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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062658
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230426BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230426BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04B1/58 G
E04H9/02 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098977
(22)【出願日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021172557
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000130374
【氏名又は名称】株式会社コンステック
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公平
(72)【発明者】
【氏名】津之下 睦
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸大
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E125AA02
2E125AB01
2E125AB12
2E125AB13
2E125AB16
2E125AB17
2E125AC15
2E125AC16
2E125BA42
2E125BB09
2E125BC09
2E125BE03
2E125CA05
2E125CA13
2E125CA14
2E125EA25
2E139AA01
2E139AC33
2E139BD13
2E139BD22
2E176AA07
2E176BB28
(57)【要約】
【課題】本発明は、既設構造物において補強部材を容易に鋼管部材に接合できる接合構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の接合構造は、既設構造物の鋼管部材SPに補強部材BDを接合するための接合構造1であって、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合され、補強部材BDが接合される接合部材2と、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合されるせん断力抵抗部材3とを備え、せん断力抵抗部材3が、鋼管部材SPの長手方向LDで接合部材2に直接または間接的に当接するように配置されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の鋼管部材に補強部材を接合するための接合構造であって、
前記鋼管部材の外周を覆うように前記鋼管部材に接合され、前記補強部材が接合される接合部材と、
前記鋼管部材の外周を覆うように前記鋼管部材に接合されるせん断力抵抗部材と
を備え、
前記せん断力抵抗部材が、前記鋼管部材の長手方向で前記接合部材に直接または間接的に当接するように配置される接合構造。
【請求項2】
前記せん断力抵抗部材は、前記接合部材を挟んで前記長手方向の両側で前記鋼管部材に接合される、
請求項1記載の接合構造。
【請求項3】
前記接合部材を挟んで前記長手方向の両側で前記鋼管部材に接合される一対のせん断力抵抗部材は、前記長手方向において互いに離間する方向への互いに対する相対移動が抑制されるように、前記長手方向に延びる連結用ボルトにより互いに連結される、
請求項2記載の接合構造。
【請求項4】
前記せん断力抵抗部材は、前記鋼管部材の長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持し、互いに対して固定される少なくとも2つの抵抗挟持部材を備え、
前記抵抗挟持部材が、前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の抵抗挟持部と、前記抵抗挟持部の周方向の端部から径方向外側に延びる抵抗フランジ部とを備え、
前記少なくとも2つの抵抗挟持部材は、前記少なくとも2つの抵抗挟持部材のそれぞれの前記抵抗挟持部が前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接するように配置されながらも、互いに対して固定される前の状態で、前記鋼管部材の周方向で隣接する抵抗挟持部材の互いに対向する抵抗フランジ部同士の間に隙間が生じるように形成され、
前記少なくとも2つの抵抗挟持部材は、前記長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持して前記鋼管部材に圧縮力を加えるように、前記抵抗フランジ部同士が対向する方向に延びる挟持用ボルトによって互い対向する抵抗フランジ部同士が固定されることで、前記鋼管部材に接合される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接合構造。
【請求項5】
前記せん断力抵抗部材は、接着剤を介して前記鋼管部材に接合される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接合構造。
【請求項6】
前記接合部材が、前記鋼管部材の長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持し、互いに対して固定される少なくとも2つの接合挟持部材を備え、
前記接合挟持部材は、前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の接合挟持部と、前記接合挟持部の周方向の端部から径方向外側に延びる接合フランジ部とを備え、
前記少なくとも2つの接合挟持部材は、前記鋼管部材の周方向で隣接する接合挟持部材の互いに対向する接合フランジ部同士が、前記接合フランジ部同士が対向する方向に延びる固定部材によって互いに対して固定されることで、前記鋼管部材に接合され、
前記少なくとも2つの接合挟持部材用の前記固定部材は、前記鋼管部材の周方向で隣接する接合挟持部材のそれぞれの接合フランジ部が、前記補強部材から受ける力によって互いの間の間隔が広がるのが抑制されるように、前記鋼管部材に径方向で隣接して配置される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接合構造。
【請求項7】
前記接合部材には、前記長手方向に対して略垂直に、前記鋼管部材とは反対側に延びるリブプレートが設けられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接合構造。
【請求項8】
前記せん断力抵抗部材が接合される前記鋼管部材の接合箇所の表面の表面粗さが、前記接合部材が接合される前記鋼管部材の接合箇所の表面の表面粗さよりも大きい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1および2に開示されているように、鋼管部材により構成される既設構造物を補強するために、ブレースなどの補強部材が接合構造を介して鋼管部材に接合される。接合構造は、鋼管部材に生じた力に補強部材が抵抗するために、または鋼管部材に生じた力を補強部材が吸収するために、鋼管部材と補強部材との間の相対移動が抑制されるように補強部材を鋼管部材に接合する必要がある。
【0003】
そのような接合構造を構成する部材として、たとえば、特許文献1には、鋼管部材を挟持するように接合され、ブレースが接合される一対の補強部材取付け具が開示されている。一対の補強部材取付け具は、それぞれの連結用フランジ同士がボルトで固定され、それぞれの分割筒状体が接着剤により鋼管部材と接着固定されることで、鋼管部材に接合される。一対の補強部材取付け具は、分割筒状体と鋼管部材とを接着固定する接着剤により、ブレースから受ける鋼管部材の長手方向のせん断力に抵抗することができ、それによって鋼管部材とブレースとの間の相対移動を抑制することができる。
【0004】
また、特許文献2には、接合構造を構成する部材として、鋼管部材を挟持するように固定され、ブレースが固定される一対の接合部材が開示されている。一対の接合部材は、それぞれのフランジ同士がボルトにより固定され、それぞれの挟持部が鋼管部材と、それぞれを貫通する通しボルトにより固定されることで、鋼管部材に接合される。一対の接合部材は、挟持部と鋼管部材とを固定する通しボルトにより、ブレースから受ける鋼管部材の長手方向のせん断力に抵抗することができ、それによって鋼管部材とブレースとの間の相対移動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-102877号公報
