(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062560
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】建柱具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230426BHJP
E04H 12/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
E04G21/16
E04H12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172605
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】520123216
【氏名又は名称】北陸電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206668
【氏名又は名称】株式会社大谷工業
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩
(72)【発明者】
【氏名】神田 義和
(72)【発明者】
【氏名】大垣 保
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA03
2E174CA03
2E174CA16
2E174CA34
2E174CA38
2E174DA12
2E174DA24
2E174DA51
(57)【要約】
【課題】
継柱部材を継ぎ足して組立柱を効率よく建柱することができる建柱具を提供する。
【解決手段】
建柱具は、継柱部材を連結して形成される組立柱を建柱するためのものであって、継柱部材を吊り上げる吊上げ部を支持する支柱と、支柱に固定され、支柱を継柱部材に着脱させる第1固定部および第2固定部とを備える。第2固定部は、支柱に対して固定解除可能であり、線状体を掛けることが可能であって回転可能な回転体を備えている。支柱および第2固定部は、支柱の長手方向において、互いにスライド可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継柱部材を連結して形成される組立柱を建柱するための建柱具であって、
前記継柱部材を吊り上げる吊上げ部を支持する支柱と、
前記支柱に固定され、前記支柱を前記継柱部材に着脱させる第1固定部および第2固定部と、
を備え、
前記第2固定部は、前記支柱に対して固定解除可能であり、線状体を掛けることが可能であって回転可能な回転体を備え、
前記支柱および前記第2固定部は、前記支柱の長手方向において、互いにスライド可能である建柱具。
【請求項2】
前記支柱は、前記第1固定部および前記第2固定部が固定される部分に、前記支柱を補強する補強部材を備える請求項1記載の建柱具。
【請求項3】
前記支柱を通すことが可能な通し部を有し、前記継柱部材の端部に着脱可能な補助支え部を備える請求項1または2記載の建柱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建柱具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両や重機が進入できない地域において送配電等に用いられる柱を建柱する場合、一般的には、鋼管等の継柱部材をその軸方向に繋ぎ合わせるパンザマスト等の組立柱が建柱される。組立柱を建柱する装置として、特許文献1には、荷吊り部と、支柱部と、取付金具とを備える組立装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の装置は、既設の継柱部材(組立柱の既設部分)に取り付けられる。また、この装置は、継柱部材を継ぎ足すごとに、装置を既設の継柱部材から取り外し、最も先側(上側)にある既設の継柱部材に取り付けなおす。しかしながら、装置を取り外す作業や取り付けなおす作業は、継柱部材を継ぎ足していくほど高所で行わなければならず、作業が難しくなるとともに労力や時間がかかる。
【0005】
本発明は、継柱部材を継ぎ足して組立柱を効率よく建柱することができる建柱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
