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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062720
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】複合板材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20230427BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20230427BHJP
   B62D 31/02 20060101ALI20230427BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230427BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230427BHJP
   B32B 21/08 20060101ALI20230427BHJP
   E04F 15/02 20060101ALN20230427BHJP
【FI】
G10K11/168
E04B1/82 J
B62D31/02 Z
B32B27/30 101
B32B5/18
B32B21/08
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172770
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】521249438
【氏名又は名称】株式会社テンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】薄井 健介
【テーマコード(参考)】
2E001
2E220
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF02
2E001FA06
2E001FA11
2E220AA07
2E220AA12
2E220AA16
2E220AA45
2E220FA02
2E220GA03X
2E220GA24X
2E220GB34X
2E220GB38Z
2E220GB45X
4F100AK15A
4F100AP01B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100DJ01A
4F100GB08
4F100JA13A
4F100JK01
4F100YY00A
5D061AA02
5D061AA07
5D061AA26
5D061BB24
(57)【要約】
【課題】木材の絶対量を減少させると共に、耐水性、耐腐食性、リサイクル性、軽量化に優れ、且つ、所定の強度を有する複合板材を提供する。
【解決手段】複合板材1であって、所要長さ・幅・厚さを有する板状のPVC発泡樹脂材11と、複数枚のベニヤ単板を積層接着した所要長さ・幅・厚さを有する板状の合板12と、表面を被覆可能な表層シート材14と、から成り、PVC発泡樹脂材11と合板12とを接着してできた基礎板材13のPVC発泡樹脂材側若しくは合板側のいずれか一方の表面に、表層シート材14を被覆して成る手段を採る。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要長さ・幅・厚さを有する板状のPVC発泡樹脂材と、複数枚のベニヤ単板を積層接着した所要長さ・幅・厚さを有する板状の合板と、表面を被覆可能な表層シート材と、から成り、
PVC発泡樹脂材と合板とを接着してできた基礎板材のPVC発泡樹脂材側若しくは合板側のいずれか一方の表面に、表層シート材を被覆して成ることを特徴とする複合板材。
【請求項2】
前記PVC発泡樹脂材の発泡密度が、高密度であることを特徴とする請求項1に記載の複合板材。
【請求項3】
前記PVC発泡樹脂材の厚さが、全体厚さの10~50%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合板材。
【請求項4】
前記合板が、アピトンもしくはラワンにて成形されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合板材。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合板材から成るバス用床材。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡PVCを用いた複合板材に関し、詳しくは、合板とPVC発泡樹脂材と表面シートとから成る複合板材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的なウッドショックとコンテナ不足、そして諸外国での急激な建材需要増により、外国産木材価格の高騰が著しく上昇し、且つ、日本への輸入量減少が見られる。そのため、木材を主に使用する企業は、外国産に替えてコストが高くなる国産木材に切替えたり、木材の使用量を減少させて少しでもコストカットを図ったりと、様々な対応を採りつつある。
【0003】
