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特開2023-62790呼吸用保護具、呼吸用保護システム、及び管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062790
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】呼吸用保護具、呼吸用保護システム、及び管理方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/02 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
A62B18/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172894
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000179926
【氏名又は名称】山本光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 啓樹
(72)【発明者】
【氏名】阪本 憲一
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185CA03
2E185CB09
2E185CB16
2E185DA02
(57)【要約】
【課題】作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも適切に行えるように補助できる呼吸用保護具、呼吸用保護システム、及び管理方法を提供する。
【解決手段】
本願の呼吸用保護具1は、作業者の顔面を覆う保護具本体10と、エアフィルタ21、及び電動ファン22を含むファンユニット20と、検出部30と、第1制御部40と、第1通信部50とを具備する。検出部30は、作業者の作業環境、作業者の行動状態、及び電動ファン22の作動状態の少なくとも1つに関する物理量を検出する。第1制御部40は、検出部30の検出結果に基づいて電動ファン22を制御する。第1通信部50は、検出部30の検出結果を示す第1情報、又は第1制御部40の制御対象への操作量に関する第2情報を外部装置に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の顔面を覆う保護具本体と、
電動ファン、及びエアを濾過するエアフィルタを含むファンユニットであって、前記電動ファンは、ホース等の通風手段を介し、前記エアフィルタによって濾過された前記エアである濾過エアを前記保護具本体に送風する、ファンユニットと、
前記ファンユニットに設けられており、前記作業者の作業環境、前記作業者の行動状態、及び前記電動ファンの作動状態の少なくとも1つに関する物理量を検出する検出部と、
前記ファンユニットに設けられており、前記検出部の検出結果に基づいて前記電動ファンを制御する第1制御部と、
前記ファンユニットに設けられており、情報出力手段を有する外部装置に前記検出部の検出結果を示す第1情報、又は前記第1制御部の制御対象への操作量に関する第2情報を送信する第1通信部
とを具備する、呼吸用保護具。
【請求項2】
前記検出部は、前記通風手段を介し前記保護具本体に送風される前記濾過エアの供給風量を検出する風量センサを含み、
前記第1制御部は、前記風量センサの検出結果に基づいて、前記濾過エアの前記供給風量が所定の基準風量となるように、前記電動ファンに供給される電力量を調節し、
前記第1通信部は、前記第1制御部によって調節される前記電力量の調節量を示す前記第2情報を前記エアフィルタの交換時期に関係する交換時期関係情報として前記外部装置に送信する、請求項1に記載の呼吸用保護具。
【請求項3】
少なくとも1つのバッテリを有し、前記電動ファンに電力を供給する電源部を更に具備し、
前記検出部は、前記少なくとも1つのバッテリの端子電圧を検出する電圧センサを含み、
前記第1通信部は、前記電圧センサによって検出される前記端子電圧を示す前記第1情報を前記少なくとも1つのバッテリの残量に関係する残量関係情報として前記外部装置に送信する、請求項1又は請求項2に記載の呼吸用保護具。
【請求項4】
前記検出部は、前記作業者の移動に伴う前記ファンユニットについての加速度を検出する加速度センサを含み、
前記第1通信部は、前記加速度センサによって検出される前記加速度を示す前記第1情報を前記作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを判定するための行動不能判定情報として前記外部装置に送信する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の呼吸用保護具。
【請求項5】
前記検出部は、前記作業者の前記作業環境における気温を検出する温度センサを含み、
前記第1通信部は、前記温度センサによって検出される前記気温を示す前記第1情報を暑さ指数の算出に関係する暑さ指数関係情報として前記外部装置に送信する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の呼吸用保護具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の呼吸用保護具と、
前記第1通信部によって送信される前記第1情報、又は前記第2情報を受信する第2通信部、前記作業者の作業環境、前記作業者の行動状態、及び前記電動ファンの作動状態のうちの少なくとも1つに関する第3情報を視覚的情報又は聴覚的情報として出力する、前記情報出力手段としての情報出力部、及び前記第2通信部が受信した前記第1情報、又は前記第2情報に基づいて、前記第3情報を出力するように前記情報出力部を制御する第2制御部を有する、前記外部装置としての管理装置
とを具備する呼吸用保護システム。
【請求項7】
前記検出部は、前記通風手段を介し前記保護具本体に送風される前記濾過エアの供給風量を検出する風量センサを含み、
前記第1制御部は、前記風量センサの検出結果に基づいて、前記濾過エアの前記供給風量が所定の基準風量となるように、前記電動ファンに供給される電力量を調節し、
前記第1通信部は、前記第1制御部によって調節される前記電力量の調節量を示す前記第2情報を前記エアフィルタの交換時期に関係する交換時期関係情報として前記管理装置に送信し、
前記第2通信部は、前記電力量の前記調節量を示す前記第2情報を前記交換時期関係情報として受信し、
前記第2制御部は、前記第2情報によって示される前記調節量が、前記エアフィルタの目詰まりを判定するための所定の閾値以上となると、前記第3情報として、エアフィルタの交換を促す交換注意情報を出力するように、前記情報出力部を制御する、請求項6に記載の呼吸用保護システム。
【請求項8】
前記検出部は、前記ファンユニットについての加速度を検出する加速度センサを含み、
前記第1通信部は、前記加速度センサによって検出される前記加速度を示す前記第1情報を前記作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを判定するための行動不能判定情報として前記管理装置に送信し、
前記第2通信部は、前記加速度を示す前記第1情報を前記作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを判定するための行動不能判定情報として受信し、
