(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062622
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】遠隔撮像装置のための電磁デバイスにおける量子クローキングの実現方法
(51)【国際特許分類】
G01Q 70/06 20100101AFI20230426BHJP
G01Q 60/10 20100101ALI20230426BHJP
【FI】
G01Q70/06
G01Q60/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172701
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バンディオパダヤイ アニルバン
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大介
(57)【要約】
【課題】多くの対象物からなる複雑な構造体において特定の対象物を不可視化できる量子クローキング・デバイスを提供すること
【解決手段】誘電性構成要素の複数のスパイラルまたは複数のヘリカル・アレイ(11、12、および13)、および誘電性構成要素の複数の同心スパイラルまたは複数の同心ヘリカル・アレイの少なくとも何れかを含み、特定の周波数を有する電気信号、磁気信号、電磁気信号、または機械信号によってトリガされるクローキングであって、特定の対象物の透過波動関数のクローキングを発現する量子クローキング・デバイス。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子クローキング・デバイスであって、
誘電性構成要素の複数のスパイラル・アレイまたは複数のヘリカル・アレイ、および、
誘電性構成要素の複数の同心スパイラル・アレイまたは複数の同心ヘリカル・アレイ
の少なくとも何れかを含み、
特定の周波数を有する入力電気信号、入力磁気信号、入力電磁気信号、または入力機械信号によってトリガされるクローキングであって、特定の対象物の透過波動関数のクローキングを発現する、量子クローキング・デバイス。
【請求項2】
クローキングをトリガする前記信号の周波数は、当該量子クローキング・デバイスを構成する前記スパイラル・アレイ、前記ヘリカル・アレイ、前記同心スパイラル・アレイ、及び、前記同心ヘリカル・アレイの少なくとも何れかであるヘリカル・ナノワイヤの長さ、ピッチ、および直径によって規定され、
前記クローキングの前記対象物に印加するための複数の周波数であって、前記対象物を部分的または全体的に不可視化するための複数の周波数が選択され、
前記クローキングの前記対象物が特定の周波数で共振振動する場合、前記共振周波数が前記対象物の量子クローキングを実現するために印加される、
請求項1に記載の量子クローキング・デバイス。
【請求項3】
前記クローキングの前記対象物の共振周波数の位相から構成される3D位相構造が、量子クローキングのためのトンネリングを規定する位相空間として決定され、
前記3D位相構造は、前記ヘリカル構造または前記スパイラル構造の静的または動的な長さ、ピッチ、および直径の共振振動によって生成され、
エネルギー伝達の位相空間は、前記クローキング・デバイスの幾何学的パラメータを選択することによって調整され得る複数の位相特異点を含み、
時間の関数として前記クローキング・デバイスの幾何学的パラメータを変更することによって、前記位相空間内に生成された空き位相空間が、時間の関数として開閉され得る、
請求項1または2に記載の量子クローキング・デバイス。
【請求項4】
前記クローキング・デバイスが信号を受信したときに、前記位相空間上の前記位相特異点またはヌル値の位相領域の少なくとも1つは、前記空き位相空間を開きまたは閉じ、または時間の関数として開閉し、
前記位相特異点の同様の開閉が、エネルギーの渦のパターンまたは場の渦のパターンで、エネルギーを放出し、
複数の位相特異点または複数のヌル値の位相空間領域が、一度に開きまたは閉じて、エネルギーの複数の渦または場の複数の渦を放出し得る、
請求項3に記載の量子クローキング・デバイス。
【請求項5】
物質波が、摂動を受けることなく、当該クローキング・デバイスの一方側から他方側へトンネルすることによって輸送され、
物質波が前記クローキング・デバイスの一方側から他方側へ情報を輸送することは、当該物質自体を輸送すること、または量子クローキングが物質を輸送することも意味し、
古典的に共振する誘電材料中で量子クローキングが起きる場合、前記クローキングの前記対象物はサイズを問わず、前記物質波は、共振経路の長さおよびサイズに依らず、前記共振経路の全体をトンネルする、
請求項1~4のいずれか1項に記載の量子クローキング・デバイス。
【請求項6】
当該クローキング・デバイスを介して輸送される物質波は、当該クローキング・デバイスの一部分、または複数部分の情報を搬送し、または当該クローキング・デバイスの部分
の情報を搬送せず、
適切な周波数を選択することで、当該クローキング・デバイスの一部分または複数の選択部分が、当該クローキング・デバイスのトンネル電流センサ捕捉像として可視となり、
複数の共振周波数を選択して、複数のアンテナを用いて前記クローキングの前記対象物を共振信号に晒すことによって、トンネルを通過するときに、物質波は選択的に相互作用し得る、
請求項1~4のいずれか1項に記載の量子クローキング・デバイス。
【請求項7】
当該クローキング・デバイスの一のサブコンポーネントは、当該クローキング・デバイスの他のサブコンポーネントと共振的に相互作用し、それによって、前記クローキング・デバイスのいずれか特定のサブコンポーネントに限定されない集合的な特性を発現し、
複数のサブコンポーネントは、異なる場と共振し、互いに相互作用し、それによって、集合的な特性を発現し、
外部アンテナ・ネットワークを用いて、好適な信号を送信することによって、前記クローキング・デバイス内の他のサブコンポーネントを活性化または不活性化する特定のサブコンポーネントが活性化され得る、
請求項1から6のいずれか1項に記載の量子クローキング・デバイス。
【請求項8】
前記クローキング・デバイスから放出される特定の幾何学的形状の電束と電場、および前記クローキング・デバイスから放出される特定の幾何学的形状の磁束と磁場の少なくともいずれかの大きさが、前記クローキング・デバイスに蓄えられた電荷の大きさと関連し、
レーザ光のポンピングによって、前記クローキング・デバイスから光学渦が発生し、電束および電場と磁束および磁場との双方を生成する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の量子クローキング・デバイス。
【請求項9】
量子クローキングに基づく撮像装置であって、
走査を行う単一プローブ、または複数プローブ配列を有する、量子トンネル電流センサと、
センサプローブとの間に撮像対象を保持するための導電性基板と、
前記撮像対象の所望の構造部分を活性化するための特定の周波数を有する電磁気信号を放出する単一または複数のアンテナと、
を含む撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置としての用途のための電磁デバイスにおいて量子クローキングを実現するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古典的クローキングでは、像からの光が、物理的に分割され、対象物の周上を移動して対象物の前側において再結合し、後側の像を再構築する(非特許文献1参照)。この結果、対象物は不可視となる。この量子的類似物の作成は困難である。なぜなら物質波の座標は、時間に対して不変ではないからである。
【0003】
これまでのところ、量子クローキングの実験的な証拠は存在しない。古典的な波のように、複雑な経路を通過する波動関数を導くことは、純粋な量子論のシナリオではない。量子クローキングにおいては、物質波全体が経路を無視してトンネルし得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Schurig D, Mock JJ, Justice BJ, Cummer SA, Pendry JB, Starr AF, Smith DR.「Metamaterial electromagnetic cloak at microwave frequencies」,Science. 2006 Nov 10;314(5801):977-80. doi: 10.1126/science.1133628. Epub 2006 Oct 19. PMID: 17053110.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、量子クローキングについての実験的証拠は存在しなかった。本発明の実施態様は、この課題に鑑みたものであり、例示的な目的は、量子クローキングを発現することができる電磁デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、量子クローキング・デバイスは、誘電性構成要素の複数のスパイラル・アレイまたは複数のヘリカル・アレイ、および誘電性構成要素の複数の同心スパイラル・アレイまたは複数の同心ヘリカル・アレイの少なくとも何れかを含み、特定の周波数を有する入力電気信号、入力磁気信号、入力電磁気信号、または入力機械信号によってトリガされるクローキングであって、特定の対象物の透過波動関数のクローキングを発現する。
