IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハイレックスコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-リッドアクチュエータ 図1
  • 特開-リッドアクチュエータ 図2
  • 特開-リッドアクチュエータ 図3
  • 特開-リッドアクチュエータ 図4
  • 特開-リッドアクチュエータ 図5
  • 特開-リッドアクチュエータ 図6
  • 特開-リッドアクチュエータ 図7
  • 特開-リッドアクチュエータ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062486
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】リッドアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20230426BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20230426BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172492
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】礒 直久
(72)【発明者】
【氏名】成田 諭
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL13
3D038CA32
3D038CB01
3D038CC16
(57)【要約】
【課題】本発明は、リッドに閉鎖方向の力が加わってもリッドを開放位置で維持することが可能な、リッドアクチュエータの提供を目的とする。
【解決手段】リッドアクチュエータ1は、リッドLを開閉させるためにリッドLに直接または間接的に接続され、第1の軸X1回りに回転する回転部材2と、回転部材2を回転させる駆動力を発生させるモータ3と、回転部材2を回転させるために、モータ3の駆動力を回転部材2に伝達する伝動部4とを備え、伝動部4がセルフロック機構を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッドを開閉させるために前記リッドに直接または間接的に接続され、第1の軸回りに回転する回転部材と、
前記回転部材を回転させる駆動力を発生させるモータと、
前記回転部材を回転させるために、前記モータの駆動力を前記回転部材に伝達する伝動部と
を備え、
前記伝動部がセルフロック機構を有している、
リッドアクチュエータ。
【請求項2】
前記伝動部は、
前記モータの駆動力によって第2の軸回りに回転する送りネジと、
前記送りネジに螺合して、前記送りネジの回転に伴って前記第2の軸方向に移動する送りナットと
を備え、
前記回転部材は、前記送りナットの前記第2の軸方向への移動に伴って前記第1の軸回りに回転するように構成され、
前記セルフロック機構は、前記送りネジと前記送りナットとによって構成されている、
請求項1に記載のリッドアクチュエータ。
【請求項3】
前記回転部材は、
前記第1の軸に沿って延び、前記リッドの回転軸となる軸部と、
前記軸部の一端側において、前記第1の軸に対して交差する方向に延びるレバー部と
を備え、
前記送りナットは、
前記送りネジの外周に対して、前記送りネジの径方向外側に設けられ、前記レバー部と前記第2の軸方向に係合するように構成された係合部と
を備え、
前記レバー部と前記係合部とが係合した状態で前記送りナットが第2の軸方向に沿って移動したときに、前記レバー部および前記軸部が前記第1の軸回りに回転し、前記リッドを開閉させる、
請求項2に記載のリッドアクチュエータ。
【請求項4】
前記リッドアクチュエータがさらに、
前記第2の軸方向の所定の位置に設けられたスイッチを備え、
前記スイッチは、前記送りナットが前記第2の軸方向で所定の位置に到達したときに、前記送りナットによって操作されて、前記モータを停止させ、
前記リッドが開放状態で維持される開放位置は、前記スイッチの位置によって定められる、
