(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062797
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】温水循環装置
(51)【国際特許分類】
F24D 17/00 20220101AFI20230427BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20230427BHJP
【FI】
F24D17/00 P
F24H1/10 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172902
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松居 伸明
【テーマコード(参考)】
3L073
【Fターム(参考)】
3L073AA13
3L073AC09
(57)【要約】
【課題】循環を停止させずに密閉式の膨張タンクの空気室の圧力を測定して、この膨張タンクの不具合の予兆を検知することができる湯水循環装置を提供すること。
【解決手段】加熱された湯水の循環通路と、この循環通路に湯水を循環させる循環ポンプと、循環通路に連通する水室と初期状態で所定の圧力に充填された空気室とがダイヤフラムで仕切られた密閉式の膨張タンクと、湯水の循環を制御する制御手段を備えた温水循環装置において、膨張タンクの空気室の圧力を検知するための圧力検知手段と、水室を循環通路から遮断するための閉止弁と、閉止弁と水室の間から大気開放可能な開放弁を有し、制御手段は、湯水の循環中に閉止弁を閉止し且つ開放弁を開放して、圧力検知手段により空気室の圧力を検知し、この空気室の圧力が所定の圧力範囲に無い場合に警告報知を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された湯水の循環通路と、前記循環通路に湯水を循環させる循環ポンプと、前記循環通路に連通する水室と初期状態で所定の圧力に充填された空気室とがダイヤフラムで仕切られた密閉式の膨張タンクと、湯水の循環を制御する制御手段を備えた温水循環装置において、
前記膨張タンクの前記空気室の圧力を検知するための圧力検知手段と、前記水室を前記循環通路から遮断するための閉止弁と、前記閉止弁と前記水室の間から大気開放可能な開放弁を有し、
前記制御手段は、湯水の循環中に前記閉止弁を閉止し且つ前記開放弁を開放して、前記圧力検知手段により前記空気室の圧力を検知し、前記空気室の圧力が所定の圧力範囲に無い場合に警告報知を行うことを特徴とする温水循環装置。
【請求項2】
前記制御手段は、定期的に測定される前記空気室の圧力を記憶する記憶手段を有し、今回測定された圧力と前記記憶手段に記憶されている前回の圧力を比較して、この差が所定値以上の場合に警告報知を行うことを特徴とする請求項1に記載の温水循環装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記警告報知を行う場合に、前記循環通路の湯水の温度を低下させて循環を継続することを特徴とする請求項1又は2に記載の温水循環装置。
【請求項4】
請求項1の温水循環装置と監視サーバを有し、
前記温水循環装置の前記制御手段は通信網を介して前記監視サーバに通信可能に接続され、検知された前記空気室の圧力を前記監視サーバに送信して圧力データとして前記監視サーバに蓄積し、
前記制御手段又は前記監視サーバは、前記圧力データに基づいて、前記空気室の圧力が前記圧力範囲に無い場合に、前記膨張タンクの点検をサービスショップに指示することを特徴とする温水装置監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機で加熱された湯水を循環通路に循環させる温水循環装置に関し、特に湯水の熱膨張による循環通路の圧力上昇を吸収する膨張タンクを備えた温水循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば宿泊施設、入浴施設では、給湯栓を開くと加熱された湯水がすぐに給湯される即湯機能のために、温度を維持しながら湯水を循環通路に循環させる即湯循環システムが利用されている。即湯循環システムは、湯水を加熱する熱源機と、加熱された湯水を循環通路に循環させる温水循環装置を有する。
【0003】