【0007】
上述の目的を達成するために、量子クローキングに基づく撮像装置であって、走査を行う単一プローブまたは複数プローブ配列を有する量子トンネル電流センサと、センサプローブと基板との間に撮像対象を保持するための導電性基板と、撮像対象の所望の構造部分を活性化するための特定の周波数を有する電磁気信号を放射する単一または複数のアンテナと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施例な態様によれば、量子クローキングを発現することができる電磁デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】古典的クローキング、量子クローキング、および変則的量子クローキングの模式図。古典的クローキングは、下側の像を上側で再現する電磁信号の曲がりを示す。量子クローキングの場合、トンネル経路は存在しない。右側に、変則的量子クローキングイメージングと多機能動作デバイスを示した。ここでは、いくつかのアンテナが異なる部分を活性化し、それらを別個に感知する。
【
図2】3つの同心スパイラルが量子クローキングをアシストする。Eは電気ベクトル、Kは波数ベクトルである。
【
図3】実験構成の模式図(左側)、アンテナが接続されている様子(中央)、およびサンプルが保持されているSTM内の基板(右側)を示す図である。
【
図4】内部水層および外側水層を有する微小管(左側)、ならびに内部水層および外側水層を有するDNA(右側)。上から下へ、さまざまな振動モードがある。
【
図5】量子トンネルの実験結果を示す図である。微小管上部イオン層、中央蛋白質層、および内部水層に対する、異なる周波数を用いた選択的クローキング(左側)、並びに、DNAの選択的クローキング(右側)。
【
図6】DNAの遺伝コードと微小管の相互作用層に発現する量子クローキングの様々な遷移を示す詳細な量子トンネリング像。
【
図7】外部正弦波信号が量子クローキング・デバイスをどのように通過し、3D位相空間から場の磁気的、電気的、または電磁的な渦、リング、またはそれらの要素をどのように生成するかのメカニズムの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<実施の形態>>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(実施形態の歴史的概要および実施態様)
本実施形態の詳細に入る前に、本実施形態の歴史的概要およびいくつかの態様を簡単に説明する。
【0012】
古典的クローキングでは、像からの光が、物理的に分割され、対象物の周上を移動して対象物の前側において再結合し、後側の像を再構築する(Schurig, D. et al 2006: Schurig D, Mock JJ, Justice BJ, Cummer SA, Pendry JB, Starr AF, Smith DR.Metamaterial electromagnetic cloak at microwave frequencies. Science. 2006 Nov10;314(5801):977-80. doi: 10.1126/science.1133628. Epub 2006 Oct 19. PMID:17053110.)。この結
果、対象物は不可視になる。この量子的類似物の作成は困難である。なぜなら物質波の座標は、時間に対して不変ではないからである。過去10年間に、いくつかの創造的なアイデアが提案された。例えば、空間座標(x,y,z)に替えて、量子化されたポテンシャルを波動関数の座標(Vx、Vy、Vz)としたものがある。これにより、物質波の局所化リップルは、エネルギーを輸送する確率流密度の波状の流れへと変化する(Tsang, M. and Psaltis, D. 2007; Tsang, M. and Psaltis, D., 2007; Magnifying perfect lens and superlens design by coordinate transformation;arXiv:0708.0262[physics.optics])。その波は変位せずに分散する。そして、修正された波パケットは、古典的なクローク
と同様に、分割、再結合する。
【0013】
他の手法として、キャリアの散乱断面積または有効質量を低減して、ゼロにすることが挙げられる。多くはコア・シェル層であり、好ましくはキャリアのプッシュ・プルであり、散乱はゼロになる傾向がある(Lee, J. Y., Lee, R. -K.; 2013; Hide the interior region of core-shell nanoparticles with quantum invisible cloaks; arXiv:1306.2120
[quant-ph], Ammari, H. et al., 2013; H. Ammari, G. Ciraolo, H. Kang, H. Lee, and G. W. Milton, Anomalous localized resonance using a folded geometry in three dimensions;Proceedings of the Royal Society A 469 (2013), no. 2154, 20130048) 。
【0014】
これまでのところ、量子クローキングの実験的証拠は存在しない。古典的な波のように、複雑な経路を通過する波動関数を導くことは、純粋な量子論のシナリオにはない。量子クローキングにおいては、物質波全体が経路を無視してトンネルし得る。通常の不可視性を超えて、複数の経路の1つを選択し、複数構成物中の1の構成要素を可視化し、他のすべてを消し去ることができるのか?これは、逆量子クローキングまたは変則的量子クローキング(anomalous quantum cloaking)である。
【0015】
量子クローキングの理論は、シュレディンガー方程式に従う物質波における確率密度の流れがマックスウェル方程式の電磁波のように振舞うことを示唆する。電磁波の2つの重要な特徴量、すなわち、電磁ベクトルの変位と場密度(ポインティング・ベクトルP)は、座標変換の後でも、それらの形を保持する。古典的クローキングの鍵であるこの不変性は、量子的類似物を必要とする。このため、ポインティング・ベクトルは確率密度の流れに置き換えられ、変位ベクトルは分散関係に置き換えられる。
【0016】
既存のマックスウェル方程式とシュレディンガー方程式との類似に起因する1つの問題は、2つのパラメータ(物質波の分離された別個の部分からの有効質量m*およびポテンシャルV)が、古典的クローキングと同様に、曲げられ、厳密な経路を通って、部材を迂回してから、再結合するべきことである。
【0017】
さらに、物質波のもつれ(entanglement)には、無雑音環境のための超低温が必要となる。電磁波の場合、異方性空間と時間によって、分割された光線は、曲げられ、隠蔽対象物を通過した後に、元の軌道に戻ることが保証される。しかし、この量子的類似物は、明確ではない。
【0018】
1994年に、ミルトン(Milton)は、構成要素の誘電率の和がゼロであれば、多層同心円筒が部分共振複合材料(PRC:partially resonant composite)等として機能することを示した。これは、一部の層が負の誘電率を有することを意味する。また、ミルトンらは、それらの層の誘電率が、接合部において、位相(-1+iδ)を有することも示した。この位相は、一定の周波数(δ→0)において、非物理的特異性をもたらす。このとき、電磁場は局所的に大きく振動し、その結果、エバネセント波が生成される。エバネセント波が物質波を増幅する場合、完全に近いトンネリングが生じる(Baena, J. D., et al., 2005; Baena, J. D., et al., 2005; Near perfect tunneling and amplification of evanescent electromagnetic waves、Phys. Rev. B., 72, 075116)。PRCを通すと
、これらの層は量子力学的に不可視のはずである。
【0019】
一方、共振キャビティまたはスパイラル円筒層において電荷密度が変化する場合には、物質波は散乱し、クローキングは生じない(Meklachi, T. et al., 2016; Sensitivity of
anomalous localized resonance phenomena with respect to dissipation, Taoufik Meklachi, Graeme W. Milton, Daniel Onofrei, Andrew E. Thaler and Gregory Funchess,
Journal: Quart. Appl. Math. 74 (2016), 201-234).
