(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062784
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、その積層体および硬化物、ならびにその硬化物を有する透明材料
(51)【国際特許分類】
G03F 7/032 20060101AFI20230427BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20230427BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230427BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G03F7/032
G03F7/027 515
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K1/03 610P
H05K1/03 610R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172883
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】舟越 千弘
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AC33
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC54
2H225AC63
2H225AC65
2H225AD06
2H225AD07
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AF18P
2H225AF71P
2H225AN39P
2H225AN61P
2H225AN62P
2H225AN86P
2H225AP10P
2H225AP11P
2H225BA20P
2H225CA13
2H225CA30
2H225CB05
2H225CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】透明材料、特に5Gを採用したスマートフォンまたはカーナビの透明アンテナ用材料として有用な、良好な解像性、良好な耐めっき性、適切な透過率、抑制されたヘーズ値および水蒸気透過率を併せ持った硬化物を形成し得る感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)不飽和二重結合を有する化合物と、(D)熱硬化性樹脂と、(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーとを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物から得られる硬化物の膜厚20μmにおける波長550nmの全光線透過率と波長430nmの全光線透過率との比の値が0.90以上1.15未満の範囲にあり、前記硬化物についての波長550nmのヘーズ値が0.0%超2.0%未満の範囲にある、感光性樹脂組成物、及びその硬化物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂と、
(B)光重合開始剤と、
(C)不飽和二重結合を有する化合物と、
(D)熱硬化性樹脂と、
(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーと
を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物から得られる硬化物の膜厚20μmにおける波長550nmの全光線透過率と波長430nmの全光線透過率との比の値が0.90以上1.15未満の範囲にあり、
前記硬化物についての波長550nmのヘーズ値が0.0%超2.0%未満の範囲にある
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、酸無水物の付加反応によるカルボキシル基を有する樹脂であることを特徴とする、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物と、を反応させて得られるアミドイミド樹脂を含むことを特徴とする、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)熱硬化性樹脂が、ガードナー色数5以下のエポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(F)20℃以上70℃未満で液状である熱硬化触媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を、フィルム上に塗布、乾燥させて得られた樹脂層を有することを特徴とする、感光性樹脂積層体。
【請求項7】
請求項1~5のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物、または請求項6に記載の感光性樹脂積層体の樹脂層を硬化してなることを特徴とする、硬化物。
【請求項8】
請求項7記載の硬化物の膜厚100μmにおける水蒸気透過率が10g/m2/day未満であることを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7記載の硬化物を備えてなることを特徴とする、透明アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、その積層体および硬化物、ならびにその硬化物を有する透明材料、例えば、カーナビまたはスマートフォン等の透明アンテナ用の透明保護材料に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、高速かつ大容量のデータ通信が求められているという観点から、従来の4G(第4世代移動通信システム)に代わる、あるいは4Gと共存し得る移動通信システムとして、5G(第5世代移動通信システム)が注目を浴びつつある。
5Gは4Gと比較して、通信速度および容量が大幅に向上しているという利点を有しているものの、その一方で、5Gを採用した回路の複雑さ故に、例えばスマートフォンまたはカーナビのような製品のアンテナに採用した場合に、その製品の見た目、つまり意匠性に影響を与え、製品価値を低下させてしまうおそれがある。
そこで、そういった事態を緩和するべく、一例として、保護材料を含めたアンテナ自体を超微細配線および透明材料にて構成することによりアンテナ全体の透明性を高め、それにより製品の意匠性を保持するというアイデアも生じ得る。
この点、そのような透明材料としては、種々候補が挙げられ得るが、例えば特許文献1は、アミドイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、および当該組成物から得られる硬化物が透明性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、5Gを採用したスマートフォンまたはカーナビ製品の透明アンテナを対象とした場合、当該アンテナ用の保護材料としては、電子回路用の材料が本来有するべき特性に加えて、透明アンテナ用という用途および種々の気体からの電子回路の保護という観点から、高い透明性および高いガスバリア性をも必要とされる。より具体的には、かような材料には、良好な解像性、良好な耐めっき性、適切な透過率、抑制されたヘーズ値および水蒸気透過率を併せ持つことが望まれる。
【0005】
この点について、上記特許文献1に記載の技術による樹脂組成物は、プリント配線基板用、あるいは半導体パッケージ基板用のソルダーレジストの材料として有用であることを記載するにとどまり、5Gの採用を前提とした製品の透明アンテナ用材料、および当該材料として充足すべき特性を付与し得る樹脂組成物を具体的に提案するものではない。
【0006】
そこで、本発明は、透明材料、特に5Gを採用したスマートフォンまたはカーナビの透明アンテナ用材料として有用な、良好な解像性、良好な耐めっき性、適切な透過率、抑制されたヘーズ値および水蒸気透過率を併せ持った硬化物を形成し得る感光性樹脂組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして本発明者の鋭意検討の結果、上記課題は、
(A)カルボキシル基含有樹脂と、
(B)光重合開始剤と、
(C)不飽和二重結合を有する化合物と、
(D)熱硬化性樹脂と、
(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーと
を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物から得られる硬化物の膜厚20μmにおける波長550nmの全光線透過率と波長430nmの全光線透過率との比の値が0.90以上1.15未満の範囲にあり、
前記硬化物についての波長550nmのヘーズ値が0.0%超2.0%未満の範囲にある
感光性樹脂組成物によって、解決され得ることが見出された。
このうち本発明の好ましい態様は、(A)カルボキシル基含有樹脂が、酸無水物の付加反応によるカルボキシル基を有する樹脂であることを特徴とする、感光性樹脂組成物に関する。
