(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062540
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】固形化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230426BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230426BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/92
A61Q1/04
A61K8/89
A61K8/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172574
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 寛史
(72)【発明者】
【氏名】中野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】久保田 かおり
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC331
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AD022
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD221
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC13
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】なめらかな塗布感及びマット感を両立する固形化粧料組成物を提供すること。
【解決手段】固形化粧料組成物は、(A)融点80℃以上の非極性ワックスと、(B)極性ワックスと、(C)液状油分と、を含む。非極性ワックスと極性ワックスの総量が、化粧料組成物の質量に対して23質量%~40質量%である。極性ワックスは、非極性ワックスと極性ワックスの総量に対して20質量%~60質量%である。非着色顔料が化粧料組成物の質量に対して15質量%以下である。非極性ワックス、極性ワックス、及び液状油分からなる第1の混合物及び非極性ワックス及び液状油分からなる第2の混合物において液状油分の種類及び含有率が同じであり、第1の混合物において非極性ワックスと極性ワックスの質量比が3:2であるとき、第1の混合物の30℃における針入硬度は、第2の混合物の30℃における針入硬度よりも低い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非極性ワックスと、
(B)極性ワックスと、
(C)液状油分と、を含み、
前記非極性ワックスと前記極性ワックスの総量が、化粧料組成物の質量に対して23質量%~40質量%であり、
前記極性ワックスは、前記非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して20質量%~60質量%であり、
非着色顔料が化粧料組成物の質量に対して15質量%以下であり、
前記非極性ワックス、前記極性ワックス、及び前記液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第1の混合物とし、
前記非極性ワックス及び前記液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第2の混合物とし、
前記第1の混合物及び前記第2の混合物において前記液状油分の種類及び含有率が同じであり、
前記第1の混合物において前記非極性ワックスと前記極性ワックスの質量比が3:2であるとき、
前記第1の混合物の30℃における針入硬度は、前記第2の混合物の30℃における針入硬度よりも低い、固形化粧料組成物。
【請求項2】
前記非極性ワックスは分岐鎖を有する炭化水素である、請求項1に記載の固形化粧料組成物。
【請求項3】
前記極性ワックスの融点は45℃~90℃である、請求項1又は2に記載の固形化粧料組成物。
【請求項4】
前記非極性ワックスは、少なくとも1種の非極性ワックスを含み、
前記少なくとも1種の非極性ワックスの融点は80℃以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固形化粧料組成物。
【請求項5】
前記極性ワックスは、ミツロウ、モクロウ、水添ヒマシ油、及びトリ酢酸テトラステアリン酸スクロースからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~4のいずれか一項に記載の固形化粧料組成物。
【請求項6】
前記液状油分が化粧料組成物の質量に対して55質量%~75質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の固形化粧料組成物。
【請求項7】
前記液状油分は、炭化水素油、シリコーン油及びエステル油からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の固形化粧料組成物。
【請求項8】
前記液状油分の粘度が100cSt以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の固形化粧料組成物。
