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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062489
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】マルチブラスト装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 7/00 20060101AFI20230426BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20230426BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B24C7/00 A
B24C5/02 A
B24C9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172495
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000206934
【氏名又は名称】株式会社マルテー大塚
(71)【出願人】
【識別番号】512158158
【氏名又は名称】株式会社吉原鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】青柳 真輔
(72)【発明者】
【氏名】吉原 慎二
(57)【要約】
【課題】複数の作業者が同時に腐食部位のブラスト処理を行うことができるとともに、ブラスト処理で腐食部位に発射される使用済みの研削材を回収して再利用することができるマルチブラスト装置を提供する。
【解決手段】研削材貯留タンクと、エアコンプレッサと、エアドライヤと、真空ポンプと、使用済みの研削材から粉塵を除去した研削材を貯留する回収タンクと、を備えたマルチブラスト装置において、研削材貯留タンクは、第一研削材貯留タンクと第二研削材貯留タンクから構成され、回収タンクは、吸引ホースで回収した使用済みの研削材から粉塵を除去して貯留した研削材を、2個の研削材貯留タンクのそれぞれに供給して再利用可能とし、2個の研削材貯留タンクの下部で2か所の研削材供給口にそれぞれ連通連結された4本のブラストホースにより、複数の作業者が同時にブラスト処理を行うことを可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削材を噴出するブラストホースに連通して、貯留した研削材を供給する研削材供給口を有する研削材貯留タンクと、
前記ブラストホースに圧縮空気を供給するエアコンプレッサと、
前記ブラストホースに供給する圧縮空気を乾燥させるエアドライヤと、
使用済みの研削材を粉塵と一緒に吸引ホースで吸引する真空ポンプと、
前記真空ポンプで吸引された使用済みの研削材から粉塵を除去した研削材を貯留する回収タンクと、
を備えたマルチブラスト装置において、
前記研削材貯留タンクは、
第一研削材貯留タンクと第二研削材貯留タンクとの2個の前記研削材貯留タンクから構成され、
前記回収タンクは、
前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクの上部に配設され、前記吸引ホースで回収した使用済みの研削材から粉塵を除去して貯留した研削材を、前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクのそれぞれに供給して再利用可能とし、
前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクの下部には、それぞれブラストホースと連通連結された2か所の研削材供給口を有し、
前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクの下部の前記研削材供給口にそれぞれ連通連結された4本の前記ブラストホースにより、複数の作業者が同時にブラスト処理を行うことを可能としたことを特徴とするマルチブラスト装置。
【請求項2】
前記回収タンクは、回収した研削材の貯留量を作業者が視認可能とした少なくとも一箇所以上の貯留量確認窓を有することを特徴とする請求項1に記載のマルチブラスト装置。
【請求項3】
前記回収タンクと前記真空ポンプとの間には、粉塵を回収する粉塵分離装置が介在し、
前記粉塵分離装置は、粉塵から大きめの粉塵を分離回収する遠心分離機と、大きめの粉塵が分離した細かい粉塵を集塵する集塵機とから構成され、
前記集塵機は、安価で交換が容易な円筒形ろ布により集塵することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマルチブラスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチブラスト装置に関し、詳しくは、橋梁等の構造物の防食被膜の定期的な補修作業において、複数の作業者が同時に腐食部位の素地調整処理(ブラスト処理)を行うことが可能なマルチブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や鉄道などの橋梁等の構造物を構成する鋼(I型、H型や箱型の鋼材)やコンクリートには、防食や防錆のために各種樹脂製(エポキシ樹脂、フッ素樹脂等)塗料による塗装や金属(亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、およびそれらの合金等)の被膜を形成する金属溶射により防食被膜が形成されている。