請求項2または3に記載のリッドアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリッドアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両の給油口や給電口が収容される凹部の蓋となるフューエルリッドのロックおよびアンロックを電動で行うリッドアクチュエータが開示されている。このような電動のリッドアクチュエータは、ヒンジ回りに回転するリッドの先端側(ヒンジとは反対側の端部)と係合可能な進退部材をリッドに対して進退させる。これにより、進退部材は、リッドをロックするロック位置と、リッドをアンロックするアンロック位置との間で移動する。リッドがアンロックされると、リッドはヒンジまたはヒンジの周辺に設けられたバネによって、開放方向に付勢されて、開放方向へ移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-142040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造のアクチュエータの場合、リッドのアンロックを電動で行うことで、リッドはバネの付勢力によって開放方向に移動して開状態となるが、リッドに閉鎖方向の力が加わると、リッドは閉鎖方向に移動してしまい、リッドの開状態が維持されない。そのため、偶発的にリッドに加わった外力によってリッドが閉鎖方向に移動して、給油または給電中の給油/給電ガンにリッドが衝突したり、物や人体の一部がリッドと車体との間に挟まれてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、リッドに閉鎖方向の力が加わってもリッドを開放位置で維持することが可能な、リッドアクチュエータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリッドアクチュエータは、リッドを開閉させるために前記リッドに直接または間接的に接続され、第1の軸回りに回転する回転部材と、前記回転部材を回転させる駆動力を発生させるモータと、前記回転部材を回転させるために、前記モータの駆動力を前記回転部材に伝達する伝動部とを備え、前記伝動部がセルフロック機構を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明のリッドアクチュエータによれば、リッドに閉鎖方向の力が加わってもリッドを開放位置で維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のリッドアクチュエータが取付対象に設けられた状態を示す斜視図である。
図2】リッドが取り付けられた状態のリッドアクチュエータを示す斜視図である。
図3図2に示されるリッドアクチュエータの上面図である。
図4】リッドの開放位置に対応する、送りナットが第1位置に位置するときの、リッドアクチュエータを示す側面図である。
図5】リッドの閉鎖位置に対応する、送りナットが第2位置に位置するときの、リッドアクチュエータを示す側面図である。
図6】リッドアクチュエータの送りナットを示す斜視図である。
図7】スイッチを備えた変形例のリッドアクチュエータにおいて、送りナットが第1位置に位置するときの、リッドアクチュエータを示す底面図である。
図8】スイッチを備えた変形例のリッドアクチュエータにおいて、送りナットが第2位置に位置するときの、リッドアクチュエータを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態のリッドアクチュエータを説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のリッドアクチュエータは、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態のリッドアクチュエータ1は、電動でリッドLを第1の軸X1回りに開閉させる。リッドアクチュエータ1の用途は、電動でリッドLを第1の軸X1回りに開閉させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、リッドアクチュエータ1は、図1に示されるように、リッドアクチュエータ1と、リッドLとを備えたリッド開閉装置Dに適用されている。より具体的には、リッド開閉装置Dは、リッドアクチュエータ1と、リッドアクチュエータ1が取り付けられ、開口Baを有する基部(本実施形態では車体)Bと、基部Bの開口Baを開閉可能なリッドLとを備えている。本実施形態では、リッド開閉装置Dはさらに、リッドLによって閉鎖される開口Baを有する有底筒状の本体部Bbを有し、本体部Bbが車体Bに取り付けられている。本体部Bbは、底部に給油口(または給電口)Bcを有している。なお、給油口Bcは、リッドLによって開口Baが閉鎖されたときに、リッドLによって閉鎖されるように構成されてもよいし、リッドLとは別に給油口Bcを閉鎖するキャップを有していてもよい。
【0012】
