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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062637
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】天井落下防止構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20230426BHJP
【FI】
E04B9/18 H
E04B9/18 J
E04B9/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172743
(22)【出願日】2021-10-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和2年10月23日 令和2年度協会賞建築技術会にて公開 2.令和3年9月7日 2021年度日本建築学会大会(東海)にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392018078
【氏名又は名称】日栄インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 修平
(72)【発明者】
【氏名】清野 華
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓也
(57)【要約】
【課題】作業スペースに制限の有る天井裏においても施工性に優れた天井落下防止構造を提供する。
【解決手段】構造物の躯体(17)に吊り下げられる複数の吊り下げ材(12)と、
前記吊り下げ天井構造(1)の天井下地材(5)に近接するように前記複数の吊り下げ材(12)に架設された支持部材(15)と、前記支持部材(15)と前記吊り下げ天井構造(1)に取り付けられた係止手段(16)とを備え、前記吊り下げ天井構造が所定量下降した場合に前記支持部材(15)に前記係止手段(16)が支持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ天井構造の吊り構造が損壊することにより、
前記吊り下げ天井構造の落下を防止する天井落下防止構造であって、
構造物の躯体に吊り下げられる複数の吊り下げ材と、
前記吊り下げ天井構造の天井下地材に近接するように前記複数の吊り下げ材に架設された支持部材と、
前記支持部材と前記吊り下げ天井構造に取り付けられた係止手段とを備え、
前記吊り下げ天井構造が所定量下降した場合に前記支持部材に前記係止手段が支持されることを特徴とする天井落下防止構造。
【請求項2】
前記複数の吊り下げ材を前記躯体に揺動自在に保持する上側取付金具を備えたことを特徴とする請求項1記載の天井落下防止構造。
【請求項3】
前記複数の吊り下げ材を前記支持部材に揺動自在に保持する支持部材取付金具を備えたことを特徴とする請求項1記載の天井落下防止構造。
【請求項4】
前記係止手段は、前記支持部材と前記吊り下げ天井構造の天井下地材を連結するワイヤー部材とすることを特徴とする請求項1記載の天井落下防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井の落下を防止する天井落下防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の天井構造は、建物の構造物の躯体から垂下する複数の吊りボルトと、吊りボルトによって水平に吊り下げられた野縁受けと、野縁受けと直交するように取り付けられた野縁と、野縁にビス止めされた天井面材と、によって構成される。
【0003】
上記の天井構造において、地震の際に天井構造の落下を防止する対策として吊りボルトに野縁受けを保持するハンガーを野縁受脱落防止具で覆い野縁受けの落下を防止するものがあり(特許文献1参照)、地震などによって天井が揺れ、吊りボルトから野縁受けが外れるのを防いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―177400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1にある吊ボルトや野縁受けに野縁を取り付ける野縁取付金具が地震などの揺れによって破断してしまうと天井面材が落下する虞があるという問題点があった。