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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062776
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】角形鋼管柱の継手接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230427BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
E04B1/58 503H
E04B1/24 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172870
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】506200083
【氏名又は名称】田代 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】田代 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】森山 一真
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AB16
2E125AC16
2E125AG12
2E125BA55
2E125BB02
2E125CA06
(57)【要約】
【課題】角形鋼管柱外側からの高力ボルトの頭締めによる工法において、柱接合領域の内面壁の添え板に設けている、ナット保持盤のナットの締め付けでもって、接合強度の安定と、微小範囲でのボルト位置変化に対応できるナット保持盤を提供する。
【解決手段】下側角形鋼管柱の接合部領域の内面壁に、ナット保持盤を有する添え板の下半部を当接し、前記角形鋼柱の外面側から挿入した高力ボルトと、ナット保持盤に有するナットで添え板を固定し、下側角形鋼管柱の内面壁から上部へ突き出ている添え板の外側面に、上側角形鋼管柱の下端を被せて、上側角形鋼管柱の外面側から挿入した高力ボルトを、ナット保持盤に有するナットで螺合する構造に於いて、添え板には、ナット形状より大きめに切り抜き加工を施したナット拘束プレ-トと、波板形状のナットカバーを重ね合わせて形成したナット保持盤を設けて、ナットがボルトの位置変化に対応することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管柱を長さ方向に接合する場合で、角形鋼管柱に複数のボルト孔を設け、添え板と高力ボルトを用いて接合する構造において、角形鋼管柱の接合部領域の内面壁に当接して用いる添え板にあって、長方形のプレ-トに、CT形鋼で接合強度を確保し、角形鋼管柱のボルト孔に合わせた複数のボルト貫通孔を設けて、ナット保持盤を備えた添え板の下半部を、角形鋼管の上端内面壁へ当接し、前記角形鋼管の外面側から挿入した高力ボルトと、ナット保持盤に有するナットで添え板を固定した、下側角形鋼管柱であって、前記下側角形鋼管柱の内面壁から上部へ突き出ている添え板の外面側に、上側角形鋼管柱下端部の内面壁が当接し、前記上側角形鋼管柱の外面側から挿入する高力ボルトに、前記添え板に有するナットが螺合して締結することを特徴とする角形鋼管柱の継手接合構造。
【請求項2】
角形鋼管柱の外面側から挿入した高力ボルトの先端部を、角形鋼管柱内面壁に設けている、添え板のナット保持盤に有するナットのねじ穴に挿入する構造にあって、高力ボルトを挿入すると、ナット保持盤に設けた、波板形状ナットカバーの台形波型の上部傾斜面にナットが接触し、ナットが拘束されて、高力ボルトの回転を続けることにより、前記ナットは、前記高力ボルトの頭部方向へ、高力ボルトのねじ山沿いに移動し添え板に当接して、高力ボルトの頭締めにより、前記添え板が、角形鋼管柱の内面壁に密着することを特徴とする請求項1記載の角形鋼管柱の継手接合構造。
【請求項3】