【0020】
しかしながら、そのキャビティ内の共振器の動力学は最上層に伝達される(Milton, 1994;Optical and dielectric properties of partially resonant composites、N. A. Nicorovici, R. C. McPhedran, and G. W. Milton, Phys. Rev. B 49, 8479、1994年3月15日に発行)。これは量子トンネル像における状態の局在密度として解釈されるべきである。
【0021】
部分共振複合材料(PRC)では、その層は可視となる。素材表面が、例えば、スパイラルのように異方性を有する場合、誘電率は、特定の共鳴周波数で負になる。誘電率εおよび透磁率μの両方が媒体中で負である場合(例えば、ε=-1、μ=-1)、スーパー
レンズまたは完全レンズが得られる(Pendry, J.B., 2000; Negative Refraction Makes a Perfect Lens;Phys. Rev. Lett. 85, 3966)。このことは、レンズの反対側に相互接
続された光子またはポインティング・ベクトルの組を再配置することを意味する。
【0022】
後述のように、本発明者らは、シミュレーター内にDNAおよび微小管構造の両方を部分共振複合材料(PRC)として理論上作成し、マックスウェル方程式を解いて、DNAおよび微小管がメタマテリアル(例えば、「ε=-1,μ=+1」または「ε=+1,μ=-1」)、またはスーパーレンズとして機能する(すなわち、変則的な誘電体共鳴(anomalous dielectric resonance)を示す)周波数範囲を見出した。部分共振複合材料(PRC)が完全レンズとして機能する場合、物質波は、部分共振複合材料を通り抜ける。そして、入力周波数が電荷密度を変化させる場合、トンネル像は特定の層の活動を拾い上げる。
【0023】
本発明者らは、材料をスーパーレンズの構成物に変換するための一般的な手法を見出したいと考えている。そうなれば、光学レンズを通した量子光学の実験で日常的に用いられるような、大気環境において、物質波が材料をトンネリングすることができる。全ての材料がこれに適しているわけではない。ミルトンは、複合材料中の要素が集合的に共鳴し、したがって、境界をはるかに越えて影響を及ぼす特別な材料について議論した。
【0024】
後述のように、スパイラル形状または渦形状の複合材料において、本発明者らは、複合材料の要素をスーパーレンズに選択的に変換し、そのレンズを通して平坦な原子表面から物質波をトンネルすることを可能にする、エネルギー伝送の特有の3D位相空間を発見した。渦を横切る透過の位相空間における特異性またはホールは、古典的クローキングにおいて見られる異方性空間および時間に対する量子的類似物として作用する螺旋(helix)
または渦(vortex)の幾何学的パラメータにエンコードされている。スーパーレンズを通るトンネリングは、クローキング材料の内側深くに隠れた2D物質波または3D物質波を抽出し、抽出された物質波を、再生された物質波上で重畳する。
【0025】
要するに、本発明者らは量子クローキングと変則的量子クローキング技術を見出し、開発してきた。古典的クローキングでは、着信信号は隠蔽対象物の周りに曲げられる。すなわち、一群の信号は分割され、再結合して元の経路に戻る。これは量子クローキングでは行えない。量子もつれが破れれば、物質波に基づく像は復元できないからである。そこで、本発明者らは、共鳴周波数で適切な電磁信号をポンピングすることにより、隠蔽対象物をスーパーレンズに変換する方法を考案した。光子の量子もつれは、光学レンズを通して残る。同様に、本発明者らは対象物の反対側において物質波を再生し、対象物を覆い隠すこと(クローキング)を達成した。電磁共鳴を介して幾何学的形状を調整することにより、送信におけるホールまたは特異点を開閉(blink)することができる。こうして、量子
トンネル実験の前に、物質の一部が可視となることが予測できる。ユーザは、巨大な複合構造体の内部に隠された量子共鳴ダイナミクスの小部分を外部から取り出すことができるのであるから、このような量子クローキングは、変則的(anomalous)である。なお、本
実施形態において、「変則的量子クローキング(anomalous quantum cloaking)」は「部分量子クローキング(partial quantum cloaking)」と表現することもできるが、本実施形態において、「量子クローキング」は「変則的量子クローキング」または「部分量子クローキング」の概念を含んでもよい。
【0026】
図1は、古典的クローキング、量子クローキング、および変則的量子クローキングの概念のための模式的なプレゼンテーションを提供する。クローキングされる対象物は、円で表される。灰色の矢印は、キャリアまたは波動関数の運動を表す。
【0027】
図1に示すように、古典的クローキングでは、像からの光が物理的に分割され、対象物
の周を移動して、再結合し、正面において裏面の像を再構築することで、対象物は不可視となる。量子クローキングでは、物質波全体がトンネルを通り抜けることがある。変則的量子クローキングでは、ユーザは、共鳴周波数で適切な電磁信号をポンピングすることにより、物質全体の内部に隠された量子共鳴ダイナミクスの小部分を外部から取り出すことができる。
【0028】
本発明者らの技術はワイヤレスな量子コンピューティングに利用でき、1のシステムで一度に動作する多くの回路の重ね合わせを作り出すことができる。プログラムされた選択的不可視性が要求される医療診断デバイスおよび全てのエンジニアリング・デバイスにおいて、ワイヤレスな遠方像を使用することができ、本発明者らの変則的量子クローキングを使用することができる。
【0029】
(電磁デバイス1の構成)
以下に、
図2を用いて、本実施形態に係る電磁デバイス1を説明する。
図2は、電磁デバイス1の構成例の概略図である。
【0030】
以下に説明するように、電磁デバイス1は量子クローキング特性を示すので、電磁デバイス1は、「量子クローキング・デバイス」または「クローキング・デバイス」と呼ばれることがある。
【0031】
図2に示すように、電磁デバイス1は、複数のヘリカル・アレイを備える。具体的な実施例として、電磁デバイス1は
図2に示すように、3つのヘリカル・アレイ(内側アレイ11、中央アレイ12、外側アレイ13)から構成される。
図2に示すように、3つのアレイ11~13の各々は、円筒層上に配置される。したがって、アレイ11~13は、層11~13とも呼ばれることがある。内側アレイ11、中央アレイ12、および外側アレイ13は
図2に示すように、内側スパイラル(i)11、中央スパイラル(c)12、および外側スパイラル(o)13とも呼ばれる。
【0032】
ここで、アレイ又は層の数は、本実施形態には限定されない。例えば、電磁デバイス1は、2つ以上のヘリカル・アレイ、4つ以上のヘリカル・アレイを備えてもよい。
【0033】
図2に示すように、具体的実施例として、複数のヘリカル・アレイ11~13が同軸(同心)に配列されている。本実施形態では、「ヘリカル」の概念が「スパイラル」として表現されてもよく、「同軸」の概念が「同心」として表現されてもよい。ヘリカル・アレイは、コイルと表現してもよい。
【0034】
