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特開2023-62777無線通信監視システム及び無線通信監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062777
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】無線通信監視システム及び無線通信監視方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20230427BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20230427BHJP
【FI】
H04W16/18
H04W24/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172873
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中城 那津子
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA05
5K067DD44
5K067FF16
5K067FF32
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】電波に関するノイズの状況を視覚的に示すことが可能な無線通信監視システムを提供する。
【解決手段】無線通信監視システムは、第1無線モジュールと、第2無線モジュールと、抽出部と、表示制御部と、を備える。第1無線モジュールは、観測地点において、他の機器同士の無線通信に係る通信フレームを取得する。第2無線モジュールは、観測地点において、周波数ごとの電波強度を示すスペクトルデータを取得する。抽出部は、第1無線モジュールが取得した通信フレーム、及び、第2無線モジュールが取得したスペクトルデータに基づいて、観測地点におけるノイズデータを抽出する。表示制御部は、抽出部により抽出されたノイズデータを表示部に表示させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測地点において、他の機器同士の無線通信に係る通信フレームを取得する第1無線モジュールと、
前記観測地点において、周波数ごとの電波強度を示すスペクトルデータを取得する第2無線モジュールと、
前記第1無線モジュールが取得した前記通信フレーム、及び、前記第2無線モジュールが取得した前記スペクトルデータに基づいて、前記観測地点におけるノイズデータを抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された前記ノイズデータを表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信監視システムであって、
前記抽出部は、前記第2無線モジュールが取得した前記スペクトルデータから、前記第1無線モジュールが取得した前記通信フレームに基づいて得られた電波分布を除去することにより前記ノイズデータを抽出することを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信監視システムであって、
前記第1無線モジュール及び前記第2無線モジュールは、単一の調査装置に設けられることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の無線通信監視システムであって、
前記観測地点が複数存在し、
前記表示制御部は、フロアマップを前記表示部に表示させ、
前記表示制御部は、複数の前記観測地点のそれぞれのノイズデータを前記フロアマップに重畳して前記表示部に表示させるとともに、ノイズの強さに応じて前記観測地点ごとの前記ノイズデータの表示態様を異ならせることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信監視システムであって、
前記表示制御部は、複数の前記観測地点のそれぞれに対応するアイコンを前記フロアマップに重畳して前記表示部に表示させることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信監視システムであって、
前記表示制御部は、前記アイコンの周囲の色を変化させることにより、前記ノイズデータの表示態様を変化させることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の無線通信監視システムであって、
前記第1無線モジュールは、無線アクセスポイント装置が送信した前記通信フレームの電波強度を取得し、
前記表示制御部は、前記第1無線モジュールが取得した前記通信フレームの電波強度に基づいて、前記無線アクセスポイント装置の電波強度の分布を示す電波強度マップを作成して前記表示部に表示させることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信監視システムであって、
