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  • 特開-差圧式呼吸流量計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062734
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】差圧式呼吸流量計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/087 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A61B5/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172796
(22)【出願日】2021-10-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年4月16日、1次ディーラーのバイオリサーチセンター株式会社を通して、東北保健医療専門学校に、差圧式呼吸流量計が組み込まれた呼気ガス分析装置を販売、2021年7月15日、名古屋学院大学に、差圧式呼吸流量計が組み込まれた呼気ガス分析装置を販売
(71)【出願人】
【識別番号】000101558
【氏名又は名称】アニマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】小山 祐治
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS04
4C038ST05
4C038SU02
4C038SU18
4C038SU19
(57)【要約】
【課題】
差圧の検出に空気チューブを用いることが無い差圧式呼吸流量計を提供する。
【解決手段】
マスク1と連通し、呼吸に伴う気流に差圧を生成させる流路部品3と、前記差圧を検出する差圧センサ6と、検出された差圧に基づいて呼吸量を算出する演算部と、からなる差圧式呼吸流量計であって、流路部品3は、複数の流路40が形成された本体4と、本体4と一体形成されたセンサ収容部5と、を備え、複数の流路40のうち、センサ収納部5に近い流路40´の第1側と第2側がセンサ収容部5とそれぞれ連通してバイパスを形成しており、センサ収容部5には差圧センサ6が収納されている。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクと連通し、呼吸に伴う気流に差圧を生成させる流路部品と、
前記差圧を検出する差圧センサと、
検出された差圧に基づいて呼吸量を算出する演算部と、
からなる差圧式呼吸流量計であって、
前記流路部品は、
複数の流路が形成された本体と、
前記本体と一体形成されたセンサ収容部と、
を備え、
前記複数の流路のうち、センサ収納部に近い流路の第1側と第2側が前記センサ収容部とそれぞれ連通してバイパスを形成しており、
前記センサ収容部には差圧センサが収納されている、
差圧式呼吸流量計。
【請求項2】
前記差圧センサは、前記流路部品との関係において、非線形の差圧-流量特性を有しており、
前記演算部は、前記差圧-流量特性を近似する補正式を用いて、流量を算出するものであり、
前記補正式は、差圧-流量の両対数グラフにおいて、所定の差圧値を挟む2つの直線近似式からなる、
請求項1に記載の差圧式呼吸流量計。
【請求項3】
前記マスクと前記流路部品との間には、フィルタが設けてあり、呼気は前記フィルタを通って前記センサ収容部に導入される、
請求項1、2いずれか1項に記載の差圧式呼吸流量計。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の差圧式呼吸流量計を備えた呼気ガス分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧式呼吸流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
呼気ガス分析装置において人の体内に吸い込むべき吸気量及び、体内から吐き出される呼気量のそれぞれに対して、空気容量を計測する必要がある。呼気流量計で用いられる主な方式としては、超音波式、熱線式、差圧式が知られている。
【0003】
差圧式呼吸流量計は、ニューモタコメータとも称され、抵抗体の前後で測定された空気流の差圧に基づいて流量を取得するものであり、例えば、特許文献1~3に開示されている。差圧式呼吸流量計には、抵抗体の種類に応じて、主として、管束を用いたフライッシュ型流量計、金網を用いたリリー型流量計、オリフィス型流量計が知られている。例えば、特許文献1、2に開示された障壁は金網に類する抵抗体を用いており、特許文献3には、ベンチュリを用いたオリフィス型流量計が開示されている。差圧式呼吸流量計では、抵抗体の種類に応じて、適切な差圧-流量変換式を用いて流量が計測される。