熱源機には、複数の給湯栓から同時に給湯する場合に対応可能なように、複数の給湯装置を並列に接続して構成された大流量の給湯が可能なマルチ給湯システムが利用される。マルチ給湯システムは、少量の給湯にも対応可能なように、要求される熱量に応じて作動台数を変更して加熱するように構成されている。温水循環装置は、循環ポンプを駆動して、この熱源機で加熱された湯水を循環通路に常時循環させている。そして、給湯栓から給湯されると、給湯量に応じた上水が上水源から循環通路に供給される。
【0004】
上水が加熱されると体積が増加(熱膨張)する。一方、循環通路も加熱された湯水によって温められて熱膨張するが、上水と比べるとその膨張量は僅かである。そのため、循環通路内の圧力(循環圧力)が高まり、許容耐圧を超えると例えば循環通路の配管接続部分から湯水が漏れてしまう、又は装備されている機器が破損する虞がある。このような漏れ、破損を防止するため、体積が増加した湯水の一部を一時的に貯留して循環通路内の圧力の上昇を吸収する密閉式の膨張タンクが、循環通路に装備されている。
【0005】
密閉式の膨張タンクの内部は、例えば可撓性を有する合成樹脂製のダイヤフラムによって空気室と水室に仕切られている。空気室には、例えば空気、窒素のような気体が大気圧よりも高い圧力で充填されている。そして、水室が循環通路に連通するように接続されている。この密閉式の膨張タンクのダイヤフラムの破損によって又は空気室の充填口から気体が抜けてしまって、循環通路内の圧力上昇を吸収しきれなくなると、湯水の漏れ、機器の破損等の不具合が発生する場合がある。
【0006】
このような不具合を防ぐために、例えば特許文献1のダイヤフラムで仕切られた水室と空気室とを備えた圧力センサのように、水室と空気室を共に大気圧にした後、水室の圧力を変化させたときの空気室の圧力を測定することにより点検する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、水室が循環通路の一部になっており、循環する液体の流動が点検のために制限又は停止されてしまう。この技術を即湯循環システムに適用する場合には、湯水の循環を停止させて点検することになり、点検中は即湯循環システムが使用できないので、例えば1年毎に定期的に点検を行うことになる。そうすると、次回の点検までの長い期間に空気室の気体が抜けてしまう場合がある。従って、この膨張タンクに起因する不具合を予見することは困難であり、不具合が発生してから対応することになってしまう場合があった。
【0009】
本発明の目的は、循環を停止させずに密閉式の膨張タンクの空気室の圧力を測定して、この膨張タンクの不具合を検知することにより、この膨張タンクに起因する不具合発生を防止することができる湯水循環装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の温水循環装置は、加熱された湯水の循環通路と、前記循環通路に湯水を循環させる循環ポンプと、前記循環通路に連通する水室と初期状態で所定の圧力に充填された空気室とがダイヤフラムで仕切られた密閉式の膨張タンクと、湯水の循環を制御する制御手段を備えた温水循環装置において、前記膨張タンクの前記空気室の圧力を検知するための圧力検知手段と、前記水室を前記循環通路から遮断するための閉止弁と、前記閉止弁と前記水室の間から大気開放可能な開放弁を有し、前記制御手段は、湯水の循環中に前記閉止弁を閉止し且つ前記開放弁を開放して、前記圧力検知手段により前記空気室の圧力を検知し、前記空気室の圧力が所定の圧力範囲に無い場合に警告報知を行うことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、閉止弁を閉止し且つ開放弁を解放した状態で、空気室の圧力を測定するので、膨張タンクを循環通路の湯水から切り離した状態で、湯水の循環を妨げることなく空気室の圧力を測定できる。そして、測定した圧力が所定の圧力範囲に無い場合に警告報知を行う。従って、湯水の循環を妨げないので空気室の圧力の測定機会を容易に増やすことができ、膨張タンクの不具合を検知することにより、この膨張タンクに起因する不具合発生を防止することができる。
【0012】
請求項2の発明の温水循環装置は、請求項1の発明において、前記制御手段は、定期的に測定される前記空気室の圧力を記憶する記憶手段を有し、今回測定された圧力と前記記憶手段に記憶されている前回の圧力を比較して、この差が所定値以上の場合に警告報知を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、差が所定値以上になるほど急激に空気室の圧力が変動した場合には、空気室の圧力が急激に低下したことになるので、ダイヤフラムの破損又は充填口が開いたことが想定される。従って、前回測定時の圧力と今回の圧力の差が所定値以上の場合に警告報知を行って、膨張タンクの不具合発生を報知することができる。