また、天井裏空間は、空調機器、音響機器、消火機器等の各種設備や配管設備によりスペースが占領されて吊ボルトが取り付けられないような各種天井構造に落下防止措置を施すための作業スペースの確保が難しいという問題点があり、特許文献1の野縁受脱落防止具についても、既存の天井構造に対してハンガーを野縁受脱落防止具で覆う作業が難しいという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、作業スペースに制限の有る天井裏においても施工性に優れた天井落下防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、吊り下げ天井構造の吊り構造が損壊することにより、前記吊り下げ天井構造の落下を防止する天井落下防止構造であって、構造物の躯体に吊り下げられる複数の吊り下げ材と、前記吊り下げ天井構造の天井下地材に近接するように前記複数の吊り下げ材に架設された支持部材と、前記支持部材と前記吊り下げ天井構造に取り付けられた係止手段とを備え、前記吊り下げ天井構造が所定量下降した場合に前記支持部材に前記係止手段が支持されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記複数の吊り下げ材を前記躯体に揺動自在に保持する上側取付金具を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、前記複数の吊り下げ材を前記支持部材に揺動自在に保持する横杆取付金具を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、前記係止手段は、前記支持部材と前記吊り下げ天井構造の天井下地材を連結するワイヤー部材とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業スペースに制限の有る天井裏においても施工性に優れた天井落下防止構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1における天井構造及び天井落下防止構造を示す斜視図である。
図2】同上、天井構造及び天井落下防止構造を示す平面図である。
図3】同上、天井構造及び天井落下防止構造を示す側面図である。
図4】同上、天井落下防止構造の一部を示す側面図である。
図5】同上、吊り金具を示す斜視図である。
図6】同上、ジョイント金具を示す斜視図である。
図7】同上、支持部材取付金具を示す斜視図である。
図8】同上、係止手段を示す斜視図である。
図9】同上、天井落下防止構造の実施状態を示す斜視図である。
図10】同上、天井落下防止構造の異なる実施状態を示す斜視図である。
図11】同上、天井落下防止構造の異なる実施状態を示す斜視図である。
図12】同上、天井落下防止構造の異なる実施状態を示す平面図である。
図13】同上、異なる天井構造における天井落下防止構造の実施状態を示す斜視図である。
図14】本発明の実施例2における天井構造及び天井落下防止構造を示す斜視図である。
図15】同上、天井構造及び天井落下防止構造を示す側面図である。
図16】本発明の実施例3における天井構造及び天井落下防止構造を示す斜視図である。
図17】同上、天井構造及び天井落下防止構造を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0014】
図1図13は本発明の実施例1を示すものであり、図1は本発明の実施例1の天井落下防止構造が適用された天井構造の斜視図である。吊り下げ天井構造である天井構造1は、構造物の躯体2から吊り下げられた吊りボルト3と、この吊りボルト3に支持されて略水平に延びる複数の野縁受け4と、略水平かつ野縁受け4に交差する方向に延びるとともに複数の野縁受け4に支持される複数の野縁5と、この野縁5の下面に張り付けられた天井面材6とを備える。天井面材6としては、金属製のスパンドレル、金属製のパネル、石膏ボードがあり、本実施例ではスパンドレルを例に説明する。尚、野縁受け4及び野縁5を、天井面材6を天井裏から保持する天井下地材という。また、吊りボルト3、野縁受け4、野縁5、ハンガー7、クリップ8は、天井面材6を吊り下げ保持するための吊り構造とする。
【0015】
野縁受け4は、吊りボルト3にハンガー7を螺合し、このハンガー7に野縁受け4をはめ込むことで、吊りボルト3に支持される。
【0016】
野縁受け4と野縁5とが交差する箇所において、野縁受け4と野縁5の間にクリップ8を嵌め込むことで、野縁5が野縁受け4に支持される。
【0017】
次に上記天井構造1に用いられる本実施例の天井落下防止構造9について説明する。図1に示すように天井落下防止構造9は、構造物の躯体17に固定される吊り金具10と、吊り金具10に取り付けられるジョイント金具11と、ジョイント金具11に吊り下げられる転造ねじ(全ねじ)からなる吊り下げ材12と、吊り下げ材12の下部に取り付けられた高ナット(長ナット、ジョイントナット)からなる高さ調節手段13と、高さ調節手段13の下方に備えた支持部材取付金具14と、支持部材取付金具14に天井下地材の上方に配置されるように取り付けられた支持部材15と、支持部材15に野縁5を係止可能とする係止手段16とを備えている。
