(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062610
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】チップ脱着装置およびスローアウェイチップのコーナチェンジ方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20230426BHJP
B23C 5/22 20060101ALI20230426BHJP
B25J 9/16 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B23Q3/155 B
B23C5/22
B25J9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172682
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504274882
【氏名又は名称】ダイドー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】光齋 悠矢
(72)【発明者】
【氏名】森 茂
【テーマコード(参考)】
3C002
3C022
3C707
【Fターム(参考)】
3C002DD00
3C002EE00
3C002FF09
3C002JJ09
3C002KK05
3C002LL05
3C022MM06
3C022MM15
3C707AS05
3C707BS10
3C707FS01
3C707FT11
(57)【要約】
【課題】工具本体に装着されたスローアウェイチップのコーナチェンジ作業を自動で行うことができる新規な構成のチップ脱着装置を提供する。
【解決手段】工具本体1のチップ取付座4に対しチップ10の取り外し及び再装着を行うチップ脱着装置28は、工具本体保持部30と、チップ固定ボルト20を回転させるナットランナ40と、工具本体1から取り外されたチップ10を一時的に載置させるチップ置台50と、ロボットハンド59にてチップ10を保持し、チップ置台50と工具本体1との間でチップ10を搬送する搬送ロボット55と、を備えている。搬送ロボット55は、チップ置台50上に載置されたチップ10に対するチップ保持位置を、チップ置台50に搬送する際の第1のチップ保持位置とは周方向に異なる位置の第2のチップ保持位置に切り替え、チップ10をチップ取付座4に搬送する動作を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体のチップ取付座に対しスローアウェイチップの取り外し及び再装着を行うチップ脱着装置であって、
前記工具本体を保持する工具本体保持部と、
前記スローアウェイチップを固定するチップ固定ボルトの頭部に係合して前記チップ固定ボルトを回転させるナットランナと、
前記工具本体から取り外された前記スローアウェイチップを一時的に載置させるチップ置台と、
ロボットアームの先端部に設けられたロボットハンドにて前記スローアウェイチップを保持し、前記チップ置台と工具本体との間で前記スローアウェイチップを搬送する搬送ロボットと、
を備え、
前記搬送ロボットは、前記チップ置台上に載置された前記スローアウェイチップに対するチップ保持位置を、前記チップ置台に搬送する際の第1のチップ保持位置とは前記スローアウェイチップの周方向に異なる位置の第2のチップ保持位置に切り替え、前記スローアウェイチップを前記チップ取付座に搬送する動作を実行する、チップ脱着装置。
【請求項2】
前記工具本体保持部は、前記工具本体をその軸心が水平方向となるように且つ前記軸心周りに回転可能に保持する、請求項1に記載のチップ脱着装置。
【請求項3】
前記ロボットハンドは前記スローアウェイチップと対向する面に2本の吸着パッドを備えており、
これら吸着パッドの軸心を含む平面の平面視において、それぞれの吸着パッドの軸心は基端側から先端側に向かって互いに交差する方向に傾斜している、請求項1,2の何れかに記載のチップ脱着装置。
【請求項4】
前記チップ置台は、水平方向に平坦なチップ載置面と、該チップ載置面から鉛直方向上向きに延びて前記スローアウェイチップの貫通穴に内嵌可能な軸体と、を備えている、請求項1~3の何れかに記載のチップ脱着装置。
