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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062802
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】面圧センサシート
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230427BHJP
   G01L 1/14 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
G01L1/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172909
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】小久保 陽太
(72)【発明者】
【氏名】上野 哲司
(72)【発明者】
【氏名】池本 歩
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB06
(57)【要約】
【課題】特定の条件下では検出精度が低下してしまうといった従来構造の面圧センサシートが内在していた問題を解決する。
【解決手段】外部から及ぼされる圧力に伴って弾性的に形状変化する検出部68を複数備えており、各検出部68には第一電極24と第二電極26が対向配置されて圧力が電気的に検出されるようになっている面圧センサシート12であって、複数の検出部68の少なくとも一つにおいて、第一電極24及び第二電極26の少なくとも一方には、第一電極24と第二電極26が対向する内面側と反対の外面側に位置して、検出部68の局所的変形を抑える補強材84が配されている。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から及ぼされる圧力に伴って弾性的に形状変化する検出部を複数備えており、各該検出部には第一電極と第二電極が対向配置されて圧力が電気的に検出されるようになっている面圧センサシートであって、
前記複数の検出部の少なくとも一つにおいて、前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方には、該第一電極と該第二電極が対向する内面側と反対の外面側に位置して、該検出部の局所的変形を抑える補強材が配されている面圧センサシート。
【請求項2】
前記第一電極と前記第二電極が互いに異なる方向に延びて各複数本形成されており、該第一電極と該第二電極における複数の交差状の対向箇所においてそれぞれ前記検出部が構成されている請求項1に記載の面圧センサシート。
【請求項3】
前記検出部には、前記第一電極と前記第二電極との対向間において弾性変形可能なセンサ弾性層が配されていると共に、該センサ弾性層が誘電体層とされており、外部から該第一電極と該第二電極との対向方向に及ぼされる圧力が該第一電極と該第二電極の対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて電気的に検出されるようになっている請求項1又は2に記載の面圧センサシート。
【請求項4】
前記補強材が、前記第一電極及び前記第二電極の各外面側にそれぞれ配されている請求項1~3の何れかに記載の面圧センサシート。
【請求項5】
前記第一電極と前記第二電極のうちの一方の電極の外面側に配された前記補強材が、他方の電極の外面側に配された前記補強材に対して、シート厚さ方向において全体に亘って重なるように配されている請求項4に記載の面圧センサシート。
【請求項6】
前記補強材が、隣り合う別の前記検出部にまで至らない大きさであり、且つ、隣り合う別の該検出部に配された前記補強材と重ならないで配されている請求項1~5の何れか一項に記載の面圧センサシート。
【請求項7】
前記検出部の周囲には前記第一電極と前記第二電極とが対向配置されていない非検出部が設けられており、前記補強材が該検出部の全体を覆い且つ該非検出部まではり出して配されている請求項1~6の何れか一項に記載の面圧センサシート。
【請求項8】
前記補強材は、前記第一電極が積層形成される第一基体シート及び前記第二電極が積層形成される第二基体シートよりも変形強度が大きい請求項1~7の何れか一項に記載の面圧センサシート。
【請求項9】
前記複数の検出部のうちの少なくとも一つにおいて、前記第一電極と前記第二電極の少なくとも一方の外面側で前記補強材よりも外側に位置して、荷重の作用と除去に際して弾性的に形状復元する形状復元層が設けられている請求項1~8の何れか一項に記載の面圧センサシート。
【請求項10】
前記補強材は前記複数の検出部の合計面積よりも大きな合計面積を有しており、
前記形状復元層は該補強材の合計面積よりも大きな合計面積を有しており、
それによって、該補強材が何れの検出部も全体に亘って覆うように配されていると共に、該形状復元層が何れの該補強材も全体に亘って覆うように設けられている請求項9に記載の面圧センサシート。
【請求項11】
前記形状復元層が合成樹脂製の弾性発泡体によって構成されており、
該形状復元層が前記第一電極及び前記第二電極の各外面側にそれぞれ設けられている請求項9又は10に記載の面圧センサシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体としてシート状とされて外部から面方向に及ぼされる圧力を電気的に検出する検出部を複数箇所に備えている面圧センサシートに関する。
【背景技術】
【0002】
外部から及ぼされる圧力を複数箇所で検出する面圧センサシートは、例えば特開2018-112405号公報(特許文献1)や特開2010-043881号公報(特許文献2),特開2012-181084号公報(特許文献3),特開2015-136620号公報(特許文献4)などにおいて、従来から知られている。
【0003】
このような面圧センサシートは、複数の検出部をシートの面方向の異なる箇所に備えており、それらの検出部による電気的な圧力検出信号に基づいて、各検出部毎に圧力検出値を出力する他、圧力の分布状態を出力したり、圧力の変化を出力したりなど、用途に応じて各種センサ装置として用いられ得る。
【0004】
ところで、かかる面圧センサシートにおける検出部は、一般に第一電極と第二電極が対向配置されており、これら第一電極と第二電極との対向面間における電気的な状態について、外部から及ぼされる圧力に起因する変化を検出するようになっている。具体的には、例えば導電層や誘電体層又は抵抗層などからなる中間層が第一電極と第二電極との対向面間に配されており、圧力作用に伴って当該中間層が変形等することに伴う導電率や静電容量,電気抵抗などの変化に基づいて、検出部に作用する圧力を検出するようになっている。
【0005】
また、かかる面圧センサシートは、圧力の検出面の各種形状に対応したり、部分的な圧力作用にも対応したりすることができるように、一般にセンサシート自体が全体として柔軟に変形可能とされている。特に検出部は、中間層自体が変形することで圧力検出するようになっていることから、一般に第一電極と第二電極を含む検出部の全体が変形可能とされている。また、検出部が弾性変形によって復元可能とされることで、例えば面圧センサシートを再利用や再検出可能にすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-112405号公報
【特許文献2】特開2010-043881号公報
【特許文献3】特開2012-181084号公報
【特許文献4】特開2015-136620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述の如き従来構造の面圧センサシートについて、本発明者が検討を重ねたところ、特定の条件下では検出精度が低下してしまうという、新規な問題を内在することが判った。
【0008】
そして、かかる新規な問題は、従来の面圧センサシートにおける構造に起因すると考えられるとの新たな知見を得た。即ち、従来の面圧センサシートは、各検出部において第一電極及び第二電極を含む全体が変形可能とされていることから、検出部に対して局所的に大きな荷重が入力された場合に、当該検出部において第一電極と第二電極が局所的に大きく接近するような変形が惹起される。その結果、中間層が局所的に底付きをしたり、局所的に変形量が大きくなることで、検出部全体としての弾性的な変形特性が異常となるために、検出部による荷重の検出精度に悪影響が及ぼされると推定されるのである。
【0009】
ここにおいて、本発明は、本発明者が新たに得たかくの如き知見に基づいて、従来構造の面圧センサシートが内在していた前述の如き新規な問題を解決するために為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0011】
第一の態様は、外部から及ぼされる圧力に伴って弾性的に形状変化する検出部を複数備えており、各該検出部には第一電極と第二電極が対向配置されて圧力が電気的に検出されるようになっている面圧センサシートであって、前記複数の検出部の少なくとも一つにおいて、前記第一電極及び前記第二電極の少なくとも一方には、該第一電極と該第二電極が対向する内面側と反対の外面側に位置して、該検出部の局所的変形を抑える補強材が配されているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、補強材によって検出部の局所的な変形が抑えられることから、検出部に対して局所的に大きな荷重が作用する際に、検出部が局所的に大きく変形することによる検出精度への悪影響が抑制されて、入力荷重の検出精度の向上が図られる。例えば、歯の咬合面のような凹凸面が検出部に押し当てられる場合に、凹凸面の凸部が接触する部位で検出部に対して部分的に作用する集中的な大荷重が、補強材を介することによって検出部のより広い範囲へ分散して及ぼされることから、第一電極と第二電極の局所的な過剰接近による検出精度への悪影響が防止される。