【0013】
請求項3の発明の温水循環装置は、請求項1又は2の発明において、前記制御手段は、前記警告報知を行う場合に、前記循環通路の湯水の温度を低下させて循環を継続することを特徴としている。
上記構成によれば、空気室の圧力が所定の圧力範囲に無いため、又は空気室の圧力が急激に低下したため、膨張タンクで循環通路内の湯水の圧力を吸収できない場合に、循環通路の湯水の温度を低下させて循環を継続させる。従って、湯水の温度が低くなるので循環通路内の圧力を低下させることができ、給湯使用を妨げずに膨張タンクに起因する湯水の漏れ、循環通路の破損等の不具合発生を防ぐことができる。
【0014】
請求項4の発明の温水装置監視システムは、請求項1の温水循環装置と監視サーバを有し、前記温水循環装置の前記制御手段は通信網を介して前記監視サーバに通信可能に接続され、検知された前記空気室の圧力を前記監視サーバに送信して圧力データとして前記監視サーバに蓄積し、前記制御手段又は前記監視サーバは、前記圧力データに基づいて、前記空気室の圧力が前記圧力範囲に無い場合に、前記膨張タンクの点検をサービスショップに指示することを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、測定された空気室の圧力が圧力データとして監視サーバに蓄積される。そして制御手段又は監視サーバは、この蓄積された圧力データに基づいて、空気室の圧力が所定の圧力範囲に無い場合に、膨張タンクの点検を担当するサービスショップに点検を指示することによって、迅速な対応が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の湯水循環装置によれば、循環を停止させずに密閉式の膨張タンクの空気室の圧力を測定して、この膨張タンクの不具合の予兆を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例に係る温水循環装置を備えた即湯循環システムを示す図である。
【
図2】空気室の圧力測定の1例を示すフローチャートである。
【
図3】空気室の圧力測定の他の例を示すフローチャートである。
【
図4】温水循環装置管理システムの空気室の圧力測定の1例を示すフローチャートである。
【
図5】温水装置監視システムの監視サーバによる空気室の圧力測定のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0019】
最初に、即湯循環システムについて、
図1に基づいて説明する。
即湯循環システム1は、湯水を加熱する熱源機として複数(例えば4台)の給湯装置11~14で構成されたマルチ給湯システム10と、複数の給湯栓F1~Fnを備えた循環通路2にマルチ給湯システム10が加熱した湯水を循環させる温水循環装置3を有する。
【0020】
マルチ給湯システム10は、複数の給湯装置11~14の作動台数の制御を行う制御装置15を有する。複数の給湯装置11~14は、例えば給湯装置11~14の個別の設定操作を行う操作リモコン11a~14aを夫々備えている。制御装置15は、例えばマルチ給湯システム10の設定操作を行う操作リモコン15aを備えている。制御装置15は、無線又は有線の通信回線を介して通信網16(インターネット)に接続され、例えば運転データ、エラー発生のような即湯循環システム1に関する情報について、通信網16に接続されている監視サーバ17と通信することができる。これにより、監視サーバ17が温水循環装置3、マルチ給湯システム10を監視する温水装置監視システム20が構成されている。監視サーバ17は、演算装置、記憶装置等を備えたコンピュータであり、複数の給湯装置、給湯システム等の運転データを受けて、それらの状況を監視する。
【0021】
矢印Wのように上水源から上水が循環通路2に供給され、どの給湯装置11~14からでも複数の給湯栓F1~Fnに加熱した湯水を供給することができるように給湯装置11~14が並列に接続されている。例えば給湯栓F1が開けられた場合に、制御装置15によって作動するように選択された1台以上の給湯装置(例えば給湯装置11)で加熱された湯水が、給湯栓F1に供給される。
【0022】
次に温水循環装置3について説明する。