【請求項5】
工具本体のチップ取付座に取り付けられたスローアウェイチップの姿勢を変えて未使用のコーナを前記工具本体の前面側に突出させるコーナチェンジの方法であって、
前記工具本体を保持する工具本体保持部と、
前記スローアウェイチップを固定するチップ固定ボルトの頭部に係合して前記チップ固定ボルトを回転させるナットランナと、
前記工具本体から取り外された前記スローアウェイチップを一時的に載置させるチップ置台と、
ロボットアームの先端に設けられたロボットハンドにて前記スローアウェイチップを保持し、前記チップ置台と工具本体との間で前記スローアウェイチップを搬送する搬送ロボットと、
を備えたチップ脱着装置を用いて、
前記チップ固定ボルトを緩めて、前記チップ取付座と前記スローアウェイチップとの固定を解除するステップと、
固定解除された前記スローアウェイチップを前記搬送ロボットのロボットハンドで保持して搬送し、前記チップ置台上に載置するステップと、
前記チップ置台上に載置された前記スローアウェイチップに対するチップ保持位置を、前記チップ置台に搬送する際の第1のチップ保持位置とは前記スローアウェイチップの周方向に異なる位置の第2のチップ保持位置に切り替えるステップと、
前記第2のチップ保持位置で保持され前記チップ取付座に搬送された前記スローアウェイチップの側面を前記チップ取付座の拘束面に押し付けながら、前記チップ取付座に前記チップ固定ボルトを再びねじ込んで前記スローアウェイチップを前記チップ取付座に固定するステップと、
を実行する、スローアウェイチップのコーナチェンジ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はチップ脱着装置およびスローアウェイチップのコーナチェンジ方法に関し、特にスローアウェイチップのコーナチェンジ作業を自動で行うことが可能なチップ脱着装置およびスローアウェイチップのコーナチェンジ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フライス加工等で用いられるスローアウェイ式切削工具では、工具本体の先端部に形成された複数のチップ取付座にそれぞれスローアウェイチップが取り付けられている。スローアウェイチップの取付固定構造としては、スローアウェイチップに上下面を貫通する貫通穴を設け、かかる貫通穴を挿通させたチップ固定ボルトをチップ取付座の着座面に設けられた雌ねじ穴にねじ込むことで、スローアウェイチップをチップ取付座に取付固定するものを例示することができる。
【0003】
スローアウェイ式切削工具では、コーナチェンジを行ってチップコーナを有効利用する方法が採られるが、コーナチェンジの作業では、狭い作業スペースにおいて固定ボルトを緩締しつつ当該スローアウェイチップを工具本体から取外し、その姿勢を変えて未使用の他のコーナを工具本体の前面側に突出させて再装着しなければならず、コーナチェンジ作業に長い時間を要していた。このような問題は工具本体に多数のスローアウェイチップが装着されている場合に特に顕著となり、多数のスローアウェイチップが装着された工具本体におけるコーナチェンジ作業の自動化が求められていた。
【0004】
スローアウェイチップのコーナチェンジ作業を自動で行うための装置としては、例えば下記特許文献1に記載されてものがある。この特許文献1では、ナットランナとコーナチェンジ手段を備えたコーナチェンジマシンを用いて、工具本体に形成されたチップ取付座とクサビ状部材とでスローアウェイチップを挟持して固定する切削工具に対し、ナットランナを用いてクサビ状部材を締め付けているネジを若干緩めた後、コーナチェンジ手段を用いてチップ取付座とクサビ状部材との間の隙間内でスローアウェイチップを回転させてコーナチェンジを行う点が開示されている。
しかしながら、スローアウェイチップの固定構造が異なる場合や、チップ取付座の近傍にコーナチェンジ手段を動かすためのスペースが確保できない場合には、かかるコーナチェンジマシンを採用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、工具本体に装着されたスローアウェイチップのコーナチェンジ作業を自動で行うことができる新規な構成のチップ脱着装置およびこれを用いたスローアウェイチップのコーナチェンジ方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して本発明のチップ脱着装置は、工具本体のチップ取付座に対しスローアウェイチップの取り外し及び再装着を行うチップ脱着装置であって、