また本発明の別の好ましい態様は、(A)カルボキシル基含有樹脂が、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物と、を反応させて得られるアミドイミド樹脂を含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物に関する。
また本発明のさらに別の態様は、(D)熱硬化性樹脂が、ガードナー色数5以下のエポキシ樹脂であることを特徴とする、感光性樹脂組成物に関する。
さらにまた、本発明のより好ましい態様は、(F)20℃以上70℃未満で液状である熱硬化触媒をさらに含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物に関する。
さらに別の本発明の態様は、上記の感光性樹脂組成物を、フィルム上に塗布、乾燥させて得られた樹脂層を有することを特徴とする、感光性樹脂積層体にも関する。
さらに別の本発明の態様は、上記の感光性樹脂組成物、または感光性樹脂積層体の樹脂層を硬化してなることを特徴とする、硬化物、および当該硬化物を備えてなることを特徴とする、透明アンテナにも関する。
またより好ましい本発明の態様は、上記の硬化物の膜厚100μmにおける水蒸気透過率が10g/m2/day未満であることを特徴とする、感光性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化物は、良好な解像性および良好な耐めっき性を示すだけでなく、適切な透過率比、抑制されたヘーズ値および水蒸気透過率をも併せ持つ。そのため、電子回路の透明材料、とりわけ、5Gに対応したスマートフォンやカーナビなどの製品の透明アンテナ用の透明保護材料として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記のとおり、とりわけ、得られた硬化物を、5Gに対応した製品の透明アンテナ用の透明材料として用いることを前提としている。そのため、硬化物の透明性が一定の水準を充足するように、本発明の感光性樹脂組成物の成分組成が定められる。
本発明に係るそのような硬化物の透明性は、具体的には、当該硬化物の膜厚20μmにおける波長550nmの全光線透過率と波長430nmの全光線透過率との比の値(波長550nmの全光線透過率/波長430nmの全光線透過率;以下、単に「全光線透過率比」ともいう)が0.90以上1.15未満の範囲にあり、なおかつ、当該硬化物についての波長550nmのヘーズ値が0.0%超2.0%未満の範囲となるような水準である。
全光線透過率比を上記数値範囲内に規定することによって、硬化物の黄色味を抑えることができる。また、ヘーズ値を上記数値範囲内に規定することによって、硬化物の曇り度を抑えることができる。
このような全光線透過率は、例えば、積分球装置を用いたISO13468に準じて測定することができる。
また、ヘーズ値は、例えば、積分球装置を用いたISO14782に準じて測定することができる。
【0010】
さらに、本発明に係る感光性樹脂組成物は、回線保護の観点から、その硬化物が高いガスバリア性を達成するように組成される。言い換えると、本発明に係る感光性樹脂組成物は、その硬化物がより抑制された水蒸気透過率を有するように組成されるのが好ましい。より具体的には、当該硬化物の、膜厚100μmにおける水蒸気透過率が、10g/m2/day未満であることが好ましい。
このような水蒸気透過率は、例えば、JIS Z0208法に従って測定することができる。
【0011】
以下、そのような本発明の感光性樹脂組成物の組成成分について説明する。
【0012】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物には、露光及びアルカリ現像を用いた回路パターン形成のために、樹脂成分としてカルボキシル基が導入されたものが採用される。さらに、本発明の目的および用途の観点から、透明性が高く、且つガスバリア性が優れた構造のものが選定されなければならない。
そのような(A)カルボキシル基含有樹脂の例として、本発明においては、酸無水物の付加反応によるカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。さらにこのうち、特に透明性に優れたアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。このような、より好ましい(A)カルボキシル基含有樹脂は、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物とを反応させて得られるアミドイミド樹脂を含む。
【0013】
[脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート]
脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、線状脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート、脂環式構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0014】
線状脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、例えば、HDI3N(ヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HTMDI3N(トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート)等が挙げられる。これらは併用しても単独で用いても良い。
【0015】
脂環式構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、例えば、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HTDI3N(水添トリレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HXDI3N(水添キシレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート)、NBDI3N(ノルボルナンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HMDI3N(水添ジフェニルメタンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート)等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いる、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、特にTgが高く熱的物性に優れる硬化膜(硬化物)が得られることから、脂環式構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートが好ましく、中でもイソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネートが好ましい。
【0017】
脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート中の脂環式構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートの含有率は、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートの質量を基準として50~80質量%が、Tgが高く熱的物性に優れる硬化膜(硬化物)が得られることから好ましく、80~100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0018】
また、(A)カルボキシル基含有樹脂の溶剤溶解性を損なわない範囲で、上記イソシアネート化合物と各種ポリオールとのウレタン化反応によって得られるアダクト体も使用できる。
【0019】
[脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物]
本発明で用いる(A)カルボキシル基含有樹脂は、上記のイソシアヌレート型ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物から直接イミド結合を形成させることにより、ポリアミック酸中間体を経た合成と比較して、材料の安定性、再現性および溶解性が良好で、透明性に優れるアミドイミド樹脂を合成できる。本発明では、特に、(A)カルボキシル基含有樹脂の褐色化を抑えて透明性を高めるため、分子内に脂肪族構造を有するトリカルボン酸が好ましく用いられる。
【0020】
前記脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物としては、例えば、線状脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物、脂環式構造を有するトリカルボン酸無水物等が挙げられる。線状脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物としては、例えば、プロパントリカルボン酸無水物等が挙げられる。脂環式構造を有するトリカルボン酸無水物としては、例えば、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキサントリカルボン酸無水物、シクロヘキセントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0021】
脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物の中でも、透明性に加え、Tgが高く熱的物性に優れる硬化膜(硬化物)が得られることから、脂環式構造を有するトリカルボン酸無水物が好ましく、さらにイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物が脂環式構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートであり、かつ前記トリカルボン酸無水物が脂環式構造を有するトリカルボン酸無水物であることがさらに好ましい。
脂環式構造を有するトリカルボン酸無水物の例としては、シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられる。これらを1種又は2種以上を用いることが可能である。また場合により、2官能のジカルボン酸化合物、例えばアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの酸無水物等を併用することも可能である。
【0022】
前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えば、シクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物、シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸-3,5-無水物、シクロヘキサン-1,2,3-トリカルボン酸-2,3-無水物等が挙げられる。中でも、透明性に加え、溶剤溶解性に優れるアミドイミド樹脂となり、Tgが高く熱的物性に優れる硬化膜(硬化物)が得られることからシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物が好ましい。
【0023】
前記トリカルボン酸無水物のカルボン酸成分とポリイソシアネート中のイソシアネート成分とが反応すると、イミド及びアミドが形成され、アミドイミド樹脂となる。また、ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物とを反応させる際に、トリカルボン酸無水物のカルボン酸成分を残すような割合でトリカルボン酸無水物とポリイソシアネートとを反応させると、得られるポリアミドイミド樹脂はカルボキシ基を有する。このカルボキシ基は、後述する本発明の感光性樹脂組成物中に含まれる(D)熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂のエポキシ基等の重合性基と反応し、硬化物の架橋構造を形成する。尚、反応速度はイミド化が速いため、トリカルボン酸とトリイソシアネートとの反応でも、トリカルボン酸は無水酸のところで選択的にイミドを形成する。
【0024】
脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートと脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物とは、前記脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数(N)と、脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物のカルボキシ基のモル数(M1)及び酸無水物基モル数(M2)の合計のモル数との比〔(M1)+(M2))/(N)〕が1.1~3となるように反応させるのが、反応系中の極性が高くなり反応が潤滑に進行する、イソシアネート基が残存せず、得られるポリイミド樹脂の安定性が良好である、トリカルボン酸無水物の残存量も少なく再結晶等の分離の問題も起こりにくい等の理由により、好ましい。中でも1.2~2がより好ましい。なお、本発明において酸無水物基とは、カルボン酸2分子が分子内脱水縮合して得られた-CO-O-CO-基を指す。
【0025】
イミド化反応は、溶剤中あるいは無溶剤中で、脂肪族構造を有するイソシアネートの1種類以上と、トリカルボン酸無水物の1種以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは50℃~250℃、特に好ましくは70℃~180℃である。このような反応温度にすることにより、反応速度が早くなり、且つ、副反応や分解等が起こりにくい効果を奏する。反応は、脱炭酸を伴いながら酸無水物基とイソシアネート基がイミド基を形成する。反応の進行は、赤外スベクトルや、酸価、イソシアネート基の定量等の分析手段により追跡することができる。赤外スペクトルでは、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が反応とともに減少し、さらに1860cm-1と850cm-1に特性吸収を有する酸無水物基が減少する。一方、1780cm-1と1720cm-1にイミド基の吸収が増加する。反応は、目的とする酸価、粘度、分子量等を確認しながら、温度を下げて終了させても良い。しかしながら、経時の安定性等の面からイソシアネート基が消失するまで反応を続行させることがより好ましい。また、反応中や反応後は、合成される樹脂の物性を損なわない範囲で、触媒、酸化防止剤、界面活性剤、その他溶剤等を添加してもよい。
【0026】
かような(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、70~210KOHmg/gであることが好ましく、90~190KOHmg/gであることが特に好ましい。70~210KOHmg/gであれば、硬化物性として優れた性能を発揮する。
また、(A)カルボキシル基含有樹脂は、前記した窒素原子及び硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤に溶解するアミドイミド樹脂であることが好ましい。このようなアミドイミド樹脂の例示としては、分岐型構造を有し、樹脂の酸価が60KOHmg/g以上である分岐型アミドイミド樹脂が挙げられる。
【0027】
(A)カルボキシル基含有樹脂の数平均分子量は、他の樹脂成分との相溶性をより良くするという観点で、小さい数平均分子量、例えば500~1000の数平均分子量が好ましく、700~900の数平均分子量がより好ましい。
また、本発明の感光性樹脂組成物中の(A)カルボキシル基含有樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、25~65質量%が好ましく、35~55質量%がより好ましい。
【0028】
[(B)光重合開始剤]
本発明の感光性樹脂組成物の(B)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもできる。
例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のビスアシルホスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド類;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(B)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、1~10質量%であることが好ましい。(B)光重合開始剤の含有量が、感光性樹脂組成物の全固形分に対して上記範囲内にあれば、得られる硬化物の良好な表面硬化性と良好な解像性を両立することができる。
【0030】
[(C)不飽和二重結合を有する化合物]
(C)不飽和二重結合を有する化合物は、活性エネルギー線の照射により光硬化して、本発明の感光性樹脂組成物をアルカリ水溶液に不溶化し、または不溶化を助けることができる。このような化合物としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが使用でき、具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加体、プロピレンオキサイド付加体、もしくはε-カプロラクトン付加体などの多価アクリレート類、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート等の2官能アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル) イソシアヌレートトリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオイサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の4官能アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート等の5官能アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能アクリレート、フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加体もしくはプロピレンオキサイド付加体などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;ジシクロペンタジエンジアクリレートなどのジシクロペンタジエン骨格を有するアクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくとも何れか1種などを挙げることができる。
