(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062796
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】マルチ給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/355 20220101AFI20230427BHJP
F24D 17/00 20220101ALI20230427BHJP
【FI】
F24H1/10 301F
F24D17/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172901
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 久貴
【テーマコード(参考)】
3L073
【Fターム(参考)】
3L073AA13
3L073AC07
(57)【要約】
【課題】熱交換部のエロージョン・コロージョンを抑制すると共に給湯能力を向上させることができるマルチ給湯システムを提供すること。
【解決手段】湯水を加熱する熱交換部(22)と前記熱交換部(22)の湯水流量を調整する流量調整手段(34)を夫々備えた複数の給湯装置(11~14)と、これら複数の給湯装置(11~14)の作動台数制御を行う制御装置(15)を備えたマルチ給湯システム(10)において、制御装置(15)は、マルチ給湯システム(10)の作動目的を設定する目的設定機能を有し、設定された作動目的に応じて前記複数の給湯装置(11~14)に対して前記熱交換部(22)の上限流量を夫々設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を加熱する熱交換部と前記熱交換部の湯水流量を調整する流量調整手段を夫々備えた複数の給湯装置と、これら複数の給湯装置の作動台数制御を行う制御装置を備えたマルチ給湯システムにおいて、
前記制御装置は、マルチ給湯システムの作動目的を設定する目的設定機能を有し、設定された作動目的に応じて前記複数の給湯装置に対して前記熱交換部の上限流量を夫々設定することを特徴とするマルチ給湯システム。
【請求項2】
前記作動目的の設定は、試運転時に行うことを特徴とする請求項1に記載のマルチ給湯システム。
【請求項3】
前記作動目的には、少なくとも給湯、貯湯循環、即湯循環及び濾過循環が含まれ、前記濾過循環が設定された場合に前記上限流量を予め設定された最大流量にすることを特徴とする請求項1に記載のマルチ給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の給湯装置と、これら複数の給湯装置の作動台数を制御する制御装置を備え、要求される熱量に応じて作動台数を変更して湯水を加熱するマルチ給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば工場、宿泊施設、入浴施設等では、一度に大量の湯水を使用する場合に対応できるように、複数の給湯装置を作動させて湯水を加熱するマルチ給湯システムが利用されている。マルチ給湯システムは、複数の給湯装置の作動台数を制御する制御装置を有し、要求される熱量に応じた作動台数で湯水を加熱して少量の給湯にも対応することができるように構成されている。
【0003】
複数の給湯装置が作動して一度に大量の湯水を給湯する場合、各給湯装置の湯水を加熱する熱交換部において湯水が大流量で流動することになる。熱交換部の湯水の通路は、熱伝導に優れた銅管で形成される場合が多く、酸素が溶存する湯水が流動するので、特に高温の湯水が大流量で流動する際にエロージョン・コロージョンが発生し易い。そこで、例えば特許文献1のように、エロージョン・コロージョンを抑制するために、熱交換器への入水温度に応じて熱交換器における湯水の流量を制限する給湯装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチ給湯システムは、例えば工場等で、湯水の使用前に貯湯タンクに加熱した湯水を大量に貯湯しておくために利用される場合がある。また、例えば宿泊施設、入浴施設等で、給湯栓を開くとすぐに加熱された湯水が給湯される即湯機能のために、湯水の温度を維持しながら循環させる即湯循環システムの熱源として、マルチ給湯システムが利用される場合がある。一方、例えば入浴施設、温水プール等では、浴槽又はプールの湯水を濾過しながら湯水の温度を維持するために、マルチ給湯システムが利用される場合がある。