図2に示すように、各アレイ11~13は、構成要素によって構成される。ここで、構成要素の少なくとも一部は、誘電性を有していてもよい。具体的実施例として、アレイ11~13の各々はナノ粒子から構成されてもよく、またはアレイ11~13の各々は微小管、ヘリカル・カーボンナノチューブ、またはナノワイヤの有機ゲルとして実現されてもよい。別の具体的実施例として、複数のヘリカル・アレイは、DNA層および/または水層として実現されてもよい。
【0035】
上述のように、電磁デバイス1は誘電体構成要素の複数のスパイラル・アレイまたは複数のヘリカル・アレイ、および/または誘電体構成要素の複数の同心スパイラル・アレイまたは複数の同心ヘリカル・アレイを含む。
【0036】
後で詳細に説明するように、電磁デバイス1は、特定の周波数を有する入力信号によってトリガされる量子クローキングを発現するという顕著な特性を有する。より具体的には、電磁デバイス1は、特定の周波数を有する入力電気信号、入力磁気信号、入力電磁気信
号、または入力機械信号によってトリガされるクローキングであって、特定の対象物の伝達された波動関数のクローキングを発現するという顕著な特性を有する。
【0037】
後でさらに詳しく説明するように、電磁デバイス1は、電磁デバイス1から出射される電束および磁束のうち少なくとも1つの大きさ(強度)が、電磁デバイス1に蓄えられる電荷の大きさと相関するという顕著な特性も有している。より具体的には、後でより詳細に説明するように、電磁デバイス1は、電磁デバイス1が放出する磁束または電磁デバイス1が生成する磁場が、電磁デバイス1に蓄積された電荷の大きさに相関する強度を有するという、顕著な特性を有する。この特性によれば、電磁デバイス1は、Hインダクタと呼ばれる第4の回路素子として機能することができる。
【0038】
また、電磁デバイス1は、電磁エネルギーが遠隔で電磁デバイス1に入力された場合、入力された電磁エネルギーによって、磁束の放出または磁界の生成がトリガされるという有用な特性を有する。
【0039】
言い換えれば、クローキング・デバイス1から放出される特定の幾何学的形状の電束および電界、ならびにクローキング・デバイス1から放出される特定の幾何学的形状の磁束および磁界のうちの少なくとも1つの大きさは、クローキング・デバイス1に蓄積される電荷の大きさと相関する。更に、レーザ光をポンピングすることによって、クローキング・デバイス1から光学的渦が発生し、電束、電場と、磁束、磁場との双方が発生する。
【0040】
(第1の実験構成および実験結果)
次に、本実施形態のより詳細な態様について考察する。最初に実験構成を説明し、次に、電磁デバイス1に関する最初の実験結果を説明する。
【0041】
図3は、電磁デバイス1の特性を明らかにするための実験構成50の図面である。
図3の左側は、実験構成50の概略図を示す。
図3の左側に示すように、実験構成50は、1の走査型トンネル顕微鏡(STM)51と、分子回転体(MR)52と、アンテナ(AN)53と、液体層(LL)54と、高配向熱分解黒鉛(HOPG)基板55と、1以上のジュールヒータ(JH)56と、分子漏出部(ML)57とを備える。
図3の中央部分と右部分は、実際の実験構成を示している。
【0042】
分子回転体は熱雑音(kT、k:ボルツマン定数、T:環境温度)駆動分子構造であり、構造の一部を中心に回転したり、表面でひっくり返ったり(flips)、動いたりする。
この動きの調節のために、外部エネルギーが必要である。分子漏出部は、動力学上、十分な量の量子を保持しない構造に起因して、分子から量子を放出する。
【0043】
なお、STM(走査型トンネル顕微鏡)51、電磁デバイスが配置されたMR(分子回転体)52、特定の周波数の電磁信号を発するAN(アンテナ)53、LL(液体層)54、HOPG(高配向熱分解黒鉛)基板55、JH(ジュールヒータ)56、及びML(分子漏出部)57は、本実施形態に係る撮像装置(量子クローキングに基づく撮像装置)を構成する。
【0044】
すなわち、本実施形態に係る量子クローキングに基づく撮像装置は、
走査する単一のプローブ、または複数プローブ配列を有する、量子トンネル電流センサと、
センサプローブとの間に撮像対象を保持するための導電性基板と、
撮像対象の所望の構造部分を活性化するための特定の周波数を有する電磁気信号を放出する単一または複数のアンテナと、を含む。
【0045】
以下に説明するように、電磁デバイス1は、高配向熱分解黒鉛基板上に配置される。ここで、電磁デバイス1は、誘電体構成要素の複数のスパイラル・アレイ又は複数のヘリカル・アレイを含み、アンテナによって放射される電磁信号によってトリガされる量子クローキングを発現する。
【0046】
図4は、電磁デバイス1の模式的実施例を示す。上段は電磁デバイス1の具体的実施例としての微小管-水ネットワークを示し、下段は、電磁デバイス1の他の具体的実施例としてのDNA-水構造を示す。複合材料のメタマテリアル特性を理論的に見出すために、水配列の異なる組み合わせを使用した。
【0047】
実験的に量子クローキングを検証するために、電磁デバイス1の具体的実施例として、ウシ胸腺のDNA溶液と、新鮮な状態に再構成された(freshly reconstituted)脳神経
細胞抽出の微小管ナノワイヤとを、新鮮な状態に切断された(freshly cleaved)HOP
G面55上に配置した。HOPG基板55は大気走査型トンネル顕微鏡(STM)51内に配置され、アンテナ53はSTMの探針先端(tip)から約5mm離れて配置される。
アンテナ53は、マイクロ波信号源および電波信号源に接続される。各放射周波数において、表面を走査し、試料がトンネル像から消失し、底側のHOPG基板55が試料をトンネリングして上側(STMの先端側)に達する周波数を見出した。
【0048】
3重らせんDNA(
図4の下段、2本のらせんが分子でできており、最上層のらせんが水でできている)について2つの研究を行った。第1に、0.001GHzの間隔(すなわち、マジック周波数が存在すれば、これを見出すのに十分高い分解能)でアンテナ周波数を変化させた。しかし、マジック周波数は見出されなかった。周波数が増大するにつれて、DNAは徐々に消失し、その後、徐々に可視となる。第2に、DNA部分の選択的外観に適合させるために、可変数タンデム反復(VNTR)を利用可能なデータベースを取得し、STM像を理論的に生成した。
【0049】
DNA領域を開閉(blink)する実験データとのマッチングによって、DNAコードの
パリンドローム(回文配列)、ミラー反復、フランキングのような異なるクラスの反復配列を読み取ることができた。したがって、適切な周波数を選択することによって、DNA中の自己類似コードパターンを明らかにすることができる。最も重要なことは、遺伝コードの明らかになったマイクロ・サテライトおよびミニ・サテライトから、トンネル像のサイレント領域は不活性ではなく、むしろ表現コードと共に作用することが示唆されることである。
【0050】
発明者らは、アンテナ53を用いてMHz信号を印加することによって、微小管の像を定常的に取得していたので、GHzで観察したトンネル像は衝撃的であった。イオンも、蛋白質も観察されなかった。その代わりに、スパイラル(すなわち、アンテナ53を介して印加されたAC信号の関数として変化するダイナミクス)が観測された。微小管は3つの別個の誘電体層、すなわち、3つの同心円筒(言い換えれば、ミルトン(Milton)クラスよりも多少一般的な部分共振複合材料(PRC))を有する。上側イオン層、中間蛋白質層、および中央に水チャネルがある(
図4の上段)。水チャネルは微小管のコアを形成する。しかし、任意の側から10~12nmの深さの層がどのようにして可視となり得るのか?