【0018】
ここで躯体17とは、構造物の梁、スラブ等の上階床、壁体、柱などが含まれる。本実施例の吊り金具10は、構造物内部の空間上部に備えた梁をなすH形鋼17のフランジ18に固定される。梁としては、H形鋼以外にも等辺山形鋼(等辺アングル鋼)、不等辺山形鋼(不等辺アングル鋼)、溝形鋼(チャンネル鋼、リップ溝形鋼)、I形鋼(アイビーム)、球平形鋼、T形鋼、CT形鋼、平鋼、Z形鋼、ハット形鋼、丸鋼、角鋼、六角鋼などの各種形鋼や、左右非対称の断面形状を有する鋼材などに適宜変更可能とする。また、吊り金具10は、構造物内部に固定された複数の梁(1次的部材)に架設された2次的部材である各種形鋼などに固定するものでもよいものとする。
【0019】
図4及び図5に示すように吊り金具10は、上側水平部19と、上側水平部19と平行に設けられた下側水平部20と、上部水平部19と下部水平部20の一端同士を連結する垂直部21とからなる側面視略C型の金物からなる。
【0020】
上側水平部19と下側水平部20の間にH形鋼17のフランジ18を配置して、上側水平部19の開口側に取り付けられた上側固定ナット22に螺設された上側固定ボルト23を上下動させて、フランジ18の挟持及び開放を行い、吊り金具10をH形鋼17のフランジ18に係止する。また、下側水平部20の開口側に取り付られた下側固定ナット24には、後述するジョイント金具11の支持ボルトが取り付けられる。また、吊り金具10は、上側水平部19と下側水平部20が取り付けられたフランジ18とは反対側のフランジ18Aに係止可能な鉤型の押え部材10Aを備えている。
【0021】
図4及び図6に示すようにジョイント金具11は、金具本体25と、支持ボルト26と、固定ナット27を備えている。金具本体25は、前後方向に断面逆U字状乃至断面逆V字状,本実施例では逆U字状とした天壁28と,該天壁28の前後両側を被覆するように対向配置した一対の起立壁29、29と,該起立壁29、29下端間を閉塞する底壁30とを備える。長孔31は、天壁28にその前後方向の頂部を通って頂部交差方向に向けて透設している。底壁30に透孔32を透設し,該透孔32を塞ぐように吊り下げ材12を螺装するための固定ナット27を配置している。
【0022】
金具本体25は、帯状金属板にプレス成型を施して,その天壁28,起立壁29、29及び底壁30を屈曲形成して,両側面を開口したボックス状をなすものである。
【0023】
支持ボルト26は、ボルト頭部34とボルト軸35を備えて、ボルト頭部34の裏面に回転支持部36を配置して、その曲率半径を天壁28の頂部の曲率半径と同一径とすることによって、該支持ボルト26の回転支持部36が天壁28の長孔31の縁部と点接触するようにして、その摩擦抵抗を可及的に減少したものとしてある。回転支持部36は、上記ボルト頭部34の裏面に、その外周端から、例えば断面半球状をなすように上向き、支持ボルト26の単体としては下向きに肉盛することによって円弧状に膨出した湾曲面をなすようにしてある。また、ボルト頭部34には、その表面にドライバーの受溝(図示省略)を配置し、上記固定ナット27の雌ネジ孔を介してドライバーを挿入し、該ドライバー操作によって支持ボルト26を下側固定ナット24に螺装自在としてあり、このとき該受溝は、常法に従って十字穴又はすりわり(マイナス穴)としてある。
【0024】
支持ボルト26は、そのボルト頭部34の付根とボルト軸部35との間に、例えば断面矩形乃至台形、本例にあっては台形にして平面円形をなす円錐台状の径大段部37を配置し、上記金具本体25の長孔31の幅を径大段部37の外径より僅かに広く設定することによって、径大段部37は,上記支持ボルト26の回転支持部36とボルト軸部35間に配置した該支持ボルト26に一体の段差部によって形成したものである。
【0025】
この場合、支持ボルト26を下側固定ナット24に螺装したとき、径大段部37の高さ範囲内に金具本体25の天壁28の肉厚が納まるようにしてあり、これによって、吊り金具10に設置した下側固定ナット24に支持ボルト26を強固に締着するように螺装しても、天壁28との間に空隙を形成することによって、金具本体25の首振り回転が阻害されることのないようにしてある。本例にあって径大段部37は、その高さを金具本体25の天壁28の肉厚より高くしてある。
【0026】
またボルト軸35と径大段部37との境界部分には、座金38が配置されている。座金38は中央部分に雌ねじ部が形成された六角形状の金属板からなり、ボルト軸35から螺着されている。これによって、下側固定ナット24に支持ボルト26を強固に締着するように螺装しても、座金38が吊り金具10の下側水平部20の下面に当接することで、支持ボルト26が吊り金具10の下側水平部20にめり込むことを防いで径大段部37による金具本体25の首振り回転用の上下方向の間隔を保持したり、支持ボルト26の緩みを防いだりと多様な効果を奏している。