建柱具は、継柱部材を連結して形成される組立柱を建柱するためのものであって、継柱部材を吊り上げる吊上げ部を支持する支柱と、支柱に固定され、支柱を継柱部材に着脱させる第1固定部および第2固定部とを備える。第2固定部は、支柱に対して固定解除可能であり、線状体を掛けることが可能であって回転可能な回転体を備えている。支柱および第2固定部は、支柱の長手方向において、互いにスライド可能、すなわち一方が他方に対しスライド可能である。
【0007】
支柱は、第1固定部および第2固定部が固定される部分に、支柱を補強する補強部材を備えてもよい。また、支柱は、管状であり、補強部材は、管状であって、支柱内に固定されるものであってもよい。
【0008】
建柱具は、支柱を通すことが可能な通し部を有し、継柱部材の端部に着脱可能な補助支え部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
建柱具によると、従来の装置に比べ組立柱の建柱作業を効率よく安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】建柱具を既設の継柱部材に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図2】
図1の第1固定部および第2固定部付近を示す拡大図である。
【
図5】第1固定部を示す図であって、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
【
図6】第2固定部を示す図であって、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
【
図7】補助支え部を示す図であって、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
【
図8】(A)~(E)は、建柱具により組立柱を建柱する様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、建柱具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。建柱具1は、継柱部材を連結して形成される組立柱を建柱するためのものであって、
図1および
図2に示すように、支柱10と、取付部30と、第1固定部40と、第2固定部50とを備えている。
【0012】
支柱10は、継柱部材を吊り上げる吊上げ部80を取り付け可能または備える柱状のものである。本実施形態では、支柱10は、
図1および
図3に示すように、第1支柱11と、支柱着脱手段により第1支柱11に着脱可能に連結される第2支柱12と、補強部材25と、取付部30とを備えている。第1支柱11および第2支柱12は、共に円管状のものであり、鋼等の金属で形成されている。第1支柱11および第2支柱12の外径および内径は、略同じである。ただし、第2支柱12の後端側は、第1支柱11内に挿入可能な挿入部12aとなっており、その外径は、第1支柱11の内径以下、ここでは第1支柱11の内径と略同一となっている。第2支柱12の先端には、ロープ等の支線90を取り付けるためのものであって、環状の支線取付部19が設けられている。
【0013】
第2支柱12の挿入部12aを第1支柱11内に挿入した状態において、第2支柱12の挿入部12aおよび第1支柱11の挿入部12aが挿入される部分には、支柱10の柱部分(第1支柱11および第2支柱12)の長手方向(軸方向)に直交する方向において両支柱をまとめて貫通する一対の連結孔(支柱着脱手段、図示略)が対向して設けられている。また、第1支柱11および第2支柱12の両方または一方には、これらの長手方向に直交する方向において支柱を貫通する一対の固定孔(固定部着脱手段)が対向して設けられている。この一対の固定孔は、支柱10の長手方向において間隔をあけて複数設けられてもよい。本実施形態では、固定孔は、第1支柱11の後端側で第1支柱11を左右方向に貫通する第1固定孔13と、第1固定孔13より先端側で第1支柱11を左右方向に貫通する第2固定孔15とにより構成されている。
【0014】
第1支柱11の外周面のうち第2固定孔15の周辺には、第2固定部50を固定する位置を表示する固定位置目印17が設けられている。本実施形態では、固定位置目印17は、第1支柱11の外周面の周方向に延びる線状または帯状の表示であって、第2固定孔15の先後において間隔をあけて一対設けられている。一対の固定位置目印17,17は、その間に第2固定部50が固定されるように間隔があけられている。なお、第1固定孔13の先後にも、第2固定孔15の前後のものと同じように一対の固定位置目印17,17を設けてもよい。