【0013】
補強材が第一電極と第二電極の外面側に配されていることにより、柔軟な第一電極と第二電極に対する入力側である外面側が補強材によって保護されており、局所的な集中荷重の作用によって第一電極と第二電極に凹みや亀裂などの損傷が生じるのを防ぐことができる。
【0014】
補強材が第一電極と第二電極の外面側に位置していることにより、第一電極と第二電極の対向面間距離が補強材によって狭くなるのを防ぐことができて、第一電極と第二電極の接近方向のストロークが大きく確保される。これにより、第一電極と第二電極の接近方向への入力に対する検出部の変形量を大きく得ることができて、検出部の変形に伴う電気的な出力が大きくなることから、圧力の検出精度の向上が図られる。
【0015】
第二の態様は、第一の態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記第一電極と前記第二電極が互いに異なる方向に延びて各複数本形成されており、該第一電極と該第二電極における複数の交差状の対向箇所においてそれぞれ前記検出部が構成されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、目的とする数の検出部を少ない第一電極及び第二電極によって構成することができて、より簡単な構造によって優れた圧力検出精度を実現することができる。
【0017】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記検出部には、前記第一電極と前記第二電極との対向間において弾性変形可能なセンサ弾性層が配されていると共に、該センサ弾性層が誘電体層とされており、外部から該第一電極と該第二電極との対向方向に及ぼされる圧力が該第一電極と該第二電極の対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて電気的に検出されるようになっているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、センサ弾性層の弾性によっても局所的な入力に対する抗力を得ることができることから、底付きによる検出精度の低下がより効果的に防止され得る。また、センサ弾性層が誘電体層とされて、検出部が静電容量型の検出素子とされることから、面圧分布を効率的に測定することができる。また、第一電極と第二電極との対向間に弾性変形可能とされたセンサ弾性層が配されていても、センサ弾性層の弾性変形量が局所的に過大となるのが補強材の圧力分散作用によって防止されることから、センサ弾性層の損傷などが回避され得る。
【0019】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記補強材が、前記第一電極及び前記第二電極の各外面側にそれぞれ配されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、第一電極と第二電極が画外面側に配された補強材によってそれぞれ保護されることから、第一電極と第二電極の入力による凹みや亀裂などの損傷が防止される。
【0021】
例えば歯の咬合力を測定する場合のように、第一電極側への接触面(歯の一方の咬合面)と第二電極側への接触面(歯の他方の咬合面)との両方が凹凸面とされている場合にも、検出部の局所的な変形が第一電極と第二電極の対向方向の両側において補強材によって防止される。それゆえ、検出部の局所的な大変形に起因する検出精度の低下を、より効果的に防ぐことができる。
【0022】
第五の態様は、第四の態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記第一電極と前記第二電極のうちの一方の電極の外面側に配された前記補強材が、他方の電極の外面側に配された前記補強材に対して、シート厚さ方向において全体に亘って重なるように配されているものである。
【0023】
検出部の局所的な変形による検出精度の低下は、例えば、検出部が両側から凸部によって挟まれる場合に、特に問題となり易い。本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、第一電極と第二電極の両外面側に配された補強材が、入力方向であるシート厚さ方向で全体に亘って相互に重なるように配されていることにより、それら補強材の配された部分において凸部間で挟まれるようにして入力されたとしても、検出部が部分的に過大な変形を生じることによる検出精度の低下が防止される。
【0024】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記補強材が、隣り合う別の前記検出部にまで至らない大きさであり、且つ、隣り合う別の該検出部に配された前記補強材と重ならないで配されているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、隣り合う補強材同士の干渉や、
1つの検出部に配された補強材と当該1つの検出部と隣り合う他の検出部との干渉が、防止されることから、補強材の干渉が検出部の圧力検出に影響するのを防ぐことができる。
【0026】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記検出部の周囲には前記第一電極と前記第二電極とが対向配置されていない非検出部が設けられており、前記補強材が該検出部の全体を覆い且つ該非検出部まではり出して配されているものである。
【0027】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、検出部の全体が補強材によって覆われていることにより、検出部において局所的な大変形が補強材の圧力分散作用によって防止される。また、検出部の周囲に圧力を検出しない非検出部が設けられており、検出部の全体を覆う補強材が検出部の周囲まで張り出していても、補強材の張出し部分が非検出部上に位置することにより、隣接して位置する検出部に干渉し難く、補強材が圧力検出に影響するのを防ぐことができる。
【0028】
第八の態様は、第一~第七の何れか1つの態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記補強材は、前記第一電極が積層形成される第一基体シート及び前記第二電極が積層形成される第二基体シートよりも変形強度が大きいものである。
【0029】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、第一基体シート及び第二基体シートが補強材よりも変形強度が小さく柔軟とされていることにより、入力に対する検出部の変形が有効に生じることから、検出部による圧力の検出性能を確保することができる。また、補強材が第一基体シート及び第二基体シートよりも変形強度が大きく硬質とされていることにより、局所的な入力に対する圧力分散作用を有効に得ることができる。
【0030】
第九の態様は、第一~第八の何れか1つの態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記複数の検出部のうちの少なくとも一つにおいて、前記第一電極と前記第二電極の少なくとも一方の外面側で前記補強材よりも外側に位置して、荷重の作用と除去に際して弾性的に形状復元する形状復元層が設けられているものである。
【0031】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、凹凸面が検出部に押し当てられる際に、凹凸面の凹部が形状復元層によって埋められて、圧力の更なる分散化が図られることにより、検出精度の向上が図られる。特に、形状復元層による圧力分散作用によって補強材に作用する集中荷重が緩和されて、過大な集中荷重による補強材の凹みなどの損傷も回避される。
【0032】
形状復元層が荷重の作用と除去に際して弾性的に形状復元することから、形状復元層を補強材のよりも外面側に配することにより、面圧センサシートを繰り返し使用する場合に、前回使用時の変形の痕跡等を形状復元層によって覆い隠すことができる。
【0033】
第十の態様は、第九の態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記補強材は前記複数の検出部の合計面積よりも大きな合計面積を有しており、前記形状復元層は該補強材の合計面積よりも大きな合計面積を有しており、それによって、該補強材が何れの検出部も全体に亘って覆うように配されていると共に、該形状復元層が何れの該補強材も全体に亘って覆うように設けられているものである。
【0034】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、全ての検出部が全体に亘って補強材で覆われていることにより、何れの検出部においても局所的な大入力による検出精度の低下が補強材の圧力分散作用によって防止されて、高い検出性能を備えた面圧センサシートを実現することができる。
【0035】
また、全ての補強材が全体に亘って形状復元層で覆われていることにより、何れの補強材においても、形状復元層の圧力分散作用による凹みや傷等の損傷の軽減が図られると共に、変形の痕跡等を覆い隠すことができる。
【0036】
第十一の態様は、第九又は第十の態様に記載された面圧センサシートにおいて、前記形状復元層が合成樹脂製の弾性発泡体によって構成されており、該形状復元層が前記第一電極及び前記第二電極の各外面側にそれぞれ設けられているものである。
【0037】
本態様に従う構造とされた面圧センサシートによれば、形状復元層が合成樹脂製の弾性発泡体とされていることにより、優れた緩衝性能(圧力分散作用)を得ることができると共に、形状復元層を軽量且つ製造容易に得ることができる。
【0038】