【特許文献2】特開2020-59968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のように、一対の補強部材取付け具を鋼管部材に接合するために接着剤を使用しても、接着剤は、ブレースから受ける鋼管部材の長手方向に対して垂直方向の引張力に対する抵抗力が著しく弱いために、鋼管部材の長手方向に対して垂直方向の引張力をブレースから受けた場合に、一対の補強部材取付け具および鋼管部材から離脱する可能性があり、本来期待される、ブレースから受ける鋼管部材の長手方向のせん断力に対する抵抗力を維持することができない。また、特許文献2のように、一対の接合部材を鋼管部材に接合するために通しボルトを使用するには、既設の鋼管部材に通しボルト用のボルト孔を設ける必要がある。施工現場においてボルト孔を設ける作業は煩雑であり、ボルト孔を設ける位置の位置決めも困難であるばかりか、ボルト孔を設けることによって鋼管部材の強度の低下をもたらす。また、一旦位置決めされた接合部材の位置を変更する場合には、新たなボルト孔を設ける必要があり、作業がさらに煩雑であるばかりか、鋼管部材の強度のさらなる低下をもたらす。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、既設構造物において補強部材を強固かつ容易に鋼管部材に接合できる接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接合構造は、既設構造物の鋼管部材に補強部材を接合するための接合構造であって、前記鋼管部材の外周を覆うように前記鋼管部材に接合され、前記補強部材が接合される接合部材と、前記鋼管部材の外周を覆うように前記鋼管部材に接合されるせん断力抵抗部材とを備え、前記せん断力抵抗部材が、前記鋼管部材の長手方向で前記接合部材に直接または間接的に当接するように配置されることを特徴とする。
【0009】
また、前記せん断力抵抗部材は、前記接合部材を挟んで前記長手方向の両側で前記鋼管部材に接合されることが好ましい。
【0010】
また、前記接合部材を挟んで前記長手方向の両側で前記鋼管部材に接合される一対のせん断力抵抗部材は、前記長手方向において互いに離間する方向への互いに対する相対移動が抑制されるように、前記長手方向に延びる連結用ボルトにより互いに連結されることが好ましい。
【0011】
また、前記せん断力抵抗部材は、前記鋼管部材の長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持し、互いに対して固定される少なくとも2つの抵抗挟持部材を備え、前記抵抗挟持部材が、前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の抵抗挟持部と、前記抵抗挟持部の周方向の端部から径方向外側に延びる抵抗フランジ部とを備え、前記少なくとも2つの抵抗挟持部材は、前記少なくとも2つの抵抗挟持部材のそれぞれの前記抵抗挟持部が前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接するように配置されながらも、互いに対して固定される前の状態で、前記鋼管部材の周方向で隣接する抵抗挟持部材の互いに対向する抵抗フランジ部同士の間に隙間が生じるように形成され、前記少なくとも2つの抵抗挟持部材は、前記長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持して前記鋼管部材に圧縮力を加えるように、前記抵抗フランジ部同士が対向する方向に延びる挟持用ボルトによって互い対向する抵抗フランジ部同士が固定されることで、前記鋼管部材に接合されることが好ましい。
【0012】
また、前記せん断力抵抗部材は、接着剤を介して前記鋼管部材に接合されることが好ましい。
【0013】
また、前記接合部材が、前記鋼管部材の長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持し、互いに対して固定される少なくとも2つの接合挟持部材を備え、前記接合挟持部材は、前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の接合挟持部と、前記接合挟持部の周方向の端部から径方向外側に延びる接合フランジ部とを備え、前記少なくとも2つの接合挟持部材は、前記鋼管部材の周方向で隣接する接合挟持部材の互いに対向する接合フランジ部同士が、前記接合フランジ部同士が対向する方向に延びる固定部材によって互いに対して固定されることで、前記鋼管部材に接合され、前記少なくとも2つの接合挟持部材用の前記固定部材は、前記鋼管部材の周方向で隣接する接合挟持部材のそれぞれの接合フランジ部が、前記補強部材から受ける力によって互いの間の間隔が広がるのが抑制されるように、前記鋼管部材に径方向で隣接して配置されることが好ましい。
【0014】
また、前記接合部材には、前記長手方向に対して略垂直に、前記鋼管部材とは反対側に延びるリブプレートが設けられることが好ましい。
【0015】
また、前記せん断力抵抗部材が接合される前記鋼管部材の接合箇所の表面の表面粗さが、前記接合部材が接合される前記鋼管部材の接合箇所の表面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既設構造物において補強部材を容易に鋼管部材に接合できる接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る接合構造の正面図である。
図2図1の接合構造の側面図である。
図3図1の接合構造のIII-III線断面図である。
図4図1の接合構造のIV-IV線断面図である。
図5図1の接合構造におけるせん断力抵抗部材と鋼管部材との間の接合前後の状態を示す断面図であり、(a)は、接合前の状態を示しており、(b)は、接合後の状態を示している。
図6図1の接合構造において接合部材およびせん断力抵抗部材を想像線で示した正面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る接合構造の正面図である。
図8図7の接合構造のVIII-VIII線断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る接合構造の正面図である。
図10図9の接合構造の側面図である。
図11図9の接合構造のXI-XI線断面図である。
図12図9の接合構造のXII-XII線断面図である。
図13】本発明の第4実施形態に係る接合構造の正面図である。
図14図13の接合構造の斜視図である。
図15図13の接合構造のXV-XV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の4つの実施形態に係る接合構造を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで例にすぎず、本発明の接合構造は以下の例に限定されることはない。図1図6は、第1実施形態に係る接合構造1に関連する図であり、図7図8は、第2実施形態に係る接合構造1に関連する図であり、図9図12は、第3実施形態に係る接合構造1に関連する図であり、図13図15は、第4実施形態に係る接合構造1に関連する図である。以下では、すべての実施形態に共通する構成をまとめて説明しながら、それぞれの実施形態で異なる構成を適宜付け加えて説明する。以下の説明で「本実施形態」というときは、すべての実施形態を指すものとする。なお、すべての図において、各実施形態の接合構造において共通する機能を有する要素に同じ符号を付している。
【0019】
本実施形態の接合構造1は、図1~2、図7図9~10および図13に示されるように、既設構造物の鋼管部材SPに補強部材BD、HSを接合するために用いられる。接合構造1が適用される既設構造物としては、少なくとも一部が鋼管部材SPにより構成されている既設構造物であれば、特に限定されることはなく、たとえば既設の鋼管トラス構造物などが例示される。補強部材BD、HSが接合される鋼管部材SPは、鋼製の筒状部材であれば、特に限定されることはなく、図示されるような円筒形状以外にも(図3~4、図8図11~12および図14も参照)、角筒形状など他の筒形状であってもよく、その構成材料も、炭素鋼であってもよいし、ステンレス鋼であってもよい。
【0020】
接合構造1によって鋼管部材SPに接合される補強部材BD、HSは、鋼管部材SPに接合されることで既設構造物を補強する部材である。補強部材BD、HSは、既設構造物が地震動や風などの外乱を受けることにより鋼管部材SPに生じる振動エネルギーを吸収して、および/または、鋼管部材SPから受ける外力に抵抗して、既設構造物の変形を抑制し、既設構造物の強度を向上させることで、既設構造物の耐震性や制振性を向上させる。補強部材BD、HSとしては、鋼管部材SPに接合されて既設構造物を補強することができれば、特に限定されることはなく、たとえば図1および図7に示される第1および第2実施形態の接合構造1によって鋼管部材SPに接合されるブレースや、図9および図13に示される第3および第4実施形態の接合構造1によって鋼管部材SPに接合されるH形鋼などが例示される。
【0021】
接合構造1は、図1~2、図7図9~10および図13~14に示されるように、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合され、補強部材BD、HSが接合される接合部材2と、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合されるせん断力抵抗部材3とを備えている。
【0022】
