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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006255
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】建造物及び複合建造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/04 20060101AFI20230111BHJP
   E04H 3/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E04H1/04 A
E04H3/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108763
(22)【出願日】2021-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】521289364
【氏名又は名称】パワー・ジェネレーション・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 征喜
(57)【要約】
【課題】集合住宅において、効率的に車両を居住部に隣接して駐車することのできる建造物を提供することを目的とする。
【解決手段】建造物1は、建造物本体10における一つの階に形成され、居住者Hが居住する2階以上の居住階を備え、居住者Hが出入りする人用玄関部21と、人用玄関部21とは異なる居住階に配置された勝手口部22と、を具備する複数の住宅部20と、各住宅部20の勝手口部22と夫々連通し、各住宅部20に居住する居住者Hが使用する車両Cを駐車可能な各住宅部20に隣接して配置された住宅部用駐車場部30と、建造物本体10の外部と住宅部用駐車場部30とを繋ぐ、車両Cで通行可能な住宅部側車両専用道路部40と、建造物本体10の外部と人用玄関部21とを繋ぐ、居住者Hが歩行にて通行可能な住宅部側歩行者専用道路部50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの建造物本体を有し、前記建造物本体は、居住者が居住する居住空間部と前記居住者が使用する車両を駐車可能な住宅部用駐車場部とを具備する住宅部が複数配置された階を複数階備えている建造物であって、
前記住宅部は、前記居住空間部内において2階以上の居住階を含むものであり、少なくともいずれか一つの居住階には、当該住宅部内と当該住宅部の外との間で前記居住者の出入りを可能とする人用玄関部が形成されており、一方、前記人用玄関部とは異なる居住階には、当該住宅部内において前記居住空間部と行き来自在な住宅部用駐車場部が設けられており、かつ当該住宅部用駐車場部内と当該住宅部の外との間で前記車両の出入りを可能とする駐車場出入口部が形成されており、
さらに前記建造物本体は、
当該建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と各駐車場出入口部とを繋ぐ住宅部側車両専用道路部と、
前記建造物本体の複数階にわたって居住者が歩行可能に形成され、当該建造物本体外と各人用玄関部とを繋ぐ住宅部側歩行者専用道路部と、
を備え、
前記建造物本体内における一の階において、前記住宅部側車両専用道路部の高さ位置と前記住宅部側歩行者専用道路部の高さ位置とが異なり、かつ前記高さ位置が異なる箇所で当該住宅部側車両専用道路部と当該住宅部側歩行者専用道路部とが同一空間内に臨んでなる
ことを特徴とする建造物。
【請求項2】
一つの建造物本体を有し、前記建造物本体は、居住者が居住する複数の住宅部と、非居住領域である商業施設とが配置された階を複数階備えている複合建造物であって、
前記商業施設が配置される商業施設部と、
複数階にわたって形成された、商業施設利用者が使用する車両を駐車可能な商業施設部用駐車場と、
前記建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と前記商業施設部用駐車場とを繋ぐ商業施設部側道路部と、
各住宅部において形成された、各住宅部に居住する居住者が使用する車両を駐車可能な住宅部用駐車場部と、
前記建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と前記住宅部用駐車場部とを繋ぐ住宅部側車両専用道路部と、
前記建造物本体の複数階にわたって居住者が歩行可能に形成され、当該建造物本体外と各住宅部に設けられた人用玄関部とを繋ぐ住宅部側歩行者専用道路部と、
を備え、
前記建造物本体内において、前記商業施設部側道路部と前記住宅部側車両専用道路部とが接続されていないことで互いに車両の往来が不可とされてなる
ことを特徴とする複合建造物。
【請求項3】