前記第2制御部は、前記第1情報によって示される前記加速度の変化が、前記作業者が転倒し、行動不能となっていることを示す所定の行動不能判定パターンと合致すると、前記第3情報として、前記作業者が転倒し、行動不能となっていることを警告する行動不能警告情報を出力するように、前記情報出力部を制御する、請求項6又は請求項7に記載の呼吸用保護システム。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の呼吸用保護具を使用し、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理を行う管理方法であって、
前記第1通信部によって送信される前記第1情報、又は前記第2情報を受信する第1ステップと、
前記作業者の作業環境、前記作業者の行動状態、及び前記電動ファンの作動状態のうちの少なくとも1つに関する第3情報を視覚的情報又は聴覚的情報として前記情報出力手段が出力する第2ステップと、
前記第1ステップにおいて受信された前記第1情報、又は前記第2情報に基づいて、前記第3情報を出力するように前記情報出力手段を制御する第3ステップ
とを具備する管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタによって濾過された濾過エアを作業者に供給する呼吸用保護具、そのような呼吸用保護具の機器管理、又はそのような呼吸用保護具を使用する作業の安全管理を行う呼吸用保護システム、及び管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接現場等の粉塵の多い環境下で作業する作業者に、エアフィルタによって濾過された濾過エアを供給する呼吸用保護具として、特許文献1には、保護具本体と、電動ファンとを具備する呼吸用保護具が記載されている。保護具本体は、作業者の頭と顔を覆う。電動ファンは、ホースを介し、濾過エアを保護具本体に送る。特許文献1に記載の呼吸用保護具によれば、溶接現場等の粉塵の多い環境下において、エアフィルタによって濾過された濾過エアを作業者に供給し、作業者を保護できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-119889公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の呼吸用保護具においては、目詰まりしたエアフィルタを適切な時期に交換したり、作業終了まで電動ファンが停止せず送風できるように、バッテリを十分に充電したり、古くなったバッテリを交換したりするような機器管理が必要となる。上記したような機器管理は、管理すべき機器の数が多いとき、長時間を要し、エアフィルタやバッテリの交換も個々の作業者の判断によって行われているのが実情である。また、例えば、エアフィルタであれば、各作業者が目詰まりを目視によって判断しており、エアフィルタの交換は、一律の基準に依って行われていない。
【0005】
更に、溶接等の高気温となる作業現場においては、作業者の過度の疲労に起因して事故が起らないように、作業スケジュールを最適化したり、各作業者が熱中症等によって行動不能に陥っていないかを確認したりする等の安全管理が必要となる。しかしながら、上記した安全管理に携わる管理者は、作業現場から離れた場所で他の業務に従事していることも多く、作業者の危機に際し迅速な対応ができないことも考えられる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも適切に行えるように補助できる呼吸用保護具、呼吸用保護システム、及び管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示する呼吸用保護具は、保護具本体と、ファンユニットと、検出部と、第1制御部と、第1通信部とを具備する。前記保護具本体は、作業者の顔面を覆う。前記ファンユニットは、エアフィルタ、及び電動ファンを含む。前記エアフィルタは、エアを濾過する。前記電動ファンは、ホース等の通風手段を介し、濾過エアを前記保護具本体に送風する。前記濾過エアとは、前記エアフィルタによって濾過された前記エアである。前記検出部は、前記ファンユニットに設けられており、前記作業者の作業環境、前記作業者の行動状態、及び前記電動ファンの作動状態の少なくとも1つに関する物理量を検出する。前記第1制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記電動ファンを制御する。前記第1通信部は、情報出力手段を有する外部装置に前記検出部の検出結果を示す第1情報、又は前記第1制御部の制御対象への操作量に関する第2情報を送信する。
【0008】
本願に開示する呼吸用保護具において、前記検出部は、風量センサを含む。前記風量センサは、前記通風手段を介し前記保護具本体に送風される前記濾過エアの供給風量を検出する。前記第1制御部は、前記風量センサの検出結果に基づいて、前記濾過エアの前記供給風量が所定の基準風量となるように、前記電動ファンに供給される電力量を調節する。前記第1通信部は、前記第1制御部によって調節される前記電力量の調節量を示す前記第2情報を交換時期関係情報として前記外部装置に送信する。前記交換時期関係情報とは、前記エアフィルタの交換時期に関係する情報である。
【0009】
また、本願に開示する呼吸用保護具は、電源部を更に具備する。前記電源部は、少なくとも1つのバッテリを有し、前記電動ファンに電力を供給する。そして、本願に開示する呼吸用保護具において、前記検出部は、電圧センサを含む。前記電圧センサは、前記少なくとも1つのバッテリの端子電圧を検出する。前記第1通信部は、前記電圧センサによって検出される前記端子電圧を示す前記第1情報を残量関係情報として前記外部装置に送信する。前記残量関係情報とは、前記少なくとも1つのバッテリの残量に関係する情報である。
【0010】
また、本願に開示する呼吸用保護具において、前記検出部は、加速度センサを含む。前記加速度センサは、前記ファンユニットについての加速度を検出する。前記第1通信部は、前記加速度センサによって検出される前記加速度を示す前記第1情報を行動不能判定情報として前記外部装置に送信する。前記行動不能判定情報とは、前記作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを判定するための情報である。
【0011】
また、本願に開示する呼吸用保護具において、前記検出部は、温度センサを含む。前記温度センサは、前記作業者の前記作業環境における気温を検出する。前記第1通信部は、前記温度センサによって検出される前記気温を示す前記第1情報を暑さ指数関係情報として前記外部装置に送信する。前記暑さ指数関係情報とは、暑さ指数の算出に関係する情報である。
【0012】
また、本願に開示する呼吸用保護システムは、上記した呼吸用保護具と、前記外部装置としての管理装置とを具備する。前記管理装置は、第2通信部、前記情報出力手段としての情報出力部、及び第2制御部を有する。前記第2通信部は、前記第1通信部によって送信される前記第1情報、又は前記第2情報を受信する。前記情報出力部は、前記作業者の作業環境、前記作業者の行動状態、及び前記電動ファンの作動状態のうちの少なくとも1つに関する第3情報を視覚的情報又は聴覚的情報として出力する。前記第2制御部は、前記第2通信部が受信した前記第1情報、又は前記第2情報に基づいて、前記第3情報を出力するように前記情報出力部を制御する。
