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特開2023-62546延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062546
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20230426BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20230426BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20230426BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230426BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20230426BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20230426BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/6555
H01M10/653
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
F16L59/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172585
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】傳刀 賢二
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC03
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE03
5H031EE04
5H031KK02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の熱源同士の間の伝熱を低減し、優れた延焼防止性能を有する延焼防止シート及びそれを備えるバッテリーを提供する。
【解決手段】複数の熱源同士の間に少なくとも配置され、熱源が過熱状態の際に他の熱源への伝熱を抑制して延焼を防止可能な延焼防止シート1であって、ゴム状弾性体からなるゴムシート2と、ゴムシート2の両面に積層され、隣り合う複数の熱源の間の伝熱を低減可能な断熱シート3と、ゴムシート2と断熱シート3との間に介在し、ゴムシート2の両面に断熱シート3を接着する接着層4と、を備える。接着層4は、パーライト、アルミナホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、マイカ及びグラスファイバーのうち1以上からなるフィラーを含有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源同士の間に少なくとも配置され、前記熱源が過熱状態の際に他の熱源への伝熱を抑制して延焼を防止可能な延焼防止シートであって、
ゴム状弾性体からなるゴムシートと、
前記ゴムシートの両面に積層され、隣り合う複数の前記熱源の間の伝熱を低減可能な断熱シートと、
前記ゴムシートと前記断熱シートとの間に介在し、前記ゴムシートの両面に前記断熱シートを接着する接着層と、
を備え、
前記接着層は、パーライト、アルミナホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、マイカおよびグラスファイバーのうち1以上からなるフィラーを含有することを特徴とする延焼防止シート。
【請求項2】
前記フィラーは、パーライトおよびマイカのうち1以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の延焼防止シート。
【請求項3】
前記接着層は、
前記ゴムシートの一方の面に前記断熱シートを接着する第1接着層と、
前記ゴムシートの他方の面に前記断熱シートを接着する第2接着層と、
から構成され、
前記第1接着層と前記第2接着層とは、互いに異なる前記フィラーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の延焼防止シート。
【請求項4】
前記ゴムシートは、多孔体から主に構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の延焼防止シート。
【請求項5】
前記ゴムシートは、シリコーンゴムの発泡シートであることを特徴とする請求項4に記載の延焼防止シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の延焼防止シートを、バッテリーセル同士の間およびバッテリーセルと筐体との間の少なくとも一方に備えるバッテリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。しかしながら、電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置等の課題がある。
【0003】
上記自動車用バッテリー等の各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等が生じる虞がある。近年、自動車用バッテリーとして、筐体内に複数のバッテリーセルを並べて装着したものが知られている。このような複数のバッテリーセルが並べて装着されたバッテリーにおいて、1つのバッテリーセルから発火や発煙等が生じた場合、周囲のバッテリーセルに熱が伝わることにより、さらに大きな発火、発煙、爆発等の不具合が生じる虞がある。このような不具合による被害を最小限に抑えるため、異常高温になったバッテリーセルの熱を周囲のバッテリーセルに伝え難くする方法が検討されている。例えば、複数のバッテリーセル同士の間に耐火材や断熱層等の延焼防止シートを設ける方法が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-206604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来から公知の延焼防止シートは、相応の特性を発揮できるものの、さらなる断熱性能の向上が求められている。