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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062650
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230426BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 201C
H01G4/12 270
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002295
(22)【出願日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0141261
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
(72)【発明者】
【氏名】パク、フイ スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジェオン ウーク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒェグ スーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AB03
5E082BC39
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】信頼性に優れたセラミック電子部品を提供する。
【解決手段】
本開示は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層の少なくとも一部の領域は、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)を含むランタン系希土類元素(RE)を含み、上記誘電体層の少なくとも一部の領域において、上記スズ(Sn)及び上記ジスプロシウム(Dy)のモル比(Sn/Dy)が0.15~0.30である、セラミック電子部品に関するものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層の少なくとも一部の領域は、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)を含むランタン系希土類元素(RE)を含み、
前記誘電体層の少なくとも一部の領域において、前記スズ(Sn)及び前記ジスプロシウム(Dy)のモル比(Sn/Dy)が0.15~0.30である、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層の少なくとも一部の領域において、前記スズ(Sn)及び前記ランタン系希土類元素(RE)のモル比(Sn/RE)が0.15~0.25である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層は、チタン酸バリウム系材料を主成分として含む、請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層の少なくとも一部の領域において、100モルの前記チタン酸バリウム系材料に対して、前記スズ(Sn)の含有量が0.05モル~0.16モルであり、前記ジスプロシウム(Dy)の含有量が0.20モル~0.80モルである、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記ランタン系希土類元素(RE)は、ジスプロシウム(Dy)の他に、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)及びガドリニウム(Gd)の少なくとも一つをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層の少なくとも一部の領域は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)及びマグネシウム(Mg)の少なくとも一つを含むアクセプター元素(AT)をさらに含む、請求項5に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層の少なくとも一部の領域は、前記ランタン系希土類元素(RE)、ニオブ(Nb)及びイットリウム(Y)の少なくとも一つを含むドナー元素(DN)をさらに含む、請求項6に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層の少なくとも一部の領域において、前記ドナー元素(DN)及び前記アクセプター元素(AT)のモル比(DN/AT)が0.01~0.50である、請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記本体は、前記誘電体層を間に挟んで互いに向かい合うように配置される複数の前記内部電極を含んで容量が形成される活性部を含み、
前記誘電体層の少なくとも一部の領域は、前記活性部内に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記外部電極は、前記本体の長さ方向の両端部にそれぞれ配置される第1及び第2外部電極を含み、
前記内部電極は、前記本体の厚さ方向に交互に積層され、前記第1及び第2外部電極とそれぞれ連結される複数の第1及び第2内部電極を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層は厚さが0.4μm以下であり、
前記内部電極は厚さが0.4μm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミック電子部品、例えば、積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品の一つである積層セラミックキャパシタは、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話など、様々な電子製品のプリント回路基板に装着され、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは最近のトレンドに合わせてますます小型化/高集積化している。次世代製品のための超高誘電特性を満たしながら小型化/高集積化するためには薄層化が要求されることから、誘電体層に高誘電特性を実現することができる組成材料を適用することが日々重要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の様々な目的の1つは、信頼性に優れたセラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によって提案する様々な解決手段の1つは、誘電体層に含まれるスズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)の最適の組成比を適用することである。
【0006】