【請求項9】
唇用化粧料に適用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の固形化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固形の化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固形化粧料の1つとして、例えば、口紅がある。口紅には、使用者の趣向や流行に応じて、口唇に塗布した口紅が光沢のある(つやのある)ものからマット感のある(つやのない)ものまで存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、つやのない口紅化粧料が記載されている。特許文献1に記載のスティック状口紅化粧料は、粉末20~50重量%と粘度が5~8csの鎖状のジメチルポリシロキサン20~50重量%を含有し、極性ワックスとしてキャンデリラロウが使用され、体質顔料としてカオリンを25~30重量%含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は、本開示の観点から与えられる。
【0006】
口唇に塗布した口紅にマット感を出すためには、一般的には、特許文献1に記載のスティック状口紅化粧料のように、着色顔料以外の粉末の含有率を高くしたり、あるいは、固化剤の含有率を高くしたりすることが行われる。しかしながら、着色顔料以外の粉末及び固化剤の含有率を高くすると、なめらかな塗布感が失われてしまう。
【0007】
そこで、なめらかな塗布感及びマット感を両立する固形化粧料組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1視点によれば、(A)融点80℃以上の非極性ワックスと、(B)極性ワックスと、(C)液状油分と、を含む固形化粧料組成物が提供される。非極性ワックスと極性ワックスの総量が、化粧料組成物の質量に対して23質量%~40質量%である。極性ワックスは、非極性ワックスと極性ワックスの総量に対して20質量%~60質量%である。非着色顔料が化粧料組成物の質量に対して15質量%以下である。非極性ワックス、極性ワックス、及び液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第1の混合物とし、非極性ワックス及び液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第2の混合物とし、第1の混合物及び第2の混合物において液状油分の種類及び含有率が同じであり、第1の混合物において非極性ワックスと極性ワックスの質量比が3:2であるとき、第1の混合物の30℃における針入硬度は、第2の混合物の30℃における針入硬度よりも低い。
【発明の効果】
【0009】
本開示の油性固形化粧料組成物によれば、塗布領域にマット感を出すことができる。また、マット感を出しながらも、なめらかな塗布感を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】試験例1~20における極性ワックスの含有率と硬度の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0012】
上記第1視点の好ましい形態によれば、非極性ワックスは分岐鎖を有する炭化水素である。
【0013】
上記第1視点の好ましい形態によれば、極性ワックスの融点は45℃~90℃である。
【0014】
上記第1視点の好ましい形態によれば、非極性ワックスは、少なくとも1種の非極性ワックスを含む。少なくとも1種の非極性ワックスの融点は80℃以上である。
【0015】
上記第1視点の好ましい形態によれば、極性ワックスは、ミツロウ、モクロウ、水添ヒマシ油、及びトリ酢酸テトラステアリン酸スクロースからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0016】
上記第1視点の好ましい形態によれば、液状油分が化粧料組成物の質量に対して55質量%~75質量%である。
【0017】
上記第1視点の好ましい形態によれば、液状油分は、炭化水素油、シリコーン油及びエステル油からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
上記第1視点の好ましい形態によれば、液状油分の粘度が100cSt以下である。
【0019】
上記第1視点の好ましい形態によれば、固形化粧料組成物は唇用化粧料に適用される。
【0020】
以下の説明において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレンの略記で、POE又はPOPの後ろのカッコ内の数字は当該化合物中におけるPOE基又はPOP基の平均付加モル数を表す。
【0021】
本開示において「実質量」とは、その化合物の添加による作用効果が生じ得る量をいう。
【0022】
本開示の第1実施形態に係る固形化粧料組成物について説明する。
【0023】
本開示において「固形」とは、大気圧下、25℃で固体を維持可能なものをいう。本開示において「液状」とは、大気圧下、25℃で流動性を有するものをいう。
【0024】
本開示の固形化粧料組成物は、(A)非極性ワックスと、(B)極性ワックスと、(C)液状油分と、を含む。