【0013】
本願に開示する呼吸用保護システムにおいて、前記第2通信部は、前記電力量の前記調節量を示す前記第2情報を前記交換時期関係情報として受信する。前記第2制御部は、前記第2情報によって示される前記調節量が、前記エアフィルタの目詰まりを判定するための所定の閾値以上となると、前記第3情報として、交換注意情報を出力するように、前記情報出力部を制御する。前記所定の閾値は、前記エアフィルタの目詰まりを判定するための閾値である。前記交換注意情報とは、前記エアフィルタの交換を促す情報である。
【0014】
本願に開示する呼吸用保護システムにおいて、前記第2通信部は、前記加速度を示す前記第1情報を行動不能判定情報として受信する。前記行動不能判定情報とは、前記作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを判定するための情報である。前記第2制御部は、前記第1情報によって示される前記加速度の変化が、所定の行動不能判定パターンと合致すると、前記第3情報として、行動不能警告情報を出力するように、前記情報出力部を制御する。前記行動不能判定パターンは、前記作業者が転倒し、行動不能となっていることを示すパターンである。前記行動不能警告情報とは、前記作業者が転倒し、行動不能となっていることを警告するための情報である。
【0015】
本願に開示する管理方法は、本願に開示する呼吸用保護具を使用し、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理を行う管理方法であって、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとを具備する。前記第1ステップは、前記第1通信部によって送信される前記第1情報、又は前記第2情報を受信するステップである。前記第2ステップは、前記作業者の作業環境、前記作業者の行動状態、及び前記電動ファンの作動状態のうちの少なくとも1つに関する第3情報を視覚的情報又は聴覚的情報として前記情報出力手段が出力するステップである。前記第3ステップは、前記第1ステップにおいて受信された前記第1情報、又は前記第2情報に基づいて、前記第3情報を出力するように前記情報出力手段を制御するステップである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の呼吸用保護具、呼吸用保護システム、及び管理方法によれば、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも適切に行えるように補助できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る呼吸用保護具を含む呼吸用保護システムを示す機能ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る呼吸用保護具を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る呼吸用保護具のファンユニットを示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る呼吸用保護具の検出部を示す機能ブロック図である。
図5】エアフィルタの目詰まりの程度と、電動ファンの回転数と、電動ファンに供給される電力量との関係を示すグラフ図である。
図6】エアフィルタの目詰まりの程度と、電動ファンの送風量と、基準風量との関係を示すグラフ図である。
図7】実施形態に係る情報出力部における出力例を示す概念図である。
図8】作業者が転倒し、行動不能となったか否かを判定するための行動不能判定パターンについての加速度センサの検出結果を示すグラフ図である。
図9】本発明の実施形態に係る呼吸用保護システムにおけるメイン処理を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係る呼吸用保護システムにおけるファン制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る呼吸用保護具を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0019】
〈実施形態〉
以下に、図1から図4を参照して、本発明の実施形態に係る呼吸用保護具、呼吸用保護システム、及び管理方法を説明する。図1は、実施形態に係る呼吸用保護具を含む呼吸用保護システムを示す機能ブロック図である。図2は、実施形態に係る呼吸用保護具を示す斜視図である。図3は、実施形態に係る呼吸用保護具のファンユニットを示す分解斜視図である。図4は、実施形態に係る呼吸用保護具の検出部を示す機能ブロック図である。
【0020】
図1図2に示すように、実施形態に係る呼吸用保護システムは、呼吸用保護具1と、管理装置としての管理用端末2と、クラウドサーバ3等の外部記憶装置と、スマートフォン4A、及びパーソナル・コンピュータ4B等の外部端末4とを含んでいる。外部端末4は、コンピュータであればよく、例えばタブレット、又はノートパソコンであってもよい。
【0021】
呼吸用保護具1は、溶接工場、溶接現場等の粉塵の多い環境下で作業者に濾過エアを供給し、作業者を保護するものであり、保護具本体10と、ファンユニット20と、検出部30と、第1制御部40と、第1通信部50と、第1記憶部60とを具備する。
【0022】
保護具本体10は、作業者の顔面を覆う。なお、実施形態においては、図2に示すように、保護具本体10は、ヘルメット11と、フェイスシールド12と、封止フード13と、受風口14とを含み、装着者の顔と頭を含む頭部全体を内部に収容するようにして、顔面を覆うものとなっている。また、受風口14は、ヘルメット11に設けられている。
【0023】
図2に示すように、フェイスシールド12は、レンズ12aと、枠体12bとを有する。レンズ12aは、枠体12bに気密に取付けられる。枠体12bは、回転ヒンジ12cによって上下に回動可能にヘルメット11に支持されており、レンズ12aを支持する。
【0024】
ヘルメット11と枠体12bとは気密に接触しており、ヘルメット11、フェイスシールド12、及び封止フード13によって囲われる保護具本体10の内部空間に、受風口14を介し濾過エアが導入され、作業者に濾過エアが供給される。濾過エアとは、後述のエアフィルタ21によって濾過されたエアである。封止フード13には、装着者の首を通す図示しない開口部があり、締紐13aを締めることによって、封止フード13の開口部と首との隙間を小さくできる。
【0025】
図3に示すように、ファンユニット20は、エアフィルタ21、及び電動ファン22を含む。また、ファンユニット20は、ユニット本体24と、フィルタカバー25と、電源部26と、プレフィルタ27とを含む。
【0026】
エアフィルタ21は、エアを濾過する。実施形態においては、エアフィルタ21は、不織布から形成されるフィルタ本体21aと、フィルタ本体21aを支持するフィルタ枠21bとを含む。フィルタ枠21bは、実施形態においては、樹脂から形成され、フィルタ本体21aと一体成形される。
【0027】