前記工具本体を保持する工具本体保持部と、
前記スローアウェイチップを固定するチップ固定ボルトの頭部に係合して前記チップ固定ボルトを回転させるナットランナと、
前記工具本体から取り外された前記スローアウェイチップを一時的に載置させるチップ置台と、
ロボットアームの先端部に設けられたロボットハンドにて前記スローアウェイチップを保持し、前記チップ置台と工具本体との間で前記スローアウェイチップを搬送する搬送ロボットと、
を備え、
前記搬送ロボットは、前記チップ置台上に載置された前記スローアウェイチップに対するチップ保持位置を、前記チップ置台に搬送する際の第1のチップ保持位置とは前記スローアウェイチップの周方向に異なる位置の第2のチップ保持位置に切り替え、前記スローアウェイチップを前記チップ取付座に搬送する動作を実行することを特徴とする。
【0008】
このように規定されたチップ脱着装置によれば、スローアウェイチップを工具本体から取り外し、その姿勢を変えて未使用の他のコーナを工具本体の前面側に突出させて再装着する一連の動作を自動で行うことができる。
本発明のチップ脱着装置では、未使用の他のコーナを工具本体の前面側に突出させるために必要な、チップ取付座でスローアウェイチップを回転させる動作に換えて、チップ取付座とは別途に設けられたチップ置台上でチップ保持位置を切り替える動作を実行する。このためチップ取付座でスローアウェイチップを回転させる場合に比べて、チップ取付座近傍での搬送ロボットが動く領域は狭い範囲に限定され、搬送ロボットと工具本体との干渉を回避することができる。
【0009】
ここで前記工具本体保持部は、前記工具本体をその軸心が水平方向となるように且つ前記軸心周りに回転可能に保持することができる。
このようにすれば、工具本体を所定角度回転させることで、コーナチェンジ作業の対象となるスローアウェイチップおよびこれを保持するチップ取付座の底面を略水平に維持してコーナチェンジ作業を実行することができ、作業中での意図しないスローアウェイチップの落下を防止することができる。
【0010】
また本発明のチップ脱着装置では、前記ロボットハンドの、前記スローアウェイチップと対向する面に2本の吸着パッドを備えることができる。この場合、これら吸着パッドの軸心を含む平面の平面視において、それぞれの吸着パッドの軸心を基端側から先端側に向かって互いに交差する方向に傾斜させることができる。
このようにすることで、平面視で多角形形状をなすスローアウェイチップの2箇所の側面をそれぞれ吸着パッドで安定的に保持することができる。
【0011】
また本発明のチップ脱着装置では、前記チップ置台を、水平方向に平坦なチップ載置面と、該チップ載置面から鉛直方向上向きに延びて前記スローアウェイチップの貫通穴に内嵌可能な軸体と、を備えた構成とすることができる。
このようにすることで、チップ置台上に載置したスローアウェイチップの径方向の移動が軸体によって阻止され、チップ置台上でスローアウェイチップに対するチップ保持位置を切り替える際の吸着ミスや位置ズレを防止することができる。
【0012】
また本発明のスローアウェイチップのコーナチェンジ方法は、工具本体のチップ取付座に取り付けられたスローアウェイチップの姿勢を変えて未使用のコーナを前記工具本体の前面側に突出させるコーナチェンジの方法であって、
前記工具本体を保持する工具本体保持部と、
前記スローアウェイチップを固定するチップ固定ボルトの頭部に係合して前記チップ固定ボルトを回転させるナットランナと、
前記工具本体から取り外された前記スローアウェイチップを一時的に載置させるチップ置台と、
ロボットアームの先端に設けられたロボットハンドにて前記スローアウェイチップを保持し、前記チップ置台と工具本体との間で前記スローアウェイチップを搬送する搬送ロボットと、
を備えたチップ脱着装置を用いて、
前記チップ固定ボルトを緩めて、前記チップ取付座と前記スローアウェイチップとの固定を解除するステップと、