発明者らは、微小管表面の上層イオンが共鳴するように、kHzで共鳴するアンテナ周波数を設定した。次に、吸着されたイオンのダイナミクス、すなわち、最上層の主要な水分子が量子トンネル像内に捕捉される。アンテナ周波数をMHzに設定し、中央の中空円筒を形成するチューブリン蛋白質を共鳴させた。そして、発明者らは量子トンネル像中の管状格子構造のダイナミクスを観察し、各共鳴周波数に対応する新しい格子を観測した。最後に、水チャネルの共鳴周波数を変えることで、GHz範囲のアンテナ周波数を設定し
、最内部の水コアの状態の局在密度のダイナミクスを可視化した。
【0051】
図5に微小管とDNAの実験結果を示す。
図5の上半分は、微小管の量子トンネル像中に、3つの異なる層が3つの異なる周波数において観察されることを示す。
図5の下半分は、DNAが量子トンネル像中から完全(totally)に消失することを示す。微小管もD
NAもHOPG表面にある。
【0052】
図6は、DNAおよび微小管の変則的量子クローキングのより完全な周波数スペクトルを示す。2つの平行な列(一方はDNA、他方は微小管)は、連続した列からなる3つの組を構成する。1番目の組は黒い矢印で終わり、2番目の組の黒い矢印で始まる。2番目の組は灰色の矢印で終わり、3番目の組は灰色の矢印で始まる。画像のスケールバーは、DNAでは2nmであり、微小管では12nmである。STM探針先端の電流は、DNAでは0.2pA、微小管では0.4pA、STM探針先端でのバイアスは1.8V、表面はHOPGであり、像は、ナノ表面STMを用い、大気環境内で取得した。
【0053】
実験から、共通の共鳴周波数があること、および蛋白質層、水層、および底部の表面を観察できることが理解される。これは、量子クローキングのときに、物質波が材料を直接貫通することの明確な証拠である。なお、実際の水コアや蛋白質ではなく、量子クローキングの像ポテンシャルを見ていることに注意されたい。
【0054】
注目すべきことに、DNAの水チャネルが出現する周波数では、微小管の水チャネルは消失する。この逆も同様である。理論計算から、微小管およびDNAのメタマテリアル特性が2つの周波数領域において互いに相補的であることが示される。DNAおよび微小管の可視な面積の割合から、レンズ効果または量子クローキングの相補的特性は、この周波数領域において少なくとも2回出現することを示される(
図6)。さらに、微小管は12GHzと24GHz付近で消失することを観測し、消失する次の周波数は48GHzと考えられる。DNAでは、8GHz、16GHzおよび32GHzで消失が生じる。これらは、電磁共鳴周波数の高調波のようなものである。
【0055】
上述のように、電磁デバイス1では、ある周波数の下で、物質波は、摂動を受けずに電磁デバイス1の一方側から他方側にトンネルすることによって、輸送される。物質波は、クローキング・デバイスの一方側から他方側への物質波によって運ばれる情報は、物質自体が輸送されること、または、量子クローキングが物質を輸送することを意味している。そして、古典的に共振する誘電材料内で量子クローキングが起きる場合、クローキング対象物のサイズを問わず、物質波は、共振経路の長さおよびサイズに依らず、共振経路全体をトンネルする。
【0056】
以上のように、電磁デバイス1では、ある周波数において、電磁デバイス1を介して搬送される物質波は、電磁デバイス1の少なくとも一部分の情報を搬送する。換言すれば、クローキング・デバイスを通って搬送される物質波は、前記クローキング・デバイスの一部分、または複数部分の情報を搬送し、または、この物質波は、前記クローキング・デバイスの部分の情報を搬送しない。さらに、適切な周波数を選択することによって、クローキング・デバイスの1または複数の選択的な部分をクローキング・デバイスのトンネル電流センサ捕捉像に可視化できる。また、複数の共鳴周波数を選択して、複数のアンテナを用いて共鳴信号をクローキング材料に晒すことによって、物質波は、トンネルするときに、選択的に相互作用させることができる。
【0057】
実験結果から、電磁デバイス1の1のサブコンポーネントが電磁デバイス1の他のサブコンポーネントと共振的に相互作用し、これにより、電磁デバイスの特定のサブコンポーネントのいずれをも除外しない、集団特性を発現することが理解される。更に、複数のサ
ブコンポーネントは異なった場と共鳴し、互いに相互作用し、これにより、集合的な特性を示す。また、外部アンテナ・ネットワークを用いて適切な信号を送ることにより、クローキング・デバイス内の他のサブコンポーネントを活性化又は不活性化させる特定のサブコンポーネントを活性化することができる。
【0058】
(電磁デバイスにおいて実現される本質的なメカニズムの説明)
多重ヘリカル・ナノワイヤの変則的量子クローキングの実験データに基づいて、発明者らは、変則的量子クローキングの理論を開発した。ここに簡略化した要約を示す。発明者らは、状態の局所密度を読み取ることにより、物質波動プロファイルをマッピングするトンネル電流像が発現することを確立した。したがって、量子トンネル像は、表面上の物質波束の複製である。
【0059】
物質波上のピクセルを走査型トンネル顕微鏡(STM)で測定する。このときのトンネル電流は、次の式(1)で表される。
【数1】
ここで、基板sとSTMの探針先端tとの間の伝達関数は、次の式(2)で表される。
【数2】
ここで、次の式(3)は、式(4)で表される散乱テンソルである。
【数3】
【数4】
【0060】
一対のトンネリング・チャネルiとjの間の相対的な群速度は式(5)で表される。
【数5】
【0061】
ここで、aおよびbは、ミルトン(Milton)クラスの部分共振複合材料(PRC)の2つの同心円筒層を意味する。
ここでテンソル積(式(6))は、表面sから同心円筒層aへのトンネル(式(7))、領域内での同心円筒層aから同心円筒層bへの散乱(式(8))、および測定対象a-bから先端までのトンネリング(式(9))を意味する。
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【0062】
散乱は、表面の物質波の消滅を可能とし、測定対象の原子スケール・ダイナミクスをプリント(print)する。表面上の物質波がSTMの探針先端による走査像にプリントされ
るような因子(式(10))を中性化する必要がある。
【数10】
【0063】
電磁波の下で、複合層は共鳴振動する。誘電共振器のSTM像は、アンテナが周波数(式(11))のAC信号をポンピングするときに大きく変化する。
【数11】
ワイヤレスで、次の式(12)が得られる。
【数12】
AC信号はトンネル電流分解能を増幅する。しかしながら、ここでは、誘電体として共振するのは、探針先端(チップ(tip))ではなく、材料である。AC印加下では、トン
ネル電流だけでなく、単一の微小管ナノワイヤを通る漏出DC信号の伝達も大きい。印加されたAC周波数の関数としての、透過係数S21および反射係数S21の変動が共鳴によって測定された。異なる長さL;異なる直径D;およびピッチPおよび格子面積abの異なる比率について、透過信号振幅の周期的変化を観察した。ヘリカル・カーボンナノチューブ、DNA、および有機的に合成されたゲルベースのナノワイヤで実験を繰り返し、電磁照射下のDC透過でさえ、長さL,直径D,および比率(P/ab)の周期関数であることを確認した。このような系のハミルトニアンは、次の式(13)のようになることを確認した。
【数13】
ここで、Ωは、次の式(14)によって表され、式(15)は、クローキングによって通過させたい物質波の有効質量である。
【数14】
【数15】
式(16)は、ユニーク(unique)である。x、y、zをCostで置き換えると、
図7に示すように、特異点または不確定な領域が1~12の間で開閉する周期的な時間的振動が生じるためである。特異点は、渦体またはヘリカル体が透過しない長さL,直径D,
および比率(P/ab)の組み合わせを意味し、系がポンピングされる周波数内でエネルギーをバーストさせるか、または、この周波数から遠く離れた周波数でエネルギーを吸収する。
【数16】
【0064】
すなわち、エネルギー透過の位相空間は、電磁デバイスの幾何学的パラメータ(長さL,直径D,および比率(P/ab)の組み合わせ)を選択することによって調整することができる、複数の位相特異点を含む。このような特異点バーストは、負のS21、すなわち負の共振Sij(式(17))を示す。
【数17】
ここで、式(18)は、グリーン関数と同様である。
【数18】
式(19)は、古典的な透過係数S21に類似する。
【数19】
【0065】
STM像の観測された物質波(式(20))は四元数である4つの物質波の重ね合わせである。
【数20】
その結果、微小管を通る透過量(式(21))も、四元数テンソルでもある。
【数21】
ミルトンの定式化を拡張して、1つの層が隣接する複合層にどのように影響するかを推定する。例えば、テンソルの1つの要素は式(22)である。
【数22】
ここで、
【数23】