接合部材2は、図1図7図9および図13に示されるように、鋼管部材SPに接合されるとともに、補強部材BD、HSが接合されることで、補強部材BD、HSを鋼管部材SPに接合する部材である。接合部材2は、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合されることで、鋼管部材SPの長手方向LDに対して垂直方向で鋼管部材SPと係合して、長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPに対する相対移動が抑制される。また、接合部材2は、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合されることで、接合部材2と鋼管部材SPとの間に生じる摩擦力(および場合により接着力)により、鋼管部材SPの長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動が抑制される。これにより、接合部材2に接合された補強部材BD、HSは、長手方向LDおよび長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPとの間の相対移動が抑制されるので、鋼管部材SPとの間の力の伝達のロスを抑制することができ、既設構造物に補強作用を及ぼすことができる。ただし、接合部材2は、少なくとも、鋼管部材SPの長手方向LDに対して垂直方向で鋼管部材SPと係合して、長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPに対する相対移動が抑制されればよい。接合部材2は、以下で詳しく述べるように、せん断力抵抗部材3によって、鋼管部材SPの長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動が抑制されるので、必ずしも、鋼管部材SPの長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動を抑制するための、接合部材2と鋼管部材SPとの間の摩擦力(および場合により接着力)を生じさせなくても構わない。
【0023】
接合部材2は、第1~第3実施形態では、図3図8および図11に示されるように、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周に亘って鋼管部材SPの外周の表面に直接接触することで、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うように鋼管部材SPに接合される。接合部材2が鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆って鋼管部材SPに接合されることで、長手方向LDに対して垂直方向における接合部材2と鋼管部材SPとの間の係合力がより大きくなるとともに、接合部材2と鋼管部材SPとの間の摩擦力がより大きくなる。それによって、長手方向LDおよび長手方向LDに対して垂直方向における接合部材2と鋼管部材SPとの間の相対移動がより抑制され、結果として、補強部材BD、HSと鋼管部材SPとの間の相対移動がより抑制される。ただし、接合部材2は、長手方向LDおよび長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPに対する相対移動が抑制されるように、鋼管部材SPの外周を覆って鋼管部材SPに接合されていれば、本実施形態に限定されることはなく、たとえば鋼管部材SPの外周の周方向CDの一部を覆うように鋼管部材SPに接合されてもよいし、鋼管部材SPの表面に、摩擦力を高めるゴム材料などの他の部材を介して間接的に接触することで鋼管部材SPの外周を覆って鋼管部材SPに接合されてもよい。第4実施形態では、接合部材2は、図13~15に示されるように、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周に亘って、後述する接合鍔部21dが、鋼管部材SPの外周の表面に直接接触するとともに、後述する接合挟持部21aが、充填材25を介して鋼管部材SPの外周の表面に間接的に接触して、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うように鋼管部材SPに接合される。ただし、第4実施形態においても、接合部材2は、鋼管部材SPの外周の周方向CDの一部を覆うように鋼管部材SPに接合されてもよい。
【0024】
接合部材2は、長手方向LDおよび長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPに対する相対移動が抑制されるよう、鋼管部材SPの外周を少なくとも部分的に覆うように鋼管部材SPに接合されていればよく、その構成は特に限定されない。本実施形態では、接合部材2は、図1~3、図7~8、図9~11および図13~14に示されるように、鋼管部材SPの長手方向LDに対して略垂直方向(本実施形態では挟持方向SD1)で鋼管部材SPを挟持し、互いに対して固定される一対の接合挟持部材21、21を備えている。一対の接合挟持部材21、21は、鋼管部材SPを挟持方向SD1で挟んだ状態で互いに対して固定されることで、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うように鋼管部材SPに接合される。一対の接合挟持部材21、21が、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うことで、長手方向LDに対して垂直方向における一対の接合挟持部材21、21と鋼管部材SPとの間の係合力がより大きくなるとともに、一対の接合挟持部材21、21と鋼管部材SPの外周の表面との間の摩擦力(および場合により接着力)がより大きくなる。それによって、長手方向LDおよび長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPに対する一対の接合挟持部材21、21の相対移動がより抑制される。なお、接合部材2は、本実施形態では一対(2つ)の接合挟持部材21、21を備えているが、挟持方向SD1に限らず長手方向LDに対して略垂直方向で鋼管部材SPを挟持するために、少なくとも2つの接合挟持部材を備えていれば、本実施形態に限定されることはなく、たとえば鋼管部材SPの周方向CDに沿って並んで配置される3つ以上の接合挟持部材を備えていてもよい。
【0025】
接合挟持部材21は、少なくとも補強部材BD、HSを支持し、鋼管部材SPおよび補強部材BD、HSから受ける力による変形が抑制される強度を有していれば、その構成材料は特に限定されることはなく、たとえば公知の鋼板により形成することができる。
【0026】
接合挟持部材21は、本実施形態では、図1~3、図7~8、図9~11および図13~15に示されるように、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の接合挟持部21aと、接合挟持部21aの周方向CDの端部から径方向外側に延びる接合フランジ部21bとを備えている。少なくとも2つ(本実施形態では一対)の接合挟持部材21、21は、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する接合挟持部材21、21の互いに対向する接合フランジ部21b、21b同士が、接合フランジ部21b、21b同士が対向する方向に延びる固定部材(後述する挟持用ボルト22および/または接続部材24)によって互いに対して固定されることで、鋼管部材SPに接合される。第4実施形態では、接合挟持部材21はさらに、接合挟持部21aを挟んで接合挟持部21aの長手方向LDの両側において、接合挟持部21aの周方向CDの略全体に亘って接合挟持部21aの径方向の内側から外側に、長手方向LDに対して略垂直に延びる接合鍔部21dを備えている。接合挟持部材21が鋼管部材SPに接合されると、接合鍔部21dが鋼管部材SPの外周の表面に接触し、接合挟持部21a、接合鍔部21dおよび鋼管部材SPの外周の表面により囲まれる領域に充填材25が充填される空間が形成される(図15参照)。充填材25としては、上述した空間内に配置する際には空間の周囲の形状に追従して変形可能で、配置した後に硬化する材料であれば、特に限定されることはなく、公知のグラウトや接着剤を使用することができ、コストの観点からグラウトを好適に使用することができる。充填材25は、接合挟持部材21が鋼管部材SPに取り付けられた後に、接合挟持部21aに設けられた注入孔Hから注入される。
【0027】
接合挟持部21aは、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接して、鋼管部材SPの外周の表面の周方向CDの一部を覆う部位である。接合挟持部21aは、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接することで、鋼管部材SPの長手方向LDに対して垂直方向において鋼管部材SPとの間で係合力を生じさせるとともに、鋼管部材SPの外周の表面との間に摩擦力を生じさせる。接合挟持部21aは、第1~第3実施形態では、図3図8および図11に示されるように、鋼管部材SPの外周の表面に直接当接するように配置されている。しかし、接合挟持部21aは、長手方向LDに対して垂直方向において鋼管部材SPとの間で係合力が生じ、鋼管部材SPの外周の表面との間に摩擦力が生じるように鋼管部材SPの外周の表面に当接すれば、図示された例に限定されることはなく、たとえば摩擦力を高めるゴム材料などの他の部材を介して間接的に当接するように配置されてもよい。また、第4実施形態では、接合挟持部21aは、図15に示されるように、充填材25を介して鋼管部材SPの外周の表面に間接的に当接する。接合挟持部21aと鋼管部材SPの外周の表面との間に充填材25を介在させることで、鋼管部材SPの外周の表面に不陸があったとしても、接合挟持部21aと鋼管部材SPの外周の表面との間に隙間が生じることが抑制される。これにより、接合挟持部21aは、より確実に、鋼管部材SPの長手方向LDに対して垂直方向で鋼管部材SPと係合して、長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPに対する相対移動が抑制される。
【0028】
