(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062601
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】グランドパッキンの交換装置及び交換方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/00 20060101AFI20230426BHJP
F16J 15/24 20060101ALI20230426BHJP
B25B 27/28 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F16J15/00 D
F16J15/24 Z
F16J15/00 C
B25B27/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172665
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】593207271
【氏名又は名称】株式会社WADECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱野 早衛
(72)【発明者】
【氏名】江濱 勝一
【テーマコード(参考)】
3C031
3J043
【Fターム(参考)】
3C031EE25
3J043AA01
3J043BA02
3J043CA12
3J043DA09
(57)【要約】
【課題】古いグランドパッキンの残存もなく確実に、容易に行うことができ、複雑な装置を要することも無いグランドパッキンの交換装置、並びに交換方法を提供する。
【解決手段】軸または管の外周面と、軸または管が挿通する筒状の支持部の内周面との間をシールするグランドパッキンの交換装置であり、主部と、主部から二股に分かれた一対の腕部とを有する取り外しアームと、支持部の外側に位置し、取り外しアームの腕部の先端と係合する係合部と、グランドパッキンと対向するように支持部の上方に固定された円環部材と、を備えるとともに、取り外しアームの腕部の先端を係合部に係合させ、かつ、腕部を支持部の外周面の径方向両端部分に連結させた状態で、取り外しアームの主部を円環部材の側に回動させ、係合部を支点としてグランドパッキンを支持部ごと押し上げるともにグランドパッキンを円環部材に押し当てる構成になっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸または管の外周面と、前記軸または前記管が挿通する筒状の支持部の内周面との間をシールするグランドパッキンの交換装置であって、
主部と、前記主部から二股に分かれた一対の腕部とを有する取り外しアームと、
前記支持部の外側に位置し、前記取り外しアームの前記腕部の先端と係合する係合部と、
前記グランドパッキンと対向するように、前記支持部の上方に固定された円環部材と、
を備えるとともに、
前記取り外しアームの前記腕部の先端を前記係合部に係合させ、かつ、前記腕部を前記支持部の外周面の径方向両端部分に連結させた状態で、
前記取り外しアームの前記主部を前記円環部材の側に回動させ、前記係合部を支点として前記グランドパッキンを前記支持部ごと押し上げるともに、前記グランドパッキンを前記円環部材に押し当てる構成になっていることを特徴とするグランドパッキンの交換装置。
【請求項2】
軸または管の外周面と、前記軸または前記管が挿通する筒状の支持部の内周面との間をシールするグランドパッキンの交換方法であって、
請求項1に記載の交換装置を用いるとともに、
前記取り外しアームの前記主部を前記円環部材の側に回動させ、前記係合部を支点として前記グランドパッキンを前記支持部ごと押し上げ、前記グランドパッキンを前記円環部材に押し付けることにより、前記グランドパッキンを前記支持部から下方に押し出した後、
新たなグランドパッキンを、前記円環部材の側から前記支持部に挿入して補充することを特徴とするグランドパッキンの交換方法。
【請求項3】
前記グランドパッキンが、複数のグランドパッキンを多段に積層した多段構造であり、
