(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062512
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20230426BHJP
F16K 7/12 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172527
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB04
3H062BB26
3H062CC02
3H062CC13
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH03
3H062HH10
(57)【要約】
【課題】弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を回避する機能とともに、機能停止時の流体遮断機能も備えた電動弁を提供する。
【解決手段】作動軸50の前部係合部55が弁機構体60の係合空間部65に進退可能に嵌挿されるとともに、作動軸50のねじ部56に停止部材80が螺合され、弁機構体60の前進時には作動軸50の前進に伴って弁機構体60の係止部66と前部係合部55との係止状態が維持されながら弁機構体60が前進されて閉弁され、作動軸50がさらに前進されて係合空間部65内を前部係合部55が前進するように構成され、開弁時の機能停止では停止部材80がばね部材Sの付勢力により作動軸50とともに前進されて弁機構体60を押圧して弁体70を前進させて閉弁が保持され、閉弁時の機能停止では停止部材80がばね部材Sの付勢力により作動軸50とともに前進されて停止位置の弁機構体60が押圧されて閉弁状態が保持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、
前記電動式駆動機構により軸回転される作動軸と、
前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、
前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、
を備えた電動弁であって、
前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、
前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された前部係合部と、前記軸本体の前記前部係合部の後側に形成されたねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、
前記弁機構体は、前記作動軸の前記前部係合部が進退可能に嵌挿される係合空間部と、前記係合空間部の後部に形成されて前記作動軸の前記前部係合部が係止される係止部とを有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されるとともに、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により常時前記弁室側へ付勢され、
前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、
前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記作動軸が後退されて前記前部係合部が前記弁機構体の前記係止部に係止され、前記作動軸の後退に伴って前記加圧気体の付勢力に抗して前記弁機構体が後退されて前記弁体が前記弁座から離隔され、
前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記作動軸が前進されて、前記作動軸の前進に伴って前記加圧気体の付勢力によって前記弁機構体が前記係止部と前記作動軸の前記前部係合部との係止状態が維持されながら前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、
閉弁時に前記軸本体がさらに他方向に軸回転された場合には、前記加圧気体の付勢力が前記弁機構体に作用することによって閉弁状態が保持されつつ前記作動軸がさらに前進されて、前記作動軸の前部係合部と前記弁機構体の係止部との係止状態が解除されるとともに前記弁機構体の前記係合空間部内を前記前部係合部が前進するように構成され、
開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により前記作動軸とともに弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体を前進させて前記弁座が閉鎖されて保持され、
閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により前記作動軸とともに弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体による前記弁座の閉弁状態が保持される
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記作動軸の前記前部係合部と前記弁機構体とを構成する材料が同一のフッ素樹脂である請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成される請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、
前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、
前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4又は5に記載の電動弁。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、
前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、
前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有する
ことを特徴とする電動弁の製造方法。
【請求項8】
前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する請求項7に記載の電動弁の製造方法。
【請求項9】
前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する請求項7又は8に記載の電動弁の製造方法。
【請求項10】
前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータによって作動される電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の流路構造では、ポンプ等の流体の供給源に接続された流路に、流体圧力を調節する調圧弁、流体の流量を調節する流量調節弁、流体を遮断又は通過可能とする開閉弁等が適宜に配置される。この種の半導体製造においては、薬液や超純水等の流体を微量に調節して供給する工程が行われる場合がある。
【0003】
流体の供給を微量に調節する際には、例えば、流量調節弁として、ニードル状の弁体の進退によって流出部のオリフィスの開口量を調節する電動弁が使用される(特許文献1参照)。電動弁は、ステッピングモータ等の電動式駆動機構により作動される装置であって、電気制御の操作により装置の維持管理の自由度が大きく、流量変化等の制御を容易に行うことができる利点がある。
【0004】
ところで、この種の流路構造において流体が遮断される場合、通常の作動時には流量調節弁(電動弁)の閉鎖により流体が遮断されるが、停電等により動力が停止したり、緊急停止ボタンを作動させたりした場合には開閉弁の閉鎖により流体が遮断される。従来の流路構造にあっては、配管内に流量調節弁等の他に緊急停止用の開閉弁を個別に配置する必要があり、コストの増大や装置の大型化等の問題が生じて改善が求められている。
【0005】
また近年では、半導体製造における大規模集積化、加工の微細化が進み、2023年には配線ピッチ3nmの半導体デバイスが量産される計画がある。そこで、微細な配線幅の半導体製造では、その製造工程内における流体の流通経路での微細なゴミ(パーティクル)の混入が、製品の歩留まりに大きな影響を与える。歩留まりを維持するためには、パーティクルを配線ピッチの半分以下のサイズとして流体の清浄度を維持しながら流通させることが要求される。
【0006】