形状復元層が第一電極及び第二電極の各外面側にそれぞれ設けられていることにより、例えば、使用による補強材や検出部の凹み等の痕跡が外部に露出するのを、面圧センサシートの両面において防ぐことができる。また、面圧センサシートの両面において形状復元層の圧力分散作用を得ることも可能とされて、耐久性や圧力検出性能の更なる向上を図ることもできる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、検出部に対して局所的に大きな荷重が入力された場合に検出部による荷重の検出精度に悪影響が及ぼされるといった、従来構造の面圧センサシートが内在していた新規な問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第一の実施形態としての咬合力センサシートを装着した咬合力検出装置の一例を示す平面図
図2A図1におけるII-II断面の要部を拡大して示す縦断面図であって、測定シート部分における感圧部を示す図
図2B図1におけるII-II断面の要部を拡大して示す縦断面図であって、接続シート部分を示す図
図3図1に示す咬合力センサシートを構成する第一電極シートの平面図
図4図1に示す咬合力センサシートを構成する第二電極シートの平面図
図5図1に示す咬合力センサシートを構成する誘電体層の平面図
図6図1に示す咬合力センサシートを構成するガード層の平面図
図7図1に示す咬合力センサシートを構成する補強フィルムの平面図
図8図1のVIII部を拡大して示す図
図9図1に示す咬合力センサシートを構成する形状復元層の平面図
図10A】本発明に係る面圧センサシートを用いた荷重測定試験の結果を示すグラフ
図10B】従来構造の面圧センサシートを用いた荷重測定試験の結果を示すグラフ
図10C】本発明に係る別の面圧センサシートを用いた荷重測定試験の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0042】
図1には、咬合力検出装置10の一例が示されている。咬合力検出装置10は、本発明に従う構造とされた面圧センサシートの第一の実施形態である咬合力センサシート12と制御装置14とを備えている。そして、咬合力検出装置10は、咬合力センサシート12によって、検出対象者(患者)の上下の歯の噛み合わせによる咬合力を検出する。なお、以下の説明では、原則として、上下方向とはセンサ厚さ方向であって後述する第一電極24と第二電極26の対向方向である図1中の紙面直交方向を言う。同様に、前後方向とは測定時における患者の略前後方向となる図1中の上下方向を言い、患者の口腔への挿入方向を前方とする。また、左右方向とは、測定時における患者の略右左方向となる図1中の左右方向を言う。
【0043】
より詳細には、咬合力センサシート12は、全体として柔軟で薄肉のシート状とされており、本実施形態では全体が略一定の厚さで平面的に広がった形状とされている。咬合力センサシート12はセンサシート本体16を備えており、センサシート本体16が、検出対象者の口腔に差し入れられる測定シート部分18と、測定シート部分18から口腔外へ延び出される接続シート部分20とを、備えている。
【0044】
測定シート部分18は、口腔に差し入れられて平面状に広がって配置されるように、口腔の平面形状に略対応した略弓形乃至は略幅広馬蹄形の如き平面形状とされている。一方、接続シート部分20は、患者の口先から口腔外へ突出するように、測定シート部分18の後側の湾曲頂部から所定幅で外方に延びだした略短冊形状とされている。
【0045】
そして、測定シート部分18は、口腔に差し入れられて上下の歯間で噛み合わされることにより、噛み合わせによって及ぼされる圧力(咬合力)を電気的に検出する領域としての感圧部22を有している。感圧部22は、図2Aに示すように、一対の電極である第一電極24と第二電極26とが、シート厚さ方向で、センサ弾性層としての誘電体層28を挟んで対向配置されている。本態様において感圧部22は、図1中にグレーの網かけで示す領域であり、後述するセル状の検出部68の配列領域をいい、隣り合う検出部68,68間の隙間(後述する非検出部86)を含む。なお、図2Aと後述する図2Bでは、見易さのために、厚さを誇張して図示してある。
【0046】
測定シート部分18において、感圧部22の周りには、第一電極24と第二電極26が対向配置されていない周辺領域があり、かかる周辺領域は、第一電極24に導通された導電線としての第一導電線30や第二電極26に導通された導電線としての第二導電線32が設けられた配線部34とされている。
【0047】
測定シート部分18に設けられた第一及び第二導電線30,32は、測定シート部分18から接続シート部分20にまで連続して延びている。接続シート部分20は、前後に延びる長さ方向の一方の端部において、測定シート部分18につながっていると共に、長さ方向の他方の端部には、制御装置14側の電気回路に接続されるコネクタ部36が設けられている。要するに、接続シート部分20は、コネクタ部36と、測定シート部分18とコネクタ部36とを接続する接続部38とを有しており、コネクタ部36は接続部38に比べて、幅広に形成されている。
【0048】
すなわち、接続シート部分20には、第一及び第二導電線30,32が、長さ方向の略全長に亘って延びて設けられている。そして、コネクタ部36では、測定シート部分18から延びる第一及び第二導電線30,32の接続端部が露出されており、制御装置14側のコネクタ部分に対して着脱可能に接続されることで、外部の電気回路である制御装置14の側の電気回路に導通されて電気接続されるようになっている。
【0049】
ここにおいて、本実施形態では、上述の測定シート部分18および接続シート部分20は、全体に亘って、複数の積層構造とされている。具体的には、第一電極シート40(図3参照)と、第二電極シート42(図4参照)と、誘電体層28(図5参照)と、ガード電極層44(図6参照)とを、互いにシート厚さ方向で重ね合わせて一体化した積層シート構造をもって、センサシート本体16が形成されている。なお、本実施形態では、第一電極シート40や第二電極シート42において、後述する第一基体シート46や第二基体シート58が透明な部材とされており、例えば図1図4においては、第二電極26や第二導電線32が第二基体シート58を透過して示されている。また、例えば図1では、分かり易さのために、第一電極24や第一導電線30が第二基体シート58及び誘電体層28を透過して示されている。第一電極シート40と第二電極シート42とを、シート厚さ方向で重ね合わせる際には、第一及び第二電極シート40,42は、それぞれ図3,4に示される向きで重ね合わされる。第一電極シート40と第二電極シート42とは、例えばそれぞれシルクスクリーン印刷等の従来公知の印刷方法により形成される。
【0050】
第一電極シート40は、図3に示すように、電気絶縁性を有する第一基体シート46の上面に第一電極24が形成された構造を有している。
【0051】
第一基体シート46は、ゴムや合成樹脂、エラストマなどで形成された柔軟なシート状であって、測定シート部分18を構成する前側部分48aが平面視において歯列に応じた弓形乃至は馬蹄形とされていると共に、接続シート部分20を構成する後側部分48bが前側部分48aの左右中央において、所定幅でストレートに後方へ延び出した構造を有している。
【0052】
第一電極24は、ゴム材料や合成樹脂材料にカーボンや銀などの導電性材料を混合した導電性塗料などによって第一基体シート46の表面に形成されており、第一基体シート46の変形に追従して変形可能な柔軟性を有している。また、第一電極24は、平面視で略長方形とされて、左右方向に長手となるように配されている。本実施形態では、第一電極24が複数設けられており、9個の第一電極24が前後方向で並列的に配されている。以下の説明では、第一電極24を後側から順に24a,24b・・・24iと称するが、特に区別する必要がない場合には、単に第一電極24と称する。
【0053】
前側の5列の第一電極24e~24iは、それぞれ第一基体シート46の前端に設けられた凹部50を挟んだ左右両側において幅寸法が略一定とされた部分を有していると共に、これら左右両側において幅寸法が略一定とされた部分は、幅寸法が小さくされた連結部52によって連結されている。各連結部52は、凹部50を迂回するように設けられている。これにより、前側の5列の第一電極24e~24iは、左右両側に略長方形とされた部分を分かれて有しつつも、左右両側の部分が連結部52によって連結されることで、何れも一つの電極として形成されている。また、後側の4列の第一電極24a~24dは、連結部52が設けられることなく、一定幅で左右方向に略ストレートに延びている。
【0054】
第一電極24(第一電極24e~24iについては左右両側において略長方形とされた部分)の幅寸法は、特に限定されないが、例えば一般的な歯の咬合面の大きさなどに基づいて設定されており、幅寸法が2mm以上且つ30mm以下であることが望ましい。更に、幅方向で隣り合う第一電極24,24の間隔は、測定誤差や製造誤差等を考慮してできるだけ小さくすることが好ましく、例えば0.025mm以上且つ5mm以下とされることが望ましい。
【0055】
さらに、第一電極24には、第一導電線30が電気的に接続されている。第一導電線30は、導電性塗料などによって第一基体シート46に重なった積層状態で形成されており、第一電極24よりも狭幅とされている。かかる第一導電線30は、第一電極24の幅方向略中央を実質的に全長に亘って延びていることで第一電極24に電気的に接続されている。また、第一導電線30は、第一電極24と同様の柔軟性を有しており、第一基体シート46の変形に追従可能とされている。また、図2Aにも示されるように、本実施形態では、第一導電線30がそれぞれ第一電極24の下面に設けられているが、第一導電線30は第一電極24の上面に形成されていてもよい。
【0056】