リッドLの用途は特に限定されないが、本実施形態では、リッドLは、車両の燃料または給電用のリッドであり、リッドアクチュエータ1は、操作対象である車両の燃料または給電用のリッド(フューエルリッド)Lを開閉するように構成されている。なお、車両の燃料は、軽油、ガソリンに限定されず、車両を動作させることが可能な全ての燃料をいう。
【0013】
図2図5に示されるように、本実施形態のリッドアクチュエータ1は、リッドLを開閉させるためにリッドLに直接または間接的に接続され、第1の軸X1回りに回転する回転部材2と、回転部材2を回転させる駆動力を発生させるモータ3と、回転部材2を回転させるために、モータ3の駆動力を回転部材2に伝達する伝動部4とを備えている。本実施形態では、リッドアクチュエータ1は、モータ3および伝動部4を収容するハウジング5を有している。回転部材2の一部はハウジング5内に収容され、回転部材2の他の一部はハウジング5から突出している。
【0014】
ハウジング5は、車体等の基部Bに固定される。ハウジング5は、図2および図3に示されるように、モータ3を収容するモータ収容部51と、後述する減速機構43を収容する減速機構収容部52と、後述する送りナット42が移動できるように送りネジ41を収容する送りネジ収容部53とを有している。ハウジング5は、本実施形態では、モータ収容部51、減速機構収容部52および送りネジ収容部53を有する、一方に開口を有する筐体5aと、筐体5aの開口を閉鎖する蓋体5b(図1参照)とを有している。なお、図2および図3は、蓋体5bが除去された状態で示されており、図4図5図7および図8は、ハウジング5が除去された状態で示されている。
【0015】
リッドアクチュエータ1は、モータ3の駆動力によってリッドLを電動で開閉する。具体的には、モータ3が駆動されると、モータ3の駆動力が伝動部4を介して回転部材2に伝達され、回転部材2が第1の軸X1回りに回転する。回転部材2が第1の軸X1回りに回転すると、回転部材2に接続されたリッドLが第1の軸X1回りに回転する。これにより、リッドアクチュエータ1は、図3に示されるように、リッドLを開放位置(図3の実線参照)と閉鎖位置(図3の二点鎖線参照)との間で移動させる。リッドアクチュエータ1が設けられる位置は特に限定されないが、本実施形態では、リッドアクチュエータ1は、図1に示されるように、リッドLの回転軸となる、第1の軸X1の近傍に設けられている。
【0016】
リッドLは、リッドアクチュエータ1によって開閉操作される。リッドLは、本実施形態では、図1に示されるように、基部Bに設けられた開口Baを開閉するように構成されている。具体的には、リッドLは、回転部材2が第1の軸X1回りに回転することで、第1の軸X1回りに回転する。リッドLの形状および構造は、リッドアクチュエータ1によって操作されて、開口Baを開閉可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、リッドLは、開口Baを閉鎖することが可能なリッド本体L1と、リッド本体L1側から第1の軸X1に向かって延び、リッド本体L1に直接または間接的に接続される延伸体L2とを有している。
【0017】
リッド本体L1は、開口Baを閉鎖するために開口Baの形状に対応した部分を有する蓋部分である。本実施形態では、リッド本体L1は円形の開口Baの形状に対応して円形に形成されているが、リッド本体L1の形状は特に限定されない。
【0018】
延伸体L2は、リッド本体L1側から第1の軸X1に向かって延びている。本実施形態では、延伸体L2は、リッド本体L1に直接接続されており、リッド本体L1と、回転部材2との間に設けられている。なお、延伸体L2は、リッド本体L1と一体に設けられていてもよいし、リッド本体L1と別体として設けられて、公知の固定部材、固定手段によって接続されてもよい。また、延伸体L2は、リッド本体L1に別部材を介して接続されていてもよい。
【0019】
延伸体L2の形状は特に限定されないが、本実施形態では、延伸体L2は、図3に示されるように、第1の軸X1が延びる方向に見たときに、C字形状となるように設けられている。本実施形態では、図1および図2に示されるように、延伸体L2に回転部材2が接続されており、回転部材2が第1の軸X1回りに回転したときに、延伸体L2およびリッド本体L1が回転部材2の回転に伴って、第1の軸X1回りに回転するように構成されている。延伸体L2は、第1の軸X1方向に延び、回転部材2が挿入される挿入部L21(図2参照)を有している。挿入部L21は、回転部材2が挿入される孔を有している。挿入部L21は、回転部材2が挿入部L21の孔に挿入された状態で、回転部材2と第1の軸X1回り方向で係合するように構成されている。これにより、回転部材2と延伸体L2とは、相対回転が規制され、第1の軸X1回りに共に回転する。本実施形態では、挿入部L21の孔を画定する内壁の、第1の軸X1に垂直な断面が四角形状となっており、回転部材2の第1の軸X1に垂直な断面も四角形状となっているが、挿入部L21と回転部材2とが第1の軸X1回り方向で係合することができれば、挿入部L21および回転部材2の断面形状は特に限定されない。