【0003】
ところが、構造物の表面の防食被膜は経年劣化により腐食や錆が発生し、防食被膜としての機能が低下するため定期的に補修作業が必要となる。このような構造物の防食被膜の補修作業では、構造物の表面の経年劣化した防食被膜に圧縮空気で研削材を高速で吹き付けて清浄(錆や劣化した被膜の除去)する素地調整処理(以下、ブラスト処理という)を行った後、再塗装や再金属溶射をすることが一般的である。
【0004】
このとき、ブラスト処理によって構造物の表面の腐食部に高速で吹き付けられた研削材やこの研削材で剥がされた腐食部の錆びや防食被膜の粉塵が大量に飛散する。この飛散する粉塵(塗料や金属)には有害物質(例えば、鉛等)が含有されている場合があり、作業者の安全や周囲の環境保全に配慮する必要がある。また、近年では、一度ブラスト処理で使用された研削材を錆びや剥離された防食被膜等の粉塵と一緒に回収し、研削材に付着した粉塵を分離回収した後、回収した研削材を再利用(リサイクル)することが資源保護のために行われている。
【0005】
このため、ブラストホースの先端のノズルヘッドに、研掃材の噴射ノズルと吸引ホースとを一体として構成し、噴射ノズルから研掃材を噴射して構造物表面を研掃すると同時に、噴射された研掃材と構造物表面から剥離した粉塵を、吸引ホースにより回収して研掃材と粉塵等を分離した後、回収した研掃材を再利用(リサイクル)可能とした構造物表面の研掃システムが開示されている。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-207624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の構造物表面の研掃システムによれば、補修作業を行う作業者が、ブラストホースの先端のノズルヘッドを保持して、構造物の表面に発生した腐食部位をブラスト処理し、ブラスト処理後の研掃材や粉塵を回収する構成のため、ブラスト処理で剥がされた腐食部の錆びや粉塵の飛散を防止することができるとともに、回収した研掃材を再利用することができる。
【0008】
しかしながら、構造物の広範囲の補修作業においてブラスト作業を行う場合は、特許文献1のような局部的な腐食部位のブラスト処理では、作業時間が大幅にかかり、効率の良い構造物表面の研掃システムを構成することはできない。また、構造物の狭隘部や角部、鋼材の締結部のネジに発生した錆等の腐食部位は、特許文献1のようなノズルヘッドではうまく剥離することはできず、ブラストホ-スの先端から腐食部位に高速で研削材を発射するオープンブラストが好適である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、構造物の広範囲な防食被膜のブラスト処理を行う場合に、複数の作業者が同時に腐食部位のブラスト処理を行うことができるとともに、ブラスト処理で腐食部位に発射される使用済みの研削材を回収して再利用することができるマルチブラスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術を提供する。
【0011】
本発明は、研削材を噴出するブラストホースに連通して、貯留した研削材を供給する研削材供給口を有する研削材貯留タンクと、前記ブラストホースに圧縮空気を供給するエアコンプレッサと、前記ブラストホースに供給する圧縮空気を乾燥させるエアドライヤと、使用済みの研削材を粉塵と一緒に吸引ホースで吸引する真空ポンプと、前記真空ポンプで吸引された使用済みの研削材から粉塵を除去した研削材を貯留する回収タンクと、を備えたマルチブラスト装置において、前記研削材貯留タンクは、第一研削材貯留タンクと第二研削材貯留タンクとの2個の前記研削材貯留タンクから構成され、前記回収タンクは、前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクの上部に配設され、前記吸引ホースで回収した使用済みの研削材から粉塵を除去して貯留した研削材を、前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクのそれぞれに供給して再利用可能とし、前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクの下部には、それぞれブラストホースと連通連結された2か所の研削材供給口を有し、前記第一研削材貯留タンク及び前記第二研削材貯留タンクの下部の前記研削材供給口にそれぞれ連通連結された4本の前記ブラストホースにより、複数の作業者が同時にブラスト処理を行うことを可能としたことを特徴とするマルチブラスト装置とした。
【0012】
