(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062809
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】精密金型及び精密金属加工品製造管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20230427BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230427BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20230427BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
G06Q30/06 320
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172918
(22)【出願日】2021-10-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人日本金型工業会機関紙「金型」(発行日2021年4月8日)、No.184夏号、P.22~P.25にて「中小企業向け金型受注システム“CAMPUS”開発の狙いと機能」を公開
(71)【出願人】
【識別番号】517432536
【氏名又は名称】株式会社CAPABLE
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】河原 洋逸
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA08
3C100AA27
3C100BB04
3C100BB19
3C100BB38
3C100BB39
3C100CC03
5L049BB53
5L049BB55
5L049CC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】業界独自の景気変動に柔軟に対応し、短納期、高品質、適正価格で精密金型及び精密金属加工品を製造を可能とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システムを提供する。
【解決手段】精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10は、金型の製造を行う製造パートナー4を複数登録する製造パートナー登録部12と、顧客から要望される製品に対応する設計データを登録する設計データ登録部14と、設計データに基づいて製造に適した製造パートナー4の絞り込みを行い、絞り込まれた複数の製造パートナー4に対して見積作成を依頼する見積依頼部16と、見積データ、納期及び品質に基づいて、発注先の製造パートナー4を選定する選定部18と、選定部18が選定し、製造パートナー4が製造した金型に基づいて、製品の組立、検査及び出荷の管理を行う管理部20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の製造を行う製造パートナーを複数登録する製造パートナー登録部と、
営業活動を通じて獲得した顧客から要望される製品に対応する設計データを登録する設計データ登録部と、
前記設計データに基づいて製造に適した前記製造パートナーの絞り込みを行い、絞り込まれた複数の前記製造パートナーに対して見積作成を依頼する見積依頼部と、
前記製造パートナーから受け取った見積データ、納期及び品質に基づいて、発注先の前記製造パートナーを選定する選定部と、
前記選定部により選定された前記製造パートナーが製造した前記金型に基づいて、前記製品の組立、検査及び出荷の管理を行う管理部と、
を備えることを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、
前記製造パートナー登録部は、検索キーワードに基づいて、インターネット情報の中から前記製造パートナーの候補として適切な企業を抽出することを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、
前記見積依頼部は、
前記顧客から要望される前記製品の仕様が未定の段階で行う第1段階の概算原価見積と、
前記製品の仕様の概略が定まった段階で行う第2段階の出図前原価見積と、
前記製品の仕様が決定した段階で行う第3段階の正式原価見積と、
前記製品の仕様が確定した最終段階で行う第4段階の最終原価見積とを含む4段階の見積の中から各フェーズに応じた見積を選択して依頼することを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、
前記選定部は、前記見積データを受け取った複数の前記製造パートナーに対して、採用又は不採用の理由をフィードバックするためのデータを送信することを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密金型及び精密金属加工品製造管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密金型及び精密金属加工品、特に、半導体用金型の供給は、日本国内の大手金型メーカーが一手に行っている。半導体業界の好景気に伴い、大手金型メーカーがキャパシティ不足に陥っている。このため、金型製作が長納期化している。
【0003】