【0020】
モータ3は、回転部材2を回転させる駆動力を発生させる駆動源である。本実施形態では、モータ3の駆動力によって、伝動部4を介して回転部材2が第1の軸X1回りに回転する。これにより、リッドLが第1の軸X1回りに回転する。本実施形態では、図3に示されるように、モータ3は出力軸31を有し、出力軸31は後述する伝動部4の減速機構43(後述するギヤG1)に接続されている。モータ3は正逆回転可能であり、伝動部4を介して、回転部材2を第1の軸X1回りの一方の方向および他方の方向に回転させる。本実施形態では、モータ3が回転部材2を第1の軸X1回りの一方の方向(図3における時計方向)に回転させると、リッドLを開放位置から閉鎖位置へと回転させる。また、本実施形態では、モータ3が回転部材2を第1の軸X1回りの他方の方向(図3における反時計方向)に回転させると、リッドLを閉鎖位置から開放位置へと回転させる。
【0021】
伝動部4は、回転部材2を回転させるために、モータ3の駆動力を回転部材2に伝達する。伝動部4の形状および構造は、モータ3の駆動力を回転部材2に伝達することができれば、特に限定されない。本実施形態では、伝動部4は、図2図5に示されるように、モータ3の駆動力によって第2の軸X2回りに回転する送りネジ41と、送りネジ41に螺合して、送りネジ41の回転に伴って第2の軸X2方向に移動する送りナット42とを備えている。また、本実施形態では、伝動部4は、モータ3と送りネジ41との間に設けられた減速機構43を有している。
【0022】
減速機構43は、モータ3の回転速度を減速して送りネジ41にモータ3の駆動力を伝達する。なお、減速機構43は本発明において任意の構成である。減速機構43の構造は特に限定されないが、本実施形態では、減速機構43は、ハウジング5に回転可能に支持された複数のギヤG1、G2、G3、G4を有している。ギヤG1はモータ3の出力軸31に接続されており、モータ3の出力軸31の回転によって回転する。ギヤG2はギヤG1と係合し、ギヤG1の回転に伴って回転する。ギヤG3はギヤG2と同軸上に設けられ、ギヤG2が回転すると共に回転するように構成されている。ギヤ(出力ギヤ)G4は、ギヤG3に係合し、ギヤG3の回転に伴って回転する。ギヤG4は、送りネジ41と同軸上に設けられ、ギヤG4が回転すると送りネジ41が第2の軸X2回りに回転するように構成されている。
【0023】
送りネジ41は、モータ3の駆動力によって第2の軸X2回りに回転し、送りナット42を第2の軸X2に沿って移動させる。送りネジ41は、所定の長さで直線状に延び、外周に雄ネジを有している。送りネジ41は、第2の軸X2回りにその場で回転するようにハウジング5の送りネジ収容部53に回転可能に支持されている。
【0024】
送りナット42は、送りネジ41と螺合している。送りナット42は、送りネジ41の第2の軸X2回りの回転に伴って第2の軸X2方向に移動する。本実施形態では、送りナット42の直線運動が、回転部材2の回転運動に変換されて、リッドLが第1の軸X1回りに回転する。具体的には、送りナット42は、モータ3の回転方向に応じて第2の軸X2に沿って一方の方向および他方の方向に直線運動し、この直線運動が回転部材2の第1の軸X1回りの回転運動に変換されて、リッドLが開閉する。本実施形態では、モータ3によって送りナット42が第2の軸X2に沿って一方の方向(図4および図5において右方向)に移動すると、回転部材2が第1の軸X1回りで一方の方向に回転し、リッドLが開放位置から閉鎖位置に向かって回転する。一方、モータ3によって送りナット42が第2の軸X2に沿って他方の方向(図4および図5において左方向)に移動すると、回転部材2が第1の軸X1回りで他方の方向に回転し、リッドLが閉鎖位置から開放位置に向かって回転する。
【0025】
送りナット42は、送りネジ41が第2の軸X2回りに回転したときに、送りネジ41と共回りしないように、第2の軸X2回りの回転が規制されている。これにより、送りネジ41が第2の軸X2回りに回転することで、送りナット42は第2の軸X2方向に移動する。送りナット42は、本実施形態では、リッドLが開放位置にあるときに送りナット42が位置する第1位置(図4参照)と、リッドLが閉鎖位置にあるときに送りナット42が位置する第2位置(図5参照)との間で移動する。後述するように、送りナット42が第2の軸X2方向で、第1位置と第2位置との間で移動することによって、回転部材2が第1の軸X1回りに回転する。