接合挟持部21aは、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接することができればよく、その形状や大きさは特に限定されない。たとえば、第1~第3実施形態では、接合挟持部21aは、鋼管部材SPの外周の表面の形状および大きさに対応する形状および大きさに形成されている。より具体的には、接合挟持部21aは、図1~3、図7~8および図9~11に示されるように、略円筒形状の鋼管部材SPの外周の形状に対応するように略半割円筒状に形成され、鋼管部材SPの外周の大きさに対応するように接合挟持部21aの内周径が鋼管部材SPの外周径と略同じか、鋼管部材SPの外周径よりわずかに大きくなるように形成されている。たとえば、第4実施形態では、接合挟持部21aは、図13~15に示されるように、略円筒形状の鋼管部材SPの外周の形状に対応するように略半割円筒状に形成され、接合挟持部21aと鋼管部材SPの外周の表面との間に充填材25を充填できるように、接合挟持部21aの内周径が鋼管部材SPの外周径よりも大きくなるように形成されている。第4実施形態では、接合挟持部21aは、充填材25を充填できるように鋼管部材SPの外周径よりも大きい内周径を有していればよく、特に限定されることはないが、後述するせん断力抵抗部材3の抵抗挟持部31aと略同一の径を有し、長手方向LDに沿った断面において略同一直線状に並ぶように、形成され、配置されることが好ましい(図15参照)。これにより、接合部材2からせん断力抵抗部材3に力が伝達される際に、接合部材2およびせん断力抵抗部材3の変形が抑制されて、後述する、せん断力抵抗部材3による抵抗力を高めることができる。接合挟持部21aは、本実施形態では略半割円筒状に形成されているが、鋼管部材SPが略円筒形状以外の筒形状に形成されている場合は、鋼管部材SPの外周の形状に対応した略半割筒状に形成されてもよい。また、接合挟持部21aは、鋼管部材SPの外周の表面の周方向CDの一部を覆うことができれば、略半割筒状に限定されることはなく、1/3割筒状や2/3割筒状などの部分筒状に形成されてもよい。また、接合挟持部21aは、他方の接合挟持部21aとともに挟持方向SD1で鋼管部材SPを挟んだ際に、接合挟持部21a、21a同士の間に隙間が生じるような大きさに形成されてもよい。
【0029】
接合フランジ部21bは、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する別の接合挟持部材21の接合フランジ部21bに対して固定されることで、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する接合挟持部材21、21同士を固定する部位である。接合フランジ部21bは、本実施形態では、図1、3、図7、8、図9、11および図13、14に示されるように、長手方向LDおよび挟持方向SD1の両方に対して略垂直方向に沿って、接合挟持部21aの周方向CDの両方の端部のそれぞれから径方向外側に延びるようにプレート状に形成されている。なお、接合フランジ部21bは、接合挟持部21aの周方向CDの端部から径方向外側に延びるように形成されていれば、その延びる方向は、長手方向LDおよび挟持方向SD1の両方に対して略垂直方向に限定されることはなく、固定される別の接合挟持部材21の接合フランジ部21bの配置に応じて適宜修正が可能である。
【0030】
ここで、接合部材2に接合される補強部材BD、HSは、既設構造物を補強できるように接合部材2に接合されればよく、接合される位置や方法は、特に限定されない。本実施形態では、補強部材BD、HSは、図1~3、図7、8、図9、11および図13に示されるように、接合挟持部材21の接合フランジ部21bに接合される。
【0031】
補強部材であるブレースBDが接合部材2に接合される第1および第2実施形態の接合構造1では、図3および図8に示されるように、ブレースBDに固定されたプレート状の連結部材CM1が、隣接する接合フランジ部21b、21b同士の間に挟持された状態でボルトなどの固定手段により固定されることで、ブレースBDが接合部材2に接合される。第1および第2実施形態では、図1および図7に示されるように、4つのブレースBDが接合部材2に接合され、それぞれのブレースBDは、長手方向LDに対して傾斜した方向(第1および第2実施形態では45°傾斜した方向)に延びるように配置されている。それぞれのブレースBDの一端は、長手方向LDおよび挟持方向SD1の両方に対して垂直方向(図1および図7中、左右方向)で接合挟持部21aを挟んで両側(図1および図7中、左右両側)の接合フランジ部21b、21bのそれぞれに対して、接合フランジ部21bの長手方向LDの両側(図1および図7中、上下両側)の端部のそれぞれに隣接して接合されている。また、それぞれのブレースBDの他端は、他の接合構造(接合構造1など)を介して既設構造物の他の部材(鋼管部材SPなど)に接合される。ただし、ブレースBDの数や配置は、補強しようとする既設構造物の構造に応じて適宜修正が可能である。また、ブレースBDは、接合フランジ部21bの他の箇所に接合されてもよいし、接合フランジ部21b以外の接合部材2の他の箇所に接合されてもよい。
【0032】
補強部材であるH形鋼HSが接合部材2に接合される第3および第4実施形態の接合構造1では、図9、11および図13に示されるように、そのフランジ部分がH形鋼HSのフランジ部分に溶接などにより固定された断面略T字状の連結部材CM2のウェブ部分が、隣接する接合フランジ部21b、21b同士の間に挟持された状態でボルトなどの固定手段により固定されることで、H形鋼HSが接合部材2に接合される。第3および第4実施形態では、H形鋼HSは、鋼管部材SPと略平行に延びるように長手方向LDに沿って配置され、H形鋼HSのフランジ部分が連結部材CM2を介して、長手方向LDおよび挟持方向SD1の両方に対して垂直方向(図9、11中、左右方向)の接合挟持部21aの一方側(図9、11中、右側)の接合フランジ部21bに接合されている。ただし、H形鋼HSの配置は、補強しようとする既設構造物の構造に応じて適宜修正が可能である。また、H形鋼HSは、接合フランジ部21bの他の箇所に接合されてもよいし、接合フランジ部21b以外の接合部材2の他の箇所に接合されてもよい。
【0033】
少なくとも2つ(本実施形態では一対)の接合挟持部材21、21は、上述したように、隣接する接合フランジ部21b、21b同士が、接合フランジ部21b、21b同士が対向する方向に延びる固定部材(挟持用ボルト22および/または接続部材24)によって固定されることで、互いに対して固定される。少なくとも2つ(本実施形態では一対)の接合挟持部材21、21用の固定部材(挟持用ボルト22および/または接続部材24)は、図1、3、図7、8、図9、11および図13、14に示されるように、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する接合挟持部材21、21のそれぞれの接合フランジ部21b、21bが、補強部材BD、HSから受ける力によって互いの間の間隔が(図3図8図11および図14中、上下方向に)広がるのが抑制されるように、鋼管部材SPに径方向で隣接して配置されることが好ましい。接合挟持部材21、21は、補強部材BD、HSから、長手方向LDに対して垂直方向(図3および図8中、左右方向、図11および図13中、右方向)に引張力を受けると、部分筒状に形成された接合挟持部21a、21aは、平板状に変形させられようとする応力を受け、互いに固定された接合フランジ部21b、21bは、(図3図8図11および図14中、上下方向に)互いに離間させられようとする応力を受ける。そのような応力を受けて、接合フランジ部21b、21b同士の間の間隔が広がると、接合挟持部21a、21a(および接合鍔部21d、21d)と鋼管部材SPの外周の表面との間に隙間が生じる可能性がある。本実施形態では、鋼管部材SPに径方向で隣接して配置された固定部材(挟持用ボルト22および/または接続部材24)によって接合フランジ部21b、21b同士が固定されることで、接合フランジ部21b、21b同士の間の間隔が広がることが抑制され、接合挟持部21a、21a(および接合鍔部21d、21d)と鋼管部材SPの外周の表面との間における隙間の発生が抑制される。これにより、鋼管部材SPの長手方向LDに対して垂直方向における接合挟持部21a、21a(および接合鍔部21d、21d)と鋼管部材SPとの間の係合力の低下を抑制することができるとともに、接合挟持部21a、21a(および接合鍔部21d、21d)と鋼管部材SPの外周の表面との間の摩擦力(および場合によっては接着力)の低下を抑制することができる。
【0034】
固定部材(挟持用ボルト22および/または接続部材24)は、鋼管部材SPの径方向で鋼管部材SPに隣接して配置されていればよく、特に限定されることはないが、固定部材の鋼管部材SP側の端部が、好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/10以下の長さの範囲内に位置するように、さらに好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/20以下の長さの範囲内に位置するように、よりさらに好ましくは接合挟持部21aに接触するように、鋼管部材SPに隣接して配置される。
【0035】
固定部材としては、たとえば図1~3、図9~11および図13~14に示された第1、第3および第4実施形態の接合構造1のように、接合フランジ部21b、21b同士が対向する方向に延びる挟持用ボルト22を用いることができる。挟持用ボルト22は、接合フランジ部21b、21b同士が対向する方向に延び、接合フランジ部21b、21bを貫通して、接合フランジ部21b、21b同士を互いに対して固定する。挟持用ボルト22は、第1、第3および第4実施形態の接合構造1では、図1~3、図9~11および図13~14に示されるように、接合フランジ部21bの表面に配置された挟持用座金23を介して、接合フランジ部21bに固定される。挟持用ボルト22が挟持用座金23を介して接合フランジ部21bに固定されることで、挟持用ボルト22の締め付け力が作用する範囲を挟持用座金23の面積範囲まで広げることができ、接合フランジ部21b、21b同士の間の間隔が広がることがさらに抑制される。