電動ファン22は、ホース23等の通風手段を介し、濾過エアを保護具本体10に送風する。実施形態においては、電動ファン22の回転数の調節は、パルス幅変調方式によって電動ファン22への電流を調節し、電動ファン22に供給される電力量EQを調節するようにして行われる。
【0028】
ホース23は、図2図3に示すように、受風側連結部23aと送風側連結部23bとを両端部に有する。受風側連結部23aは、受風口14と連結され、送風側連結部23bは、ファンユニット20の送風口24aと連結される。
【0029】
図3に示すように、ユニット本体24は、電動ファン22及び電源部26を内蔵しており、上記した送風口24aと、調節ツマミ24bと、ファン側出力部24cとを有する。調節ツマミ24bは、電動ファン22の電源をオンオフする操作、及び送風量(供給風量SV)を調節する操作を受付ける。ファン側出力部24cは、電動ファン22の送風量、エアフィルタ21の目詰まりの有無、電源部26におけるバッテリ等の残量、第1通信部50の通信状況、及び後述の各種警報が発せられているか否かについての情報等の各種情報を視覚的情報又は聴覚的情報として出力するものであり、インジケータ、液晶パネル、又はスピーカー等から形成することができる。
【0030】
フィルタカバー25は、エアの取入れ口25aを有し、取入れ口25aから電動ファン22へのエアの供給経路にエアフィルタ21を保持する。また、フィルタカバー25は、ユニット本体24に対し着脱自在となっており、取外しボタン25bを操作することによって、ユニット本体24から取外し可能となる。
【0031】
電源部26は、少なくとも1つのバッテリを有し、電動ファン22を含むファンユニット20の各部に電力を供給する。実施形態においては、電源部26は、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの2つのバッテリを含み、バッテリリッド26cによって、ユニット本体24の内部に保持される。第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bは、実施形態においては、端子電圧TVの低い方が電動ファン22等に電力を供給し、端子電圧TVが所定電圧まで下がると、他方が電力の供給を開始する、というように、切り替え方式によって、電動ファン22等に電力を供給する。
【0032】
プレフィルタ27は、取入れ口25aからエアフィルタ21へのエアの供給経路に置かれ、例えば溶接現場におけるスパッタからエアフィルタ21を保護する。
【0033】
検出部30は、ファンユニット20に設けられており、作業者の作業環境、作業者の行動状態、及び電動ファン22の作動状態の少なくとも1つに関する物理量を検出する。
【0034】
図4に示すように、実施形態においては、検出部30は、風量センサ31、電圧センサ32、6軸の加速度センサ33、及び温度センサ34を含む。なお、加速度センサ33は、3軸センサであってもよい。また、検出部30は、更に、湿度センサ、光センサ等を含んでもよい。
【0035】
風量センサ31は、ホース23等の通風手段を介し保護具本体10に送風される濾過エアの供給風量SVを検出する。電圧センサ32は、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの端子電圧TVを検出する。加速度センサ33は、作業者の移動に伴って移動するファンユニット20についての加速度ARを検出する。温度センサ34は、作業者の作業環境における気温TPを検出する。
【0036】
第1制御部40は、検出部30の検出結果に基づいて電動ファン22を制御する。実施形態においては、第1制御部40は、マイコンから形成され、風量センサ31の検出結果に基づいて、濾過エアの供給風量SVが所定の基準風量RVとなるように、電動ファン22に電源部26から供給される電力量EQを例えばパルス幅変調方式によって調節する。実施形態においては、基準風量RVは、調節ツマミ24bに対する操作に応じ、第1制御部40によって設定される。
【0037】
第1通信部50は、検出部30の検出結果を示す第1情報、又は第1制御部40の制御対象への操作量に関する第2情報を請求の範囲における外部装置である管理装置としての管理用端末2に送信する。第1通信部50から管理用端末2に第1情報、又は第2情報を送信するための通信方式は、有線LAN等を使用した有線通信であっても、無線LAN、及び無線電話回線等を使用した無線通信であってもよい。しかしながら、作業性向上のために、少なくとも第1通信部50は、Wi-Fi等の無線通信機能を有する方が好ましい。
【0038】
実施形態においては、第1通信部50は、風量センサ31によって検出される供給風量SVを示す第1情報を管理用端末2に送信するとともに、第1制御部40の制御対象への操作量である、電力量EQの調節量DAを示す第2情報を交換時期関係情報RI1として管理用端末2に送信する。交換時期関係情報RI1とは、エアフィルタ21の交換時期に関係する情報である。
【0039】
また、第1通信部50は、電圧センサ32によって検出される端子電圧TVを示す第1情報を残量関係情報RI2として管理用端末2に送信する。残量関係情報RI2とは、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの残量、又は充電状態[%]に関係する情報である。
【0040】
更に、第1通信部50は、加速度センサ33によって検出される加速度ARを示す第1情報を行動不能判定情報RI3として管理用端末2に送信する。行動不能判定情報RI3とは、作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを判定するための情報である。
【0041】
更に、第1通信部50は、温度センサ34によって検出される気温TPを示す第1情報を暑さ指数関係情報RI4として管理用端末2に送信する。暑さ指数関係情報RI4とは、暑さ指数の算出に関係する情報である。
【0042】
第1記憶部60は、電動ファン22の駆動制御プログラム、及び電源部26における放電制御プログラム等の各種プログラムを記憶するとともに、調節ツマミ24bに対する操作によって指定される各基準風量RVに対応する初期のデューティ比(回転数、電流値)、後で説明するようにデューティ比を段階的に大きくするときの各段階の増大値、及びファンユニット20の電源が投入されたときに行われる初期化処理に使用する初期化データ等の各種データを記憶する。第1記憶部60に記憶されたプログラム及びデータは、第1制御部40によって必要に応じ随時に読み出される。
【0043】
次に、上記した図1から図4とともに、図5から図8を参照して、管理用端末2、外部端末4、及び実施形態に係る管理方法を説明する。図5は、エアフィルタの目詰まりの程度と、電動ファンの回転数と、電動ファンに供給される電力量との関係を示すグラフ図である。図6は、エアフィルタの目詰まりの程度と、電動ファンの送風量(供給風量)と、基準風量との関係を示すグラフ図である。図7は、実施形態に係る情報出力部における出力例を示す概念図である。図8は、作業者が転倒し、行動不能となったか否かを判定するための行動不能判定パターンについての加速度センサの検出結果を示すグラフ図である。
【0044】