温水循環装置3は、マルチ給湯システム10で加熱された湯水を再びマルチ給湯システム10に供給するための循環通路2に介装されている。この温水循環装置3は、湯水を循環させるための2つの循環ポンプ4a,4bと、湯水の流路を切り替えるための三方弁5と、加熱された湯水の熱膨張による循環通路2内の圧力上昇を吸収するための密閉式の膨張タンク6と、湯水の循環を制御する制御部7(制御手段)を有する。
【0023】
制御部7は、三方弁5を切り替えて、2つの循環ポンプ4a,4bを交代で駆動し、循環ポンプ4a,4bの駆動負荷を平均化する。温水循環装置3は、2つの循環ポンプ4a,4bを有するので、一方が故障しても他方を駆動して、加熱された湯水を常時循環させることができる。制御部7は、データ記憶部7a(記憶手段)を有し、マルチ給湯システム10の制御装置15と連携して湯水の循環を制御することができるように、通信線7bによって制御装置15と通信可能に接続されている。
【0024】
密閉式の膨張タンク6の内部は、例えば合成樹脂製の可撓性を有するダイヤフラム8によって、空気室6aと水室6bとに仕切られている。空気室6aは、初期状態において、充填口6cから例えば空気、窒素のような気体が所定の初期充填圧力で充填され、気体が漏れ出ないように充填口6cが閉止されている。この充填口6cには、空気室6a内の圧力を検知するための空気室圧力センサ6d(圧力検知手段)が装備され、検知された圧力が制御部7に送信される。
【0025】
水室6bは、接続通路9を介して循環通路2に連通するように接続されている。接続通路9には、この接続通路9を閉止可能な閉止弁9aが装備されている。閉止弁9aは、通常は開いた状態であり、水室6bと循環通路2が連通する。
【0026】
接続通路9の閉止弁9aよりも循環通路2側には、循環通路2内の湯水の圧力(循環圧力)を検知するための循環圧力センサ9bが装備され、検知された圧力が制御部7に送信される。接続通路9の閉止弁9aと水室6bの間には、大気開放可能なように開放弁9cを備えた開放通路9dが接続されている。開放弁9cは、通常は閉じた状態である。尚、循環圧力センサ9bは、循環通路2に装備されてもよい。
【0027】
即湯循環システム1は、循環通路2及びマルチ給湯システム10の湯水の通路内に上水が満たされた(水張りされた)状態にして循環を開始させる。この水張りされた状態では、密閉式の膨張タンク6は、初期状態の空気室6aの初期充填圧力によってダイヤフラム8が水室6bの内壁に沿うように変形して、水室6bには上水が殆ど入っていない。
【0028】
制御部7が例えば循環ポンプ4aを駆動して湯水の循環を開始させることによって、マルチ給湯システム10で所定の循環目標温度になるように加熱が開始される。加熱された湯水は熱膨張するので、循環通路2内の圧力は水張りされたときよりも上昇する。密閉式の膨張タンク6は、熱膨張した湯水の一部を水室6bに導入して、循環通路2内の圧力上昇を吸収する。このとき空気室6aには気体が充填されているので、空気室6aの圧力と水室6bの圧力が均衡するようにダイヤフラム8が変形する。
【0029】
給湯栓F1~Fnから給湯されると、水室6bに導入されている湯水が循環通路2に戻り、供給される上水と共にマルチ給湯システム10で加熱されて給湯される。給湯栓F1~Fnからの給湯が終了すると、循環する湯水の温度維持のための加熱による熱膨張に応じた量の湯水が水室6bに導入される。
【0030】
空気室6aの気体は、充填口6cから外部に又はダイヤフラム8から水室側に少しずつ抜ける場合があり、空気室6aの圧力が初期充填圧力から時間の経過と共に徐々に低下する。湯水の循環圧力は基本的に経年変化しないので、空気室6aの圧力と水室6bの圧力の均衡時のダイヤフラム8は、空気室6aの圧力の低下に応じて空気室6a側に押し込まれた状態になり、空気室6aの容積が小さくなってゆく。最終的には、湯水の熱膨張を水室6bで吸収しきれなくなり、循環通路2の循環圧力が高まって、漏れ、破損が発生する虞がある。
【0031】
このような漏れ、破損が発生しないように、循環を停止させずに空気室6aの圧力の測定を定期的に(例えば1日1回)行い、空気室6aの圧力の異常又は空気室6aの圧力変動の異常を検知した場合に警告報知する。空気室6aの圧力の異常又は圧力変動の異常を知った即湯循環システム1の使用者は、膨張タンク6の点検、メンテナンスを依頼して、漏れ、破損が発生する前に空気室6aに気体を再充填する等の対応を行うことができる。制御部7による定期的に行う空気室6aの圧力測定について、
図2のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,3・・・)はステップを表す。
【0032】