本発明に関連する技術として、複数の板金加工業者(1)の条件情報を記憶しておく条件情報記憶手段(72)と、板金製品の製品情報を記憶しておく製品情報記憶手段(73)と、前記製品情報に基づいて板金製品を製造するための標準工程情報を生成する標準工程情報生成手段(772A)と、前記標準工程情報に基づいて見積価格情報を生成する見積価格情報生成手段(771A)と、前記見積価格情報が提示された顧客から板金製品を受注する受注手段(773)と、受注した板金製品を製造する板金加工業者(1)を、前記標準工程情報、前記製品情報、および前記条件情報に基づいて選定する板金加工業者選定手段(772B)と、前記板金加工業者選定手段(772B)で選定された板金加工業者(1)に板金製品の製造を指示する製造指示手段(774)と、を生産本部(10)側で備えていることを特徴とする板金製品の取引システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
好景気の状況下にある半導体メーカーは、短納期で半導体を製作する必要がある。一方、半導体メーカーが金型の製造を依頼していた大手金型メーカーは上記のようにキャパシティ不足の状況下にあるため、海外の模倣金型メーカーの粗悪な金型で我慢して使わざるを得ないという状況にある。しかしながら、粗悪な金型を用いて半導体を製造すると歩留まりが低下してしまう等といった課題がある。
【0006】
本発明の目的は、業界独自の景気変動に柔軟に対応し、短納期、高品質、適正価格で精密金型及び精密金属加工品を製造することを可能とするビジネスモデルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る精密金型及び精密金属加工品製造管理システムは、金型の製造を行う製造パートナーを複数登録する製造パートナー登録部と、営業活動を通じて獲得した顧客から要望される製品に対応する設計データを登録する設計データ登録部と、前記設計データに基づいて製造に適した前記製造パートナーの絞り込みを行い、絞り込まれた複数の前記製造パートナーに対して見積作成を依頼する見積依頼部と、前記製造パートナーから受け取った見積データ、納期及び品質に基づいて、発注先の前記製造パートナーを選定する選定部と、 前記選定部により選定された前記製造パートナーが製造した前記金型に基づいて、前記製品の組立、検査及び出荷の管理を行う管理部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、前記製造パートナー登録部は、検索キーワードに基づいて、インターネット情報の中から前記製造パートナーの候補として適切な企業を抽出することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、前記見積依頼部は、前記顧客から要望される前記製品の仕様が未定の段階で行う第1段階の概算原価見積と、前記製品の仕様の概略が定まった段階で行う第2段階の出図前原価見積と、前記製品の仕様が決定した段階で行う第3段階の正式原価見積と、前記製品の仕様が確定した最終段階で行う第4段階の最終原価見積とを含む4段階の見積の中から各フェーズに応じた見積を選択して依頼することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、前記選定部は、前記見積データを受け取った複数の前記製造パートナーに対して、採用又は不採用の理由をフィードバックするためのデータを送信することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、業界独自の景気変動に柔軟に対応し、短納期、高品質、適正価格で精密金型及び精密金属加工品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムを示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムを用いたデバイスを製造するビジネスモデル全体を示す図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、製造パートナー登録部がパートナー候補を探している手順を示す図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、見積依頼部が見積依頼をする手順を示す図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、4段階の見積の比較を示す図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、4段階の見積の比較を示す図である。
【
図7】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムの選定部により製造パートナーを決定する手順を示す図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムの選定部により製造パートナーを決定する手順を示す図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、選定部が採用及び不採用の通知を行っている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10を示す図である。
図2は、本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10を用いてデバイスを製造するビジネスモデル全体を示す図である。
【0015】