前記ナット保持盤において、ナット保持盤を形成している長方形のプレ-ト面に、座金直径より大きい円形形状の複数の型抜きを施した座金拘束プレ-トを、前記座金拘束プレ-トと外形寸法が同一のプレ-トに、ナット形状より大きめに切り抜き加工を複数しているナット拘束プレ-ト片面の所定位置で、レ字状に突起した針金を複数有する面に重合し、前記座金拘束プレ-トと同一寸法で、薄板鋼板を台形状の波板に加工を施し、前記台形形状の上底側の所定箇所に、ボルト貫通孔を設けて、前記ボルト貫通孔の下側傾斜面にナット二面幅より狭いスリット溝を設けたナットカバーを、前記重合盤のナット拘束プレ-ト面に当接し、合成して形成したナット保持盤を特徴とする請求項1又は2記載の角形鋼管柱の継手接合構造。













【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨構造建築に角形鋼管を柱材として用いて、特に、角形鋼管柱の継手接合を行う場合に於いて、角形鋼管柱の外面側から挿入した高力ボルトに、接合領域内面壁の添え板に設けているナット保持盤のナットが螺合する、高力ボルト頭締めに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般的に鉄骨構造建築物の柱はH形鋼が用いられているが、近年は、柱に角形鋼管を用いた構造が多用されている。高層の建物を構築する場合は、道路の輸送制限により、建設現場で柱の接合が行われるが、H形鋼を用いる場合は断面が開断面のため、添え板と一般的な高力ボルトを用いて容易に接合が可能である。しかし、角形鋼管では閉断面のため、添え板と一般的な高力ボルトを用いて接合することは困難である。そこで、角形鋼管柱の接合方法として、一般的に、図5に示すような方法で施工が行われている。事前に、下側角形鋼管柱14の上端部の外面側にエレクションピ-ス15を設け、上側角形鋼管柱13の下端部の外面側にもエレクションピ-ス15を設けておいて、建方時に、上側柱と下側の角形鋼管柱外面に設けたエレクションピ-ス15の孔に仮ボルト16を通して、上下柱を繋ぎ、柱の出入の調整を行いながら、仮ボルト16を締めて、柱の相互間の仮固定を行い、角形鋼管柱の端部に加工されている開先に、溶接を施し、溶接終了後にエレクションピ-ス15を切断している。
このような従来の現場での溶接接合方法は、現場溶接を行う準備として、工場で柱の開先加工等多くの加工が必要になり、また、現場での溶接作業では、高い溶接技術と厳密な品質管理が不可欠で、作業に長時間を要している。さらに、風、雨、低温等に対する対策、例えば、足場による養生シ-ト張り等が必要であり、工期とコスト的に問題がある。
【0003】
次に、上記の溶接接合での問題を解消するために、現在、ボルト工法で行われる場合もある。例えば、図6に示すように、下側角形鋼管柱14と上側角形鋼管柱13のジョイント部に、繋ぎ板17(18)を角形鋼管柱の内側と外側に沿わせて、高力ワンサイドボルト19を用いて、繋ぎ板同士を結合する工法である。
このような高力ワンサイドボルトでの接合方法は、ボルト工法のため、工場での部品製作の削減やUT検査が不要となる利点はあるが、ボルトとして複雑な機構で高価であり、高力ワンサイドボルトを多量に使用することにより、高コストになっている。更に、施工性にも難点がある。例えば、下側角形鋼管柱14の接合領域に、繋ぎ板17(18)の半分が仮固定され、繋ぎ板17(18)の半分は、二列で不安定の状態で上部へ突き出ている。従って、建方時に、下側角形鋼管柱14に、上側の角形鋼管柱13を組み込む場合は、上柱角形鋼管下端の小口(切断面)を、下柱から突き出ている不安定な繋ぎ板17(18)の二列の間(隙間)に、四方同時に挿入する工法のため、施工に長時間を要する。また、角形鋼管柱の外側面の繋ぎ板18は、角形鋼管柱の外側面側に当接されており、外側繋ぎ板18による局部的な出っ張り部のため、柱の耐火材被覆など場合で、仕上げ材が厚くなり、コスト高になっている。
【0004】
次いで、溶接の問題を解消する角形鋼管柱の接合構造として、例えば、特許文献1に開示されている接合構造では、角形鋼管柱の内面側のみに一面摩擦用添板を当接して、角形鋼管柱の外側で、高力ボルトを頭締めして添板とナットによる出っ張り部を少なくした構造が開示されている。