【0004】
特許文献1~3に開示された差圧式呼吸流量計では、抵抗体の前後の空気流は、それぞれ、空気チューブを介して差圧検知センサと連通している。本発明者は、抵抗体の構成に特徴を持たせることで、空気チューブを使用することなく、差圧検出部に直接センサを配置することを検討した。また、差圧-流量特性は、抵抗体の構成に影響され得るものである点にも留意する必要がある。
【特許文献1】特開平7-8472
【特許文献2】特開2021-35441
【特許文献3】US2019/0110714A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、差圧の検出に空気チューブを用いることが無い差圧式呼吸流量計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が採用した技術手段は、
マスクと連通し、呼吸に伴う気流に差圧を生成させる流路部品と、
前記差圧を検出する差圧センサと、
検出された差圧に基づいて呼吸量を算出する演算部と、
からなる差圧式呼吸流量計であって、
前記流路部品は、
複数の流路が形成された本体と、
前記本体と一体形成されたセンサ収容部と、
を備え、
前記複数の流路のうち、センサ収納部に近い流路の第1側と第2側が前記センサ収容部とそれぞれ連通してバイパスを形成しており、
前記センサ収容部には差圧センサが収納されている、
差圧式呼吸流量計、である。
【0007】
1つの態様では、前記差圧センサは、前記流路部品との関係において、非線形の差圧-流量特性を有しており、
前記演算部は、前記差圧-流量特性を近似する補正式を用いて、流量を算出するものであり、
前記補正式は、差圧-流量の両対数グラフにおいて、所定の差圧値を挟む2つの直線近似式からなる。
【0008】
1つの態様では、前記マスクと前記流路部品との間には、フィルタが設けてあり、呼気は前記フィルタを通って前記センサ収容部に導入される。
【0009】
本発明は、上記差圧式呼吸流量計を備えた呼気ガス分析装置として提供され得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、差圧の検出に空気チューブを用いることが無い差圧式呼吸流量計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る呼吸流量計(演算部を除く)の全体図である。
図2】本実施形態に係る流路部品の組立斜視図である。
図3】本実施形態に係る流路部品の分解斜視図である。
図4】本実施形態に係る流路部品の正面図である。
図5】本実施形態に係る流路部品における気流を示す図である。
図6】本実施形態に係る呼吸流量計のブロック図である。
図7】本実施形態に係る呼吸流量計を用いた呼気ガス分析装置のブロック図である。
図8】サンプルデータに基づく差圧-流量特性カーブを示すグラフである。
図9図8のグラフに基づいた両対数変換グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図5に示すように、本実施形態に係る差圧式呼吸流量計は、マスク1と連通する筒状部2に設けられ、呼吸に伴う気流に差圧を生成させる流路部品3を備えている。流路部品3は、マスク側の第1面と、マスクから遠い側の第2面を備えた本体4と、本体4の第1面と第2面の間を貫通する複数の流路40と、本体4と一体形成されたセンサ収容部5と、を備え、複数の流路40のうち、センサ収容部5に近い流路40´の第1側と第2側がセンサ収容部5とそれぞれ連通してバイパスを形成しており、センサ収容部5には、A/D変換器を備えた差圧センサ(センサとAD変換器が一体化されたセンサモジュール)6が収納されている。センサ収容部5に差圧センサ6が収容された状態で蓋体7を被せることで箱状のセンサ収容体8が形成される。
【0013】
本実施形態では、流路部品3に一体形成されたセンサ収容部5に差圧センサ6を設けることによって、空気チューブを用いることなく、流路部品3にダイレクトにセンサを配置して差圧検出を行う。従来の差圧式呼吸流量計では、差圧発生部と差圧検出部が空気チューブを介して離れているのに対して、本実施形態に係る差圧式呼吸流量計では、流量部品3が差圧発生部と差圧検出部を提供している。こうすることで、空気チューブ長による圧損を考慮することなくダイナミックレンジの高い状態で圧力検出が可能となる。
【0014】