例えば、一例によるセラミック電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層の少なくとも一部の領域は、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)を含むランタン系希土類元素(RE)を含み、上記誘電体層の少なくとも一部の領域において、上記スズ(Sn)及び上記ジスプロシウム(Dy)のモル比(Sn/Dy)が0.15~0.30であることができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の様々な効果のうち一つの効果として、信頼性に優れたセラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一例によるセラミック電子部品の概略的な斜視図である。
図2図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した断面図である。
図3図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示した断面図である。
図4図1の一例によるセラミック電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して本開示について説明する。図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることができる。
【0010】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ方向、第2方向は長さ方向、第3方向は幅方向と定義することができる。
【0011】
図1は、一例によるセラミック電子部品の概略的な斜視図であり、図2は、図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した断面図であり、図3は、図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示した断面図であり、図4は、図1の一例によるセラミック電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【0012】
図面を参照すると、一例によるセラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110、及び本体110に配置され、内部電極121、122と連結される外部電極131、132を含む。このとき、誘電体層111の少なくとも一部の領域Pは、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)を含むランタン系希土類元素(RE)を含み、誘電体層の少なくとも一部の領域Pにおいて、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)のモル比(Sn/Dy)が0.15~0.30程度であることができる。また、スズ(Sn)及びランタン系希土類元素(RE)のモル比(Sn/RE)が0.15~0.25程度であることができる。
【0013】
一方、次世代の超小型高容量製品の開発のためには、誘電体層の材料として、添加剤が固溶されたABOで表されるペロブスカイト(perovskite)構造のチタン酸バリウム系材料に適切なレベルのA-サイト及び/またはB-サイト置換元素を導入及び固溶することが重要となっている。特に、高い信頼特性を実現するためには、製品を構成する各部分間の添加剤の組み合わせ及び濃度調節を介して各部位間の収縮挙動及び特性実現への影響性を微視的な部分までコントロールすることが重要となっている。
【0014】
ここで、本開示では、薄層高信頼特性を確保するために、高い含有量のドナー(donor)をドーパント(dopant)として適用し、A-サイトの固溶効率を高めた組み合わせを誘電体組成の一つの例として適用した。
【0015】
より具体的には、チタン酸バリウムのA-サイト置換元素として知られているドナー元素である希土類元素、特に代表的な両性元素及び+2及び/または+3価への原子価変異が可能な元素であり、これを介して酸素空孔(oxygen vacancy)の改善に役立ち、信頼性改善の効果を引き起こすジスプロシウム(Dy)元素の場合、固溶効率が低く、焼結後のグレイン(grain)のコア-シェルを区分する境界元素としても有用に活用されることができる。
【0016】
一方、最近開発される薄層高信頼性の実現用製品の場合、薄層内部電極の切れ防止及び焼結温度のマッチングのために高温短縮焼成工法の適用が考慮されている。但し、焼結に必要な熱量伝達が不足する場合、ジスプロシウム(Dy)の固溶効率が減少することがあり、不均一な固溶特性は最終チップの特性も低下させることがある。また、焼結時間を増やして十分な焼結に必要な熱量が伝達される場合、ジスプロシウム(Dy)元素も完全固溶が行われ、コア-シェルの区分が難しくなる可能性がある。
【0017】
ここで、次世代薄層設計を適用する製品では、添加剤含有量を最小限に抑えた、特にA-サイトの固溶が困難なジスプロシウム(Dy)の含有量が少ない組成計が考えられる。但し、このようにジスプロシウム(Dy)の含有量が少なくなる場合には、結果的には薄層信頼性の改善に限界がある。
【0018】
一方、本開示では、スズ(Sn)を含む誘電体組成が適用されることができる。この場合、A-サイトの置換効率を向上させることができ、したがって、希土類の含有量及び組成比を変更することができる。これにより、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)の含有量の増加及び最適の組成比を適用して薄層信頼性を改善させることができる。
【0019】
すなわち、本開示では誘電体層111の材料としてスズ(Sn)を含む組成を適用することができ、したがって、A-サイト置換元素であるジスプロシウム(Dy)の含有量を増加させて信頼性改善を誘導することができる。また、適正レベルのA-サイト及びB-サイト置換効率の最大化のための組み合わせを選定することで、優れた信頼特性の実現が可能な組成比を提供することができる。
【0020】
このような観点から、一例による誘電体組成物は、チタン酸バリウム系母材を含み、またスズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)を含むランタン系希土類元素(RE)を含むことができる。このとき、ジスプロシウム(Dy)のチタン酸バリウムの格子内に固溶限界制御及び効果的な粒界均一偏析誘導が可能であるように、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)のモル比(Sn/Dy)は、0.15~0.30程度であることができる。また、ランタン系希土類元素(RE)に対しても実質的に同一の範囲内の割合でチタン酸バリウムの格子内に固溶限界制御及び効果的な粒界均一偏析誘導が可能であるように、スズ(Sn)及びランタン系希土類元素(RE)のモル比(Sn/RE)は、0.15~0.25程度であることができる。一方、チタン酸バリウム系母材100モルに対して、スズ(Sn)の含有量が0.05モル~0.16モルであり、ジスプロシウム(Dy)の含有量が0.20モル~0.80モル程度であることができる。
【0021】
一方、一例による誘電体組成物において、ランタン系希土類元素(RE)は、ジスプロシウム(Dy)の他に、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)及びガドリニウム(Gd)の少なくとも一つをさらに含むことができる。このような希土類元素は、ABO構造のA-サイトを置換してドナーの役割を果たすことにより、酸素空孔の濃度を減らして信頼性をより向上させることができる。また、希土類元素は結晶粒界において電子の流れを防ぐ障壁として作用し、リーク電流の増加を抑制する役割を果たすことができる。