しかし、一般にハイテンボルトのセットはナットを回転させて締め付けることが前提となっており、特許文献1に開示されている例では、所定の張力を得られない可能性がある。例えば、図1(b)に示すように、角形鋼管柱1b内側の上端部に、一面摩擦用添板2を当接して、高力ボルト3を、その角形鋼管柱1bの外側からボルト孔1o、2oを介して、予め設置しているナットホルダー4のナット5へ螺合・締結する方法である。従って、ナット8からの締め付けは不可能である。また、図9(b)、(a)に示すように、ナットホルダー4内部に設けているナット5と座金7の位置調整には難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-291613号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決すべき課題は、角形鋼管柱のボルト継手接合構法の場合において、角形鋼管柱の内壁面に、CT形鋼で接合強度を確保した添え板を当接し、一般的な高力ボルトを用いて、上述した従来の接合方法の問題点を解決することにあり、接合強度の安定確保とともに、角形鋼管柱の外面側から挿入した高力ボルトからの回転によるナット締め付けで、一定の微小範囲でボルトの位置変化に対応できるシステムを用いて、施工性を向上させて、接合部におけるコストの削減を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造は、角形鋼管柱を長さ方向に接合する場合で、角形鋼管柱に複数のボルト孔を設け、添え板と高力ボルトを用いて接合する構造において、角形鋼管柱の接合部領域の内面壁に当接して用いる添え板であって、長方形のプレ-トに、CT形鋼で接合強度を確保し、角形鋼管柱のボルト孔に合わせた複数のボルト貫通孔を設けて、ナット保持盤を備えた添え板の下半部を、角形鋼管の上端部内面壁へ当接し、前記角形鋼管の外面側から挿入した高力ボルトと、ナット保持盤に有するナットで添え板を固定した、下側角形鋼管柱であって、前記下側角形鋼管柱の内面壁から上部へ突き出ている添え板の外面側に、上側角形鋼管柱下端部の内面壁が当接して、前記上側角形鋼管柱の外面側から挿入する高力ボルトに、前記添え板に有するナットが螺合して締結することを特徴としている。
続いて、角形鋼管柱の外面側から挿入した高力ボルトの先端部を、角形鋼管柱内面壁に設けている、添え板のナット保持盤に有するナットのねじ穴に挿入する構造にあって、高力ボルトを挿入すると、ナット保持盤に設けた、波板形状ナットカバーの台形波型の上部傾斜面にナットが接触し、ナットが拘束されて、前記高力ボルトの回転を続けることにより、前記ナットは、前記高力ボルトの頭部方向へ、前記高力ボルトのねじ山沿いに移動し添え板に当接して、高力ボルトの頭締めにより、前記添え板が角形鋼管柱の内面壁に密着することを特徴としている。
上記のナット保持盤において、ナット保持盤を形成している長方形のプレート面に、座金直径より大きい円形形状で複数の型抜きを施した座金拘束プレ-トを、前記座金拘束プレ-トと外形寸法が同一のプレ-トに、ナット形状より大きめに切り抜き加工を複数施しているナット拘束プレ-ト片面の所定位置で、レ字状に突起した針金を複数有する面を重合し、前記座金拘束プレ-トと同一寸法で、薄板鋼板を台形形状の波板に加工を施し、前記台形形状の上底側の所定箇所に、ボルト貫通孔を設け、前記ボルト貫通孔の下側傾斜面にナット二面幅より狭いスリット溝を設けたナットカバーを、前記重合盤のナット拘束プレ-ト面に当接し、合成して形成したナット保持盤を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
(A)本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造によれば、一般的にハイテンボルトの締め付けは、ナットを回転させて締め付けることが前提条件になっている。H形鋼柱での接合の場合は、柱断面が開断面のため、添え板と一般的な高力ボルトを用いて容易に接合ができる。しかし、角形鋼管柱の場合は、閉断面のため、鋼管内部から、ナットを回転させることは不可能である。本発明においては、角形鋼管柱の内面壁側に、ナットの回転と位置の微調整ができる、ナット保持盤を設けた添え板を当接し、一般的な高力ボルトを用いて、極めて実用性の高い接合手段を得ることができる。
