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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062772
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】土砂特性計測装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20230427BHJP
   G01N 9/24 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
E21D9/093 F
G01N9/24 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172866
(22)【出願日】2021-10-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】390006758
【氏名又は名称】株式会社立花マテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】592069296
【氏名又は名称】ソイルアンドロックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 厚
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 志照
(72)【発明者】
【氏名】富田 正文
(72)【発明者】
【氏名】遠山 広貴
(72)【発明者】
【氏名】桑田 岳治
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054GA10
2D054GA12
2D054GA68
2D054GA89
2D054GA93
(57)【要約】
【課題】チャンバー内に充満された土砂の特性を、リアルタイムで正確かつ安全に計測することができる土砂特性計測装置を提供する。
【解決手段】シールド掘進機におけるカッターヘッドと隔壁8との間に形成されたチャンバー2内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置であって、隔壁8に形成された開口を閉塞する放射線透過面31を備えた開口閉塞蓋30と、ガンマ線を用いてチャンバー2内に充満された土砂の湿潤密度ρtを計測する密度計測装置40と、を具備し、放射線透過面31には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部33が形成され、密度計測装置40は、放射線透過面31の機内側に装着されたガンマ線線源411と、ガンマ線線源411から発信されたガンマ線の放射線量を検出する、突出部33内に配置されたガンマ線検出部421とを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機におけるカッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置であって、
前記隔壁に形成された開口を閉塞する放射線透過面を備えた開口閉塞蓋と、
ガンマ線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の湿潤密度を計測する密度計測装置と、を具備し、
前記放射線透過面には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部が形成され、
前記密度計測装置は、前記放射線透過面の機内側に装着されたガンマ線線源と、前記ガンマ線線源から発信された前記ガンマ線の放射線量を検出する、前記突出部内に配置されたガンマ線検出部とを備えていることを特徴とする土砂特性計測装置。
【請求項2】
前記放射線透過面は、前記隔壁よりも薄肉化されていることを特徴とする請求項1に記載の土砂特性計測装置。
【請求項3】
前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部とは、前記放射線透過面の平面視で、前記放射線透過面の中心を挟んだ所定間隔で配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の土砂特性計測装置。
【請求項4】
前記突出部の突出角度は、内部に配置された前記ガンマ線検出部が前記ガンマ線線源と前記放射線透過面の垂直方向で相対する方向に傾けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の土砂特性計測装置。
【請求項5】
中性子線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の含水量を計測する散乱型の水分計測装置が前記放射線透過面の機内側に装着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の土砂特性計測装置。