各第一導電線30は、第一電極24の長さ方向一方の端部から長さ方向他方の端部まで連続して延びており、長さ方向他方の端部において後側に折れ曲がり、第一電極シート40において測定シート部分18を構成する前側部分48aの側縁部に沿って、湾曲しつつ後方に延びている。特に、第一電極24e~24iの長さ方向中間部分には連結部52が設けられており、第一導電線30は、第一電極24e~24iにおける長さ方向一方の端部から長さ方向他方の端部まで、連結部52上を通過して延びている。各第一導電線30は、第一電極シート40において接続シート部分20を構成する後側部分48bでは後方に略ストレートに延びており、接続端部である後端部において第一端子54に接続されている。即ち、本実施形態では、一つの第一電極24に対して、それぞれ一つの第一導電線30が設けられており、それら複数本の第一導電線30が、各第一電極24から各第一端子54に至るまで、略並列的に並んで延びるように形成されている。
【0057】
各第一端子54は、接続シート部分20のコネクタ部36において外部に露出しており、咬合力センサシート12を制御装置14に接続した際に、制御装置14の側の電気回路に導通接続されるようになっている。なお、各第一電極24a~24iから第一導電線30が延び出す側は、前後方向に並んだ第一電極24a~24iにおいて、左右交互に設定されている。これにより、左右両側において、感圧部22の周囲に設けられて第一導電線30が配線された周辺領域である配線部34において隣り合う第一導電線30の配線間距離を確保しつつ、配線部34の幅寸法を小さく設定できるようになっている。また、第一端子54は、例えば、第一基体シート46に設けた貫通孔を通じて下方外部へ露出されているが、第一基体シート46の上面に露出されていてもよい。
【0058】
第一電極24と第一導電線30は、同一の材料で形成されていてもよいが、本実施形態では、第一電極24がカーボンフィラーを用いた導電性塗料で形成されていると共に、第一導電線30が銀ペーストを用いた導電性塗料で形成されている。これにより、幅広とされた第一電極24が安価な材料で形成されていると共に、幅狭とされた第一導電線30がより電気抵抗の小さい材料で形成されている。
【0059】
また、第一電極シート40の表面(上面)には、絶縁性を有する合成樹脂からなるレジスト層56が設けられている。このレジスト層56は、第一電極24と第一導電線30を覆うように設けられており、第一電極シート40の上面において、全面に亘ってレジスト層56が設けられている。レジスト層56は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。このレジスト層56としては、例えば一般にプリント基板に設けられるソルダーレジストを採用することができる。特に、第一電極シート40は柔軟で変形可能であることから、レジスト層56も柔軟に形成されて第一電極シート40の変形に追従して変形可能である。
【0060】
本実施形態では、レジスト層56が、第一電極シート40の全面に亘って設けられることから、第一電極シート40において測定シート部分18における配線部34を構成する部分にもレジスト層56が設けられる。レジスト層56はある程度の強度を有していることから、配線部34に配される第一導電線30を補強することができる。レジスト層56は、測定シート部分18だけでなく、接続シート部分20にも設けられており、レジスト層56がコネクタ部36にも設けられている。
【0061】
一方、第二電極シート42は、図4に示すように、ゴムや合成樹脂、エラストマなどで形成された電気絶縁性を有する柔軟な第二基体シート58の下面に、第二電極26が配された構造を有している。
【0062】
第二基体シート58は、全体として第一基体シート46と略同じ形状とされており、測定シート部分18を構成する前側部分60aが平面視において歯列に応じた弓形乃至は馬蹄形とされていると共に、接続シート部分20を構成する後側部分60bが前側部分60aの左右中央において後方へ延び出した構造を有している。
【0063】
第二電極26は、第一電極24と同様に、ゴム材料や合成樹脂材料にカーボンや銀などの導電性材料を混合した導電性塗料などによって第二基体シート58の表面に形成されており、第二基体シート58の変形に追従可能な柔軟性を備えている。更に、第二電極26は、平面視で略長方形とされて、前後方向に長手となるように配されている。本実施形態では、第二電極26が複数設けられており、10個の第二電極26が左右方向で並列的に配されている。以下の説明では、第二電極26を左側から順に26a,26b・・・26jと称するが、特に区別する必要がない場合には、単に第二電極26と称する。なお、第二電極26の幅寸法や間隔は、例えば、第一電極24と同様に設定されていてもよいが、本実施形態では、第二電極26の幅寸法が第一電極24の幅寸法よりも小さくされている。
【0064】
さらに、第二電極26には、第二導電線32が電気的に接続されている。第二導電線32は、第一導電線30と同様に、導電性塗料などによって第二基体シート58の表面に形成されており、第二基体シート58の変形に追従可能な柔軟性を備えている。本実施形態の第二導電線32は、第二電極26よりも狭幅とされていると共に、第二電極26に重ねて積層状態で延びていることによって第二電極26に電気的に接続されている。本実施形態では、第二電極26が第一電極24と同様にカーボンフィラーを用いた導電性塗料で形成されていると共に、第二導電線32が第一導電線30と同様に銀ペーストを用いた導電性塗料で形成されている。特に、本実施形態では、第二導電線32がそれぞれ第二電極26の上面に設けられているが、第二電極26の下面に形成してもよい。
【0065】
本実施形態では、合計10本の第二電極26a~26jが、略一定の幅寸法をもって前後方向に延びる態様で、隣り合う左右方向で互いに所定距離を隔てて並列的に設けられている。なお、左右両側の4個ずつの第二電極26a~26d,26g~26jは、中央の凹部50を左右に避けるようにして、第二電極シート42において測定シート部分18を構成する前側部分60aの側縁部に沿って、後方になるにつれて左右方向中央側に傾斜していると共に、左右方向中央の2個の第二電極26e,26fが凹部50の後方において前後方向でストレートに延びている。
【0066】
第二導電線32は、各第二電極26a~26jの幅方向(左右方向)の略中央に位置して長さ方向の全長に亘って延びており、各第二電極26の後端から後方に延び出し、前側部分60aの外周縁に沿って接続シート部分20を構成する後側部分60bに延びている。後側部分60bでは、複数本の第二導電線32が互いに平行とされて後方にストレートに延びている。各第二導電線32の接続端部である後端部には、第二端子62が接続されており、接続シート部分20のコネクタ部36において外部に露出している。これにより、咬合力センサシート12を制御装置14に接続した際に、各第二端子62が、制御装置14側の電気回路に導通接続されるようになっている。なお、第二端子62は、例えば、第二基体シート58に設けられた貫通孔を通じて外部へ露出していてもよいし、第二基体シート58の下面に露出されていてもよい。
【0067】
また、第二電極シート42の表面(下面)には、絶縁性を有する合成樹脂からなるレジスト層64が設けられている。このレジスト層64は、第一電極シート40におけるレジスト層56と同様に、第二電極26と第二導電線32を覆うように設けられており、本実施形態では、第二電極シート42の下面において、全面に亘ってレジスト層64が設けられている。レジスト層64は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。レジスト層64は、配線部34から感圧部22にまでつながって設けられている。特に、本実施形態では、測定シート部分18だけでなく、接続シート部分20においてもレジスト層64が設けられており、レジスト層64がコネクタ部36にも設けられている。
【0068】
上記の如き第一電極シート40と第二電極シート42の対向面間には、図2Aに示されるように誘電体層28が配されており、第一電極シート40と第二電極シート42とが、誘電体からなる誘電体層28を挟んでシート厚さ方向に重ね合わされている。誘電体層28は、ゴムや合成樹脂などの電気絶縁性の材料で形成されたシート状とされており、厚さ方向である上下方向において弾性的な圧縮変形が許容されている。本実施形態の誘電体層28は、図5に示されるように、平面視において第一電極シート40や第二電極シート42と略対応した外周形状と大きさを有しており、測定シート部分18を構成する前側部分66aが略弓形又は馬蹄形とされていると共に、接続シート部分20を構成する後側部分66bが前側部分66aの左右中央において後方へ延び出した構造を有している。
【0069】
本実施形態では、第一電極シート40および第二電極シート42と誘電体層28とが、測定シート部分18を構成する前側部分48a,60a,66aにおいてそれぞれ略全面に亘って重ね合わされている。即ち、誘電体層28は、測定シート部分18における感圧部22だけでなく、測定シート部分18における配線部34にも、全体的につながって連続して広がる状態で重ね合わされている。誘電体層28はある程度の強度を有していることから、誘電体層28により、配線部34に配された第一及び/又は第二導電線30,32を補強することができる。また、誘電体層28の後端は、測定シート部分18よりも後方、具体的には接続シート部分20における接続部38の前後方向中間部分であるコネクタ部36の近くに位置しており、接続シート部分20においても、第一及び第二導電線30,32が、誘電体層28により補強されている。なお、図2Bにおいて、誘電体層28よりも後方の部分では、第一電極シート40と第二電極シート42とが、上下方向で相互に離隔しているが、図2A及び図2Bは咬合力センサシート12の縦断面をモデル的に示すものであり、例えば第一電極シート40と第二電極シート42とが後端部において相互に固着されることで、第一電極シート40と第二電極シート42とは相互に離隔していなくてもよい。
【0070】