特許文献1の電動弁では、弁体が連結された弁機構体がばね部材により常時閉鎖方向へ付勢されるとともに、弁機構体に螺着された作動軸を電動式駆動機構により回転させることによって弁機構体を介して弁体を進退させ、弁体の前進時にばね部材の付勢力とともに弁機構体を前進させて弁座を閉鎖(閉弁)した際に、作動軸がさらに回転されることによって作動軸が後退するように構成される。このように、弁座の閉鎖(閉弁)後に作動軸が後退することにより、閉弁後の電動式駆動機構による作動が弁機構体に伝達されないため、弁体が弁座に押し込まれず、弁座に対する過剰な圧迫等が原因となるパーティクルの発生等を回避することができる。この種の電動弁においても、流体の清浄度のさらなる改善が求められる。
【0007】
例えば、流量調節弁等に使用される電動弁等の弁装置では、腐食性の高い薬液が使用されることが多いため、ハウジングや弁体等の各部を構成する材料として、耐食性や耐薬品性等に優れたPTFEやPFA等のフッ素樹脂が使用される。従来の弁装置では、ダイアフラム部にPTFE、弁部にPFAを使用する等、部材の部位に応じて性質の異なる材料を使用し、組み合わせて構成することある。その際、PTFEとPFAをインサート成形や溶着により結合させた後、切削加工によりダイアフラムや弁部等の所定形状に形成することが提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0008】
フッ素樹脂においては、PTFEやPFAと同等の耐食性等の性質を有し、耐摩耗性に優れた材料として架橋PTFEが知られている。この架橋PTFEは、材料自体の製造工程が多く高額であることから、各部材の全体を構成する材料として使用するには不向きであるが、半導体製造プロセスの微細化に伴う清浄度のさらなる改善の観点から、架橋PTFEの優れた耐摩耗性は極めて有用である。そこで、架橋PTFEを使用する場合に、経済的でより高い清浄度を維持することができる電動弁を適切に製造することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実登3227404号公報
【特許文献2】国際公開第2017/221877号
【特許文献3】2020-200840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を回避する機能とともに、機能停止時の流体遮断機能も備えた電動弁を提供するものである。また、架橋PTFEを使用する場合に経済的でより高い清浄度を維持することができる電動弁の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1の発明は、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記電動式駆動機構により軸回転される作動軸と、前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された前部係合部と、前記軸本体の前記前部係合部の後側に形成されたねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、前記弁機構体は、前記作動軸の前記前部係合部が進退可能に嵌挿される係合空間部と、前記係合空間部の後部に形成されて前記作動軸の前記前部係合部が係止される係止部とを有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されるとともに、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により常時前記弁室側へ付勢され、前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記作動軸が後退されて前記前部係合部が前記弁機構体の前記係止部に係止され、前記作動軸の後退に伴って前記加圧気体の付勢力に抗して前記弁機構体が後退されて前記弁体が前記弁座から離隔され、前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記作動軸が前進されて、前記作動軸の前進に伴って前記加圧気体の付勢力によって前記弁機構体が前記係止部と前記作動軸の前記前部係合部との係止状態が維持されながら前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、閉弁時に前記軸本体がさらに他方向に軸回転された場合には、前記加圧気体の付勢力が前記弁機構体に作用することによって閉弁状態が保持されつつ前記作動軸がさらに前進されて、前記作動軸の前部係合部と前記弁機構体の係止部との係止状態が解除されるとともに前記弁機構体の前記係合空間部内を前記前部係合部が前進するように構成され、開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により前記作動軸とともに弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体を前進させて前記弁座が閉鎖されて保持され、閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により前記作動軸とともに弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体による前記弁座の閉弁状態が保持されることを特徴とする電動弁に係る。
【0012】
請求項2の発明は、前記作動軸の前記前部係合部と前記弁機構体とを構成する材料が同一のフッ素樹脂である請求項1に記載の電動弁に係る。
【0013】
請求項3の発明は、前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成される請求項1又は2に記載の電動弁に係る。
【0014】
請求項4の発明は、前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動弁に係る。
【0015】
請求項5の発明は、前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4に記載の電動弁に係る。
【0016】
請求項6の発明は、前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4又は5に記載の電動弁に係る。
【0017】
請求項7の発明は、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有することを特徴とする電動弁の製造方法に係る。
【0018】
請求項8の発明は、前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する請求項7に記載の電動弁の製造方法に係る。
【0019】
請求項9の発明は、前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する請求項7又は8に記載の電動弁の製造方法に係る。
【0020】
請求項10の発明は、前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係る電動弁によると、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記電動式駆動機構により軸回転される作動軸と、前記作動軸と連結されるとともに前記作動軸の作動により進退動する弁機構体と、前記弁機構体に取り付けられるとともに前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に周方向に係合する伝達係合部を後部に有する軸本体と、前記軸本体の前部に形成された前部係合部と、前記軸本体の前記前部係合部の後側に形成されたねじ部とを有し、前記伝達部材に対して進退可能であるとともに、前記電動式駆動機構の作動により軸回転する前記伝達部材を介して軸回転されるように構成され、前記弁機構体は、前記作動軸の前記前部係合部が進退可能に嵌挿される係合空間部と、前記係合空間部の後部に形成されて前記作動軸の前記前部係合部が係止される係止部とを有し、前記作動室に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されるとともに、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により常時前記弁室側へ付勢され、前記停止部材は、前記作動軸に貫通されて前記作動軸の前記ねじ部と螺合する停止部材側ねじ溝部を有し、前記作動室の前記シリンダ部内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体の後退移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されることにより、前