図3は、本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10において、製造パートナー登録部12がパートナー候補を探している手順を示す図である。
図4は、本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10において、見積依頼部16が見積依頼をする手順を示す図である。
【0016】
図5及び
図6は、本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10において、4段階の見積の比較を示す図である。
図7及び
図8は、本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10の選定部18により製造パートナー4を決定する手順を示す図である。
図9は、本発明に係る実施形態の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10において、選定部18が採用及び不採用の通知を行っている様子を示す図である。
【0017】
精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10は、複数の製造パートナー4の中から適切な企業に製造を依頼することで、納期及び費用などを勘案した製品(例えば、精密金型及び精密金属加工品)の製造を最適化するためのシステムである。
【0018】
精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10は、顧客登録部11と、製造パートナー登録部12と、設計データ登録部14と、見積依頼部16と、選定部18と、管理部20と、記憶部22とを備えている。精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10は、インターネットなどのネットワーク2を介して複数の製造パートナー4及びファブレスメーカー6と接続されている。
【0019】
顧客登録部11は、金型の製造の依頼を行う顧客3を複数登録する機能を有している。顧客3は、金型の製造先を探している企業である。製造パートナー登録部12は、金型の製造を行う製造パートナー4を複数登録する機能を有する。製造パートナー4は、金型を製造するための製造設備と技術力を保有している中小企業等である。
【0020】
ファブレスメーカー6は、全世界の大手半導体・電子部品メーカー等と繋がりがあり、このネットワークを活用して、
図2に示されるように、各大手企業等からの注文を受注するとともに、仕様を決めて設計を行い、日本国内の優秀な中小・小規模企業である製造パートナー4に金型製造の委託を行う。
【0021】
そして、ファブレスメーカー6は、製造パートナー4から納品された金型を検査し、組立、出荷検査、輸出業務等を経て代金回収、品質保証まで行う。
【0022】
製造パートナー登録部12は、予めファブレスメーカー6が取引のある複数の製造パートナー4に関する情報(加工機種類の所有台数、得意加工分野、納期遵守率など)を記憶部22に記録する。また、製造パートナー登録部12は、検索キーワードに基づいて、インターネット情報の中から製造パートナー4の候補として適切な企業を判断し、抽出するクローリング機能を有し、以下で、候補の探索手順について説明する。
【0023】
図3に示されるように、製造パートナー4の候補として必要な条件(仕様、納期、品質、加工分野など)を取得すると、最初に、その条件を満たすために必要なキーワードが入力されて検索が開始される(S2)。
【0024】
S2の工程の後は、検索キーワードに基づいて、インターネット情報の中から製造パートナー4の候補として適切な企業が抽出されて、その検索結果が出力される(S4)。
【0025】
S4の工程の後は、検索結果の確認を行い、結果が不十分であるか否かが判断される(S6)。S6の工程で結果が不十分であると判断された場合には、条件の変更を行って、再び、サイトを検索する(S13)。S13の工程の後は、再び、S4の工程へと戻る。
【0026】
S6の工程で結果が十分であり、詳細な確認が可能であると判断された場合には、抽出した企業のWebサイトで詳細な情報の確認を行う(S8)。
【0027】
S8の工程の後は、詳細が確認された企業が条件を充足するか否かを判断する(S10)。S10の工程において、当該企業が条件を充足しないと判断された場合は、S13の工程へと進む。
【0028】
S10の工程において、詳細が確認された企業が条件を充足すると判断された場合には、該当企業にアプローチを行い(S12)、その後、製造パートナー4として採用することが可能か否かを判定する(S14)。S14の工程において、製造パートナー4として採用が決まった場合には記憶部22に記録される。
【0029】
設計データ登録部14は、ファブレスメーカー6が営業活動を通じて獲得した顧客から要望される製品に対応する設計データを登録する機能を有する。設計データは、ファブレスメーカー6が設計するデータであって、後述する4段階の見積に対応する仕様・設計に関するデータ等である。
【0030】
見積依頼部16は、設計データに基づいて製造に適した製造パートナー4の絞り込みを行い、絞り込まれた複数の製造パートナー4に対して見積作成を依頼する機能を有する。
【0031】
見積依頼部16は、顧客から要望される製品の仕様が未定の段階で行う第1段階の概算原価見積と、製品の仕様の概略が定まった段階で行う第2段階の出図前原価見積と、製品の仕様が決定した段階で行う第3段階の正式原価見積と、製品の仕様が確定した最終段階で行う第4段階の最終原価見積とを含む4段階の見積の中から各フェーズに応じた見積を選択して依頼する。
