(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062736
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】半導体デバイス検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/28 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
G01R31/28 H
G01R31/28 M
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172798
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】521296144
【氏名又は名称】アズールテスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 裕之
【テーマコード(参考)】
2G132
【Fターム(参考)】
2G132AA17
2G132AE08
2G132AE14
2G132AE27
2G132AL00
2G132AL11
2G132AL24
(57)【要約】
【課題】 本発明によれば、光絶縁方式を用いることなく、接地電位が異なる状態が発生する可能性のある回路間のガルバニック絶縁を可能とする半導体デバイス検査装置を提供する。
【解決手段】 半導体デバイス検査装置10は、本体部11と、外部装置30とのインターフェイス部12と、本体部11とインターフェイス部12をガルバニック絶縁可能な非光絶縁方式のデジタルアイソレータ13と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
外部装置とのインターフェイス部と、
前記本体部と前記インターフェイス部をガルバニック絶縁可能な非光絶縁方式のデジタルアイソレータと、を有する、
ことを特徴とする半導体デバイス検査装置。
【請求項2】
前記デジタルアイソレータの一次側に前記本体部および該本体部の電源を接続し、
前記デジタルアイソレータの二次側に前記インターフェイス部を接続するとともに前記一次側に対して電気的に絶縁状態とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項3】
前記デジタルアイソレータは、磁気結合型または容量結合型の絶縁回路を含む、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項4】
前記絶縁回路とコネクタの間にシフトレジスタを備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項5】
前記シフトレジスタは入力される信号数を増加する素子である、
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項6】
前記インターフェイス部はコンパレータにより構成される伝送回路を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項7】
前記コンパレータは、入力される信号数を増加する素子である、
ことを特徴とする請求項6に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項8】
前記インターフェイス部に供給する電源を切り替える切替手段を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項9】
前記外部装置はハンドラである、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の半導体デバイス検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部装置と接続して使用される半導体デバイスの検査(試験)装置においては、両装置においてそれぞれ生成される信号を正常に送受信するため、信号伝送ラインを電気的に分離、すなわち絶縁(ガルバニック絶縁)する対策が施されている。
【0003】
具体的に例えば、検査(試験)装置のパラレルインターフェイスの信号伝送ラインには、内部で電気信号を光に変換し再び電気信号へ戻すことによって、電気的に絶縁しながら信号を伝達するフォトカプラを用いた光絶縁方式による絶縁手段(絶縁伝送回路)が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1ではハンドラ側において絶縁伝送回路を設けるものであるが、半導体デバイスの検査(試験)装置110側においてガルバニック絶縁対策を施す場合もある。
【0005】
図5は、検査(試験)装置110側に光絶縁方式による絶縁手段を設ける場合の一例を示す図であり、主要部のブロック図である。
【0006】