【0015】
支柱10は、第1固定部40および第2固定部50が固定される部分に、支柱10を補強する補強部材25を備える。本実施形態では、補強部材25は、鋼等の金属製のものであり、
図3および
図4に示すように、横断面の形状が正方形の角管であり、第1固定部40および第2固定部50が固定される第1支柱11内に設けられている。補強部材25は、対角長が第1支柱11の内径と略同一となっており、第1支柱11内に入れられ、溶接等により第1支柱11に固定されている。補強部材25は、第1支柱11内において、第1支柱11の後端から第2支柱12の挿入部12aが挿入する部分にまで設けられている。補強部材25にも、第1支柱11の第1固定孔13と第2固定孔15のそれぞれに重なるように第1固定孔13と第2固定孔15が設けられている。すなわち、第1固定孔13および第2固定孔15は、第1支柱11と補強部材25をまとめて貫通している。
【0016】
取付部30は、組立柱を構成する継柱部材を吊り上げる吊上げ部80を取り付けるためのものである。本実施形態では、取付部30は、鋼等の金属製のものであり、
図1および
図3に示すように、取付基部32と、アーム部34とを備えている。取付基部32は、第2支柱12の先端側、言い換えれば支柱10の先端側に取り付けられている。アーム部34は、取付基部32から第2支柱12の長手方向に略直交する方向に延びている。また、アーム部34は、吊上げ部80を掛けることが可能な環状の掛け部分を有するアーム掛け部36を備えている。また、アーム部34の側面には、支柱目印38が設けられている。支柱目印38は、支柱10の長手方向および第2固定孔15の貫通方向に直交する方向においてその一方に向く矢印が表示されている。なお、支柱目印38は、支柱10のどの部分に設けられていてもよく、例えば、第1支柱11または第2支柱12に設けられていてもよい。
【0017】
吊上げ部80は、例えば滑車であり、アーム掛け部36の掛け部分には滑車のフック82が掛けられる。滑車は、滑車に掛けられる吊上げ部ロープ84を備え、吊上げ部ロープ84を引くことにより吊上げ部ロープ84に取り付けられた物を吊り上げることができる。なお、吊上げ部80は、支柱10に直接設けられるローラー等であってもよく、この場合、取付部30は不要である。
【0018】
支柱10は、第2支柱12の挿入部12aを第1支柱11の一端側(先端側)から第1支柱11内に入れ、それぞれの連結孔を重ねた状態で、連結孔にボルト21(支柱着脱手段)を通し、ボルト21にナット23(支柱着脱手段)を締結することにより形成される。形成された支柱10は、第1支柱11と第2支柱12が略同軸となる。
【0019】
建柱具1は、支柱10が、第1支柱11と、第1支柱11に着脱可能に連結される第2支柱12とを備えることにより、連結を解除すればコンパクトになるので、建柱具1の運搬が容易になる。
【0020】
第1固定部40および第2固定部50は、支柱10を継柱部材に着脱させるためのものである。
【0021】
第1固定部40は、本実施形態では、支柱10および継柱部材に着脱(固定および固定解除)可能となっている。第1固定部40は、鋼等の金属製であって、
図1、
図2および
図5に示すように、第1基部41と、一対の第1連結部42と、第1当接部43と、線状体取付部44と、第1目印45と、第1継柱部材固定部46とを備えている。
【0022】
第1基部41は、円筒状であって、軸が上下方向に平行になっている。第1基部41は、その内径が第1支柱11の外径以下となっており、その内部に支柱10を通すことが可能となっている。ここでは第1基部41の内径は、第1支柱11の外径とほぼ同じとなっている。第1基部41には、左右方向において第1基部41を貫通する一対の第1基部孔41a(固定部着脱手段)が対向して設けられている。
【0023】
各第1連結部42は、板状であって、上下方向に間隔をあけてそれぞれ第1基部41から前方に向かって延びている。各第1連結部42の先端には第1当接部43が連結している。
【0024】
第1当接部43は、筒状の当接部本体43aを備えている。また、当接部本体43aの前面には、平面視して山型状であって、上下方向に延びる当接体43bが左右方向に間隔をあけて一対設けられている。第1当接部43をこのような構成にすることにより、当接部本体43aおよび一対の当接体43b,43bの間に円管状の継柱部材が接するので、第1固定部40を継柱部材にしっかりと当接させることができる。
【0025】