例えば所定の測定時刻になると、空気室6aの圧力測定が開始される。最初にS1において循環運転中に通常開いている閉止弁9aを閉止してS2に進む。閉止弁9aを閉じると循環通路2と水室6bとを連通させる接続通路9が閉じられるので、循環通路2と膨張タンク6の間の湯水の流動が遮断された状態になる。
【0033】
S2において、循環運転中には通常閉じられている開放弁9cを開放してS3に進む。開放弁9cが開けられるので、開放通路9dを介して水室6bの湯水が外部に排出されて、水室6bが大気圧になり、空気室6aの圧力に応じて大気圧と均衡するようにダイヤフラム8が水室6b側に押し込まれる。空気室6aに十分な圧力がある場合には、水室6bの容積が略ゼロになる。
【0034】
S3において、空気室圧力センサ6dにより空気室6aの圧力を測定してS4に進む。そして、S4において、測定した圧力が、例えば初期充填圧力以下且つ初期充填圧力の半分以上のように設定された所定の圧力範囲内に無いか否か判定する。空気室6aの気体が十分に残っている場合には、初期充填圧力以下且つ初期充填圧力の半分以上の圧力が検知される。尚、初期充填圧力は上水の給水圧以上であり、初期充填圧力の半分の圧力は大気圧よりも高い圧力である。
【0035】
S4の判定がYesの場合はS5に進み、S5において空気室6aの圧力の警告報知が未報知か否か判定する。S5の判定がYesの場合はS6に進み、S6において空気室6aの圧力の警告報知を行ってS7に進む。空気室6aの圧力の警告報知は、温水循環装置3に装備された図示外のランプ、ディスプレイ等の表示手段又は音声出力手段によって報知する。また、通信接続された制御装置15の操作リモコン15aから表示又は音声出力によって報知するようにしてもよい。
【0036】
S7において、循環目標温度を現状よりも所定温度として例えば5℃低く設定して、S8に進む。制御部7は、制御装置15に循環目標温度を現状よりも低く設定するように指令して、制御装置15が給湯装置11~14に対して循環通路2に供給する湯水の循環目標温度を低下させる。
【0037】
最後にS8において、空気室6aの圧力測定のために閉止した閉止弁9aを開け、開放した開放弁9cを閉じて、膨張タンク6による循環通路2内の湯水の圧力上昇の吸収機能を復帰させて、空気室6aの圧力の測定を終了する。一方S4の判定がNoの場合、又はS5の判定がNoの場合にもS8に進み、S8において、空気室6aの圧力測定のために閉止した閉止弁9aを開け、開放した開放弁9cを閉じて、空気室6aの圧力の測定を終了する。
【0038】
空気室6aの圧力測定の他の例について、
図3に基づいて説明する。S1、S2は
図3と同じであり、閉止弁9aを閉じ、開放弁9cを開けて、S13に進む。S13において測定した空気室6aの圧力を制御部7のデータ記憶部7aに記憶してS14に進む。そしてS14において、データ記憶部7aに記憶されている前回測定時の圧力と今回測定した圧力の差(圧力変動)が例えば所定の変動許容値以上か否か判定する。変動許容値は、例えば膨張タンク6の耐用期間内には圧力上昇の吸収機能が失われない程度の値に予め設定されている。
【0039】
S14の判定がYesの場合には、S5に進む。S14の判定がNoの場合には、S8に進む。S5~S8は既に説明した
図2と同じなので説明を省略する。許容変動値以上の急激な圧力変動は、空気室6aの充填口6cが開いている、又はダイヤフラム8が破損していることが考えられるので、空気室6aの圧力の警告報知を行い、対応を促す。
【0040】
制御部7が制御装置15と通信網16を介して監視サーバ17に通信可能に接続されている場合の空気室6aの圧力測定の例について、
図4に基づいて説明する。S1、S2は
図2、
図3と同じであり、閉止弁9aを閉じ、開放弁9cを開けて、S23に進む。S23において空気室6aの圧力を測定し、この空気室6aの圧力を監視サーバ17に送信してS24に進む。監視サーバ17は、受信した空気室6aの圧力を不図示の記憶装置に圧力データとして蓄積する。
【0041】
S24において、前回測定時の圧力と今回測定した圧力の差(圧力変動)が例えば所定の変動許容値以上か否か判定する。変動許容値は、例えば膨張タンク6の耐用期間内には圧力上昇の吸収機能が失われない程度の値に予め設定されている。このS24の判定は、空気室6aの圧力の送信機会毎に、制御部7が前回測定時の圧力を監視サーバ17から取得して今回測定した圧力と比較してもよく、蓄積した圧力データに基づいて監視サーバ17が前回測定時の圧力と今回測定された圧力を比較してもよい。
【0042】