【0032】
見積依頼部16が見積もりを依頼する手順について、
図4を用いて説明する。精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10は、顧客からの引き合いがあると(S20)、依頼案件の分類を行う(S22)。S22の工程でリピート案件であると判断された場合には、正式原価見積(
図5参照)を製造パートナー4に依頼する(S23)。
【0033】
S23の工程の後、選定部18の選定により決定した製造パートナー4に製作を依頼する(S24)。その後、仕様変更があるか否かを判断する(S26)。S26の工程において、仕様変更がないと判断された場合には見積もりを終了する(S30)。
【0034】
S26の工程において、仕様変更があると判断された場合には、最終原価見積(
図5参照)を製造パートナー4に依頼し(S28)、その後、S30の工程へと進む。
【0035】
S22の工程において、新規・開発案件であると判断された場合には、製作仕様があるか否かを判断する(S32)。S32の工程において、製作仕様がなく、かつ、構想段階であると判断された場合には、概算原価見積(
図5参照)を製造パートナー4に依頼する(S34)。
【0036】
S34の工程の後は、金型参考図の作成を行い(S36)、次で述べるS38の工程へと進む。S32の工程において、製作仕様がなく、概略仕様が存在すると判断された場合には、出図前原価見積(
図5参照)を製造パートナー4に依頼し(S38)、次で述べるS40の工程へと進む。
【0037】
S32の工程において、製作仕様があると判断された場合には、金型図面作成を行い(S40)、正式原価見積(
図5参照)を製造パートナー4に依頼する(S42)。S42の工程の後は、選定部18の選定により決定した製造パートナー4に製作を依頼する(S44)。
【0038】
S44の工程の後、仕様変更があるか否かを判断する(S46)。S46の工程において、仕様変更がないと判断された場合には見積もりを終了する(S50)。S46の工程において、仕様変更があると判断された場合には、最終原価見積(
図5参照)を製造パートナー4に依頼し(S48)、その後、S50の工程へと進む。
【0039】
ここで、4段階の見積の概算原価見積、出図前原価見積、正式原価見積及び最終原価見積について説明する。
図5に示されるように、引合の段階から受注となって、その後の出荷までの流れにおいて、概算原価見積、出図前原価見積、正式原価見積、最終原価見積と切り替わっていく。なお、ここでは、4段階の見積もりであるものとして説明したが、状況によっては5段階以上の見積もりにしてもよい。
【0040】
「概算原価見積」は、
図5に示されるように、構想段階で仕様が未定であり、製品図が未定であるため、金型図面も無い状態で行う見積である。「製品図が無い状態」の段階は、
図6に示されるように、製品図が未だ無い状態である。
【0041】
「出図前原価見積」は、
図5に示されるように、概略仕様が決まり、仮製品図が作成され、仮納期が求められ、金型参考図が作成可能な状態で行う見積である。「仮製品図」の段階は、
図6に示されるように、
図6の右図において、例えば、D,E寸については具体的な数値が記入されているが、その他の寸法が未定である図面の状態である。
【0042】
「正式原価見積」は、
図5に示されるように、仕様が決定し、正式製品図が作成され、納期が決定され、金型図面が作成されるような状態で行う見積である。「正式製品図」の段階は、
図6に示されるように、
図6の右図において、全ての寸法が記入された図面の状態である。
【0043】
「最終原価見積」は、
図5に示されるように、仕様が決定して若干の変更の有無があるか否かの状態で、当該変更の有無により製品図面、納期、及び金型図面の変更があるか否かの状態で行う見積である。「製品図変更有無」の段階は、
図6に示されるように、
図6の右図において、寸法の変更があったか否かという図面の状態である。
【0044】
選定部18は、製造パートナー4から受け取った見積データ、納期及び品質に基づいて、発注先の製造パートナー4を選定する機能を有する。
【0045】
選定部18は、顧客からの要望(製品仕様、価格、納期等)を入力し、記憶部22に記録された製造パートナー4の基本情報、加工機種類・台数、得意加工分野、空き工数などのデータベースに基づいて、顧客の要望にマッチする製造パートナー4を複数抽出する。この抽出は、人工知能(Artificial Intelligence)によってなされる。
【0046】
製造パートナー4の候補を抽出する手順について、
図7を用いて説明する。製品仕様、価格、納期などを入力すると、選定部18が空き工数、得意加工、保有加工機などに関する情報を考慮して、クローリング機能により選定された製造パートナー4及び記憶部22に予め登録された製造パートナー4の中から入力条件を満たす企業(ここでは、A社、B社、C社、D社、E社)を抽出する。
【0047】
ここで、人工知能は、顧客が求める仕様、空き工数、専門加工分野、保有加工機、加工精度、及び、仕上等に関する教師データに基づいて学習を行い、より適切な製造パートナー4を抽出できるように最適化される。
【0048】