また、大型車両、特に一般旅客自動車(以下、バスと言う。)の床面に敷設される床材は、車両軽量化等の観点から、木製合板が採用される例が多く、具体的には、バスのシャーシ上に木製合板を敷設し、その合板の表面に防水用フィルムを接着するなどの防水加工が施された態様が多く見られる。その場合、経年使用による損傷が生じた際に、防水フィルム上に滴下した雨水等が、防水フィルム等の損傷箇所や、敷設した合板と合板の隙間から浸入し、木製の合板を腐食させてしまう、といった問題があった。
【0004】
上記問題を解決すべく、特開2003-253859号公報(特許文献1)や特許第5428281号公報(特許文献2)に記載の技術提案がされている。具体的には、特許文献1において、有孔性PVCシートの表面に木材シートなどの表面素材を接着させた床材に関する技術提案がされている。また、特許文献2では、合板の表面と突き板の間に樹脂シートを貼着し、耐キャスター性や防湿性を付与した木質床材に関する技術提案がされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術提案では、多数の孔部を有する有孔性のPVCシートが使用されることで、PVCの強度が極端に落ちると共に、孔部成形加工に手間が掛かり、さらに、PVCシートの孔部付近に荷重がかかった場合、孔部周辺部分に陥没等が生じ、表面シートに凹凸が発生するおそれがある、という問題があった。
【0006】
また、特許文献2の技術提案では、貼着箇所に樹脂シートが使用されているものの、表面が突き板(ベニヤ)で構成されているため、防水面において不適格であって、浸水による腐食等の耐性に難があり、結局のところ上記した問題点の解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-253859号公報
【特許文献2】特許第5428281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、木材の絶対量を減少させると共に、耐水性、耐腐食性、リサイクル性、軽量化に優れ、且つ、所定の強度を有する複合板材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、所要長さ・幅・厚さを有する板状のPVC(ポリ塩化ビニル)発泡樹脂材と、複数枚のベニヤ単板を積層接着した所要長さ・幅・厚さを有する板状の合板と、表面を被覆可能な表層シート材から成り、PVC発泡樹脂材と合板とを接着してできた基礎板材のPVC発泡樹脂材側若しくは合板側のいずれか一方の表面に、表層シート材を被覆して成る手段を採る。
【0010】
また、本発明は、PVC発泡樹脂材の発泡密度が、高密度である手段を採る。
【0011】
さらに、本発明は、PVC発泡樹脂材の厚さが、全体厚さの15~50%である手段を採る。
【0012】
またさらに、本発明は、合板がアピトンもしくはラワンにて成形される手段を採る。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記した複合板材をバス用床材として用いる手段を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる複合板材によれば、所要厚さのPVC発泡樹脂材を使用することで、高強度、低重量、耐水性、耐火性、耐薬品性、遮音性、断熱性、耐電性、防虫効果に資し、かかるPVC発泡樹脂材と、複数枚のベニヤ単板を積層接着した合板と、表面を被覆可能な表層シート材と、を夫々積層状に重ね合わせて複合板材として構成することで、全体として木材使用量の減量化、耐水性、耐腐食性、リサイクル性の向上に資すると共に、所定強度を保持しつつ軽量化を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明にかかる複合板材によれば、PVC発泡樹脂材の発泡密度を高密度で構成することにより、木材使用量の減少化や軽量化を図りつつ、所定強度を保持することが可能である。
【0016】
さらに、本発明にかかる複合板材によれば、PVC発泡樹脂材の厚さを任意に変更することで、複合板材自体の強度及び重量について、使用する環境に合わせて適宜変更することが可能であり、例えば、断熱や遮音効果が求められる建物の内壁等では、それらの効果を高めるためにPVC発泡樹脂材の厚さを増す態様が考え得る。
【0017】
さらに、本発明にかかる複合板材によれば、合板の材料としてアピトン若しくはラワンを採用することで、合板及び複合板材への加工や細工等の作業が容易であり、設置作業者への負担が大幅に軽減されると共に、利用目的や使用場所に沿った複合板材の加工及び設置が可能になる、といった優れた効果を奏する。
【0018】
またさらに、本発明にかかる複合板材によれば、バスの床材として使用することにより、床材自体の耐水性・耐腐食性の向上や、床全面にPVC発泡樹脂材が利用されたことによる車両重量の軽量化に資することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかる複合板材の実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明にかかる複合板材の実施形態を示す側断面図である。