【0031】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物等を挙げることができる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。上記のような分子中にエチレン性二重結合を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
また、(C)不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、形成する硬化膜(硬化物)の性質および感度の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、およそ1~30質量%の範囲が好ましく、5~15質量%の範囲がより好ましい。
【0033】
[(D)熱硬化性樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物には、原則的にはさらに耐熱性を向上させるために(D)熱硬化性樹脂が含有され得る。
(D)熱硬化性樹脂としては、例えば、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂等分子中に2個以上の環状エーテル基および/または環状チオエーテル基、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物等1分子内に2個以上のイソシアネート基、またはブロック化イソシアネート基を有する化合物、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミン樹脂とその誘導体、ビスマレイミド、オキサジン、シクロカーボネート化合物、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0034】
このうち多官能性エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂にその硬化剤を配合したものが挙げられる。かかるエポキシ樹脂はいずれか1種を使用するか2種以上を併用してもよい。また、かかるエポキシ樹脂は反応性の観点から、エポキシ当量が95~1000の範囲のものが好適である。
【0035】
ここで、上記のとおり本発明において、感光性樹脂組成物から得られる硬化物は、高い透明性を必要とする。そのため、硬化物の色が濃くなることを抑制するために、(D)熱硬化性樹脂として好ましくは、ガードナー色数が5以下のエポキシ樹脂より選択される。エポキシ樹脂のガードナー色数を5以下に抑制することによって、透明材料、とりわけスマートフォン用の又はカーナビ用の透明アンテナの保護材料として適した硬化物が得られるとともに、解像性をも良好となる。
なお、ガードナー色数は、JIS K6901に準拠して計測することができる。
【0036】
ガードナー色数が5以下のエポキシ樹脂としては、例えば、JER828(エポキシ当量190:三菱ケミカル(株)製)、JER834(エポキシ当量250:三菱ケミカル(株)製)、JER1001(エポキシ当量475:三菱ケミカル(株)製)、JER806(エポキシ当量165:三菱ケミカル(株)製)、JER152(エポキシ当量175:三菱ケミカル(株)製)、JER154(エポキシ当量178:三菱ケミカル(株)製)、EPICLON840(エポキシ当量185:DIC(株)製)、EPICLON850(エポキシ当量189:DIC(株)製)、EPICLON1050(エポキシ当量475:DIC(株)製)、EPICLON830(エポキシ当量173:DIC(株)製)、EPICLON N-660(エポキシ当量208:DIC(株)製)、EPICLON N-695(エポキシ当量215:DIC(株)製)、EPICLON N-730A(エポキシ当量176:DIC(株)製)、EPICLON N-770(エポキシ当量188:DIC(株)製)、EOCN-1020(エポキシ当量199:日本化薬(株)製)、EOCN-104S(エポキシ当量218:日本化薬(株)製)、EPPN-201(エポキシ当量190:日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0037】
上記の(D)熱硬化性樹脂は、硬化物の良好な硬度、耐熱性、電気絶縁性および現像性の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、5~45質量%の割合で使用するのが好ましく、15~35質量%がより好ましい。
【0038】
[(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラー]
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)フィラーを含有していることにより、得られる硬化物のガスバリア性が高められる。また他方では、当該硬化物の透明性が併せて高く維持されなければならない。つまり、ガスバリア性と透明性とを両立させなければならないという観点から、本発明で用いられる(E)フィラーとしては、その平均粒子径が120nm以下であるものが好適に用いられる。(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーを用いることにより、硬化物のヘーズ値を抑える一方で、水蒸気透過率をも抑えることができ、もって、硬化物のガスバリア性と透明性とを両立させることができる。
【0039】
(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーとして具体的には、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、ノイブルグ珪土、有機ベントナイト等の非金属フィラーや、銅、金、銀、パラジウム、シリコン等の金属フィラーを挙げることができる。
本発明の感光性樹脂組成物においては、これらフィラーは単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0040】
これらのうち、低い体積膨張性と印刷性に優れるシリカや、低い体積膨張性と研磨性に優れる炭酸カルシウムが好適である。
シリカはとしては、非晶質、結晶のいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。特に非晶質(溶融)シリカが好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、天然の重質炭酸カルシウム、合成の沈降炭酸カルシウムのいずれであってもよい。
【0041】
このような無機粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、中空状、不定形状、六角状、キュービック状、薄片状等が挙げられるが、フィラーの高充填の観点から球状が好ましい。
【0042】
上記のとおり、(E)フィラーとしては平均粒子径が120nm以下のものが好ましいが、より好ましいのは、平均粒子径が100nm以下のものであり、さらに好ましくは、50nm以下のものであり、最も好ましくは15nm以下のものである。硬化物の透明性の観点から、原則として粒子径は小さいほど好ましいが、実際的には、製造効率の観点から、その平均粒子径の下限は、1nm以上が好ましい。また、平均粒子径が1nm以上であれば、比表面積が小さくフィラー同士の凝集作用の効果により良好に分散し、フィラーの充填量を増やすことも容易となる。
なお、平均粒子径とは、平均一次粒子径を意味する。平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置と動的光散乱式粒子径分布測定装置により測定することができる。レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置としてはマイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII、動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151が挙げられる。
【0043】
(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーは、表面処理された無機フィラーであることがより好ましい。表面処理としては、カップリング剤による表面処理や、アルミナ処理等の有機基を導入しない表面処理がされていてもよい。そのような表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有するカップリング剤等で機フィラーの表面を処理すればよい。
【0044】
表面処理としては、カップリング剤による表面処理であることが好ましい。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、予め無機フィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、(E)フィラーに対するカップリング剤の処理量は、例えば、0.1~10質量%、好ましくは0.5~10質量%である。
【0045】