また、前記回収タンクは、回収した研削材の貯留量を作業者が視認可能とした少なくとも一箇所以上の貯留量確認窓を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記回収タンクと前記真空ポンプとの間には、粉塵を回収する粉塵分離装置が介在し、前記粉塵分離装置は、粉塵から大きめの粉塵を分離回収する遠心分離機と、大きめの粉塵が分離した細かい粉塵を集塵する集塵機とから構成され、前記集塵機は、安価で交換が容易な円筒形ろ布により集塵することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、研削材を噴出するブラストホースに連通して、貯留した研削材を供給する研削材供給口を有する研削材貯留タンクと、ブラストホースに圧縮空気を供給するエアコンプレッサと、ブラストホースに供給する圧縮空気を乾燥させるエアドライヤと、使用済みの研削材を粉塵と一緒に吸引ホースで吸引する真空ポンプと、真空ポンプで吸引された使用済みの研削材から粉塵を除去した研削材を貯留する回収タンクと、を備えたマルチブラスト装置において、研削材貯留タンクは、第一研削材貯留タンクと第二研削材貯留タンクとの2個の前記研削材貯留タンクから構成され、回収タンクは、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクの上部に配設され、吸引ホースで回収した使用済みの研削材から粉塵を除去して貯留した研削材を、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクのそれぞれに供給して再利用可能とし、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクの下部には、それぞれブラストホースと連通連結された2か所の研削材供給口を有し、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクの下部の研削材供給口にそれぞれ連通連結された4本の前記ブラストホースにより、複数の作業者が同時にブラスト処理を行うことを可能としたことを特徴とするマルチブラスト装置である。
【0015】
このように、複数の作業者が同時に広範囲の橋梁等の構造物の主要部の腐食部位のブラスト処理を行うことで、補修作業の作業効率が向上し工期の短縮を図ることが可能となる。また、ブラストホースに供給される圧縮空気をエアドライヤで乾燥させて、湿度の低い圧縮空気でブラスト処理を行うことで、ブラスト処理における戻り錆びの発生を低く抑えることができる。また、乾燥した圧縮空気をブラストホースに供給することで、ブラストホース内における研削材の詰まり等も防止することができる。
【0016】
腐食部位に高速で射出された研削材は、腐食部位を研削した後、真空ポンプの作動により吸引ホースにより吸引されて回収タンクの上部より回収タンク内に供給される。このとき、回収タンク内に供給される研削材には、腐食部位に発生した錆びや劣化した防食被膜の破片(以下、塗膜片という)からなる粉塵が混在している。このため、吸引ホースで回収タンク内に供給された研削材は、回収タンクの上部において研削材と粉塵とに分別された後、分別された研削材は回収タンクに貯留される。回収タンクの下部と第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクの上部とは、研削材が流下する流下ホースで連結連通されている。そして、この流下ホースの中途に設けられた流下弁を作業者が任意に開放することで、回収タンクに貯留された研削材が、下方の第一研削材貯留タンク又は第二研削材貯留タンクに流下して供給される。すなわち、本発明の使用済みの研削材は、塗膜片や粉塵等が除去されて再利用可能としている。
【0017】
回収タンクは、回収した研削材の貯留量を作業者が視認可能とした少なくとも一箇所以上の貯留量確認窓を有する。このため、回収タンクの上面には採光窓が設けられ、この採光窓からの光によって回収タンク内における研削材の貯留量を、作業者が貯留量確認窓より視認可能としている。そして、作業者は、回収タンク内における研削材の貯留量の多寡に応じて、真空ポンプを作動させて使用済みの研削材の回収を行う。
【0018】
回収タンクと真空ポンプとの間には、粉塵を回収する粉塵分離装置が介在し、粉塵分離装置は、粉塵から大きめの粉塵を分離回収する遠心分離機と、大きめの粉塵が分離した細かい粉塵を集塵する集塵機とから構成されている。つまり、回収タンク内で研削材と分離された塗膜片を含む粉塵は、真空ポンプの吸引力により回収タンクの外の吸引ホースに排出され、吸引ホース内の粉塵は、まず遠心分離機により塗膜片等の大きめの粉塵が分離回収され、次に集塵機内でフィルターにより粉塵を完全にろ過して分離回収される。そして、集塵機内では、安価で交換が容易な円筒形ろ布をフィルターとして用いて粉塵をろ過する。このように、従来消耗品として用いていた高価な成型フィルターに代わって円筒形ろ布を使用することで、マルチブラスト装置におけるメンテナンス費用の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るマルチブラスト装置の構成を説明する斜視図である。
図2】本実施形態に係るマルチブラスト装置の空気及び研削材の流れを説明する平面図である。
図3】本実施形態に係るマルチブラスト装置の2個の研削材貯留タンクと回収タンクの構成を説明する斜視図である。
図4】本実施形態に係るマルチブラスト装置の2個の研削材貯留タンクと回収タンクの構成を説明する斜視図である。