【0027】
ジョイント金具11は、支持ボルト26を,吊り金具10の下側固定ナット24に螺装するとともに固定ナット27に吊り下げ材12を螺装することによって金具本体25の首振り回転によって吊り下げ材12の吊支持角度を自在としたものとしてあり,このときジョイント金具11は,その上記支持ボルト26の回転支持部36上にボルト軸35の軸径より径大にして天壁28の長孔31の幅より径小の外径を有するとともに該天壁28の厚さを上回る高さを有する径大段部37を配置したものとしてあり,本例にあって該径大段部37は,これを平面円形とし,また該径大段部37は,これを,上記支持ボルト26の回転支持部36とボルト軸35間に配置した該支持ボルト26に一体の段差部によって形成したものとしてある。
【0028】
図4及び図7に示すように支持部材取付金具14は、金具本体39と、支持ボルト40とを備えている。金具本体39は、前後方向に断面逆U字状乃至断面逆V字状,本実施例では逆U字状とした天壁41と,天壁41の前後両側を被覆するように対向配置した一対の起立壁42、42と,起立壁42,42下端間を閉塞する底壁43とを備える。長孔44は、天壁41にその前後方向の頂部を通って頂部交差方向に向けて透設されている。
【0029】
金具本体39は、天壁41,起立壁42、42及び底壁43を屈曲形成して,両側面を開口したボックス状をなすものである。
【0030】
金具本体39において、起立壁42、42と底壁43に囲まれた開口形状は、支持部材15の断面形状に対応している。一対の起立壁42、42には、金具本体39の内部に挿通された支持部材15をビスB等で固定するための取付孔46をそれぞれ備えている。
【0031】
支持ボルト40は、ボルト頭部47とボルト軸48を備えて、ボルト頭部47の裏面に回転支持部49を配置して、その曲率半径を天壁41の頂部の曲率半径と同一径とすることによって、該支持ボルト40の回転支持部49が天壁41の長孔44の縁部と点接触するようにして、その摩擦抵抗を可及的に減少したものとしてある。回転支持部49は、上記ボルト頭部47の裏面に、その外周端から、例えば断面半球状をなすように上向き、支持ボルト40の単体としては下向きに肉盛することによって円弧状に膨出した湾曲面をなすようにしてある。また、ボルト頭部47には、その表面にドライバーの受溝(図示省略)を配置し、該ドライバー操作によって支持ボルト40を高ナット等の高さ調節手段13に螺装自在としてある。
【0032】
支持ボルト40は、そのボルト頭部47の付根とボルト軸48との間に、例えば断面矩形乃至台形、本例にあっては台形にして平面円形をなす円錐台状の径大段部50を配置し、上記金具本体39の長孔44の幅を径大段部50の外径より僅かに広く設定することによって、径大段部50は,上記支持ボルト40の回転支持部49とボルト軸48間に配置した該支持ボルト40に一体の段差部によって形成したものである。
【0033】
この場合、支持ボルト40を高さ調節手段13に螺装したとき、径大段部50の高さ範囲内に金具本体38の天壁41の肉厚が納まるようにしてあり、これによって、高さ調節手段13に該支持ボルト40を強固に締着するように螺装しても、天壁41との間に空隙を形成することによって、金具本体39の首振り回転が阻害されることのないようにしてある。本例にあって径大段部50は、その高さを金具本体39の天壁41の肉厚より高くしている。
【0034】
またボルト軸48と径大段部50との境界部分には、座金51が配置されている。座金51は中央部分にボルト軸48が挿通可能な貫通孔が形成された六角形状の金属板からなり、ボルト軸48から螺着されている。これによって、高さ調節手段13に支持ボルト40を強固に締着するように螺装しても、座金51が高さ調節手段13の下面に当接することで、支持ボルト40が高さ調節手段13にめり込むことを防いで径大段部50による金具本体39の首振り回転用の上下方向の間隔を保持したり、支持ボルト49の緩みを防いだりと多様な効果を奏している。
【0035】
図8に示すように係止手段16は、野縁5に取り付ける一対の野縁取付金具52、52と、支持部材15と野縁取付金具52、52を連結する連結部53を備えている。野縁取付金具52は、方形状に形成された金属製の薄板からなる金具本体54の下部には、第1の野縁取付部55と、第2の野縁取付部56と、金具本体54の中央部分に形成された貫通部に螺子溝を螺刻して形成された雌螺子部57とを備えている。ここで雌螺子部57は、金具本体54に固定されたナットでもよい。