【0009】
(B)本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造によれば、上下の角形鋼管柱の接合領域の内面壁に、添え板を通して、柱の外面から高力ボルトを挿入するボルト工法である。建設現場に於いて、角形鋼管柱を接合する際には、下側角形鋼管柱の内部から上部へ突き出ている添え板の外面へ、上側角形鋼管柱の内面壁側を被せる方法のため、建方作業の時間が短縮される。また、添え板に設けたナット保持盤で、ナット位置の微調整を行い、ボルトの締結時間を短縮して、施工コストの節減を可能にしている。
【0010】
(C)本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造によれば、現在、角形鋼管柱のボルト継手接合の場合、高価な高力ワンサイドボルトを使用して高コストになっている。当工法では、一般的な高力ボルトを使用し、ナットが微小範囲で位置の変化に対応するナット保持盤を用いて、節減を可能にしている。また、柱接合部の外面側の添え板は不要なため、木質ハイブリッドビルには合理的な設計となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1~6に基づいて、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造で、下側角形鋼管柱へ添え板を挿入する過程と、上側角形鋼管柱との接合する過程の一例を示す立体説明図面である。図2は継手接合構造の一例を示す図面であり、(a)は平断面図、(b)はA-A平断面図である。この例において、角形鋼菅柱1、下側角形鋼管柱1a、上側角形鋼管柱1b、添え板2、長方形プレート2a、CT形鋼2b、ナット保持盤3、ナットカバー3a、ナット拘束プレ-ト3b、座金拘束プレ-ト3c、ボルト貫通孔4、ナット5、ナット孔6、高力ボルト7、座金8、座金孔9、スリット溝10、座金ガイドピン11、及びピンホール12から構成されている。以下、これに沿って説明する。
【0012】
まず、下側角形鋼管柱1aと添え板2の結合方法を説明する。図1で示すように、添え板2を下側角形鋼管柱1aの内面壁へ挿入して、下側角形鋼管柱1a外面側から、高力ボルト7をボルト貫通孔4に挿入し、添え板2に設けたナット保持盤3のナット5が高力ボルト7を螺合する仕組みになっている。
【0013】
次に、角形鋼管柱1と添え板2のボルト貫通孔4の位置関係について説明する。図2(a)、(b)で示すように、角形鋼管柱1の四方面でのボルト貫通孔4の位置と、添え板2(プレート2a)のボルト貫通孔4は同位置に設けており、CT形鋼2bのフランジ部と、ナット保持盤3のボルト貫通孔4も同じ配置になっている。
【0014】
続いて、ナット保持盤3の構成について説明する。図3(立体説明図)で示すように、ナット保持盤3は、ナットカバー3a、ナット拘束プレ-ト3b、及び座金拘束プレ-ト3cで構成されている。以下、これに沿って説明する。
まず、座金拘束プレ-ト3cについて説明する。座金拘束プレ-ト3cは、図3(d)に示すように、長方形で所定寸法に加工したプレートに、座金8の直径より大きい円形形状の型抜加工を施した複数の座金孔9を設けて、図4(b)のイ部に示すように、座金8より厚いプレートを用いている。尚、座金孔9の中心軸は、図4(a)のイ部に示すように、座金8の中心軸より下部の位置に設けて、開口部の面積を小さくしている。
次に、ナット拘束プレ-ト3bについて説明する、ナット拘束プレ-ト3bの外形寸法は、座金拘束プレ-ト3cと同一の長方形に加工して、図4(b)のイ部に示すように、座金拘束プレ-ト3cより薄い板厚を用いて、図4(a)のイ部に示すように、ナット5の形状より一回り大きいサイズのナット孔6を複数加工し、図4(a)のロ部に示すように、ナット孔6の中心軸からの鉛直線を対称軸にして、ピンホール12を左右の所定位置に設けて、そのピンホール12に、レ字形状に針金で加工した座金ガイドピン11の水平部を、図4(b)のロ部に示すように、座金拘束プレ-ト3c側の方から差し込み、座金ガイドピン11の斜め形状の先端部は、図4(a)のロ部に示すように、左右2ヶ所のピンホール12から斜め上方向のナット孔6の中心(ボルト軸)へ向けて取り付けている。