一つの建造物本体を有し、前記建造物本体は、居住者が居住する居住空間部と前記居住者が使用する車両を駐車可能な住宅部用駐車場部とを具備する複数の住宅部と、非居住領域である商業施設とが配置された階を複数階備えている複合建造物であって、
前記商業施設が配置される商業施設部と、
複数階にわたって形成された、商業施設利用者が使用する車両を駐車可能な商業施設部用駐車場と、
前記建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と前記商業施設部用駐車場とを繋ぐ商業施設部側道路部と、
を備え、
前記住宅部は、前記居住空間部内において2階以上の居住階を含むものであり、少なくともいずれか一つの居住階には、当該住宅部内と当該住宅部の外との間で前記居住者の出入りを可能とする人用玄関部が形成されており、一方、前記人用玄関部とは異なる居住階には、当該住宅部内において前記居住空間部と行き来自在な住宅部用駐車場部が設けられており、かつ当該住宅部用駐車場部内と当該住宅部の外との間で前記車両の出入りを可能とする駐車場出入口部が形成されており、
さらに前記建造物本体は、
当該建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と各駐車場出入口部とを繋ぐ住宅部側車両専用道路部と、
前記建造物本体の複数階にわたって居住者が歩行可能に形成され、当該建造物本体外と各人用玄関部とを繋ぐ住宅部側歩行者専用道路部と、
を備え、
前記建造物本体内における一の階において、前記住宅部側車両専用道路部の高さ位置と前記住宅部側歩行者専用道路部の高さ位置とが異なり、かつ前記高さ位置が異なる箇所で当該住宅部側車両専用道路部と当該住宅部側歩行者専用道路部とが同一空間内に臨んでなり、
前記建造物本体内において、前記商業施設部側道路部と前記住宅部側車両専用道路部とが接続されていないことで互いに車両の往来が不可とされてなる
ことを特徴とする複合建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集合住宅において車両を住宅部内に駐車することのできる建造物、及び住宅部に加えて商業施設部が併設された複合建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの一般的な集合住宅においては、車両を駐車しておく駐車場は建造物の外に隣接して配置されたり、建造物の下層に集中して配置されたりしていた。
【0003】
また、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、車両をエレベータによって居住区域に隣接した駐車施設まで運搬するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-262855号公報
【特許文献2】実用新案登録第3221158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エレベータを用いて車両を運搬するものにあっては、1車両ずつ各戸まで運搬しなければならないため、例えば出勤の時間帯に混雑が生じて利便性に劣る問題がある。また、このような従来構成では、車両用のエレベータのメンテナンス作業が煩雑となり、管理に対する負担が極めて大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、簡素な構造であり、安全で利便性に優れた建造物を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、簡素な構造であり、安全で利便性に優れた複合建造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(第一の発明)は、一つの建造物本体を有し、前記建造物本体は、居住者が居住する居住空間部と前記居住者が使用する車両を駐車可能な住宅部用駐車場部とを具備する住宅部が複数配置された階を複数階備えている建造物であって、前記住宅部は、前記居住空間部内において2階以上の居住階を含むものであり、少なくともいずれか一つの居住階には、当該住宅部内と当該住宅部の外との間で前記居住者の出入りを可能とする人用玄関部が形成されており、一方、前記人用玄関部とは異なる居住階には、当該住宅部内において前記居住空間部と行き来自在な住宅部用駐車場部が設けられており、かつ当該住宅部用駐車場部内と当該住宅部の外との間で前記車両の出入りを可能とする駐車場出入口部が形成されており、さらに前記建造物本体は、当該建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と各駐車場出入口部とを繋ぐ住宅部側車両専用道路部と、前記建造物本体の複数階にわたって居住者が歩行可能に形成され、当該建造物本体外と各人用玄関部とを繋ぐ住宅部側歩行者専用道路部と、を備え、前記建造物本体内における一の階において、前記住宅部側車両専用道路部の高さ位置と前記住宅部側歩行者専用道路部の高さ位置とが異なり、かつ前記高さ位置が異なる箇所で当該住宅部側車両専用道路部と当該住宅部側歩行者専用道路部とが同一空間内に臨んでなることを特徴とする建造物である。