記作動軸が後退されて前記前部係合部が前記弁機構体の前記係止部に係止され、前記作動軸の後退に伴って前記加圧気体の付勢力に抗して前記弁機構体が後退されて前記弁体が前記弁座から離隔され、前記弁機構体の前進移動の際には、前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されることにより、前記作動軸が前進されて、前記作動軸の前進に伴って前記加圧気体の付勢力によって前記弁機構体が前記係止部と前記作動軸の前記前部係合部との係止状態が維持されながら前進されて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖され、閉弁時に前記軸本体がさらに他方向に軸回転された場合には、前記加圧気体の付勢力が前記弁機構体に作用することによって閉弁状態が保持されつつ前記作動軸がさらに前進されて、前記作動軸の前部係合部と前記弁機構体の係止部との係止状態が解除されるとともに前記弁機構体の前記係合空間部内を前記前部係合部が前進するように構成され、開弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により前記作動軸とともに弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体を前進させて前記弁座が閉鎖されて保持され、閉弁時に前記電動弁が機能停止した場合には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により前記作動軸とともに弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体による前記弁座の閉弁状態が保持されるため、弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を回避する機能とともに、機能停止時の流体遮断機能を備えて単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁として使用することができ、配管内に流量調節弁と開閉弁とを個別に配置する必要がなくなり、コストの低減や装置の小型化を図ることができる。
【0022】
請求項2の発明に係る電動弁によると、請求項1の発明において、前記作動軸の前記前部係合部と前記弁機構体とを構成する材料が同一のフッ素樹脂であるため、作動軸と弁機構体とを円滑に作動させることができるとともに、摩耗等の劣化を抑制することができる。
【0023】
請求項3の発明に係る電動弁によると、請求項1又は2の発明において、前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成されるため、機能停止後に容易かつ適切に電動弁を復帰させることが可能となる。
【0024】
請求項4の発明に係る電動弁によると、請求項1ないし3の発明において、前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されているため、弁部と弁座の接触時のパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0025】
請求項5の発明に係る電動弁によると、請求項4の発明において、前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されているため、PTFEからなる弁座に架橋PTFEからなる当接部材を容易に接合させることができる。
【0026】
請求項6の発明に係る電動弁によると、請求項4又は5の発明において、前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されているため、PTFEからなる弁体に架橋PTFEからなるニードル弁部を容易に接合させることができる。
【0027】
請求項7の発明に係る電動弁の製造方法によると、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有するため、PFA又はPTFEからなる弁座と架橋PTFEからなる当接部材、及びPFA又はPTFEからなる弁体と架橋PTFEからなるニードル弁部を、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合することができる。
【0028】
請求項8の発明に係る電動弁によると、請求項7の発明において、前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有するため、PTFEの弁座と架橋PTFEの当接部材とを容易に接合させることができる。
【0029】
請求項9の発明に係る電動弁によると、請求項7又は8の発明において、前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有するため、PTFEの弁体と架橋PTFEのニードル弁部とを容易に接合させることができる。
【0030】
請求項10の発明に係る電動弁によると、請求項7ないし9の発明において、前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有するため、弁体にニードル弁部を容易かつ確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動弁の全開時の縦断面図である。
【
図2】
図1の電動弁の弁機構体移動時の縦断面図である。
【
図4】
図1の電動弁の閉弁時に作動軸が前進した状態の縦断面図である。
【
図5】作動軸の前部側と弁機構体の構造を表した概略分解斜視図である。
【
図6】作動軸の後部側と電動式駆動機構の伝達部材との構造を表した概略横断面図である。
【
図8】全開時の機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
【
図9】弁機構体移動時の機能停止中における弁機構体近傍の第1拡大断面図である。
【
図10】弁機構体移動時の機能停止中における弁機構体近傍の第2拡大断面図である。
【
図11】閉弁時の機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
【
図12】閉弁時に作動軸が前進した状態の機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
【
図13】機能停止時の停止部材の前面部側近傍の拡大断面図である。
【
図14】テーパーシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の全開時の弁室の拡大断面図である。
【
図15】テーパーシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の閉弁時の弁室の拡大断面図である。
【
図16】フラットシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の全開時の弁室の拡大断面図である。
【
図17】フラットシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の閉弁時の弁室の拡大断面図である。
【
図18】接合装置により弁座に当接部材を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【
図19】弁座に弁座側接合部材を介して当接部材を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【
図20】弁体にニードル弁部を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【
図21】弁体に弁体側接合部材を介してニードル弁部を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1~4に示す本発明の一実施形態に係る電動弁10は、主に半導体製造工場や半導体製造装置等の流体管路に配設される流量調節弁であって、流体の流量の調節や遮断を行うように構成される。この電動弁10は、ハウジング11と、作動軸50と、弁機構体60と、弁体70とを備える。
【0033】
電動弁10では、流体と接触するハウジング11、弁体70等の各部が耐食性及び耐薬品性の高い材料で構成される。例えば、PTFE、PFA、PVDF等のフッ素樹脂である。フッ素樹脂は、切削等により所望する形状に容易に加工することができる。また、この電動弁10では、純水、アンモニア水、フッ酸、過酸化水素水、塩酸、オゾン水、水素水、酸素水、界面活性剤等の薬液、水素、酸素等のガス等の被制御流体が流通される。
【0034】