【0026】
送りナット42の形状および構造は、送りナット42が送りネジ41と螺合し、送りネジ41の第2の軸X2回りの回転に伴って第2の軸X2方向に移動することで、回転部材2を第1の軸X1回りに回転させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、送りナット42は、図6に示されるように、送りネジ41の外周に設けられた雄ネジと螺合する雌ネジを有する筒状部421を備えている。筒状部421は、送りネジ41の外周を取り囲むように設けられた所定の外径を有する筒状の部位であり、第2の軸X2方向に所定の長さ(限定されないが、例えば、送りネジ41(送りネジ41のうち、雄ネジが形成された部分)の第2の軸X2方向の長さの15~55%、好ましくは、20~50%の長さ)を有している。なお、筒状部421は、送りナット42の一部に設けられた、送りネジ41の外周に設けられた筒状の部位であればよく、本実施形態のように、周方向の一部が後述する係合部422等、他の部位と連続していてもよい。
【0027】
また、送りナット42は、図6に示されるように、回転部材2と係合する係合部422を有している。係合部422は、送りナット42が第2の軸X2方向に移動したときに、回転部材2が第1の軸X1回りに回転する力を回転部材2に加えることができるように、回転部材2と第2の軸X2方向で係合する。
【0028】
本実施形態では、係合部422は、後述する回転部材2のレバー部22と第2の軸X2方向に係合するように構成されている。本実施形態では、送りナット42は、送りナット42が第2の軸X2方向で一方に移動するときに(第1位置から第2位置に移動するときに)回転部材2(レバー部22)と係合する第1係合部422aと、送りナット42が第2の軸X2方向で他方に移動するときに(第2位置から第1位置に移動するときに)回転部材2(レバー部22)と係合する第2係合部422bとを備えている。
【0029】
係合部422(第1係合部422aおよび第2係合部422b)は、送りネジ41の外周に対して、送りネジ41の径方向外側に設けられている。なお、「送りネジ41の外周に対して、送りネジ41の径方向外側」とは、送りネジ41の外周(最大外径を有する部分)よりも、回転部材2と係合する部位である係合部422が、送りネジ41の径方向で所定の距離遠くなるように外側に位置していることをいう。本実施形態では、第1係合部422aおよび第2係合部422bは、円筒状の筒状部421の外周から、送りネジ41に対して離れる方向に突出した係合突起として設けられている。係合突起によって形成された第1係合部422aおよび第2係合部422bは、図6に示されるように、第2の軸X2方向で互いに離間して配置されている。より具体的には、第1係合部422aおよび第2係合部422bは、図6に示されるように、第2の軸X2方向で、送りナット42の両端に設けられ、第1係合部422aおよび第2係合部422bの間には、後述するレバー部22が入り込む凹部が形成されている。
【0030】
送りナット42が、図4に示される第1位置(リッドLの開放位置)から図5に示される第2位置(リッドLの閉鎖位置)へと移動するときに、回転部材2と第1係合部422aとが係合する(図4の二点鎖線参照)。その状態でさらに送りナット42が第1位置から第2位置へ向かって、第2の軸X2方向で一方(図4において右方向)に移動することで、送りナット42の第1係合部422aから、回転部材2を第1の軸X1回りで一方に回転させる力が加わる。これにより、回転部材2が第1の軸X1回りで一方の方向に回転して、リッドLが開放位置から閉鎖位置へと回転する。また、送りナット42が、図5に示される第2位置(リッドLの閉鎖位置)から第1位置(リッドLの開放位置)へと移動するときに、回転部材2と第2係合部422bとが係合する(図5の二点鎖線参照)。その状態でさらに送りナット42が第2位置から第1位置へ向かって、第2の軸X2方向で他方(図5において左方向)に移動することで、送りナット42の第2係合部422bから、回転部材2を第1の軸X1回りで他方に回転させる力が加わる。これにより、回転部材2が第1の軸X1回りで他方の方向に回転して、リッドLが閉鎖位置から開放位置へと回転する。
【0031】