【請求項6】
前記水分計測装置は、前記放射線透過面の平面視で、前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部との間に装着されていることを特徴とする請求項5に記載の土砂特性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機のチャンバー内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土圧式シールド工法は、シールド前面のカッターで掘削した土砂を、チャンバー内(切羽と隔壁間の空間)に充満させ、当該充填土砂の加圧状態を保持することで切羽の安定を図りながら掘進し、隔壁を貫通して設置しているスクリューコンベアで排土する工法である。
【0003】
土圧式シールド工法では、チャンバー内に充満された土砂に流動性と止水性を付与することを主目的に、地山条件に応じて、添加材(粘土、ベントナイト、気泡、水溶性高分子、など)をカッター前面や隔壁から注入している。注入した添加材によってチャンバー内の土砂に流動性と止水性を付与するためには、確実に掘削土砂に混合されている必要がある。特に、添加材として気泡を使用する場合には、地盤の透水性が高い場合など、注入した気泡が周辺地盤へ漏出することも想定される。気泡が漏出した場合、チャンバー内土砂の流動性が確保できないばかりでなく、漏出した気泡が上方の不透水層下部まで浮上し、地盤内空洞を発生させる虞もある。
【0004】
気泡添加量の管理(気泡の地山漏出量の把握)において、気泡の土砂への注入量(Input)は管理・把握ができるが、注入した気泡のすべてがチャンバー内土砂に混合されているか(Output)は不明である。実掘削土砂の気泡混合量を把握するための方法としては、スクリューコンベアから排出された土砂の気泡混合量を計測するとの考えもある。この場合には、加圧下にあるチャンバー内で注入された気泡が大気圧下に開放されているため、気泡が膨張することで、体積変化や破泡による大気中への散逸などが発生し、正しい気泡混合量を計測することができない。
【0005】
また、土圧式シールド工法においては、掘削/排出土量の管理が重要である。万一、計画以上の土砂を掘削/排出すると、地盤内部に緩みや空洞が生じ、地表面の沈下発生につながる虞が高くなる。
【0006】
掘削/排出土量の管理を実施するには、掘削断面積と掘削延長から”計画上の掘削土砂体積”を算定し、土質調査結果から把握した土砂密度と計画上の掘削土砂体積との積から、”計画上の掘削土砂重量”を算定する。その後、スクリューコンベアから排出された土砂の重量や体積を計量し、計画値と比較することで、掘削/排出土砂量の妥当性を検証している。ただし、互層地盤を掘削するなどの影響で、実掘削地盤の密度が地盤調査結果による代表値と異なる場合には、正しい重量評価ができない。また、加圧下にある地盤内土砂と、大気圧下に開放された土砂とでは、密度が異なるため、正しい体積評価も困難である。加えて、添加材として気泡を使用している場合には、大気圧下での気泡の膨張作用により、体積評価はさらに困難となる。
【0007】
気泡添加量や掘削/排出土量の管理の正確性を向上させるためには、地盤内と同様の加圧条件下にあるチャンバー内の土砂の気泡混合量や密度を、正確に把握する必要がある。そこで、隔壁部にチャンバー内の土砂をサンプリングする筒を設けた上で、加圧条件下にある土砂の密度計測を実施する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-69822
【特許文献2】特開平3-233095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法では、連続的なデータ収集が困難なため、リアルタイムでの土砂密度の把握ができない。また、流動性の低い礫層などの場合には、筒内への土砂流入が困難になると想定されることに加え、筒の内径を超える玉石等はサンプリングできないため、正確な土砂密度の把握は困難となる。
【0010】