【0036】
挟持用ボルト22は、鋼管部材SPの径方向で鋼管部材SPに隣接して配置されていればよく、特に限定されることはないが、挟持用ボルト22の軸心が、好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/2以下の長さの範囲内に位置するように、さらに好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/3以下の長さの範囲内に位置するように、鋼管部材SPに隣接して配置される。また、挟持用座金23は、挟持用ボルト22が配置される位置に応じて適宜配置されるが、挟持用座金23の鋼管部材SP側の端部が、好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/10以下の長さの範囲内に位置するように、さらに好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/20以下の長さの範囲内に位置するように、よりさらに好ましくは接合挟持部21aに接触するように、鋼管部材SPに隣接して配置される。なお、本明細書においては、挟持用ボルト22は、第1、第3および第4実施形態における接合部材2に設けられるものとして示されているが、第1、第3および第4実施形態における接合部材2と同様に、第2実施形態における接合部材2に設けられてもよい。
【0037】
また、固定部材として、たとえば図7、8に示された第2実施形態の接合構造1のように、接合フランジ部21b、21b同士が対向する方向に延びる接続部材24(座金など)を用いることもできる。接続部材24は、図7、8に示されるように、接合フランジ部21b、21b同士が対向する方向に延び、接合フランジ部21b、21bを貫通し、接合フランジ部21b、21bに設けられた後述のリブプレート21c同士を互いに接続することで、接合フランジ部21b、21b同士を互いに対して固定する。接続部材24は、図7に示されるように、リブプレート21cを長手方向LDで挟むように、リブプレート21cの長手方向LDの両側に配置される。そして、図8に示されるように、接続部材24の延びる方向の一方(図8中、上側)の端部は、一方(図8中、上側)の接合フランジ部21bに設けられたリブプレート21cにボルトなどの固定手段により固定され、接続部材24の延びる方向の他方(図8中、下側)の端部は、他方(図8中、下側)の接合フランジ部21bに設けられたリブプレート21cにボルトなどの固定手段により固定される。
【0038】
接続部材24は、鋼管部材SPの径方向で鋼管部材SPに隣接して配置されていればよく、特に限定されることはないが、接続部材24の鋼管部材SP側の端部が、好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/10以下の長さの範囲内に位置するように、さらに好ましくは鋼管部材SPの径方向の端部から、鋼管部材SPの径方向の長さの1/20以下の長さの範囲内に位置するように、よりさらに好ましくは接合挟持部21aに接触するように、鋼管部材SPに隣接して配置される。なお、本明細書においては、接続部材24は、第2実施形態における接合部材2に設けられるものとして示されているが、第2実施形態における接合部材2と同様に、第1、第3および第4実施形態における接合部材2に設けられてもよい。
【0039】
接合部材2には、図1図3図7、8および図9図11に示される第1~第3実施形態の接合構造1のように、長手方向LDに対して略垂直に、鋼管部材SPとは反対側に延びるリブプレート21cが設けられてもよい。接合部材2は、長手方向LDに対して略垂直に延びるリブプレート21cが設けられることで、リブプレート21cが延びる方向への変形が抑制され、鋼管部材SPに対する接合強度を高めることができる。第1~第3実施形態では、リブプレート21cは、接合挟持部材21の一部として設けられ、接合挟持部21aおよび接合フランジ部21bの表面から、長手方向LDに対して略垂直に延びている。これにより、接合挟持部材21、21が、補強部材BD、HSから、長手方向LDに対して垂直方向の引張力を受けた際に、接合挟持部21aの変形が抑制されるとともに、互いに固定された接合フランジ部21b、21b同士の間の間隔が広がることが抑制され、接合挟持部21a、21a(および接合鍔部21d、21d)と鋼管部材SPの外周の表面との間における隙間の発生が抑制される。それによって、鋼管部材SPの長手方向LDに対して垂直方向における接合部材2と鋼管部材SPとの間の係合力の低下が抑制されて、長手方向LDに対して垂直方向における鋼管部材SPに対する接合部材2の相対移動が抑制される。また、接合部材2と鋼管部材SPの外周の表面との間の摩擦力(および場合によっては接着力)の低下が抑制されて、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する接合部材2の相対移動が抑制される。第4実施形態では、図13~15に示されるように、接合部材2の接合挟持部材21に接合鍔部21dが設けられているが、この接合鍔部21dが、上述したリブプレート21cと同様の機能を有している。ただし、第4実施形態における接合部材2にも、第1~3実施形態の接合構造1の接合部材2と同様に、上述したリブプレート21cが設けられてもよい。
【0040】
せん断力抵抗部材3は、図1、2、図7図9、10および図13~15に示されるように、鋼管部材SPの長手方向LDで接合部材2に当接するように配置され、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合される。せん断力抵抗部材3は、鋼管部材SPの外周を覆うように鋼管部材SPに接合されることで、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間に生じる摩擦力および/または接着力により、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動が抑制される。長手方向LDにおける相対移動が抑制されるせん断力抵抗部材3は、長手方向LDで接合部材2に当接するように配置されることで、接合部材2から受ける長手方向LDのせん断力に抵抗し、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する接合部材2の相対移動を抑制する。なお、せん断力抵抗部材3は、本実施形態では、鋼管部材SPの長手方向LDで接合部材2に直接当接するように配置されているが、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する接合部材2の相対移動を抑制することができれば、本実施形態に限定されることはなく、他の部材を介して接合部材2に間接的に当接するように配置されてもよい。
【0041】
せん断力抵抗部材3は、第1~第3実施形態では、図4および図12に示されるように、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周に亘って鋼管部材SPの表面に直接接触することで、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うように鋼管部材SPに接合される。せん断力抵抗部材3が鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆って鋼管部材SPに接合されることで、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力がより大きくなり、長手方向LDにおけるせん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の相対移動がより抑制される。ただし、せん断力抵抗部材3は、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動が抑制されるように、鋼管部材SPの外周を覆って鋼管部材SPに接合されれば、本実施形態に限定されることはなく、たとえば鋼管部材SPの外周の周方向CDの一部を覆うように鋼管部材SPに接合されてもよいし、たとえば鋼管部材SPの表面に、摩擦力を高めるゴム材料などの他の部材を介して間接的に接触して鋼管部材SPに接合されてもよい。また、第4実施形態では、せん断力抵抗部材3は、図13~15に示されるように、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周に亘って、後述する抵抗鍔部31dが、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に接触するとともに、後述する抵抗挟持部31aが、接着剤34を介して鋼管部材SPの表面に間接的に接触して、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うように鋼管部材SPに接合される。せん断力抵抗部材3が鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆って鋼管部材SPに接合されることで、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力および/または接着力がより大きくなり、長手方向LDにおけるせん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の相対移動がより抑制される。ただし、第4実施形態においても、せん断力抵抗部材3は、鋼管部材SPの外周の周方向CDの一部を覆うように鋼管部材SPに接合されてもよい。また、第1~第3実施形態においても、せん断力抵抗部材3は、接着剤34を介して鋼管部材SPに接合されてもよい。