【0009】
かかる構成にあっては、各住宅部内に住宅部用駐車場が形成されているため、各住宅部における居住者は、住宅部の外に出ることなく、自分が所有する車両に乗って外出が可能となる。また、外出帰りの際も同様に、居住空間の近くまで車両に乗って帰宅することができる。ここで、一つの建造物本体において、車両専用の住宅部側車両専用道路部と、居住者専用の住宅部側歩行者専用道路部とが互いに分離して配置されているため、事故の危険性が極めて低く安全性が高い。特に住宅部側車両専用道路部と住宅部側歩行者専用道路部との高さが異なるため、単に柵で仕切られて同一高さで住宅部側車両専用道路部と住宅部側歩行者専用道路部とが隣接した構成に比して、大幅に安全性が高い。一方、安全性を高めるために、住宅部側車両専用道路部と住宅部側歩行者専用道路部とを個別のトンネル構造として互いを完全に遮断する構成が提案されるものの、かかる構成は閉塞感が強く、一般的な戸建てで見られる開放感が得られにくい。しかし本発明は、両道路部の高さ位置を異ならせつつ、両道路部が同一空間内に臨む構成であるため、歩行者にとっても車両を利用する者にとっても閉塞感がなく、例えば自宅に帰宅する際に人用玄関部の様子も駐車場出入口部の様子も感じ取ることができ、安心感や住居の所有欲を得ることもできる。また、例えば緊急車両としての消防車が住宅部側車両専用道路部を使って住宅部の消火にあたるときにも、適切に人用玄関部のある居住階に対して放水が可能である。
【0010】
また本発明(第二の発明)は、一つの建造物本体を有し、前記建造物本体は、居住者が居住する複数の住宅部と、非居住領域である商業施設とが配置された階を複数階備えている複合建造物であって、前記商業施設が配置される商業施設部と、複数階にわたって形成された、商業施設利用者が使用する車両を駐車可能な商業施設部用駐車場と、前記建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と前記商業施設部用駐車場とを繋ぐ商業施設部側道路部と、各住宅部において形成された、各住宅部に居住する居住者が使用する車両を駐車可能な住宅部用駐車場部と、前記建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と前記住宅部用駐車場部とを繋ぐ住宅部側車両専用道路部と、前記建造物本体の複数階にわたって居住者が歩行可能に形成され、当該建造物本体外と各住宅部に設けられた人用玄関部とを繋ぐ住宅部側歩行者専用道路部と、を備え、前記建造物本体内において、前記商業施設部側道路部と前記住宅部側車両専用道路部とが接続されていないことで互いに車両の往来が不可とされてなることを特徴とする複合建造物である。
【0011】
かかる構成にあっては、商業施設部側道路部と住宅部側車両専用道路部とが接続されていないため、不特定多数の商業施設利用者が、住宅部における住宅部側車両専用道路部を通行することがないため、住宅部における治安の維持に適している。また、例えば商業施設が混雑した状況で、居住者の車両の円滑な通行が妨げられてしまうことも防止できる。
【0012】
さらに本発明(第三の発明)は、一つの建造物本体を有し、前記建造物本体は、居住者が居住する居住空間部と前記居住者が使用する車両を駐車可能な住宅部用駐車場部とを具備する複数の住宅部と、非居住領域である商業施設とが配置された階を複数階備えている複合建造物であって、前記商業施設が配置される商業施設部と、複数階にわたって形成された、商業施設利用者が使用する車両を駐車可能な商業施設部用駐車場と、前記建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と前記商業施設部用駐車場とを繋ぐ商業施設部側道路部と、を備え、前記住宅部は、前記居住空間部内において2階以上の居住階を含むものであり、少なくともいずれか一つの居住階には、当該住宅部内と当該住宅部の外との間で前記居住者の出入りを可能とする人用玄関部が形成されており、一方、前記人用玄関部とは異なる居住階には、当該住宅部内において前記居住空間部と行き来自在な住宅部用駐車場部が設けられており、かつ当該住宅部用駐車場部内と当該住宅部の外との間で前記車両の出入りを可能とする駐車場出入口部が形成されており、さらに前記建造物本体は、当該建造物本体の複数階にわたって車両通行可能に形成され、当該建造物本体外と各駐車場出入口部とを繋ぐ住宅部側車両専用道路部と、前記建造物本体の複数階にわたって居住者が歩行可能に形成され、当該建造物本体外と各人用玄関部とを繋ぐ住宅部側歩行者専用道路部と、を備え、前記建造物本体内における一の階において、前記住宅部側車両専用道路部の高さ位置と前記住宅部側歩行者専用道路部の高さ位置とが異なり、かつ前記高さ位置が異なる箇所で当該住宅部側車両専用道路部と当該住宅部側歩行者専用道路部とが同一空間内に臨んでなり、前記建造物本体内において、前記商業施設部側道路部と前記住宅部側車両専用道路部とが接続されていないことで互いに車両の往来が不可とされてなることを特徴とする複合建造物である。