すなわち、複数のバッテリーセル間の熱伝導をさらに低減し、延焼防止機能に優れた延焼防止シートが求められている。上記要請は、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源にも通じる要請である。また、本発明は、環境に配慮した電気自動車に搭載される二次電池に利用可能であり、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という本出願人の持続可能な開発目標の達成にも資する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の熱源同士の間の伝熱を低減し、優れた延焼防止性能を有する延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る延焼防止シートは、複数の熱源同士の間に少なくとも配置され、前記熱源が過熱状態の際に他の熱源への伝熱を抑制して延焼を防止可能な延焼防止シートであって、ゴム状弾性体からなるゴムシートと、前記ゴムシートの両面に積層され、隣り合う複数の前記熱源の間の伝熱を低減可能な断熱シートと、前記ゴムシートと前記断熱シートとの間に介在し、前記ゴムシートの両面に前記断熱シートを接着する接着層と、を備え、前記接着層は、パーライト、アルミナホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、マイカおよびグラスファイバーのうち1以上からなるフィラーを含有する。
(2)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記フィラーは、パーライトおよびマイカのうち1以上を含んでも良い。
(3)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記接着層は、前記ゴムシートの一方の面に前記断熱シートを接着する第1接着層と、前記ゴムシートの他方の面に前記断熱シートを接着する第2接着層と、から構成され、前記第1接着層と前記第2接着層とは、互いに異なる前記フィラーを含有しても良い。
(4)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記ゴムシートは、多孔体から主に構成されても良い。
(5)別の実施形態に係る延焼防止シートにおいて、好ましくは、前記ゴムシートは、シリコーンゴムの発泡シートであっても良い。
(6)上記目的を達成するための一実施形態に係るバッテリーは、上述のいずれか1つの延焼防止シートを、バッテリーセル同士の間およびバッテリーセルと筐体との間の少なくとも一方に備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の熱源同士の間の伝熱を低減し、優れた延焼防止性能を有する延焼防止シートおよびそれを備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る延焼防止シートの斜視図を示す。
図2図2は、図1の延焼防止シートの平面図、側面図および当該側面図の一部Aの拡大図をそれぞれ示す。
図3図3は、第2実施形態に係る延焼防止シートの図2と同視の平面図、側面図および当該側面図の一部Bの拡大図をそれぞれ示す。
図4図4は、第1実施形態に係る延焼防止シートを備えるバッテリーの縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る延焼防止シートの斜視図を示す。図2は、図1の延焼防止シートの平面図、側面図および当該側面図の一部Aの拡大図をそれぞれ示す。
【0012】
この実施形態に係る延焼防止シート1は、例えば、バッテリー内部の複数のバッテリーセル等の複数の熱源同士の間に少なくとも配置され、熱源が過熱状態の際に他の熱源への伝熱を抑制して延焼を防止可能なシートである。延焼防止シート1は、ゴム状弾性体からなるゴムシート2と、ゴムシート2の両面に積層され、隣り合う複数の熱源の間の伝熱を低減可能な断熱シート3と、ゴムシート2と断熱シート3との間に介在し、ゴムシート2の両面に断熱シート3を接着する接着層4と、を備える。次に、延焼防止シート1の各構成要素について説明する。
【0013】
(1)ゴムシート
ゴムシート2は、ゴム状弾性体からなるシートである。「ゴム状弾性体」という文言に代えて「弾性体」あるいは「クッション部材」という文言を使用しても良い。ゴムシート2は、複数の熱源同士の間にあってクッション性を発揮させて熱源と断熱シート3との密着性を高める機能と、断熱シート3に加わる荷重によって断熱シート3が破損しないようにする保護部材としても機能とを有する。ゴムシート2は、主に多孔体から構成され、好ましくは多孔性のゴムシートである。ここで、「主に」とは、50%を超える体積を占めることを意味する。以後、「主に」の意味も同様である。ゴムシート2は、多孔体のみ、多孔体が90%、または多孔体が80~51%を占めるシートでも良い。多孔性のゴムシートは、その内部に気泡を有するスポンジ状の部材である。スポンジの孔内の空気は、優れた断熱性を有している。このため、スポンジ状の部材は、延焼防止シート1の低熱伝導性に寄与する。ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。ゴムの中では比較的耐熱性の高いシリコーンゴムをより好適に用いることができる。すなわち、ゴムシート2は、最も好ましくは、シリコーンゴムの発泡シートである。ゴムシート2は、より延焼防止性能を高めるために、ハロゲン化合物、リン化合物、白金、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機化合物を含有していても良い。ゴムシート2の厚さは、特に制約はないが、好ましくは1~20mm、より好ましくは2~8mmである。
【0014】
(2)断熱シート