硬化性反応基としては熱硬化性反応基が好ましい。熱硬化性反応基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。中でも、アミノ基およびエポキシ基のいずれか少なくとも1種が好ましい。なお、表面処理された無機フィラーは、熱硬化性反応基に加え、光硬化性反応基を有していてもよい。
【0046】
なお、表面処理されたフィラーは、表面処理された状態で感光性樹脂組成物からの樹脂層に含有されていればよく、前記樹脂層を形成する感光性樹脂組成物にフィラーと表面処理剤とを別々に配合して組成物中でフィラーが表面処理されてもよいが、予め表面処理したフィラーを配合することが好ましい。予め表面処理したフィラーを配合することによって、別々に配合した場合に残存しうる表面処理で消費されなかった表面処理剤によるクラック耐性等の低下を防ぐことができる。予め表面処理する場合は、溶剤や硬化性樹脂に無機フィラーを予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理したフィラーを溶剤に予備分散し、該予備分散液を組成物に配合するか、表面未処理のフィラーを溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、該予備分散液を組成物に配合することがより好ましい。
【0047】
(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーは、取り扱いの観点から、溶剤や分散剤と混合したスラリーの形態で用いるのが好ましい。
そのようなスラリーは例えば、フィラー、必要に応じてカップリング剤および溶剤を混合攪拌し、ビーズミルを用いて分散処理を行うことにより、得ることができる。
【0048】
(E)平均粒子径が120nm以下であるフィラーの含有量は、本発明の感光性樹脂組成物中の固形分の全質量に基づき、好ましくは5~35質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。10~30質量%であれば、得られる硬化物の透明性を担保できるとともに、感光性樹脂組成物を液状ペースト化することが容易であって、良好な印刷性が得られるほか、硬化物が十分に低い体積膨張性を示すとともに、良好な研磨性をも示す。
【0049】
[(F)20℃以上70℃未満で液状である熱硬化触媒]
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)熱硬化性樹脂の硬化を促進するために熱硬化触媒を含有するが、得られる硬化物の透明性を損なわないという観点から、好ましくは、(F)20℃以上70℃未満で液状である熱硬化触媒を含有するのが好ましい。粉体形態とは異なり、硬化物中でヘーズ値に悪影響を及ぼす要素が極めて低いためである。
【0050】
熱硬化触媒としては、下記列挙するもののうち、20℃以上70℃未満で液状であるものが好ましく選択される。
例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト等のリン化合物、オクチル酸スズ等の有機スズ系化合物が挙げられる。
また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-H、1,2DMZ、2MZ-A、2MA-OK、2PHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3502T、U-CAT 3503N(いずれもジメチルアミン系化合物の商品名)、U-CAT 5003(第4級ホスホニウムブロマイド系化合物の商品名)、U-CAT 5003(第4級ホスホニウムブロマイド系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 1、U-CAT SA 102、U-CAT SA 506、U-CAT 5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)、POLYCAT 8(N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンの商品名)、城北化学工業株式会社製のJP-360、JP-3CP、JP-3CP(いずれも亜リン酸エステル系化合物の商品名)、KCS-405T(オクチル酸第一スズの商品名)などが挙げられる。
【0051】
上記化合物のうち、(F)20℃以上70℃未満で液状である熱硬化触媒としてより好ましくは、例えば、U-CAT SA 1、U-CAT SA 102、U-CAT SA 506(二環式アミジン化合物およびその塩;サンアプロ社製)、POLYCAT 8(N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン;サンアプロ社製)、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、城北化学工業社製のJP-360(トリフェニルホスファイト;城北化学工業社製)、JP-3CP(トリクレジルホスファイト;城北化学工業社製)、JP-3CP(トリクレジルホスファイト;城北化学工業社製)、KCS-405T(オクチル酸第一スズ;城北化学工業社製)を挙げることができる。
【0052】
上記のとおりの(F)20℃以上70℃未満で液状である熱硬化触媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、(F)20℃以上70℃未満で液状である熱硬化触媒の含有量は、得られる硬化物の透明性の担保に加えて、感光性樹脂組成物の保存安定性および硬化物の耐熱性の観点からも、本発明の感光性樹脂組成物中の固形分の全質量に基づき、0.01~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0053】
[溶剤]
本発明においては、感光性樹脂組成物を、基板やキャリアフィルムに塗布するのに適した粘度とするために、溶剤を用いることがもちろん可能である。このような溶剤としては、主に有機溶剤が使用され、その具体例としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等である。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
[その他の成分]
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに必要とされる特性に応じて上記成分以外のその他の成分を含有させることももちろんできる。
そのような成分として、例えば、消泡剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等が挙げられる。
【0055】
[感光性樹脂積層体]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂積層体と化して用いることができる。
例えば、本発明の感光性樹脂積層体は、キャリアフィルム上に、本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。
より詳細には、本発明の感光性樹脂積層体を形成する際には、まず、本発明の感光性樹脂組成物を、上記の有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等により、キャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥することによって、樹脂層を形成させる。
キャリアフィルムに塗布する膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10~150μmの範囲、好ましくは20~60μmの範囲となるように適宜選択される。
【0056】
用いるキャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0057】
キャリアフィルム上に樹脂層を形成した後、当該樹脂層の表面に塵等が付着することを防止する等の目的で、その表面にさらに、剥離可能なカバーフィルムを積層することによって、感光性樹脂積層体を得ることができる。
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0058】
なお、本発明においては、上記カバーフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面にキャリアフィルムを積層して、感光性樹脂積層体とするものであってもよい。
すなわち、本発明において感光性樹脂積層体を製造する際の感光性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、キャリアフィルムおよびカバーフィルムのいずれを用いてもよい。
【0059】
[硬化物]
本発明はまた、上記の感光性樹脂組成物または感光性樹脂積層体の樹脂層を硬化してなる、硬化膜(硬化物)にも関する。本発明の硬化膜(硬化物)の形成は、例えば下記のとおり行うことにより為し得る。