また、泥水式シールド工法において、チャンバー内の土砂の密度を散乱型のガンマ線密度計を用いて計測する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、散乱型のガンマ線密度計は、透過型に比べ、計測精度が低くなる。さらに、特許文献2では、放射線線源をチャンバー内に突き出す構造としているため、カッターヘッドに設けられた練混ぜ棒と干渉し、チャンバー内に放射線線源を逸失する事故の発生が危惧される。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、チャンバー内に充満された土砂の特性を、リアルタイムで正確かつ安全に計測することができる土砂特性計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の土砂特性計測装置は、シールド掘進機におけるカッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置であって、前記隔壁に形成された開口を閉塞する放射線透過面を備えた開口閉塞蓋と、ガンマ線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の湿潤密度を計測する密度計測装置と、を具備し、前記放射線透過面には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部が形成され、前記密度計測装置は、前記放射線透過面の機内側に装着されたガンマ線線源と、前記ガンマ線線源から発信された前記ガンマ線の放射線量を検出する、前記突出部内に配置されたガンマ線検出部とを備えていることを特徴とする。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、前記放射線透過面は、前記隔壁よりも薄肉化されていても良い。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部とは、前記放射線透過面の平面視で、前記放射線透過面の中心を挟んだ所定間隔で配置されていても良い。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、前記突出部の突出角度は、内部に配置された前記ガンマ線検出部が前記ガンマ線線源と前記放射線透過面の垂直方向で相対する方向に傾けられていても良い。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、中性子線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の含水量を計測する散乱型の水分計測装置が前記放射線透過面の機内側に装着されていても良い。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、前記水分計測装置は、前記放射線透過面の平面視で、前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部との間に装着されていても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、チャンバー内の土砂を間に介在させた状態で機内側に配置されたガンマ線線源と突出部内のガンマ線検出部とが相対することになり、透過型の密度計測装置が構成され、チャンバー内に充満された土砂の特性を、リアルタイムで正確かつ安全に計測することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る土砂特性計測装置の実施形態が取り付けられたシールド掘進機の構成を示す構成図である。
図2図1に示す土砂特性計測装置の構成を示す平面図である。
図3図2に示すX-X断面図である。
図4図1に示す土砂特性計測装置の実験例を示す図である。
図5図4に示す実験装置の測定例を示す図である。
図6図3に示す土砂特性計測装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
本実施形態の土砂特性計測装置20は、図1に示すシールド掘進機1のチャンバー2に充満される掘削土砂の特性を計測する装置である。シールド掘進機1は、土圧式シールド掘進機であり、筒体状のスキンプレート3と、スキンプレート3の進行方向先端に回転自在に取り付けられたカッターヘッド4とを備えている。スキンプレート3の前部には、回転リング5がベアリング等の軸受け部を介して回転自在に支持されている。そして、回転リング5は、連結ビーム6を介してカッターヘッド4が連結されている。スキンプレート3には、回転リング5を回転させる複数のカッター旋回モータ7が装着されている。これにより、カッター旋回モータ7を回転駆動すると、連結ビーム6を介してカッターヘッド4が回転する。
【0017】
スキンプレート3には、カッターヘッド4の後方に位置する鋼板製の隔壁8が設けられ、カッターヘッド4と隔壁8との間にチャンバー2が形成される。チャンバー2は、カッターヘッド4によって掘削された土砂が充満される空間であり、隔壁8は、掘削土砂が充満されるチャンバー2と、作業員が立ち入る機内9とを隔離している。
【0018】
また、シールド掘進機1は、隔壁8を貫通し、カッターヘッド4の前面やチャンバー2に添加材(粘土、ベントナイト、気泡、水溶性高分子など)を供給する掘削添加剤注入管10を備えている。添加材は、チャンバー2に充満された土砂に流動性と止水性を付与することを目的に、地山条件に応じたものが用いられる。