【0025】
[(A)非極性ワックス]
非極性ワックスは、例えば、分岐鎖を有する炭化水素ワックスとすることができる。このような炭化水素ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等を挙げることができる。非極性ワックスは2種以上の非極性ワックスの混合物とすることができる。非極性ワックスは、例えば、マイクロクリスタリンワックス及びポリエチレンワックスの混合物とすることができる。
【0026】
非極性ワックスの融点は80℃以上であると好ましい。非極性ワックスの融点が80℃未満であると、固形化粧料を塗布した時のマット感を得ることができない。非極性ワックスの融点は100℃以下とすることができる。非極性ワックスが混合物である場合、上記融点は混合物の融点である。ワックスの融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定することができる。
【0027】
非極性ワックスは、固形化粧料組成物の質量に対して、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、又は15質量%以上とすることができる。非極性ワックスは、固形化粧料組成物の質量に対して、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下とすることができる。
【0028】
[(B)極性ワックス]
極性ワックスは、例えば、炭化水素ワックス以外のワックスとすることができる。
【0029】
極性ワックスは、非極性ワックスと混合すると、非極性ワックスの硬度を低下できるものであると好ましい。例えば、非極性ワックス、極性ワックス、及び液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第1の混合物とする。非極性ワックス及び液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第2の混合物とする。非極性ワックスは上述の成分(A)とする。第1の混合物における非極性ワックスと極性ワックスの総量の質量割合と、第2の混合物における非極性ワックスの質量割合とは同じとする。当該質量割合は、例えば、混合物の質量に対して25質量%とすることができる。第1の混合物及び第2の混合物において液状油分の種類及び含有率が同じとする。液状油分は、例えば、後述する成分(C)とする。第1の混合物において非極性ワックスと極性ワックスの質量比は、非極性ワックス:極性ワックス=3:2とする。第1の混合物及び第2の混合物について、レオメーターを用い、感圧軸1φ、針入速度2cm/min、針入度10mm、30℃で硬度を測定する。第1の混合物の30℃における針入硬度は、第2の混合物の30℃における針入硬度よりも低くなるような極性ワックスを選択すると好ましい。
【0030】
極性ワックスは、例えば、ミツロウ、モクロウ、水添ヒマシ油、及びトリ酢酸テトラステアリン酸スクロースからなる群から選択される少なくとも1つとすることができる。
【0031】
キャンデリラロウは、固形化粧料組成物の質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0質量%であると好ましい。キャンデリラロウを多く含むと滑らかな塗布感が失われてしまう。
【0032】
極性ワックスの融点は45℃以上であると好ましい。極性ワックスの融点が45℃未満であると塗布領域にマット感を出しにくくなる。極性ワックスの融点は90℃以下であると好ましい。極性ワックスの融点が90℃を超えると滑らかな塗布感触が得られにくくなる。
【0033】
極性ワックスは、例えば、固形化粧料組成物の質量に対して、2質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、又は12質量%以上とすることができる。極性ワックスは、例えば、固形化粧料組成物の質量に対して、30質量%以下、25質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、15質量%以下、又は12質量%以下とすることができる。
【0034】
非極性ワックスと極性ワックスの総量は、化粧料組成物の質量に対して23質量%以上であると好ましい。非極性ワックスと極性ワックスの総量は、例えば、化粧料組成物の質量に対して25質量%以上、27質量%以上、又は30質量%以上とすることができる。非極性ワックスと極性ワックスの総量が23質量%未満であると、塗布領域にマット感を出すことができないと共に、硬度が不十分で成形できなくなってしまう。非極性ワックスと極性ワックスの総量は、化粧料組成物の質量に対して40質量%以下であると好ましい。非極性ワックスと極性ワックスの総量は、例えば、化粧料組成物の質量に対して35質量%以下、30質量%以下、又は27質量%以下とすることができる。非極性ワックスと極性ワックスの総量が40質量%を超えると滑らかな塗布感触が失われてしまう。
【0035】