同図の例では検査装置(テスタ)500と外部装置(例えば、ハンドラ)600とが、それぞれのインターフェイス部502,602およびコネクタ503、603を介して接続されている。テスタ500と外部装置600はそれぞれに電源505,605を有しているが、テスタ500のインターフェイス部502は、外部装置600の電源605の供給を受けている。
【0007】
テスタ500は、BinN(N=1,2、3・・)信号およびEND信号信号を生成し、ハンドラ600に送信する。またハンドラ600はSTART信号を生成し、テスタ500に送信する。このように互いの装置で生成される信号の送受信を正常に行うためには、基準となる電位(GND電位)を一致させる必要がある。この例では、テスタ500のインターフェイス部502おいて外部装置600のGNDライン(HandlerGNDライン)を接続することで外部装置600とGNDを合わせ、信号の送受信を可能としている。
【0008】
一方で、テスタ500内においては、伝送回路などにおいて絶縁対策を施す必要がある。この例では、テスタ500のインターフェイス部502は、フォトカプラ504を複数並列接続した伝送回路510を有している。フォトカプラ504は、光を介在させることにより送信側と受信側を電気的に絶縁(ガルバニック絶縁)する。つまりこの場合、テスタ500の本体部111は、フォトカプラ504によって個々の信号伝送ライン(HandlerVccライン、Bin1ライン、END信号ライン、START信号ライン、HandlerGNDライン等)毎に、インターフェイス部502および外部装置600から電気的に絶縁されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、フォトカプラ504による信号伝送ラインの絶縁(絶縁伝送回路の採用)においては、以下のような種々の問題がある。
【0011】
まず、
図5に示すように信号伝送ライン毎に1個のフォトカプラ504が必要となるため、伝送回路510、およびインターフェイス部502の省スペース化に限界があり、近年の装置小型化のニーズに対応できない。
【0012】
また、接続する外部装置(ハンドラに限らない)によって信号伝送ライン数(コネクタ503のピン数)が増加する場合には、テスタ500のフォトカプラ504の素子数を増加させる必要がある。素子数の増加は、伝送回路510のサイズの増大に加え、フォトカプラ504の並列接続によって合成抵抗が小さくなり絶縁特性(耐圧)が劣化するという問題がある。また、低データレート、デューティー比劣化といった問題により、高速化にも限界がある。
【0013】
更に、テスタ500と外部装置600の誤接続や仕様により、両者のGNDが接続されてしまう状態が完全には避けられない場合もある。
【0014】
テスタ500と外部装置600のそれぞれの電源505,605は、同じ仕様であるとは限らず(異なる仕様であり)、また、テスタ500と外部装置600の伝送回路510(インターフェイス部502)、インターフェイス部602は、仕様によって、自身の装置における電源505、605の供給を受けられるとも限らない。
【0015】
つまり例えば、テスタ500のインターフェイス部502が外部装置600の電源605の供給を受ける、あるいは外部装置600のインターフェイス部602がテスタ500の電源505の供給を受ける、という仕様で動作させる場合も多い。
【0016】
また、テスタ500のコネクタ503(およびこれに接続するケーブル)は、任意の外部装置600の仕様に応じて個別に作製されるため、誤配線が生じる可能性も完全には避けられない。
【0017】
図6は、両装置のGNDが接続される他の状態を示す概要図である。この状態は、例えば、外部装置600のインターフェイス部602が、テスタ500の電源505の供給を受ける接続状態であり、仕様により意図的に両者のGNDが接続される、あるいは、誤配線により意図せず両者のGNDが接続されてしまう場合に生じ得る、完全には不可避の状態である。
【0018】
この場合、テスタ500のインターフェイス部502は、伝送回路510により絶縁されているが、テスタ500の電源505の供給を受けている。そして外部装置600にテスタ500の電源ライン(TesterVccライン)とテスタ500のGNDライン(TesterGNDライン)が接続している。つまり、テスタ500のGNDライン(TesterGNDライン)が外部装置600のGNDライン(HandlerGNDライン)と接続し、テスタ500の主要な機能を行う本体部511とインターフェイス部502との2点間でGNDが異なる状態になっている。
【0019】
このような接続では、テスタ500の本体部511と伝送回路インターフェイス部502においてGNDループが生じることとなり、このGNDループに電流が流れると回路や機器が故障・破損する場合がある。またこれに加えて、GNDループの存在がノイズの発生や増幅の要因となる。
【0020】
つまり、このような構成においては、伝送回路510におけるフォトカプラ504による絶縁は意味をなさないものとなる。