図3】本発明にかかる複合板材の使用態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかる複合板材1は、所要長さ・幅・厚さを有する板状のPVC発泡樹脂材11と、複数枚のベニヤ単板を積層接着した所要長さ・幅・厚さを有する板状の合板12と、表面を被覆可能な所要長さ・幅・厚さを有する表層シート材14から成り、PVC発泡樹脂材11と合板12とを接着してできた基礎板材13のPVC発泡樹脂材側若しくは合板側のいずれか一方の表面に、表層シート材14を被覆して成ることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる複合板材1の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
尚、本発明にかかる複合板材1は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができる。
【0022】
図1は、本発明にかかる複合板材の実施形態を示す斜視図である。図2は、本発明にかかる複合板材の実施形態を示す側断面図である。
本発明にかかる複合板材1は、PVC発泡樹脂材11と、合板12と、表層シート材14と、で構成されている。
【0023】
PVC発泡樹脂材11は、所定の長さ・幅・厚さを有する板状の発泡樹脂材であって、その素材はPVC樹脂(ポリ塩化ビニル)である。発泡樹脂の本来的特性として、断熱効果や防音効果を発揮し得る。PVC発泡樹脂材11の形状は、所要長さ・幅・厚さを有する板状(平板状)であって、その長さや幅については、最終的な成形品としての複合板材1の大きさによって決定される。また、PVC発泡樹脂材11の厚さについては、複合板材1の強度や使用目的等に合わせて適宜決定されるもので、特に限定するものではない。このとき、複合板材1全体の厚さが同一の場合で比較すると、PVC発泡樹脂材11の厚みを増せば、木材使用量の減量化や軽量化に資するものの強度が低くなり、逆に厚みを減らすことで、重量が増加するものの高強度を得られることとなる。例えば、バスの床材として使用する態様であれば、複合板材1全体の厚さを15mmと仮定した場合、強度と軽量化に鑑みると、PVC発泡樹脂材11の厚さは3~6mm程度とする態様が考え得る。
【0024】
かかるPVC発泡樹脂材11の厚みについては、複合板材1全体の厚さに対し10~50%の範囲で構成される態様が好適である。すなわち、PVC発泡樹脂材11の厚みが全体の10%に満たない場合、木材使用量の減量化に貢献し得ず、合板12の使用量が増して複合板材1の軽量化も図れないこととなる。また、PVC発泡樹脂材11の厚みが全体の50%より大きい場合には、複合板材1としての強度難が生じるおそれが想定される。但し、PVC発泡樹脂材11自体の強度は、厚さだけでなく発泡密度によっても可変されるものであるため、かかる発泡密度によっては、必ずしも全体の10~50%の範囲に限定されるものではない。
【0025】
PVC発泡樹脂材11の素材であるPVC樹脂は、耐候性・耐薬品性・耐酸性・耐アルカリ性・耐水性・電気絶縁性を備え、人体に無害であり、塩素原子を持つためそれ自体で難燃性に優れており、別途難燃剤を加える必要のない素材である。例えば、着火温度は455℃と高く、簡単には着火しないため、火災の危険性が少ない素材である。
本発明では、PVC樹脂を発泡させたものを使用する。これにより、未発泡のPVC樹脂に比べ軽量化が図れ、且つ、安価に提供可能であり、しかもリサイクル性にも優れることとなる。
【0026】
PVC発泡樹脂材11の発泡密度については、強度や軽量化の度合い等により適宜決定されるもので、特に限定するものではないが、高密度であることが好適である。発泡樹脂材における高密度とは、0.5~1g/cmの範囲内の発泡密度と定義することができる。かかる高密度の範囲の中でも、本発明では、特に0.72g/cm程度の発泡密度から成るPVC発泡樹脂材11を使用する態様が望ましく、強度や軽量化の度合いからして当該発泡密度が好適である。但し、使用目的によって必要な強度や軽量化の度合い等は異なるため、各使用目的に応じて発泡密度は適宜決定し得るものであり、必ずしも高密度に限定されるものではない。
【0027】
合板12は、複数枚のベニヤ単板を積層した所要長さ・幅・厚さを有する板材であり、具体的には、複数枚のベニヤ単板を接着剤を介して積層し、プレス圧縮することで成形されたものである。合板12の形状は、所要長さ・幅・厚さを有する板状(平板状)であって、その長さや幅については、最終的な成形品としての複合板材1の大きさによって決定される。また、合板12の厚さについては、複合板材1の強度や軽量化の度合い、使用目的等に合わせて適宜決定されるもので、特に限定するものではない。このとき、複合板材1全体の厚さが同一の場合で比較すると、合板12の厚みを減らせば、木材使用量の減量化や軽量化に資するものの強度が低くなり、逆に厚みを増やすことで、重量が増加するものの高強度を得られることとなる。例えば、バスの床材として使用する態様であれば、複合板材1全体の厚さを15mmと仮定した場合、強度と軽量化に鑑みると、合板12の厚さは9~12mm程度とする態様が考え得る。