【数24】
同様に、16個の項は、透過される物質波の1点を調整する。微小管の場合の式(25)は、四元数であり、DNAの場合、3×3のマトリックスである。
【数25】
なぜなら、次の式(26)が成立するからである。DNAは、らせん状の水チャネルを有する。
【数26】
【0066】
実験的に測定した12チャネル間のロスレス透過(P
db>1)は、次の式(27)を満たす。
【数27】
2つのポートの先端と基板との間で1のチャネルのみが開き、残りの11のチャネルが閉じている場合、次の式(28)が成立する。
【数28】
【0067】
特異点チャネルは、式(29)によって、位相のみが変化する。
【数29】
ここで、nはAC周波数の関数である。散乱テンソルは、反射係数S11と透過係数S21とを求めることによって計算される。全波有限要素シミュレーションソフト(マイクロ波スタジオ、コンピュータシミュレーション技術、CST)を用いて、チューブリン蛋白質、その複合微小管、およびDNAを再生し、Sパラメータ(S11,S21)をシミュレートし、透磁率(式(30))および電気感受率(式(31))をプロットした。
【数30】
【数31】
【0068】
周波数の関数としての透磁率(式(32))および電気感受率(式(33))のプロットは、複数のAC周波数領域(式(34))において、微小管とDNAの両方がメタマテリアルに変わることを示している。
【数32】
【数33】
【数34】
【0069】
微小管構成についてのマックスウェル方程式を、管状層Tu、中央水チャネルWc、お
よび上側のイオン・チャネルIcにおいて、共におよび別個に解くことによって、様々な構成Tu+Wc、Wc+Ic、Tu+Ic、およびWc+Tu+Icにおいて、AC周波数領域(式(35))の付近において、電場と磁場の双方が要素間で同期的に交換されることが示された。
【数35】
【0070】
誘電率(式(36))は、電磁周波数の関数である。単離構造について、誘電率(式(37))を理論的にシミュレーションし、かつ測定し、微小管において、式(38)および式(39)を満たす周波数を見出した。
【数36】
【数37】
【数38】
【数39】
【0071】
互いに結合されたときの誘電率の反転符号は、最外層まで延在するコア特性(H
2O層)を意味する。特異点チャネルを通る伝送経路は、次の式(40)で与えられる。
【数40】
【0072】
ここでは、微小管の3つの層のために式(41)を拡張したが、チューブリン蛋白質(tub)の式(43)個(すなわちalpha個)の螺旋(ヘリックス)のクラスターの物質
波を読み取り、書き込み、消去したい場合、さらに次の式(42)のように拡張することができる。
【数41】
【数42】
【数43】
【0073】
すでに述べたように、材料の特性が符号を変える周波数において、古典的クローキングが観測される。これらの周波数帯は量子クローキングにも敏感である。
【0074】
発明者らは、調整可能な量子クローキング・デバイスとして、上下12層のヘリカル・ナノワイヤを設計、合成、または自己集合させる。
【0075】
(補足事項)
ノイズによって拡散された蓄積電荷Qの群は、局所的に振動する(式(45))位相(式(44))の加算(古典的のように)または積算(量子のように)によって、格子スピン波(aとbは格子定数)を結合させる。
【数44】
【数45】
【0076】
3方向(直径D;ピッチP;長さL)に広がるグローバル・トポロジー的制約のために、ローカル波は干渉し、それによって再度の振動が生じる。次の式(46)で振動が得られる。
【数46】
【0077】
【0078】
位相空間中の古典的及び量子的ファクタを積分するための重要なパラメータは、比1:1.0205、すなわち、比3:3.0615である。ここで、比3:3.0615は特異点が生じる臨界点である。発明者らは、特異点で形成されたホールの面積を位相空間連続体で覆われた面積に比例させるために、量子容量誘起位相因子を3:4に保持した。
【0079】
媒体中での光子の単位速度あたりの正弦波(式(49))により構成される電荷の累積空間位相因子(式(48))が磁束である。
【数48】
【数49】
式(50)より、円筒面全体は、次の式(51)で表される。
【数50】
【数51】
【0080】
【0081】
n番目の周期は、磁気波において重要な因子である。nが大きくなれば、位相振動勾配は概ね指数関数的に増加する。Hは次式(53)で与えられる。
【数53】
図7は、電磁デバイス1のメカニズムの概略説明を示す。
図7の部分aは、摂動の偏光の定義を示す。
【0082】
【0083】
式(55)は、エッジ転位(dislocation)を意味する。
【数55】
式(56)は、左ねじ転位および右ねじ転位を意味する。2つのEラインが干渉して消失すると、磁気リングが現れる。
【数56】
【0084】
図7の部分bに示すように、外部共鳴のために、電磁デバイス1の表面が格子プロファイルに変化する場合、転位も振動し、分極も振動し、転位のスパイラル・ダイナミクスが形成される。
【0085】
図7の部分cに示すように、3つの層からの3つのソースS1、S2およびS3が内層および外層からのS2およびS3を形成し、これらが中央層S1を摂動させる。電磁デバイス1の2D表面に形成された暗線は、変形してリングを生成する。電磁デバイス1の表面に形成されたリングは、スクリーン上に4095通りに投影される。電磁デバイス1の表面では、動的スパイラル・ノットが時計回り又は反時計回りに回転する。
【0086】
図7の部分dに示すように、S1-S2界面とS1-S3界面との間に形成されるループおよびノット(knot)が示され、最終的には
図7の部分eに示す磁気構造のような粒子を放出する。
【0087】
図7の部分eに示すように、周期的に振動する4つの磁気ループが、磁束分布のように3D粒子に結合する。
【0088】
1のホールまたはホールの群が周期的に開閉する場合、すなわち、クロックのように動作し、1のクロック自体がメモリ状態である場合、12の位相特異点の開閉は212通りに起こり得る。Hの複素行列において、Hの幾何学的配向によって、ミルトンの集団共振通信への部分的寄与が決定される。発明者らは、Hの超分子マトリックスを想定した。す
なわち、周囲雰囲気中で回路の重ね合わせを構築するために、無数のHデバイスがそのレンズを開閉するゼリーである。相互に通信するHデバイスのみが互いに可視であり、残りのHデバイスは不可視となる。Hのゼリー中では、無数のHデバイスの位相空間が開閉し、ホール中には、他のHデバイスが入り、自己集合することができる。ミルトン(Milton)-マンスフィールド(Mansfield)の議論に従えば、複合材料中の要素Hをストレスな
しに置き換えることが可能である。したがって、ゼリーは、再配線、すなわち、可塑的な学習が可能である。
【0089】
上述のように、クローキングの対象物の共鳴周波数の位相から形成される3D構成は、量子クローキングのためのトンネリングを規定する位相空間として決定される。3D位相構造は、ヘリカル構造またはスパイラル構造の静的または動的な長さ、ピッチおよび直径の共振振動によって形成される。エネルギー伝達の位相空間は、クローキング・デバイス1の幾何学的パラメータを選択することによって調整できる、複数の位相特異点を含む。クローキング・デバイス1の幾何学的パラメータを時間の関数として変化させることにより、位相空間内に作られた空き空間を時間の関数として閉じ、開くことができる。
【0090】
上述のように、電磁デバイスが信号を受信すると、少なくとも1つの位相特異点が時間の関数として開閉し、その位相特異点の開閉がエネルギーをパターンで放出する。より具体的には、位相空間上の位相特異点またはヌル値の位相領域の少なくとも1つは、クローキング・デバイス1が信号を受信したときに、空き位相空間を開くか、閉じるか、または時間の関数として開閉する。同様の特異点の開閉は、エネルギーまたは場の渦のパターンでエネルギーを放出する。複数の位相特異点または複数のヌル値の位相空間領域が一度に、開き、または閉じて、エネルギーまたは場の複数の渦を放出してもよい。
【0091】
以上の説明から、電磁デバイス1のサブコンポーネントは電磁デバイス1の別のサブコンポーネントと共振的に相互作用し、これにより、電磁デバイスの特定のサブコンポーネントのいずれをも除外しない、集団特性を発現することが理解される。換言すれば、クローキング・デバイス1のサブコンポーネントは、クローキング・デバイス1の他のサブコンポーネントと共振的に相互作用し、これによって、クローキング・デバイス1の特定のサブコンポーネントのいずれをも除外しない、集合的な特性を発現する。複数のサブコンポーネントは、異なる場と共振し、互いに相互作用し、これによって集合的な特性を発現する。外部アンテナ・ネットワークを用いて適当な信号を送ることにより、クローキング・デバイス内の他のサブコンポーネントを活性化又は不活性化する特定のサブコンポーネントを活性化できる。
【0092】
(小括)