【0006】
このとき、特許文献1のようにエロージョン・コロージョン対策のために各給湯装置の熱交換部の湯水流量が制限されている場合には、給湯装置の最大給湯能力未満の給湯能力に制限された状態で作動することになる。しかし、マルチ給湯システムの作動目的によって、エロージョン・コロージョンの発生のし易さが異なるので、湯水流量の制限を緩和して給湯能力を向上させる余地があった。
【0007】
本発明の目的は、熱交換部のエロージョン・コロージョンを抑制すると共に給湯能力を向上させることができるマルチ給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明のマルチ給湯システムは、湯水を加熱する熱交換部と前記熱交換部の湯水流量を調整する流量調整手段を夫々備えた複数の給湯装置と、これら複数の給湯装置の作動台数制御を行う制御装置を備えたマルチ給湯システムにおいて、前記制御装置は、マルチ給湯システムの作動目的を設定する目的設定機能を有し、設定された作動目的に応じて前記複数の給湯装置に対して前記熱交換部の上限流量を夫々設定することを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、マルチ給湯システムの作動目的によって異なるエロージョン・コロージョンの発生のし易さに応じて、複数の給湯装置の熱交換部の上限流量を夫々設定することができる。従って、熱交換部のエロージョン・コロージョンが発生し難い作動目的の場合に熱交換部の上限流量を大きく設定して、熱交換部のエロージョン・コロージョンを抑制すると共にマルチ給湯システムの給湯能力を向上させることができる。
【0010】
請求項2の発明のマルチ給湯システムは、請求項1の発明において、前記作動目的の設定は、試運転時に行うことを特徴としている。
上記構成によれば、給湯マルチシステムの接続先を設定する試運転時に給湯マルチシステムの作動目的の設定を行うので、作業負担を増加させずに作動目的を設定することができる。
【0011】
請求項3の発明のマルチ給湯システムは、請求項1の発明において、前記作動目的には、少なくとも給湯、貯湯循環、即湯循環及び濾過循環が含まれ、前記濾過循環が設定された場合に前記上限流量を予め設定された最大流量にすることを特徴としている。
上記構成によれば、設定される作動目的には、少なくとも給湯、貯湯循環、即湯循環及び濾過循環が含まれている。そして、作動目的として濾過循環が設定された場合に、各給湯装置の熱交換部の上限流量を予め設定された最大流量にする。この濾過循環では酸素が溶存する上水の追加供給が少ないので、他の作動目的の場合と比べてエロージョン・コロージョンが発生し難い。そのため、濾過循環では複数の給湯装置の熱交換部における上限流量を、他の作動目的での制限された上限流量よりも大きい最大流量に設定して、熱交換部のエロージョン・コロージョンを抑制すると共に給湯能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマルチ給湯システムによれば、熱交換部のエロージョン・コロージョンを抑制すると共に給湯能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係るマルチ給湯システムが複数の給湯栓に給湯するように接続された例を示す図である。
【
図2】実施例に係るマルチ給湯システムを構成する給湯装置の説明図である。
【
図3】本発明の実施例に係るマルチ給湯システムが即湯循環システムに接続された例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例に係るマルチ給湯システムが貯湯循環システムに接続された例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例に係るマルチ給湯システムが濾過循環システムに接続された例を示す図である。
【
図6】接続先システムとマルチ給湯システムの作動目的と上限流量の対応テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0015】