誘電体層28は、好適には、多数の気泡を有する多孔質の弾性体とされており、後述する検出部68における静電容量を大きく得ることが可能とされていると共に、厚さ方向のヤング率が小さくされている。誘電体層28は、具体的には、例えば、ポリウレタンやポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種合成樹脂の発泡体によって形成される。
【0071】
そして、第一電極シート40と第二電極シート42とが誘電体層28を挟んで相互に重ね合わされる。第一電極シート40の第一電極24と、第二電極シート42の第二電極26は、互いに異なる方向に延びて、図1図2Aに示すように、第一電極24と第二電極26が誘電体層28を挟んで交差対向するように配されており、それら第一電極24(第一電極24e~24iは、連結部52を除く左右両側部分)と第二電極26の各交差状の対向部分が、それぞれ検出部68とされている。本実施形態では、各第一電極24a~24iが略左右方向に延びると共に、各第二電極26a~26jが略前後方向に延びており、且つ各第一電極24a~24iと各第二電極26a~26jがそれぞれ略等しい幅寸法とされていることから、検出部68が、平面視において略長方形や略菱形の形状をもって複数形成されている。
【0072】
各検出部68は、何れも、導電体である第一電極24と第二電極26の対向間に誘電率の大きな誘電体層28が配されて、それぞれコンデンサを構成している。また、誘電体層28の厚さ方向両面に第一電極24と第二電極26の各一方が重ね合わされた構造を有する検出部68は、誘電体層28が第一電極24と第二電極26の対向方向(上下方向)において弾性的な圧縮変形を許容されていることにより、上下方向において外部から及ぼされる圧力に伴う弾性的な形状変化が許容されている。そして、検出部68において、第一電極24と第二電極26の間に検出用電圧を印加した状態で第一電極24と第二電極26の対向間距離が誘電体層28の弾性変形によって変化することにより、検出部68の静電容量が変化せしめられるようになっている。本実施形態では、複数の検出部68が、歯列に略対応する略幅広のU字状に配されている。
【0073】
好適には、検出部68は、前後寸法と左右寸法がそれぞれ4mm~10mmとされていることが望ましい。また、検出部68は、好適には全体として4~256個が設けられる。さらに、歯列直交方向において特に中央の前歯対応部分における前後方向と両側の奥歯対応部分における左右方向とにおいては、検出部68が、それぞれ4つ以上並んで配されることが好ましく、検出部68が配置された検出領域の有効幅寸法が、それら中央の前後方向と両側の左右方向において何れも20mm以上とされることが好ましい。
【0074】
また、第一電極シート40における誘電体層28への重ね合わせ面と反対側の面(下面)には、ガード電極層44が重ね合わされている。ガード電極層44は、図6に示されるように、第一及び第二基体シート46,58と同様の形状、且つ同様の材料で形成された柔軟な第三基体シート70の上面にガード電極72が形成された構造を有している。ガード電極72は、第一及び第二電極24,26と同様に導電性材料で形成されて柔軟性を備えており、上下方向の投影において複数の検出部68の略全体を覆う形状とされている。すなわち、本実施形態では、ガード電極72が略U字状である。
【0075】
さらに、ガード電極層44には、ガード電極72に接続される接地配線74が第三基体シート70に重ね合わされた積層状態で形成されている。この接地配線74は、ガード電極72に電気的に接続されていると共に、ガード電極72から後方へ延び出しており、第三基体シート70の後端部に設けられた接地端子76に接続されている。なお、接地配線74は、好適には、ガード電極72よりも電気抵抗が小さい材料で形成されて、ガード電極72上にも形成されている。本実施形態では、ガード電極層44上にもレジスト層56,64と同様なレジスト層78が設けられており、ガード電極層44の表面(上面)の全面に亘ってレジスト層78が設けられている。
【0076】
更にまた、咬合力センサシート12のコネクタ部36には、補強シート80が重ね合わされて固着されている。本実施形態では、図2Bに示されるように、補強シート80が、第二基体シート58の後端部における外面(上面)に重ね合わされて固着されており、平面視において第一端子54、第二端子62、接地端子76をそれぞれ覆うと共に、誘電体層28と前後方向で部分的に重なっている。補強シート80は、第一及び第二電極シート40,42の後端部と略同様の形状とされており、好適には、第一及び第二基体シート46,58等よりも大きな強度を有する硬質の合成樹脂により形成される。本実施形態では、コネクタ部36に制御装置14が接続されることから、補強シート80が絶縁性を有する合成樹脂により形成されている。かかる補強シート80が設けられることにより、接続シート部分20のコネクタ部36において、第二電極シート42に設けられた第二導電線32を補強することができる。また、補強シート80は、前後方向において誘電体層28とオーバーラップしており、誘電体層28を介して、第一電極シート40に設けられた第一導電線30を補強している。
【0077】
本実施形態では、誘電体層28が、咬合力センサシート12における測定シート部分18から接続シート部分20における接続部38の前後方向中間部分にかけて設けられていると共に、補強シート80が、接続部38の前後方向中間部分からコネクタ部36にかけて設けられており、且つ誘電体層28と補強シート80が相互にオーバーラップしている。それ故、誘電体層28と補強シート80によっても、咬合力センサシート12の全長に亘って第一及び第二導電線30,32を補強することができる。また、誘電体層28と補強シート80との境界部分における歪や応力の集中緩和も図られている。
【0078】
上記の如き第一電極シート40、第二電極シート42、誘電体層28、ガード電極層44、補強シート80が重ね合わされて固着されることで、本実施形態のセンサシート本体16が構成されている。なお、第一電極シート40、第二電極シート42、誘電体層28、ガード電極層44、補強シート80は、接着や溶着等、従来公知の方法で固着され得る。本実施形態では、例えば、センサシート本体16の後端部において、第一電極シート40、第二電極シート42、ガード電極層44、補強シート80を上下両側から挟み込んで固着する硬質の保持部材82が取り付けられ得る。この保持部材82を制御装置14に接続することによって、コネクタ部36における第一端子54、第二端子62、接地端子76が制御装置14に対して電気的に接続されるようになっている。例えば、図2Bにおいて上下のレジスト層56,64の対向面間に形成された内部空間を、コネクタ部36において後方に開口させると共に、各レジスト層56,64に設けた貫通窓を通じて当該内部空間へ第一及び第二導電線30,32を露出させることにより、制御装置14側のコネクタ部分に形成された接続端子を当該内部空間へ差し入れて、第一及び第二導電線30,32へ導通させるようにしてもよい。
【0079】
また、咬合力センサシート12におけるコネクタ部36は、図1に示すように、制御装置14に接続される。制御装置14には、例えばコネクタ部36に位置する第一端子54、第二端子62、接地端子76が接続される。接地端子76が制御装置14に接続されることで、ガード電極72が接地されて、ガード電極72が基準電位に保たれるようになっていてもよい。更に、制御装置14は、第一及び第二導電線30,32によって第一及び第二電極24,26と接続されており、第一電極24と第二電極26の間に静電容量測定用の電圧を印加する電源装置と、各検出部68における静電容量の変化量を検出する検出手段と、検出手段による静電容量の検出結果に基づいて咬合力を算出する咬合力算出手段とを、備えていてもよい。
【0080】
センサシート本体16の測定シート部分18には、図2Aに示すように、補強材84が積層状態で取り付けられている。補強材84は、シート状乃至はフィルム状とされており、金属製であってもよいが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂材料によって形成されていることが望ましい。補強材84は、口腔へ挿入される測定シート部分18に重ね合わされることから、薄肉であることが望ましく、例えば1mm以下の厚さとされる。
【0081】
補強材84は、押し込み硬さ試験によって規定される硬さが、第一基体シート46と第二基体シート58と第三基体シート70と誘電体層28との何れよりも硬くされており、厚さ方向の押し込み力の作用に対する変形強度がより大きくされて、押し込み力の作用による撓みや凹み等の変形が生じ難くされている。より好適には、補強材84は、第一電極シート40と第二電極シート42とガード電極層44と誘電体層28との何れよりも押し込み力に関して変形強度が大きい硬い部材とされている。また、補強材84は、上下方向の圧縮力に対する変形強度が検出部68よりも大きくされており、補強材84が検出部68の外面側に積層状態で配されていても、補強材84の圧縮変形による咬合力の測定値への影響は実質的に問題にならない。
【0082】
本実施形態では、補強材84が第一基体シート46及び第二基体シート58よりも厚肉とされており、それによって、例えば、補強材84が第一,第二基体シート46,58と同一の材質とされていても、補強材84の変形強度が第一,第二基体シート46,58よりも大きくなる。補強材84の硬さ(変形強度)は、材質と厚さ寸法等の形状とによって、適宜に設定することができる。
【0083】