ハウジング11は、弁座25が形成された弁室20と、弁室20の後部側に配置された作動室30と、作動室30の後部側に配置された駆動室40とが形成される。図において、符号21は弁室20の一側に接続された被制御流体の流入部、22は弁座25を介して弁室20の他側に接続された被制御流体の流出部である。
【0035】
作動室30には、加圧気体を供給するエア供給部35が設けられているとともに、後述する弁機構体60と別部材よりなる停止部材80と、停止部材80を常時弁室20方向に付勢するばね部材Sとが配置されている。図において、符号31は作動室30内に形成されたシリンダ部、32はシリンダ部31の前側(弁室20側)において後述する弁機構体60を進退可能に保持する弁機構体保持ブロック、33はシリンダ部31の前面部に相当する弁機構体保持ブロック32の後端面である。
【0036】
エア供給部35は、作動室30のシリンダ部31内に加圧気体を供給する部位であり、公知の電空レギュレータ等の調圧装置(図示せず)に接続される。このエア供給部35では、シリンダ部31の前面側(弁機構体保持ブロック32の後端面33側)に加圧気体の供給孔36が形成され、当該電動弁10の作動中は常時加圧気体の供給が行われる。
【0037】
駆動室40は、電動式駆動機構41を有する。電動式駆動機構41は、適宜の演算装置(図示せず)の制御により進退量を調節して後述の作動軸50を軸回転させる部材である。電動式駆動機構41としては、作動軸50の回転量を精度良く制御できるものであれば特に限定されず、例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、超音波モータ等が好適に用いられる。電動式駆動機構41に関して、42はロータ、43は配線部、44はフロントブランケット、45はロータ42により後述の作動軸50を軸回転させる伝達部材、46は伝達部材45の回転体、47は回転体46から前側(作動室30側)に突出して形成された伝達部材45の棒状体である。なお、電動式駆動機構41のフロントブランケット44は、作動室30のシリンダ部31の後面部であるとともに、後述のばね部材Sの後側ばね受け部に相当する。
【0038】
作動軸50は、電動式駆動機構41により軸回転される部材であって、軸本体51と、前部係合部55と、ねじ部56とを有する。軸本体51は、電動式駆動機構41の伝達部材45に周方向に係合する伝達係合部52を後部に有する。前部係合部55は、軸本体51の前部に形成されて後述する弁機構体60に対して作動軸50を進退可能に連結させる部位である。前部係合部55は、弁機構体60に進退可能に連結される適宜の形状で構成され、例えば
図5に示すように、軸本体51より大径のピストン形状に形成される。ねじ部56は、軸本体51の前部係合部55の後側に形成されたねじ山部分である。
【0039】
ここで、作動軸50は、
図1~4に示すように、伝達係合部52に伝達部材45の回転体46から突出した棒状体47が嵌挿されることによって、伝達部材45と連結される。伝達部材45と作動軸50との連結構造は、伝達部材45の軸回転により棒状体47を介して軸回転可能かつ棒状体47に対して軸方向に進退可能な構造であれば特に限定されない。実施形態では、
図6に示すように、伝達部材45の棒状体47が平板状に形成されており、作動軸の伝達係合部52は伝達部材45の棒状体47が摺動可能に嵌挿される断面視四角形状の孔部として形成されている。そして、作動軸50の断面視四角形状の伝達係合部52が伝達部材45の平板状の棒状体47と回転方向で係合しているため、電動式駆動機構41の作動により伝達部材45が軸回転することによって、その棒状体47を介して作動軸50が軸回転される。また、伝達部材45の棒状体47と作動軸50の伝達係合部52とが軸方向で摺動可能であるため、作動軸50が伝達部材45に対して進退可能となる。なお、図において、伝達部材45の外周面形状は適宜であるため省略した。
【0040】
弁機構体60は、作動軸50と連結される部材であって、係合空間部65と、係止部66とを有する。この弁機構体60は、作動室30に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿される。実施形態では、
図7に示すように、作動室30の弁機構体保持ブロック32に公知のスプライン嵌合構造により嵌挿されている。また、この弁機構体60は、電動弁10の作動時には、作動室30のシリンダ部31へのエア供給部35からの加圧気体の供給により常時弁室20側へ付勢される。図において、符号61は外周にスプライン構造を有する略円柱状の機構体本体部、62は弁機構体60(機構体本体部61)の後端部、63は後端部62に形成されて作動軸50の軸本体51が挿通される軸通部、67は弁機構体60の後端部62に設けられた複数の突起部である。
【0041】
係合空間部65は、作動軸50の前部係合部55が進退可能に嵌挿される空間である。実施形態の係合空間部65は、機構体本体部61内部に形成されて、機構体本体部61の後端部62に形成された軸通部63と連通するように構成される。係止部66は、係合空間部65の後部に形成されて作動軸50の前部係合部55が係止される部位である。実施形態では、機構体本体部61の後端部62の内面部が係止部66に相当する。
【0042】
ここで、作動軸50と弁機構体60の連結構造について説明する。まず弁機構体60では、
図5に示すように、機構体本体部61の側部に形成された側部開放部64を介して軸通部63及び係合空間部65が設けられる。側部開放部64では、軸通部63に対応する部分の幅が軸通部63の直径、係合空間部65に対応する部分の幅が係合空間部65の直径とそれぞれ同一となるように形成されている。そして、機構体本体部61の側部開放部64側から作動軸50が挿入されることにより、軸通部63に対して作動軸50の軸本体51、係合空間部65に対して作動軸50の前部係合部55がそれぞれ嵌挿され、作動軸50と弁機構体60とが連結される。このように作動軸50と弁機構体60とが連結された状態で、作動軸50の伝達係合部52に電動式駆動機構41の伝達部材45の棒状体47が嵌挿されるとともに、弁機構体60が作動室30の弁機構体保持ブロック32に嵌挿されることにより、電動式駆動機構41の伝達部材45と、作動軸50と、弁機構体60とが同軸で位置決めされる。なお、
図5では、弁機構体60の外周面の凹凸形状は省略している。
【0043】
また、連結された作動軸50と弁機構体60では、作動軸50の前部係合部55と弁機構体60とを構成する材料が同一のフッ素樹脂であることが好ましい。作動軸50の前部係合部55と弁機構体60とは、作動時に互いに接触及び摺動することから、同一のフッ素樹脂で構成することによって、円滑に作動させることができるとともに、摩耗等の劣化を抑制することができる。
【0044】
弁体70は、弁機構体60に取り付けられるとともに、弁室20にダイアフラム75と一体に配置されて弁座25を開閉する部材である。この弁体70は、弁機構体60の進退動に伴って進退することにより弁座25に対して着座又は弁座25から後退して弁座25を開閉する弁部71を有する。弁部71の形状は、フラット形状やニードル形状等、弁座25の開閉を確実に行うことが可能であれば特に限定されない。図示した実施形態の弁部71は、フラット形状のシール部72を有するフラット弁部である。ダイアフラム75は、薄肉の可動膜からなり、弁室20内を流通する被制御流体の作動室30側への浸入を防止する。
【0045】
停止部材80は、作動軸50に貫通されて作動軸50のねじ部56と螺合する停止部材側ねじ溝部82を有する。また、停止部材80は、作動室30のシリンダ部31内に周方向に回転不能かつ進退自在に嵌挿されていて、電動弁10の作動時にはシリンダ部31への加圧気体の供給によりばね部材Sの付勢力に抗して常時駆動室40側に付勢保持される。実施形態の停止部材80は、作動室30のシリンダ部31に公知のスプライン嵌合構造により嵌挿されている(図示省略)。図において、符号81は停止部材80内に凹状に形成されてばね部材Sに押圧される前側ばね受け部である。
【0046】
ばね部材Sは、停止部材80と電動式駆動機構41との間に配置されて、停止部材80を常時弁室20方向に付勢する弾性部材である。ばね部材Sは、停止部材80を付勢する弾性部材であれば特に限定されないが、簡素な構成で安価な公知のコイルばねが好適である。
【0047】
次に、電動弁10の平常時の作動について説明する。なお、平常時の作動では、エア供給部35から作動室30のシリンダ部31内へ常時加圧気体が供給されて、ばね部材Sの付勢力に抗して停止部材80が常時駆動室40側、すなわちシリンダ部31の後面部に相当する電動式駆動機構41のフロントブランケット44側に付勢保持されている。
【0048】
電動弁10の作動時において、