第1基部41の後部には、取手状の線状体取付部44が設けられている。
【0026】
第1固定部40には、第1目印45が設けられている。本実施形態では、第1目印45は、第1当接部43の側面に設けられる表示であって、その表示には矢印が含まれている。第1目印45の矢印の向きは、第1固定部40を支柱10に固定した際、支柱目印38の矢印と同じ向きとなるようになっている。なお、第1目印45の矢印の向きは、支柱目印38の矢印の向きと逆であってもよい。
【0027】
第1継柱部材固定部46は、支柱10に取り付けられた第1固定部40を継柱部材に固定(着脱)するためのものである。本実施形態では、第1継柱部材固定部46は、いわゆるラッシングベルトであり、化学繊維等により形成された柔軟性を有する帯状の帯状部46aと、帯状部46aに取り付けられたバックル46bと、を備えている。バックル46bは、ラチェット式となっている。第1継柱部材固定部46は、帯状部46aをバックル46bに通し、バックル46bを操作することにより、帯状部46aを締め込んだり、緩めたり、またバックル46bから帯状部46aを抜くことができる。
【0028】
第1固定部40は、支柱10、ここでは第1支柱11に着脱できる。第1固定部40は、第1基部41内に支柱10を通し、第1目印45の矢印が支柱目印38の矢印の向きと同じになるようにして第1基部孔41aを第1固定孔13に合わせ、第1基部孔41aおよび第1固定孔13にボルト48(固定部着脱手段)を通し、ナット(固定部着脱手段、図示略)を締結することにより、支柱10(第1支柱11)に固定される。また、第1固定部40は、ボルト48からナットを取り外し、ボルト48を第1基部孔41aおよび第1固定孔13から抜き取れば、支柱10(第1支柱11)への固定が解除され、支柱10から取り外すことが可能となる。
【0029】
また、第1固定部40は、第1当接部43を既設の継柱部材(組立柱の既設部分)に当接させ、第1継柱部材固定部46の帯状部46aを、第1基部41、第1当接部43および一対の第1連結部42に囲まれる空間に通しつつ、継柱部材に巻き付けてバックル46bに通し、バックル46bを操作して締め込むことにより、既設の継柱部材に固定される。また、このような状態から、バックル46bを操作することにより、帯状部46aを第1固定部40および既設の継柱部材に巻いたままでその締付をゆるめたり、バックル46bから帯状部46aを取り外すとともに、継柱部材および第1固定部40から帯状部46aを取り外したりすることにより、既設の継柱部材への固定が解除される。
【0030】
第2固定部50は、本実施形態では、支柱10とは、支柱10の長手方向において互いにスライド可能であり、支柱10および継柱部材に着脱(固定および固定解除)可能なものである。第2固定部50は、鋼等の金属製であって、
図1、
図2および
図6に示すように、第2基部51と、一対の第2連結部52と、第2当接部53と、第2目印55と、第2継柱部材固定部56と、回転部57を備えている。
【0031】
第2基部51は、第1基部41の構成に加えて、第2固定部50を支柱10に仮固定するための仮固定部51bを備えている。仮固定部51bは、左右方向に第2基部51の周壁を貫通する孔の内面に設けられる雌ねじと、雌ねじに対応する雄ねじを有し、雌ねじに取り付けられるボルトとを備えている。また、第2基部51は、第1基部41の第1基部孔41aに対応する第2基部孔51a(固定部着脱手段)を備えている。
【0032】
第2連結部52は第1連結部42と同様のものであり、説明を省略する。第2当接部53は、第1連結部42と同様のものであって、当接部本体53aと、一対の当接体53b,53bとを備えており、ここでは説明を省略する。第2目印55は、第1目印45と同様のものであり、ここでは説明を省略する。第2継柱部材固定部56は、第1継柱部材固定部46と同様のものであって、帯状部56aと、バックル56bとを備えており、ここでは説明を省略する。
【0033】
回転部57は、左右方向に間隔をあけてそれぞれ第2基部51から後方に向かって延びる一対の回転体支持部57a,57aと、第2基部51の後方において一対の回転体支持部57a,57aに回転可能に支持される回転体57bとを備えている。回転体57bは、回転軸が左右方向に平行になっている。また、回転体57bは、可撓性を有するロープ等の線状体70を掛けることが可能になっている。
【0034】