図5】本実施形態に係るマルチブラスト装置の粉塵分離装置の構成を説明する斜視図である。
図6】本実施形態に係るマルチブラスト装置の粉塵分離装置の構成を説明する斜視図である。
図7】本実施形態に係るマルチブラスト装置の使用済みの研削材と粉塵の回収を説明する側面図である。
図8】本実施形態に係るマルチブラスト装置の集塵機のフィルター交換を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、研削材を噴出するブラストホースに連通して、貯留した研削材を供給する研削材供給口を有する研削材貯留タンクと、ブラストホースに圧縮空気を供給するエアコンプレッサと、ブラストホースに供給する圧縮空気を乾燥させるエアドライヤと、使用済みの研削材を粉塵と一緒に吸引ホースで吸引する真空ポンプと、真空ポンプで吸引された使用済みの研削材から粉塵を除去した研削材を貯留する回収タンクと、を備えたマルチブラスト装置において、研削材貯留タンクは、第一研削材貯留タンクと第二研削材貯留タンクとの2個の前記研削材貯留タンクから構成され、回収タンクは、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクの上部に配設され、吸引ホースで回収した使用済みの研削材から粉塵を除去して貯留した研削材を、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクのそれぞれに供給して再利用可能とし、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクの下部には、それぞれブラストホースと連通連結された2か所の研削材供給口を有し、第一研削材貯留タンク及び第二研削材貯留タンクの下部の研削材供給口にそれぞれ連通連結された4本の前記ブラストホースにより、複数の作業者が同時にブラスト処理を行うことを可能としたことを特徴とするマルチブラスト装置に関するものである。
【0021】
以下、図1図8を参照して、本発明におけるマルチブラスト装置の一例を説明する。図1は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の構成を説明する斜視図である。図2は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の空気及び研削材の流れを説明する平面図である。図3は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の2個の研削材貯留タンクと回収タンクの構成を説明する斜視図である。図4は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の2個の研削材貯留タンクと回収タンクの構成を説明する斜視図である。図5は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の粉塵分離装置の構成を説明する斜視図である。図6は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の粉塵分離装置の構成を説明する斜視図である。図7は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の使用済みの研削材と粉塵の回収を説明する側面図である。図8は、本実施形態に係るマルチブラスト装置の集塵機のフィルター交換を説明する側面図である。
【0022】
なお、以下の本実施形態のブラスト処理は、橋桁等の構造物の防食被膜の補修作業において、構造物の表面の経年劣化した防食被膜に圧縮空気で研削材を高速で吹き付けて清浄(錆や劣化した被膜の除去)する素地調整処理である。また、このブラスト処理で使用される研削材は、周知のアルミナサンド、スチールグリッド、ガーネット、フェロニッケルスラグ等であり、防食被膜の種類に応じて最適な粒度(大きさ)の研削材が用いられる。
【0023】
以下、図1及び図2を参照して、本実施形態のマルチブラスト装置1の構成の概要と、使用される研削材と圧縮空気及び回収される使用済み研削材の流れを説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態のマルチブラスト装置1は、鋼板で矩形に形成された筐体K1の内部に、2個の第一研削材貯留タンク10Aと第二研削材貯留タンク10Bとが並列に配設されている。第一研削材貯留タンク10Aと第二研削材貯留タンク10Bとの中間上部には、回収タンク20が配設されている。第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの下部の2か所の研削材供給口11A、11Bには、それぞれ4本のブラストホースBHが連通連結されている。
【0024】
第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bのそれぞれのエアタンク12には、2本のエア供給ホースEHの終端が連結され、2本のエア供給ホースEHの始端は、エアコンプレッサ60に連結されている。このエアコンプレッサ60の作動により圧縮空気がエア供給ホースEHを介してエアタンク12に供給される。エアコンプレッサ60と第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bのそれぞれのエアタンク12と連結された2本のエア供給ホースEHの中途には、それぞれエアドライヤ40、40が介在しており、2本のエア供給ホースEHを介して、第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bのそれぞれのエアタンク12に供給される圧縮空気は、可及的に湿度が低くなるように乾燥される。