固定解除された前記スローアウェイチップを前記搬送ロボットのロボットハンドで保持して搬送し、前記チップ置台上に載置するステップと、
前記チップ置台上に載置された前記スローアウェイチップに対するチップ保持位置を、前記チップ置台に搬送する際の第1のチップ保持位置とは前記スローアウェイチップの周方向に異なる位置の第2のチップ保持位置に切り替えるステップと、
前記第2のチップ保持位置で保持され前記チップ取付座に搬送された前記スローアウェイチップの側面を前記チップ取付座の拘束面に押し付けながら、前記チップ取付座に前記チップ固定ボルトを再びねじ込んで前記スローアウェイチップを前記チップ取付座に固定するステップと、
を実行することを特徴とする。
【0013】
このように規定されたスローアウェイチップのコーナチェンジ方法によれば、スローアウェイチップを工具本体から取外し、その姿勢を変えて未使用の他のコーナを工具本体の前面側に突出させて再装着する一連の動作を自動で行うことができる。
本発明のコーナチェンジ方法では、未使用の他のコーナを工具本体の前面側に突出させるために必要な、チップ取付座でスローアウェイチップを回転させる動作に換えて、チップ取付座とは別途に設けられたチップ置台上でチップ保持位置を切り替える動作を実行する。このためチップ取付座でスローアウェイチップを回転させる場合に比べて、チップ取付座近傍での搬送ロボットが動く領域は狭い範囲に限定され、搬送ロボットと工具本体との干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】コーナチェンジが実施される工具本体を示した斜視図である。
【
図2】
図1のチップ取付部を拡大して示した図で、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態のチップ脱着装置の概略構成を示した図である。
【
図5】同実施形態のチップ脱着装置を構成するナットランナを示した図である。
【
図6】
図4のロボットハンドを拡大して示した図である。
【
図7】同実施形態のチップ脱着装置を用いたコーナチェンジ作業に関する動作の説明図である。
【
図8】
図7に続くコーナチェンジ作業に関する動作の説明図である。
【
図9】
図8に続くコーナチェンジ作業に関する動作の説明図である。
【
図10】
図9に続くコーナチェンジ作業に関する動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1はコーナチェンジが実施される工具本体を示した斜視図である。同図において、1はフライス加工に用いられる工具本体で、軸心1aを中心とする略円盤状をなしている。工具本体1の先端外周部には、略等間隔に6つのチップ取付座4が設けられており、それぞれのチップ取付座4にはスローアウェイチップ(以下、単にチップと称する場合がある)10が取り付けられている。
【0016】
図2は工具本体1のチップ取付部を拡大して示した図で、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B断面図である。また
図3はチップ取付部の分解斜視図である。これら
図2、
図3で示すように、チップ10はチップ固定ボルト20を介してチップ取付座4に固定されている。
【0017】
チップ取付座4は、着座面となる底面5と、該底面5から立ち上がって互いに略直角に交差する2つの側面6a、6bとを有している。底面5は、軸心1aを含む任意の平面と略平行に形成されており、略直交する方向にチップ固定ボルト20に螺合する雌ねじ穴7が設けられる。一方、側面6a、6bはチップ10を位置決めするための拘束面で、チップ10の側面が当接する。
【0018】
チップ10は、略正方形板状をなしており、チップ取付座4の底面5と接する下面11と、下面11に対向する上面12と、これら下面11および上面12の縁部同士を周方向に沿って繋いだ側面13と、を備えている。チップ10は、その上面12の4つのコーナ14(14a、14b、14c、14d)と、隣り合うコーナの間に延びる4つの辺稜とが切刃とされており、4つのコーナ14をそれぞれ切刃として使用することができる。
図2の(A)の例では、コーナ14aを切刃として使用すべく工具本体1の前面側に突出させている。