補強材84は、図2Aに示すように、センサシート本体16における検出部68の上下外側に重ね合わされており、第一電極24と第二電極26が対向する内面側とは反対の外面側に配されている。本実施形態において、補強材84は、第一電極24の外面側と第二電極26の外面側とにそれぞれ配されている。より具体的には、補強材84は、第一電極24が固着された第一基体シート46とガード電極層44とに対して下側に配されて、第三基体シート70の下面に固着されていると共に、第二電極26が固着された第二基体シート58の上面に固着されている。なお、以下の説明では、第二電極26の外面側(上側)に配された補強フィルムを補強材84a、第一電極24の外面側(下側)に配された補強フィルムを補強材84bとして区別する場合がある。
【0084】
補強材84は、図7に示すように、略同一平面上に複数が並んで設けられており、全体としてセンサシート本体16の感圧部22と略対応する平面視形状とされている。複数の補強材84は、それぞれが各1つの検出部68に対応する平面形状とされている。本実施形態では、検出部68の平面形状が略長方形又は菱形とされていることから、各補強材84の平面形状も略長方形又は菱形とされている。そして、複数の補強材84は、測定シート部分18における検出部68の配列領域と略対応する平面視U字状の領域に配列されている。
【0085】
各補強材84は、図8に示すように、好適には、平面視において検出部68よりも僅かに大きくされており、図2Aにも示すように、各検出部68の厚さ方向外面の全体を覆っていると共に、検出部68よりも外周側へ突出している。隣り合う検出部68,68の間には、第一電極24と第二電極26とが対向配置されていない非検出部86が設けられており、検出部68よりも外周側へ突出した補強材84が、非検出部86まで張り出している。従って、補強材84の合計面積は、検出部68の上下外面の合計面積よりも大きくされている。例えば、補強材84の合計面積は、検出部68の上下外面の合計面積の100%よりも大きく且つ110%以下とされる。
【0086】
検出部68の外面側を覆う補強材84は、隣り合う別の検出部68までは至らない大きさとされており、上下方向において別の検出部68とは重なっていない。また、隣り合う位置に配された補強材84,84は、それぞれ非検出部86まで張り出していると共に、厚さ方向で相互に重なることなく面方向で僅かに離隔している。従って、各補強材84は、厚さ方向において相互に独立して変位可能とされており、各検出部68による入力の検出に影響し難くなっている。なお、図8では、見易さのために、補強材84の外形線を実線で示し、第一,第二電極24,26の外形線を破線で示し、第一,第二導電線30,32の外形線を一点鎖線で示した。
【0087】
検出部68の上側に設けられた補強材84aと、検出部68の下側に設けられた補強材84bは、互いに略同じ形状及び大きさとされており、上下方向において略全体に亘って重なるように配されている。尤も、上側の補強材84aと下側の補強材84bは、互いに異なる形状や大きさとされていてもよく、必ずしも上下方向において全体に亘って重なっていなくてもよい。
【0088】
補強材84は、例えば片面に粘着層を有しており、測定シート部分18の最外面を構成する第二基体シート58又は第三基体シート70の外面に対して、当該粘着層によって貼着されることにより、センサシート本体16に固着されている。なお、基材シート上に図7のように配列された複数の補強材84を、複数の検出部68の各表面に同時に貼り付けることもできる。複数の補強材84は、例えば、基材シートに貼り合わされた樹脂シートをレーザー等でカットすることにより、基材シート上に予め配列された状態で形成することができる。
【0089】
各検出部68の外面側に比較的に硬い補強材84が配されていることにより、補強材84に対して面方向で集中的に及ぼされる圧力が、検出部68に面方向で分散して伝達されて、上下方向の入力に対する検出部68の局所的な変形が抑えられている。即ち、上下方向の圧縮力が検出部68に対して平面視で部分的に入力される際に、補強材84を介して検出部68に伝達される圧縮力は、硬い補強材84によって平面視の広い範囲に分散されて検出部68に及ぼされる。それゆえ、スポット的な入力であっても検出部68には面圧として分散作用し、検出部68の局所的な大変形が抑えられて、検出部68がより広い範囲で或いは全体に亘って圧縮変形される。
【0090】
補強材84の外側には、図2Aに示すように、形状復元層88が設けられている。形状復元層88は、例えば、合成樹脂製の弾性発泡体によって構成された海綿状の部材であって、荷重の作用に対して容易に変形すると共に、荷重の除去によって元の形状に速やかに復元する弾性を有している。形状復元層88は、シート状とされているが、補強材84や第一,第二電極24,26に比べて厚肉であり、厚さ方向の圧縮変形の許容量が大きくされている。形状復元層88は、図9に示すように、平面視において測定シート部分18における感圧部22の略全体を覆う形状とされており、測定シート部分18の凹部50と対応する凹部90を備えている。本実施形態では、2つの形状復元層88a,88bが、上下両側の補強材84a,84bに対して、上下両外側から重ね合わされている。そして、上面側に配された全ての補強材84aの上面全体が1つの形状復元層88aによって覆われていると共に、下面側に配された全ての補強材84bの下面全体が1つの形状復元層88bによって覆われている。本実施形態では、形状復元層88が補強材84よりも外周まで広がって設けられており、形状復元層88の面積が補強材84の合計面積よりも大きくされている。なお、形状復元層88は、例えば、両面に粘着層を有する粘着テープ(両面テープ)や接着剤等によって、補強材84の上下外面に固着されている。
【0091】
補強材84及び形状復元層88が貼り合わされたセンサシート本体16の測定シート部分18には、例えば、図1に二点鎖線で仮想的に示すような防水カバー92が取り付けられることが望ましい。防水カバー92は、水の通過を防ぐ耐水性や口腔内環境に対する耐食性などを有するとともに口腔内に入れても人体に害がない合成樹脂材料などで形成されている。具体的には、例えば、防水カバー92は、上下のプラスチックフィルムを外周の前方及び左右両側方の3辺において相互に溶着して袋状としたものであって、測定シート部分18に前側から着脱可能に被せられるようになっている。防水カバー92の前端部分の左右方向中央には、測定シート部分18の凹部50と対応する凹部94が設けられている。本実施形態の防水カバー92は、第一及び第二電極24,26を備える測定シート部分18だけでなく、接続シート部分20及び制御装置14まで覆う構造とされている。尤も、防水カバー92は、第一及び第二電極24,26を備える測定シート部分18だけを覆っていてもよいし、測定シート部分18と接続シート部分20を覆って制御装置14を覆わない構造であってもよい。また、防水カバー92は、測定シート部分18に対して容易に着脱可能とされており、例えば、防水カバー92で覆われた測定シート部分18を検出対象者の口腔から取り出した後で、防水カバー92を新しいものと交換すれば、測定シート部分18の清潔さを保ちながら咬合力センサシート12を簡単に再使用することができる。
【0092】
以下に、本実施形態の咬合力センサシート12を備える咬合力検出装置10を用いた検出対象者における咬合力の検出方法の具体的な一例について説明する。なお、咬合力の検出方法は、以下に記載の方法に限定されるものではない。
【0093】
まず、咬合力センサシート12の第一及び第二端子54,62と接地端子76とを制御装置14に接続すると共に、測定シート部分18に対して防水カバー92を装着する。次に、制御装置14の電源を入れて、制御装置14の電源装置による第一及び第二電極24,26間への検出用電圧の印加を開始すると共に、制御装置14の検出手段による各検出部68の静電容量の検出と、検出手段が検出した静電容量値に基づいた咬合力算出手段による咬合力の算出とを、開始する。
【0094】
そして、咬合力センサシート12の測定シート部分18を検出対象者の口腔内における上下の歯の間に差し入れて、U字状に配された複数の検出部68を検出対象者の歯列に対応する位置に保持する。かかる咬合力センサシート12の位置決めは、例えば、測定シート部分18の表面に突出する突部、第二基体シート58の上面に印刷される目盛やマーク等のガイドによって実現することができる。
【0095】
咬合力センサシート12は、ガード電極層44が第一及び第二電極シート40,42よりも検出対象者の舌側となる向きで検出対象者の口腔内に差し入れられる。これにより、検出対象者の舌が測定シート部分18に接触することによるノイズが、ガード電極72によって低減されて、検出精度の向上が図られる。
【0096】
次に、検出対象者に咬合力センサシート12を噛むように指示をして、検出対象者の咬合力を咬合力センサシート12の感圧部22に作用させる。そして、検出対象者が咬合力センサシート12の感圧部22を噛むことにより、感圧部22の誘電体層28が検出対象者の上下の歯の間で上下に圧縮されると共に、誘電体層28を挟んで上下各一方側に設けられた第一電極24と第二電極26が、作用した咬合力に応じて誘電体層28が弾性変形することにより相互に接近変位せしめられる。これにより、咬合力が作用した検出部68において、作用した咬合力の大きさに伴って静電容量が大きくなり、作用した咬合力が電気的に検出される。
【0097】
かかる検出部68の静電容量の変化を、制御装置14における検出手段によって検出すると共に、検出手段によって検出された静電容量の変化を、制御装置14における咬合力算出手段により、各検出部68に作用した咬合力として算出する。このように算出された咬合力を、例えば制御装置14に接続されたモニタ等に表示することで、咬合力検出装置10により咬合力を検出することができる。即ち、一対の電極(第一及び第二電極24,26)の対向方向に及ぼされる咬合力が、一対の電極(第一及び第二電極24,26)の対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて検出されるようになっている。なお、咬合力測定結果のモニタへの表示内容は、特に限定されないが、例えば、咬合力の分布を色彩や濃淡等で示す分布図、各検出部68が検出した咬合力の総和の数値、咬合力の総和の経時変化を示すグラフ等が採用され得る。