【0042】
接合部材2は、補強部材BD、HSから長手方向LDに沿った引張力を受けても、接合部材2と鋼管部材SPとの間の摩擦力(および場合により接着力)、ならびに、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力および/またはせん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の接着力により、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動が抑制される。また、接合部材2は、上述したように補強部材BD、HSから長手方向LDに対して垂直方向の引張力を受けて、接合部材2と鋼管部材SPとの間の摩擦力(および場合により接着力)が低下したとしても、補強部材BD、HSが接合されていないせん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力および/またはせん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の接着力により、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動が抑制される。つまり、接合部材2と鋼管部材SPとの間に十分な摩擦力(および場合により接着力)が存在しなくても、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力および/またはせん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の接着力によって、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する接合部材2の相対移動が抑制される。これにより、接合部材2に接合された補強部材BD、HSは、長手方向LDにおける鋼管部材SPとの間の相対移動が抑制されるので、鋼管部材SPとの間の力の伝達のロスを抑制することができ、既設構造物に補強作用を及ぼすことができる。
【0043】
本実施形態の接合構造1によれば、上述したように、補強部材BD、HSが接合される接合部材2とは別に、鋼管部材SPの長手方向LDで接合部材2に当接するようにせん断力抵抗部材3を配置することで、補強部材BD、HSを鋼管部材SPに強固に接合することができるとともに、従来技術のように通しボルトを用いる必要がないので、既設構造物において補強部材BD、HSを鋼管部材SPに容易に接合することができる。
【0044】
せん断力抵抗部材3、3は、本実施形態では、図1、2、図7図9、10および図13、14に示されるように、接合部材2を挟んで長手方向LDの両側で鋼管部材SPに接合される。このように、接合部材2を挟んで長手方向LDの両側にせん断力抵抗部材3、3が設けられることで、長手方向LDの両側への接合部材2の相対移動が抑制される。たとえば、図1、2および図7に示された第1および第2実施形態の接合構造1では、接合部材2の長手方向LDの両側のそれぞれに2つのブレースBDが接合されている。接合部材2は、たとえば長手方向LDの一方側(図1、2および図7中、上側)の2つのブレースBDから引張力を受けると、長手方向LDの一方側への引張力を受けるが、長手方向LDの一方側に配置されたせん断力抵抗部材3によって長手方向LDの一方側への相対移動が抑制される。また、接合部材2は、長手方向LDの他方側(図1、2および図7中、下側)の2つのブレースBDから引張力を受けると、長手方向LDの他方側への引張力を受けるが、長手方向LDの他方側に配置されたせん断力抵抗部材3によって長手方向LDの他方側への相対移動が抑制される。図9、10および図13、14に示された第3および第4実施形態の接合構造1の場合も同様に、長手方向LDの両側に設けられたせん断力抵抗部材3、3によって、接合部材2の長手方向LDの両側への相対移動が抑制される。ただし、せん断力抵抗部材3は、補強部材BD、HSの配置に応じて、接合部材2の相対移動の抑制が必要な長手方向LDのいずれか一方において鋼管部材SPに接合されてもよい。
【0045】
接合部材2を挟んで長手方向LDの両側で鋼管部材SPに接合される一対のせん断力抵抗部材3、3は、図1、2、図7および図9、10に示される第1~第3実施形態の接合構造1のように、長手方向LDにおいて互いに離間する方向への互いに対する相対移動が抑制されるように、長手方向LDに延びる連結用ボルト33により互いに連結されることが好ましい。一対のせん断力抵抗部材3、3は、第1~第3実施形態では、一対のせん断力抵抗部材3、3の後述する抵抗挟持部材31、31のリブプレート31c、31c同士が連結用ボルト33により連結されることで、互いに連結される。連結用ボルト33は、第1~第3実施形態では両側のせん断力抵抗部材3、3のそれぞれの1つのリブプレート31c、31c同士を連結しているが、両側のせん断力抵抗部材3、3のそれぞれの複数のリブプレート31c、31cを貫通して、複数のリブプレート31c、31c同士を連結してもよい。また、連結用ボルト33は、第1~第3実施形態では対向するリブプレート31c、31cの長手方向LDの外側に設けられた2つのナットにより固定されているが、それぞれのリブプレート31cを長手方向LDで挟んで設けられたナットにより固定されてもよい。また、連結用ボルト33は、第1~第3実施形態では両側のせん断力抵抗部材3、3同士を直接連結しているが、ハイテンションボルトとして両側のせん断力抵抗部材3、3のそれぞれのリブプレート31c、31cを接合部材2のリブプレート21c、21cに連結することで、接合部材2を介して間接的に両側のせん断力抵抗部材3、3同士を連結してもよい。また、一対のせん断力抵抗部材3、3は、長手方向LDにおいて互いに離間する方向への互いに対する相対移動が抑制されるように互いに連結されればよく、リブプレート31c、31c以外の他の部位を介して互いに連結されてもよい。なお、第4実施形態の接合構造1では、上述した連結用ボルト33が設けられていないが、第1~第3実施形態の接合構造1と同様に、一対のせん断力抵抗部材3、3を互いに連結する連結用ボルト33が設けられてもよい。その場合、連結用ボルト33に関連して上述した構成が、第4実施形態の接合構造1にも適用される。
【0046】
一対のせん断力抵抗部材3、3は、長手方向LDにおいて互いに対して離間する方向への相対移動が抑制されることで、長手方向LDにおける接合部材2の鋼管部材SPに対する相対移動をより抑制することができる。図1、2に示された第1実施形態の接合構造1を参照して具体的に説明すると、接合部材2は、たとえば長手方向LDの一方側(図1、2中、上側)の2つのブレースBDから長手方向LDの一方側への引張力を受けると、長手方向LDの一方側に配置された一方側のせん断力抵抗部材3に対して、長手方向LDの一方側へのせん断力を伝達する。一方側のせん断力抵抗部材3は、接合部材2から受けたせん断力を、長手方向LDで互いに連結された、長手方向LDの他方側(図1、2中、下側)に配置された他方側のせん断力抵抗部材3に伝達する。これにより、接合部材2から受けるせん断力に対して、長手方向LDの両側に設けられた一対のせん断力抵抗部材3、3の両方で抵抗することができるので、長手方向LDにおける接合部材2の鋼管部材SPに対する相対移動をより抑制することができる。接合部材2が、長手方向LDの他方側(図1、2中、下側)の2つのブレースBDから長手方向LDの他方側への引張力を受けた場合も同様に、長手方向LDの両側に設けられた一対のせん断力抵抗部材3、3の両方で、接合部材2から受けるせん断力に抵抗することができる。図7および図9、10に示された第2および第3実施形態の接合構造1についても、また、第4実施形態の接合構造1に連結用ボルト33が設けられる場合にも、同様のことが言える。
【0047】
せん断力抵抗部材3は、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する相対移動が抑制されるよう、鋼管部材SPの外周を少なくとも部分的に覆うように鋼管部材SPに接合されていればよく、その構成は特に限定されない。第1~第3実施形態では、せん断力抵抗部材3は、図1、2、4、図7および図9、10、12に示されるように、鋼管部材SPの長手方向LDに対して略垂直方向(本実施形態では挟持方向SD2)で鋼管部材SPを挟持し、互いに対して固定される一対の抵抗挟持部材31、31を備えている。一対の抵抗挟持部材31、31は、鋼管部材SPを挟持方向SD2で挟んだ状態で互いに対して固定されることで、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うように鋼管部材SPに接合される。一対の抵抗挟持部材31、31が、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うことで、一対の抵抗挟持部材31、31と鋼管部材SPの外周の表面との間の摩擦力がより大きくなり、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する一対の抵抗挟持部材31、31の相対移動がより抑制される。