【0025】
このように、本実施形態のマルチブラス装置1では、エアコンプレッサ60で生成された圧縮空気は、エア供給ホースEHを流通する過程でエアドライヤ40、40により除湿(つまり、乾燥)されて、第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bのそれぞれのエアタンク12に供給される。エアタンク12には、それぞれ2本のブラストホースBHの始端(基端)が連通連結されて高圧の圧縮空気が合計4本のブラストホースBHに供給される。そして、第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの下部の研削材供給口11A、11Bにおいて、4本のブラストホースBHの圧縮空気に所定量の研削材が混合される。4本のブラストホースBHの終端(以下、ブラストホースBHの先端という)に設けられた噴射ノズル(図示せず)から腐食した防食被膜に研削材を噴射してブラスト処理を行えるようにしている。すなわち、本実施形態のマルチブラス装置1では、最大4人の作業者が同時にブラスト処理(ブラスト作業)を行うことを可能としている。
【0026】
吸引ホースKHの始端は、真空ポンプ50が連結されており、吸引ホースKHの終端は、ブラスト作業を行う施工現場において、使用済みの粉塵を含む研削材を吸引するように開口されている。吸引ホースKHの始端と終端との間には、回収タンク20と粉塵分離装置30とが介在して設置されている。
【0027】
吸引ホースKHの終端の開口(以下、単に吸引ホースKHの先端という。)から吸引された粉塵を含む使用済みの研削材は、回収タンク20の上部の供給口KHaから回収タンク20の内部に供給される。また、図2に示すように、吸引ホースKHの先端と回収タンク20の上部の供給口KHaの中途に分岐配管SPを介して吸引ホースKHを分岐させて、複数(図中は2本)の吸引ホースKHにより使用済みの粉塵を含む研削材を吸引するようにしてもよい。回収タンク20の内部に供給された使用済みの研削材は、粉塵等が分離されて研削材のみ回収タンク20の下部に貯留されて、回収タンク20の下方に設置された第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bに供給されて再利用される。
【0028】
使用済みの研削材から分離した粉塵等は、真空ポンプ50の負圧により回収タンク20の上部の供給口KHaの反対側の排出口KHbから回収タンク20の外部の吸引ホースKHに排出される。そして、回収タンク20と真空ポンプ50との間に介在する粉塵分離装置30に供給される。粉塵分離装置30は、遠心分離機31と集塵機32とから構成されており、まず遠心分離機31により供給された粉塵から塗膜片等の大きめの粉塵が分離回収される。続いて集塵機32の内部で円筒形ろ布により微細な粉塵がろ過されて回収される。そして、最終的にクリーンな空気のみが真空ポンプに供給される。
【0029】
上述してきた構成のマルチブラスト装置1によれば、ブラスト処理で腐食部位に発射された使用済みの研削材を回収して再利用することができるとともに、作業者に悪影響を及ぼす恐れのある塗膜片を含む粉塵を、粉塵分離装置30によって安全に回収破棄することが可能となる。本実施形態のマルチブラスト装置1は発電機70を備えており、この発電機70からエアドライヤ40、真空ポンプ50、エアコンプレッサ60等の、マルチブラスト装置1を構成する各種装置の作動に必要な電力が供給される。
【0030】
以下、図3及び図4を参照して、マルチブラスト装置1を構成する2個の第一研削材貯留タンク10Aと第二研削材貯留タンク10Bの構成と、この第一研削材貯留タンク10Aと第二研削材貯留タンク10Bとの中間上部に配設されている回収タンク20を詳説する。本実施形態においては、上述したように、鋼板で矩形に形成された筐体K1の内部に、2個の第一研削材貯留タンク10Aと第二研削材貯留タンク10Bとが並列に配設されている。第一研削材貯留タンク10Aと第二研削材貯留タンク10Bとの中間上部には、回収タンク20が配設されている。
【0031】
第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bは、下方がロート状に絞られた円筒形状の胴板と、開閉できるスライド式の天板13から構成されている。この胴板及び天板13としては鉄板や鋼板が好適に用いられる。第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bに供給される研削材は、天板13を開放して内部に供給されて貯留される。また、マルチブラスト装置1の作動中は、天板13を閉鎖することで、外部からの雨水やゴミの侵入を防止することができる。
【0032】