極性ワックスは、非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して20質量%以上であると好ましい。極性ワックスは、例えば、非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して25質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上とすることができる。極性ワックスが非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して20質量%未満であると、塗布時のなめらかさを得ることができない。極性ワックスは、非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して60質量%以下であると好ましい。極性ワックスは、非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下とすることができる。極性ワックスが非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して60質量%を超えると塗布領域にマット感を出すことが困難となると共に、塗布中に固形化粧料が破損しやすくなってしまう。
【0036】
[(C)液状油分]
液状油分は、炭化水素油、シリコーン油及びエステル油からなる群から選択される少なくとも1つとすることができる。
【0037】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム、シクロペンタシロキサン等のシリコーン化合物等が挙げられる。
【0038】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、水添ポリデセン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0039】
液状油分は、ジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、水添ポリデセン、リンゴ酸ジイソステアリル、及びジイソステアリン酸グリセリルからなる群から選択される少なくとも1つであると好ましい。
【0040】
シリコーン油は、液状油分の質量に対して、35質量%以上とすることができる。シリコーン油は、液状油分の質量に対して、55質量%以下とすることができる。
【0041】
非極性液状油は、液状油分の質量に対して、5質量%以上とすることができる。非極性液状油は、液状油分の質量に対して、15質量%以下とすることができる。
【0042】
液状油分の粘度は3,000mPa・s以下(30℃)であると好ましい。液状油分の粘度が3,000mPa・sを超えると塗布領域にマット感を出しにくくなる。粘度は、30℃においてB型粘度計(スピンドル番号3、回転数30rpm、1分間後測定)で測定することができる。
【0043】
液状油分は、例えば、固形化粧料組成物の質量に対して、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上とすることができる。液状油分は、例えば、固形化粧料組成物の質量に対して、75質量%以下、70質量%以下、又は65質量%以下とすることができる。
【0044】
[顔料]
本開示の固形化粧料組成物は、さらに着色顔料を含むことができる。着色顔料は、有機顔料であってもよいし、無機顔料であってもよい。
【0045】
有機顔料としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤106色号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、だいだい色201号、だいだい色203号、だいだい色204号、だいだい色205号、だいだい色206号、だいだい色207号、黄色4号、黄色5号、黄色201号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色204号、黄色205号、緑色3号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、褐色201号、及び紫色201号からなる群から選択される少なくとも1つとすることができる。化粧料組成物が口紅である場合、有機顔料は、赤色104号、赤色201号、赤色202号、黄色4号、黄色5号、及び青色1号からなる群から選択される少なくとも1つであると好ましい。特に、有機顔料は赤202号を含むと好ましい。
【0046】
着色顔料は、例えば、固形化粧料組成物の質量に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上又は5質量%以上とすることができる。着色顔料は、例えば、固形化粧料組成物の質量に対して、10質量%以下、8質量%以下、又は5質量%以下とすることができる。
【0047】
本開示の固形化粧料組成物において、非着色顔料は、固形化粧料組成物の質量に対して、15質量%以下であると好ましい。非着色顔料は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下であると好ましい。非着色顔料が15質量%を超えるとなめらかな塗布感を得ることができない。本開示において非着色顔料とは、例えば、体質顔料、機能性粉体等である。非着色顔料の種類としては、例えば、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、シリカ、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリスチレン、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン等が挙げられる。