また、第4実施形態では、せん断力抵抗部材3は、図14、15に示されるように、鋼管部材SPの長手方向LDに対して略垂直方向(本実施形態では挟持方向SD2)で鋼管部材SPを挟んで鋼管部材SPに固定される一対の抵抗挟持部材31、31を備えている。一対の抵抗挟持部材31、31は、鋼管部材SPを挟持方向SD2で挟んだ状態で接着剤34を介して鋼管部材SPに固定されることで、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うように鋼管部材SPに接合される。一対の抵抗挟持部材31、31が、鋼管部材SPの外周の周方向CDの略全周を覆うことで、一対の抵抗挟持部材31、31と鋼管部材SPの外周の表面との間の摩擦力および/または接着力がより大きくなり、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する一対の抵抗挟持部材31、31の相対移動がより抑制される。第4実施形態では、一対の抵抗挟持部材31、31は、図14に示されるように、接合プレート35を介して互いに対して固定されるが、接着剤34を介して鋼管部材SPに接合されていれば、必ずしも互いに対して固定されていなくてもよい。なお、せん断力抵抗部材3は、本実施形態では一対(2つ)の抵抗挟持部材31、31を備えているが、挟持方向SD2に限らず長手方向LDに対して略垂直方向で鋼管部材SPを挟持するために、少なくとも2つの抵抗挟持部材を備えていれば、本実施形態に限定されることはなく、たとえば鋼管部材SPの周方向CDに沿って並んで配置される3つ以上の抵抗挟持部材を備えていてもよい。また、一対の抵抗挟持部材31、31の挟持方向SD2は、第1、第2および第4実施形態では一対の接合挟持部材21、21の挟持方向SD1と略平行であり、第3実施形態では一対の接合挟持部材21、21の挟持方向SD1に対して略垂直であるが、特に限定されることはなく、隣接する部材の配置に応じて適宜修正が可能である。
【0048】
抵抗挟持部材31は、接合部材2から受けるせん断力による変形が抑制される強度を有していれば、その構成材料は特に限定されることはなく、たとえば公知の鋼板により形成することができる。
【0049】
抵抗挟持部材31は、第1~第3実施形態では、図1、2、4、図7および図9、10、12に示されるように、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の抵抗挟持部31aと、抵抗挟持部31aの周方向CDの端部から径方向外側に延びる抵抗フランジ部31bとを備えている。少なくとも2つ(第1~第3実施形態では一対)の抵抗挟持部材31、31は、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する抵抗挟持部材31、31の互いに対向する抵抗フランジ部31b、31b同士が、抵抗フランジ部31b、31b同士が対向する方向に延びる挟持用ボルト32によって互いに対して固定されることで、鋼管部材SPに接合される。また、抵抗挟持部材31は、第4実施形態では、図13~15に示されるように、鋼管部材SPの外周の表面に間接的に当接する部分筒状の抵抗挟持部31aと、抵抗挟持部31aを挟んで抵抗挟持部31aの長手方向LDの両側において、抵抗挟持部31aの周方向CDの略全体に亘って抵抗挟持部31aの径方向の内側から外側に、長手方向LDに対して略垂直に延びる抵抗鍔部31dとを備えている。抵抗挟持部材31が鋼管部材SPに接合されると、抵抗鍔部31dが鋼管部材SPの外周の表面に接触し、抵抗挟持部31a、抵抗鍔部31dおよび鋼管部材SPの外周の表面により囲まれる領域に接着剤34が充填される空間が形成される(図15参照)。抵抗挟持部材31は、形成された空間内に接着剤34が充填されことにより、鋼管部材SPに接合される。第4実施形態では、抵抗挟持部材31が鋼管部材SPに取り付けられる前に、上記空間に対応する、抵抗挟持部31aと抵抗鍔部31dとに区切られた空間に接着剤34が充填され、その後、抵抗挟持部材31が鋼管部材SPに取り付けられる。第4実施形態において、少なくとも2つ(第4実施形態では一対)の抵抗挟持部材31、31は、図14に示されるように、それぞれに対応する抵抗鍔部31d、31dに跨るように接着された接合プレート35により、互いに固定される。せん断力抵抗部材3は、少なくとも2つ(第4実施形態では一対)の抵抗挟持部材31、31が互いに固定されることで、せん断力抵抗部材3が接合部材2から長手方向LDに沿った力を受けたときに、抵抗挟持部材31、31が鋼管部材SPから離脱することがより抑制されるので、接合部材2から受けるせん断力に対してより大きな抵抗力を発揮することができる。なお、抵抗挟持部材31、31は、それぞれに対応する抵抗挟持部31a、31aの全周を周回するステンレスベルトにより互いに固定されてもよいし、接着剤により互いに固定されてもよい。
【0050】
抵抗挟持部31aは、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接して、鋼管部材SPの外周の表面の周方向CDの一部を覆う部位である。抵抗挟持部31aは、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接することで、鋼管部材SPの外周の表面との間に摩擦力を生じさせる。抵抗挟持部31aは、第1~第3実施形態では、図4および図12に示されるように、鋼管部材SPの外周の表面に直接当接するように配置されている。しかし、抵抗挟持部31aは、鋼管部材SPの外周の表面との間に摩擦力が生じるように鋼管部材SPの外周の表面に当接すれば、図示された例に限定されることはなく、たとえば摩擦力を高めるゴム材料などの他の部材を介して間接的に当接するように配置されてもよい。また、抵抗挟持部31aは、第4実施形態では、図15に示されるように、接着剤34を介して鋼管部材SPの外周の表面に接着される。それにより、抵抗挟持部31aと鋼管部材SPの外周の表面との間に接着力が生じる。
【0051】
抵抗挟持部31aは、鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接することができればよく、その形状や大きさは特に限定されない。たとえば、第1~第3実施形態では、抵抗挟持部31aは、鋼管部材SPの外周の表面の形状および大きさに対応する形状および大きさに形成されている。より具体的には、抵抗挟持部31aは、図4および図12に示されるように、略円筒形状の鋼管部材SPの外周の形状に対応するように略半割円筒状に形成され、鋼管部材SPの外周の大きさに対応するように抵抗挟持部31aの内周径が鋼管部材SPの外周径と略同じか、鋼管部材SPの外周径よりわずかに大きくなるように形成されている。たとえば、第4実施形態では、抵抗挟持部31aは、図13~15に示されるように、略円筒形状の鋼管部材SPの外周の形状に対応するように略半割円筒状に形成され、抵抗挟持部31aと鋼管部材SPの外周の表面との間に接着剤34を充填できるように、抵抗挟持部31aの内周径が鋼管部材SPの外周径よりも大きくなるように形成されている。第4実施形態では、抵抗挟持部31aは、接着剤34を充填できるように鋼管部材SPの外周径よりも大きい内周径を有していればよく、特に限定されることはないが、接合部材2の接合挟持部21aと略同一の径を有し、長手方向LDに沿った断面において略同一直線状に並ぶように、形成され、配置されることが好ましい(図15参照)。これにより、接合部材2からせん断力抵抗部材3に力が伝達される際に、接合部材2およびせん断力抵抗部材3の変形が抑制されて、せん断力抵抗部材3による抵抗力を高めることができる。抵抗挟持部31aは、本実施形態では略半割円筒状に形成されているが、鋼管部材SPが円筒形状以外の筒形状に形成されている場合は、鋼管部材SPの外周の形状に対応した略半割筒状に形成されてもよい。また、抵抗挟持部31aは、鋼管部材SPの外周の周方向CDの一部を覆うことができれば、略半割筒状に限定されることはなく、1/3割筒状や2/3割筒状などの部分筒状に形成されてもよい。また、抵抗挟持部31aは、他方の抵抗挟持部31aとともに挟持方向SD2で鋼管部材SPを挟んだ際に、抵抗挟持部31a、31a同士の間に隙間が生じるような大きさに形成されてもよい。
【0052】
第1~第3実施形態において、抵抗フランジ部31bは、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する別の抵抗挟持部材31の抵抗フランジ部31bに対して固定されることで、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する抵抗挟持部材31、31同士を固定する部位である。抵抗フランジ部31bは、第1~第3実施形態では、図1、2、4、図7および図9、10、12に示されるように、長手方向LDおよび挟持方向SD2の両方に対して略垂直方向に沿って、抵抗挟持部31aの周方向CDの両方の端部から径方向外側に延びるようにプレート状に形成されている。なお、抵抗フランジ部31bは、抵抗挟持部31aの周方向CDの端部から径方向外側に延びるように形成されていれば、その延びる方向は、長手方向LDおよび挟持方向SD2の両方に対して略垂直方向に限定されることはなく、固定される別の抵抗挟持部材31の抵抗フランジ部31bの配置に応じて適宜修正が可能である。なお、第4実施形態の接合構造1の抵抗挟持部材31には、上述した抵抗フランジ部31bが設けられていないが、第1~第3実施形態の接合構造1と同様に、抵抗フランジ部31bが設けられてもよい。その場合、少なくとも2つ(第4実施形態では一対)の抵抗挟持部材31、31は、抵抗フランジ部31b、31b同士を介して互いに対して固定される。
【0053】