第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの下端には、研削材を排出するための研削材排出バルブ15が設けられており、この研削材排出バルブ15を開放することで、第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10B内に貯留された研削材を外部に排出することができる。つまり、研削材排出バルブ15は、使用する研削材の種類を変更する場合に用いられる。
【0033】
研削材排出バルブ15の左右両側には、研削材供給口11A、11Bが設けられている。この研削材供給口11A、11Bには、それぞれ4本のブラストホースBHが連通連結され、エアコンプレッサ60からエアドライヤ40、40を介してエア供給ホースEHで供給される乾燥した圧縮空気は、エアタンク12を基端とする4本のブラストホースBHと研削材供給口11A、11Bとの連結部において所定量の研削材が混合される。このようにして、4本のブラストホースBHの先端に設けられた噴射ノズル(図示せず)から研削材が高速で腐食した防食被膜に発射されてブラスト処理が行われる。
【0034】
ここで、本実施形態のマルチブラスト装置1は、4本のブラストホースBHそれぞれに対応して、研削材の噴射、停止又は研削材を含まない圧縮空気のみの噴射(所謂、エアブロー)を操作可能なリモコン装置(図示せず)が設けられている。このリモコン装置は、例えば、有線のリモコンスイッチが好適に用いられ、ブラストホースBHの先端近傍に配設される。リモコンスイッチには、研削材の噴射、停止、エアブロー(圧縮空気のみの噴射)を選択可能な複数のボタン(スイッチ)が設けられ、ブラスト処理を行う作業者が、ブラストホースBHの先端を保持した状態で操作可能としている。なお、この有線のリモコンスイッチは、図示しない制御盤に接続されるとともに、配線の断線を検出可能な機能を備え、断線を検出すると研削材の噴射又はエアブローの噴出は自動停止し、その後の操作は断線が回復するまで停止される。
【0035】
第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bのエアタンク12の上部にはそれぞれ消音装置としてのサイレンサSが配設されている。本実施形態のマルチブラスト装置1は、エアタンク12を基端とする4本のブラストホースBHへ研削材供給口11A、11Bからの所定量の研削材をスムーズに排出して圧縮空気と混合するために、第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの内部の気圧を周囲の気圧より高圧にしている。このため、作業終了時や研削材の交換時には、第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの内部から空気を排出して通常の気圧に戻す必要があり、このサイレンサSを通して空気を排出することで、空気の排出音(つまり、騒音)を軽減するようにしている。
【0036】
回収タンク20は、第一研削材貯留タンク10Aと第二研削材貯留タンク10Bとの中間上部に配設されている。回収タンク20は、第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bと同様に、下方がロート状に絞られた円筒形状としている。回収タンク20の上部には、使用済みの粉塵を含む研削材の供給口KHaが設けられ、吸引ホースKHの先端の開口部から吸引された粉塵を含む使用済みの研削材は、供給口KHaから回収タンク20に供給される。
【0037】
供給口KHaから回収タンク20の内部に供給される使用済みの研削材は、真空ポンプ50の吸引力により供給口KHaに対向して設置された衝突板24(図7参照)に高速で衝突する。これにより、研削材に付着した粉塵は発塵して研削材から分離される。衝突板24としては、研削材との衝突に耐久性のある耐摩耗鋼板が好適に用いられる。なお、使用される研削材の種類が、例えば、仕上げブラスト処理に用いられる柔らかく粒度の小さい非金属性の素材の場合は、衝突板24との衝突で破損する可能性が高いため、耐摩耗鋼板以外の杉板等が好適に用いられる。このため、供給口KHaに対向して設置される衝突板24は容易に交換できるように着脱自在としている。衝突板24との衝突で発塵して粉塵と分離した研削材は、下方に落下して回収タンク20の内部に貯留される。
【0038】
回収タンク20の研削材の貯留部の上部には、研削材を振るいに掛ける孔が多数穿設された多孔鋼板からなる振動式スクリーン(図示せず)が配設されている。この振動式スクリーンは、落下する研削材に振るいをかけ、所定の大きさの研削材だけを回収するためのものである。振動式スクリーンは、真空ポンプ50の作動による使用済みの研削材を回収する際に同時に振動が開始される。このように、使用済みの研削材を振動式スクリーンで振るいをかけて回収することで、供給口KHaから回収タンク20の内部に供給される粉塵を含む使用済みの研削材に、コンクリート片やごみ等の大型のゴミが混入していた場合でも、大型のゴミは振動式スクリーンの上部に残ることになる。このため、回収タンク20の側面には、この大型のゴミ回収扉(図示せず)が配設され、ゴミ回収扉を開放することで、振動式スクリーンの上部に溜まった大型のゴミを回収して破棄できるようにしている。
【0039】