【0013】
かかる構成にあっては、第一の発明と同様に、居住者は住宅部の外に出ることなく、自分が所有する車両に乗って外出が可能となり、居住空間の近くまで車両に乗って帰宅することができる。また、住宅部側車両専用道路部と住宅部側歩行者専用道路部との高さが異なるため、大幅に安全性が高い。また、両道路部が同一空間内に臨む構成であるため、住宅部の外において閉塞感がなく、安心感や住居の所有欲を得ることもできる。また、緊急車両が通行する場合でも、適切な対応が行いやすい利点がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、簡素な構造であり、安全で利便性に優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1にかかる建造物であって部分的に壁部や床部を省略して示す模式図である。
図2】実施例1にかかる建造物の部分拡大縦断面図である。
図3】実施例1にかかる建造物の部分拡大横断面図である。
図4】実施例2にかかる複合建造物の部分拡大縦断面図である。
図5】実施例2にかかる複合建造物の部分拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる建造物、及び複合建造物を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0017】
〔実施例1〕
建造物1は、図1図3に示すように、一つの建造物本体10を備え、建造物本体10は複数階を備えた構成となっている。そして、一つの階には、居住者Hが居住する住宅部20が複数隣接して並置されている。なお、各住宅部20は、例えば分譲や賃貸であっても良く、一つの建造物本体10内において、それぞれ分離した別の住居となっている。
【0018】
次に、住宅部20の内部構造について説明する。
図1等に示すように、住宅部20は、建造物本体10における一つの階において複数の居住階を有している。すなわち、住宅部20は2階建てとなっており、当該住宅部20内の居住空間には1階と2階があって1階と2階とを繋ぐ階段によって移動が可能となっている。
【0019】
そして、居住階としての2階には、人用玄関部21が設けられている。この人用玄関部21は、居住者が当該住宅部20の外との間で出入り可能とするものである。一方、居住階としての1階には、勝手口部22が設けられており、この勝手口部22を介して住宅部用駐車場部30が配置されている。この住宅部用駐車場部30については後で詳述する。
【0020】
さらに、住宅部20における1階部分には、外界に面する1階ベランダ部25が、建造物本体10から外向きに突き出すように配置されているとともに、当該住宅部20における2階部分には、同様に、2階ベランダ部26が配置されている。
【0021】
次に、住宅部用駐車場部30について説明する。
本発明においては、各住宅部20に住宅部用駐車場部30が個別に設けられており、各住宅部用駐車場部30には、各住宅部20に居住する居住者が使用する車両Cを駐車することができる。そして、各住宅部用駐車場部30には、車両Cの出入口となる駐車場出入口部32が形成されている。なお、この駐車場出入口部32は、例えばシャッターが備えられて住宅部20の外と仕切られており、いわばインナーガレージ構造となった構成となっている。
【0022】
これまでに述べた住宅部20においては、2階以上の階を有することとなり、しかも各住宅部20が隣家と分離した構成であるため、大型マンションが持つ安心・安全な利便性を備えつつ、建造物本体10内においてあたかも一戸建てに居住しているかのようなスマートタウンとしての雰囲気も味わうことができる。
【0023】
次に、建造物本体10内の共用部について説明する。
建造物本体10内の共用部には、各住宅部20の人用玄関部21に繋がる住宅部側歩行者専用道路部50が設けられている。すなわち、この住宅部側歩行者専用道路部50は、住宅部20における2階の高さ位置に形成された居住者Hが通行可能な道路となっており、建造物本体10における複数階にわたって形成されている。すなわち、住宅部側歩行者専用道路部50は、建造物本体10内と外界とを繋ぐとともに、図示しないエレベータ等の昇降部も配置されることで、別の階に容易に移動が可能となっている。
【0024】