まず感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、露光(光照射)を行うことにより、露光部(光照射された部分)が硬化する。具体的には、接触式または非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光、または、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光する。その後、未露光部をアルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、レジストパターンが形成される。さらに約100~180℃の温度に加熱して熱硬化(ポストキュア)させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性に優れた硬化膜としての硬化物を形成することができる。
【0060】
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整し、基板上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、約60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成することもできる。
【0061】
基板としては、予め銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0062】
揮発乾燥または熱硬化は、例えば、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0063】
乾燥後の感光性樹脂組成物または感光性樹脂積層体に対し、パターンを形成したフォトマスクを通して、接触式又は非接触方式により活性エネルギー線による露光を行うことができる。
このほか、感光性樹脂組成物または感光性樹脂積層体に対して、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光することにより、露光部分を光硬化させることができる。
【0064】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0065】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0066】
[電子部品]
上記したとおりの本発明の感光性樹脂組成物を用いることによって、品質、耐久性及び信頼性の高い電子部品、例えば電子回路に使用する部品、例えば、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も提供される。特に、本発明の感光性樹脂組成物は、プリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジスト、層間絶縁材、再配線層形成用絶縁材等の永久絶縁膜の材料としても好適である。
【0067】
[透明アンテナ]
本発明は特に、上記の硬化物を備えてなる、透明アンテナにも関する。即ち、本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化物は、解像性および無電解金めっき耐性に優れるだけでなく、ヘーズ値および水蒸気透過率が抑えられた特性を有する。そのため、とりわけ、スマートフォンやカーナビの透明アンテナ用材料、あるいはその保護材料としても非常に好適である。
【0068】
本発明の透明アンテナの作製法は、基本的には、プリント配線基板における回路形成法と同様である。
一例として、基板上に電解銅箔を接着し、必要に応じて化成処理をした後、感光性樹脂積層体を銅箔ラミネートする。そして感光性樹脂積層体にパターン露光及び現像を行うことによりアンテナパターンを形成する。次に、エッチング処理によりパターンの無い部分の銅箔を除去し、且つ感光性樹脂積層体を剥離させることによって、銅アンテナパターンが形成された、透明アンテナが得られる。
【0069】
以下、実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
なお、他に特に但し書きが無い限り、示される「部」および「%」は質量に基づくものとする。
【実施例0070】
<合成例1>
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)5184g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2070g(3mol)及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物1782g(9mol)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で140mgKOH/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量800であった。また、樹脂分の濃度は40重量%であった。
このようにして、酸無水物を付加したカルボキシル基含有樹脂Aの樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を樹脂溶液Aとする。
【0071】
<合成例2>
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)5184g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2070g(3mol)及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物1782g(9mol)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0g(1mol)を仕込み、115℃で4時間反応を行った。赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、エポキシ基の特性吸収である910cm-1が完全に消滅していた。この樹脂溶液の酸価は、固形分換算で117mgKOH/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量850であった。また、樹脂分の濃度は40重量%であった。
このようにして、酸無水物を付加したカルボキシル基含有樹脂Bの樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を樹脂溶液Bとする。
【0072】
<合成例3>
EDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔DIC社製EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6〕1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0mol)、アクリル酸360g(5.0mol)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物534g(3.0mol)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却後、取り出した。得られたクレゾールノボラック型カルボキシル基含有樹脂は、固形分酸価89mgKOH/g、樹脂分の濃度65%であった。
このようにして、酸無水物を付加したカルボキシル基含有樹脂Cの樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を樹脂溶液Cとする。
【0073】
<合成例4>
温度計、攪拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびメタクリル酸をmol比で1:1:2となるように仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で4時間攪拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミドを用い、グリシジルメタクリレートを、95~105℃で16時間の条件で、上記樹脂のカルボキシル基に対し20mol%付加反応させ、冷却後、取り出した。得られたエチレン性不飽和結合およびカルボキシル基を併せ持つカルボキシル基含有感光性樹脂は、固形分酸価120mgKOH/g、樹脂分の濃度は70%であった。
このようにして、酸無水物を付加していないカルボキシル基含有樹脂の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を樹脂溶液Dとする。
【0074】
<調製例1:無機フィラースラリーAの調製>
球状シリカ粒子(アドマテックス社製アドマナノYA050C、平均粒子径:50nm)30gと、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)68gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM-503)2gとを配合撹拌し、ビーズミル(BUHLER社製K-8)で回転数900rpm、ポンプ出力20%、分散時温度が40~50℃で分散処理を実施し、シリカ粒子のPMA分散体を得た。得られた分散体を無機フィラースラリーAとする。
得られた無機フィラースラリーの平均粒子径(D50)は、マイクロトラック・ベル社製のNANOTRAC FLEXを使用して測定して得られる値であり、下記表1に記載の通りである。実施例および比較例で使用した他の無機フィラースラリーの平均粒子径についても同様に測定した。
【0075】
<調製例2:無機フィラースラリーBの調製>