【0019】
カッターヘッド4によって掘削された土砂は、泥土としてチャンバー2内に充満され、カッターヘッド4の設けられた練混ぜ棒11によって撹拌された後、スクリューコンベヤ12により後方側に搬出される。
【0020】
土砂特性計測装置20は、図2及び図3を参照すると、隔壁8に形成された開口13を閉塞する鋼板製の開口閉塞蓋30と、透過型の密度計測装置40と、散乱型の水分計測装置50とを備え、密度計測装置40及び水分計測装置50が開口閉塞蓋30に装着されてユニット化されている。
【0021】
チャンバー2を形成する隔壁8は、一般に40~60mm程度の鋼板厚を有しており、一般的な放射線(ガンマ線や中性子線)線源を用いての計測は困難である。そこで、本実施形態では、隔壁8に補強を施した上で形成した円形(直径500mm程度)の開口13に、土砂特性計測装置20が設置されている。
【0022】
開口閉塞蓋30は、隔壁8に形成された開口13と略同一形状(円盤状)の放射線透過面31と、放射線透過面31の周縁に延設された額部32と、放射線透過面31からチャンバー2内に突出する突出部33とを備える。
【0023】
放射線透過面31は、隔壁8に形成された開口13を閉塞する開口閉塞部として機能する。そして、放射線透過面31は、隔壁8に形成された開口13の周縁部に、額部32がボルト等によってパッキンを介して締結されることで、隔壁8に形成された開口13を閉塞して固定される。
【0024】
放射線透過面31の鋼板厚は、隔壁8の鋼板厚よりも薄肉化(例えば、25mm程度)されている。すなわち、放射線透過面31は、隔壁8に形成された小面積の開口13を閉塞する強度を有していれば良いため、放射線透過面31の鋼板厚を隔壁8の鋼板厚よりも薄肉化することができる。
【0025】
突出部33は、放射線透過面31の垂直方向に突出し、チャンバー2内に突出する先端が閉じられ、機内側に開放された筒状体である。そして、突出部33は、放射線透過面31の中心からずれた位置に形成されている。さらに、突出部33は、カッターヘッド4の設けられた練混ぜ棒11に接触しない大きさ及び位置に形成されている。
【0026】
密度計測装置40は、放射線透過面31を介してチャンバー2にガンマ線を発信するガンマ線線源部41と、受信したガンマ線の放射線量から土砂の湿潤密度ρtを求めるガンマ線計測部42とを備えている。
【0027】
ガンマ線線源部41は、ガンマ線を発信するガンマ線線源411と、ガンマ線線源411から発信されたガンマ線の機内9側への放射を遮蔽するカバー412とを備え、ガンマ線線源411からのガンマ線が放射されるガンマ線放射面が放射線透過面31の機内9側に当接するように装着されている。すなわち、ガンマ線線源411は、機内9側に配置され、ガンマ線線源411から発信されるガンマ線は、放射線透過面31を介してチャンバー2内に放射される。なお、放射線透過面31が薄肉化されているため、強度の低いガンマ線線源411を用いることができる。
【0028】
ガンマ線計測部42は、ガンマ線の放射線量を検出するガンマ線検出部421と、ガンマ線検出部421の検出値に基づいて土砂の湿潤密度ρtを算出する密度算出部422とを備え、ガンマ線検出部421を先端に備えた棒状体として構成されている。ガンマ線計測部42は、ヨウ化ナトリウム(NaI)シンチレーション検出器、ゲルマニウム(Ge)半導体検出器等で構成され、ガンマ線検出部421がチャンバー2内に突出する突出部33内に位置するように、機内9側から突出部33の中空部に挿入されて開口閉塞蓋30に装着される。
【0029】
これにより、ガンマ線検出部421は、チャンバー2内の土砂を間に介在させた状態でガンマ線線源411と相対することになり、透過型の密度計測装置40が構成される。従って、密度計測装置40は、透過型として機能するため、散乱型に比べて高い精度で湿潤密度ρtを計測することができる。
【0030】
ガンマ線線源411とガンマ線検出部421との相対位置は、一般的なガンマ線密度計の計測方法のように正対ではなく、90度の角度を持った配置となるが、密度計測が可能であることを以下に示す実験にて確認した。
【0031】
図4を参照すると、鋼板土槽60内に計測対象試料61を投入し、鋼板土槽60の側壁隅角部を利用してガンマ線線源部41とガンマ線計測部42とを相対角90°の位置に配置して実験を行った。なお、鋼板土槽60の鋼板厚は、ガンマ線線源部41の配置箇所が25mm、ガンマ線計測部42の配置箇所が22mmである。また、ガンマ線線源部41のガンマ線線源411とガンマ線計測部42のガンマ線検出部421とは、側壁隅角部から200mmの箇所にそれぞれ配置した。
【0032】
計測対象試料61として、水(実質湿潤密度:1.000g/cm3)、砂質土(実質湿潤密度:1.588g/cm3)、粘性土(実質湿潤密度:1.755g/cm3)を用意し、それぞれについてガンマ線検出部421による放射線計数率の計測を行い、放射線計数率比(放射線計数率/標準計数率)を求めた。