次いで、ナットカバー3aについて説明する、ナットカバー3aは、図3(b)に示すように、鋼板(薄板)を台形形状の波板に加工して、図4(a)のハ部に示すように、ボルト軸芯の位置で、波板の上底側に、ボルト貫通孔4とスリット溝10用の切欠き加工を施している。
【0015】
次いで、前述したナット保持盤3の各部品の接合構造について説明する。図3(a)に示すのは、各部品の組立時の立体説明図である。まず、ナット拘束プレ-ト3bの座金拘束プレ-ト3c側に設けたガイドピン11を、座金拘束プレ-ト3cの座金孔9の中へ、入れながら、座金拘束プレ-ト3cとナット拘束プレ-ト3bを重ねて、その合わせ目に溶接を施して重合盤を製作する。続いて、その重合盤のナット拘束プレ-ト3b面に、ナットカバー3aの波板の下底側を合わせて、溶接で固定し、ナット保持盤3を形成している。
【0016】
続いて、上述したナット保持盤3の機能過程の一例を図により順次説明する。図4(a)は、ナット保持盤3の各部品プレート(3a、3b、3c)の立面での孔形状図であり、図4(b)は、各部品プレ-トの孔を合成したA-A縦断面図である。
・ は、ナット保持盤3の内部空間に、ナット5と座金8がセットされる前の状態を示している。
・ は、ナット保持盤3内部に、ナット5と座金8がセットされた時点を示しており、ナット5は、ナット孔6の底辺部で、座金8は、左右から傾斜形の座金ガイドピン11で保持されている。従って、ナット5と座金8の中心軸芯線は、所定のボルト軸芯線より低い位置なっている。
・ は、図4(b)のニ部に示すように、角形鋼管柱1の外面側からボルト貫通孔4に、高力ボルト7を挿入すると、挿入された高力ボルト7の面取先(平先)が座金8に接触し、接触された座金8は、ナット5に接触し、座金8から押されたナット5は、ナットカバー3a(上底側)の方へ、スリット溝10の縁に沿って、その傾斜縁を上りながら移動を開始する。また、図4(a)のニ部に示す、2ヶ所の座金ガイドピン11で保持されている座金8は、図4(b)のロ部に示す、ガイドピン11の傾斜部に沿いながら、ナットカバー3a(上底側)の方へ移動を始めて、図4(b)のホ部に示すように、ナット孔6(六角型)の縁に接触し座金孔9内部で保持される。即ち、ナット5は、ボルト貫通孔4の鉛直線上に設けたスリット溝10の溝に沿って上部へ移動し、2ヶ所の座金ガイドピン11で保持されている座金8は、鉛直線上に有する、奥行上部のボルト貫通孔4方向へ移動するシステムである。
・ は、図4(b)のホ部に示すように、ナット5は、高力ボルト7からの押し(回転)が続くと、ナット5はナットカバー3a(上底側)の方へ移動し、所定のボルト軸芯線上において、ナットカバー3aの波板の上部傾斜面に接触し、ナットの動きが止まる。ナット5の動きが止まると、高力ボルト7の先端部(面取先)が、ナット5のねじ穴へ侵入を開始する。尚、ナットカバー3aの波形状は、ナット5上側の波付けと下側の波付けの角度を変えている。
・ は、ナット5と、ナット孔6間には、図4(a)のイ部に示すように、微小な隙間を設けており、高力ボルト7の回転を行うと、ナット5は、六角型のナット孔6内での、動きが制限されるため、高力ボルト7との共回りは生じないが、角形鋼管柱1の外面側において、高力ボルト7頭部が半固定状態で保持されているため、ナット5は、高力ボルト7のねじ山沿いに、ナット孔6の切断面に接触しながら無回転の状態で高力ボルト7の頭部側へ移動を始めて、図4(b)のホ部に示すように、座金孔9内部のナット5側に保持されている座金8は、高力ボルト7頭部の回転による、ナット5からの圧力で、図4(b)のイ部に示すように、座金8が高力ボルト頭部の方向へ移動して、添え板2のCT形鋼2bのフランジ面に当接する。従って、高力ボルト7の回転によるナット5からの締め付けでもって、高力ボルト7の軸部に引張力が発生し、その力で添え板2が角形鋼管柱1の内面壁に密着して、大きな軸力(張力)を得ることになる。また、図4(a)に示すように、ナット孔6は、ナット5より一回り大きい形状に加工を施し、座金孔9に於いても、座金8の直径より大きい円形形状に型抜加工を施して、縦・横等の空間を確保しており、ナット5と座金8は、全方向(上下左右)に、微小範囲の移動が得られる構造になっている。