前記電波強度マップに表示する電波強度の上限又は下限を定めるための値である表示閾値を設定する設定部を備え、
前記表示制御部は、前記設定部が設定した表示閾値に基づいて定められた電波強度の前記電波強度マップを前記表示部に表示させることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項9】
観測地点において、他の機器同士の無線通信に係る通信フレームを取得する第1取得工程と、
前記観測地点において、周波数ごとの電波強度を示すスペクトルデータを取得する第2取得工程と、
前記第1取得工程で取得した前記通信フレーム、及び、前記第2取得工程で取得した取得した前記スペクトルデータに基づいて、前記観測地点におけるノイズデータを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された前記ノイズデータを表示部に表示させる表示工程と、
を含むことを特徴とする無線通信監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、無線通信環境を監視する無線通信監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モバイル装置を用いて電波強度地図を更新するシステムを開示する。モバイル装置は、スマートポスターのNFCタグからタグデータを読み出す。モバイル装置は、アクセスポイント毎の電界強度の状況を検出し、タグデータとともに電界強度更新装置に送信する。電界強度更新装置は、タグデータに基づいてモバイル装置の位置を特定し、電界強度の状況とともに保存する。電界強度更新装置は、保存したデータを用いて電界強度地図を更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-195897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムで作成及び更新される電界強度地図を用いて電波状況を把握することは可能であるが、この電界強度地図を用いてノイズの状況を把握することができない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、電波に関するノイズの状況を視覚的に示すことが可能な無線通信監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の無線通信監視システムが提供される。即ち、無線通信監視システムは、第1無線モジュールと、第2無線モジュールと、抽出部と、表示制御部と、を備える。前記第1無線モジュールは、観測地点において、他の機器同士の無線通信に係る通信フレームを取得する。前記第2無線モジュールは、前記観測地点において、周波数ごとの電波強度を示すスペクトルデータを取得する。前記抽出部は、前記第1無線モジュールが取得した前記通信フレーム、及び、前記第2無線モジュールが取得した前記スペクトルデータに基づいて、前記観測地点におけるノイズデータを抽出する。前記表示制御部は、前記抽出部により抽出された前記ノイズデータを表示部に表示させる。
【0008】
これにより、通信フレームとスペクトルデータに基づいてノイズデータを抽出して表示することができる。その結果、ユーザは、観測地点におけるノイズの状況を視覚的に把握できる。
【0009】
前記の無線通信監視システムにおいては、前記抽出部は、前記第2無線モジュールが取得した前記スペクトルデータから、前記第1無線モジュールが取得した前記通信フレームに基づいて得られた電波分布を除去することにより前記ノイズデータを抽出することが好ましい。
【0010】
これにより、簡単な方法でノイズデータを精度良く抽出できる。
【0011】
前記の無線通信監視システムにおいては、前記第1無線モジュール及び前記第2無線モジュールは、単一の調査装置に設けられることが好ましい。
【0012】
これにより、第1無線モジュールと第2無線モジュールが別々の調査装置に設けられる場合と比較して、調査装置の数を減らすことができる。
【0013】
前記の無線通信監視システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記観測地点が複数存在する。前記表示制御部は、フロアマップを前記表示部に表示させる。前記表示制御部は、複数の前記観測地点のそれぞれのノイズデータを前記フロアマップに重畳して前記表示部に表示させるとともに、ノイズの強さに応じて前記観測地点ごとの前記ノイズデータの表示態様を異ならせる。
【0014】
これにより、ユーザは、フロアマップの位置に応じたノイズデータを直感的に把握できる。
【0015】
前記の無線通信監視システムにおいては、前記表示制御部は、複数の前記観測地点のそれぞれに対応するアイコンを前記フロアマップに重畳して前記表示部に表示させることが好ましい。