さらに、建造物本体10内の共用部には、住宅部側車両専用道路部40が車両通行可能に形成されている。この住宅部側車両専用道路部40は、一つの階において複数の住宅部20に沿って形成されており、各住宅部20における1階の住宅部用駐車場部30に連続している。さらに、この住宅部側車両専用道路部40が、建造物本体10における複数階にわたって形成されている。すなわち、この住宅部側車両専用道路部40は、スロープ等の車両用連絡部45が配置されることで、建造物本体10における上下階で往来可能であるとともに、当該建造物本体10の外部とも往来可能である。
【0025】
すなわち、車両で外出した居住者Hは、帰宅時において車両Cに乗ったまま建造物本体10内に進入し、住宅部側車両専用道路部40を使って自分の住宅部20まで到達することができ、そこから住宅部20内の住宅部用駐車場部30に駐車することができる。当然、外出する際においても、住宅部側車両専用道路部40を使って容易に外出することができる。なお、住宅部側車両専用道路部40は、消防車や救急車のような緊急車両も通行可能であり、引っ越し業者や配達業者の車両も通行可能である。
【0026】
ここで、一つの階において、住宅部側車両専用道路部40は一方通行形式によって形成されているため、車両C同士が建造物本体10内で相対して渋滞を引き起こすことが防止されているとともに、居住スペースを広く確保できるようなレイアウトとなっている。
【0027】
また、住宅部側車両専用道路部40は車両のみが通行可能であり、歩行者は通行不可とされている。したがって、居住者Hが徒歩で外出する際には、住宅部側歩行者専用道路部50を用いて通行することとなる。
【0028】
また、住宅部側歩行者専用道路部50は、住宅部20の2階部分に対応した高さに配置されているため、1階部分に対応した高さに配置された住宅部側車両専用道路部40とは高さ位置が異なっている。したがって、建造物本体10内において歩行者と車両との動線が交わることがなく、建造物本体10内において歩行者と車両との接触事故等を効果的に防ぐことができる。一方、住宅部側車両専用道路部40と住宅部側歩行者専用道路部50は、同じ階において同じ空間に臨んでおり、互いに完全に仕切られた構成とはなっていない。このため、住宅部側車両専用道路部40と住宅部側歩行者専用道路部50との間でコミュニケーションをとることも可能であり、開放感や安心感も兼ね備えた環境が実現されている。
【0029】
これまでに述べた構成には、以下の点が付加されていてもよい。
【0030】
居住者Hは無線キーを所持しており、車両Cが外部から住宅部側車両専用道路部40に進入するときに、当該無線キーによって建造物1の出入口ゲートのロックを解除する構成としてもよい。これにより、建造物1内の防犯機能を向上させることができる。なお、ゲートのロックを解除する手段としては、無線キー以外にも、例えば車両のナンバーによる認証を用いた構成も適用可能である。一方、居住者Hに該当しない配達車両等は、出入り口を別に設け、警備員等の検査を経て住宅部側車両専用道路部40に入場可能とする構成が例示される。
【0031】
また、外部から住宅部側車両専用道路部40に進入する経路上に車両の足回りを洗浄する自動洗浄システムが配置されている構成が提案される。これにより住宅部側車両専用道路部40の汚染を防止し、住宅部側車両専用道路部40から住宅部20の内部に侵入するゴミ等を減少させることができる。
【0032】
さらに、建造物本体10内に進入・駐車可能な車両を電気自動車(EV車両)のみとすることで、建造物本体10内の空気環境を快適に維持することができる。
【0033】
これに伴い、各住宅部用駐車場部30には、EV車両用の充電器31が配置されている構成が提案される。本実施例においては、各住宅部用駐車場部30に2台の車両Cが駐車可能であるため、この場合2台分の充電器31が配置されていることが望ましい。
【0034】
また、建造物1において停電が発生した場合には、各住宅部用駐車場部30に駐車されている車両Cから住宅部20に向けて電力の供給ができるように、そのような制御回路を備えた緊急用電力供給手段が設けられている構成が提案される。
【0035】
住宅部用駐車場部30、住宅部側車両専用道路部40、及び住宅部側歩行者専用道路部50等は、建造物本体10の奥方に配された場合には太陽光が届きにくい環境になるところ、光ファイバーを用いたり、内部に鏡が配置された導光ダクトを用いたりして外部の光によってこれらのスペースを照らす太陽光採光システム60が導入されることが提案される。また、建造物本体10の外部の明るさとリンクした疑似太陽光LEDを用いて、特に歩行者が外部と類似した環境で住宅部側歩行者専用道路部50を通行することのできる構成が提案される。
【0036】
住宅部20は、基礎構造を建造物本体10と一体化したものでもよいし、建造物本体10とは別体として構築されたものであってもよい。また、各住宅部20を同じ構成で形成してもよいし、例えば建造物本体10の所定の階の住宅部20は2階建てとし、別の階は3階建てとする、といった異なる構成で形成することも可能である。当然ながら、全ての住宅部20を異なる構成で構築することもできる。