第2固定部50は、支柱10、ここでは第1支柱11に着脱できる。第2固定部50は、第2基部51内に第1支柱11を通し、第2目印55の矢印が支柱目印38の矢印と同じ向きになるようにするとともに、一対の固定位置目印17,17の間に収まるように移動させ、第2基部孔51aを第2固定孔15に合わせて、第2基部孔51aおよび第2固定孔15にL字状のピン58(固定部着脱手段)を通すことにより、支柱10(第1支柱11)に固定される。また、第2固定部50は、第2基部孔51aおよび第2固定孔15からピン58を抜き取れば、支柱10(第1支柱11)への固定が解除され、第2固定部50および支柱10の一方が他方に対してスライド可能になり、さらには第2固定部50を支柱10から取り外すことが可能となる。また、第2固定部50は、仮止め部を回して支柱10を押圧することにより、支柱10(第1支柱11および第2支柱12)の長手方向の任意の位置に仮固定することができ、仮止め部を逆方向に回転させることにより仮固定を解除することができる。
【0035】
第2固定部50の第2継柱部材固定部56による既設の継柱部材への固定およびその解除の仕方は、第1固定部40の第1継柱部材固定部46によるものと同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
第1固定部40および第2固定部50により支柱10を継柱部材に固定すると、支柱10の長手方向(軸方向)は、組立柱の長手方向(軸方向)と略平行となる。また、第2固定部50は、第1固定部40より支柱10の先側(上側)に位置する。
【0037】
建柱具1を用いて継柱部材を吊り上げる際、支柱10を既設の継柱部材によりしっかりと支持させたい場合には、補助支え部60を用いてもよい。
【0038】
補助支え部60は、支柱10を通すことが可能な通し部61bを有し、継柱部材の端部に固定(着脱)可能なものである。本実施形態では、補助支え部60は、補助支え基部61と、補助支え固定部63とを備えている。補助支え基部61は、
図7に示すように、基部本体61aと、通し部61bとを備えている。基部本体61aは、その前後に平面を有し、左右の端部が前側に屈曲している。基部本体61aには、前後方向に貫通するガイド孔(図示略)が設けられている。通し部61bは、平面視して略C字状(コの字状)であって、一端が基部本体61aの背面に連結しており、内側に支柱10を通すことが可能になっている。通し部61bの内側の幅は、第2支柱12の外径以上であり、ここでは第2支柱12の外径と略同一となっている。
【0039】
補助支え固定部63は、補助支え部60を継柱部材に固定(着脱)するためのものである。補助支え固定部63は、ガイド部63aと、移動体63bと、移動規制部63cとを備えている。ガイド部63aは、ここではボルトである。ガイド部63aの頭部は、ガイド孔より大きく、胴部はガイド孔に通すことが可能なものとなっている。ガイド部63aは、基部本体61aの背面側からガイド孔に差し込まれおり、胴部が基部本体61aから前方に突出している。移動体63bは、貫通孔(図示略)を備え、貫通孔にガイド部63aが通されており、ガイド部63aに沿って前後に移動可能となっている。移動規制部63cは、移動体63bの移動を規制するとともに、移動体63bのガイド部63aからの離脱を防止するためのものである。移動規制部63cは、ここでは、ガイド部63a(ボルト)に締結するナットである。移動規制部63cをガイド部63aに対して締め付ける方向に回転させると、移動体63bが移動規制部63cに押されて基部本体61a側に移動する。
【0040】
組立柱が継柱部材である単位マスト110(鋼管)を連結して形成されるパンザマスト100(組立鋼管柱)である場合には、補助支え部60は、第1固定部40および第2固定部50の両方または一方で支柱10を既設の単位マスト110(鋼管)に固定した状態で、支柱10をその先端から通し部61bに通しつつ、基部本体61a、ガイド部63aおよび移動体63bで囲まれる部分を既設の単位マスト110の最先端部に掛け、移動規制部63cを締め付ける方向に回転させて、基部本体61aと移動体63bで単位マスト110の周壁を挟み込むことにより、支柱10および既設の単位マスト110に取り付けられる。逆に、移動規制部63cを緩める方向に回転させて、基部本体61aと移動体63bによる単位マスト110の周壁の挟み込みを解除し、補助支え部60を上方に移動させて支柱10および単位マスト110から抜けば、補助支え部60を支柱10および単位マスト110から取り外すことができる。
【0041】