【0016】
これにより、ユーザは、観測地点を直感的に把握できる。
【0017】
前記の無線通信監視システムにおいては、前記表示制御部は、前記アイコンの周囲の色を変化させることにより、前記ノイズデータの表示態様を変化させることが好ましい。
【0018】
これにより、ユーザは、観測地点毎のノイズデータをより直感的に把握できる。
【0019】
前記の無線通信監視システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1無線モジュールは、無線アクセスポイント装置が送信した前記通信フレームの電波強度を取得する。前記表示制御部は、前記第1無線モジュールが取得した前記通信フレームの電波強度に基づいて、前記無線アクセスポイント装置の電波強度の分布を示す電波強度マップを作成して前記表示部に表示させる。
【0020】
これにより、無線通信監視システムがノイズデータを表示する機能と電波強度マップを表示する機能とを有するため、電波状況に関する様々な情報を視覚的に示すことができる。
【0021】
前記の無線通信監視システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記電波強度マップに表示する電波強度の上限又は下限を定めるための値である表示閾値を設定する設定部を備える。前記表示制御部は、前記設定部が設定した表示閾値に基づいて定められた電波強度の前記電波強度マップを前記表示部に表示させる。
【0022】
これにより、電波強度マップの使用用途に応じて閾値を設定することで、使用用途に応じた電波強度マップを表示できる。
【0023】
本発明の第2の観点によれば、以下の無線通信監視方法が提供される。即ち、無線通信監視方法は、第1取得工程と、第2取得工程と、抽出工程と、表示工程と、を含む。前記第1取得工程では、観測地点において、他の機器同士の無線通信に係る通信フレームを取得する。前記第2取得工程では、前記観測地点において、周波数ごとの電波強度を示すスペクトルデータを取得する。前記抽出工程では、前記第1取得工程で取得した前記通信フレーム、及び、前記第2取得工程で取得した前記スペクトルデータに基づいて、前記観測地点におけるノイズデータを抽出する。前記表示工程では、前記抽出工程で抽出された前記ノイズデータを表示部に表示させる。
【0024】
これにより、通信フレームとスペクトルデータに基づいてノイズデータを抽出して表示することができる。その結果、ユーザは、観測地点におけるノイズの状況を視覚的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信監視システムの構成を示すブロック図。
図2】通信フレームの電波分布を示すスペクトログラム及びスペクトル密度。
図3】スペクトルデータを示すスペクトログラム及びスペクトル密度。
図4】ノイズデータを示すスペクトログラム及びスペクトル密度。
図5】管理装置が行う処理を示すフローチャート。
図6】スペクトルデータをフロアマップに重畳表示する状態から、ノイズデータをフロアマップに重畳表示する状態に切り替えたときの画面表示例。
図7】電波強度マップに閾値を設定したときの画面表示例。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1から図3を参照して、無線通信監視システム1の構成について説明する。
【0027】
無線通信監視システム1は、無線通信環境を監視する無線通信監視方法を行うためのシステムである。本実施形態の無線通信監視システム1は、工場に設けられており、工場内の無線通信環境を監視する。ただし、無線通信監視システム1は、オフィス又は商業施設等に設けられていてもよい。
【0028】
図1に示すように、無線通信監視システム1が設けられる工場には、無線アクセスポイント装置6と、無線子機7と、産業機械8と、が設けられている。本実施形態では、工場には、複数の無線アクセスポイント装置6が設けられており、それぞれの無線アクセスポイント装置6に複数の無線子機7が接続され、各無線子機7に産業機械8が接続されている。ただし、工場に設けられる無線アクセスポイント装置6は1つであってもよい。
【0029】
無線アクセスポイント装置6は、有線通信と無線通信とを行うことができる通信機器である。無線アクセスポイント装置6は、有線によりハブ5に接続されている。ハブ5は、工場内のネットワークに接続されている。これにより、無線アクセスポイント装置6は、工場内のネットワークに接続される機器(例えば工場の管理又は指示を行う機器)と通信可能である。また、無線アクセスポイント装置6は、自機を中心として無線ネットワークを構築する。これにより、無線アクセスポイント装置6は、自機に無線で接続された機器(無線子機を備えた産業機械8)を工場内のネットワークに接続できる。無線アクセスポイント装置6が行う無線通信の規格は、例えばIEEE802.11ahであるが、異なる規格が用いられてもよい。