またチップ10には、上面12および下面11の中央部を貫通する貫通穴16が形成されている。この貫通穴16の内壁面には、チップ10の(貫通穴16の)軸心側に向かって凸をなすように構成された被押圧面16aが形成されている。
【0019】
チップ固定ボルト20は、円錐台形状をなす頭部21と、チップ取付座4の雌ねじ穴7と螺合する雄ねじ部23と、を有している。頭部21のテーパ状の周面22は押圧面とされており、チップ固定ボルト20がチップ取付座4の雌ねじ穴7に締め込まれた状態で、頭部21の下部に形成された周面22がチップ10の貫通穴16の被押圧面16aに当接する。
【0020】
このように構成された工具本体1では、チップ10がその下面11をチップ取付座4の着座面5に当接させるように載置され、且つチップ10の側面13がチップ取付座4の側面6a、6bに押し付けられた状態で、貫通穴16を挿通するチップ固定ボルト20がチップ取付座4の雌ねじ穴7にねじ込まれることで、チップ10がチップ取付座4に締結固定される。
【0021】
次に本実施形態のチップ脱着装置28について説明する。
図4は、チップ脱着装置28の概略構成を示した平面図である。チップ脱着装置28は、工具本体1のチップ取付座4に対してチップ10を取り外し、また再装着するための装置で、工具本体1を保持する工具本体保持部30と、ナットランナ40(
図5参照)と、チップ置台50と、搬送ロボット55と、を備えている。チップ脱着装置28を構成するこれら装置は、図示を省略する制御部によってその動作が制御されている。
【0022】
工具本体保持部30は、工具本体1と嵌合して、工具本体1をその軸心1aが水平となるように横向きに支持する軸体31と、軸体31を介して工具本体1を軸心1a周りに回転させる駆動モータ等からなる回転手段33と、を有しており、水平に保持した工具本体1をその軸心1a周りに所定角度ずつ間欠的に回転させることができる。
【0023】
ナットランナ40は、チップ固定ボルト20を締め付ける際、また緩める際に用いられるもので、
図5で示すように、モータや遊星歯車機構などを収容する本体部41と、本体部41から下向きに延びる出力軸42と、を備えている。出力軸42の先端はチップ固定ボルト20の頭部21と係合するレンチ部43とされている。
またナットランナ40は、図示を省略するボルト吸着手段を備えており、
図5で示すようにレンチ部43に係合したチップ固定ボルト20を保持可能とされている。
【0024】
ナットランナ40は、
図4で示す支持部材46によって支持されており、
図5で示すように、対象となるチップ取付座4の上方、詳しくは雌ねじ穴7の上方に配置され、且つ雌ねじ穴7に離接可能に前進および後退可能とされている。そして、出力軸42を正逆両方向に回転させることでチップ固定ボルト20を締め付け、また緩めることができる。
【0025】
チップ置台50は、
図4で示すように、工具本体保持部30に隣接して配置され、工具本体1から取り外したチップ10を一時的に載置させる置台で、水平方向に平坦なチップ載置面51と、その略中央部において上向きに延びる軸体53とを備えている。軸体53はチップ10の貫通穴16に内嵌可能とされており、載置されたチップ10が意図せず前後および左右方向に移動してしまうのを防止している。
【0026】
搬送ロボット55は、基台56と、基台56に支持されたロボットアーム57と、ロボットアーム57の先端に装着されたロボットハンド59と、を備えている。
ロボットアーム57は回転又は屈曲する複数の関節部を有し、ロボットアーム57の先端部58は上下、左右、及び前後方向に、即ち3次元方向に移動可能とされている。
【0027】
本例のロボットハンド59はチップ保持部として構成されており、
図6で示すように、ロボットアーム57の先端部58に取り付けられたチップ保持部本体62と、チップ保持部本体62の前面63に取り付けられた2本の吸着パッド65A、65Bと、を備えている。
図6で示すように、チップ保持部本体62の前面63は平面視凹状をなしている。前面63における幅方向の端部近傍には、それぞれパッド取付部64A、64Bが取り付けられ、その先端部に吸着パッド65A、65Bが装着されている。
【0028】