断熱シート3は、複数の熱源同士の間の延焼を有効に防止する機能を有する。断熱シート3は、耐熱性および難燃性に優れたシートであることが好ましく、ゴムシート2より耐熱性が高く、また難燃性の高い材料で構成されていることがより好ましい。断熱シート3は、その構成材料を問わないが、例えば、不織布、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等の繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等のポリオレフィンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォーム、シリコーンフォーム等のプラスチック系断熱材、エアロゲル等のナノ多孔体等が挙げられる。また、断熱シート3は、シート状繊維塊を担持体として、シリカエアロゲルを含侵担持させたシリカエアロゲルシートであっても良い。シート状繊維塊としては、ガラス繊維; シリカ繊維、アルミナ繊維、チタニア繊維、炭化ケイ素繊維等のセラミックファイバー; 金属繊維; ロックウール、バサルト繊維等の人造鉱物繊維; 炭素繊維; ウイスカー等を抄造法にて紙状またはボード状にするか、適宜バインダーを添加してシート状に成形した不織布、マット、フェルト等のシート状成形物を用いることができる。これらのうち、シリカエアロゲルの断熱効果を有効に得るためには、シリカエアロゲルの耐熱温度(750℃程度)でも担持体としての形状を保持できる担持体がより好ましい。シリカエアロゲルの空孔率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。シリカエアロゲルは、単にシート状繊維塊中に含侵され分散しているだけでも良いし、バインダー等を用いてシート状繊維塊の構成繊維状に担持されるようにしても良い。また、断熱シート3は、シリカエアロゲル以外に、ステアタイト(MgO・SiO)、ジルコニア(ZrO)、コージライト(2MgO・2Al・5SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、又はムライト(3Al・2SiO)の内の1又は2以上を備えたシートであっても良い。
【0015】
断熱シート3は、導電性に優れるか否かは問わない。断熱シート3は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02~3mmが好ましく、0.1~1mmがより好ましい。断熱シート3の厚さは、好ましくは、ゴムシート2の厚さに比べて小さい。ただし、断熱シート3は、シートの強度、可撓性および耐熱性を総合的に考慮して、その厚さが決定されるのが好ましい。
【0016】
(3)接着層
接着層4は、ゴムシート2と断熱シート3とを接着する接着剤またはその硬化物を含む層である。接着剤としては、ゴムシート2と断熱シート3とを接着可能であれば特に制約されないが、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、メラミン系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤等を用いることができる。これらの中でも、耐熱性およびゴム弾性に優れるシリコーン系接着剤を用いることが好ましい。接着層4は、パーライト、アルミナホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、マイカおよびグラスファイバーのうち1以上からなるフィラー(以後、「低熱伝導性フィラー」とも称する。)を含有する。これらの中でも、低熱伝導性フィラーとしては、パーライトおよびマイカのうち1以上を含有することが好ましい。接着層4中の低熱伝導性フィラーの含有量は、接着剤100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましく、5質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。接着層4中の低熱伝導性フィラーの含有量を上記の範囲とすることにより、接着強度を十分に維持した状態で、熱伝導性を低減することができる。
【0017】
このように構成された延焼防止シート1によれば、ゴムシート2と断熱シート3とを接着する接着層4に上述の低熱伝導性フィラーを含有することにより接着層4の熱伝導性が低減されるため、複数の熱源同士の間の伝熱を低減することができ、延焼防止性能を向上させることができる。
【0018】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る延焼防止シートについて説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0019】
図3は、第2実施形態に係る延焼防止シートの図2と同視の平面図、側面図および当該側面図の一部Bの拡大図をそれぞれ示す。
【0020】
第2実施形態に係る延焼防止シート1aは、第1実施形態に係る延焼防止シート1と類似の構造を有するが、接着層4に代えて第1接着層4aおよび第2接着層4bを備える点において、第1実施形態に係る延焼防止シート1と異なる。
【0021】
第1接着層4aは、ゴムシート2の一方の面(図3では右側の面)と断熱シート3との間に介在し、ゴムシート2の一方の面に断熱シート3を接着する接着剤またはその硬化物を含む層である。第2接着層4bは、ゴムシート2の他方の面(図3では左側の面)と断熱シート3との間に介在し、ゴムシート2の他方の面に断熱シート3を接着する接着剤またはその硬化物を含む層である。第1接着層4aおよび第2接着層4bを構成する接着剤としては、接着層4を構成する接着剤の上記好適な選択肢のうち1または2以上の材料が好ましく、これらの中でもシリコーン系接着剤がより好ましい。第1接着層4aおよび第2接着層4bを構成する接着剤は、互いに異なる材料であっても良いし、同一材料であっても良い。第1接着層4aおよび第2接着層4bは、接着層4と同様に、上記低熱伝導性フィラーを含有する。第1接着層4aおよび第2接着層4bに含有される低熱伝導性フィラーとしては、接着層4に含有される低熱伝導性フィラーの上記好適な選択肢のうち1または2以上の材料が好ましい。