【0030】
無線子機7は、産業機械8を無線ネットワークに接続するための中継器である。無線子機7は、有線により産業機械8に接続されている。更に、無線子機7は、無線で無線アクセスポイント装置6に接続可能である。つまり、産業機械8は、無線子機7を介して無線アクセスポイント装置6と通信を行う。無線子機7は、中継器に限られず、無線機能を有する産業機械であってもよい。あるいは、無線子機7は、スマートフォン、タブレットデバイス、ノートPC等の情報機器であってもよい。
【0031】
図1に示すように、無線通信監視システム1は、複数の調査装置10と、管理装置20と、を備える。なお、無線通信監視システム1が備える調査装置10は、1つであってもよい。
【0032】
調査装置10は、観測地点における無線通信環境を調査するための装置である。調査装置10は、工場内に移動不能に固定されている。調査装置10が配置される位置が観測地点である。調査装置10は、第1無線モジュール11と、第2無線モジュール12と、を備える。第1無線モジュール11及び第2無線モジュール12は、それぞれ、無線通信用のアンテナ及び回路を備える。調査装置10は、第1無線モジュール11及び第2無線モジュール12を用いて、工場内の電波状況を取得する。
【0033】
本実施形態においては、調査装置10が工場内に移動不能に固定された態様について説明するが、調査装置10は、作業者による携帯が可能とされ、工場内を移動させられつつ各観測地点の電波状況を取得するものであってもよい。
【0034】
調査装置10は、2つの無線モジュールを備えるため、2種類の電波状況を同時に取得可能である。第1無線モジュール11は、工場内の無線通信に係る通信フレームを取得する(第1取得工程)。従って、第1無線モジュール11は、工場内の無線通信で用いる周波数に応じたアンテナを有するとともに、工場内の無線通信の規格に応じた回路を有する。第1無線モジュール11が取得する通信フレームは、無線アクセスポイント装置6と無線子機7の無線通信で送受信される通信フレームである。なお、第1無線モジュール11が通信フレームを取得する目的は、通信フレームの電波強度及び周波数を取得することである。従って、第1無線モジュール11は、無線アクセスポイント装置6との間で実質的にデータを送受信する必要はない。つまり、無線アクセスポイント装置6が送信する通信フレームの送信先には調査装置10が指定されていないため、調査装置10は無線アクセスポイント装置6が送信する通信フレームを傍受する。
【0035】
また、無線アクセスポイント装置6は、予め定められた周波数帯(例えば2.4GHz帯と5GHz帯)で通信を行う。また、それぞれの周波数帯の中には複数のチャンネルがあり、チャンネルに応じて周波数が異なる。つまり、第1無線モジュール11は、周波数に応じた通信フレームの電波強度の分布を取得する。電波強度の分布は、具体的には、図2に示すように、通信フレームの電波状況を示すスペクトログラム及びスペクトル密度である。スペクトログラムの横軸は周波数、縦軸は時間、色合いは強度(電波強度)を示す。スペクトル密度の横軸は周波数、縦軸は強度(電波強度)、色合いは密度(スペクトル密度)を示す。以下では、通信フレームの周波数に応じた電波強度の分布を通信フレームの電波分布と称する。本実施形態では、複数の調査装置10が設けられるため、複数の観測地点について通信フレームの電波分布が取得される。
【0036】
また、無線アクセスポイント装置6が複数の周波数帯(例えば2.4GHz帯と5GHz帯の両方)で通信を行う場合、第1無線モジュール11は、それぞれの周波数帯について個別に通信フレームを取得する。この場合、例えば2.4GHz帯の通信フレームの電波分布と、5GHz帯の通信フレームの電波分布と、が個別に作成される。
【0037】
第2無線モジュール12は、スペクトルデータを取得する(第2取得工程)。スペクトルデータとは、周波数に応じた電波強度を示すデータである。スペクトルデータは、具体的には、図3に示すようにスペクトログラム及びスペクトル密度である。スペクトルデータは、該当する周波数帯の様々な電波を含んでいる。例えばスペクトルデータが示す電波は、通信フレームに起因する電波、その他の無線通信に起因する電波、及び電磁ノイズ等が含まれる。第2無線モジュール12がスペクトルデータを取得する原理は、公知のスペクトラムアナライザと同じであるため、詳細な説明を省略する。本実施形態では、複数の調査装置10が設けられるため、複数の観測地点についてスペクトルデータが取得される。また、無線アクセスポイント装置6が複数の周波数帯で通信を行う場合、第2無線モジュール12も、それぞれの周波数帯のスペクトルデータを取得する。
【0038】
後述するように通信フレームとスペクトルデータは比較されるため、同じタイミングで通信フレームとスペクトルデータを取得することが好ましい。なお、同じタイミングとは、時間的に厳密に一致している場合だけでなく僅かな時間ズレがある場合も含む。