図1に示すように、上水が矢印Wのように供給される施設側の給水配管1から供給された上水を加熱して、複数(ここではn個)の給湯栓F1~Fnが装備された施設側の給湯配管2に供給するように、マルチ給湯システム10が接続されている。このマルチ給湯システム10は、複数(例えば4台)の給湯装置11~14と、これら給湯装置11~14の作動台数の制御を行う制御装置15を有する。複数の給湯装置11~14は、例えば給湯装置11~14の個別の設定操作を行う操作リモコン11a~14aを夫々有する。制御装置15は、例えばマルチ給湯システム10の設定操作を行う操作リモコン15aを有する。
【0016】
複数の給湯装置11~14は並列に接続され、どの給湯装置11~14からでも複数の給湯栓F1~Fnに加熱した湯水を供給することができる。例えば給湯栓F1が開けられた場合に、制御装置15によって作動するように選択された1台以上の給湯装置(例えば給湯装置11)で加熱された湯水が、給湯栓F1に供給される。
【0017】
次に給湯装置11~14ついて説明するが、これら給湯装置11~14は同じ構成なので、給湯装置11について説明し、給湯装置12~14の説明を省略する。
図2に示すように、給湯装置11は、燃焼部21で燃料を燃焼させたときに発生する燃焼熱を利用して熱交換部22を流動する湯水を加熱するように構成された燃焼式給湯装置である。この給湯装置11は、熱交換部22に湯水(上水)を供給する給水部23と、熱交換部22で加熱された湯水の温度を調整して出湯する出湯部24を有する。
【0018】
給水部23は、給水配管1が接続される給水通路25と、給水通路25を開閉する給水弁26と、給水温度を検知する給水温度センサ27と、熱交換部22に供給される湯水流量を検知する給水流量センサ28を有する。
【0019】
出湯部24は、給湯配管2に接続される出湯通路29と、給水通路25から分岐されて出湯通路29に接続されたバイパス通路30と、給水通路25からバイパス通路30に流入させる湯水の流量を調整するバイパス流量調整弁31を有する。出湯通路29には、熱交換部22で加熱された湯水の出湯温度を検知する出湯温度センサ32と、加熱された湯水に分岐通路30からの湯水を混合することにより温度調整された湯水の給湯温度を検知する給湯温度センサ33と、出湯流量調整弁34が装備されている。出湯流量調整弁34は、熱交換部22を流動する湯水の流量を調整する流量調整手段であり、バイパス流量調整弁31と共に給湯装置1から出湯される温度調整された湯水の出湯流量を調整する。
【0020】
給湯装置11は、この給湯装置11の給湯運転を制御する制御部35を有する。給湯運転では、給水流量、給水温度、出湯温度、給湯温度に基づいて、燃焼部21の燃焼熱量の調整、流量調整弁31の開度調整が行われ、給湯温度が目標温度となるように出湯部24で調整された湯水が給湯される。
【0021】
制御装置15は、複数の給湯装置11~14の全台で燃焼部21が燃焼していない待機状態では、例えば給湯装置11を選択して給湯装置11の給水弁26を開いた状態にすると共に、他の給湯装置12~14の給水弁26を閉じた状態にしておく。この状態で例えば給湯栓F1が開けられて、給水弁26が開いている給湯装置11の給水流量センサ28が所定の流量以上の流量を検知すると、給湯装置11が作動して給湯運転が行われ、加熱された湯水が給湯栓F1から給湯される。
【0022】
例えば複数の給湯栓が開けられて、給湯装置11だけでは給湯に要求される熱量を供給できない場合には、制御装置15は、この要求される熱量の供給に必要な台数を作動させるために、必要な台数に応じた他の給湯装置12~14の給水弁26を開けて作動させる。このように、マルチ給湯システム10は、要求される熱量に応じて制御装置15が作動させる給湯装置台数を制御する作動台数制御を行って、小流量から大流量の給湯に対応するように構成されている。尚、制御装置15は、複数の給湯装置11~14の作動負荷を平均化するために、最初に作動させる順番を定期的に変更するローテーション制御を行う。
【0023】
マルチ給湯システム10は、
図1のように複数の給湯栓F1~Fnに給湯する場合だけでなく、
図3のように給湯栓を開くと加熱された湯水がすぐに給湯される即湯循環システム40の熱源機として利用される場合がある。即湯循環システム40は、複数の給湯栓F1~Fnを備えた循環通路41と、循環通路41に並列に介装された循環ポンプ42,43と、流路を切り替える三方弁44を有する。
【0024】