なお、係合部422の形状および構造は、送りナット42が第2の軸X2方向に移動したときに、回転部材2が第1の軸X1回りに回転する力を回転部材2に加えることができるように、係合部422が回転部材2と係合することができれば、特に限定されない。例えば、送りナットがラック歯を有するラックとして構成され、回転部材がピニオンギヤを有する回転部材として構成される変形例の場合など、係合部はラック歯のような他の構造であってもよい。なお、上記変形例では、送りナットは、第2の軸X2方向に沿って設けられた歯列を有するラック歯を有するラックとして構成され、回転部材は、軸部と同軸に回転中心を有するピニオンギヤを有するように構成される。この場合、送りナットが第2の軸X2方向に移動すると、ラック歯とピニオンギヤとの噛み合いによって回転部材が第1の軸X1回りに回転する。
【0032】
回転部材2は、第1の軸X1回りに回転することで、リッドLを第1の軸X1回りに回転させる。回転部材2は、リッドLに直接または間接的に接続される。本実施形態では、回転部材2は、上述したようにリッドLに直接接続されている。しかし、回転部材2は、回転部材2の回転力を別部材を介してリッドLに伝達するように構成されていてもよい。なお、回転部材2に関して「リッドLに直接接続され」という用語は、リッドLとは別体として構成された回転部材2がリッドLに対して直接接触するように接合される場合だけでなく、回転部材2がリッドLに対して一体的に設けられる場合(例えば、一体成形される場合や、溶接などによって一体化される場合)も含む。
【0033】
回転部材2は、モータ3の駆動力が伝動部4を介して伝達されることによって、第1の軸X1回りに回転する。本実施形態では、回転部材2は、送りナット42の第2の軸X2方向への移動に伴って第1の軸X1回りに回転するように構成されている。具体的には、回転部材2は、送りナット42の第2の軸X2方向への直線運動が、第1の軸X1回りの回転運動に変換されることによって、第1の軸X1回りに回転する。
【0034】
本実施形態では、回転部材2は、図4および図5に示されるように、第1の軸X1に沿って延び、リッドLの回転軸となる軸部21と、軸部21の一端側において、第1の軸X1に対して交差する方向に延びるレバー部22とを備えている。
【0035】
軸部21は、上述したように、リッドLの延伸体L2に接続される。具体的には、軸部21は、延伸体L2の挿入部L21に挿入される。軸部21は、第1の軸X1の軸回り方向で挿入部L21と係合し、軸部21が回転したときに、リッドLが回転するように構成されている。本実施形態では、軸部21は、第1の軸X1方向に延びる棒状の部材であり、軸部21の、第1の軸X1に対して垂直な断面は四角形状になっている。
【0036】
レバー部22は、図4図5図7および図8に示されるように、軸部21の一端側から送りネジ41に向かって、第1の軸X1に対して交差する方向に延びている。本実施形態では、レバー部22は、軸部21の一端から第1の軸X1に対して垂直な方向に延びている。レバー部22は、軸部21から第1の軸X1に対して垂直な方向に延びるアーム部221と、アーム部221の先端において、第1の軸X1に平行な方向に突出した突出部222とを有している。レバー部22の突出部222は、上述した第1係合部422a、第2係合部422bの間の凹部に入り込み、送りナット42の移動方向に応じて、第1係合部422aおよび第2係合部422bのいずれかに係合できるように構成されている。
【0037】
本実施形態では、レバー部22と係合部422(第1係合部422aまたは第2係合部422b)とが係合した状態で送りナット42が第2の軸X2方向に沿って移動したときに、レバー部22および軸部21が第1の軸X1回りに回転し、リッドLを開閉させる。具体的には、送りナット42が第2の軸X2方向に移動することで、レバー部22が係合部422(第1係合部422aまたは第2係合部422b)から第2の軸X2方向に力を受けることで、レバー部22が第1の軸X1(軸部21)を中心として揺動する。これにより、レバー部22に接続された軸部21が第1の軸X1回りに回転し、リッドLが第1の軸X1回りに回転する。
【0038】
なお、回転部材2の形状および構造は、回転部材2が第1の軸X1回りに回転することで、リッドLを第1の軸X1回りに回転させることができれば、特に限定されない。回転部材は、送りナットの直線運動を回転運動に変換して第1の軸X1回りに回転する他の構造を有していてもよく、上述したように、回転部材は、軸部と同軸に回転中心を有するピニオンギヤを有するように構成されていてもよい。
【0039】
本実施形態では、リッドアクチュエータ1において、リッドLを開放位置で保持するために、伝動部4がセルフロック機構を有している。この場合、図1図3に示されるように、リッドLが開放位置で保持された状態で、リッドLに閉鎖方向の力が加わっても、伝動部4のセルフロック機構によってリッドLが開放位置で保持される。したがって、例えば、リッドLが開放位置にあるときに、偶発的にリッドLに閉鎖方向の外力が加わったとしても、リッドLが閉鎖方向に移動して、給油または給電中の給油/給電ガンにリッドLが衝突したり、物や人体の一部がリッドLと車体Bとの間に挟まれてしまうことが抑制される。