吸引ホースKHの先端から吸引され、回収タンク20の上部の供給口KHaから回収タンク20の内部に供給された粉塵を含む研削材は、衝突板24(図7参照)と衝突して研削材から発塵して分離された粉塵及び吸引ホースKHの先端から吸引された粉塵は、真空ポンプ50の負圧(吸引力)により回収タンク20の上部の供給口KHaの反対側の排出口KHbから回収タンク20の外部の吸引ホースKHに排出される。この後、真空ポンプ50と回収タンク20との間に介在する粉塵分離装置30により粉塵等は回収される。
【0040】
回収タンク20は、回収した研削材の貯留量を作業者が視認可能とするために、上下に縦長の矩形の貯留量確認窓22を、回収タンク20の側面二カ所に備えている。貯留量確認窓22は透明なアクリル板が好適に用いられる。また、回収タンク20に貯留された研削材の貯留量を作業者が視認可能とするため、回収タンク20の上面には矩形の採光窓23が設けられている。採光窓23は透明なアクリル板が好適に用いられる。なお、この採光窓23の形状は矩形でなくてもよく、この採光窓23から回収タンク20内への入光により回収タンク20内における研削材の貯留量を、作業者が貯留量確認窓22より視認できる大きさや形状であればよい。
【0041】
作業者は、貯留量確認窓22より視認した回収タンク20内における研削材の貯留量の減少に応じて、真空ポンプ50を作動させて使用された研削材及び粉塵の回収を行う。回収タンク20の下部に貯留された研削材は、回収タンク20の下方に設置された第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bに供給されて再利用される。
【0042】
回収タンク20の下部と第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの上面の天板13の略中央部とは、研削材が流下する流下ホース21A、21Bでそれぞれ連結連通されている。この流下ホース21A、21Bの中途には、回収タンク20内部の研削材の流下を開閉する流下弁(図示せず)がそれぞれ設けられており、作業者がこの流下弁を任意に開放することで、回収タンク20に貯留された研削材が、下方の第一研削材貯留タンク10A又は第二研削材貯留タンク10Bに流下して供給される。
【0043】
第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの内部には、貯留される研削材の満量を検出するセンサが設けられており、作業者がこの流下弁を開放して、回収タンク20から第一研削材貯留タンク10A又は第二研削材貯留タンク10Bに流下して貯留された研削材の満量を検出すると、満量表示装置14の上部に設けられている赤色回転灯が回転発光して作業者に通知する。つまり、作業者は流下ホース21A、21Bの中途に設けられている流下弁を開放する場合は、満量表示装置14の上部に設けられた回転灯の発光により第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10B内の研削材の満量を知ることで流下弁を閉止して、回収タンク20から第一研削材貯留タンク10A又は第二研削材貯留タンク10Bへの研削材の供給(補充)を停止する。
【0044】
回収タンク20の下部中央部には、回収タンク20内の研削材を外部に排出する排出ホース21Cが連通連結されている。排出ホース21Cには、研削材の排出を開閉する排出弁(図示せず)が設けられており、作業者が排出弁を開放することで、回収タンク20内の研削材を外部に排出することができる。この排出弁による研削材の排出は、マルチブラスト装置1で使用する研削材の種類を変更する場合に行われる。
【0045】
以下、図5及び図6を参照して、マルチブラスト装置1を構成する粉塵分離装置30の構成を詳説する。本実施形態においては、上述したように、回収タンク20と真空ポンプ50との間には粉塵分離装置30が介在する。粉塵分離装置30は回収した粉塵から大きめの塗膜片を分離する遠心分離機31と、微細な粉塵を集塵する集塵機32とから構成されている。回収タンク20内で研削材と分離された塗膜片を含む粉塵は、真空ポンプ50の吸引力により回収タンク20外の吸引ホースKHに排出され粉塵分離装置30に供給される。粉塵分離装置30は、鋼板で矩形に形成された筐体K2の内部に、遠心分離機31と集塵機32を収容するように配設されている。
【0046】
回収タンク20外の吸引ホースKHに排出された粉塵は、まず、遠心分離機31により、塗膜片等の大きめの粉塵が遠心分離されて、遠心分離機31の下部の回収部31aに落下して回収される。回収部31aには粉塵の回収扉(図示せず)が設けられており、この回収扉を開放して回収部31a内の粉塵が外部に回収される。塗膜片等の大きめの粉塵以外の粉状の微細な粉塵は、次に、集塵機32に供給されて、集塵機32の内部に設置されている複数の円筒形ろ布F(図8参照)によりろ過されて、円筒形ろ布Fに吸着して集塵される。
【0047】
このため、図8に示すように、円筒形の集塵機32周面には、円筒形ろ布Fの交換扉32aが設けられており、この交換扉32aを開放することで、集塵機32の内部に設置された複数の円筒形ろ布Fの交換を容易としている。
【0048】