【0098】
以上の如き構造とされた本実施形態の咬合力センサシート12によれば、検出対象者の咬合力をより精度よく測定することができる。即ち、歯の咬合面には凹凸があることから、検出対象者が咬合力センサシート12を噛む際に、歯の咬合面の凸部が局所的に強く押し当てられる。ここにおいて、検出部68の上下外側に補強材84が配されていることにより、歯の咬合面の凸部が接触することによる局所的な荷重が、補強材84によって分散されて検出部68に伝達される。それゆえ、柔軟な検出部68が局所的な大荷重の入力によって損傷するのを防ぐことができる。また、荷重が分散して作用して誘電体層28の広い範囲或いは全体が圧縮変形されることにより、入力による誘電体層28の局所的な変形量が誘電体層28の変形許容量に達してしまう底付きの発生が防止されて、底付きによる検出結果の誤差が低減されるものと考えられる。
【0099】
本実施形態では、補強材84が検出部68の上下両外側に設けられていることから、検出部68が噛まれて上下両側の歯の咬合面が押し当てられる際に、検出部68の上下両面において補強材84を介することによる入力荷重の分散化が図られる。それゆえ、例えば、上の歯(上顎歯)の咬合面の凸部と下の歯(下顎歯)の咬合面の凸部との間で検出部68が上下に挟まれて、検出部68に上下の凸部間で局所的な大荷重が作用する場合にも、上下両側の補強材84a,84bによる荷重分散作用によって、検出部68の局所的な大変形が防止される。
【0100】
また、補強材84が検出部68の上下外面側(第一電極24に対する下面側と第二電極26に対する上面側)とに配されていることから、誘電体層28の上下方向の有効長が補強材84の配設によって短くなるのを防ぐことができる。それゆえ、咬合力等の検出精度の向上が図られると共に、咬合力等を精度よく検出可能な大きさの範囲を広く確保することができる。特に、補強材84の外力に対する変形強度を確保するために、補強材84を比較的に厚肉とする場合にも、補強材84が検出部68の外側に配されていることから、検出部の検出性能に影響し難い。
【0101】
補強材84は、検出部68の上下外面よりも平面視で大きくされており、検出部68の上下外面を全面にわたって覆っていると共に、検出部68よりも外周の非検出部86まで張り出している。これにより、歯の咬合面がより確実に補強材84を介して検出部68に間接的に押し当てられると共に、咬合力が検出部68の全体に分散して及ぼされる。従って、底付きによると推定される検出精度の低下をより効果的に防ぐことができると共に、検出部68の耐久性の向上も有利に実現される。また、歯の咬合面の凸部が非検出部86上に位置する場合に、咬合面の凸部が非検出部86上に張り出した補強材84に押し当てられることにより、咬合面の凸部からの入力が補強材84を介して検出部68に及ぼされ得る。その結果、咬合面の凸部が非検出部86に押し当てられることによる咬合力の検出誤差が低減されて、咬合力の高精度な検出(測定)を安定して行うことができる。
【0102】
検出部68,68間の非検出部86まで張り出した隣り合う補強材84,84は、上下方向で重なり合うことなく、面方向で相互に離隔している。これにより、隣り合う別の補強材84,84の干渉によって、一方の補強材84で覆われた検出部68への入力が、他方の補強材84で覆われた別の検出部68の検出結果に影響するのを防ぐことができる。従って、各検出部68において独立した荷重検出が可能になって、例えば荷重分布を高精度に把握することなども可能になる。
【0103】
補強材84は、咬合力によって変形しない程度の硬さとされていてもよいが、本実施形態では、薄肉の合成樹脂で形成されており、咬合力によって凹みや折れ等が生じ得る程度の硬さとされている。このように、補強材84が想定される入力荷重(ここでは咬合力)によって変形し得る程度の硬さとされていることにより、例えば、補強材84が固着された感圧部22を検出対象者が噛む際に、検出対象者が補強材84の過度に硬質な感触によって躊躇することなく感圧部22を全力で噛むことができて、検出対象者の最大の咬合力を安定して測定することが可能となる。更に、補強材84同士の干渉による測定シート部分18の変形の拘束が問題になり難く、補強材84を支持する測定シート部分18を必要に応じて撓ませるなどすることで口腔へ挿入し易くできる。
【0104】
また、補強材84の上下外側には、形状復元層88が設けられていることから、仮に咬合力の作用によって補強材84に折れ目や凹み、変色等が生じたとしても、補強材84が形状復元層88によって覆われていることから、折れ目等が外部から視認され難い。それゆえ、咬合力センサシート12を繰り返し使用する際に、再使用による不快感を検出対象者に与え難く、口腔への挿入に対する抵抗感を緩和することも期待できる。また、咬合力センサシート12を噛む際に、柔軟に変形する形状復元層88が歯の咬合面の凹部を埋めるように変形することにより、歯の咬合面から検出部68に入力される荷重の更なる分散化が図られて、検出部68の局所的な大変形がより効果的に防止される。特に、補強材84に作用する荷重が形状復元層88によって分散化されることから、補強材84の凹みや折れ等が発生し難くなる。
【0105】
形状復元層88は、全ての補強材84の合計面積よりも大きな面積で設けられており、全ての補強材84を全体に亘って覆うように設けられている。それゆえ、補強材84が形状復元層88によって覆われることによる上述の如き効果が、全ての補強材84の全体に亘って有効に発揮される。
【0106】
本実施形態では、形状復元層88は、上下両側の補強材84に対して上下両外側に設けられている。これにより、上下両側の補強材84において、使用による凹み等が形状復元層88によって覆い隠されると共に、形状復元層88の変形による荷重の分散化が図られる。
【0107】
ところで、図10Aには、本発明に係る面圧センサシートを用いた荷重検出の実験結果を示し、図10Bには、従来構造の面圧センサシートを用いた荷重検出の実験結果を示した。当該実験では、人間の歯(歯を備えた上顎と下顎)を模した歯列モデルに対して、各面圧センサシートの感圧部を咬合可能な位置に配して、歯列モデルから各面圧センサシートに咬合力に相当する試験荷重を入力させ、面圧センサシートによって検出された荷重値(検出荷重値)が、試験荷重値に対して一致するかを確認した。なお、図10Aの実験に用いた本発明に係る面圧センサシートと、図10Bの実験に用いた従来構造の面圧センサシートは、補強材及び形状復元層の有無だけが異なっており、他の部分の形状、大きさ、材質等は同一とされている。また、図10A図10Bの各検出実験において、使用した歯列モデルは同一であり、咬合面の凹凸も同じである。
【0108】
図10Aに示した本発明に係る面圧センサシートを用いた荷重検出の実験結果によれば、実線で示した面圧センサシートの検出荷重値が、破線で示した試験荷重値に対して、極めて高い精度で一致していることが分かる。特に、試験荷重値を増大させた実験後半においても、面圧センサシートの検出荷重値と試験荷重値が精度よく一致していることから、面圧センサシートの検出部に対して局所的な大荷重が入力されても、誘電体層の底付きに起因すると推定される検出精度の低下が発生し難いことが、実験によっても確認された。
【0109】
一方、図10Bに示した従来構造の面圧センサシートを用いた荷重検出の実験結果によれば、図10Aの実験結果よりも、実線で示した面圧センサシートの検出荷重値と、破線で示した試験荷重値との乖離が大きいことが分かる。特に、試験荷重値を増大させた実験後半において、面圧センサシートの検出荷重値が試験荷重値よりも小さくなっている。これは、面圧センサシートの検出部に対して局所的に作用する試験荷重が大きくなることで、当該検出部において誘電体層が局所的に潰れ切る、換言すれば、入力による誘電体層の圧縮変形量が誘電体層の最大変形許容量に達する底付きが発生し、底付きの発生部分において電極間の更なる接近が制限されたことに起因すると考えられ、それによって、静電容量値の変化量が小さくなって、面圧センサシートの検出荷重値が、本来であれば一致するべき試験荷重値よりも小さくなったものと捉えることができる。
【0110】
以上のように、本発明に係る面圧センサシートは、従来構造の面圧センサシートに比して、入力荷重をより正確に検出することが可能であることが、図10A図10Bの実験結果からも明らかである。
【0111】
また、図10Cは、図10Aに示した本発明に係る面圧センサシートから形状復元層を取り除いた構造の面圧センサシートについて、同様の実験を行った結果である。図10Cに示した本発明に係る面圧センサシートの実験結果においても、従来構造の面圧センサシートを用いた図10Bの場合に比して、面圧センサシートの検出荷重値が試験荷重値により精度よく一致していることが分かる。このように、補強材を備え且つ形状復元層を備えていない構造の面圧センサシートであっても、検出部の底付き等を防いで、高精度な検出を実現することができる。尤も、図10Aの実験結果は、図10Cの実験結果に比して、面圧センサシートの検出荷重値が試験荷重値により高精度に追従しており、形状復元層も検出精度の向上に寄与し得ることが実験によっても確認された。
【0112】
なお、図10A図10Bに係る実験において最大の圧力(咬合力)を検出した一本の歯を取り除いた歯列モデルを用いて、同様の荷重検出実験を行った。その結果、本発明に係る面圧センサシートの検出荷重値は、試験荷重値に対する誤差が図10Aの場合とほとんど変化しなかった。これは、本発明に係る面圧センサシートでは、図10Aの結果を得た検出実験において、最大圧力を検出した部位でも底付きが発生していなかったことから、当該最大圧力の歯を取り除いても、検出精度が殆ど変らなかったものと推定される。一方、従来構造の面圧センサシートの検出荷重値は、試験荷重値に対する誤差が、図10Bの場合よりも小さくなった。これは、従来構造の面圧センサシートでは、図10Bの結果を得た検出実験において、最大圧力を検出した部位において底付きが発生しており、当該部位の底付きによって検出荷重値と試験荷重値との間に誤差が生じていたが、最大圧力を検出した歯を取り除いたことによって、当該歯における底付きが解消されることから、図10Bの検出結果に対する検出精度の向上が確認されたものと考えられる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、補強材84が、検出部68の上下両側にそれぞれ設けられていたが、補強材84は、検出部68に対して上下何れか一方側だけに設けられていてもよい。