【0021】
本発明は、斯かる実情に鑑み、光絶縁方式を用いることなく、接地電位が異なる状態となる可能性のある回路間のガルバニック絶縁を可能とする半導体デバイス検査装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、本体部と、外部装置とのインターフェイス部と、前記本体部と前記インターフェイス部をガルバニック絶縁可能な非光絶縁方式のデジタルアイソレータと、を有する、ことを特徴とする半導体デバイス検査装置にかかるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光絶縁方式を用いることなく、接地電位が異なる状態となる可能性のある回路間のガルバニック絶縁を可能とする半導体デバイス検査装置を提供できる、という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体デバイス検査装置および外部装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る半導体デバイス検査装置と外部装置の動作を示すシーケンシャル図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る半導体デバイス検査装置の一部を抜き出して概要を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る半導体デバイス検査装置の一部を抜き出して概要を示すブロック図である。
【
図5】従来の半導体デバイス検査装置の一部を抜き出して概要を示すブロック図である。
【
図6】従来の半導体デバイス検査装置の一部を抜き出して概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1は本発明の実施形態の一例である半導体デバイス検査(試験)装置10の概要を示すブロック図であり、外部装置30と接続している状態の、特に本実施形態の主要部を示す図である。以下の図において同一符号を付した部分は同一構成を示し、従来既知の構成についてはその記載を省略する場合がある。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の半導体デバイス検査(試験)装置(以下、「テスタ」という。)10は、本体部11と、外部装置30とのインターフェイス部12と、デジタルアイソレータ13と、コネクタ14と、電源15などを有する。外部装置30は、特に限定されないが、ここでは半導体デバイスのハンドラ(搬送装置)である場合を例に説明する。外部装置30は、その主要な機能を実現する主回路31Mを含む本体部(外部本体部)31と、テスタ10と接続するコネクタ(外部コネクタ)34および伝送回路(外部伝送回路)33を少なくとも含むインターフェイス部(外部インターフェイス部)32と、電源(外部電源)35などを有する。
【0028】
テスタ10の本体部11は、テスタ10の主要な機能(半導体デバイスの検査・試験機能)を実現する構成(主回路11M)を少なくとも含む。
【0029】
インターフェイス部12は、ここでは本体部11と、外部装置30と接続するケーブル40とを接続する。インターフェイス部12は、外部装置30との間で送受信する信号をH/Lの2値としてコネクタ14および本体部11に伝送する伝送回路20を少なくとも含む。本体部11は電源15の供給を受けて動作し、インターフェイス部12は、電源15または外部電源35の供給を受けて動作する。
【0030】
デジタルアイソレータ13は、非光絶縁方式(磁気絶縁方式または容量絶縁方式)の絶縁手段であり、例えば、少なくとも磁気結合型または容量結合型の絶縁回路(アイソレーションIC17)を含む。本実施形態では一例として、デジタルアイソレータ13が磁気絶縁方式の絶縁手段である場合について説明する。すなわち、本実施形態のデジタルアイソレータ13は、例えば、絶縁トランス16Tを含むDC-DCコンバータ16(以下、「絶縁電源16」ともいう。)と、磁気結合型のアイソレーションIC17を有する。磁気結合型のアイソレーションIC17は、既知の構成であるので詳細な説明は省略するが、一次側(入力側)と二次側(出力側)が電磁結合されて、一次側(入力側)と二次側(出力側)に信号が伝送される。磁気結合型のアイソレーションIC17は入力側(入力部)と出力側(出力部)とが電気的に絶縁された絶縁信号伝送回路である。
【0031】