【0036】
第1の野縁取付部55は、金具本体54の対向する一対の両端部58、58より略平行に下向きに立ち上げられた一対の第1の立ち上げ部59、59と、各第1の立ち上げ部59、59の先端を互いの距離が離れるよう外側に折り曲げて断面略鉤状に形成された第1の係止部60、60が設けられている。
【0037】
第2の野縁取付部56は、金具本体54の第1の立ち上げ部59、59間に第1の立ち上げ部59と略平行に下向きに立ち上げられ、且つ第1の立ち上げ部59、59間の間隔より幅狭に形成された一対の第2の立ち上げ部61、61と、各第2の立ち上げ部61、61の先端を互いの距離が離れるよう外側に折り曲げて断面略鉤状に形成された第2の係止部62、62が設けられている。
【0038】
連結部53は、ワイヤー部材63と、ワイヤー部材63の両端に設置され、金具本体の雌螺子部57に螺合可能な雄螺子部64、64を備える。
【0039】
図1に示すように支持部材15は、断面矩形状の金属製パイプ、所謂角パイプが用いられる。支持部材15は、材質は金属製や樹脂製に限定されるものではなく、形状についても角パイプ以外の丸パイプ、多角形パイプの他に、等辺山形鋼(等辺アングル鋼)、不等辺山形鋼(不等辺アングル鋼)、溝形鋼(チャンネル鋼、リップ溝形鋼)、I形鋼(アイビーム)、球平形鋼、T形鋼、H形鋼、CT形鋼、平鋼、Z形鋼、ハット形鋼、丸鋼、角鋼、六角鋼などの各種形鋼や、左右非対称の断面形状を有する鋼材としてもよく、適宜変更可能である。その場合は、支持部材取付金具14の金具本体39を様々な断面形状を有する支持部材15に対して複数箇所による点接触、線接触や面接触により安定して保持する形状に適宜変更することが好ましい。
【0040】
次に本実施例の天井落下防止構造9を用いた工法について説明する。新築又は既存の天井構造1に対して、ジョイント金具11の取り付けについては、図1に示すように支持ボルト26をH形鋼17のフランジ18に取り付けられた吊り金具10の下側固定ナット24に螺着して行われる。尚、図13に示すようにジョイント金具11を天井裏のコンクリートスラブSに直接取り付ける場合は金属系アンカー、接着系アンカーなどのアンカー(図示せず)を介して支持ボルト26の取り付けを行う。
【0041】
続いて吊り下げ材12の取り付けについては、吊り下げ材12の上部をジョイント金具11の固定ナット27に螺着して行う。吊り下げ材12の下部には高さ調節手段13が螺着されている。
【0042】
次に支持部材取付金具14の取り付けについては、支持ボルト40のボルト軸48を高さ調節手段13の下部に螺着して、支持部材取付金具14を吊り下げ材12の下部に取り付ける。支持部材取付金具14の上下方向の位置調整は、高さ調整手段13を吊り下げ材12に対して上下動させて行う。
【0043】
続いて支持部材15の支持部材取付金具14への取り付けについては、支持部材15の左右側面及び底面がそれぞれ起立壁42、42及び底壁43にそれぞれ対向又は面接触するように、支持部材15を支持部材取付金具14の金具本体39に挿通した後、取付孔46を介して支持部材15の左右側面と支持部材取付金具14の起立壁42、42をビスBで固定する。ビスBによる支持部材取付金具14と支持部材15の固定は、後述する支持部材15と野縁5の連結後でもよいものとする。
【0044】
次に支持部材15と野縁5の連結については、支持部材15を間に挟んだ状態で野縁5の溝縁5Aに第1の野縁取付部55又は第2の野縁取付部56を係止して取り付けられた一対の野縁取付金具52、52の各雌螺子部57、57に、支持部材15を上方から跨ぐようにワイヤー部材63が配置された連結部53の各雄螺子部64、64をそれぞれ螺合することで、図3に示すように支持部材15を野縁5に僅かな隙間Lだけ有して近接するように配置する。支持部材15と野縁5は平面視に対して図2に示すように直交する以外にも、野縁取付金具52、52の配置やワイヤー部材63の柔軟性を活かしてさまざまな角度に対応可能とする。支持部材15と野縁5の間に隙間Lを有することで、支持部材15や支持部材取付金具14等の荷重が野縁5等の天井下地材や天井面材6の負荷となることを防ぐとともに、支持部材15と野縁5が接触して音が発生することを防ぐことができる。
【0045】
上記の天井落下防止構造9では、地震等の揺れによる吊り構造の吊りボルト3、野縁受け4、野縁5、ハンガー7やクリップ8の破損が起こり、吊り構造による天井面の吊り状態が維持できなくなった場合には、係止手段16のワイヤー部材63を介して天井面材6は支持部材15に吊り下げ保持され、天井面材6の落下が防止される。
【0046】
また、天井落下防止構造9では、地震等の揺れに対して、ジョイント金具11及び横杆取付金具14が揺動することで、吊り下げ材12にかかる曲げ応力を極めて小さくし、吊り下げ材12の破断や変形を抑制することができる。