図1に示す弁機構体60の後退移動の際、つまり開弁時(弁座25の開放時)では、まず電動式駆動機構41により伝達部材45を介して軸本体51が一方向(作動軸50の後退方向)に軸回転される。この時、作動軸50が後退されることから、前部係合部55が弁機構体60の係合空間部65の後部側へ移動されて、弁機構体60の係止部66に係止される。そして、前部係合部55と弁機構体60の係止部66との係止状態が維持されたまま作動軸50が後退されると、その後退に伴って加圧気体の付勢力に抗して弁機構体60が後退されて、弁体70が弁座25から離隔されて開弁状態とされる。特に、図示のように後退した弁機構体60の後部(突起部67)が停止部材80の前面部83に当接した場合は、弁機構体60の後退量が最大となり、弁座25が全開とされる。
【0049】
続いて弁機構体60の前進移動の際は、
図2に示すように、電動式駆動機構41により伝達部材45を介して軸本体51が他方向(作動軸50の前進方向)に軸回転される。その際、停止部材80が作動軸50の回動によって供回りすることがなく、加圧気体により駆動室40側に付勢保持されていることから、作動軸50はねじ部56のピッチに応じて前進される。そして、弁機構体60に加圧気体による常時弁室20側への付勢力が作用していることから、作動軸50の前進に伴って加圧気体の付勢力によって弁機構体60が係止部66と作動軸50の前部係合部55との係止状態が維持されながら前進される。弁機構体60は、前進により停止部材80から離隔されて弁室20方向へ移動され、これに伴って弁体70が弁座25に近接される。そして、弁機構体60が継続して前進することにより、
図3に示すように、弁体70が弁座25に当接されて閉弁(閉鎖)状態となる。
【0050】
上記のように閉弁した時点では、電動式駆動機構41の回転駆動が継続されていることから、軸本体51はさらに他方向(作動軸50の前進方向)に軸回転される。この時、弁体70が弁座25に当接されているため、弁機構体60はそれ以上前進されず、加圧気体の付勢力が作用することによって閉弁状態が保持される。一方、作動軸50は、後部係合部52が伝達部材45に対して進退可能であり、前部係合部55が弁機構体60の係止部66に係止されて、さらに前部係合部55が弁機構体60の係合空間部65内を前進可能とされる。そこで、閉弁状態が保持されつつ作動軸50がさらに前進されて、作動軸50の前部係合部55と弁機構体60の係止部66との係止状態が解除されるとともに弁機構体60の係合空間部65内を前部係合部55が前進するように構成される。
【0051】
閉弁後に弁機構体60が前進せずに閉弁状態が保持されたまま作動軸50自身が前進するということは、閉弁後の電動式駆動機構41の回転動に伴う作動軸50の前進移動が弁機構体60に影響しないことで、弁体70が閉鎖時に弁座25に押し込まれず、閉鎖時における弁座25との衝突や過大な摩擦等が回避ないし緩和されることを意味する。そのため、これらの衝突や摩擦等に伴う問題の発生を一挙に解決することができる。
【0052】
また、弁機構体60は、加圧気体によって閉弁状態が付勢保持されていることから、弁体70を弁座25に対して全閉する力ないし弁座25の全閉シール力等の押し込む力を維持するためのモータの励磁を維持する必要がない。したがって、これに伴う問題、すなわち、消費電流の問題のみならずモータの発熱による被制御流体の温度上昇に関連する種々の問題を一挙に解消することができる。
【0053】
さらに、閉弁後の開弁に際しては、弁機構体60の後退移動で説明したとおり、作動軸50の後退により前部係合部55が弁機構体60の係合空間部65の後部側へ移動されて係止部66に係止され、作動軸50の後退に伴って加圧気体の付勢力に抗して弁機構体60が後退されて開弁される。このように、開弁方向の移動、つまり作動軸50の後退は、負荷の無い状態からスタートできるので、微小な流量の開弁制御や流量ゼロからの立ち上げなどのランプ制御が可能となる。また、本発明の電動弁10では、マイクロステップ駆動方式で電動式駆動機構41のステッピングモータを駆動させた場合に、弁体70の進退動をより精密に制御して弁座25の開度を微調整することができる。
【0054】
次に、本発明の電動弁10の機能停止の際の作動について説明する。ここで、機能停止とは、電動弁10の作動中に停電等による電力停止や緊急停止ボタン(図示せず)の操作による緊急停止等の非常事態において、エア供給部35からの加圧気体の供給が停止された状態である。実施形態の電動弁10では、非常事態の発生により、まず加圧気体の供給が停止され、次いで電力停止等により電動弁10の動力が停止される。動力停止により電動式駆動機構41の作動が停止されることから、作動軸50は軸回転されない。この作動軸50には、ねじ部56に停止部材80が螺合して連結されていることから、伝達部材45の棒状体47に対して作動軸50と停止部材80とが一体に進退可能な状態となる。なお、機能停止の手順はこれに限定されず、非常事態に際して加圧気体の供給停止と電動式駆動機構41の作動停止が行われればよい。
【0055】
本発明の電動弁10は、開弁時に機能停止した場合には、加圧気体の供給停止により停止部材80がばね部材Sの付勢力により作動軸50とともに弁室20方向へ移動されて、弁機構体60を弁室20方向へ押圧して弁体70を前進させて弁座25が閉鎖されて保持される。また、閉弁時に機能停止した場合には、加圧気体の供給停止により停止部材80がばね部材Sの付勢力により作動軸50とともに弁室20方向へ移動されて、弁機構体60を弁室20方向へ押圧して弁体70による弁座25の閉弁状態が保持される。そこで、電動弁10の作動時の状態に応じた機能停止時の作動をより具体的に述べる。
【0056】
まず、
図1に示す弁座25の全開時に機能が停止された場合、ばね部材Sの付勢力に抗して停止部材80を駆動室40側へ付勢保持していたエア供給部35からの加圧気体の供給が停止されて、停止部材80に対してばね部材Sの付勢力が作用して弁室20方向へ押圧される。この時、機能停止により作動軸50の回動が停止されて、作動軸50と停止部材80とが伝達部材45の棒状体47に対して一体に進退可能であることから、ばね部材Sにより弁室20方向へ押圧された停止部材80とともに、作動軸50が一体に弁室20方向へ前進される。
【0057】
そして、全開時には弁機構体60が停止部材80の前面部83に当接されていることから、ばね部材Sの付勢力が作用する停止部材80によって弁機構体60が弁室20方向へ押圧される。すなわち、弁座25の全開時に機能が停止されると、ばね部材Sの付勢力によって作動軸50と弁機構体60と停止部材80とが一体に前進される。そのため、
図8に示すように、停止部材80に押圧された弁機構体60を介して弁体70が前進されて、弁座25が閉鎖(閉弁)される。そして、停止部材80は、ばね部材Sにより常時弁室20方向へ付勢されているため、当該機能停止中は、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0058】
図2に示す弁座25の全開ではない開放時、すなわち弁機構体60の移動時(前進移動時又は後退移動時)に機能が停止された場合、まず弁機構体60は、停止部材80から離隔され、かつ、弁体70が弁座25に当接されない開放位置で移動が停止される。一方、停止部材80は、全開時の機能停止と同様に、エア供給部35からの加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力が作用して弁室20方向へ押圧される。
【0059】
この時、作動軸50の前部係合部55が弁機構体60の係合空間部65内を前進可能であり、弁機構体60が停止部材80から離隔された開放位置で停止されていることから、
図9に示すように、ばね部材Sにより弁室20方向へ押圧された停止部材80とともに作動軸50が一体に弁室20方向へ前進されて、弁機構体60の後端部62に停止部材80が当接される。そして、そのまま停止部材80によって弁機構体60が弁室20方向へ押圧され、開放位置から作動軸50と弁機構体60と停止部材80とが一体に前進されて、
図10に示すように、停止部材80に押圧された弁機構体60を介して弁体70が前進されて、弁座25が閉鎖(閉弁)される。そして、停止部材80に対してばね部材Sの弁室20方向への付勢力が常時作用していることから、当該機能停止中は、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0060】