本実施形態ではデジタルアイソレータ13の一次側(入力側)に本体部11および該本体部11の電源15を接続し、デジタルアイソレータ13の二次側(出力側)にインターフェイス部12を接続するとともに一次側に対してフローティング状態とする。つまり、テスタ10の電源15は、一次側電源151(電源15と同じ)と二次側電源152に電気的に分離され、インターフェイス部12には二次側電源152を供給可能となる。これにより、本体部11とインターフェイス部12はガルバニック絶縁可能となる。以下、本明細書において単に「絶縁」と記載した場合は、いずれもガルバニック絶縁を意味する。また、本実施形態における本体部11およびインターフェイス部12は、テスタ10内において互いに絶縁するべき構成を二分する総称である。つまり本体部11は少なくとも主回路11Mを含むが、それ以外にインターフェイス部12と絶縁(ガルバニック絶縁)すべき任意の構成(例えば、プルアップ抵抗の選択回路の一部(不図示)など)が含まれてもよい。
【0032】
また、インターフェイス部12は、少なくとも伝送回路20を含むものであり、それ以外にインターフェイス部12と絶縁(ガルバニック絶縁)すべき任意の構成が含まれてもよい。例えば、本実施形態では、インターフェイス部12に、シリアル-パラレル変換回路18、電源切替回路19及び閾値設定回路(分圧回路)21、電圧レギュレータ22などを含む。また、例えば、プルアップ抵抗の選択回路の他の一部(不図示)などが含まれてもよい。
【0033】
シリアル-パラレル変換回路18は、デジタルアイソレータ13(アイソレーションIC17)の二次側(出力側)と、伝送回路20の間に接続される例えばデジタルシフトレジスタ(以下、シフトレジスタ18)である。シフトレジスタ18については後述する。
【0034】
電源切替回路19は、インターフェイス部12に供給する(インターフェイス部12を動作させる)電源を切り替え・設定する手段(切替手段)である。本実施形態のテスタ10は、接続する外部装置30の仕様に応じて、外部装置30の例えば外部インターフェイス部32に対して自身の電源15、より詳細には、絶縁電源16の二次側電源152を供給可能である。また、テスタ10は、自身のインターフェイス部12の動作に際し、外部電源35の供給を受けることも可能である。つまり、電源切替回路19は、インターフェイス部12(外部インターフェイス部32)を動作させるための電源として、テスタ10の二次側電源152と外部電源35のいずれを使用するかを切り替え、設定する回路である。
【0035】
絶縁電源16は一次側に入力正極端子(+Vin端子)と入力負極端子(-Vin端子)を有する。すでに述べたように、本実施形態ではデジタルアイソレータ13の二次側(出力側)にはインターフェイス部12を接続するとともに、一次側に対してフローティング状態とする。+Vin端子は電源15の正極に接続し、電源15(一次側電源151)の電源電位(T_VCC電位)となる。また-Vin端子は電源15の負極に接続し、電源15のGND電位(第1GND電位;T_GND電位)となる。
【0036】
絶縁電源16は二次側に、出力正極端子(+Vout端子)と出力負極端子(-Vout端子)を有する。+Vout端子は、一次側と絶縁された(フローティング状態の)二次側電源152の電源電位(TF_VCC電位)となる。また、-Vout端子は一次側と絶縁された(フローティング状態の)二次側電源152のGND電位(TF_GND電位)となる。
【0037】
電源切替回路19は例えばリレー回路を含み、インターフェイス部12に対し、テスタ10の二次側電源152および外部電源35のいずれを供給するかを切り替える。つまり、インターフェイス部12には電源15から独立した(電気的に絶縁された)電源として、電源切替回路19で選択される電源(以下、「設定電源」という。)の電圧(設定電源電位(IF_VCC電位)、設定GND電位(IF_GND電位)の電圧)が供給されるように構成されている。
【0038】
具体的には、設定電源がテスタ10の電源15(二次側電源152)の場合には、IF_VCC電位は、TF_VCC電位となり、IF_GND電位はTF_GND電位となる。また設定電源が外部電源35の場合には、IF_VCC電位は、外部電源35の電源電位(H_VCC電位)となり、IF_GND電位は外部電源のGND電位(H_GND電位)となる。
【0039】
なお、
図1の回路の例では、電源切替回路19が、インターフェイス部12の高電位側の電位(IF_VCC電位)のみを、TF_VCC電位とH_VCC電位のいずれにするか切り替える構成例を示している(IF_GND電位は、TF_GND電位とH_GND電位で共通である)。
【0040】
また、
図1の回路の例では、インターフェイス部12のアイソレーションIC17、シフトレジスタ18および伝送回路20には、設定電源の供給に基づき電圧レギュレータ22で生成された電圧が供給される。換言すると、電圧レギュレータ22は、設定電源(IF_VCC電位(例えば、IF_GND電位に対する+12V))に基づき伝送回路20、シフトレジスタ18、およびアイソレーションIC17の電源電圧(例えば、IF_GND電位に対する+5V)を生成する。また、伝送回路20は例えばコンパレータであり、その閾値は閾値設定回路(分圧回路)21により生成される。
【0041】