【0028】
合板12を構成するベニヤ単板に使用される木材の材質については、南洋材であり耐久性、耐水性を有するアピトンや、同じく南洋材であり強度と加工性に優れるラワンを使用する態様が好適である。但し、使用目的によって必要な強度や耐久性、加工性等は異なるため、各使用目的に応じてベニヤ単板の材質は適宜決定し得るものであり、必ずしもアピトンやラワンに限定されるものではない。
【0029】
合板12を製造する際、耐水性の接着剤を使用することで、合板12自体の耐水性を高める態様も好適であり、また、合板12の表面にニスがけや耐水塗料を塗ることによっても、耐水性の向上を図ることが可能である。このように、合板12の耐水性能を向上させることによって、バスの床材等として使用した際に雨水などの水分が浸入した場合でも、合板12を腐食から守り、経年使用における耐久性の向上が図られることとなる。
【0030】
表層シート材14は、表面を被覆可能な所要長さ・幅・厚さを有する化粧材であり、PVC発泡樹脂材11若しくは合板12の表面を被覆するように装備される。該表層シート材14は、PVC発泡樹脂材11及び合板12から成る基礎板材13の表面を被覆して、外敵(水分や摩耗等)から保護したり、滑り止め機能を発揮させたり、美観を創出するなどの目的で装備されるものである。したがって、表層シート材14の素材については、これら目的を達成し得るものであれば特に限定するものではなく、従来公知の素材を使用すれば足りる。
尚、表層シート材14は、基本的構造として、シート状であって基礎板材13の表面に接着剤等で貼着される態様が考え得るが、必ずしも当該構造であることを要するものではなく、他の構造態様、例えば塗装材により表層シート材14の代替をさせる態様が考え得る。すなわち、目的に合わせてそれを達成し得る塗装材を基礎板材13の表面に塗布することで、かかる塗装された部分を表層シート材14とする態様である。
【0031】
表層シート材14がシート状構造である場合に、該シート状構造の表面に種々加工を施す態様も考え得る。種々加工とは、使用目的に沿った任意の加工であって、例えば表面に凹凸加工やエンボス加工を施すことで、滑り止め機能を発揮させる態様も好適である。また、各種色彩・模様を施し、化粧材として美観を創出することも可能となる。
【0032】
以上の各構成要素により、本発明にかかる複合板材1は構成されている。具体的には、PVC発泡樹脂材11と合板12とを接着することでできた基礎板材13の表面に、表層シート材14を被覆することで、本発明にかかる複合板材1は構成される。このとき、表層シート材14は、基礎板材13におけるPVC発泡樹脂材側若しくは合板側のいずれか一方の表面に被覆されることとなる。図1(a)及び図2(a)は、基礎板材13におけるPVC発泡樹脂材側を表層シート材14で被覆した場合、図1(b)及び図2(b)は、基礎板材13における合板側を表層シート材14で被覆した場合について示している。表層シート材14で被覆された側が複合板材1における表側(表出される面)となるもので、いずれの側の面を表層シート材14で被覆するかは、完成した複合板材1の使用目的・使用箇所等に応じて適宜決定される。
【0033】
PVC発泡樹脂材11や合板12、表層シート材14を接着する際に使用する接着剤については、特に限定するものではないが、例えば防水性の観点から、メラミン系やフェノール系の接着剤を使用する態様が好適である。
メラミン系接着剤は、耐水性の高い接着剤であり、接着した合板12に高い耐水性を付与することとなって、完成した複合板材1全体として高グレードのタイプ1合板に分類されることとなり、複合板材1としての利用幅が格段に拡がる。
また、フェノール系接着剤は、耐水性の一番高い接着剤であり、接着した構成要素の水分による剥がれが確実に防止されることとなるため、完成した複合板材1全体として最高グレードの特類に分類されることとなり、屋外等の使用にも十分に耐え得る複合板材1が生成可能となる。
【0034】
以上のとおり構成される本発明にかかる複合板材1は、PVC発泡樹脂材11を使用することで、高強度、低重量、耐水性、耐火性、耐薬品性、遮音性、断熱性、耐電性、防虫効果に資し、かかるPVC発泡樹脂材11と、複数枚のベニヤ単板を積層接着した合板12と、表面を被覆可能な表層シート材14と、を夫々積層状に重ね合わせて複合板材1として構成することで、全体として木材使用量の減量化、耐水性、耐腐食性、リサイクル性の向上に資すると共に、所定強度を保持しつつ軽量化を実現し得る複合板材1を提供するものである。
【0035】
下記表1は、本発明にかかる複合板材1の性能(曲げ強度)を表にまとめたものであり、また、下記表2は、表1をグラフ化したものである。尚、性能試験のサンプルとして、PVC発泡樹脂材11の厚さが3mm、合板12の厚さが12mm、全体厚さが15mmの複合板材1を使用し、また、合板12の素材については、アピトンとラワンの両方について試験を行った。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