【0022】
一方、一例による誘電体組成物は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)及びマグネシウム(Mg)の少なくとも一つを含むアクセプター元素(AT)をさらに含むことができる。このようなアクセプター元素(AT)は、ABO構造のB-サイトを置換してアクセプターの役割を果たすことによって電子濃度を減らす役割を果たすことができる。したがって、希土類元素のA-サイトの固溶による誘電体層の半導体化を抑制する役割を果たすことができる。また、誘電体組成物が適用されたセラミック電子部品の焼成温度低下及び高温耐電圧の特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0023】
また、一例による誘電体組成物は、上述したランタン系希土類元素(RE)、ニオブ(Nb)及びイットリウム(Y)の少なくとも一つを含むドナー元素(DN)をさらに含むことができる。このようなドナー元素(DN)は同様にABO構造のA-サイトを置換してドナーの役割を果たすことで酸素空孔の濃度を減らし、信頼性をより向上させることができる。また、同様に結晶粒界において電子の流れを防ぐ障壁として作用し、リーク電流の増加を抑制する役割を果たすことができる。
【0024】
このとき、適正レベルの絶縁抵抗の確保などのために、ドナー元素(DN)及びアクセプター元素(AT)のモル比(DN/AT)は、0.01~0.50程度であることができる。
【0025】
したがって、誘電体層111の少なくとも一部の領域Pは、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)を含むランタン系希土類元素(RE)を含むことができる。このとき、スズ(Sn)及びジスプロシウム(Dy)のモル比(Sn/Dy)は、0.15~0.30程度であることができる。また、スズ(Sn)及びランタン系希土類元素(RE)のモル比(Sn/RE)は、0.15~0.25程度であることができる。一方、チタン酸バリウム系母材100モルに対して、スズ(Sn)の含有量が0.05モル~0.16モルであり、ジスプロシウム(Dy)の含有量が0.20モル~0.80モル程度であることができる。
【0026】
また、誘電体層111の少なくとも一部の領域Pにおいて、ランタン系希土類元素(RE)は、ジスプロシウム(Dy)の他に、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)及びガドリニウム(Gd)の少なくとも一つをさらに含むこともできる。また、誘電体層111の少なくとも一部の領域Pにおいて、誘電体層111を形成するための誘電体組成物は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)及びマグネシウム(Mg)の少なくとも一つを含むアクセプター元素(AT)をさらに含むことができる。また、上述したランタン系希土類元素(RE)、ニオブ(Nb)及びイットリウム(Y)の少なくとも一つを含むドナー元素(DN)をさらに含むことができる。このとき、ドナー元素(DN)及びアクセプター元素(AT)のモル比(DN/AT)は、0.01~0.50程度であることができる。
【0027】
一方、誘電体層111の少なくとも一部の領域Pの組成は、TEM(Transmission Electron Microscopy)-EDS(Energy Dispersive Spectrometer)元素分析によって測定することができる。例えば、サンプルチップのTEM分析のためにFIB(Focused Ion Beam)サンプリング後に、TEM-EDSマッピングを介して含まれる元素の種類及び含有量を確認することができる。この後、分析された元素のうちチタン酸バリウムなどの母材に該当する割合を確認するために、当該元素の分析比をチタン(Ti)の分析比で割り、母材の数モル%に該当する元素が含まれているかを確認することができる。
【0028】
一方、誘電体層111の少なくとも一部領域Pは、後述する活性部Acに配置されることができる。
【0029】
以下、一例によるセラミック電子部品100に含まれる各構成についてより詳細に説明する。
【0030】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮によって、本体110は完全な直線を有する六面体状ではなく、実質的に六面体状を有することができる。必要に応じて、本体110の角を有する外形、例えば、コーナー部分は研磨工程などによって丸く研磨されることができる。
【0031】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、かつ第3方向に互いに向かい合う第5面5及び第6面6を有することができる。
【0032】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0033】
誘電体層111は、セラミックパウダー、有機溶剤及び有機バインダーを含むセラミックグリーンシートの焼成によって形成されることができる。セラミックパウダーは、高い誘電率を有する物質として、チタン酸バリウム(BaTiO)系材料、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系材料などを用いることができ、好ましくは上述したチタン酸バリウム系材料を用いることができる。
【0034】
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はないが、一般的に誘電体層111を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に誘電体層111の厚さが0.4μm以下である場合には信頼性が低下するおそれがあった。一方、本開示では、誘電体層111の厚さが0.4μm以下である場合にも、上述したように優れた信頼性を確保することができる。したがって、誘電体層111の厚さが0.4μm以下である場合に、本開示による信頼性向上の効果がより顕著になることができ、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0035】
誘電体層111の厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて1つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。等間隔である30個の地点は活性部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0036】
本体110は、誘電体層111を間に挟んで互いに向かい合うように配置される複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される活性部Acを含むことができる。活性部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を間に挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0037】