図2は、テスタ10と外部装置(ハンドラ)30の送受信の概要および稼働状態を説明する図であり、同図(A)が両者を接続する主要な信号伝送ラインと信号の概要を示す図であり、同図(B)が両者の稼働状態を説明するシーケンス図の一例である。
【0042】
同図(A)を参照して、テスタ10のコネクタ14と外部装置30の外部コネクタ34を接続するケーブ40は、例えば、矢印で示す信号伝送ライン、具体的には、START信号ライン、Bin信号ライン、END信号ライン、Vccライン、GNDラインを含む。またコネクタ14、34は、これらの信号伝送ラインに対応したピン(端子)を有する。
【0043】
START信号ラインは、外部装置30で生成され、テスタ10に送信されるSTART信号が伝送される信号伝送ラインである。テスタ10はSTART信号の受信により半導体デバイスの検査を開始する。Bin信号ラインは、テスタ10の本体部11で生成され、外部装置30に送信されるBin信号(例えば、検査結果を示す信号など)が伝送される信号伝送ラインである。Bin信号ラインは外部装置30に送信されるBin信号(Bin1、Bin2,Bin3…)の数に応じて複数本設けられる。
【0044】
END信号ラインは、テスタ10の本体部11で生成され、外部装置30に送信されるEND信号が伝送される信号伝送ラインである。テスタ10は半導体デバイスの検査終了時にEND信号を送信する。
【0045】
Vccラインは、テスタ10の二次側電源152または外部電源35の電源電位に接続する電源ラインであり、ここでは、テスタ10の電源ライン(TesterVccライン)および外部装置30の電源ライン(HandlerVccライン)の総称である。また、GNDラインは、テスタ10の二次側電源152または外部電源35のGND電位に接続するラインであり、ここでは、テスタ10のGNDライン(TesterGNDライン)および外部装置30の電源ライン(HandlerGNDライン)の総称である(
図3、
図4参照)。
【0046】
図2(B)を参照して、まず外部装置(ハンドラ)30で生成されたSTART信号がSTART信号ラインを介してテスタ10に伝送される(矢印イ)。テスタ10はこのSTART信号を受信すると(、対応する処理(例えば、半導体デバイスの検査)を開始する。テスタ10は当該処理が終了すると、テスト結果を示すBIN信号を生成し(矢印ロ)、外部装置30に送信する。またテスタ10は、END信号ラインを介して処理の終了を示すEND信号を外部装置30に送信する(ハ)。外部装置30は、END信号を受信し、また、BIN信号の送信が終了すると(二)、次のSTART信号を送信する(イ)。以降同様の送受信を繰り返し、両装置は稼働する。
【0047】
なお、図示は省略するが、BIN信号ラインは一般的には複数設けられ、その数はテスタ10および外部装置30の仕様により異なる。また、テスタ10にて生成されたBIN信号が伝送されるBIN信号ラインの本数も仕様により異なる。本実施形態では、テスタ10で生成されるBIN信号(例えば検査結果を示すBIN信号)は一つであり、当該結果が送信されるBIN信号ラインは複数のBIN信号ラインのうちの一本である。
【0048】
このように、外部装置30とテスタ10において、START信号、BIN信号およびEND信号を互いに正常に送受信するような場合には、外部装置30の外部インターフェイス部32(伝送回路33)とテスタ10のインターフェイス部12(伝送回路20)の基準(電源の0V側(GND))を一致させる必要がある。
【0049】
従って、テスタ10内においてGNDループが発生しないように、ガルバニック絶縁の対策は必須であり、従来は、このためにフォトカプラ504を用いる光絶縁方式による伝送回路510により絶縁を行っていた。しかしながら、フォトカプラ504は素子の内部において絶縁する構成であるため、一素子のスペースが大きくなり、ひいては伝送回路510が大きくなる問題があった。
【0050】
そこで本実施形態では、例えばフォトカプラを用いる光絶縁方式に代えて、磁気結合型または容量結合型の絶縁回路を含むデジタルアイソレータ13によって、テスタ10の本体部11とインターフェイス部12をガルバニック絶縁することとした。これにより、信号伝送ライン毎に必要であった複数のフォトカプラ504が不要となるので、伝送回路20の省スペース化が図れる。
【0051】
図3および
図4を参照して更に説明する。
図3および
図4は、本実施形態のインターフェイス部12の概要を示す図であり、
図5、
図6に対応するブロック図である。
図3は、インターフェイス部12が外部装置30の外部電源35の供給を受ける場合の構成例を示し、
図4は、インターフェイス部12がテスタ10の電源15の供給を受ける場合の構成例を示す。
【0052】
図3および
図4に示すように、本実施形態におけるインターフェイス部12の伝送回路20は、2値(H/L)を送受信可能な複数のコンパレータ201により構成される。コンパレータ201は、入力される信号の電位を閾値と比較し、H(High)またはL(Low)を出力する。