【0033】
図5(a)は、その測定結果である。なお、放射線計数率は、バックグラウンドを除いた値である。また、標準計数率は、ガンマ線線源411の基準値から測定日(半減期)を考慮した値である。
【0034】
その結果、図5(b)に示すように、放射線計数率比と実質湿潤密度との間に非常に高い相関(決定計数R=0.9792)を確認することができ、ガンマ線線源部41のガンマ線線源411とガンマ線計測部42のガンマ線検出部421とを相対角90°の位置に配置した場合であっても、放射線計数率の測定結果から計測対象試料61の湿潤密度を算定できることが分かった。
【0035】
ガンマ線線源411とガンマ線検出部421とは、図2に示す開口閉塞蓋30の平面視において、放射線透過面31の中心を間に挟んだ所定間隔で配置されている。すなわち、ガンマ線計測部42(ガンマ線線源411)の装着位置と、突出部33(ガンマ線検出部421)の形成位置とは、放射線透過面31の中心を間に挟んだ配置となっている。これにより、放射線透過面31の面積(隔壁8に形成する開口13の面積)を小さくすることができ、放射線透過面31の薄肉化に寄与できる。
【0036】
水分計測装置50は、放射線透過面31を介してチャンバー2に中性子線を発信する中性子線線源51と、放射線透過面31を介して受信した中性子線の放射線量から土砂の含水量ρを求める中性子線計測部52とを備えている。なお、含水量ρは、単位体積の土砂に含まれる水の質量を示す。水分計測装置50は、中性子線線源51と中性子線計測部52とが中性子線の機内9側への放射を遮蔽するカバー53に内包された一体構造である。そして、水分計測装置50は、中性子線線源51からの中性子線が放射される中性子放射面と、中性子線計測部52が中性子線を受信する中性子受信面とが放射線透過面31の機内9側に当接するように装着されている。
【0037】
水分計測装置50は、図2に示す開口閉塞蓋30の平面視において、ガンマ線線源411とガンマ線検出部421との間に装着され、ガンマ線線源411からガンマ線検出部421に至るガンマ線の放射経路となる土砂の含水量ρを計測する位置に配置されている。すなわち、密度計測装置40と水分計測装置50とは、同一領域の土砂を測定対象としている。
【0038】
密度計測装置40によって計測される湿潤密度ρtと、水分計測装置50によって計測される含水量ρとを用いることで、土砂体積Vにおける空気量Vaの空気混入率Va/Vを算出できる。すなわち、2.6~2.7g/cm程度と仮定可能な土粒子密度をρとすると、空気混入率Va/Vは、次式によって算出できる。
Va/V=1-ρ-(ρt-ρ)/ρ
【0039】
そして、密度計測装置40と水分計測装置50とは、同一領域の土砂を測定対象としているため、湿潤密度ρtと含水量ρとを用いて算出される空気混入率Va/Vも正確な値となる。
【0040】
本実施形態では、突出部33が放射線透過面31の垂直方向に突出するように構成したが、突出部33内に配置されたガンマ線検出部421が、チャンバー2内の土砂を間に介在させた状態でガンマ線線源411と相対するのであれば、突出部33の突出角度には特に制限はない。例えば、図6に示すようにで、突出部33の突出角度を、内部に配置されたガンマ線検出部421がガンマ線線源411と放射線透過面31の垂直方向で相対する方向に傾けても良い。この場合、ガンマ線検出部421に到達するガンマ線の放射量が増加するため、より強度の低いガンマ線線源411を用いることができる。
【0041】
一般的に、密度計測装置40や水分計測装置50のような放射性同位元素(RI)を使用するRI計測器を施工現場に設置する場合、計測場所ごとに、介在する鋼板の厚さや、線源と検出部との相対位置が異なる。従って、検出部の放射線カウント量と土砂の物理量(密度や水分量)との関係を、都度、計測器使用前に実測した上で、検量線の作成が必要となる。
【0042】
これに対して、本実施形態では、密度計測装置40及び水分計測装置50が開口閉塞蓋30に装着されてユニット化されている。従って、介在する鋼板厚(放射線透過面31)や線源(ガンマ線線源411、中性子線線源51)と検出部(ガンマ線検出部421、中性子線計測部52)との相対位置が予め確定される。従って、事前に検量線を作成した上で、シールド掘進機1に土砂特性計測装置20を取り付けることができ、取付け作業を大幅に簡素化される。
【0043】