上記各表から明らかなように、日本農林規格の基準値に比し、本発明にかかる複合板材1は、性能(曲げ強度)において全く遜色ないか、あるいは、基準値以上の性能を発揮していることは一目瞭然である。すなわち、本発明にかかる複合板材1によれば、PVC発泡樹脂材11を使用することによる軽量化と、強度維持の両立が実現されることとなる。
【0039】
本発明にかかる複合板材1は、用途を問わず、あらゆる場面で活用し得るものであるが、主な用途として、バス20の床材としての使用態様が考え得る。すなわち、バス20という乗り物は、大型であって重量も嵩み、燃費等の面でどうしても不利な乗り物である。そこで、軽量化を実現して燃費向上を図ることが目下の実現目標となるが、各パーツを軽量化すると、その反面として強度不足の問題が生じてしまうこととなる。そこで、如何に軽量化の実現と強度維持の両立を図るかが、バス20における最大の課題といえるが、本発明にかかる複合板材1は、既述のとおり所定強度を保持しつつ軽量化を実現し得るものであって、その課題を解決し得るものである。
【0040】
本発明にかかる複合板材1について、バス20の床材として採用する際の使用態様例について、以下に具体的に例示する。図3は、本発明にかかる複合板材1の使用態様を示す説明図である。
使用する複合板材1の大きさ等について、特に限定はないが、例えばPVC発泡樹脂材11の厚さが6mm、合板12の厚さが9mm、全体の厚さが15mmの複合板材1を使用する。
【0041】
まず、バス20の運転席から利用者の出入口を含めた最前部21には、利用者の乗降による身体負荷、及び、床材への負荷を軽減させるため、PVC発泡樹脂材側が表層シート材14で被覆された複合板材1をシャーシ上に配置する。表層シート材14には、滑り止め加工が施されていると好適である。
また、バス20の出入口部は、特に雨水が入り込みやすい箇所であるため、表層シート材14を凹凸状に加工するなど、表面に溜まった雨水を外部に排出しやすい構造とする態様が好ましい。
【0042】
次に、料金箱近傍であるバス20の前面部22には、乗車料金の支払い及び通路としての利用が主になるため、合板側が表層シート材14で被覆された複合板材1をシャーシ上に配置する。表層シート材14には、やはり滑り止め加工が施されていると好適である。
このとき、最前部21や後述の中後部23と、前面部22において使用される複合板材1の表面側素材が異なることとなるため、前面部22における表層シート材14の色合いを変更したり、前面部22と中後部23との境界線に目立つ色のテープを貼着したりする等、中後部23の待合部分と前面部22の通路部分の境界が利用者にも認識できるようにする態様が考え得る。
【0043】
最後に、料金箱から最後部座席を含めた中後部23には、後部への通路及び立位状態での乗車が主になるため、PVC発泡樹脂材側が表層シート材14で被覆された複合板材1をシャーシ上に配置する。表層シート材14には、やはり滑り止め加工が施されていると好適である。
中後部23では、雨天時に利用者が持ち込んだ傘等から滴下する雨水が滞留してしまう態様が考え得るため、かかる滞留水を排水する態様、例えば長手方向に延伸する仮想中央線を頂点に、左右両側方へ下り傾斜を形成し、貯留した雨水を左右両側方から排水するなど、適当な雨水対策を備えることが望ましい。
【0044】
以上のとおり、本発明にかかる複合板材1は、所定強度を保持しつつ軽量化を実現し、しかも耐水性にも優れていることから、バス20の床材としての利用価値が高い。その際、バス20の利用者の使用態様などを参考に、場所によってPVC発泡樹脂材側が表層シート材14で被覆されたものか、合板側が表層シート材14で被覆されたものかの配置選択が自由に行え、任意に複合板材1の配列を変更し、床材にかかる負担を軽減して、利便性や各種耐性を高めることが可能となる。そして、複合板材1を使用したことによる床材の軽量化により、バス20全体の軽量化も図られ、燃費向上の実現も期待できる。
【0045】
以上、本発明にかかる複合板材1の基本構成、作用並びに使用態様について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、合板12や表層シート14に防火処理を施し、耐火性能を向上させることで、そもそもPVC樹脂が有する優れた難燃性と併せて、複合板材1を不燃材として利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかる複合板材は、既述したバスの床材としての使用態様のほか、遮音性・断熱性を活かした仮設住宅用の建材としての利用や、冷凍保管倉庫の断熱内壁としての利用、さらには、耐電性を活かして発電所や変電所内の施設内壁等への利用といった、様々な建材としての利用も可能であって、しかも、再利用が容易であることから、省エネルギー・ゴミ削減・再収益化といった種々作用効果が期待できる。したがって、本発明にかかる「複合板材」の産業上の利用可能性は、極めて大きいものと思料する。
【符号の説明】
【0047】
1 複合板材
11 PVC発泡樹脂材
12 合板
13 基礎板材
14 表層シート材
20 バス
21 最前部
22 前面部
23 中後部

図1
図2
図3