図1に示すように、管理用端末2は、第2通信部70、情報出力手段である情報出力部としての管理側出力部80、第2制御部90、及び第2記憶部100を有する。実施形態においては、管理用端末2は、スマートフォン、タブレット、パーソナル・コンピュータ、及びノートパソコン等の汎用端末に、コンピュータを後述の各部として機能させるためのプログラムを含むアプリ又はソフトウェアをインストールことによって実現される。外部端末4も同様である。従って、本発明の呼吸用保護システム、及び管理方法は、アプリ又はソフトウェアによって実現される場合を含む。
【0045】
アプリ又はソフトウェアによって本発明の呼吸用保護システム、及び管理方法が実現される場合には、アプリ又はソフトウェアを構成するプログラムは、CD-ROM、USBメモリのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介して管理用端末2、及び外部端末4等のユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。さらに、これらのプログラムは、ダウンロードされることなくネットワークを介したWebサービスとしてユーザのコンピュータに提供されてもよい。
【0046】
また、本明細書等において、「部」や「手段」、「装置」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や「手段」、「装置」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や「手段」、「装置」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【0047】
第2通信部70は、第1通信部50によって送信される第1情報、又は第2情報を受信する。第2通信部が第1通信部50から第1情報、又は第2情報を受信するための通信方式は、有線LAN等を使用した有線通信であっても、無線LAN、及び無線電話回線等を使用した無線通信であってもよい。しかしながら、特に管理用端末2がスマートフォン、ノートパソコン等の携帯可能な端末である場合には、管理者の利便性のために、第2通信部70は、Wi-Fi等の無線通信機能を有する方が好ましい。
【0048】
実施形態においては、第2通信部70は、風量センサ31によって検出される供給風量SVを示す第1情報を受信するとともに、電力量EQの調節量DAを示す第2情報を交換時期関係情報RI1として受信する。また、第2通信部70は、電圧センサ32によって検出される端子電圧TVを示す第1情報を残量関係情報RI2として受信する。更に、第2通信部70は、加速度センサ33によって検出される加速度ARを示す第1情報を行動不能判定情報RI3として受信する。更に、第2通信部70は、温度センサ34によって検出される気温TPを示す第1情報を暑さ指数関係情報RI4として受信する。
【0049】
また、実施形態においては、第2通信部70は、第1情報、第2情報、及び第3情報をクラウドサーバ3等の外部記憶装置に送信する。クラウドサーバ3等の外部記憶装置は、第2通信部70によって送信された第1情報、第2情報、又は第3情報を記憶する。
【0050】
管理側出力部80は、作業者の作業環境、作業者の作業状態、及び電動ファン22の作動状態のうちの少なくとも1つに関する第3情報を視覚的情報又は聴覚的情報として出力する。管理側出力部80は、管理用端末2に含まれるモニタ、液晶画面、又はスピーカー等から形成することができる。
【0051】
第2制御部90は、第2通信部70が受信した第1情報、又は第2情報に基づいて、第3情報を出力するように管理側出力部80を制御する。以下、第1制御部40及び第2制御部90が行う制御について説明する。
【0052】
図5に示すように、エアフィルタ21の目詰まりの程度が大きくなるほど、電動ファン22の送風抵抗[Pa]は大きくなる。従って、供給風量SVを基準風量RVに保つためには、エアフィルタ21の目詰まりの程度が大きくなるほど、電動ファン22の回転数[rpm]を高くする必要があり、電動ファン22に供給される電力量EQ(例えば、電流値[mA])を大きくする必要がある。
【0053】
その結果、図6に示すように、第1制御部40が、供給風量SVを基準風量RVに保つよう電動ファン22に供給される電力量EQを調節する制御を行っているときに、エアフィルタ21の目詰まりの程度が大きくなり過ぎ、供給風量SVを基準風量RVに保つように電動ファン22に供給される電力量EQをそれ以上大きくできなくなると、供給風量SVは大きく低下してしまう。
【0054】
従って、図5に示すように、電力量EQに対する調節量DAが所定の閾値TS以上となると、第2制御部90は、図7に示すように、第3情報としての交換注意情報I1を出力するように、管理側出力部80を制御する。なお、閾値TSは、エアフィルタ21の目詰まりを判定するための閾値である。
【0055】
図7に示すように、交換注意情報I1とは、エアフィルタ21の交換を促す情報であり、視覚的情報として、「エアフィルタが目詰まりしているので交換してください。」等の文章や画面の明滅等によって、エアフィルタ21の交換を促すものであってもよく、聴覚的情報として、上記したような文章を音声で伝えるものであってもよく、予め決められた警報音等によって、エアフィルタ21の交換を促すものであってもよい。
【0056】
図7に示すように、第2制御部90は、第1情報によって示される加速度ARの変化が、所定の行動不能判定パターンJPに合致するときに、第3情報としての行動不能警告情報I2を出力するように、管理側出力部80を制御する。所定の行動不能判定パターンJPは、作業者が転倒し、行動不能となっていることを示すパターンである。
【0057】
行動不能警告情報I2とは、作業者が転倒し、行動不能となっていることを警告するための情報であり、視覚的情報として、「作業者が転倒し、行動不能です。」等の文章や画面の明滅等によって、作業者が転倒し、行動不能となっていることを伝えるものであってもよく、聴覚的情報として、上記したような文章を音声で伝えるものであってもよく、予め決められた警報音等によって、作業者が転倒し、行動不能となっていることを伝えるものであってもよい。
【0058】
図8は、実際に作業者が呼吸用保護具1を装着し、転倒し、静止したときの加速度ARの変化を示している。行動不能判定パターンJPは、下記の条件a、条件b、及び条件cを有しており、加速度ARの変化が、条件a、条件b、及び条件cを満足することによって、加速度ARの変化が行動不能判定パターンJPと合致し、作業者が転倒し、行動不能となっているものと判定される。
【0059】
図8に示すように、行動不能判定パターンJPは、条件a:ある時点t0において、ファンユニット20の前後方向(図3における左右方向)の加速度X(g)、上下方向の加速度Y(g)、及び左右方向の加速度Z(g)の合成加速度A(g)が、第1判定基準値FJA[g](g:重力加速度)以下となる、条件b:時点t0から第1判定時間IJT[s]以内に合成加速度A(g)が第2判定基準値IJA[g]以上となる、及び条件c:時点t0から第2判定時間TJT[s]が経過した時点以後、第3判定時間TTL[s]にわたり上下方向の加速度Y(g)が第3判定基準値TJA[g]以下となり且つ合成加速度A(g)が(1±0.05)gの範囲内となる、という3つの条件を有している。
【0060】