この実施形態において、第1接着層4aと第2接着層4bとは、互いに異なる低熱伝導性フィラーを含有する。より具体的には、第1接着層4aは、第2接着層4bに含有される低熱伝導性フィラーと異なる種類の1または2以上の低熱伝導性フィラーを含有する。また、第1接着層4aは、第2接着層4bに含有される低熱伝導性フィラーのうち少なくとも1つを含む1または2以上の低熱伝導性フィラーを、第2接着層4bと異なる組成にて含有していても良い。第1接着層4aおよび第2接着層4b中の低熱伝導性フィラーの含有量は、上記接着層4中の低熱伝導性フィラーの含有量と同範囲内であることが好ましい。このように構成された延焼防止シート1aもまた、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係る延焼防止シートの使用例として、第1実施形態に係る延焼防止シート1を、熱源の一例としてのバッテリーセル同士の間に備えるバッテリーについて説明する。
【0023】
図4は、第1実施形態に係る延焼防止シートを備えるバッテリーの縦断面図を示す。
【0024】
ここで、「縦断面図」は、バッテリーの筐体内部のバッテリーセルの長さ方向(すなわち、高さ方向)にバッテリーを切断した断面を意味する。また、図4において、バッテリーは、12個のバッテリーセルを備えているが、バッテリーセルの数は特に限定されない。
【0025】
図4に例示するバッテリー40は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル30(熱源の一例)を備える。バッテリー40は、一方に開口する有底型の筐体41を備える。筐体41は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル30は、筐体41の内部44に配置される。バッテリーセル30の上方には、電極が突出して設けられている。複数のバッテリーセル30は、好ましくは、筐体41内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体41の底部42には、冷却剤45の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ43が備えられている。冷却剤45は、冷却媒体あるいは冷却材と称しても良い。前述の延焼防止シート1は、バッテリーセル30同士の間およびバッテリーセル30と筐体41との間の少なくとも一方に備えられる。この実施形態に係るバッテリー40は、バッテリーセル30とバッテリーセル30との間、およびバッテリーセル30と筐体41との間の両方に、延焼防止シート1を挟んでいる。
【0026】
バッテリー40において、延焼防止シート1は、好ましくは、その最も広い面がバッテリーセル30の最も広い側面に接するように配置される。図4に例示するバッテリー40では、筐体41の内部44の側面とバッテリーセル30との間、および隣接するバッテリーセル30同士の間に、それぞれ1つの延焼防止シート1が配置されている。ただし、バッテリー40において、延焼防止シート1は、少なくとも隣接する2つのバッテリーセル30の間に配置されていれば、すべての隣接するバッテリーセル30の間に配置されていなくとも良い。また、延焼防止シート1は、筐体41の内部44の側面とバッテリーセル30との間に配置されていなくとも良い。また、バッテリー40において、隣接するバッテリーセル30同士の間に、複数の延焼防止シート1が配置されていても良い。
【0027】
この実施形態では、延焼防止シート1は、バッテリーセル30の最も広い面(側面)と略同一の大きさであるが、当該側面より大きく、または小さくとも良い。ただし、延焼防止性能を高めるためには、延焼防止シート1は、バッテリーセル30の側面と同一若しくは当該側面より大きいのが好ましい。
【0028】
このように、延焼防止シート1は、バッテリー40内部の複数のバッテリーセル30同士の間に配置されることにより、バッテリーセル30が過熱状態の際であっても他のバッテリーセル30への伝熱を抑制することができる。また、延焼防止シート1は、接着層4に低熱伝導性フィラーを含有するため、複数のバッテリーセル30同士の間の伝熱をさらに低減することができ、延焼防止性能を向上させることができる。なお、バッテリー40は、延焼防止シート1に代えて延焼防止シート1aを、バッテリーセル30同士の間に備えていても良い。
【0029】
<その他の実施形態>
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0030】
例えば、延焼防止シート1,1aは、略直方体形状のシートであるが、これに制約されず、例えば、楕円、円、三角形、多角形状等であっても良い。延焼防止シート1,1aの形状は、熱源の形状や用途等に応じて、適宜設計されることが好ましい。
【0031】
また、熱源は、バッテリーセル30のみならず、回路基板や電子機器本体等の熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源としては、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。
【実施例0032】
次に、本発明の実施例を、比較例と比較しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
1.接着層の主な原料
(1)接着剤
延焼防止シートの接着層の構成材料となる接着剤として、シリコーン接着剤を用いた。シリコーン接着剤には、信越化学工業(株)製のKE-2090-10AおよびKE-2090-10Bを用いた。
(2)低熱伝導性フィラー
延焼防止シートの接着層の構成材料となる低熱伝導性フィラーとして、パーライト、アルミナホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、マイカおよびグラスファイバーを用いた。パーライトには、昭和化学工業(株)製のB-04、B-04SおよびB-05を用いた。アルミナホウケイ酸ガラスには、太平洋セメント(株)製のセルスフィアーズを用いた。ソーダ石灰ホウケイ酸ガラスには、スリーエムジャパン(株)製のiM16K、iM32K、S22、S38、およびS32HSを用いた。マイカには、イメリススペシャリティーズジャパン(株)製のマイカを用いた。グラスファイバーには、旭ファイバーグラス(株)製のグラスファイバーを用いた。