図3に示す弁座25の閉鎖時(閉弁時)に機能が停止された場合、まず弁機構体60は、弁体70が弁座25に当接されて閉鎖する位置で停止される。一方、停止部材80は、エア供給部35からの加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力が作用して弁室20方向へ押圧される。この時、作動軸50の前部係合部55が弁機構体60の係合空間部65内を前進可能であることから、
図11に示すように、ばね部材Sにより弁室20方向へ押圧された停止部材80とともに作動軸50が一体に弁室20方向へ前進されて、閉鎖位置の弁機構体60の後端部62に停止部材80が当接される。そして、停止部材80に対してばね部材Sの弁室20方向への付勢力が常時作用していることから、そのまま停止部材80によって弁機構体60が弁室20方向へ押圧され、当該機能停止中は、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0061】
図4に示す閉弁後に作動軸50が前進した際に機能が停止された場合、前記閉弁時と同様に、まず弁機構体60が弁体70により弁座25を閉鎖する位置で停止され、停止部材80がエア供給部35からの加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力が作用して弁室20方向へ押圧される。この時、作動軸50の前部係合部55は、弁機構体60の係止部66との係止状態が解除され、係合空間部65内の係止部66から離隔された位置に配置されているが、係合空間部65内をさらに前進可能となっている。そこで、
図12に示すように、ばね部材Sにより弁室20方向へ押圧された停止部材80とともに作動軸50が一体に弁室20方向へ前進されて、前記閉弁時と同様に、停止部材80によって閉鎖位置の弁機構体60が弁室20方向へ押圧され、当該機能停止中は、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0062】
機能停止後、機能が復帰された場合、エア供給部35からの加圧気体の供給が再開されて、停止部材80が加圧気体によってばね部材Sの付勢力に抗して駆動室40側に付勢保持される。その際、作動軸50が停止部材80と一体に後退されるため、作動軸50の後退に伴って前部係合部55が弁機構体60の係止部66に係止され、弁機構体60が緊急停止前の位置まで後退される。なお、閉鎖時の機能停止後に機能が復帰された場合には、閉鎖状態のまま作動が再開される。
【0063】
また、上記の機能復帰に際して、
図13に示すように、シリンダ部31内の弁室20側(前側)に位置する停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部(弁機構体保持ブロック32の後端面33)との間にエア供給部35からの加圧気体の導入が可能な間隙部Gが形成されることが好ましい。この間隙部Gにより、機能停止後に復帰させる際に、エア供給部35からの加圧気体が停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部との間に効率よく導入されて、加圧気体による付勢力が停止部材80の前面部83に作用しやすくなる。そのため、機能停止後に容易かつ適切に電動弁10を復帰させることが可能となる。
【0064】
図13(a)は、弁機構体60の後端部62に複数の突起部67が形成されて、閉弁時に突起部67が弁機構体保持ブロック32の後端面33からシリンダ部31内へ突出する構造である。
図13(b)は、閉弁時の弁機構体60の後端部62が弁機構体保持ブロック32の後端面33からシリンダ部31内へ突出する構造である。これらの構造では、弁機構体60の後部をシリンダ部31内へ突出させて、前進した停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部とを隔離させるように構成される。
【0065】
図13(c)は、停止部材80の前面部83に突出部84を形成し、突出部84が弁機構体60の後端部62に当接される構造である。この構造では、停止部材80と弁機構体60の後端部62との当接位置が停止部材80の前面部83より前側となるため、閉弁時の弁機構体60の後部が弁機構体保持ブロック32の後端面33より前側であっても停止部材80の前面部83とシリンダ部31の前面部とを隔離させることができる。
【0066】
停止部材80の前進時にシリンダ部31の前面部側に間隙部Gを形成する構造は、上記の例に限定されず、例えば突起部を停止部材側や停止部材と弁機構体の双方に設ける等、適宜に構成することができる。
【0067】
以上図示し説明したように、本発明の電動弁10では、作動時にエア供給部35からの加圧気体の供給により、停止部材80をばね部材Sの付勢力に抗して常時駆動室40側に付勢保持して平常通りに弁機構体60の作動を可能としており、機能停止時には加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力によって停止部材80を前進させて、その移動に伴って弁機構体60を押圧して閉弁させて保持するように構成される。そのため、機能停止時に適切に流体を遮断することができる。
【0068】
また、平常時の作動では、閉弁後に弁機構体60を前進させずに作動軸50が前進するように構成されるため、閉弁後の電動式駆動機構41の回転動に伴う作動軸50の前進移動が弁機構体60に影響せず、弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を適切に回避することができる。したがって、本発明の電動弁10では、単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁として機能させることが可能となって、配管内に流量調節弁と開閉弁とを個別に配置する必要がなくなり、コストの低減や装置の小型化を図ることができる。
【0069】
さらに、エア供給部35からの加圧気体が停止部材80の付勢保持とともに、弁機構体60を閉鎖方向へ付勢する。この際、弁機構体60の後端面が加圧気体の受圧面となる。これにより、一の付勢手段(加圧気体)で電動弁10作動中の弁体70の開閉操作と機能停止時の停止部材80の作動を適切に実施させることが可能である。
【0070】
次に、より高い清浄度を維持することを可能とするために、架橋PTFEを使用する場合について、
図14~21を用いて説明する。
図14~17に示す電動弁10A,10B(各図は弁室の拡大断面図)では、例えば、弁室20と弁体70aとをPFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成し、弁体70aに弁座25に対して当接又は弁座25から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部73が接合されるとともに、弁座25に閉弁時にニードル弁部73と当接する架橋PTFEからなる当接部材26が接合される。
【0071】
架橋PTFEは、分子同士が架橋反応して構成されたPTFEであり、例えば放射線架橋等の適宜の架橋方法により作成される。架橋PTFEは、PTFEに対して1000倍以上の耐摩耗性を有し、荷重による変形が生じにくく耐変性に優れる。特に、常温や高温のいずれでもPTFEより耐変性に優れている。また、架橋PTFEは、切削、溶接、及び貼り付け等の加工性、耐薬品性、非粘着性、電気特性、耐腐食性、清浄度等がPFAやPTFEと同等である。
【0072】
図14~17に示す例では、互いに接触する弁座25の当接部材26とニードル弁部73とが耐摩耗性に優れた架橋PTFEで構成される。半導体製造等の高い清浄度が求められる分野では、弁部もしくは弁座(当接部材)の一方を架橋PTFEとしても、他方のフッ素樹脂(PTFEやPFA)を削ってしまってパーティクルの発生を抑制する効果が十分に得られない。そこで、弁座25の当接部材26とニードル弁部73の双方を架橋PTFEとすることによって、弁部と弁座(当接部材)の接触時のパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0073】
図14,15に示す電動弁10Aは、流出部22のオリフィス径が大径に形成され、弁座25の当接部材26に当接するテーパーシール部74aが形成されたニードル弁部73aを有する。図示の実施形態のニードル弁部73aでは、テーパーシール部74aが流出部22のオリフィス径未満の径の位置から傾斜角度が緩やかな角度に変化するように形成される。また、当接部材26は、オリフィス径が大径の流出部22に対応した環状に形成される。
【0074】
図16,17に示す電動弁10Bは、流出部22のオリフィス径が小径に形成され、弁座25の当接部材26に当接するフラットシール部74bが形成されたニードル弁部73bを有する。図示の実施形態のニードル弁部73bでは、流出部22のオリフィス径と略同径の位置にフラットシール部74bが形成されて、閉弁時には当接部材26の上面側に当接される。また、当接部材26は、オリフィス径が小径の流出部22に対応した環状に形成される。