【0053】
図3の例で説明すると、まずインターフェイス部12の電位は、設定電源の電源電位(IF_VCC電位)とGND電位(IF_GND電位)である。この場合、設定電源が外部電源35であり、IF_VCC電位は、HandlerVccラインを介して供給される外部電源35のH_VCC電位であり、IF_GND電位は、HandlerGNDラインを介して供給される外部電源35のH_GND電位となる。また、IF_VCC電位の電圧(IF_VCC電圧、例えば、IF_GND電位に対する+12V)により閾値設定回路(分圧回路)21において閾値(例えば、IF_VCC電圧の1/2の電圧など)が生成される(
図1)。そして例えば、START信号を受信するコンパレータ201では、当該閾値とSTART信号を比較し、その結果(HまたはL)を出力する。このように、伝送回路20を含むインターフェイス部12の電位(IF_VCC電位、IF_GND電位)は、外部電源35の電位(H_VCC電位、H_GND電位)と一致しており、正常なデータの送受信が可能となる。
【0054】
図4は、テスタ10側の電源(二次側電源152)が外部装置30に供給される(設定電源が二次側電源152である)例である。この場合、インターフェイス部12のIF_VCC電位は、TF_VCC電位であり、TesterVccラインを介して外部装置30に供給される。また、インターフェイス部12のIF_GND電位は、TF_GND電位であり、TesterGNDラインを介して外部装置30に供給される。Tester GNDラインは外部装置30と共通接続され(
図1)IF_GND電位はH_GND電位ともいえる。
【0055】
また、IF_VCC電位の電圧(IF_VCC電圧)により分圧回路21において閾値が生成され、コンパレータ201では、当該閾値と入力信号(START信号など)を比較し、その結果(HまたはL)を出力する。このように、伝送回路20を含むインターフェイス部12の電位(IF_VCC電位、IF_GND電位)と、外部電源35の電位(H_VCC電位、H_GND電位)と一致しており、正常なデータの送受信が可能となる。
【0056】
テスタ10と外部装置30間で送受信する信号(START信号、END信号、BIN信号)はいずれもデジタル信号であり、デジタルアイソレータ13によりテスタ10内の絶縁は図られているため、伝送回路20としてはコンパレータ201に代替できる。なお、コンパレータ201は送受信する信号(信号伝送ライン)の数に応じて複数設ける。
【0057】
そして、伝送回路20としては、複数のコンパレータ201により構成可能となり、伝送回路20における絶縁手段が不要となるので、インターフェイス部12の縮小が可能となる。具体的な一例として、フォトカプラ504を用いる従来構成(
図5)の伝送回路510と比較して、本実施形態におけるコンパレータ201を用いる伝送回路20は、同じ信号数に対する設置面積として約86%の削減となり、大幅な縮小化が図れる。
【0058】
なお、本実施形態のデジタルアイソレータ13は、絶縁電源16と例えば1~5個(好適には2~3個)のアイソレーションIC17で構成される。また、インターフェイス部12には、例えば、シフトレジスタ18が含まれる(シフトレジスタ18は設けなくてもよい)。このような本実施形態の追加構成を含めたインターフェイス部12であっても、従来のインターフェイス部502と比較して縮小化が図れる。具体的に、同じ信号数に対して、本実施形態のインターフェイス部12(アイソレーションIC17、シフトレジスタ18およびコンパレータ201を用いる伝送回路20)は、従来のインターフェイス部502(フォトカプラ504を用いる従来構成(
図5)の伝送回路510)と比較して、設置面積で約75%と、大幅な削減が図れる。
【0059】
また、フォトカプラ504の場合、接続数が増加するほど合成抵抗が減少する上、素子の特性のバラつきも大きくなり、全体として絶縁特性が劣化する問題がある。これに対し本実施形態によれば、使用するアイソレーションIC17は例えば2個で実現可能であるため、合成抵抗の減少や素子の特性バラつきによる絶縁特性の劣化を最小限にすることができる。
【0060】
また、フォトカプラを採用する場合と比較して、データレートの低下、デューティ比の劣化も回避でき、データ通信の高速化・低ノイズ・低消費電流・長寿命の利点がある。
【0061】
また、従来構成においては、例えば、意図的にあるいは意図せずに、インターフェイス部12のGNDを外部装置30のGNDと一致させる(GNDラインの共用、接続など)する状態となると、テスタ内部において、本体部とインターフェイス部のGNDが異なってしまう場合もあり、テスタ内においてGNDループが発生してしまう問題があった(
図6参照)。
【0062】
本実施形態では、従来構造と比較してより十分な絶縁対策が可能となるものであり、引き続き
図3および
図4を参照して説明する。
【0063】