S24の判定がYesの場合はS5に進み、S24の判定がNoの場合はS8に進む。S5~S8は既に説明した
図2、
図3と同じなので説明を省略する。尚、S6において温水循環装置3に対して空気室6aの圧力の警告報知を行い、監視サーバ17からこの温水循環装置3を担当するサービスショップに膨張タンク6の点検を指示して早く対応できるようにすることもできる。
【0043】
制御部7が制御装置15と通信網16を介して監視サーバ17に接続されて温水装置監視システム20が構成されている場合には、例えば所定の測定時刻になると、監視サーバ17から制御部7に空気室6aの圧力測定を指示するように構成することもできる。例えば
図5のように、所定の測定時刻になると、S31において制御部7に空気室6aの圧力測定の開始指示を送信してS32に進む。空気室6aの圧力測定の開始指示を受けた制御部7は、既に説明したように閉止弁9aを閉じ、開放弁9cを開いて、空気室6aの圧力を測定し、測定した圧力を監視サーバ17に送信する。S32において、監視サーバ17は、受信した圧力を圧力データとして蓄積してS33に進む。
【0044】
S33において、監視サーバ17は、蓄積した圧力データに基づいて、今回測定した圧力と前回測定時の圧力との差(圧力変動)が例えば所定の変動許容値以上か否か判定する。S33の判定がYesの場合はS34に進み、S34において温水循環装置3の担当のサービスショップに膨張タンク6の点検未指示か否か判定する。S34の判定がYesの場合はS35に進み、S35において担当のサービスショップに膨張タンク6の点検指示を送信してS36に進む。そしてS36において、空気室6aの圧力測定の終了を指示して終了する。空気室6aの圧力測定の終了指示を受けた制御部7は、閉止弁9aを開け、開放弁9cを閉じて、空気室6aの圧力測定を終了する。
【0045】
上記温水循環装置3、温水装置監視システム20の作用、効果について説明する。
温水循環装置3は、閉止弁9aを閉止し且つ開放弁9cを解放した状態で、空気室6aの圧力を測定するので、膨張タンク6を循環通路2の湯水から切り離した状態で、湯水の循環を妨げることなく空気室6aの圧力を測定することができる。そして、測定した空気室6aの圧力が所定の圧力範囲に無い場合に空気室6aの圧力の警告報知を行う。従って、湯水の循環を妨げないので空気室6aの圧力の測定機会を容易に増やすことができ、膨張タンク6の不具合を検知することにより、この膨張タンク6に起因する不具合発生を防止することができる。
【0046】
制御部7は、定期的に測定される空気室6aの圧力をデータ記憶部7aに記憶し、今回測定された圧力とデータ記憶部7aに記憶されている前回の圧力と比較して、この差が予め定められた許容変動値(所定値)以上の場合に空気室6aの圧力の警告報知を行う。差が所定値以上になるような急激な圧力の変動がある場合には、空気室6aの圧力が急激に低下したことになるので、ダイヤフラム8の破損又は充填口6cが開いていることが想定される。従って、前回と今回の圧力の差が所定値以上の場合に空気室6aの圧力の警告報知を行って、膨張タンク6の不具合発生を報知することができる。
【0047】
制御部7は、空気室6aの圧力が所定の圧力範囲に無いため、又は空気室6aの圧力が急激に低下したため、警告報知を行う場合に、循環通路2の湯水の温度を低下させることによって循環通路2内の湯水の圧力上昇を緩和して、湯水の循環を継続させる。従って、加熱された湯水の熱膨張を抑制して循環通路2内の圧力を低下させることができ、給湯使用を妨げずに膨張タンク6に起因する湯水の漏れ、循環通路2の破損等の不具合発生を防ぐことができる。
【0048】
温水装置監視システム20は、温水循環装置3と監視サーバ17を有し、制御部7は通信網16を介して監視サーバ17に通信可能に接続されている。制御部7は、測定された空気室6の圧力を監視サーバ17に送信し、監視サーバ17は受信した圧力を圧力データとして蓄積する。制御部7又は監視サーバ17は、蓄積された圧力データに基づいて、空気室6の圧力が所定の圧力範囲に無い場合に、膨張タンク6の点検をサービスショップに指示するので、迅速な対応が可能になる。
【0049】
制御部7が制御装置15を介さずに監視サーバ17と通信可能に接続されてもよい。また、制御部7の代わりに記憶手段を備えた制御装置15を制御手段として温水循環装置3が構成され、制御装置15が空気室6の圧力測定を行うようにしてもよい。空気室6の圧力の警告報知は、繰り返し行ってもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。