の量のMCTオイルを使用してライ麦フスマを圧搾した実施例1~4で回収されたMCTオイル中のARs濃度は高かった。
【0030】
[実施例5~7]
表2に示される各穀物フスマ100質量に対し、表2に示されるMCTオイル(日清オイリオ株式会社製)又はサラダ油(日清オイリオ株式会社製)33質量部を添加し、ホバート・ジャパン株式会社ミキサーN50を使用して、速度1の回転速度で、室温で20分間攪拌した。得られた混合物を、株式会社サン精機製直圧式大型電動搾油装置を使用して、面圧力276kgf(全圧力100t)で30分間圧搾し、アルキルレゾルシノール(ARs)を含む脂溶性成分を含有するMCTオイル又はサラダ油を回収し、搾油量、及び当該脂溶性溶剤に含まれるARsの含有量を測定した。
【0031】
【0032】
フスマの種類と脂溶性溶剤の種類に関係なく、各フスマに特定範囲の量の各脂溶性溶剤を使用して各フスマを圧搾した実施例5~7で回収された各脂溶性溶剤中のARs濃度は高かった。
【0033】
[実施例8~12及び比較例3~5]
ライ麦フスマ100質量部に対し、MCTオイル(日清オイリオ株式会社製)33質量部を添加し、ホバート・ジャパン株式会社製ミキサーN50を使用して、速度1の回転速度で、室温で20分間攪拌した。得られた混合物を、オツカ工業株式会社製油圧圧搾装置を使用して、表3に示される圧力で30分間圧搾し、アルキルレゾルシノール(ARs)を含む脂溶性成分を含有するMCTオイルを回収し、搾油量を測定した。実施例9及び11では、回収されたMCTオイルに含まれるARsの含有量を測定した。
【0034】
【0035】
圧搾工程が60kgf未満の面圧力下で行われた比較例3~5の搾油量は小さく、MCTオイルの回収効率が低かった。一方、圧搾工程が所定の全圧力下で行われた実施例8~12の搾油量は大きく、MCTオイルの回収効率が高かった。
【0036】
[実施例13]
ライ麦フスマ100質量部と水500質量部を混合し、yamato株式会社製攪拌装置(LABOSTIRRER)を使用して、目盛3の回転速度で、室温で1時間攪拌し、ライ麦フスマを水洗した。次いで、水洗されたライ麦フスマを80℃で9時間乾燥した以外、実施例2と同様の操作を行った。回収されたMCTオイルに含まれるARsの含有量は5.0mg/gであった。
【0037】
[実施例14]
精米機(サタケ製)を使用して、ライ麦粒の外皮を剥皮した。当該剥皮工程を更に2回繰り返し、全剥皮工程でライ麦粒に対して7.5質量%の外皮を剥皮した以外、実施例2と同様の操作を行った。回収されたMCTオイルに含まれるARsの含有量は5.1mg/gであった。
【0038】
[比較例6~8]
小麦フスマ100質量部に対し、表4に示される質量のMCTオイル(日清オイリオ株式会社製)を添加し、東京理化器械株式会社製振盪機を使用して、300rpmの振盪速度で、22℃で表4に示される時間振盪した。得られた混合物を、株式会社久保田製作所製遠心分離機(KUBOTA)を使用して、8000rpmで10分間遠心分離して、アルキルレゾルシノール(ARs)を含む脂溶性成分を含有するMCTオイルを回収し、各MCTオイルに含まれるARsの含有量を測定した。
【0039】
【0040】
小麦フスマとMCTオイルの混合物を振盪し、混合物から遠心分離により脂溶性成分を含有するMCTを回収する場合、多量のMCTオイルを使用しないと脂溶性成分を含むMCTオイルを得られなかった。また、振盪中にMCTオイルに抽出されるARsの量は僅かであった。
【0041】
[実施例15]
精米機(サタケ製)を使用して、ライ麦粒の外皮を段階的に8回剥皮した。各剥皮工程における、外皮剥離前のライ麦粒の質量に対する剥離されたライ麦フスマの質量(剥皮割合)、及び各剥皮工程で得られた画分の上記各成分の含有量を表5及び6に示す。
実施例2と同様にして、各剥皮工程で得られたライ麦フスマにMCTオイルを添加し、ARsを含む脂溶性成分を含有するMCTオイルを回収し、当該MCTオイルに含まれるARsの含有量を測定し、その結果を表5及び6に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
6回目以降の剥離工程で得られたライ麦フスマとMCTオイルの混合物を圧搾して得られたMCTオイルに含まれるARsの含有量は、5回目以前のものよりかなり少なくなった。したがって、アリューロン層の外側の果皮と皮の間の画分は、1~5回目の剥皮工程で得られたと考えられる。特に、2回目及び3回目の剥皮工程で得られたライ麦フスマとMCTオイルの混合物を圧搾して得られたMCTオイルに含まれるARsの含有量は多く、アリューロン層の外側の果皮と皮の間の画分は、これらの剥皮工程で得られたライ麦フスマに特に多く含まれていたと考えられる。また、6回目以降の剥離工程で得られたライ麦フスマに植物繊維は含まれていなかった。
また、段階的な剥皮工程に付されていない、製粉工程で得られた従来のライ麦フスマを使用する以外、上記と同様にして脂溶性成分を含有するMCTオイルを回収した場合、当該MCTオイルに含まれるARsの含有量は2.5mg/gであり、2回目、3回目の各剥皮工程で得られたライ麦フスマとMCTオイルの混合物を圧搾して得られたMCTオイルに含まれるARsの含有量より少なかった。