球状シリカ粒子(アドマテックス社製アドマナノYA100C、平均粒子径:100nm)30gと、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)68gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM-503)2gとを配合撹拌し、ビーズミル(BUHLER社製K-8)で回転数900rpm、ポンプ出力20%、分散時温度が40~50℃で分散処理を実施し、シリカ粒子のPMA分散体を得た。得られた分散体を無機フィラースラリーBとする。
【0076】
<調製例3:無機フィラースラリーCの調製>
球状シリカ粒子(アドマテックス社製アドマナノYA010C、平均粒子径:10nm)30gと、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)68gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM-503)2gとを配合撹拌し、ビーズミル(BUHLER社製K-8)で回転数900rpm、ポンプ出力20%、分散時温度が40~50℃で分散処理を実施し、シリカ粒子のPMA分散体を得た。得られた分散体を無機フィラースラリーCとする。
【0077】
<調製例4:無機フィラースラリーDの調製>
酸化チタン粒子(堺化学工業社製STR-100N、平均粒子径:15nm)30gと、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)68gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM-503)2gとを配合撹拌し、ビーズミル(BUHLER社製K-8)で回転数900rpm、ポンプ出力20%、分散時温度が40~50℃で分散処理を実施し、シリカ粒子のPMA分散体を得た。得られた分散体を無機フィラースラリーDとする。
【0078】
<調製例5:無機フィラースラリーEの調製>
球状シリカ粒子(アドマテックス社製アドマファインSO-C1、平均粒子径:250nm)30gと、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)68gと、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM-503)2gとを配合撹拌し、ビーズミル(BUHLER社製K-8)で回転数900rpm、ポンプ出力20%、分散時温度が40~50℃で分散処理を実施し、シリカ粒子のPMA分散体を得た。得られた分散体を無機フィラースラリーEとする。
【0079】
<実施例1~10、および比較例1~7>
下記表1および表2に記載の成分組成に基づき、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにより混練して分散させ、実施例1~10および比較例1~7に係る感光性樹脂組成物を調製した。
【0080】
【0081】
【0082】
表1及び表2中の各成分については、下記のとおりである。
※1 合成例1
※2 合成例2
※3 合成例3
※4 合成例4
※5 2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
※6 Irgacure OXE02(BASF社製)
※7 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
※8 エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
※9 ビスフェノールA型エポキシ樹脂:JER834(三菱ケミカル社製)(ガードナー色数≦5)
※10 ナフタレン型エポキシ樹脂:NC-7000L(日本化薬社製)(ガードナー色数>5)
※11 2-エチル-4-メチルイミダゾール(融点約40℃)
※12 U-CAT SA102(融点約40℃)(サンアプロ社製)
※13 ジシアンジアミド(融点約208℃)
※14 調製例1
※15 調製例2
※16 調製例3
※17 調製例4
※18 調製例5
※19 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0083】
<最適露光量>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して、厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した。さらに、樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、樹脂層側を銅貼り積層基板に貼り合わせて熱ラミネートしキャリアフィルムを剥がした後、フォトマスク(Stouffer社製、ステップタブレットNo.41)を介して、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で200秒間の現像を行った後、残存塗膜の段数を目視判定した。残存塗膜の段数が8段になる露光量を適正露光量とした。
【0084】
<透過率比>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して、厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した。さらに、樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、樹脂層側をガラス基板(ソーダライムガラス、板厚1.0mm)に貼り合わせて熱ラミネートし、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて最適露光量でベタ露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行った。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、120℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚20μmの硬化膜(硬化物)を形成したガラス基板を得た。
得られた硬化膜(硬化物)の全光線透過率を下記の条件にて測定した。
装置:積分球装置(日本分光社製ISN-470)が接続された紫外可視分光光度計(日本分光社製Ubest-V-570DS)
測定方法:ISO 13468に準じ測定を行った。まず、積分球装置のリファレンス側とサンプル側に装置付属の白板をセットし、紫外可視分光光度計のリファレンス側とサンプル側の両方に、感光性樹脂組成物を貼り合わせていないガラス基板(以下、ガラス基板Rとする)をセットして、ベースラインの測定を行った。次に、上記の方法で作製した硬化膜(硬化物)を形成したガラス基板を紫外可視分光光度計のサンプル側にセットし、紫外可視分光光度計のリファレンス側にはガラス基板Rをセットして全光線透過率の測定を行った。
得られた硬化膜(硬化物)の透過率比は以下の計算式で算出した。結果を上記表1および2に記載する。
透過率比=得られた硬化膜(硬化物)の波長550nmにおける全光線透過率÷得られた硬化膜(硬化物)の波長430nmにおける全光線透過率
評価方法は下記の通りである。
◎:透過率比が0.90以上1.10未満
〇:透過率比が1.10以上1.15未満
△:透過率比が1.15以上1.20未満
×:透過率比が1.20以上
【0085】
<ヘーズ値>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して、厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した。さらに、樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、樹脂層側をガラス基板(ソーダライムガラス、板厚1.0mm)に貼り合わせて熱ラミネートしキャリアフィルムを剥がした後、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて最適露光量でベタ露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行った。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、120℃で60分加熱して熱硬化させ、膜厚20μmの硬化膜(硬化物)を形成したガラス基板を得た。
得られた硬化膜(硬化物)のヘーズ値を下記の条件にて測定した。結果を表1および2に記載する。
装置:積分球装置(日本分光社製ISN-470)が接続された紫外可視分光光度計(日本分光社製Ubest-V-570DS)
測定方法:ISO 14782に準じ測定を行った。まず、積分球装置のリファレンス側とサンプル側に装置付属の白板をセットし、紫外可視分光光度計のリファレンス側とサンプル側の両方に、感光性樹脂組成物を貼り合わせていないガラス基板(以下、ガラス基板Rとする)をセットして、ベースラインの測定を行った。積分球装置のサンプル側の白板を外した後、上記の方法で作製した硬化膜(硬化物)を形成したガラス基板を紫外可視分光光度計のサンプル側にセットし、紫外可視分光光度計のリファレンス側にはガラス基板Rをセットしてヘーズ値の測定を行った。結果を上記表1および2に記載する。
評価方法は下記の通りである。
◎:ヘーズ値が0.0%超1.0%未満
〇:ヘーズ値が1.0%以上2.0%未満
△:ヘーズ値が2.0%以上4.0%未満