【0075】
PFAやPTFEと架橋PTFEとの接合は、加圧・加熱接合により行うことができる。また、弁室20がPTFEからなる場合には、
図14~
図17に示すように、架橋PTFEからなる当接部材26は、PFAからなる弁座側接合部材90を介して弁座25に接合されることが好ましい。同様に、弁体70aがPTFEからなる場合には、架橋PTFEからなるニードル弁部73は、PFAからなる弁体側接合部材95を介して弁体70aに接合されることが好ましい。
【0076】
ここで、弁座25と当接部材26とを接合する当接部材接合工程と、弁体70aとニードル弁部73とを接合する弁部接合工程について
図18~21を用いて具体的に説明する。
図18に示す符号100はこれらの接合工程に用いる接合装置であり、
図19~21においては、接合装置100はヒーティングブロック110を図示して、その他の部位は省している。
【0077】
接合装置100は、当接部材26やニードル弁部73等を加圧とともに直接加熱して弁座25や弁体70aに接合させるヒーティングブロック110を有する。ヒーティングブロック110は、ニクロム線等の発熱体を有し、ヒーターケーブル111から電力が供給されて発熱する抵抗加熱により加熱を行う。また、ヒーティングブロック110の加熱部110a表面は平滑であることが好ましく、実施形態では表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.03μmである。このヒーティングブロック110の加熱部110aには、必要に応じてフッ素ガスによる腐食防止のためのDLC(ダイアモンドライクカーボン)コーティングが施される。
【0078】
図において、符号112はヒーティングブロック110が取り付けられる可動ブロック、113はヒーティングブロック110による加圧時に所定の荷重を加えるための溶着圧力調整用ウエイト、114は可動ブロックに連結されてヒーティングブロックを昇降させる空圧シリンダーや電動シリンダー等の昇降手段、115は接合装置100の支柱、116は支柱に支持された固定プレート、117はヒーティングブロック110の加熱部110aの温度を検出する温度センサー、118は可動ブロック112の変異を検出する変位センサーである。
【0079】
当接部材接合工程では、弁室20の弁座25に当接部材26を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により当接部材26を加圧とともに加熱して接合が行われる。また、弁部接合工程では、弁体70aにニードル弁部73を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110によりニードル弁部73を加圧とともに加熱して接合が行われる。
【0080】
図18に示す例は、PFAからなる弁座25に、架橋PTFEからなる当接部材26を接合する当接部材接合工程を表す。この接合工程では、PFAの弁座25の弁座側当接部25aに、架橋PTFEの当接部材26が設置されて、ヒーティングブロック110が当接部材26に当接される。この時、ヒーティングブロック110に溶着圧力調整用ウエイト113による荷重が加わるため、架橋PTFEの当接部材26は、加圧されながら架橋PTFEの融点以上の温度で加熱されて、軟化又は半融解される。当接部材26側から加圧とともに加熱されることにより、PFAの弁座25は当接部材26との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEの当接部材26とPFAの弁座25とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0081】
なお、弁座25に接合される当接部材26は、弁座25との接合前に切削加工等により環状に加工したり、円状部材として弁座25に接合させた後に切削加工等により環状に加工したりする等、適宜に加工することができる。また、接合後に加工する場合、流出部22のオリフィスが形成される前の弁座25に当接部材26を接合させて、オリフィスの形成とともに当接部材26を環状に加工することも可能である。
【0082】
図19に示す例は、PTFEからなる弁座25に架橋PTFEからなる当接部材26を接合する当接部材接合工程を表し、PFAからなる弁座側接合部材90と弁座25又は当接部材26とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する。図示の弁座側拡散接合工程では、弁座25の弁座側当接部25aに、PFAからなる弁座側接合部材90を介して当接部材26が設置され、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により架橋PTFEの当接部材26を加圧とともに加熱して、弁座25と弁座側接合部材90と当接部材26とを同時に接合させる。この時、当接部材26は加熱により軟化又は半融解され、PFAからなる弁座側接合部材90及びPTFEからなる弁座25の弁座側当接部25aは、当接部材26側から加圧とともに加熱されることによって、当接部材26と弁座側接合部材90との接触界面、及び弁座側接合部材90と弁座側当接部25aとの接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEの当接部材26と、PFAの弁座側接合部材90と、PTFEの弁座25とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0083】
また、図示しないが、弁座側拡散接合工程では、当接部材26と弁座側接合部材90とを接合させた後に、これらを弁座25に接合させてもよい。当接部材26と弁座側接合部材90とを接合する場合、弁座側接合部材90に当接部材26を載置して、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90が接合される。そして、一体となった当接部材26と弁座側接合部材90が弁座25に設置されて、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90と弁座25とが接合される。
【0084】
さらに、弁座側拡散接合工程では、弁座25と弁座側接合部材90とを接合させた後に、当接部材26を接合させてもよい。弁座25と弁座側接合部材90とを接合する場合、弁座25の弁座側当接部25aに弁座側接合部材90を載置して、ヒーティングブロック110により弁座側接合部材90が加圧とともに加熱されて、弁座側接合部材90と弁座25が接合される。そして、弁座25に接合された弁座側接合部材90に当接部材26が設置されて、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90と弁座25とが接合される。
【0085】
このように、PTFEの弁座25に架橋PTFEの当接部材26を接合する場合には、両者の間にPFAの弁座側接合部材90を介在させることが好ましい。これは、PTFEや架橋PTFEの溶融粘度が大きいのに対し、PFAの溶融粘度が小さいことから、PTFEや架橋PTFEの接合面が比較的粗い場合(例えば、算術平均粗さ:Raが0.4μm)でも、PFAがPTFEや架橋PTFEの粗い接合面に対応して溶融して十分な接合強度が得られるためである。したがって、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26との間にPFAの弁座側接合部材90を介在させることによって、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26とを容易に接合させることができる。
【0086】
なお、PTFEの弁座に架橋PTFEの当接部材を直に接合することも可能である。この場合、PTFEや架橋PTFEの接合面が粗いと十分な接合強度を得ることが困難となることから、接合面の算術平均粗さ(Ra)を0.1μm未満とすることが好ましい。これにより、溶融粘度が大きいPTFEと架橋PTFEとを適切に接合させることができる。
【0087】
図20に示す例は、PFAからなる弁体70aに架橋PTFEからなるニードル弁部73を接合する弁部接合工程を表す。この弁部接合工程は、弁体70aの成形前のPFAからなるブロック体B1と、ニードル弁部73の成形前の架橋PTFEからなるブロック体B2とを接合させた後に、ブロック体B1を切削加工により弁体70aに形成するとともに、ブロック体B2を切削加工によりニードル弁部73に形成する切削工程を行うことが好ましい。
【0088】