次に、建柱具1を用いた組立柱の建柱方法について
図1および
図8を用いて説明する。ここで、組立柱は、継柱部材である単位マスト110(鋼管)をその長手方向(軸方向)に連結して形成されるパンザマスト100であるものとする。また、吊上げ部80は、滑車であるものとする。また、少なくとも最下部の単位マスト110は、従来の手法によりすでに施工されているものとする。また、支柱10には、予め第1固定部40および第2固定部50が固定されているものとする。
【0042】
第1ステップでは、
図1に示すように、建柱具1を新たに連結する単位マスト110を吊り上げることが可能な位置において既設のパンザマスト100(単位マスト110)に取り付ける。具体的には、まず、支柱10に固定された第1固定部40の第1当接部43および第2固定部50の第2当接部53を既設の単位マスト110に当接させる。次いで、第1固定部40を第1継柱部材固定部46によりおよび第2固定部50を第2継柱部材固定部56により既設の単位マスト110に固定(締結)する。また、第2固定部50の回転体57bにロープ等の線状体70を掛け、線状体70の一端を第2基部51、第2当接部53および一対の回転体支持部57a,57aに囲まれる空間に通して第1固定部40の線状体取付部44に取り付ける。なお、線状体70の一端は、支柱10に取り付けてもよい。また、取付部30のアーム掛け部36に、吊上げ部80のフック82を掛けて、吊上げ部80を取り付ける。また、必要に応じて、支柱10を支持するために、1または複数のロープ等の支線90を支柱10の支線取付部19に取り付ける。
【0043】
第2ステップでは、
図8(A)および
図8(B)に示すように、吊上げ部80により新たに連結する単位マスト110を吊り上げて、既設の単位マスト110に連結する。具体的には、吊り上げる単位マスト110に、吊上げ部80に掛けられた吊上げ部ロープ84の一端側を連結する。また、支線90を用いる場合には、支柱10に取り付けられた支線90を支柱10に対して傾斜させた状態で一端側を地面に固定する。次いで、吊上げ部ロープ84の他端側を作業者またはウインチ等で引くことにより、単位マスト110を吊り上げる(
図8(A)参照)。補助支え部60が支柱10および既設の単位マスト110に取り付けられている場合には、補助支え部60を取り外し、吊り上げた単位マスト110の後端を既設の単位マスト110の最先端に合わせて、吊り上げた単位マスト110を既設の単位マスト110に連結する(
図8(B)参照)。次いで、吊り上げた単位マスト110から吊上げ部ロープ84を取り外す。
【0044】
第3ステップでは、
図8(C)~
図8(E)に示すように、新たに連結する単位マスト110を吊り上げて既設の単位マスト110に載せることが可能な位置に建柱具1を移動させる。具体的には、補助支え部60を用いる場合には、既設の単位マスト110の最先端(最上端)と支柱10に、補助支え部60を取り付ける(
図8(C)参照)。また、支線90の一端を地面に固定している場合には、地面への固定を解除する。次いで、第2継柱部材固定部56のバックル56bを操作し、その帯状部56aをパンザマスト100に巻いた状態、いいかえれば帯状部56aをバックル56bに通して環状にした状態で、第2継柱部材固定部56の既設の単位マスト110への締結を緩める。また、第2固定部50を支柱10に固定しているピン58を取り外し、また、第2固定部50が仮固定部51bによって支柱10に固定されている場合には、仮固定部51bによる支柱10への固定も解除し、第2固定部50の支柱10への固定を解除する。次いで、第2固定部50を支柱10に対して上方に移動(スライド)させ、仮固定部51bにより第2固定部50を支柱10に仮固定する。また、第2固定部50を第2継柱部材固定部56により既設の単位マスト110に固定する(
図8(D)参照)。次いで、第1継柱部材固定部46のバックル46bを操作し、その帯状部46aをパンザマスト100に巻いた状態で、第1継柱部材固定部46の既設の単位マスト110への締結を緩める。
次いで、作業者またはウインチ等により線状体70を引いて支柱10を第1固定部40とともに上方に移動させ、第2固定孔15を第2基部孔51aに合わせ、これらの孔にピン58を通して第2固定部50を支柱10に固定する(
図8(E)参照)。また、第1固定部40を第1継柱部材固定部46によりおよび第2固定部50を第2継柱部材固定部56により既設の単位マスト110に固定する(