×:ヘーズ値が4.0%以上
【0086】
<水蒸気透過率>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成し、当該樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、樹脂層側を厚さ9μmの電解銅箔(古河電工社製)に貼り合わせて熱ラミネートし、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて最適露光量でベタ露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行った。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した。その紫外線照射された感光性樹脂組成物の樹脂層上に、新たな感光性樹脂積層体を前記と同様の方法で熱ラミネートし、最適露光量でベタ露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行った。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した。この作業を合計5回繰り返した後、120℃で60分加熱して感光性樹脂組成物の樹脂層を熱硬化させた。
このようにして厚さ100μmの硬化膜(硬化物)を電解銅箔上に形成した。次いで、この硬化膜(硬化物)付きの電解銅箔に対し、塩化第二銅340g/l、遊離塩酸濃度51.3g/lの組成のエッチング液を用いて銅箔をエッチング除去し、十分に水洗、乾燥して、厚さ100μmの硬化膜(硬化物)からなる試験片を作製した。
【0087】
水蒸気透過率は、JIS Z0208法にしたがって評価した。まず内径60mmの透湿カップの中に吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を入れた。その透湿カップの上に、上記の方法で得られた厚さ100μmの硬化膜(硬化物)を直径70mmのサイズに加工した物を乗せ、ガイドを被せた後、リングをセットした。透湿カップの周辺の溝に加熱溶融した封ろう剤を流し込み、封ろう剤の温度が室温に戻り固化することによって硬化膜(硬化物)の周辺を封かんした。このようにして得た試験体の初期の質量を測定した後、40℃×90%RHの恒温高湿槽に入れ、24時間間隔で秤量を行い、二つの連続する秤量でそれぞれ単位時間当たりの質量増加を求め、それが5%以内で一定になったときの値を用い、下記のように評価した。
〇:10g/m2/day未満
△:10g/m2/day以上100g/m2/day未満
×:100g/m2/day以上
【0088】
<解像性>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成し、当該樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、樹脂層側を銅貼り積層基板に張り付け、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて最適露光量でパターン露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行うことにより、ビアパターンを形成した。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、120℃で60分加熱して熱硬化させた。
こうして作製した基板の解像性を、電子顕微鏡を用いて観察した。ビア開口サイズを確認し、下記のように評価した。結果を表1および2に記載する。
◎:φ50um未満のビアパターンが形成できる
〇:φ50um以上φ100um未満のビアパターンが形成できる
△:φ100um以上のビアパターンが形成できる
×:開口形状が形成できない
【0089】
<無電解金めっき>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成し、当該樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、樹脂層側を銅貼り積層基板に張り付け、樹脂層およびキャリアフィルムを熱ラミネートし、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて最適露光量でパターン露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行うことにより、感光性樹脂組成物のパターンを形成した。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、120℃で60分加熱して熱硬化させた。
こうして作製した基板の硬化膜(硬化物)形成面に所定の前処理(酸性脱脂+ソフトエッチ+硫酸処理)を行い、無電解ニッケルめっき浴および無電解金めっき浴を用いて、ニッケル3μm、金0.03μmの条件で金めっきを行い、硬化膜(硬化物)の剥がれの有無やめっき液の染み込みの有無を評価した。結果を表1および2に記載する。
〇:剥がれやしみ込みが全くない。
△:僅かに剥がれやしみ込みがある。
×:剥がれやしみ込みがある。
【0090】
<透明アンテナの作製>
厚さ100μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム上に、厚さ18μm の電解銅箔を透明接着剤で接着した。電解銅箔に化成処理(低反射処理)を施した後、感光性樹脂積層体タイプのエッチングレジストを銅箔上にラミネートした。エッチングレジストにパターン露光、現像を行い、エッチングレジストにアンテナパターンを形成した。エッチングレジストのパターンが無い部分の銅箔をエッチング処理により除去した後に、エッチングレジストを剥離することで、銅アンテナパターンの形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。このアンテナパターンは正方形の網目パターンで、線幅20μm、線間ピッチが300μmであった。このようにして透明アンテナ基板を作製した。
【0091】
<目視評価>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成し、当該樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、前記透明アンテナ基板の銅アンテナパターンが形成されている側に、得られた感光性樹脂積層体を熱ラミネートし、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて最適露光量でパターン露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行うことにより、感光性樹脂組成物のパターンを形成した。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、120℃で60分加熱して熱硬化させた。
こうして作製した透明アンテナを、通常の蛍光灯を点灯した明るさの照度500ルクスの部屋の中で、黒色の「十」の字(縦10.0mm、横10.0mm、太さ1.0mm)を印刷した白色の紙の上に乗せ、「十」の字から30cmの距離から目視によって「十」の字がどのように見えるか10人により評価した。結果を表2に記載する。
〇:10人中10人紙の上の「十」の字が良く見える。
△:10人中5人紙の上の「十」の字が良く見える。
×:10人中10人紙の上の「十」の字が見えにくい。
【0092】
<ガラス貼り付け評価>
上記表1および2に記載のとおり作製した感光性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布した。これを80℃の熱風乾燥器で30分加熱乾燥して厚さ20μmの感光性樹脂組成物の樹脂層を形成し、当該樹脂層上にカバーフィルムを貼り合わせて感光性樹脂積層体を得た。その後、使用時にカバーフィルムを剥がし、前記透明アンテナ基板の銅アンテナパターンが形成されている側に、得られた感光性樹脂積層体を熱ラミネートし、高圧水銀灯を搭載した投影型露光装置(ウシオ電機社製)を用いて最適露光量でパターン露光した。キャリアフィルムを剥がした後、30℃の1%Na2CO3水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で用いて200秒間現像を行うことにより、感光性樹脂組成物のパターンを形成した。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、120℃で60分加熱して熱硬化させた。
こうして作製した透明アンテナを、日東電工社製透明両面粘着フィルムHJ-3160Wを用いて照度の異なる二つの部屋を区切る窓ガラスに貼り付け、一方の部屋は通常の蛍光灯を点灯した明るさの照度300ルクスとし、他方の部屋は、通常の蛍光灯を点灯した明るさの照度3000ルクスとして、窓から3m離れた場所から透明アンテナを10人により観察した。結果を表1および2に記載する。
◎:10人中10人一方の部屋側から見ても他方の部屋側から見てもくもりや色の差異を感じない
〇:10人中8人~9人一方の部屋側から見ても他方の部屋側から見てもくもりや色の差異を感じない。
△:10人中3人~7人一方の部屋側から見ても他方の部屋側から見てもくもりや色の差異を感じない。
×:10人中2人以下一方の部屋側から見ても他方の部屋側から見てもくもりや色の差異を感じない。