既に述べているように、テスタ10のインターフェイス部12(伝送回路20)や外部装置30の外部インターフェイス部32(伝送回路33)は、それぞれに自身の装置の電源15、35の供給を受けられない仕様となっている場合がある。
【0064】
また、テスタ10および外部装置30はいずれもコネクタ14、34を有し、両コネクタ14、34はケーブル40で接続される。このケーブル40は市販の既製品ではなく、接続する任意の外部装置30の仕様により都度製作する。このとき、ケーブル40の結線状態が誤ってしまう可能性もある。
【0065】
これらの場合においてもテスタ10内において本体部11とインターフェイス部12のGNDが相違すると、GNDループが生じ、ノイズの伝達や誤動作を引き起こしたり、回路破損に至る恐れがある。
【0066】
そしてこのようなケースにおいては、従来の構成(
図5、
図6)のようにフォトカプラを用いた信号伝送経路毎の絶縁では、テスタ10内のGNDループの発生を回避することができない。
【0067】
そこで、本実施形態では、テスタ10の本体部11(の回路)とインターフェイス部12(の回路)とを、例えば磁気絶縁方式によるデジタルアイソレータ13により絶縁することとした。これにより、従来構成(
図5、
図6)のように信号伝送ライン毎に絶縁をする構成を採用することなく、接地(GND)電位が異なる状態となる可能性のある本体部11とインターフェイス部12の電気的な絶縁が可能となる。
【0068】
具体的に、
図3および
図4のいずれの場合も、絶縁電源16とアイソレーションIC17を有するデジタルアイソレータ13によって、テスタ10のインターフェイス部12(伝送回路20)の電位は、本体部11の電源15電位と絶縁されている。つまり、インターフェイス部12の電位は、電源15から独立したIF_VCC電位,IF_GND電位となるため、テスタ10内におけるGNDループを回避でき、これによるノイズの発生や増幅も低減できる。
【0069】
特に、
図4の構成の場合、テスタ10のインターフェイス部12はテスタ10の電源15(二次側電源152)を利用する構成であるが、インターフェイス部12のGND電位(IF_GND電位)が本体部11のGND電位(T_GND電位)と分離される。すなわち、従来のフォトカプラ方式で問題となっていた、テスタ側から外部装置へ電源供給する構成であっても、テスタ10内におけるGNDループを回避でき、これによるノイズの発生や増幅も低減できる。
【0070】
つまり、テスタ10と外部装置30の多様な接続仕様(一方の電源供給で他方のインターフェイス部を動作させる必要がある場合など)に柔軟に対応できるとともに、誤接続、誤配線などにより意図せずテスタ10内でGNDが異なる状態となる場合があっても、GNDループを回避できる。
【0071】
また、GNDループによるノイズの発生や増幅も低減できる。また装置(回路)の破損・故障や誤動作を防止できる(誤接続により例えば
図4のような接続状態となっても問題はない)。
【0072】
さらに、本実施形態のテスタ10は、外部装置30に対する信号伝送ライン(コネクタ14のピン数)の増加の仕様変更があっても、絶縁特性を劣化させることなく対応できる。
【0073】
フォトカプラ504を用いる従来構成では、外部装置600との信号伝送ライン数(コネクタ503のピン数)が増加する仕様変更があった場合は、フォトカプラ504の数を増加させなければならず、作業工数はもとより、その増設分に伴い伝送回路510のサイズが増大してしまう問題があった。また、フォトカプラ504の接続数が増加するほど合成抵抗がより減少する上、素子の特性のバラつきも大きくなるため、全体として絶縁特性がさらに劣化するという致命的な問題もあった。
【0074】
本実施形態では、例えば、伝送回路20のコンパレータ201について、それぞれ複数の出力が可能な素子(入力信号(ビット)数に対して出力信号(ビット)数が増加する素子)を採用することで、アイソレーションIC17から伝送される信号数を増加(コンパレータ201の1素子あたり2倍、4倍などに増加)させ、インターフェイス部12の増大化を防ぐことができる。
【0075】
また本実施形態では、
図1に示すようにデジタルアイソレータ13(アイソレーションIC17)とコネクタの間にシフトレジスタ18を備える。このシフトレジスタ18は、入力信号(ビット)数に対して出力信号(ビット)数が増加する素子であり、テスタ10で生成されてアイソレーションIC17からシリアル伝送された信号をパラレル伝送に変換し、コネクタ14に送信する。つまり、シフトレジスタ18を経由することでアイソレーションICの出力数に対して、外部装置30に伝送する信号数を増加(シフトレジスタ18の1素子当り2倍、4倍、6倍、8倍などに増加)させることができる。
【0076】