図20に示す弁部接合工程では、弁体70aとなるPFAのブロック体B1に、ニードル弁部73となる架橋PTFEのブロック体B2が載置され、架橋PTFEのブロック体B2が抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により加圧とともに加熱される。この時、架橋PTFEのブロック体B2は加熱により軟化又は半融解され、PFAのブロック体B1は架橋PTFEのブロック体B2側から加圧とともに加熱されることによって、架橋PTFEのブロック体B2との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、PFAのブロック体B1と架橋PTFEのブロック体B2とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0089】
PFAのブロック体B1と架橋PTFEのブロック体B2の接合後、切削加工によりブロック体B1が切削されて弁体70aが形成されるとともに、切削加工によりブロック体B2が切削されてニードル弁部73が形成される。このように、弁体70aの成形前のブロック体B1と、ニードル弁部73の成形前のブロック体B2とを接合した後に、切削工程によってブロック体B1を弁体70a、ブロック体B2をニードル弁部73にそれぞれ形成することにより、弁体70aにニードル弁部73を容易かつ確実に接合することができる。
【0090】
図21に示す例は、PTFEからなる弁体70aに架橋PTFEからなるニードル弁部73を接合する工程を表し、PFAからなる弁体側接合部材95とPTFEからなる弁体70a又は架橋PTFEからなるニードル弁部73とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する。図示の弁体側拡散接合工程では、弁体70aとなるPTFEのブロック体B3に、PFAからなる弁体側接合部材95を介してニードル弁部73となる架橋PTFEのブロック体B2が載置され、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により架橋PTFEのブロック体B2を加圧とともに加熱して、PTFEのブロック体B3とPFAの弁体側接合部材95と架橋PTFEのブロック体B2とを同時に接合させる。この時、架橋PTFEのブロック体B2は加熱により軟化又は半融解され、PFAの弁体側接合部材95及びPTFEの弁体70aは、架橋PTFEのブロック体B2側から加圧とともに加熱されることによって、架橋PTFEのブロック体B2と弁体側接合部材95との接触界面、及び弁体側接合部材95とPTFEのブロック体B3との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEのブロック体B2と、PFAの弁体側接合部材95と、PTFEのブロック体B3とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0091】
また、図示しないが、弁体側拡散接合工程では、架橋PTFEのブロック体B2と弁体側接合部材95とを接合させた後に、これらをPTFEのブロック体B3に接合させてもよい。ブロック体B2と弁体側接合部材95とを接合する場合、弁体側接合部材95にブロック体B2を載置して、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、弁体側接合部材95とブロック体B2とが接合される。そして、一体となったブロック体B2と弁体側接合部材95がブロック体B3に設置されて、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、ブロック体B2と弁体側接合部材95とブロック体B3とが接合される。
【0092】
さらに、弁体側拡散接合工程では、PTFEのブロック体B3と弁体側接合部材95とを接合させた後に、架橋PTFEのブロック体B2を接合させてもよい。ブロック体B3と弁体側接合部材95とを接合する場合、ブロック体B3に弁体側接合部材95を載置して、ヒーティングブロック110により弁座側接合部材90が加圧とともに加熱されて、弁体側接合部材95とブロック体B3が接合される。そして、ブロック体B3に接合された弁体側接合部材95に架橋PTFEのブロック体B2が設置されて、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、ブロック体B2と弁体側接合部材95とブロック体B3とが接合される。
【0093】
PTFEのブロック体B3と弁体側接合部材95を介して架橋PTFEのブロック体B2が接合された後、切削加工によりブロック体B3が切削されて弁体70aが形成されるとともに、切削加工によりブロック体B2及び弁体側接合部材95が切削されて弁体側接合部材95が介在されたニードル弁部73が形成される。これにより、弁体70aに弁体側接合部材95を介してニードル弁部73を容易かつ確実に接合することができる。
【0094】
このように、PTFEの弁体70aに架橋PTFEのニードル弁部73を接合する場合には、両者の間にPFAの弁体側接合部材95を介在させることが好ましい。これは、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26とを接合する場合と同様に、PTFEや架橋PTFEの接合面が比較的粗い場合(例えば、算術平均粗さ:Raが0.4μm)でも、PFAを介在させることによって十分な接合強度が得られるためである。したがって、弁体側接合部材95の介在により、PTFEの弁体70aと架橋PTFEのニードル弁部73とを容易に接合させることができる。なお、PTFEの弁体に架橋PTFEのニードル弁部を直に接合することも、PTFEの弁座に架橋PTFEの当接部材を直に接合する場合と同様に可能である。
【0095】
なお、本発明の電動弁は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、前述の実施例では、弁機構体がエア供給部からの加圧気体により常時閉鎖方向に付勢される構成としたが、停止部材と弁機構体との間に、停止部材を付勢するばね部材より小さい付勢力で弁機構体を常時閉鎖方向に付勢する補助付勢部材を設けてもよい。補助付勢部材により、閉弁時ではエア供給部からの加圧気体と補助付勢部材とによって弁機構体が閉鎖方向へ付勢されるため、弁体のシール力が増加してより確実に閉弁状態を保持することができる。また、機能停止時では、補助付勢部材の付勢力がばね部材の付勢力より小さいことから、停止部材が補助付勢部材に妨げられることなく適切に弁機構体を押圧することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上の通り、本発明の電動弁は、機能停止時の流体遮断機能を備えて単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁とを兼用させることができるとともに、正確かつ容易に流体の微量調節を行うことができる。そのため、半導体製造等に使用される電動弁の代替品として有望である。
【符号の説明】
【0097】
10,10A,10B 電動弁
11 ハウジング
20 弁室
21 流入部
22 流出部
25 弁座
25a 弁座側当接部
26 当接部材
30 作動室
31 シリンダ部
32 弁機構体保持ブロック
33 弁機構体保持ブロックの後端面
35 エア供給部
40 駆動室
41 電動式駆動機構
42 電動式駆動機構のロータ
43 電動式駆動機構の配線部
44 電動式駆動機構のフロントブランケット
45 電動式駆動機構の伝達部材
46 伝達部材の回転体
47 伝達部材の棒状体
50 作動軸
51 軸本体
52 伝達係合部
55 前部係合部
56 ねじ部
60 弁機構体
61 機構体本体部
62 後端部
63 軸通部
64 側部開放部
65 係合空間部
66 係止部
67 突起部
70,70a 弁体
71 弁部
72 フラット形状のシール部
73,73a,73b ニードル弁部
74a ニードル弁部のテーパーシール部
74b ニードル弁部のフラットシール部
75 ダイアフラム
80 停止部材
81 前側ばね受け部
82 停止部材側ねじ溝部
83 停止部材の前面部
84 停止部材の突出部
90 弁座側接合部材
95 弁体側接合部材
100 接合装置
110 ヒーティングブロック
110a ヒーティングブロックの加熱部
111 ヒーターケーブル
112 可動ブロック
113 溶着圧力調整用ウエイト
114 昇降手段
115 支柱
116 固定プレート
117 温度センサー
118 変位センサー
B1,B2,B3 ブロック体
G 間隙部
S ばね部材
S1 補助付勢部材