【0017】
以下に実施例として、下側角形鋼管柱1aと上側角形鋼管柱1bの接合方法を図1
図2に基づき施工手順を説明する。
まず、工場において、添え板2とナット保持盤3の組み合わせについて説明する。添え板2の長方形プレ-ト2aと、CT形鋼2bのフランジ部、及びナット保持盤3に、角形鋼管柱1のボルト貫通孔4と同じピッチで、ボルト貫通孔4の加工を施して、図2に示すように、長方形プレート2aにCT形鋼2bのフランジ外面側を合わせて、溶接で固定して添え板2を製作する。次に、そのCT形鋼2bのフランジの内面側に、ナット5と座金8をセットしたナット保持盤3を組込み、溶接で固定している。
次いで、施工現場において、まず、地盤上で、図1に示すように、下側角形鋼管柱1aの上端内面壁に、添え板2の下半部を挿入し、前記角形鋼管柱1aの外面側から挿入した高力ボルト7と、ナット保持盤3のナット5で添え板を固定した下側角形鋼管柱1aを、所定位置に立設する。次に、図1に示すように、下側角形鋼管柱1aの内部から上部へ突き出ている添え板2の外側面と、上側角形鋼管柱1bの下端部の内面壁を摺り合わせて、下側へスライドしながら、上側角形鋼管柱1bの建て入れを行う。次いで、上側角形鋼管柱1bの外面側から挿入した高力ボルト7に、添え板2に設けたナット保持盤3のナット5が螺合し、下側角形鋼管柱1aと上側角形鋼管柱1bが接合されて、本発明の角形鋼管柱の継手接合構造となっている。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上説明したように本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造において、柱の外面側から挿入した高力ボルトを、柱内部のナットが螺合する方法である。従って、ボルト締結の時間が短縮されて、接合の施工性が高まり、施工コストの節減ができる。さらに、一般的な高力ボルトを用いており、高価な高力ワンサイドボルトを用いることなく、節減を可能にしている。また、現在、開発途上にある、木質ハイブリッド耐火ビルの躯体に、角形鋼管を用いることにより、合理的な設計が可能になる。従って、建設業界での社会に与える効用は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造で、下側角形鋼管柱へ添え板を挿入する過程と、上側角形鋼管柱との接合する過程の一例を示す立体説明図である。
図2】本発明に係る角形鋼管柱の継手接合構造の一例を示す図面であり、(a)は平断面図、(b)はA-A縦断面図である。
図3】本発明に係るナット保持金具の立体説明図であり、(a)はナット保持盤の立体図、(b)はナットカバー、(c)はナット拘束プレ-ト、(b)は座金拘束プレ-トの立体図である。
図4】本発明に係るナット保持盤の機能過程の一例を示す説明図であり、(a)は各部品プレートの立面孔形状図、(b)は各孔を合成したA-A縦断面図である。
図5】従来からの角形鋼管柱の継手接合工法の例を示す立体説明図である。
図6】現在、角形鋼管柱の継手接合として用いられている一例を示す立体説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 角形鋼管柱 1a下側角形鋼管柱、1b上側角形鋼管柱
2 添え板
2a 長方形プレート
2b CT形鋼
3 ナット保持盤
3a ナットカバー
3b ナット拘束プレ-ト
3c 座金拘束プレ-ト
4 ボルト貫通孔、
5 ナット
6 ナット孔
7 高力ボルト
8 座金
9 座金孔
10 スリット溝
11 座金ガイドピン
12 ピンホール
13 上側角形鋼管柱
14 下側角形鋼管柱
15 エレクションピ-ス
16 仮ボルト
17 繋ぎ板(内側)
18 繋ぎ板(外側)
19 ワンサイドボルト
























図1
図2
図3
図4
図5
図6