本体110は、厚さ方向を基準にして活性部Acの上部及び下部に配置されるカバー部112、113をさらに含むことができる。カバー部112、113は、活性部Acの上部に配置される上部カバー部112及び活性部Acの下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を活性部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部112、113は内部電極を含まず、誘電体層111と同一材料を含むことができる。例えば、カバー部112、113はセラミック材料を含むことができ、例えば、上述したチタン酸バリウム系材料を含むことができる。カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であることができる。
【0038】
本体110は、活性部Acの側面に配置されるマージン部114、115をさらに含むことができる。マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114及び第6面6に配置されたマージン部115を含むことができる。例えば、マージン部114、115は、本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。マージン部114、115は、本体110を幅-厚さ方向で切断した断面において内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。マージン部114、115は、誘電体層111と同一または異なる材料を含むことができる。例えば、マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。または、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を活性部Acの幅方向の両側面に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0039】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されることができる。内部電極121、122は、複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、誘電体層111を間に挟んで互いに向かい合うように交互に配置されることができ、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。例えば、複数の第1内部電極121はそれぞれ第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができる。また、複数の第2内部電極122は、それぞれ第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。複数の第1内部電極121及び第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0040】
内部電極121、122は、導電性金属を含む導電性ペーストによって形成されることができる。例えば、誘電体層111を形成するセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷法、グラビア印刷法などの印刷法によって導電性ペーストを印刷し、結果的に内部電極121、122を印刷することができる。内部電極121、122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層して焼成すると、本体110の活性部Acを形成することができる。導電性金属は、これに限定されるものではないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及び/またはこれを含む合金などを含むことができる。
【0041】
内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はないが、一般的に内部電極121、122を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合には信頼性が低下するおそれがあった。一方、本開示では、内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合にも、上述したように優れた信頼性を確保することができる。したがって、内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合、本開示による信頼性向上の効果がより顕著になることができ、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0042】
内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて1つの内部電極を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。等間隔である30個の地点は活性部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0043】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置され、第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6にそれぞれ一部が延長することができる。外部電極131、132は、複数の第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。第1外部電極131は、本体110の第3面3に配置され、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6にそれぞれ一部が延長することができる。第2外部電極132は、本体110の第4面4に配置され、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6にそれぞれ一部が延長することができる。図面においては、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更されることができる。
【0044】
外部電極131、132は、 金属などのように電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0045】
電極層131a、132aは、例えば、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることもできる。また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることもできる。電極層131a、132aに含まれる導電性金属として電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/またはこれを含む合金などを含むことができる。
【0046】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及び/またはこれを含む合金などを含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることもできる。めっき層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層またはスズ(Sn)めっき層であることができ、電極層131a、132a上にニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層が順次形成された形態であることもできる。また、めっき層131b、132bは、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/または複数のスズ(Sn)めっき層を含むこともできる。