ここで、第1~第3実施形態において、せん断力抵抗部材3は、鋼管部材SPとの間の摩擦力ができるだけ大きくなるように鋼管部材SPに接合されることが好ましく、より具体的には、鋼管部材SPとの間の摩擦力が接合部材2と鋼管部材SPとの間の摩擦力(および場合により接着力)よりも大きくなるように鋼管部材SPに接合されることが好ましい。そうすることで、長手方向LDにおける接合部材2の鋼管部材SPに対する相対移動をより抑制することができる。せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力を大きくするという目的のために、第1~第3実施形態では、図5(a)に示されるように、少なくとも2つ(第1~第3実施形態では一対)の抵抗挟持部材31、31は、少なくとも2つの抵抗挟持部材31、31のそれぞれの抵抗挟持部31a、31aが鋼管部材SPの外周の表面に直接または間接的に当接するように配置されながらも、挟持用ボルト32によって互いに対して固定される前の状態で、鋼管部材SPの周方向CDで隣接する抵抗挟持部材31、31の互いに対向する抵抗フランジ部31b、31b同士の間に隙間Gが生じるように形成されている。そして、図5(b)に示されるように、少なくとも2つの抵抗挟持部材31、31は、長手方向LDに対して略垂直方向(第1~第3実施形態では挟持方向SD2)で鋼管部材SPを挟持して鋼管部材SPに圧縮力を加えるように、抵抗フランジ部31b、31b同士が対向する方向に延びる挟持用ボルト32によって互い対向する抵抗フランジ部31b、31b同士が固定されることで、鋼管部材SPに接合される。これにより、抵抗挟持部材31、31による鋼管部材SPの締め付け力が大きくなって、抵抗挟持部材31、31と鋼管部材SPとの間の摩擦力をより大きくすることができる。なお、第4実施形態の接合構造1の抵抗挟持部材31に抵抗フランジ部31bが設けられる場合にも、上記構成を適用することができる。
【0054】
また、本実施形態において、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力または接着力を大きくするという目的のために、せん断力抵抗部材3が接合される鋼管部材SPの接合箇所SP1(図6参照)の表面の表面粗さを大きくしてもよい。これにより、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力または接着力をより大きくすることができ、長手方向LDにおける接合部材2の相対移動をより抑制することができる。さらに、せん断力抵抗部材3が接合される鋼管部材SPの接合箇所SP1の表面の表面粗さを大きくすることによって、接合箇所SP1の表面の表面粗さが、接合部材2が接合される鋼管部材SPの接合箇所SP2(図6参照)の表面の表面粗さよりも大きくなってもよい。これにより、接合部材2と鋼管部材SPとの間の摩擦力が、せん断力抵抗部材3と鋼管部材SPとの間の摩擦力よりも小さくなるので、接合部材2およびせん断力抵抗部材3を鋼管部材SPに接合する際に、長手方向LDにおける鋼管部材SPに対する接合部材2の摺動が容易になるので、鋼管部材SPに対する接合部材2の位置合わせが容易となる。
【0055】
第1~第3実施形態において、せん断力抵抗部材3には、図1、2、4、図7および図9、10、12に示されるように、長手方向LDに対して略垂直に、鋼管部材SPとは反対側に延びるリブプレート31cが設けられてもよい。せん断力抵抗部材3は、長手方向LDに対して略垂直に延びるリブプレート31cが設けられることで、リブプレート31cが延びる方向への変形が抑制され、鋼管部材SPに対する接合強度を高めることができる。本実施形態では、リブプレート31cは、抵抗挟持部材31の一部として設けられ、抵抗挟持部31aおよび抵抗フランジ部31bの表面から、長手方向LDに対して略垂直に延びている。これにより、抵抗挟持部31aおよび抵抗フランジ部31bの、リブプレート31cが延びる方向への変形が抑制される。第1~第3実施形態では、上述したように、抵抗挟持部材31、31は、互いに対して固定される前に、抵抗フランジ部31b、31b同士の間に隙間Gが設けられるように形成されているので、挟持用ボルト32によって互いに固定される際に、長手方向LDに対して略垂直方向に曲げ応力が生じる。このような曲げ応力にリブプレート31cが抵抗することで、抵抗挟持部材31、31が互いに対して固定される際に抵抗挟持部材31、31の変形が抑制され、抵抗挟持部31a、31aと鋼管部材SPの外周の表面との間の摩擦力の低下が抑制される。第4実施形態では、図13~15に示されるように、せん断力抵抗部材3の抵抗挟持部材31に抵抗鍔部31dが設けられているが、この抵抗鍔部31dが、上述したリブプレート31cと同様の機能を有している。ただし、第4実施形態におけるせん断力抵抗部材3にも、第1~3実施形態の接合構造1のせん断力抵抗部材3と同様に、上述したリブプレート31cが設けられてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0057】
(1)既設構造物の鋼管部材に補強部材を接合するための接合構造であって、
前記鋼管部材の外周を覆うように前記鋼管部材に接合され、前記補強部材が接合される接合部材と、
前記鋼管部材の外周を覆うように前記鋼管部材に接合されるせん断力抵抗部材と
を備え、
前記せん断力抵抗部材が、前記鋼管部材の長手方向で前記接合部材に直接または間接的に当接するように配置される接合構造。
【0058】
(2)前記せん断力抵抗部材は、前記接合部材を挟んで前記長手方向の両側で前記鋼管部材に接合される、
(1)に記載の接合構造。
【0059】
(3)前記接合部材を挟んで前記長手方向の両側で前記鋼管部材に接合される一対のせん断力抵抗部材は、前記長手方向において互いに離間する方向への互いに対する相対移動が抑制されるように、前記長手方向に延びる連結用ボルトにより互いに連結される、
(2)に記載の接合構造。
【0060】
(4)前記せん断力抵抗部材は、前記鋼管部材の長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持し、互いに対して固定される少なくとも2つの抵抗挟持部材を備え、
前記抵抗挟持部材が、前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の抵抗挟持部と、前記抵抗挟持部の周方向の端部から径方向外側に延びる抵抗フランジ部とを備え、
前記少なくとも2つの抵抗挟持部材は、前記少なくとも2つの抵抗挟持部材のそれぞれの前記抵抗挟持部が前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接するように配置されながらも、互いに対して固定される前の状態で、前記鋼管部材の周方向で隣接する抵抗挟持部材の互いに対向する抵抗フランジ部同士の間に隙間が生じるように形成され、
前記少なくとも2つの抵抗挟持部材は、前記長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持して前記鋼管部材に圧縮力を加えるように、前記抵抗フランジ部同士が対向する方向に延びる挟持用ボルトによって互い対向する抵抗フランジ部同士が固定されることで、前記鋼管部材に接合される、
(1)~(3)のいずれか1つに記載の接合構造。
【0061】
(5)前記せん断力抵抗部材は、接着剤を介して前記鋼管部材に接合される、
(1)~(4)のいずれか1つに記載の接合構造。
【0062】
(6)前記接合部材が、前記鋼管部材の長手方向に対して略垂直方向で前記鋼管部材を挟持し、互いに対して固定される少なくとも2つの接合挟持部材を備え、
前記接合挟持部材は、前記鋼管部材の外周の表面に直接または間接的に当接する部分筒状の接合挟持部と、前記接合挟持部の周方向の端部から径方向外側に延びる接合フランジ部とを備え、
前記少なくとも2つの接合挟持部材は、前記鋼管部材の周方向で隣接する接合挟持部材の互いに対向する接合フランジ部同士が、前記接合フランジ部同士が対向する方向に延びる固定部材によって互いに対して固定されることで、前記鋼管部材に接合され、
前記少なくとも2つの接合挟持部材用の前記固定部材は、前記鋼管部材の周方向で隣接する接合挟持部材のそれぞれの接合フランジ部が、前記補強部材から受ける力によって互いの間の間隔が広がるのが抑制されるように、前記鋼管部材に径方向で隣接して配置される、
(1)~(5)のいずれか1つに記載の接合構造。
【0063】
(7)前記接合部材には、前記長手方向に対して略垂直に、前記鋼管部材とは反対側に延びるリブプレートが設けられる、
(1)~(6)のいずれか1つに記載の接合構造。
【0064】
(8)前記せん断力抵抗部材が接合される前記鋼管部材の接合箇所の表面の表面粗さが、前記接合部材が接合される前記鋼管部材の接合箇所の表面の表面粗さよりも大きい、
(1)~(7)のいずれか1つに記載の接合構造。
【符号の説明】
【0065】
1 接合構造
2 接合部材
21 接合挟持部材
21a 接合挟持部
21b 接合フランジ部
21c リブプレート
21d 接合鍔部
22 挟持用ボルト
23 挟持用座金
24 接続部材
25 充填材
3 せん断力抵抗部材
31 抵抗挟持部材
31a 抵抗挟持部
31b 抵抗フランジ部
31c リブプレート
31d 抵抗鍔部
32 挟持用ボルト
33 連結用ボルト
34 接着剤
35 接合プレート
BD 補強部材(ブレース)
CD 周方向
CM1、CM2 連結部材
G 隙間
H 注入孔
HS 補強部材(H形鋼)
LD 長手方向
SD1、SD2 挟持方向
SP 鋼管部材
SP1 せん断力抵抗部材が接合される鋼管部材の接合箇所
SP2 接合部材が接合される鋼管部材の接合箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15