【0048】
[硬度]
本開示の固形化粧料は25gf以上の硬度を有すると好ましい。本開示の固形化粧料は80gf以下の硬度を有すると好ましい。硬度がこの範囲にあると、なめらかな塗布感を得ることができると共に、所望の形状に成形することができる。硬度は、レオメーターを用い、30℃において、感圧軸1φ、針入速度2cm/min、針入度10mmで測定することができる。
【0049】
[製造方法]
本開示の固形化粧料組成物の製造方法について説明する。本開示の固形化粧料組成物は、公知の方法で製造することができる。例えば、ワックスを加熱溶融させる。次に、液状ワックスに、その他の成分を添加して混合する。次に、混合物を冷却して所望の形状に成形する。このようにして、本開示の固形化粧料組成物を製造することができる。
【0050】
本開示の固形化粧料組成物において、相構造等が、組成及び特性によって直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではない場合がある。このような場合には、本開示の固形化粧料組成物は、その製造方法によって特定することが許されるべきものである。
【0051】
本開示の固形化粧料組成物によれば、本開示の固形化粧料組成物を塗布した領域に、つやを出さずに、マット感を出すことができる。また、マット感を出すことができる化粧料組成物であっても、重い塗布感とならずに、なめらかな塗布感を得ることができる。
【0052】
本開示の固形化粧料組成物は、例えば、口紅、リップクリーム、下地化粧料(ベースメーキャップ)、上地化粧料(ファンデーション)等に適用することができる。
【実施例0053】
本開示の固形化粧料組成物について、以下に例を挙げて説明する。しかしながら、本開示の固形化粧料組成物は以下の例に限定されるものではない。各表に示す各成分の含有率の単位は質量%である。
【0054】
[試験例1~37]
スティック形状を有する固形化粧料を作製した。各固形化粧料について、硬度を測定すると共に、マット感の有無及び塗布時のなめらかさを評価した。各試験項目の評価方法及び評価基準を以下に示す。
【0055】
評価1:硬度
硬度とは、レオテック社製レオメーターを用い、30℃に1時間放置したサンプルを、感圧軸1φ、針入速度2cm/min、針入度10mmで測定した場合の値を意味する。
【0056】
評価2:マット感および塗布時の延び広がりのなめらかさ
各試料について、専門パネル10名による使用テストを行い、塗布したときの仕上がりのマットな質感(表中では「マット感」と表記)、塗布時の延び広がりのなめらかさ(表中では「塗布時のなめらかさ」と表記)について、下記の5段階に評価し点数化し、平均値を算出することによって評価した。
【0057】
[マット感]
5:マットな仕上がりである;
4:ややマットな仕上がりである;
3:マットともつやとも言えない;
2:ややつやのある仕上がりである;
1:ツヤのある仕上がりである。
【0058】
[塗布時のなめらかさ]
5:とてもなめらかである;
4:ややなめらかである;
3:どちらともいえない;
2:なめらかではない;
1:まったくなめらかではない。
【0059】
(評価基準)
A:平均点が4.5点以上
B:平均点が3.5点以上4.5点未満
C:平均点が2.5点以上3.5点未満
D:平均点が1.5点以上2.5点未満
E:平均点が1.5点未満
【0060】
[試験例1~24]
ワックス総量を25質量%として、非極性ワックス及び極性ワックスの種類及び量を変えて固形化粧料を作製した。表1~表5に、各固形化粧料の組成及び評価を示す。
図1に、試験例1~20における極性ワックスの含有率と組成物の硬度の関係を示すグラフを示す。
【0061】
成分(B)の極性ワックスを含有していない試験例24においては、なめらかさが得られなかった。試験例24よりも成分(A)の非極性ワックス量を少なくして液状油分の量を増やした試験例23においては、なめらかさを高めることができたが、マット感が得られなかった。
【0062】
試験例1~20においては、試験例24における成分(A)の少なくとも一部を極性ワックスに置換した。極性ワックスとしてキャンデリラロウ、カルナバロウ、及びコメヌカロウを用いた試験例6~20においては、試験例25よりもマット感を高めることができたが、硬度も高くなってしまい、なめらかさを得ることができなかった。また、極性ワックスの含有量が高くなるにつれて硬度も高くなる傾向が観察された。一方、成分(B)に該当するミツロウを用いた試験例1~3においては、マット感を高められると共に、硬度も下げることができ、なめらかさを得られた。また、試験例6~20とは異なり、ミツロウの含有量が高くなるにつれて硬度が低下する傾向が確認された。試験例4及び5においては、硬度が低下し、マット感が低下した。これより、ワックス総量のうち、ミツロウが20~60%(=(B)の質量/{(A)の質量+(B)の質量}×100)であると、マット感となめらかさを両立できると考えられる。
【0063】