制御装置15は、給水弁26が開いている例えば給湯装置11を介して循環通路に湯水を常時循環させるために、循環ポンプ42,43の何れか一方を作動させ、定期的に三方弁44を切り替えて循環ポンプ42,43を交互に駆動することにより駆動負荷を平均化する。そして、循環させる湯水の温度を例えば目標温度に維持するために、必要に応じて給湯装置11が作動して湯水を加熱する。例えば給湯栓F1が開けられた場合には、給湯栓F1からの給湯量に応じた上水が矢印Wで示すように循環通路41に供給されて給水温度が下がるので、給湯装置11を作動させて給湯する。制御装置15による作動台数制御及びローテーション制御は、上記と同様である。
【0025】
また、マルチ給湯システム10は、
図4のように、一度に大量の湯水を使用できるように、貯湯タンク51に加熱した湯水を貯湯しておくための貯湯循環システム50の熱源機として利用される場合もある。貯湯循環システム50の循環通路52には、貯湯タンク51、循環ポンプ53,54、三方弁55が介装され、貯湯タンク51にはタンク給水配管56とタンク出湯配管57が接続されている。
【0026】
例えばマルチ給湯システム10の最大給湯能力を超える大量の湯水が一度に使用される場合には、予め使用量以上の湯水を貯湯タンク51に貯湯しておき、貯湯された湯水がタンク出湯配管57から矢印HWで示すように出湯される。そして出湯と同時に、出湯された湯水量に応じて矢印Wのように上水がタンク給水配管56から貯湯タンク51に供給される。この貯湯タンク51の低温の上水をマルチ給湯システム10が加熱して、貯湯タンク51に貯湯する。貯湯タンク51の湯水温度の維持のために、循環通路52に貯湯タンク51の湯水を循環させてマルチ給湯システム10で加熱することもできる。制御装置15による作動台数制御及びローテーション制御は、上記と同様である。
【0027】
その上、マルチ給湯システム10は、
図5のように、例えば入浴施設の浴槽61の湯水又は温水プールの湯水を清潔に保つために濾過しながら、この湯水の温度維持のための熱媒を加熱する濾過循環システム60の熱源機として利用される場合もある。濾過循環システム60は、フィルタ62と、濾過ポンプ63と、濾過槽64と、熱交換器65と、薬剤ユニット66を有する濾過装置67が、例えば浴槽61との間で濾過循環通路68を介して湯水を循環させるように構成される。
【0028】
フィルタ62は、浴槽61の底部から濾過装置67に導入される湯水中の例えば髪の毛のような異物を捕集する。濾過ポンプ63は、濾過循環通路68に浴槽61の湯水を循環させる。濾過槽64は、例えば主として多孔性のセラミックス粒子で構成される濾材を有し、この濾材を通過する湯水から濁り等の原因となる不純物を除去する。薬剤ユニット66は、環境又は人体に由来する細菌を殺菌するための塩素系の薬剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム水溶液等)を、浴槽61に戻す湯水に注入して一定以上の薬剤濃度を維持することにより、浴槽61での細菌の繁殖を防ぐ。
【0029】
熱交換器65には、循環ポンプ69,70と三方弁71が介装された熱媒循環通路72を介して、マルチ給湯システム10で加熱された熱媒が供給される。循環ポンプ69,70のうちの一方を駆動して熱媒循環通路72に熱媒を循環させ、この熱媒との熱交換によって濾過装置67導入された浴槽61の湯水を加熱して、浴槽61の湯水の温度を維持する。制御装置15による作動台数制御及びローテーション制御は、上記と同様である。
【0030】
熱媒は例えば湯水であり、矢印W1のように補水可能なように熱媒循環通路72が補水弁73を介して上水源に接続されている。浴槽61には、矢印W2のように、マルチ給湯システム10とは異なる熱源機で加熱された湯水又は上水が供給される。
【0031】
複数の給湯装置11~14の熱交換部22は、
図2のように熱伝導に優れた例えば銅管を屈曲させ、複数のフィンを装着して形成されている。この銅管の内壁では、流動する湯水によって摩耗するエロージョンが発生する。また、上水には酸素が溶け込んでいるが、上水が加熱されるとこの酸素が容易に気体となって出てくるので、銅管の内壁が腐食(酸化)するコロージョンが発生する。湯水が速く流動するほどエロージョンが起き易く、高温になるほどコロージョンが発生し易い。そしてコロージョン発生個所は、エロージョンが最も起き易い。そのため、給湯装置11~14が最大給湯能力で上水を加熱して給湯する場合にエロージョン・コロージョンが最も発生し易くなり、銅管の壁部の肉厚が薄くなって熱交換部22の劣化が速く進行してしまう。