【0039】
調査装置10は、有線によりハブ5に接続されている。調査装置10は、第1無線モジュール11が取得した通信フレームの電波状況と、第2無線モジュール12が取得したスペクトルデータを、ハブ5を介して管理装置20に送信する。通信フレームの電波状況及びスペクトルデータには、調査装置10のIDと、調査時刻と、を対応付けることが好ましい。なお、調査装置10のIDに代えて、観測地点のIDを対応付けてもよい。
【0040】
本実施形態では、1つの調査装置10が第1無線モジュール11と第2無線モジュール12を備える。言い換えれば1つの筐体内に第1無線モジュール11と第2無線モジュール12が配置される。これに代えて、第1無線モジュール11と第2無線モジュール12がそれぞれ別の装置に設けられてもよい。
【0041】
管理装置20は、調査装置10が調査した電波状況を集計してユーザに提供する装置である。管理装置20は、PC、タブレットデバイス、スマートフォン等の汎用品であってもよいし、無線通信監視システム1のみに用いられる専用品であってもよい。管理装置20は、表示部21と、操作部22と、抽出部23と、表示制御部24と、設定部25と、を備える。また、管理装置20は、ハブ5を介して調査装置10等の機器と通信可能である。
【0042】
表示部21は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイであり、例えば工場内の電波状況に関する情報を表示可能である。操作部22は、キーボード、マウス、ハードウェアキー、タッチパネル等であり、ユーザが操作可能である。
【0043】
管理装置20は、CPU等の演算装置と、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等のストレージと、RAMと、を備える。管理装置20は、ストレージに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することで様々な機能を実現する。抽出部23、表示制御部24、及び設定部25は、これらの機能に便宜的に名称を付与したものである。抽出部23は、スペクトルデータからノイズデータを抽出する処理を行う(詳細は後述)。表示制御部24は、電波状況に関する情報を表示部21に表示させる処理を行う。設定部25は、電波状況に関する設定を登録したり読み出したりする処理を行う。
【0044】
なお、表示部21及び操作部22は管理装置20の必須の構成要素ではなく省略することもできる。この場合、管理装置20は、電波状況に関するデータの処理を行い、処理結果を外部端末(例えばタブレットデバイス又はスマートフォン等)の表示部に表示させる。また、管理装置20は、ユーザが外部端末を操作して指示した内容を受信し、ユーザの指示に応じた処理を行う。
【0045】
次に、図4から図7を参照して、管理装置20が行う処理及びそれによって表示部21に表示される画面について説明する。
【0046】
管理装置20は、第1無線モジュール11が取得した通信フレームを受信するとともに(S101)、第2無線モジュール12が取得したスペクトルデータを受信する(S102)。通信フレームとスペクトルデータを受信する順序は任意である。例えば、調査装置10が予め定められたタイミングで定期的又は不定期に、通信フレーム及びスペクトルデータを管理装置20に送信してもよい。あるいは、調査装置10は、管理装置20が要求したタイミングで、通信フレーム及びスペクトルデータを管理装置20に送信してもよい。
【0047】
次に、管理装置20の表示制御部24は、図6の上図に示すように、スペクトルデータをフロアマップに重畳して表示部21に表示させる(S103)。図6の上図には、フロアマップ41と、観測地点アイコン42と、電波レベルイメージ43と、が表示されている。
【0048】
フロアマップ41は、無線通信監視システム1が設けられる工場のマップ(例えば概略的な平面図)である。観測地点アイコン42は、フロアマップ41における観測地点の位置を示すアイコンである。観測地点の位置は予め管理装置20に記憶されている。上述したように観測地点には調査装置10が配置されているため、観測地点アイコン42は調査装置10の位置も示す。電波レベルイメージ43は、観測地点アイコン42の周囲に半透明で表示されており、対応する観測地点で取得されたスペクトルデータが示す電波強度を視覚的に示す。具体的には、電波レベルイメージ43は、対応する観測地点で取得されたスペクトルデータが示す電波強度のうち、最も強い電波強度を示す。
【0049】