前記取り外しアームの前記主部を前記円環部材の側に回動させ、前記係合部を支点として前記グランドパッキンを前記支持部ごと押し上げ、前記グランドパッキンを前記円環部材に押し付けることにより、前記グランドパッキンを前記支持部から下方に押し出した後、新たなグランドパッキンを、前記円環部材の側から前記支持部に挿入して補充する一連の操作を、繰り返し行うことを特徴とする請求項2記載のグランドパッキンの交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グランドパッキンの交換装置、並びに前記交換装置を用いて行うグランドパッキンの交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブやポンプ等の流体機械では、摺動部の密閉を目的として、軸部と、軸部が挿通する軸受管との間をシールするグランドパッキンが使用されているが、グランドパッキンは、長時間の使用で変形や破損が起こり、シール性能が低下するため、定期的に新しいものとの交換が行われている。
【0003】
グランドパッキンの交換の際には、鋭く尖った湾曲する刃先部分である鈷部を先端側に備えた鈷式工具や、尖った雄ねじ部を先端側に備えたスクリュウ式工具等の専用工具が使用されている。そして、グランドパッキンに鈷部を突き刺して引っ掛けたり、雄ねじ部を突き刺してねじ込んだりした後に専用工具を引き上げることによって、グランドパッキンを引き抜くことが行われている。その際、交換される古いグランドパッキンが装着個所に残存していると、新しいグランドパッキンが装着不良を起こしてシール性能が低下するため、古いグランドパッキンを完全に取り除く必要があり、手間や時間、ある程度の熟練を要している。
【0004】
また、グランドパッキンは、一般的に、軸部の軸方向に複数のグランドパッキンを積層した多段構造となっている。この多段構造のグランドパッキンを交換する際には、古いグランドパッキンを、一層毎に、上記した専用工具を用いて取り除くことになり、手間がかかる。また、専用工具の先端を、隣接するグランドパッキン間にうまく差し込んで引き上げなければ、グランドパッキンが破損したり、途中で切れたりする。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1では、多段構造のグランドパッキンに対して、隣接するグランドパッキンの間に流体の圧力を供給し、少なくとも一つの層のグランドパッキンを装着部の軸方向に移動させ、軸方向に移動したグランドパッキンを取り除く構成の取り外し装置を提案している。
【0006】
また、高炉に供給された鉄鉱石やコークス等の装入物の堆積状態を検知し、次回の供給量を制御して安定な操業を維持するために、炉内に供給され、高炉内に堆積している装入物の表面プロフィールを検出することが行われている。本出願人も先に、特許文献2に記載の検出装置を提案している。
【0007】
図5に、特許文献2の
図2に記載された検出装置100を示す。主要部分を説明すると、反射面140aの高炉側への傾斜角度(X方向)を可変にした角度可変反射板140と、角度固定反射板138A~138C(138)とを備える。回転軸110の外周面のギア112とモータ113のギア155とが噛合しており、モータ113を駆動させることにより、回転軸110がY方向に回転し、それに伴って回転板120が高炉1の開口部2に対して水平に回転する。角度可変反射板140は、リンク機構117の第1リンク117aが固定されており、第1リンク117aには第2リンク117bが連結している。また、第2リンク117bには、回転軸110の内部を貫通する連結棒114が連結しており、連結棒114がH方向に上下動することにより、角度可変反射板140の反射面140aがX方向に傾斜する。そして、回転軸110とともに回転板120を回動させながら、角度可変反射板140の反射面140aを傾斜させることにより、送受信手段130からアンテナ135を介して送信される検出波Mを、高炉内の装入物の表面プロフィールを線状または面状に走査している。
【0008】
この検出装置100では、高炉1の内部の危険ガスが開口部2を通じて回転軸110に侵入し、回転軸110の内部は高圧になっており、回転軸110よりも図中上部側は低圧(大気圧)になっていることから、図中の円で囲まれた部分Aや部分B、即ち回転軸110の上面と、連結棒114やアンテナ135の導波管133との間が、グランドパッキン(図示せず。
図1参照)でシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-218983号公報
【特許文献2】特許第6857933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、専用工具を用いる場合には、上記したように、手間や時間、ある程度の熟練が必要であり、特許文献1の取り外し装置では、流体を供給するための供給管や、流体の供給源、流体の調整バルブ等が必要であり、装置構造が複雑になる。