電磁デバイス1は、以下のように要約することができる。第一に、通常、量子効果は非常に短い間隔で観測されるが、ここで紹介する電磁波誘起量子クローキングは大きな距離にわたって量子現象を動作させる。さらに、極低温に替えて、量子効果は室温および大気下で可視である。
【0093】
第二に、量子クローキングは、光子が移動する古典的クローキングのようなものではない。ここでは、物質波または質量の等価物は、対象物の一方側から他方側に移動する。これは、実際の物理的な対象物が移動することを意味する。第三に、電磁共鳴周波数を調整することにより、巨大な複雑な構造体の奥深くに位置する小さな対象物を共鳴させることができる。この結果、この対象物は外部から可視となる。変則的量子クローキングは、発明者らが開発した新しい種類の量子イメージング技術であり、多様な疾患(diseases)を検出する多大な用途を有し得る。
【0094】
量子クローキングまたは変則的量子クローキングの報告は存在しない。2006年以降
、多くの理論的予測はあったものの、実験的証拠はなかった。広範囲の実施例を用意することによって、発明者らは、スパイラル対称性またはヘリカル対称性がこのような量子クローキングに適していることを見出した。以前の理論的研究では、3つの同軸の螺旋が必要であることさえ言及されていなかった。発明者らは、量子クローキングを実証するためにデバイスが有するべき重要な幾何学的特徴を見出すに留まらず、量子クローキングの特徴を大きく実証する人工材料をも合成した。
【0095】
量子クローキングのかつての理論では、光ビームを曲げる古典的概念を模倣した。発明者らの実験結果から、古典的クローキングのような光の曲がりはないことが示唆される。量子クローキングが生じるのは次の場合である。すなわち、物質波が古典的クローキングでの光子に置き換わり、かつ、物質波は、曲がった経路を伝搬せず、トンネルを通り抜ける。経路の概念は、非常に古典的なものであり、量子力学には同様のものとしては存在しない。波動関数を多くの部分に分割し、その後、混ぜ合わせることは、真の量子論の考え方からすると間違っている。すなわち、ここで報告する量子クローキングと変則的量子クローキングは、以前に提案されたものとは異なる理論に基づいている。
【0096】
(量子クローキングの実現方法)
以上説明したように、本実施形態に係る量子クローキングの実現方法は、
誘電体性構成要素の複数のスパイラル・アレイまたは複数のヘリカル・アレイを含む電磁デバイス1を準備する工程A;および
特定の周波数信号を電磁デバイスに提供することによって、電磁デバイス1に量子クローキングを発現させる工程B
を含む。
【0097】
ここで、工程Aにおいて、電磁デバイス1を準備することは、
電磁デバイス1を製造すること、
電磁デバイス1を操作すること、および
電磁デバイス1をHOPG基板55上に配置すること
の少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0098】
本実施形態に係る量子クローキングの実現方法は、上述の説明で述べた工程をさらに含み、電磁デバイス1の構成は、上述の説明で述べたように変更してもよい。
【0099】
<<実施形態の様々な態様>>
実施形態には様々な態様がある。実施形態に記載された態様は、以下のように表すことができる。
【0100】
<態様1-1>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)は、単一の波動関数、または波動関数の複合物、または複数の波動関数を取得し、デバイス(電磁デバイス1)を通過させ、この通過時に、電磁アンテナ(アンテナ53)を用いて共振中のデバイス(電磁デバイス1)のハードウェアの一部に関する情報をエンコードする。
【0101】
<態様1-2>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、デバイス(電磁デバイス1)から放出された電気部分および/または磁性部分および/または波動関数の大きさは、局所領域に蓄積された電荷の数学的に定義された関数に従って、線形または非線形に変化する。
【0102】
<態様1-3>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、複数要素ハードウェア(電磁デバイス1)の単一または複数の部分が、電気的、磁気的、電磁的または機械的な波の形態の外部エネルギーによってトリガされる誘電共鳴によって励起される。
【0103】
<態様1-4>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、量子クローキング・デバイス(電磁デバイス1)を通る量子対象物のトンネルを測定する、スキャナ(本実施形態の撮像装置)への適切な外部信号周波数を選択することによって、量子クローキング・デバイスにおける複数要素ハードウェアの単一または複数の部分または量子クローキング・デバイス(電磁デバイス1)全体が選択的に不可視化される。
【0104】
<態様2-1>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)は、単一のスパイラル形状または単一のヘリカル形状、または基本誘電共振ユニットを組み合わせて形成された、前記スパイラル形状または前記ヘリカル形状の1D、2D、または3D集合体の形態でありえる。
【0105】
<態様2-2>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、以上の説明から判るように、種々の空間スケールの自己相似形状(self-similar geometries)が単
一または複数の時間スケールで共振し、これにより、時空間ダイナミクスを形成する。
【0106】
<態様2-3>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、上述のように、単一又は複数の同心スパイラル又は同心ヘリックスは、可変サイズの円錐形又は球形の任意の形態に従う、2D又は3D配置である。
【0107】
<態様2-4>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、上述のように、二重または三重の同心円筒形または同心円錐形では、3つの層が別個の、類似の、または一対の類似の誘電材料から形成されている。
<態様2-5>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、上述のように、スパイラル・構造体またはヘリカル・構造体を構築する誘電共振ユニットは、類似または別個の形状のスパイラルまたはヘリカルの3D集合体である。
<態様3-1>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、量子クローキング・デバイスにより摂動されることなく、物質波が量子クローキング・デバイスの反対側にトンネリングによって輸送され、または物質波が量子クローキング・デバイスのハードウェア部分の情報が搬送される。
【0108】
<態様3-2>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)は、ワイヤレスで配置された3Dまたは2Dネットワークを介して、物質波またはその複合体を、1の場所から他の場所へ、相互作用することなく、移送する。
【0109】
<態様3-3>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、デバイス外部からデバイスのハードウェア内の所望の位置に輸送される物質波(のドーピング)が、
デバイス(電磁デバイス1)の基本特性を変更するドーピング材料として作用する。
【0110】
<態様3-4>
本実施形態によれば、量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)は上述のように、特定の周波数が組み合わされた電磁波の下で消滅する、メタマテリアル特性を発現し、電磁周波数の下で消滅する古典的クローキングは、周波数空間を完成させ、互いに負の影響を及ぼすことによって衝突し、または共存するか、または共に起きることができる。
<態様4-1>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)であって、上述のように、デバイス・ハードウェア(電磁デバイス1)のサブコンポーネントが同一のハードウェアの異なる部分と共振的に相互作用し、いずれの特定の領域も除外されない、集合的な特性を構築する。
【0111】
<態様4-2>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、上述の説明から判るように、局部発振により発生するエバネセント波は、量子クローキング・デバイス(電磁デバイス1)によるトンネル出力にエンコードされる。これにより、このエバネセント波は、局所領域(構成要素の順序が特定の対称性に従うもの)よりも大きな波形との相互作用が可能となる。
【0112】