第1判定基準値FJA[g]は、物体の落下を検知するための基準値であり、1.0gより小さい加速度に設定されていればよいが、誤検知を防止するために、0.8g以下の加速度に設定されることが好ましく、0.5g以上、0.8g以下の加速度に設定されることがより好ましく、0.7g以上、0.8g以下の加速度に設定されることが更に好ましい。第1判定時間IJT[s]は、物体の落下と、引き続き起こる地面との衝突との間の因果関係を担保するための時間であり、0.8秒以上、1.2秒以下の時間に設定されていればよいが、誤判定を防止するために、0.9秒以上、1.1秒以下の時間に設定されることが好ましい。
【0061】
第2判定基準値IJA[g]は、落下した物体の地面との衝突を検知するための基準値であり、2.5g以上、4.5g以下の加速度に設定されていればよいが、誤検知を防止するために、3.0g以上、4.0g以下の加速度に設定されることが好ましい。第2判定時間TJT[s]は、衝突による衝撃が収まるのを待つための時間であり、1.8秒以上、2.2秒以下の時間に設定されていればよいが、誤判定を防止するために、1.9秒以上、2.1秒以下の時間に設定されることが好ましい。
【0062】
第3判定時間TTL[s]は、物体が静止しているか否かを判定するための時間であり、1.8秒以上、2.2秒以下の時間に設定されていればよいが、誤判定を防止するために、1.9秒以上、2.1秒以下の時間に設定されることが好ましい。第3判定基準値TJA[g]は、物の横転を検知するための基準値であり、0.40g以上、0.60g以下の加速度に設定されていればよいが、誤検知を防止するために、0.45g以上、0.55g以下の加速度に設定されることが好ましい。
【0063】
換言すると、条件aは、ファンユニット20の重力方向への加速運動を示し、条件bは、ファンユニット20に対する衝撃を示し、条件cは、ファンユニット20が所定角度以上傾いており、且つ静止していることを示す。従って、実施形態においては、加速度センサ33の検出結果が、ファンユニット20の重力方向への加速運動、引き続いてのファンユニット20に対する衝撃の発生、及び引き続いてのファンユニット20の所定角度以上の傾き及び静止を示す行動不能判定パターンJPに合致するときに、第2制御部90は、第3情報としての行動不能警告情報I2を出力するように、管理側出力部80を制御する。
【0064】
また、実施形態においては、第2制御部90は、第1情報によって示される端子電圧TVに基づいて、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの残量(充電状態[%])を視覚的情報又は聴覚的情報として出力するように、管理側出力部80を制御する。
【0065】
また、図7に示すように、第2制御部90は、第1情報によって示される第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの両方の端子電圧TVが、所定電圧以下まで低下すると、第3情報として、充電注意情報I3を視覚的情報又は聴覚的情報として出力するように、管理側出力部80を制御する。充電注意情報I3とは、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの残量を内容とする情報、又は第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの充電を促すことを内容とする情報である。
【0066】
また、第2制御部90は、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの容量が初期の容量から所定割合だけ低下すると、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの交換に関係する電池交換注意情報(例えば、「バッテリを速やかに交換してください。」)を視覚的情報又は聴覚的情報として出力するように、管理側出力部80を制御してもよい。
【0067】
更に、第2制御部90は、第1情報によって示される気温TPを示す情報に基づいて、熱中症に関する暑さ指数を算出し、第3情報として、図7に示すように、作業スケジュールや熱中症の警告に関係する熱中症警告情報I4を視覚的情報又は聴覚的情報として出力するように、管理側出力部80を制御する。なお、暑さ指数(WBGT)の算出式としては、WBGT=0.735×TP+0.0374×RH+0.0029×TP×RH-4.064、ただし、RH:相対湿度、を使用することができる。
【0068】
次に、本発明の実施形態に係る管理方法を説明する。実施形態の管理方法は、呼吸用保護具1を使用し、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理を行う管理方法であって、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとを具備する。
【0069】
第1ステップは、第1通信部50によって送信される、第1情報、又は第2情報を受信するステップであり、その内容の詳細は、上記した第2通信部70の動作内容と同様である。第2ステップは、作業者の作業環境、作業者の行動状態、及び電動ファンの作動状態のうちの少なくとも1つに関する第3情報を出力するステップであり、その内容の詳細は、上記した管理側出力部80の動作内容と同様である。第3ステップは、第2ステップにおいて受信された第1情報、又は第2情報に基づいて、前記第3情報を出力するように情報出力手段を制御するステップであり、その内容の詳細は、上記した第2制御部90の動作内容と同様である。
【0070】
次に、スマートフォン4A、及びパーソナル・コンピュータ4B等の外部端末4について、図1等を参照して説明する。
【0071】
外部端末4は、第3通信部110、外部側出力部120、第3制御部130、及び第3記憶部140を有する。実施形態においては、外部端末4は、管理用端末2と同様に、コンピュータを後述の各部として機能させるためのプログラムを含むアプリ又はソフトウェアをインストールことによって実現される。また、アプリ又はソフトウェアが提供される方法についても管理用端末2と同様である。
【0072】
第3通信部110は、管理用端末2の第2通信部70、又はクラウドサーバ3等の外部記憶装置から第1情報、第2情報、又は第3情報を受信する。外部側出力部120は、モニタ装置、液晶パネル、及びスピーカー等を含み、第1情報、第2情報、又は第3情報を視覚的情報、又は聴覚的情報として出力する。第3制御部130は、第1情報、第2情報、又は第3情報を視覚的情報、又は聴覚的情報として出力するように外部側出力部120を制御する。第3記憶部140は、各種プログラム及び各種データを記憶する。
【0073】
次に、図1から図8とともに、図9図10を参照して、実施形態における制御の流れを説明する。図9は、実施形態に係る呼吸用保護システムにおけるメイン処理を示すフローチャートである。図10は、実施形態に係る呼吸用保護システムにおけるファン制御処理を示すフローチャートである。
【0074】
図9に示すメイン処理のステップS1においては、調節ツマミ24bによってファンユニット20の電源スイッチがオンとされ、第1記憶部60から第1制御部40への制御プログラム、制御用データの読み込み等の所定の初期化処理が行われる。
【0075】
図9に示すメイン処理のステップS2においては、所定の入力制御処理が行われる。ステップS2の入力制御処理においては、調節ツマミ24bによって指定された送風量が読み込まれるとともに、エアフィルタ21が正しくセットされているか否かが、例えば光センサの検出結果によって判定される。送風量は、例えば「弱」、「中」、「強」、「最強」というように、実施形態においては段階的に切替えられる。