【0011】
また、装置の小型化に伴ってグランドパッキンの装着個所の周囲の空間が狭くなりつつあり、狭い空間での交換作業がより難しくなっている。特に、特許文献2のような検出装置では、回転軸110の上方の空間を狭くして小型化されており、交換作業が難しくなっている。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、古いグランドパッキンの残存もなく確実に、容易に行うことができ、複雑な装置を要することも無いグランドパッキンの交換装置、並びに交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、下記のグランドパッキンの交換装置及び交換方法を提供する。
(1)軸または管の外周面と、前記軸または前記管が挿通する筒状の支持部の内周面との間をシールするグランドパッキンの交換装置であって、
主部と、前記主部から二股に分かれた一対の腕部とを有する取り外しアームと、
前記支持部の外側に位置し、前記取り外しアームの前記腕部の先端と係合する係合部と、
前記グランドパッキンと対向するように、前記支持部の上方に固定された円環部材と、
を備えるとともに、
前記取り外しアームの前記腕部の先端を前記係合部に係合させ、かつ、前記腕部を前記支持部の外周面の径方向両端部分に連結させた状態で、
前記取り外しアームの前記主部を前記円環部材の側に回動させ、前記係合部を支点として前記グランドパッキンを前記支持部ごと押し上げるともに、前記グランドパッキンを前記円環部材に押し当てる構成になっていることを特徴とするグランドパッキンの交換装置。
(2)軸または管の外周面と、前記軸または前記管が挿通する筒状の支持部の内周面との間をシールするグランドパッキンの交換方法であって、
上記(1)に記載の交換装置を用いるとともに、
前記取り外しアームの前記主部を前記円環部材の側に回動させ、前記係合部を支点として前記グランドパッキンを前記支持部ごと押し上げ、前記グランドパッキンを前記円環部材に押し付けることにより、前記グランドパッキンを前記支持部から下方に押し出した後、
新たなグランドパッキンを、前記円環部材の側から前記支持部に挿入して補充することを特徴とするグランドパッキンの交換方法。
(3)前記グランドパッキンが、複数のグランドパッキンを多段に積層した多段構造であり、
前記取り外しアームの前記主部を前記円環部材の側に回動させ、前記係合部を支点として前記グランドパッキンを前記支持部ごと押し上げ、前記グランドパッキンを前記円環部材に押し付けることにより、前記グランドパッキンを前記支持部から下方に押し出した後、新たなグランドパッキンを、前記円環部材の側から前記支持部に挿入して補充する一連の操作を、繰り返し行うことを特徴とする上記(2)記載のグランドパッキンの交換方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、取り外しアームを押し上げて古いグランドパッキンを取り外し、新たなグランドパッキンを補充するという簡便な操作により、古いグランドパッキンの残存もなく確実に、新しいグランドパッキンに交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の交換装置の実施形態を示す断面図であり、交換前の状態を示している。
【
図2】
図2は、
図1に示す交換装置の支持部及び取り外しアームを示す上面図である。
【
図3】
図3は、取り外しアームの主部を押し上げた状態を示す図である。
【
図4】
図4は、新たなグランドパッキンを補充する状態を示す図である。
【
図5】
図5は、特許文献2の
図2に示す検出装置の主要部分を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の交換装置の実施形態を示す断面図であり、交換前の状態を示している。軸または管(図の例では管10)と、管10を挿通させる支持部20との間に、グランドパッキン30が装着されている。
【0018】
支持部20は、支持フレーム25にボルト26により取り付けられている。また、支持部20の外側には、円環状の包囲体60がボルト66により支持フレーム25に取り付けられている。
【0019】
グランドパッキン30は、ランタンリング40の上下に、図の例では3層ずつ積層した合計6層の多段構造になっており、グランドパッキン押え35により上方から押圧され、支持部20に固定されている。グランドパッキン押え35は、爪状の突起36を最上層のグランドパッキン30(符号「30A」)に押し付け、押圧状態でボルト37により支持部20に取り付けられている。