電波レベルイメージ43は、観測地点アイコン42を中心とする円形であり、電波強度に関係なく形状及び大きさが一定である。電波レベルイメージ43は電波強度に応じて表示態様が異なる。本実施形態では、電波レベルイメージ43は、電波強度が強くなるほど、色の濃度が高くなる又は暖色系の色彩に近づく。なお、電波強度に応じて電波レベルイメージ43の形状又は大きさを変化させてもよい。電波レベルイメージ43に代えて又は加えて、電波強度に応じて観測地点アイコン42の表示態様を変化させてもよい。また、観測地点アイコン42と電波レベルイメージ43の何れか一方の表示を省略してもよい。また、観測地点アイコン42を選択した場合に、具体的なスペクトルデータが表示されてもよい。
【0050】
図6の上図には、設定項目及び操作項目として、表示下限ボックス31と、電波強度範囲ボックス32と、ノイズ表示ボタン33と、が表示されている。
【0051】
表示下限ボックス31は、電波レベルイメージ43をフロアマップ41に表示する条件を指定するためのボックスである。表示下限ボックス31で指定された値よりも電波強度が小さい場合は、その電波強度はフロアマップ41に表示されない。この場合、観測地点アイコン42のみが表示され、電波レベルイメージ43は表示されない。表示下限ボックス31には、表示する下限の電波強度の値(具体的にはデシベル値)を指定可能であってもよいし、表示する下限の電波強度の割合(具体的にはパーセント)を指定可能であってもよい。
【0052】
管理装置20側の処理としては、以下のとおりである。即ち、設定部25は、フロアマップ41に電波レベルイメージ43を重畳する際に表示下限ボックス31の設定値を読み出す。表示制御部24は、設定部25が読み出した設定値に基づいて、電波レベルイメージ43の表示の有無を決定し、電波レベルイメージ43を表示する場合は、電波強度に応じた表示態様により、電波レベルイメージ43を表示する。
【0053】
電波強度範囲ボックス32には、フロアマップ41に表示される電波強度の範囲と、電波強度毎の表示態様(本実施形態では表示色)と、が示されている。ユーザは、電波強度範囲ボックス32を参照しながら電波レベルイメージ43を見ることにより、それぞれの観測地点の電波強度をより具体的に把握できる。
【0054】
ノイズ表示ボタン33は、観測地点のノイズを表示するためのボタンである。ユーザは、操作部22を用いてノイズ表示ボタン33を押すことにより、ノイズの表示を管理装置20に指示できる。管理装置20は、ユーザがノイズ表示ボタン33を押したか否かを判定している(S104)。
【0055】
管理装置20は、ユーザがノイズ表示ボタン33を押したと判定した場合、スペクトルデータからノイズデータを抽出する(S105、抽出工程)。具体的には、管理装置20の抽出部23は、スペクトルデータ(図3)から通信フレームの電波分布(図2)を除去することにより、ノイズデータ(図4)を抽出する。上述したように、スペクトルデータには通信フレーム及び他の電波が含まれているので、スペクトルデータから通信フレームを除去することにより、他の電波(即ちノイズ)を抽出できる。本実施形態の通信フレームの電波分布及びスペクトルデータと同様、ノイズデータは、スペクトログラム及びスペクトル密度で記述される。なお、本実施形態とは異なる方法で、ノイズデータを抽出してもよい。例えば、取得した通信フレームに基づいて無線通信で使用される周波数と無線通信で使用されない周波数を特定する。そして、無線通信で使用されない周波数のスペクトルデータを近似的にノイズデータとしてもよい。
【0056】
次に、管理装置20は、図6の下図に示すように、ノイズデータをフロアマップに重畳して表示部21に表示させる(S106、表示工程)。ノイズデータを示す図は、スペクトルデータを示す図と類似するため、相違点のみを説明する。ノイズデータを示す図では、電波レベルイメージ43に代えてノイズレベルイメージ44が表示される。ノイズレベルイメージ44は、対応する観測地点のノイズデータが示す電波強度を視覚的に示す。具体的には、ノイズレベルイメージ44は、対応する観測地点で取得されたノイズデータが示す電波強度のうち、最も強い電波強度を示す。なお、ノイズレベルイメージ44の表示態様の詳細及び他の表示例は、上述した電波レベルイメージ43と同様である。
【0057】
スペクトルデータを示す図では、通信フレームにより電波強度が強いのか、ノイズにより電波強度が強いのかが把握できない。この点、ノイズデータを示す図では、通信フレームによる電波強度の影響が除去されているので、ノイズにより電波強度が強い観測地点を的確に把握できる。これにより、ノイズの発生原因を特定して対策する作業が容易になる。
【0058】
また、無線アクセスポイント装置6が複数の周波数帯で通信を行う場合、周波数帯ごとにスペクトルデータを示す図とノイズデータを示す図が作成される。例えば、無線アクセスポイント装置6が2.4GHz帯と5GHz帯で通信を行う場合、2.4GHz帯のスペクトルデータを示す図と、5GHz帯のスペクトルデータを示す図と、がそれぞれ個別に作成され、ユーザの指示により表示を切替可能である。ノイズデータを示す図に関しても、2.4GHz帯のノイズデータを示す図と、5GHz帯のノイズデータを示す図と、がそれぞれ個別に作成され、ユーザの指示により表示を切替可能である。