粉塵分離装置30に供給される回収タンク20から排出された粉塵を含む空気は、まず遠心分離機31により供給された粉塵から塗膜片が分離されて回収される。続いて集塵機32の内部で円筒形ろ布により粉塵がろ過されて回収される。そして、最終的にクリーンな空気のみが真空ポンプ50により排出される。このように、従来消耗品として用いていた高価な成型フィルターに代わって円筒形ろ布Fを使用することで、マルチブラスト装置1におけるメンテナンス費用の低減を図ることができる。また、ブラスト処理の現場以外では、作業者に悪影響を及ぼす恐れのある塗膜片を含む粉塵を、粉塵分離装置30によって安全に回収破棄することが可能となる。
【0049】
以下、図7を参照して、本実施形態において吸引ホースKHで回収される粉塵を含む研削材の回収の流れと、粉塵の回収をまとめて説明する。図7に示すように、吸引ホースKHの先端から吸引され、回収タンク20の上部の供給口KHaから回収タンク20の内部に供給された粉塵Dを含む研削材Kは、衝突板24と衝突して、研削材から発塵して分離された粉塵Dや吸引ホースKHの先端から吸引された粉塵Dは、真空ポンプ50の負圧(吸引力)により回収タンク20の上部の供給口KHaの反対側の排出口KHbから回収タンク20の外部の吸引ホースKHに排出される。ここで、粉塵Dを発塵した研削材Kは回収タンク20に貯留されて、回収タンク20の下部の流下ホース21A、21Bを経由して、第一研削材貯留タンク10A又は第二研削材貯留タンク10Bへ供給されて再利用される。
【0050】
真空ポンプ50の吸引により、回収タンク20の外部の吸引ホースKHに排出された粉塵Dは、まず、粉塵分離装置30を構成する遠心分離機31により、塗膜片等の大きめの粉塵D1が遠心分離されて、遠心分離機31の下部の回収部31aに落下して回収される。そして、塗膜片等の大きめの粉塵D1以外の粉状の微細な粉塵D2は、次に、集塵機32に供給されて、集塵機32の内部に設置されている複数の円筒形ろ布Fによりろ過されて、円筒形ろ布Fに吸着して集塵される。
【0051】
上述してきた本実施形態のマルチブラスト装置1によれば、複数の作業者が同時に広範囲の橋梁等の構造物の主要部の腐食部位のブラスト処理を行うことができ、構造物の補修作業の効率が向上し工期の短縮を図ることができる。また、エアコンプレッサ60によりブラストホースBHに供給される圧縮空気をエアドライヤ40で乾燥させて、湿度の低い圧縮空気でブラスト処理を行うことで、ブラスト処理における戻り錆びの発生を低く抑えることができる。また、乾燥した圧縮空気をブラストホースBHに供給することで、ブラストホースBH内における湿気等による研削材の詰まり等も防止することができる。
【0052】
また、吸引ホースKHで回収タンク20内に供給された研削材は、回収タンク20の上部において研削材と粉塵とに分別された後、分別された研削材は回収タンク20に貯留される。回収タンク20の下部と第一研削材貯留タンク10A及び第二研削材貯留タンク10Bの上部とは、研削材が流下する流下ホース21A、21Bで連結連通されている。そして、この流下ホース21A、21Bの中途に設けられた流下弁を作業者が任意に操作して開放することで、回収タンク20に貯留された研削材が、下方の第一研削材貯留タンク10A又は第二研削材貯留タンク10Bに流下して供給されて、使用済みの研削材は、塗膜片や粉塵等が除去されて再利用することを可能としている。
【0053】
また、回収タンク20と真空ポンプ50との間に介在する粉塵分離装置30は、回収した粉塵から塗膜片を分離する遠心分離機31と、塗膜片が分離した粉塵を集塵する集塵機32とから構成される。つまり、回収タンク20内で研削材と分離された塗膜片を含む粉塵は、回収タンク20の外に排出され、遠心分離機31により塗膜片等の大きめの粉塵を回収し、集塵機32により吸引した微細な粉塵を完全にろ過して分離する。このため、集塵機32は、安価で交換が容易な円筒形ろ布により微細な粉塵をろ過する。このように、従来消耗品として用いていた高価な成型フィルターと比較して、相対的に安価な円筒形ろ布を使用することで、マルチブラスト装置1におけるメンテナンス費用の低減を図ることができる。
【0054】
上述してきたように、本実施形態におけるマルチブラスト装置1によれば、橋梁等の構造物の表面に発生した広範囲な腐食部位の補修作業において、複数の作業員が複数のブラストホースBHでオープンブラスト作業を行えるため、現場での作業効率が向上し、かつ、工期を短縮することができるため、補修作業における経済的な効果が大きい。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 マルチブラスト装置
10A 第一研削材貯留タンク
10B 第二研削材貯留タンク
11A、11B 研削材供給口
12 エアタンク
13 天板
14 満量表示装置
15 研削材排出バルブ
20 回収タンク
21A、21B 流下ホース
21C 排出ホース
22 貯留量確認窓
23 採光窓
24 衝突板
30 粉塵分離装置
31 遠心分離機
32 集塵機
40 エアドライヤ
50 真空ポンプ
60 エアコンプレッサ
70 発電機
BH ブラストホース
EH エアホース
KH 吸引ホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8