【0020】
グランドパッキン押え35の上方には、グランドパッキン30と対向する位置に、円環部材50が設置されている。円環部材50は、支持フレーム55に取り付けられ、固定されている。
【0021】
ランタンリング40は、支持部20に設けられた注入孔45を通じて外部からグランドパッキン30の装着個所にグリースや油を供給し、管10と支持部20との隙間や、グランドパッキン間の隙間を塞いで密封性をより高めるために設けられている。また、ランタンリング40は、2つ割りにしてある。
【0022】
また、支持部20の外周面には、取り外しアーム70が連結されている。
図2に示すように、取り外しアーム70は、主部75に連続して二股に分かれた一対の腕部76を有しており、略Y字状を呈する部材である。また、腕部76にはそれぞれ、腕部76の長手方向を長軸とする長孔77が開口している。そして、長孔から固定ピン80を挿入し、支持部20の外周面に固定することにより、取り外しアーム70が支持部20に連結する。尚、
図2には、簡単のために、支持部20、包囲体60及び取り外しアーム70のみを示している。
【0023】
包囲体60の内周面には、取り外しアーム70の腕部76の先端と係合する一対の突起部68を有する。また、包囲体60には、突起部68と対向する側に開口部69が開口しており、取り外しアーム70の主部75を突出させている。なお、図示は省略するが、突起部68の他にも、取り外しアーム70の腕部76の先端が挿通する孔が開口していてもよい。この孔や突起部68が「係合部」である。
【0024】
このように構成される交換装置5を用いてグランドパッキン30を交換するには、次の一連の操作を行う。
【0025】
先ず、ボルト37を外し、グランドパッキン押え35を支持部20から取り外す。また、支持部20を支持フレーム25に取り付けているボルト26を取り外す。
【0026】
次に、取り外しアーム70を、包囲体60の開口部69から挿入し、腕部76の先端を包囲体60の突起部68に係合する。それとともに、長孔77に固定ピン80を挿入して支持部20の外周面に固定する。
【0027】
そして、
図3に示すように、取り外しアーム70の主部75を、
図1の矢印aで示すように円環部材50の側に回動する。これにより、取り外しアーム70の腕部76の先端と、包囲体60の突起部68との係合個所を支点とする「てこの原理」により、グランドパッキン30が支持部20ごと円環部材50の側に押し上げられる。なお、図の例では、取り外しアーム70の主部75を包囲体60の開口部69から突出させているが、主部75が包囲体60の開口部69から突出していなくてもよい。この押し上げにより、最上層のグランドパッキン30Aが円環部材50で押圧され、それと同時に、最下層のグランドパッキン30(符号「30B」)が支持部20から下方に押し出される。
【0028】
次いで、
図4に示すように、取り外しアーム70の主部75を元の位置まで戻す。この状態では、
図4に示すように、支持部20には、最下層のグランドパッキン30Bが押し出された5層のグランドパッキン30が残存している。そこで、新たなグランドパッキン30(符号「30C」)を、円環部材50の側から支持部20に挿入して補充する。
【0029】
このような取り外しアーム70の昇降と、新たなグランドパッキン30Cの補充とを、それぞれ3回繰り返し、更にランタンリング40を支持部20から押し出した後、押し出したランタンリング40を、円環部材50の側から支持部20に再配置する。そして、ランタンリング40の上部に3層分のグランドパッキン30を補充する。
【0030】
そして、支持部20を支持フレーム25にボルト26で取り付けた後、グランドパッキン押え35によりグランドパッキン30を押圧した状態にてボルト37で支持部20に取り付けて、交換作業を完了する。
【0031】
なお、
図1~4では、取り外しアーム70が図中の右側に位置しているが、これに限らず、支持部20に対して全方位で行うことができる。
【0032】
上記した交換装置5は、バルブやポンプ等の流体機械や特許文献2の検出装置等のシール部分に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
5 交換装置
10 管
20 支持部
30 グランドパッキン
35 グランドパッキン押え
40 ランタンリング
50 円環部材
60 包囲体
68 突起部(係合部)
70 取り外しアーム
75 主部
76 腕部
80 固定ピン