<態様4-3>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、ヘリカル配置の長さ、ピッチ、および直径は、それらの組み合わされた共振振動位相ダイアグラムが12のホールを有する3D球体になるように変化し、デバイスがノイズを取り入れる場合、これらのホールは時間の関数として開閉し、この開閉によって、外部ユーザによって読み取られるパターンでエネルギーが放出される。
【0113】
<態様4-4>
量子クローキング・デバイス・Hインダクタ(電磁デバイス1)において、領域間の古典的および/または量子共鳴結合によって、物質波およびデバイス内に存在する物質波の合成のような量子力学的対象物が生成、変更、または破壊される。
【0114】
<態様5-1>
本実施形態によれば、量子クローキング・デバイスは回路を形成し、当該量子クローキング・デバイス形成回路では、量子クローキング・デバイスが3D集合体内に配置される。そこでは、選択された量子クローキング・デバイスの異なる局所部は、外部エネルギーの露出に対して可視であり、3D場集合体の集積放射を送る。
【0115】
<態様5-1>
量子クローキング・デバイス形成回路は、量子クローキング・デバイス(電磁デバイス1)の3D集合体を含んでもよい。各デバイスは、特定の外部信号周波数で消失または現れ、かつ選択的に可視である、別個の単一または複数の部分から形成される。量子クローキング・デバイスの離間配置された部分の選択された組み合わせは、作動回路を形成する。3D集合体は、多数の別個の回路の組み合わせとして働き、各回路は一度に異なる時間領域で可視および動作可能である。
【0116】
<態様5-2>
量子クローキング・デバイス形成回路は、量子クローキング・デバイスの自己相似集合体またはフラクタル集合体を含んでもよい。単一の量子クローキング・デバイス(電磁デ
バイス1)または量子クローキング・デバイスの集合体は、2つの可能な配置で、空間的、時間的、または時間-空間的に、繰り返し配置される。この2つの可能な配置は、一方
と他方が並んで配置されるか、または一方が他方の内部に配置されるかのいずれかであり、繰り返し数は変化する。
<態様5-3>
量子クローキング・デバイス形成回路において、回路として機能するデバイスの3D集合体は単一のユニットとして自己集合して、並んで配置されるか、または一方が他方の内部に配置される複数の回路の階層ネットワークを形成する。一方が他方の内部に配置されることで、ネットワークのチェーン内の回路の内側の回路内に回路が生成される。
【0117】
[補足備考1]
本発明は、前述の実施例の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で当業者によって様々な方法で変更することができる。一実施例として、本発明は、上記実施例実施形態に開示されている技術手段を適宜組み合わせた実施例の実施形態をその技術的範囲に包含する。
【0118】
[補足備考2]
以上に開示した実施例の実施の形態の全部または一部を以下に示す。しかしながら、本発明は、以下の実施例の態様に限定されないことに留意されたい。
【0119】
(態様A1)
量子クローキング・デバイスであって、
誘電性構成要素の複数のスパイラル・アレイまたは複数のヘリカル・アレイおよび、 誘電性構成要素の複数の同心スパイラル・アレイまたは複数の同心ヘリカル・アレイ
の少なくとも何れかを含み、
特定の周波数を有する入力電気信号、入力磁気信号、入力電磁気信号、または入力機械信号によってトリガされるクローキングであって、特定の対象物の透過波動関数のクローキングを発現する、量子クローキング・デバイス。
【0120】
(態様A2)
クローキングをトリガする前記信号の周波数は、当該量子クローキング・デバイスを構成する前記スパイラル・アレイ、前記ヘリカル・アレイ、前記同心スパイラル・アレイ、及び、前記同心ヘリカル・アレイの少なくとも何れかであるヘリカル・ナノワイヤの長さ、ピッチ、および直径によって決定され、
前記クローキングの前記対象物に印加するための複数の周波数であって、前記対象物を部分的または全体的に不可化するための複数の周波数が選択され、
前記クローキングの前記対象物が特定の周波数で共振振動する場合、その共振周波数が前記対象物の量子クローキングを達成するために印加される、
態様1に記載の量子クローキング・デバイス。
【0121】
(態様A3)
前記クローキングの前記対象物の共振周波数の位相から構成される3D構造が、量子クローキングのためのトンネリングを規定する位相空間として決定され、
前記3D位相構造は、前記ヘリカル構造または前記スパイラル構造の静的または動的な長さ、ピッチ、および直径の共振振動によって生成され、
エネルギー伝達の位相空間は、前記クローキング・デバイスの幾何学的パラメータを選択することによって、調整され得る複数の位相特異点を含み、
時間の関数として前記クローキング・デバイスの幾何学的パラメータを変更することによって、前記位相空間内に生成された空き空間が時間の関数として開閉され得る、
態様1または2に記載の量子クローキング・デバイス。
【0122】
(態様A4)
前記クローキング・デバイスが信号を受信した場合に、前記位相空間上の位相特異点またはヌル値の位相領域のうちの少なくとも1つが、前記空き位相空間を開き、閉じ、または時間の関数として開閉し、
前記位相特異点の同様の開閉によって、エネルギーまたは場の渦のパターンで、エネルギーが放出され、
一度に、複数の位相特異点または複数のヌル値の位相空間領域が、開き、または閉じてエネルギーまたは場の複数の渦を放出することができる、
態様4に記載の量子クローキング・デバイス。
【0123】
(態様A5)
物質波が、摂動を受けることなく、当該クローキング・デバイスの一方側から他方側へトンネルすることによって輸送され、
物質波は、前記クローキング・デバイスの一方側から他方側へ情報を運び(当該物質自体を運ぶこと)、または量子クローキングは、物質を輸送することも意味し、
古典的に共振する誘電材料において、量子クローキングが起きる場合、前記クローキングの前記対象物はサイズを問わず、前記物質波は、共振経路の長さおよびサイズに依らず、共振経路全体をトンネルする、
態様1から4のいずれかに記載の量子クローキング・デバイス。
【0124】
(態様A6)
当該クローキング・デバイスを介して輸送される物質波は、当該クローキング・デバイスの一部分、または複数部分の情報を運び、または当該クローキング・デバイスの部分の情報を運ばず、
適切な共鳴周波数を選択することで、当該クローキング・デバイスの一部分または複数の選択部分が、当該クローキング・デバイスのトンネル電流センサ捕捉像として可視となり、
複数の共振周波数を選択し、複数のアンテナを用いて当該クローキングの前記対象物を、共鳴信号に晒すことによって、トンネルを通過するときに、物質波は選択的に相互作用し得る、
態様1~4のいずれかに記載の量子クローキング・デバイス。
【0125】
(態様A7)
当該クローキング・デバイスの一のサブコンポーネントは、当該クローキング・デバイスの他のサブコンポーネントと共振的に相互作用し、それによって、前記クローキング・デバイスのいずれか特定のサブコンポーネントに限定されない集合的な特性を発現し、
複数のサブコンポーネントは、異なる場と共振し、互いに相互作用し、それによって、集合的な特性を示し、
外部アンテナ・ネットワークを用いて、好適な信号を送信することによって、前記クローキング・デバイス内の他のサブコンポーネントを活性化または不活性化する特定のサブコンポーネントが活性化され得る、
態様1~6のいずれかに記載の量子クローキング・デバイス。
【0126】
(態様A8)
前記クローキング・デバイスから放出される特定の幾何学的形状の電束と電場、および前記クローキング・デバイスから放出される特定の幾何学的形状の磁束と磁場の少なくともいずれの大きさが、前記クローキング・デバイスに蓄えられた電荷の大きさと関連し、
レーザ光のポンピングによって、前記クローキング・デバイスから光学渦が発生し、電束および電場と磁束および磁場との双方を生成する、
態様1~6のいずれかに記載の量子クローキング・デバイス。
【0127】
(態様A9)
量子クローキングに基づく撮像装置であって、
走査を行う単一プローブ、または複数プローブ配列を有する、量子トンネル電流センサと、
センサプローブとの間に撮像対象を保持するための導電性基板と、
前記撮像対象の所望の構造部分を活性化するための特定の周波数を有する電磁気信号を放出する単一または複数のアンテナと、
を含む撮像装置。
【符号の説明】
【0128】
1 電磁デバイス
11 電磁デバイスの内部アレイ
12 電磁デバイスの中央アレイ
13 電磁デバイスの外側アレイ
50、100 実験構成
51 走査型トンネル顕微鏡(STM)
52 分子回転体(MR)
53 アンテナ(AN)
54 液体層(LL)
55 高配向熱分解黒鉛(HOPG)基板
56 ジュールヒータ(JH)
57 分子漏出部(ML)
【外国語明細書】