【0032】
それ故、熱交換部22を流動する湯水の上限流量を予め設定されている最大流量(例えば25L/分)よりも低流量(例えば最大流量に制限係数を掛け算した流量)に制限して、エロージョン・コロージョンの発生を抑制している。このとき、例えば例えば出湯流量調整弁34、バイパス流量調整弁31を調整することによって、熱交換部22への給水流量を上限流量以下に減少させている。上限流量が制限されているので、複数の給湯装置11~14の最大給湯能力が発揮されない場合がある。
【0033】
一方、
図5のように浴槽61の湯水、温水プールの湯水の温度を濾過循環によって維持する場合には、熱媒循環通路72を循環する熱媒を加熱するので、熱媒中の溶存酸素量は限られている。それ故、給湯された湯水量だけ新たに上水が供給される
図1の給湯、
図3の即湯循環、
図4の貯湯循環と比べて、加熱による酸素の発生が少ないのでエロージョン・コロージョンが発生し難い。
【0034】
従って、マルチ給湯システム10が濾過循環システム60の湯水温度維持のための熱源機として使用される場合には、複数の給湯装置11~14の熱交換部22の上限流量を大きく設定してもエロージョン・コロージョンを抑制することができる。そして、熱交換部22の上限流量を予め設定されている最大流量に設定することによって、複数の給湯装置11~14の給湯能力を向上させることができる。
【0035】
そこで、制御装置15にマルチ給湯システム10の作動目的を設定する目的設定機能を持たせ、設定されたマルチ給湯システム10の作動目的に応じて、制御装置15が複数の給湯装置11~14の熱交換部22の上限流量を設定する。この作動目的の設定は、マルチ給湯システム10の試運転時に通常行う接続先システムの設定に合わせて行うことができる。
【0036】
例えば
図6に示すように、マルチ給湯システム10の試運転の開始時に接続先システムを操作リモコン15aから設定することにより、対応するマルチ給湯システム10の作動目的が自動的に設定され、作動目的に対応する熱交換部22の上限流量が自動的に設定される。作動目的が給湯、即湯循環、貯湯循環の場合には、予め設定された最大流量に、1未満の正の値に設定された制限係数A~Cを掛け算して、制限された上限流量が設定され、作動目的が濾過循環の場合には予め設定された最大流量に設定される。尚、設定流量の制限係数A~Cは、実験等に基づいて設定され、同じ値でもよく、夫々異なっていてもよい。
【0037】
上記マルチ給湯システム10の作用、効果について説明する。
マルチ給湯システム10の制御装置15は、マルチ給湯システム10の作動目的を設定する目的設定機能を有し、設定された作動目的に応じて複数の給湯装置11~14に対して湯水を加熱するための熱交換部22の上限流量を夫々設定する。従って、マルチ給湯システム10の作動目的によって異なる熱交換部22のエロージョン・コロージョンの発生のし易さに応じて、複数の給湯装置11~14に熱交換部22の上限流量を設定することができる。それ故、エロージョン・コロージョンが発生し難い作動目的の場合に熱交換部22の上限流量を大きく設定して、エロージョン・コロージョンを抑制すると共にマルチ給湯システム10の給湯能力を向上させることができる。
【0038】
また、マルチ給湯システム10の作動目的の設定は、接続先システムを設定する試運転時に行うので、作業負担を増加させることなく作動目的を設定することができる。そして、設定される作動目的には、少なくとも給湯、貯湯循環、即湯循環及び濾過循環が含まれ、濾過循環が設定された場合に上限流量を予め設定された最大流量にする。濾過循環では酸素が溶存する上水の追加供給が少ないので、他の作動目的と比べて熱交換部22のエロージョン・コロージョンが発生し難い。そのため、濾過循環では複数の給湯装置11~14の熱交換部22における上限流量を、他の作動目的での制限された上限流量よりも大きい最大流量に設定して、熱交換部22のエロージョン・コロージョンを抑制すると共に最大給湯能力を発揮させて給湯能力を向上させることができる。
【0039】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。