【0037】
さらに、建造物本体10と各住宅部20との間に免震構造システムを導入し、建造物本体10の免振構造システムと併せて免振機能をさらに向上させる構成も提案される。
【0038】
〔実施例2〕
以下に実施例2の複合建造物2について詳述する。なお、上記実施例1と同様の構成を有するものは同じ符号を付し、説明を省略する。
【0039】
複合建造物2は、図4図5に示すように、建造物本体70の所定の階に商業施設部80が形成されており、商業施設等が商業施設部80内に配置されている。
【0040】
また、建造物本体70の商業施設部80が形成された階とは異なる階(実施例においては上の階)であって住宅部20、住宅部用駐車場部30、住宅部側車両専用道路部40、及び住宅部側歩行者専用道路部50とは別の区画に、商業施設部用駐車場90が複数階にわたって形成されている。
【0041】
さらに建造物本体70内には、商業施設部用駐車場90に隣接するように商業施設部側道路部100が建造物本体70において複数階にわたって形成されている。そして、商業施設部側道路部100は建造物本体70内と建造物本体70外とを繋ぎ、さらにスロープ等の商業施設部側車両用連絡部105が配置されて建造物本体70における上下階の商業施設部側道路部100と連通している。
【0042】
ここで、商業施設部側道路部100は一方通行形式によって形成されている。したがって、車両C同士が建造物本体70内で相対して渋滞を引き起こすことが防止されている。また、無駄のないレイアウトが実現されている。
【0043】
また、建造物本体70内において、商業施設部側道路部100と住宅部側車両専用道路部40とは接続されておらず、互いに往来ができない状態となっている。さらに、住宅部20側の車両用連絡部45と商業施設部側車両用連絡部105とが個別に配置されている。これにより、居住者Hの車両Cが商業施設部80の混雑に巻き込まれてしまうことを防止することができる。
【0044】
これまでに述べた構成には、以下の点が付加されていてもよい。
【0045】
建造物本体70内において、住宅部20が配置されている階と、商業施設部用駐車場90や商業施設部側道路部100が配置されている階とは、異なる階であっても構わない。
【0046】
外部から商業施設部側道路部100に進入する経路上に車両の足回りを洗浄する自動洗浄システムが配置されている構成が提案される。これにより商業施設側道路部100の汚染を防止し、建造物本体70の内部に侵入するゴミ等を減少させることができる。
【0047】
また、建造物本体70内に進入・駐車可能な車両を電気自動車(EV車両)のみとすることで、建造物本体70内の空気環境を快適に維持することができる。
【0048】
商業施設部用駐車場90には、EV車両用の充電器が配置されている構成が提案される。
【0049】
停電が発生した場合には、商業施設部用駐車場90に駐車されている車両Cから電力の供給を受けることができるよう、緊急用電力供給手段が設けられている構成が提案される。
【0050】
建造物本体70内において、商業施設部側道路部100と住宅部側車両専用道路部40とは接続されておらず、互いに往来不可とされているが、住宅部側歩行者専用道路部50と商業施設部80とは徒歩にて互いに往来可能とされている構成が提案される。また、商業施設部80から住宅部側歩行者専用道路部50に進入する際にはカードキーや指紋認証、あるいは顔認証等によって居住者のみが進入可能となる構成であることが望ましい。
【0051】
商業施設側道路部100にも上記実施例1と同様に、光ファイバーを用いたり内部に鏡が配置された導光ダクトを用いたりして外部の光によって商業施設側道路部100等を照らす太陽光採光システムが導入されることが提案される。また、建造物本体70の外部の明るさとリンクした疑似太陽光LEDを用いて、商業施設部80内を通行することのできる構成が提案される。
【0052】
住宅部20が複数の居住階で構成されている場合、複合建造物2の各階の高さが十分にあるため、1階ごとに2個以上の段差を設けたりさらに階層を増やしたりして互いにスロープ等で往来可能とし、それぞれの段差や階層にさらに商業施設部用駐車場90や商業施設側道路部100を設けて駐車スペースを確保する構成であってもよい。
【0053】
上記実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 建造物
2 複合建造物
10,70 建造物本体
20 住宅部
21 玄関部
22 勝手口部
25 1階ベランダ部
26 2階ベランダ部
30 住宅部用駐車場
31 充電器
40 住宅部側車両専用道路部
45 車両用連絡部
50 住宅部側歩行者専用道路部
55 歩行者用連絡部
60 太陽光採光システム
80 商業施設部
90 商業施設部用駐車場
100 商業施設側道路部
105 商業施設部側車両用連絡部
C 車両
H 居住者
図1
図2
図3
図4
図5