【0040】
また、伝動部4がセルフロック機構を有していることで、リッドLを開放位置で維持する際に、リッドLを開放方向に付勢するバネを用いる必要がなくなる。したがって、リッドアクチュエータ1の部品点数を減らすことができる。また、電動のリッドアクチュエータ1において、リッドLを所定の方向に付勢するバネを設けた場合、リッドLの開放時の動作速度と閉鎖時の動作速度とが互いに異なる場合がある(開放時または閉鎖時の一方が他方よりも遅い)。また、用いられるバネによっては、リッドLの閉鎖位置から開放位置までの間の開放中に速度が一定とならず、開放動作の初期と中期と後期とで、速度が変化してしまう場合もある。本実施形態では、リッドLを開放位置で保持する際にバネを用いる必要がないので、リッドLの開閉速度を一定にすることが可能となる。
【0041】
また、伝動部4がセルフロック機構を有していることにより、モータ3を停止させたときにリッドLが停止した位置でリッドLを保持することができる。したがって、モータ3の動作を制御することで、リッドLを任意の位置で保持することが可能となる。したがって、例えば、リッドLの開放時の角度の設定などが容易となり、リッドLを開放位置で停止させるストッパ(当て止め)が不要となる。更に、リッドLが閉鎖状態にある際には、セルフロック機構によりリッドLの閉鎖状態を維持することができるため、従来のようなリッドをロックする機構が不要となる。
【0042】
「セルフロック機構」は、入力側(モータ3側)からは出力側(回転部材2側)を回転させることができるが、出力側(回転部材2側)から入力側(モータ3側)を回転できないようにする機構をいう。セルフロック機構が設けられる位置は、リッドLを開放位置で保持することができれば特に限定されず、伝動部4のいずれかの位置に設けられていればよい。本実施形態では、セルフロック機構は、送りネジ41と送りナット42とによって構成されている。しかし、セルフロック機構は、伝動部4の減速機構43に設けられていてもよい。また、セルフロック機構は、送りネジ41と送りナット42とによって構成されたもの以外に、例えば、ウォームとウォームホイールや、他の歯車など、セルフロック作用を有する他の構造によって構成されていてもよい。なお、セルフロック機構は、例えば、互いに噛み合うネジ部分のリード角を比較的小さくしたり、滑りネジ機構を採用したりすることによって得られる。
【0043】
本実施形態のように、セルフロック機構が送りネジ41と送りナット42とによって構成されている場合、送りネジ41と送りナット42とが、送りネジ41の周方向全体で互いに噛み合うので、リッドLを開放位置で保持する保持力が高まる。
【0044】
また、本実施形態では、図4図5図7および図8に示されるように、送りナット42は、送りネジ41の外周に対して、送りネジ41の径方向外側に設けられ、レバー部22と第2の軸X2方向に係合するように構成された係合部422(第1係合部422aおよび第2係合部422b)を有している。この場合、例えば、リッドLに閉鎖方向の外力が加わったときに、出力側である回転部材2側から送りナット42に加えられる力F(図4参照)は、回転部材2のレバー部22と送りナット42の係合部422との間の当接箇所に加わる。このレバー部22と係合部422との間の当接箇所は、第2の軸X2に対して送りネジ41の径方向外側に離れた位置となっている。この場合、レバー部22から送りナット42に加えられる力Fは、第2の軸X2に対して径方向でズレた位置に加えられ、送りナット42が第2の軸X2に対して傾く方向に作用する(図4の場合、送りナット42が図4において右上がりとなるように傾くように作用する)。したがって、レバー部22から係合部422に加わる力Fは、送りナット42を第2の軸X2方向に移動させる力に変換されにくく、よりセルフロック作用が高まり、リッドLの開放位置での保持がより確実になる。
【0045】