本実施形態に係る流路部品3の本体4は樹脂削り成形による堅牢な管束構造となっており、構造劣化による性能への影響もない。例えば、従来のメッシュからなる抵抗体を用いて差圧検出を行うタイプのものでは、不用意にメッシュに触ってしまった場合等には、抵抗体の特性が変化したり劣化してしまうおそれがある。なお、流路部品3は、金型等を用いて一体成型したものでもよい。
【0015】
図3に示すように、筒状部2の周壁を部分的に切り欠いて、流路部品3の本体4の挿入部が形成されており、流路部品3は、所定厚のブロック状の本体4が筒状部2の断面を塞ぐように挿入され、センサ収容部5が筒状部2の外部に位置するようにして、筒状部2に装着される。また、筒状部2の周壁には空気チューブ(図示せず)の一端が接続されており、空気チューブの他端は、呼気ガス分析装置に接続されており、呼気ガスを呼気ガス分析装置(酸素センサ、CO2センサ2)に供給するようになっている。
【0016】
図1に示す態様では、筒状部2には、マスク1と流路部品3の間に位置してフィルタ9が設けてある。フィルタ9は、被験者から排出される唾液等の汚染微小滴を除去するために用いられる。呼吸動作を行うと運動動態によって呼気に意図せず唾液が混ざる場合がある。本実施形態に係る差圧式呼吸流量計では、従来の差圧式呼吸流量計で用いられている空気チューブを用いないため、マスク1と差圧検出部との距離が比較的近い。したがって、差圧検出部に直接唾液が付着するおそれがあること、また、付着物によりセンサの性能に影響を与えるおそれがあることから差圧検出部に直接呼気が当たらないようにフィルタを接続して使用するような構造とした。なお、フィルタ7は任意要素である。
【0017】
差圧センサ6は、検出された差圧に基づいて呼吸量を算出する演算部と電気的に接続されている。差圧センサ6は、流路部品3との関係において、非線形の差圧-流量特性を有している。演算部は、前記差圧-流量特性を近似する補正式を用いて、流量を算出するものであり、前記補正式は、差圧-流量の両対数グラフにおいて、所定の差圧値を挟む2つの直線近似式からなる。
【0018】
差圧特性カーブに基づく二段階で近似化した変換式の算出手法について、以下に説明する。先ず、図8は、サンプルデータ(差圧と流量の多数の対応データ)をプロットしてグラフ化したものであり、横軸は、差圧(Differential Pressure: DP)[pa]であり、縦軸は、流量[standard liter per minute: slm]である。図8において、差圧-流量特性は、非線形特性(曲線)であることが観察される。
【0019】
本発明者がこの非線形特性の補正について鋭意検討したところ、図8のグラフを、図9のように両対数グラフに変換したところ、所定の圧力値xthを境に2つの直線近似が可能であることが観察された。両対数グラフに基づき、差圧(DP)のある点xthを閾値として、二段階近似により以下の変換式を得る。
変換式におけるα1、β1、α2、β2の値は、サンプルデータの具体的な数値に応じて、差圧(DP)の所定の値xthを閾値として決定し、閾値を挟んで、2つの一次回帰式を算出することで得ることができる。
【0020】
図6に示すように、呼吸流量計測計の差圧センサ6で計測された差圧はデジタルデータとして、演算部に送信される。演算部では、先ず、差圧と予め設定された所定値xthとを比較し、DP≦xthの場合には、第1差圧-流量変換式が選択されて、差圧が流量に変換され、DP>xthの場合には、第2差圧-流量変換式が選択されて、差圧が流量に変換される。
【0021】
得られた流量に基づいて、換気量、例えば、1回換気量(VT)や分時換気量(VE)が計算される。換気量を算出する際に、適宜補正が行われ得ることが当業者に理解される。例えば、1回換気量を算出するにあたり、呼吸回数(RR)に応じて補正を行ってもよい。
【0022】
図7は、本実施形態に係る呼吸流量計を用いた呼気ガス分析装置を示す。呼気ガス分析装置は、呼気ガス分析装置本体と、校正器と、解析装置(コンピュータ)と、からなり、本体は、酸素センサ、COセンサ2、演算部(CPU)を備えており、演算部は、呼吸流量計測計の演算部を兼用している。校正器は、COセンサ1、演算部(CPU)を備えている。呼吸流量計測計の差圧センサ(フローセンサ)で計測された差圧はデジタルデータとして、呼気ガス分析装置の演算部に送信される。呼気ガスは、呼吸流量計から空気チューブを介して呼気ガス分析装置本体に導入される。図7に示す呼気分析装置の詳細な構成や校正方法等については、特開2020-192191を参照することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 マスク
2 筒状部
3 流路部品
4 本体
40 流路
40´ 流路(バイパス)
5 センサ収容部
6 差圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9