成分(B)の代わりに、成分(A)のうち、一部を非極性半固形油分である融点48~60℃のワセリンとした試験例21においては、マット感が得られなかった。また、同様に、成分(B)の代わりに、一部を極性半固形油分である融点33~34℃のダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)とした試験例22においてもマット感が得られなかった。この結果、粉末原料を用いず、油性成分によってマット感を高め、かつ滑らかな塗布感触を得るためには、極性ワックスは必要であると考えられる。
【0064】
図1を見ると、非極性ワックスと極性ワックスの総量を一定とした場合に、キャンデリラロウ、カルナバロウ、及びコメヌカロウの含有率が高まると、固形化粧料の硬度は横ばいか高まる傾向がある。一方、ミツロウは含有率が高まると固形化粧料の硬度は低下する傾向がある。例えば、非極性ワックスと極性ワックスとの質量比が3:2である試験例2、7、12及び17を比較すると、ミツロウを用いた試験例2だけが、極性ワックスを添加していない試験例25の硬度よりも低くなっている。したがって、極性ワックスは、非極性ワックスと混合すると、非極性ワックス単体の硬度よりも極性ワックスと非極性ワックスの混合物の硬度を低下させるものであると好ましい。なお、試験例1~20において、固形化粧料には非極性ワックスと極性ワックス以外の成分も含まれているが種類及び含有率は同一であるため、非極性ワックスと極性ワックス以外の成分は硬度変化には影響していないものと考えられる。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
[試験例25~31]
試験例1~24よりもワックス総量を減少させて試験例1~24と同様の試験を行った。表6に、各固形化粧料の組成及び評価を示す。
【0071】
ワックス総量が20質量%である試験例25、26においては、マット感が十分得られなかった。また、試験例27、28においては硬度が低くなりすぎてしまい、スティック状への成形が不可能であった。ワックス総量が15質量%である試験例29~31においても、硬度が低くなりすぎてしまい、スティック状への成形が不可能であった。これより、ワックスの総量は23質量%以上が好ましいと考えられる。
【0072】
【0073】
[試験例32~37]
成分(B)の種類を変えて試験例1~24と同様の試験を行った。表7に、各固形化粧料の組成及び評価を示す。
【0074】
成分(B)としてモクロウ、水添ヒマシ油及びトリ酢酸テトラステアリン酸スクロースを使用すると、マット感及びなめらかさを両立することができた。しかしながら、ミリスチン酸ミリスチル、ホホバエステル及びヒドロキシステアリン酸を使用すると、硬度が高くなり、なめらかさを達成することができなかった。
【0075】
【0076】
本発明の固形化粧料組成物は、上記実施形態及び実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0077】
本発明のさらなる課題、目的及び形態(変更形態含む)は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【0078】
本書に記載した数値範囲については、別段の記載のない場合であっても、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし範囲が本書に具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0079】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。各付記は、特許請求の範囲に記載の各請求項と組み合わせることもできる。
[付記1]
(A)融点80℃以上の非極性ワックスと、
(B)極性ワックスと、
(C)液状油分と、を含み、
前記非極性ワックスと前記極性ワックスの総量が、化粧料組成物の質量に対して23質量%~40質量%であり、
前記極性ワックスは、前記非極性ワックスと前記極性ワックスの総量に対して10質量%~70質量%であり、
前記極性ワックスは、ミツロウ、モクロウ、水添ヒマシ油、及びトリ酢酸テトラステアリン酸スクロースからなる群から選択される少なくとも1つである、固形化粧料組成物。
[付記2]
前記非極性ワックス、前記極性ワックス、及び前記液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第1の混合物とし、
前記非極性ワックス及び前記液状油分を溶融混合した後に固化させた混合物を第2の混合物とし、
前記第1の混合物及び前記第2の混合物において前記液状油分の種類及び含有率が同じであり、
前記第1の混合物において前記非極性ワックスと前記極性ワックスの質量比が3:2であるとき、
前記第1の混合物の30℃における針入硬度は、前記第2の混合物の30℃における針入硬度よりも低い、付記に記載の固形化粧料組成物。
[付記3]
本開示の固形化粧料組成物を唇用化粧料に適用する、固形化粧料組成物の使用方法。
[付記4]
本開示の固形化粧料組成物を唇に塗布する、固形化粧料組成物の使用方法。
[付記5]
本開示の固形化粧料組成物をつや消し出し化粧料に適用する、固形化粧料組成物の使用方法。
本開示の固形化粧料組成物は、例えば、肌に適用する化粧料等に適用することができる。例えば、本開示の固形化粧料組成物は、口紅、リップクリーム、下地化粧料、上地化粧料、メイクアップ化粧料、制汗剤、防臭剤、日焼け止め化粧料、スキンケア剤等に適用することができる。