ここで、吸着パッド65A、65Bは、吸着パッド65A、65Bのそれぞれの軸心Pを含む平面の平面視において、それぞれの吸着パッドの軸心Pがロボットハンド59の基端側から先端側に向かって互いに交差する方向に傾斜している。そして同図で示すように、吸着パッド65A、65B先端の各吸着面は、チップ10のコーナ(例えば14a)を挟んでその両側に位置する2つの側面(例えば13a,13b)と略同様の傾きを有することとなり、チップ10の2箇所の側面を吸着パッド65A、65Bで安定的に保持することができる。
なお、これら吸着パッド65A、65Bはそれぞれ配管66A、66Bと接続されており、配管66A、66Bを介して図示を省略する外部の負圧発生源に接続されている。
【0029】
次にチップ脱着装置28を用いたコーナチェンジ作業の動作について説明する。
ここでは、
図4で示すように、工具本体1が工具本体保持部30に保持され、ナットランナ40および搬送ロボット55のロボットハンド59が工具本体1から所定距離離れた位置で待機状態にあるものとする。
【0030】
先ず、工具本体保持部30にて保持された工具本体1を軸心1a周りに回転させて、対象とするチップ10を上向き且つ略水平状態とする(
図4参照)。
そしてナットランナ40を下降させ、その先端部43をチップ固定ボルト20の頭部21に係合させ、チップ固定ボルト20を緩める。そして
図5で示すように、チップ固定ボルト20をチップ10の上方に引き抜き、チップ取付座4とチップ10との固定を解除する。
【0031】
次に
図7の(I)で示すように、固定解除されたチップ10に対しロボットハンド59を接近させて、チップ10の、今まで切刃として使用していたコーナ14aを挟んでその両側に位置する2つの側面13a、13bをロボットハンド59で(詳しくは吸着パッド65A、65Bで)吸着する。ここでは側面13a、13bを吸着することにより規定されるチップ保持位置を第1のチップ保持位置とする。
ロボットハンド59が第1のチップ保持位置を維持した状態で、搬送ロボット55はチップ10をチップ取付座4から取り出しチップ置台50に向けて搬送し、
図8の(II)で示すように、軸体53に外嵌させた状態でチップ10をチップ置台50上に載置する。
【0032】
その後、チップ10との吸着を解除し、ロボットハンド59はチップ10から少し離れた場所に移動する(
図9の(III)参照)。そして、チップ置台50周りに90°回転し(
図9の(IV)参照)、新たな切刃とするコーナ14bを挟んでその両側に位置する2つの側面13b、13cを吸着パッド65A、65Bで吸着する(
図9の(V)参照)。これによりロボットハンド59におけるチップ保持位置は、それまでの第1のチップ保持位置(側面13a、13b)からチップ10の周方向に異なる位置の第2のチップ保持位置(側面13b、13c)に切り替えられる。
【0033】
そしてロボットハンド59が第2のチップ保持位置を維持した状態で、搬送ロボット55はチップ10を元のチップ取付座4に搬送する。詳しくは
図10の(VI)で示すようにチップ取付座4の前面側から真直ぐチップ取付座4に向かってチップ10を装入する。更には
図10の(VII)で示すように、チップ10の側面13a、13dをチップ取付座4の拘束面6a、6bに押し付けることでチップ10の位置が特定される。
【0034】
そしてこの状態で、即ちチップの側面13a、13dを前記チップ取付座4の拘束面6a、6bに押し付けた状態で、チップ取付座4にチップ固定ボルト20を再びねじ込むことで未使用のコーナ14bを工具本体1の前面側に突出させた状態で、チップ10がチップ取付座4に固定される。これでこのチップ10に対するコーナチェンジが完了する。
【0035】
続いて、ナットランナ40およびロボットハンド59を工具本体1から離間する方向に後退させて
図4で示す待機状態に戻し、工具本体保持部30を駆動させて工具本体1を回転させることにより、隣接のチップ取付座4に装着されていた他のチップ10を、コーナチェンジを行うための所定位置(上向き且つ略水平状態となる位置)に配置して、今度はそのチップ10に対して同様の手順によりコーナチェンジを実施する。そして全てのチップ10に対して繰り返すことで、工具本体1に対するコーナチェンジの作業が完了する。なお、上記の作業手順は、図示しない制御部に予め設定しておいたプログラムに基づいて、回転手段33、ナットランナ40、および搬送ロボット55を作動させることにより自動化が可能である。