このように本実施形態の場合、信号伝送ライン(コネクタ14のピン数)が増加した場合は、コンパレータ201の素子および/またはシフトレジスタ18の素子(IC)の交換(出力の多い素子に交換)および/または増設すれよく、デジタルアイソレータ13の構成の変更・増設は不要である。つまり合成抵抗の減少や、部品バラつきなどによる絶縁特性(耐圧)の劣化、あるいはインターフェイス部12のサイズの増大を回避しつつ(最小限としつつ)、コネクタ14のピン数の増加に柔軟に対応できる。なお、コンパレータ18は設けなくてもよい。
【0077】
以上、本実施形態では、デジタルアイソレータとして、磁気絶縁方式(磁気結合型アイソレータICおよび絶縁トランス(絶縁電源)を用いる絶縁方式)を用いる場合を例示したが、これに限らず、容量絶縁方式(容量結合型アイソレータICと、受信側(および送信側)にコンデンサを用いる絶縁方式)のデジタルアイソレータを採用してもよい。
【0078】
容量結合型アイソレータICは、一次側(入力部)と二次側(出力部)とが容量結合されて、入力部から出力部に信号が伝送されるとともに、入力部と出力部とが電気的に絶縁された絶縁信号伝送回路である。
【0079】
尚、本発明の半導体デバイス検査装置10は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 半導体デバイス検査(試験)装置(テスタ)
11 本体部
11M 主回路
12 インターフェイス部
13 デジタルアイソレータ
14 コネクタ
15 電源
17 アイソレーションIC
16 DC-DCコンバータ(絶縁電源)
16T 絶縁トランス
18 シフトレジスタ
19 電源切替回路
20 伝送回路
21 閾値設定回路(分圧回路)
22 電圧レギュレータ
30 外部装置(ハンドラ)
31 本体部(外部本体部)
31M 主回路
32 インターフェイス部(外部インターフェイス部)
33 伝送回路(外部伝送回路)
34 コネクタ(外部コネクタ)
35 電源(外部電源)
40 ケーブル
110 検査(試験)装置
111 本体部
201 コンパレータ
500 検査装置(テスタ)
502 インターフェイス部
503 コネクタ
504 フォトカプラ
505 電源
510 伝送回路
511 本体部
600 外部装置
602 インターフェイス部
605 電源
【手続補正書】
【提出日】2022-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
外部装置とのインターフェイス部と、
前記本体部と前記インターフェイス部をガルバニック絶縁可能な非光絶縁方式のデジタルアイソレータと、を有し、
前記デジタルアイソレータの一次側に前記本体部および該本体部の電源(以下、「一次側電源」という。)を接続し、
前記デジタルアイソレータの二次側に前記インターフェイス部を接続して前記一次側電源と電気的に分離された電源を二次側電源として該インターフェイス部に供給可能とし、
前記インターフェイス部に供給する電源を前記二次側電源と前記外部装置の電源のいずれかに切り替える切替手段を備える、
ことを特徴とする半導体デバイス検査装置。
【請求項2】
前記デジタルアイソレータは、磁気結合型または容量結合型の絶縁回路を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項3】
前記インターフェイス部は、該インターフェイス部に伝送される信号の入出力端において前記外部装置との信号伝送ラインに接続するコネクタを有し、
前記絶縁回路と前記コネクタの間にシフトレジスタを備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項4】
前記シフトレジスタは前記絶縁回路の出力数に対して、前記外部装置に伝送する信号数を増加する素子である、
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項5】
前記インターフェイス部はコンパレータにより構成される伝送回路を含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項6】
前記外部装置はハンドラである、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体デバイス検査装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明は、本体部と、外部装置とのインターフェイス部と、前記本体部と前記インターフェイス部をガルバニック絶縁可能な非光絶縁方式のデジタルアイソレータと、を有し、前記デジタルアイソレータの一次側に前記本体部および該本体部の電源(以下、「一次側電源」という。)を接続し、前記デジタルアイソレータの二次側に前記インターフェイス部を接続して前記一次側電源と電気的に分離された電源を二次側電源として該インターフェイス部に供給可能とし、前記インターフェイス部に供給する電源を前記二次側電源と前記外部装置の電源のいずれかに切り替える切替手段を備える、ことを特徴とする半導体デバイス検査装置にかかるものである。