【0076】
図9に示すメイン処理のステップS3においては、ファンユニット20の電源スイッチがオンとなっているか否かの判定が行われる。電源スイッチがオンであれば、処理はステップS4に進み、オンでなければ、処理はステップS8に進む。
【0077】
図9に示すメイン処理のステップS4においては、電動ファン22の回転数を例えばパルス幅変調方式によって制御するための割り込み処理等の各種割り込み処理が開始される。
【0078】
図9に示すメイン処理のステップS5においては、所定のバッテリ制御が実行される。ステップS5のバッテリ制御においては、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの2つのバッテリのうち端子電圧TVが低い方のバッテリが選択され、電力供給が開始される。
【0079】
図9に示すメイン処理のステップS6においては、所定のファン制御処理が実行される。以下に、図10を参照して、ステップS6のファン制御処理を概説する。
【0080】
図10に示すように、ステップS6のファン制御処理においては、エアフィルタ21が装着されているか否かが判定され(ステップS11)、装着されていないとき(ステップS11において「No」)、アラーム(警報)が発せられ、電動ファン22への電力供給が停止され、電動ファン22が停止される(ステップS13)。
【0081】
エアフィルタ21が装着されているとき(ステップS11においてYes)、ステップS2の入力制御において入力された送風量の設定値である基準風量RVが読み込まれ(ステップS14)、基準風量RVに応じて電動ファン22に供給される電力量EQ(デューティ比(DYTY比))の初期値D1が決定され(ステップS15)、所定の初期電流値A1及び初期回転数R1で電動ファン22の運転が開始される(ステップS16)。初期電流値A1、初期回転数R1、後掲の各設定電流値A2、A3、A4、各設定回転数R2、R3、R4は、調節ツマミ24bによって切替えられる送風量(例えば「弱」、「中」、「強」、「最強」)ごとに、回転数・電流値テーブルとして、予め第1記憶部60に記憶される。
【0082】
電動ファン22の運転が開始された後、実際の回転数が初期回転数R1よりも所定量以上大きく、実際の電流値が初期電流値A1よりも所定量以上小さいとき、供給風量SVが基準風量RVに達しないものとして(ステップS17において「y1」)、電動ファンに供給される電力量EQ(デューティ比)が段階的に増大される(ステップS18、及びステップS21)。
【0083】
決まった回数だけ段階的に増大されても実際の供給風量SVが基準風量RVに達しないとき(ステップS20、及びステップS23において「y1」)、調整量DAが閾値TS以上となったものとして、第2制御部90は、エアフィルタ21の交換についての警報(アラーム)である交換注意情報I1を出力するように、管理側出力部80を制御し(ステップS24)、引き続き、目詰まりの改善が見られない限りは交換注意情報I1を出力した状態のまま、少し大きめの電流値で運転を継続する(ステップS25、ステップS26、からステップS24へのループ)。
【0084】
電動ファンに供給される電力量EQ(デューティ比)を段階的に増大した結果(ステップS18、及びステップS21)、実際の回転数が各設定回転数R2、R3よりも所定量以上小さく、実際の電流値が各設定電流値A2、A3よりも所定量以上大きいとき(ステップS20、又はステップS23において「y2」)には、目詰まりに改善が見られるものとして、電動ファンに供給される電力量EQ(デューティ比)が段階的に減少される(ステップS18、又はステップS15)。
【0085】
また、実際の回転数が初期回転数R1よりも所定量以上小さく、実際の電流値が初期電流値A1よりも所定量以上大きいときには(ステップS17において「y2」)、目詰まりが生じているものとして、第2制御部90は、エアフィルタ21の交換についての警報(アラーム)である交換注意情報I1を出力するように、管理側出力部80を制御し(ステップS24)、引き続き、目詰まりに改善が見られない限りは交換注意情報I1を出力した状態のまま、少し大きめの電流値で運転を継続する(ステップS25、ステップS26、ステップS24へのループ)。
【0086】
なお、目詰まりに改善が見られることは実際には起こり難いとも考えられるため、ステップS24において交換注意情報I1が出力されると、ファン制御処理を停止し、警報を発し続けるだけとすることもできる。
【0087】
図9に示すメイン処理に戻り、ステップS7においては、所定の出力制御処理が実行される。ステップS7の出力制御処理においては、交換注意情報I1、行動不能警告情報I2、充電注意情報I3、及び熱中症警告情報I4を含めた各種情報を出力するように、第2制御部90は、管理側出力部80を制御する。また、ステップS8においては、所定時間(例えば、2秒)が経過したか否かが判定され、所定時間が経過しているとき、スリープ状態となり(ステップS9)、処理は終了される。
【0088】
以上、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護具によれば、検出部30が、作業者の作業環境、作業者の行動状態、及び電動ファン22の作動状態の少なくとも1つに関する物理量を検出し、第1制御部40が、検出部30の検出結果に基づいて電動ファン22を制御し、第1通信部50が、検出部30の検出結果を示す第1情報、又は第1制御部40の制御対象に対する操作量に関する第2情報を請求の範囲における外部装置である管理装置としての管理用端末2に送信する。従って、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも適切に行えるように補助できる。
【0089】
また、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護具によれば、検出部30が、濾過エアの供給風量SVを検出する風量センサ31を含み、第1制御部40が、風量センサ31の検出結果に基づいて、供給風量SVが所定の基準風量RVとなるように、電動ファン22に供給される電力量EQを調節し、第1通信部50が、第1制御部40によって調節される電力量EQの調節量DAを示す第2情報を交換時期関係情報RI1として管理用端末2に送信する。交換時期関係情報RI1とは、エアフィルタの交換時期に関係する情報である。
【0090】
従って、実施形態の呼吸用保護具によれば、リモートに置かれた外部装置において、供給風量SVを基準風量RVとするための電力量EQの調節量DAに基づいて、エアフィルタ21の目詰まりの程度を知ることができ、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理をリモートからでも更に適切に行えるように補助できる。
【0091】