【0059】
次に、電波強度マップについて説明する。ユーザは、操作部22を操作することにより、電波強度マップを表示する表示指示を行うことができる。管理装置20は、電波強度マップの表示指示があるか否かを判定する(S107)。管理装置20は、電波強度マップの表示指示があると判定した場合、管理装置20の設定部25が閾値を読み込み(S108)、表示制御部24が電波強度マップを表示部21に表示させる(S109)。
【0060】
以下、閾値及び電波強度マップについて具体的に説明する。図7の上図には、閾値が設定されていない電波強度マップが示されている。図7の下図には、閾値が設定された電波強度マップが示されている。図7の上図及び下図には、フロアマップ41と、無線APアイコン45と、電波分布イメージ46と、が表示されている。
【0061】
無線APアイコン45は、フロアマップ41における無線アクセスポイント装置6の位置を示すアイコンである。無線アクセスポイント装置6の位置は予め管理装置20に記憶されている。電波分布イメージ46は、フロアマップ41における各位置に応じた電波強度の分布を視覚的に示す。
【0062】
電波分布イメージ46は、複数の観測地点における通信フレームの電波強度に基づいて、フリスの伝達公式を用いて算出される。フリスの伝達公式を用いて通信距離に応じた電波強度を算出する方法は公知であるため、簡単に説明する。即ち、フリスの伝達公式は、受信側の電波強度、送信側の電波強度、送信利得(無線アクセスポイント装置6のアンテナの送信利得)、受信利得(第1無線モジュール11のアンテナの受信利得)、通信距離、及び波長の関係を示す式である。詳細には、受信側の電波強度は、送信利得と受信利得に比例し、通信距離の二乗・波長の逆二乗に反比例する。なお、フリスの伝達公式は障害物の無い真空中を球状に拡散しながら広がっていくことが前提となっているが、現実の通信環境では、障害物又は反射物等が存在するため、それを考慮するために空間伝搬係数を更に用いて関係式が記述される。ここで、送信側の電波強度、送信利得、受信利得、波長は既知であり、位置が定まれば通信距離も定まる。また、観測地点では、通信フレームの電波強度(受信側の電波強度)が検出される。従って、これらの値に基づいて関係式を解くことで、観測地点における空間伝搬係数を算出できる。また、観測地点は複数存在するため、複数の地点の空間伝搬係数に基づいて、フロアマップ41全体の空間伝搬係数の分布が算出できる。また、空間伝搬係数が定まれば、受信側の電波強度を算出できるため、以上のようにして電波強度の分布が算出される。
【0063】
図7の上図及び下図には、設定項目及び操作項目として、表示閾値ボックス35と、電波強度範囲ボックス36と、が表示されている。
【0064】
表示閾値ボックス35は、電波分布イメージ46をフロアマップ41に表示する条件を指定するためのボックスである。表示閾値ボックス35で指定された値よりも電波強度が小さい場合は、その電波強度はフロアマップ41に表示されない。表示閾値ボックス35には、表示する下限の電波強度の閾値(具体的にはデシベル値)を指定可能であってもよいし、表示する下限の電波強度の割合の閾値(具体的にはパーセント)を指定可能であってもよい。
【0065】
管理装置20側の処理としては、以下のとおりである。即ち、設定部25は、フロアマップ41に電波分布イメージ46を重畳する際に表示閾値ボックス35の表示閾値を読み出す。表示制御部24は、設定部25が読み出した表示閾値以下の電波強度は、電波分布イメージ46として表示しない。
【0066】
表示閾値を設定することにより、図7の下図に示すように、電波分布イメージ46の一部が非表示となる。例えば、電波強度が弱い位置に無線アクセスポイント装置6を追加することを検討する場合、電波強度が弱い値を表示閾値として設定することにより、ユーザは、無線アクセスポイント装置6の追加が必要な位置を一見して把握できる。なお、表示閾値を設定しないモードを通常モードとし、表示閾値を設定したモードをアクセスポイント設置検討モードとしてもよい。これにより、ユーザにとって分かり易いように表示閾値に関する機能を提供できる。
【0067】
本実施形態の表示閾値は、電波分布イメージ46として表示される下限の電波強度を定めるための値である。これに代えて、表示閾値は、電波分布イメージ46として表示される上限の電波強度を定めるための値であってもよい。この場合、電波分布イメージ46は、表示閾値以下又は表示閾値未満の電波強度の分布を示す。つまり、無線アクセスポイント装置6の追加を検討する場合、電波分布イメージ46が描画されている位置に無線アクセスポイント装置6を追加することを検討すればよい。
【0068】