【0036】
以上、コーナチェンジの動作について説明したが、チップ脱着装置28は新規のチップ10が収容されたチップ供給部70(
図4参照)を備えており、既設のチップを新規のチップに交換する動作を実行することも可能である。その際には、上記のナットランナ40および搬送ロボット55を用いて既設のチップを工具本体1のチップ取付座4から取り外し、所定の場所に廃棄する。その後にチップ供給部70内の新規のチップを保持しチップ取付座4に搬送し、かかる新規のチップをチップ取付座4に固定する。
【0037】
以上のように規定されたチップ脱着装置28によれば、チップ10を工具本体1から取り外し、その姿勢を変えて未使用の他のコーナを工具本体1の前面側に突出させて再装着する一連の動作を自動で行うことができる。
本実施形態のチップ脱着装置28では、未使用の他のコーナを工具本体1の前面側に突出させるために必要な、チップ取付座4でチップ10を回転させる動作に換えて、チップ取付座4とは別途に設けられたチップ置台5上でチップ保持位置を切り替える動作を実行する。このため、本実施形態のチップ脱着装置28ではチップ取付座4上でチップ10を回転させる必要なく、チップ取付座4上でチップ10を回転させる場合に比べて、チップ取付座4近傍において搬送ロボット55が動く領域は狭い範囲に限定され、搬送ロボット55と工具本体1との干渉を回避することができる。
【0038】
また本実施形態のチップ脱着装置28では、工具本体保持部30によって工具本体1がその軸心1aが水平方向となるように且つ前記軸心1a周りに回転可能に保持されている。
このため、工具本体1を所定角度回転させ、コーナチェンジの対象となるチップ10およびこれを保持するチップ取付座4の底面5を略水平に維持してコーナチェンジ作業を実行することができ、作業中での意図しないチップ10の落下等を防止することができる。
【0039】
また本実施形態のチップ脱着装置28では、ロボットハンド59の、チップ10と対向する面63に2本の吸着パッド65A、65Bを備えており、これら吸着パッド65A、65Bは、その軸心Pを含む平面の平面視において、それぞれの吸着パッド65A、65Bの軸心Pを基端側から先端側に向かって互いに交差する方向に傾斜させている。このため、正方形形状をなすチップ10の2箇所の側面(例えば13a、13b)をそれぞれ吸着パッド65A、65Bで安定的に保持することができる。
【0040】
また本実施形態のチップ脱着装置28では、チップ置台50が、水平方向に平坦なチップ載置面51と、該チップ載置面51から鉛直方向上向きに延びてチップ10の貫通穴16に内嵌可能な軸体53と、を備えている。このため、チップ置台50上に載置したチップ10の径方向の移動が軸体53によって阻止され、チップ置台50上でチップ10に対するチップ保持位置を切り替える際の吸着ミスや位置ズレを防止することができる。
【0041】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまでも一例示である。例えば上記実施形態では、チップ保持位置を、第1のチップ保持位置から第2のチップ保持位置に切り替えるにあたって、ロボットハンド59を回転移動させているが、これに換えてチップ置台50をその軸心周りに回転させて、チップ置台50上のチップ自体を回転させることも可能である。
また本発明のチップ脱着装置では、コーナチェンジ作業中においてチップを保持するロボットハンド59をその軸心周りに180°回転させて上下面を裏返し、チップの上面だけでなく下面を切刃として使用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 工具本体
1a 軸心
4 チップ取付座
10 スローアウェイチップ
20 チップ固定ボルト
21 頭部
28 チップ脱着装置
30 工具本体保持部
40 ナットランナ
50 チップ置台
51 チップ載置面
53 軸体
55 搬送ロボット
57 ロボットアーム
58 先端部
59 ロボットハンド
63 前面
65A、65B 吸着パッド
P 軸心