加えて、土砂特性計測装置20をユニット化することで、シールド掘進機1の大きさや構造が異なる場合であっても、隔壁8に所定の開口13を設置することで、容易に土砂特性計測装置20を取り付けることが可能となり、汎用性が向上する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態は、シールド掘進機1におけるカッターヘッド4と隔壁8との間に形成されたチャンバー2内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置20であって、隔壁8に形成された開口13を閉塞する放射線透過面31を備えた開口閉塞蓋30と、ガンマ線を用いてチャンバー2内に充満された土砂の湿潤密度ρtを計測する密度計測装置40と、を具備し、放射線透過面31には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部33が形成され、密度計測装置40は、放射線透過面31の機内側に装着されたガンマ線線源411と、ガンマ線線源411から発信されたガンマ線の放射線量を検出する、突出部33内に配置されたガンマ線検出部421とを備えている。
この構成により、ガンマ線検出部421は、チャンバー2内の土砂を間に介在させた状態で機内9側に配置されたガンマ線線源411と相対することになり、透過型の密度計測装置40が構成され、チャンバー2内に充満された土砂の特性を、リアルタイムで正確かつ安全に計測することができる。また、開口閉塞蓋30と密度計測装置40とがユニット化されているため、事前に検量線を作成した上で、シールド掘進機1に土砂特性計測装置20を取り付けることができ、取付け作業を大幅に簡素化される。
【0045】
さらに、本実施形態において、放射線透過面31は、隔壁8よりも薄肉化されている。
この構成により、強度の低いガンマ線線源411を用いることができる。
【0046】
さらに、本実施形態において、ガンマ線線源411とガンマ線検出部421とは、放射線透過面31の平面視で、放射線透過面31の中心を挟んだ所定間隔で配置されている。
この構成により、放射線透過面31の面積(隔壁8に形成する開口13の面積)を小さくすることができ、放射線透過面31の薄肉化に寄与できる。
【0047】
さらに、本実施形態において、突出部33の突出角度は、内部に配置されたガンマ線検出部421がガンマ線線源411と放射線透過面31の垂直方向で相対する方向に傾けられている。
この構成により、ガンマ線検出部421に到達するガンマ線の放射量が増加するため、より強度の低いガンマ線線源411を用いることができる。
【0048】
さらに、本実施形態において、中性子線を用いてチャンバー2内に充満された土砂の含水量ρを計測する散乱型の水分計測装置50が放射線透過面31の機内側に装着されている。
この構成により、チャンバー2内に充満された土砂の湿潤密度ρtと含水量ρとを計測できるため、湿潤密度ρtと含水量ρとを用いて空気混入率Va/Vを算出でき、添加材として気泡を使用する場合にも、気泡混合量をリアルタイムで評価することができる。
【0049】
さらに、本実施形態において、水分計測装置50は、放射線透過面31の平面視で、ガンマ線線源411とガンマ線検出部421との間に装着されている。
この構成により、密度計測装置40と水分計測装置50とは、同一領域の土砂を測定対象としているため、湿潤密度ρtと含水量ρとを用いて正確な空気混入率Va/Vを算出することができる。
【0050】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0051】
1 シールド掘進機
2 チャンバー
3 スキンプレート
4 カッターヘッド
5 回転リング
6 連結ビーム
7 カッター旋回モータ
8 隔壁
9 機内
10 掘削添加剤注入管
11 練混ぜ棒
12 スクリューコンベヤ
13 開口
20 土砂特性計測装置
30 開口閉塞蓋
31 放射線透過面
32 額部
33 突出部
40 密度計測装置
41 ガンマ線線源部
42 ガンマ線計測部
50 水分計測装置
51 中性子線線源
52 中性子線計測部
53 カバー
411 ガンマ線線源
412 カバー
421 ガンマ線検出部
422 密度算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機におけるカッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置であって、
前記隔壁に形成された開口を閉塞する放射線透過面を備えた開口閉塞蓋と、
ガンマ線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の湿潤密度を計測する密度計測装置と、を具備し、
前記放射線透過面には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部が形成され、
前記密度計測装置は、前記放射線透過面の機内側に装着されたガンマ線線源と、前記ガンマ線線源から発信された前記ガンマ線の放射線量を検出する、前記突出部内に配置されたガンマ線検出部とを備え、