例えば、エアフィルタ21が目詰まりしていないときに供給風量SVが基準風量RVとなる電力量EQを電力量EQ0とし、実際に供給風量SVが基準風量RVとなる電力量EQを電力量EQ1とする。このとき、電力量EQの調節量DAは、DA:(EQ1-EQ0)となり、調節量DAが、エアフィルタ21の目詰まりを判定するための所定の閾値TS以上であれば、リモートに置かれた外部装置において、エアフィルタ21に目詰まりが生じ、交換時期がきていることを知ることができ、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理をリモートからでも更に適切に行えるように補助できる。
【0092】
また、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護具によれば、検出部30が、電圧センサ32を含み、電圧センサ32が、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの端子電圧TVを検出し、第1通信部50は、電圧センサ32によって検出される端子電圧TVを示す第1情報を残量関係情報RI2として管理用端末2に送信する。残量関係情報RI2とは、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの残量に関係する情報である。従って、実施形態の呼吸用保護具によれば、第1バッテリ26a及び第2バッテリ26bの残量をリモートに置かれた外部装置において確認することができ、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理をリモートからでも更に適切に行えるように補助できる。
【0093】
また、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護具によれば、検出部30が、加速度センサ33を含み、加速度センサ33が、ファンユニット20についての加速度ARを検出し、第1通信部50が、加速度ARを示す第1情報を行動不能判定情報RI3として外部装置としての管理用端末2に送信する。行動不能判定情報RI3とは、作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを判定するための情報である。従って、実施形態の呼吸用保護具によれば、リモートに置かれた外部装置において、作業者が転倒し、行動不能となっているか否かを確認でき、作業者の危機に際し迅速な対応が可能となり、濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも更に適切に行えるように補助できる。
【0094】
また、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護具によれば、検出部30が、温度センサ34を含み、温度センサ34が、作業者の作業環境における気温TPを検出し、第1通信部50が、温度センサ34によって検出される気温TPを示す第1情報を暑さ指数関係情報RI4として外部装置としての管理用端末2に送信する。暑さ指数関係情報RI4とは、暑さ指数の算出に関係する情報である。従って、実施形態の呼吸用保護具によれば、リモートに置かれた外部装置において、作業現場における暑さ指数を算出でき、算出された暑さ指数に基づいて、予め設定された各作業者の望ましい作業時間の長さや休憩間隔といった作業スケジュールを策定でき、濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも更に適切に行えるように補助できる。
【0095】
また、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護システム及び管理方法によれば、管理装置としての管理用端末2の第2通信部70が、第1通信部50によって送信される、検出部30の検出結果を示す第1情報、又は第1制御部40の制御対象に対する操作量に関する第2情報を受信し、管理側出力部80が、作業者の作業環境、作業者の行動状態、及び電動ファン22の作動状態のうちの少なくとも1つに関する第3情報を視覚的情報又は聴覚的情報として出力し、第2制御部90が、第2通信部70が受信した第1情報又は第2情報に基づいて、第3情報を出力するように管理側出力部80を制御する。従って、実施形態の呼吸用保護システム及び管理方法によれば、リモートに置かれた管理用端末2において、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理、又は濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも適切に行えるように補助できる。
【0096】
また、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護システム及び管理方法によれば、第2制御部90が、第2情報によって示される調節量DAが閾値TS以上となると、第3情報として、エアフィルタの交換時期に関係する交換注意情報I1を出力するように、管理側出力部80を制御する。閾値TSは、エアフィルタ21の目詰まりを判定するための閾値である。従って、エアフィルタ21に目詰まりが生じたか否かを科学的根拠に基づき、正確に判定し、エアフィルタ21を最適な時期に交換でき、作業者に濾過エアを安定的に供給するための機器管理をリモートからでも更に適切に行えるように補助できる。
【0097】
また、図1から図10を参照して説明したように、実施形態の呼吸用保護システム及び管理方法によれば、第2制御部が、第1情報によって示される加速度ARの変化が、所定の行動不能判定パターンJPに合致するときに、第3情報としての行動不能警告情報I2を出力するように、管理側出力部80を制御する。行動不能判定パターンJPは、作業者が転倒し、行動不能となっていることを示す。従って、熱中症等によって、作業者が転倒し、行動不能となっていることをリモートに置かれた管理用端末2において知ることができ、作業者の危機に際し迅速な対応が可能となり、濾過エアの供給を受けながら行われる作業の安全性を確保するための安全管理をリモートからでも更に適切に行えるように補助できる。
【0098】
以上、図面(図1図10)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記(1))。
【0099】
(1)上記実施形態においては、第2制御部90は、電力量EQに対する調節量DAが閾値TS以上となったときに、第3情報としての交換注意情報I1を出力するように、管理側出力部80を制御しているが、第2制御部90は、所定の電力量EQにおいて想定される供給風量SVから実際の供給風量SVが一定量以上低下したときに、第3情報としての交換注意情報I1を出力するように、管理側出力部80を制御してもよい。
【符号の説明】
【0100】
SV…供給風量
RV…基準風量
EQ…電力量
DA…調節量
JP…行動不能判定パターン
I1…交換注意情報
I2…行動不能警告情報
RI1…交換時期関係情報
RI2…残量関係情報
RI3…行動不能判定情報
RI4…暑さ指数関係情報
1…呼吸用保護具
2…管理用端末
10…保護具本体
20…ファンユニット
21…エアフィルタ
22…電動ファン
23…ホース
26…電源部
26a…第1バッテリ
26b…第2バッテリ
30…検出部
31…風量センサ
32…電圧センサ
33…加速度センサ
34…温度センサ
40…第1制御部
50…第1通信部
70…第2通信部
80…管理側出力部(情報出力手段、情報出力部)
90…第2制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10