【0034】
2.評価方法
(断熱性能試験)
接着層の断熱性能試験は、まず、200℃に予熱したホットプレート上にサンプルを置き、日本アビオニクス(株)製のサーモグラフィカメラを用いて、サンプルの断面の5分間の温度分布を測定した。そして、熱伝導対を用いて300秒後のサンプルの表面温度を測定した。
【0035】
3.接着層のサンプルの製造
<実施例>
(1)実施例1
シリコーン接着剤(品番:KE-2090-10A)50質量部およびシリコーン接着剤(品番:KE-2090-10A)50質量部に、フィラーとしてパーライト(品番:B-04)10質量部を添加し、フィラーが分散するように混錬した。ここで、1質量部は、0.1gに相当する。次に、東洋精機(株)製のプレス機を用いて、170℃に加熱した状態で、0.5~0.6MPaの圧力で5分間加圧加熱し、縦40mm×横40mm×厚さ5mmのサンプルを作製した。サンプルは、上記評価方法にて評価した。
(2)実施例2
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、パーライト(品番:B-04S)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(3)実施例3
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、パーライト(品番:B-05)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(4)実施例4
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス(品番:iM16K)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(5)実施例5
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス(品番:iM32K)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(6)実施例6
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス(品番:S-22)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(7)実施例7
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス(品番:S-32HS)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(8)実施例8
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス(品番:S-38)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(9)実施例9
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、グラスファイバー10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(10)実施例10
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、アルミナホウケイ酸ガラス(品名:セルスフィアーズ)10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
(11)実施例11
フィラーとして、パーライト(品番:B-04)10質量部に代えて、マイカ10質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。
【0036】
<比較例>
(1)比較例1
パーライト(品番:B-04)10質量部を用いず、実施例1と同様の条件でサンプルを作製し、評価した。比較例1のサンプルは、フィラーを含有しない接着層のサンプルである。
【0037】
4.結果
表1~2に、実施例および各比較例の評価結果を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
実施例1~11については、比較例1に比べて、加熱後から300秒までの温度が同等若しくは低くなった。特に、実施例1~11については、比較例1に比べて、加熱後から120秒後までの温度が低くなった。
【0041】
以上の結果から、実施例1~11と比較例1との比較から、接着層の構成材料に低熱伝導性フィラーを含有することにより、断熱性能が向上することが確認できた。また、実施例1~11と比較例1との比較から、接着層の構成材料に低熱伝導性フィラーを含有することにより、所定時間(例えば、120秒)までの熱伝導を遅延させる効果が確認できた。実施例1~3,11と比較例1との比較から、低熱伝導性フィラーとして、パーライトまたはマイカを接着層の構成材料に含有することにより、高い断熱性能を示すことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る延焼防止シートは、例えば、自動車用バッテリー、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリー等の各種バッテリーや、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品等の各種電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,1a・・・延焼防止シート、2・・・ゴムシート、3・・・断熱シート、4・・・接着層、4a・・・第1接着層、4b・・・第2接着層、30・・・バッテリーセル(熱源の一例)。
図1
図2
図3
図4