前記突出部の突出角度は、内部に配置された前記ガンマ線検出部が前記ガンマ線線源と前記放射線透過面の垂直方向で相対する方向に傾けられていることを特徴とする土砂特性計測装置。
【請求項2】
シールド掘進機におけるカッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置であって、
前記隔壁に形成された開口を閉塞する放射線透過面を備えた開口閉塞蓋と、
ガンマ線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の湿潤密度を計測する密度計測装置と、を具備し、
前記放射線透過面には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部が形成され、
前記密度計測装置は、前記放射線透過面の機内側に装着されたガンマ線線源と、前記ガンマ線線源から発信された前記ガンマ線の放射線量を検出する、前記突出部内に配置されたガンマ線検出部とを備え、
中性子線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の含水量を計測する散乱型の水分計測装置が前記放射線透過面の機内側に装着されていることを特徴とする土砂特性計測装置。
【請求項3】
前記水分計測装置は、前記放射線透過面の平面視で、前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部との間に装着されていることを特徴とする請求項2に記載の土砂特性計測装置。
【請求項4】
前記放射線透過面は、前記隔壁よりも薄肉化されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の土砂特性計測装置。
【請求項5】
前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部とは、前記放射線透過面の平面視で、前記放射線透過面の中心を挟んだ所定間隔で配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の土砂特性計測装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の土砂特性計測装置は、シールド掘進機におけるカッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置であって、前記隔壁に形成された開口を閉塞する放射線透過面を備えた開口閉塞蓋と、ガンマ線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の湿潤密度を計測する密度計測装置と、を具備し、前記放射線透過面には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部が形成され、前記密度計測装置は、前記放射線透過面の機内側に装着されたガンマ線線源と、前記ガンマ線線源から発信された前記ガンマ線の放射線量を検出する、前記突出部内に配置されたガンマ線検出部とを備え、前記突出部の突出角度は、内部に配置された前記ガンマ線検出部が前記ガンマ線線源と前記放射線透過面の垂直方向で相対する方向に傾けられていることを特徴とする。
また、本発明の土砂特性計測装置は、シールド掘進機におけるカッターヘッドと隔壁との間に形成されたチャンバー内に充満された土砂の特性を計測する土砂特性計測装置であって、前記隔壁に形成された開口を閉塞する放射線透過面を備えた開口閉塞蓋と、ガンマ線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の湿潤密度を計測する密度計測装置と、を具備し、前記放射線透過面には、チャンバー内に突出する筒状体の突出部が形成され、前記密度計測装置は、前記放射線透過面の機内側に装着されたガンマ線線源と、前記ガンマ線線源から発信された前記ガンマ線の放射線量を検出する、前記突出部内に配置されたガンマ線検出部とを備え、中性子線を用いて前記チャンバー内に充満された土砂の含水量を計測する散乱型の水分計測装置が前記放射線透過面の機内側に装着されていることを特徴とする。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、前記水分計測装置は、前記放射線透過面の平面視で、前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部との間に装着されていても良い。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、前記放射線透過面は、前記隔壁よりも薄肉化されていても良い。
さらに、本発明の土砂特性計測装置において、前記ガンマ線線源と前記ガンマ線検出部とは、前記放射線透過面の平面視で、前記放射線透過面の中心を挟んだ所定間隔で配置されていても良い