また、本実施形態では、図7および図8に示されるように、送りナット42が第1位置または第2位置にある状態で回転部材2を第1の軸X1方向に見たときに、軸部21からレバー部22が延びる方向が、第2の軸X2に対して傾斜し、レバー部22と係合部422とが接触する箇所は、送りネジ41の外周に対して径方向外側となっている。この場合、レバー部22から係合部422に加わる力Fは、送りナット42が第2の軸X2に対して傾く方向に作用する(図7の場合、送りナット42が図7において右下がりとなるように傾くように作用する)。さらに、力Fは、図7および図8に示されるように、第2の軸X2に対して平行ではなく傾いた方向に加わる。この場合、レバー部22から係合部422に加わる力Fのうち、第2の軸X2に平行な方向の成分は、力Fよりも小さくなる。したがって、リッドLに閉鎖方向の力が加わったとしても、送りナット42を第2の軸X2に沿って移動させる力は小さくなり、よりセルフロック作用が高まり、リッドの開放位置での保持がより確実になる。なお、軸部21からレバー部22が延びる方向と、第2の軸X2との間の傾斜角θは、特に限定されないが、例えば、30~60°とすることができる。
【0046】
なお、リッドアクチュエータ1の場合、リッドLは軽い力で開くので、レバー部22と係合部422との間の接触箇所が、送りネジ41の外周に対して径方向外側に位置していたとしても、送りナット42を送りネジ41に対して移動させて、送りナット42からレバー部22に力が加わる場合には、リッドLの開閉時の障害とはならない。したがって、リッドLのように開閉時に必要な操作力が軽く、かつリッドL側からは大きな力が加わる可能性がある構造において、上述した構成は適している。
【0047】
また、本実施形態では、図7および図8に示されるように、リッドアクチュエータ1がさらに、第2の軸X2方向の所定の位置に設けられたスイッチSW1を備えている。スイッチSW1は、送りナット42が第2の軸X2方向で所定の位置に到達したときに、送りナット42によって操作されて、モータ3を停止させ、リッドLが開放状態で維持される開放位置は、スイッチSW1の位置によって定められる。この場合、また、スイッチSW1によってモータ3が停止した時点でセルフロック作用により、リッドLが開放位置でロックされる。したがって、リッドLが開放位置に到達したときに当て止めとして作用するストッパなどを設ける必要がない。また、スイッチSW1の位置によって、送りナット42が停止する第2の軸X2方向の位置および送りナット42の位置に対応したリッドLの開放角度が決定される。したがって、例えば、スイッチSW1の第2の軸X2方向での位置を変更することで、容易にリッドLの開放位置を変更、微修正することができる。
【0048】
スイッチSW1は、送りナット42が所定の位置に移動したときに操作されるものであれば、特に限定されない。スイッチSW1は、例えば、リミットスイッチとすることができる。送りナット42は、リミットスイッチであるスイッチSW1を操作するためのスイッチ操作部423を有している。スイッチ操作部423は、第2の軸X2方向の両側に傾斜面を有し、送りナット42が第2の軸X2方向に移動したときに、スイッチSW1の被操作部SW11を操作・押圧することができるように構成されている。なお、スイッチSW1は、磁気センサや他のセンサを用いたスイッチであってもよい。
【0049】
また、本実施形態では、リッドアクチュエータ1は、リッドLの開放位置に対応する送りナット42の第1位置でモータ3を停止させるように構成されたスイッチSW1を有しているが、リッドLの閉鎖位置に対応する送りナット42の第2位置でモータ3を停止させるように構成されたスイッチSW2をさらに有していてもよい。スイッチSW2は、送りナット42が第2の軸X2方向で所定の位置に到達したときに、送りナット42によって操作されて、モータ3を停止させ、リッドLが閉鎖状態で維持される閉鎖位置は、スイッチSW2の位置によって定められる。なお、スイッチSW2はスイッチSW1と同様の構成とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 リッドアクチュエータ
2 回転部材
21 軸部
22 レバー部
221 アーム部
222 突出部
3 モータ
31 出力軸
4 伝動部
41 送りネジ
42 送りナット
421 筒状部
422 係合部
422a 第1係合部
422b 第2係合部
423 スイッチ操作部
43 減速機構
5 ハウジング
5a 筐体
5b 蓋体
51 モータ収容部
52 減速機構収容部
53 送りネジ収容部
B 基部(車体)
Ba 開口
Bb 本体部
Bc 給油口(または給電口)
D リッド開閉装置
F 回転部材側から送りナットに加えられる力
G1、G2、G3、G4 ギヤ
L リッド
L1 リッド本体
L2 延伸体
L21 挿入部
SW1 スイッチ
SW11 被操作部
SW2 スイッチ
X1 第1の軸
X2 第2の軸
θ 軸部からレバー部が延びる方向と、第2の軸との間の傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8