【0047】
セラミック電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層111及び内部電極121、122の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有するセラミック電子部品100において、本開示による信頼性効果がより顕著になることができる。したがって、製造誤差、外部電極131、132の大きさなどを考慮すると、セラミック電子部品100の長さが1.1mm以下であり、幅が0.55mm以下である場合、信頼性向上の効果がより顕著になることができる。ここで、セラミック電子部品100の長さは長さ方向での大きさを意味し、セラミック電子部品100の幅は幅方向での大きさを意味する。
【0048】
実験例
チタン酸バリウム系母材を主成分として含み、希土類元素などの副成分を含む誘電体組成物を用意した後、誘電体組成物を含むセラミックグリーンシート上にニッケル(Ni)を含む内部電極用導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成した。その後、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して得られた積層体をチップ単位で切断した後、焼成してサンプルチップを製作した。
【0049】
一方、各サンプルは、チタン酸バリウム系母材100モルに対して下記[表1]の含有量(単位:モル)で各成分を含有している。各サンプルチップにおいて、誘電体層及び内部電極の厚さはそれぞれ0.4μm以下であり、チップサイズは1005サイズ以下であった。各サンプルチップの中央部誘電体層においてグレインサイズは600nm以下であり、誘電体グレインバウンダリー内にはランタン系元素がさらに存在し、誘電体グレイン内にはシリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)などの元素が存在した。
【0050】
一方、下記[表1]における誘電体層の組成は、上述したTEM-EDS元素分析により測定した。具体的には、サンプルチップのTEM分析のためにFIBサンプリング後に、TEM-EDSマッピングを介して含まれる元素の種類及び含有量を測定した。この後、分析された元素のうちチタン酸バリウムなどの母材に該当する割合を測定するために、当該元素の分析比をチタン(Ti)の分析比で割り、母材の数モル%に該当する元素が含まれているかを測定した。
【0051】
また、下記[表1]における信頼性は高温絶縁抵抗測定器を用いて測定し、製品の定格電圧*1.5、そして定格温度+20℃に該当する条件(例えば、X5R、6.3V目標機種の場合は、105℃及び9.45V程度の条件)で、24hr電圧印加時の不合格(fail)率を測定し、10%以内である場合を信頼性良好(○)と表し、そうでない場合を信頼性未達(×)と表した。一方、24hr評価後、最終絶縁抵抗が10^4Ω以下のレベルで確認される場合には、不合格率に関わらず信頼性未達(×)と表した。
【0052】
【表1】
【0053】
[表1]を参照すると、サンプルチップ1~3、6~7、23~24のように、ジスプロシウム(Dy)の含有量が不足または過多であるため、Sn/Dy及びSn/REのモル比が本開示で提案する範囲を満たさない場合、信頼性特性が低下することが分かる。
【0054】
また、サンプルチップ9~10のように、スズ(Sn)が不足してSn/Dy及びSn/REのモル比が本開示で提案する範囲を満たさない場合、希土類の固溶不安定により信頼性特性が低下することが分かる。
【0055】
また、サンプルチップ11~12のように、スズ(Sn)が過多であり、Sn/Dy及びSn/REのモル比が本開示で提案する範囲を満たさない場合、焼成温度が増加して、IRスプリット(split)が増加し、信頼性特性が低下することが分かる。
【0056】
一方、サンプルチップ4~5、8、21、25~26、30のように、Sn/Dy及びSn/REのモル比が本開示で提案する範囲を満たさない場合、信頼性に優れることが分かる。
【0057】
また、サンプルチップ13~20、22、27~29のようにランタン系希土類元素(RE)を追加しながら本開示で提案する組成を満たす場合、A-サイトの置換効率を増加するための元素を導入するなどにより信頼性特性がより優れることが分かる。
【0058】
本開示において、セラミック電子部品として積層セラミックキャパシタを例を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、他の種類のセラミック電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、サーミスタなどにも本開示が適用されることができる。
【0059】
本開示において、側部、側面などの表現は、便宜上、図面を基準に左/右方向またはその方向における面を意味するものとして用い、上側、上部、上面などの表現は、便宜上、図面を基準に上方向またはその方向における面を意味するものとして用い、下側、下部、下面などは便宜上、下方向またはその方向における面を意味するものとして用いた。さらに、側部、上側、上部、下側、または下部に位置するとは、対象構成要素が基準となる構成要素と該当方向に直接接触するだけでなく、該当方向に位置するが、直接接触しない場合も含む概念として用いた。但し、これは説明の便宜上、方向を定義したものであり、特許請求の範囲の権利範囲がこのような方向に対する記載によって特に限定されるものではなく、上/下の概念などはいつでも変わることができる。
【0060】
本開示において連結されるという意味は、直接連結されるだけでなく、接着剤層などを介して間接的に連結されることを含む概念である。また、電気的に連結されるという意味は、物理的に連結された場合と連結されない場合を全て含む概念である。また、第1、第2などの表現は、ある構成要素と他の構成要素を区分付けるために用いるものであって、該当構成要素の順序及び/または重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲を逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名されることもでき、類似して第2構成要素は第1構成要素と命名されることもできる。
【0061】
本開示において用いられる一例という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一例は、他の一例の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一例において説明された事項が他の一例に説明されていなくても、他の一例においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一例に関連する説明として理解することができる。
【0062】
本開示において用いられた用語は、単に一例を説明するために用いられたものであって、本開示を限定する意図はない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
図1
図2
図3
図4