図8(E)参照)。ここで、支柱10を第1固定部40とともに上方に移動させた際に、第2固定孔15を第2基部孔51aに合わせられない場合には、まず第1固定部40を第1継柱部材固定部46により既設の単位マスト110に固定(締結)する。次いで、仮固定部51bによる支柱10への固定を解除するとともに、第2継柱部材固定部56の既設の単位マスト110への締結を緩める。次いで、第1固定部40および支柱10を既設の単位マスト110に固定した状態で、第2固定部50を移動させ、第2固定孔15を第2基部孔51aに合わせ、これらの孔にピン58を通して第2固定部50を支柱10に固定する。
【0045】
ステップ2およびステップ3は、全ての単位マスト110を連結し終えるまで繰り返される。
【0046】
なお、建柱具1は、組立柱の解体にも適用することができる。組立柱の解体は、既設の単位マスト110のうち最先端にあるものを順次撤去する。組立柱の解体する場合、上記ステップ1では、既設のパンザマスト100(単位マスト110)から撤去する単位マスト110を吊り降ろすことが可能な位置に建柱具1を既設のパンザマスト100に取り付ける。また、上記ステップ2では、既設のパンザマスト100(単位マスト110)から撤去する単位マスト110の連結を解除し、撤去する単位マスト110を吊上げ部80により吊り降ろす。また、上記ステップ3では、新たに撤去する単位マスト110を吊り降ろすことが可能な位置に建柱具1を移動させる。
【0047】
建柱具1によると、支柱10を既設の継柱部材に対して移動させる際、支柱10に直接または間接的に取り付けられるとともに回転体57bに掛けられた線状体70を引くことにより、支柱10を移動させることができるので、従来の装置のように高所において作業者が直接支柱10を移動させる必要がなく、建柱作業を効率よく安全に行うことができる。
【0048】
また、建柱具1によると、支柱10が、第1固定部40および第2固定部50が固定される部分に支柱10を補強する補強部材25を備えることにより、支柱10の強度を向上させることができる。
【0049】
また、建柱具1によると、支柱10および補強部材25が管状であり、補強部材25が支柱10内に固定されるものであることにより、建柱具1が軽量化されるので、建柱具1の運搬が容易になるとともに、建柱作業をより効率よく行うことができる。
【0050】
また、建柱具1によると、補助支え部60を備えることにより、支柱10を既設の継柱部材によりしっかりと支持させることができるので、より一層建柱作業を安全に効率よく行うことができる。
【0051】
また、建柱具1によると、支柱10に固定位置目印17を備えることにより、既設の継柱部材柱への建柱具1の固定位置が高所であっても、第2固定部50を容易かつ短時間で支柱10に固定することができる。また、支柱目印38、第1目印45および第2目印55に矢印を表示し、第1固定部40および第2固定部50を支柱10に固定する際に、支柱目印38、第1目印45および第2固定部50目の矢印の向きを同じまたは逆向きとなるようにすることにより、第1固定部40および第2固定部50を容易かつ短時間で適切な向きで支柱10に固定することができる。
【0052】
本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 建柱具
10 支柱
11 第1支柱
12 第2支柱
12a 挿入部
13 第1固定孔
15 第2固定孔
17 固定位置目印
19 支線取付部
21 ボルト
23 ナット
25 補強部材
30 取付部
32 取付基部
34 アーム部
36 アーム掛け部
38 支柱目印
40 第1固定部
41 第1基部
41a 第1基部孔
42 第1連結部
43 第1当接部
43a 当接部本体
43b 当接体
44 線状体取付部
45 第1目印
46 第1継柱部材固定部
46a 帯状部
46b バックル
48 ボルト
50 第2固定部
51 第2基部
51a 第2基部孔
51b 仮固定部
52 第2連結部
53 第2当接部
53a 当接部本体
53b 当接体
55 第2目印
56 第2継柱部材固定部
56a 帯状部
56b バックル
57 回転部
57a 回転体支持部
57b 回転体
58 ピン
60 補助支え部
61 補助支え基部
61a 基部本体
61b 通し部
63 補助支え固定部
63a ガイド部
63b 移動体
63c 移動規制部
70 線状体
80 吊上げ部
82 フック
84 吊上げ部ロープ
90 支線
100 パンザマスト
110 単位マスト