電波強度範囲ボックス36には、フロアマップ41に表示される電波強度の範囲と、電波強度毎の表示態様(本実施形態では表示色)と、が示されている。ユーザは、電波強度範囲ボックス36を参照しながら電波分布イメージ46を見ることにより、それぞれの観測地点の電波強度及びその範囲をより具体的に把握できる。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態の無線通信監視システム1は、第1無線モジュール11と、第2無線モジュール12と、抽出部23と、表示制御部24と、を備える。第1無線モジュール11は、観測地点において、他の機器同士の無線通信に係る通信フレームを取得する。第2無線モジュール12は、観測地点において、周波数ごとの電波強度を示すスペクトルデータを取得する。抽出部23は、第1無線モジュール11が取得した通信フレーム、及び、第2無線モジュール12が取得したスペクトルデータに基づいて、観測地点におけるノイズデータを抽出する。表示制御部24は、抽出部23により抽出されたノイズデータを表示部21に表示させる。
【0070】
これにより、通信フレームとスペクトルデータに基づいてノイズデータを抽出して表示することができる。その結果、ユーザは、観測地点におけるノイズの状況を視覚的に把握できる。
【0071】
本実施形態の無線通信監視システム1において、抽出部23は、第2無線モジュール12が取得したスペクトルデータから、第1無線モジュール11が取得した通信フレームに基づいて得られた電波分布を除去することによりノイズデータを抽出する。
【0072】
これにより、簡単な方法でノイズデータを精度良く抽出できる。
【0073】
本実施形態の無線通信監視システム1において、第1無線モジュール11及び第2無線モジュール12は、単一の調査装置10に設けられる。
【0074】
これにより、第1無線モジュールと第2無線モジュールが別々の調査装置に設けられる場合と比較して、調査装置の数を減らすことができる。
【0075】
本実施形態の無線通信監視システム1において、観測地点は複数存在する。表示制御部24は、フロアマップ41を表示部21に表示させる。表示制御部24は、複数の観測地点のそれぞれのノイズデータをフロアマップ41に重畳して表示部21に表示させるとともに、ノイズの強さに応じて観測地点ごとのノイズデータの表示態様を異ならせる。
【0076】
これにより、ユーザは、フロアマップの位置に応じたノイズデータを直感的に把握できる。
【0077】
本実施形態の無線通信監視システム1において、表示制御部24は、複数の観測地点のそれぞれに対応する観測地点アイコン42をフロアマップ41に重畳して表示部21に表示させる。
【0078】
これにより、ユーザは、観測地点を直感的に把握できる。
【0079】
本実施形態の無線通信監視システム1において、表示制御部24は、観測地点アイコン42の周囲の色を変化させることにより、ノイズデータの表示態様を変化させる。
【0080】
これにより、ユーザは、観測地点毎のノイズデータをより直感的に把握できる。
【0081】
本実施形態の無線通信監視システム1において、第1無線モジュール11は、無線アクセスポイント装置6が送信した通信フレームの電波強度を取得する。表示制御部24は、無線アクセスポイント装置6が取得した通信フレームの電波強度に基づいて、無線アクセスポイント装置6の電波強度の分布を示す電波強度マップを作成して表示部21に表示させる。
【0082】
これにより、無線通信監視システムがノイズデータを表示する機能と電波強度マップを表示する機能とを有するため、電波状況に関する様々な情報を視覚的に示すことができる。
【0083】
本実施形態の無線通信監視システム1は、電波強度マップに表示する電波強度の上限又は下限を定めるための値である表示閾値を設定する設定部25を備える。表示制御部24は、設定部25が設定した表示閾値に基づいて定められた電波強度の電波強度マップを表示部21に表示させる。
【0084】
これにより、電波強度マップの使用用途に応じて閾値を設定することで、使用用途に応じた電波強度マップを表示できる。
【0085】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0086】
上記実施形態の管理装置20が行う処理の一部を、調査装置10又は別の装置が行ってもよい。
【0087】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、ノイズデータの表示指示を受ける前にノイズデータを抽出しておいてもよい。
【0088】
上記実施形態では、表示制御部24はノイズデータをフロアマップに重畳して表示するが、ノイズデータを単独で表示部21に表示させてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 無線通信監視システム
10 調査装置
11 第1無線モジュール
12 第2無線モジュール
20 管理装置
21 表示部
22 操作部
23 抽出部
24 表示制御部
25 設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7