【0047】
また本実施例は、吊り下げ天井構造1の吊り構造が損壊することにより、吊り下げ天井構造1の落下を防止する天井落下防止構造9であって、構造物の躯体17に吊り下げられる複数の吊り下げ材12と、吊り下げ天井構造1の天井下地材5に近接するように複数の吊り下げ材12に架設された支持部材15と、支持部材15と吊り下げ天井構造1に取り付けられた係止手段16とを備え、吊り下げ天井構造1が所定量下降した場合に前記支持部材15に前記係止手段16が支持される。
【0048】
この場合、空調機器、音響機器、消火機器等の各種設備や配管設備によりスペースが占領され、天井落下防止構造9を施工する設置スペースや作業スペースが限られる天井裏空間において、支持部材15を空調機器、音響機器、消火機器等の各種設備や配管設備を避けて野縁5に近接するように配置することで、設置スペースや作業スペースを確保することができ、施工性に優れた天井落下防止構造9を提供することができる。
【0049】
また、本実施例では、複数の吊り下げ材12をH形鋼17に揺動自在に保持する上側取付金具としてのジョイント金具11を備えたことにより、地震等の揺れに対して、ジョイント金具11が揺動することで、吊り下げ材12にかかる曲げ応力を極めて小さくし、吊り下げ材12の破断や変形を抑制することができる。
【0050】
また、本実施例では、複数の吊り下げ材12を支持部材15に揺動自在に保持する支持部材取付金具14を備えたことにより、地震等の揺れに対して、支持部材取付金具14が揺動することで、吊り下げ材12にかかる曲げ応力を極めて小さくし、吊り下げ材12の破断や変形を抑制することができる。
【0051】
また、本実施例では、係止手段16は、支持部材15と天井構造1の天井下地材としての野縁5を連結するワイヤー部材63とすることにより、ワイヤー部材63の柔軟性を活かして支持部材15と野縁5の連結構造の自由度と作業性を向上させることができる。
【0052】
また、本実施例では、図9図12に示すように、野縁5の向きに関係なく、支持部材15を配置することが可能なため、天井下地材の設置向きに制限されない汎用性の高い天井落下防止構造9を提供することができる。
【実施例0053】
図14及び図15は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例の天井裏構造70では、高位面部71と低位面部72からなる階段状の段差を備えており、この天井裏構造70に対する天井落下防止構造9の施工について説明する。
【0054】
高位面部71に吊り下げる吊り下げ材12Aは、低位面部72に吊り下げる吊り下げ材12Bより長く形成されており、吊り下げ材12Aと吊り下げ材12Bに架設される支持部材15を水平に架設している。
【0055】
本実施例では、階段状の段差を備えた天井裏構造70においても、支持部材15を野縁5に近接するように配置しているので、低位面部72であっても支持部材15から上方の作業スペースを広く確保することができる。
【実施例0056】
図16及び図17は本発明の実施例3を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例の天井構造80では、天井面材6を水平に配置した水平部81と、天井面材6を傾斜させて配置した傾斜部82を備えており、この天井構造80に対する天井落下防止構造9の施工について説明する。
【0057】
傾斜部82では、ハンガー7を折り曲げて水平以外の天井面材6の配置に対応しているが、天井落下防止構造9では支持部材15を傾斜した天井面材6に沿って配置させることができるので、水平な天井面材6以外のさまざまな傾斜角度の天井面材6に対応する汎用性に優れた天井落下防止構造9となっている。
【0058】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。尚、天井下地材については、野縁受け及び野縁に限定されるものではなく、システム天井に用いられる断面逆T字状のTバーの他にも、天井面材を天井裏から保持する部材であれば、特に限定されるものではない。また、係止手段は、支持部材と天井面材を連結するものでもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 天井構造(吊り下げ天井構造)
5 野縁(天井下地材)
9 天井落下防止構造
11 上側取付金具
12 吊り下げ材
14 支持部材取付金具
15 支持部材
16 係止手段
17 H型鋼(躯体)
63 ワイヤー部材
図1
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