【0114】
補強材は、検出部68の全面を覆うことが望ましいが、検出部68を部分的に覆うように設けることもできる。例えば、歯の咬合面の凹凸を考慮して、検出部68の上下少なくとも一方の表面において、歯の咬合面の凸部が押し当てられると想定される部分に対して、補強材を部分的に配することもできる。従って、補強材は、上下方向視(平面視)において、必ずしも検出部68より大きくされている必要はなく、検出部68よりも外周へ張り出した構造に限定されない。また、例えば、補強材をメッシュ状としたり、補強材に貫通孔を形成することによって、補強材を検出部68よりも外周まで張り出させながら、補強材が検出部68を部分的に覆うようにもできる。なお、補強材が検出部68を部分的に覆うように設けられる場合に、好適には、補強材の面積は、補強材によって覆われる検出部68の面積に対して50%以上とされて、検出部68の面積の50%以上が補強材によって覆われる。これにより、例えば、歯の咬合力を測定する場合に、歯の咬合面が補強材を外れた位置で検出部68に押し当てられ難く、補強材を設けることによる検出精度の向上等の効果を有効に得ることができる。
【0115】
補強材は、複数の検出部68に跨って設けられていてもよい。例えば、咬合力の合計値だけが必要な場合に、全ての検出部68に跨って配される補強材を採用したり、奥歯領域と前歯領域のように口腔内を複数の領域に大まかに区切って、各領域の咬合力を求めたい場合に、各領域内の検出部68に跨って連続する補強材を採用したりすることもできる。
【0116】
形状復元層88は、荷重の作用に対する変形容易性と荷重の除去に対する形状復元性とを確保できれば、海綿状の多孔体には限定されず、例えば中実構造の弾性体で構成することもできる。
【0117】
前記実施形態では、形状復元層88が、検出部68の上下両側において、上下両側の補強材84a,84bの外面側にそれぞれ設けられていたが、形状復元層は、上下何れかの補強材の外面側だけに設けられていてもよい。
【0118】
前記実施形態では、上下両側に各1つの形状復元層88が設けられた例を示したが、例えば、形状復元層は、面方向で分割された複数の形状復元体によって構成されていてもよく、例えば、各補強材84と対応する形状及び大きさとされた複数の形状復元体が複数の補強材84と同様に配列されることにより、形状復元層を構成していてもよい。この場合には、各形状復元体が各補強材84を全体に亘って覆うように配され、且つ、形状復元体の合計面積である形状復元層の合計面積が、補強材84の合計面積以上とされることが望ましい。
【0119】
形状復元層は、全ての補強材の表面を覆うように設けられる必要はなく、例えば、特に大きな入力荷重が想定される選択された補強材の表面だけに設けることもできる。従って、形状復元層の合計面積は、全ての補強材の合計面積よりも小さくされ得る。また、形状復元層は、必須ではなく、省略することもできる。この場合に、例えば、内部の視認性が低い不透明や半透明等の防水カバー92を採用すれば、形状復元層がなくても、頻回使用による補強材の凹み等を覆い隠すことができる。
【0120】
検出部68の何れか一方の外面側にだけ補強材84が設けられる場合に、補強材84が設けられている外面側に形状復元層88を設けると共に、補強材84が設けられていない外面側には、形状復元層と同様の緩衝層を設けることもできる。
【0121】
また、前記実施形態では、面圧センサシートとしての咬合力センサシート12が静電容量型とされていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、本発明に係る面圧センサシートは、柔軟なシート状とされて力を電気信号として検出し得るものであればよく、前記実施形態の如き静電容量型の他、例えば一対の電極の対向面間に圧電層が配されて電圧の変化に基づく電気信号として力を検出する圧電型や、一対の電極の対向面間に導電性ゴム等の弾性変形可能な抵抗層が配されて電気抵抗の変化に基づく電気信号として力を検出する抵抗型とされてもよい。静電容量型以外の面圧センサシートとされる場合、誘電体層は必須なものではなく、センサ弾性層として弾性材からなる圧電層や抵抗層が設けられ得る。また、静電容量型の咬合力センサシート12において、誘電体層は、例えば特開2012-181084号公報に示されているように、空気層によって構成することもできる。
【0122】
咬合力センサシート12を口腔内において位置決めするガイドを設けることもできる。ガイドは、第二電極シート42から上方に突出して設けられて、例えば上側の前歯や上唇に当接することで位置決め効果を発揮するようにしてもよいし、第一電極シート40から下方に突出して設けられて、例えば下側の前歯や下唇に当接することで位置決め効果を発揮するようにしてもよい。このようなガイドが設けられることで、咬合力センサシート12を患者の口腔内に差し入れた際に、患者の前歯又は唇とガイドとが当接して、それ以上の咬合力センサシート12の挿入が制限されると共に、略中央位置が触覚や視覚を通じて認識可能となる。その結果、患者が自覚的に又は測定者などによって他覚的に、咬合力センサシート12を口腔において適切な位置に位置合わせすることが可能となる。かかる状態から、患者が咬合力センサシート12を噛むことで、感圧部22から外れることなく噛みしめて、感圧部22に対して安定して咬合力を及ぼすことができる。なお、このようなガイドは、上下方向外方に突出するものに限定されず、口腔内における咬合力センサシートの位置を示す目盛や目印、印刷等であってもよい。また、ガイドは咬合力センサシートの上下両側に設けられてもよく、例えば上記に例示したガイドのうちの二つを組み合わせて採用してもよい。
【0123】
第一電極や第二電極の配設態様は、前記実施形態に例示のものに限定されない。例えば、咬合力の分布などを把握する必要がなければ、感圧部に設けられる検出部は一つだけでもよい。これによって、例えば、特定の歯における咬合力を一つの検出部によって選択的に検出することもできる。この場合には、第一及び第二基体シートは、例えばストレートな帯状などでも良く、第一及び第二電極は各一つだけが設けられる。尤も、歯列に対応する湾曲形状の第一及び第二電極を各一つ設けることにより、歯列全体の咬合力を一つの検出部によって検出することも可能である。
【0124】
また、複数の第一電極が設けられる場合に、それら複数の第一電極は、必ずしも同じ幅寸法でなくても良く、例えば、当接が予定される歯の大きさなどに応じて幅寸法が異なっていてもよい。第二電極についても同様に、幅寸法が異なる複数種類が採用され得る。
【0125】
更にまた、第一電極と第二電極は、例えば、平面視においてスポット的に設けられる円形や正方形などであってもよい。同様に、検出部の形状も前記実施形態に例示の長方形や菱形などに限定されない。また、各検出部の上下外側の面を覆う補強材の平面視形状は、検出部の形状に応じて適宜に選択され得る。
【0126】
前記実施形態では、第一電極24e~24iにおいて、左右方向中間部分に連結部52が設けられて左右方向両側部分が連結部52により連結されており、これにより第一電極24e~24iが何れも一つの電極として形成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。即ち、第一電極24e~24iにおいて連結部52を設けることなく、左右両側部分を第一電極24e~24i上に設けられる第一導電線30によって接続することで、第一電極24e~24iが一つの電極として形成されるようになっていてもよい。なお、前記実施形態における第一電極24e~24iの左右方向両側部分は、それぞれ別の第一導電線30が接続されて、相互に独立した別の電極とされてもよく、この場合には、第一電極24e~24iの左右方向両側部分を接続する左右方向中間部分の連結部52や第一導電線30は必要ない。
【0127】
本発明に係る面圧センサシートは、必ずしも歯の咬合力を検出するためにのみ用いられるものではなく、面圧の検出に広く用いることができる。特に、本発明に係る面圧センサシートは、例えば、面圧の検出対象面が凹凸を有しており、検出対象面の凸部が検出部に対して局所的に(面方向で部分的に)押し当てられ得る場合に、好適に適用される。
【符号の説明】
【0128】
10 咬合力検出装置
12 咬合力センサシート(面圧センサシート)
14 制御装置
16 センサシート本体
18 測定シート部分
20 接続シート部分
22 感圧部
24 第一電極
26 第二電極
28 誘電体層
30 第一導電線
32 第二導電線
34 配線部
36 コネクタ部
38 接続部
40 第一電極シート
42 第二電極シート
44 ガード電極層
46 第一基体シート
48a 前側部分
48b 後側部分
50 凹部
52 連結部
54 第一端子
56 レジスト層
58 第二基体シート
60a 前側部分
60b 後側部分
62 第二端子
64 レジスト層
66a 前側部分
66b 後側部分
68 検出部
70 第三基体シート
72 ガード電極
74 接地配線
76 接地端子
78 レジスト層
80 補強シート
82 保持部材
84 補強材
86 非検出部
88 形状復元層
90 凹部
92 防水カバー
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C