また、上記により抽出した複数の製造パートナー4に対して、見積依頼部16は、上記4段階の見積の中から該当する見積依頼を行う。その後、製造パートナー4から受け取った見積金額や、納期遵守率、製作納期、品質及び緊急対応力などを考慮して、発注先の製造パートナー4を決定する。この決定は、人工知能によってなされる。なお、この決定の際、顧客の要望(納期優先、価格優先、品質優先)に対して重みを設定しつつ、納期や契約の遵守率や、4段階の見積もり変化などを考慮した上で決定することも好適である。
【0049】
ここで、人工知能は、上記複数の製造パートナー4の価格、納期、品質、及び、対応力の他に、過去の実績(例えば、類似部品を製造した際の仕様、価格、工数や点数化された品質及び対応力、納期遵守率)などを教師データとして学習を行い、より適切な製造パートナー4を決定できるように最適化される。
【0050】
複数の製造パートナー4の候補の中から適切な製造パートナー4を決定する手順について、
図8を用いて説明する。上記のように、例えば、5つの製造パートナー4(A社、B社、C社、D社、E社)の中から見積金額、納期遵守率、製作納期、品質及び緊急対応力などを考慮して、製造パートナー4として最適と判断されたC社が決定されている。なお、選定部18による決定を行う際に、見積金額、納期遵守率、製作納期、品質及び緊急対応力の中から重視すべき項目を設定することが好ましい。
【0051】
また、選定部18は、見積データを受け取った複数の製造パートナー4に対して、採用又は不採用の理由をフィードバックするためのデータを送信する。
【0052】
図9に示されるように、採用された企業に対するメールの内容について、理由として、「価格・品質優先のため採用された」旨が記載されるとともに、価格、納期、品質において他社との比較結果が記載されている。
【0053】
また、
図9に示されるように、不採用の企業に対するメールの内容としては、理由として、「価格・納期優先のため不採用であった」旨が記載されるとともに、価格、納期、品質において他社との比較結果が記載されている。
【0054】
このような採用又は不採用のフィードバックメールにより、採用された製造パートナー4も不採用だった製造パートナー4も自社の強みがどこにあるのかという点が把握でき、次回、どの部分を強化すれば採用に至ることができるのかといった分析を行うことが出来る。なお、ここでは、選定部18は、
図9に示されるようなフィードバックメールを送信するものとして説明したが、その他の形式でフィードバックを行ってもよく、例えば、レーダーチャート形式で送付してもよい。
【0055】
管理部20は、選定部18により選定された製造パートナー4が製造した金型に基づいて、製品の組立、検査及び出荷の管理を行う機能を有する。管理部20は、製造パートナー4から納品された金型を検査し、組立、出荷検査、輸出業務等を経て代金回収、品質保証までの一連の工程の管理を行う。
【0056】
記憶部22は、金型の製造を行う製造パートナー4に関する情報、例えば、加工機種類、台数や得意加工分野などの基本情報の他、空き工数や点数化された品質や対応力などの情報が記録される。
【0057】
続いて、上記構成の精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10について説明する。上述したように、半導体業界の好景気に伴い、大手金型メーカーがキャパシティ不足に陥っているため、金型製作が長納期化している。
【0058】
半導体メーカーは短納期で半導体を製作する必要があるが、上記のような事情があるため、海外の模倣金型メーカーの粗悪な金型で我慢して使わざるを得ない。しかしながら、粗悪な金型を用いて半導体を製造すると歩留まりが低下してしまう等といった課題がある。
【0059】
そこで、半導体業界等の景気変動に柔軟に対応し、短納期、高品質、適正価格で精密金型及び精密金属加工品を製造することが求められている。このような課題に対し、本発明の実施形態に係る精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10は顕著な効果を発揮する。
【0060】
半導体業界では、短納期、高品質、適正価格が求められているが、例えば、短納期を実現するために、簡単な製品図面と構想だけで見積もることが必要となる場合がある。但し、仕様の変更や納期の変更等により見積価格は常に変動するため、その動向を見積のステータスごとに把握しなければならない。
【0061】
本発明の実施形態に係る精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10によれば、見積依頼部16の機能により、仕様の変更や納期の変更などに対応する4段階の見積の作成を依頼することができるため、仕様の変更や納期の変更に対応した柔軟な見積もりを行うことが出来る。
【0062】
そして、柔軟に対応される見積金額とともに納期などを考慮しつつ、最適な製造パートナー4が決定されて製造される。このように、精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10によれば、マーケティング、営業活動、設計・開発、組立・検査、出荷・輸出、代金回収の業務はファブレスメーカー6が担い、製造パートナー4は金型の製造のみに集中することが出来るという利点がある。
【0063】
そして、精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10によれば、技術力のある複数の製造パートナー4の中から顧客の要望に合致する製造パートナー4を選定して製造させることができるため、引き合いから出荷までのフローを最適化することができ、短納期、高品質、適正価格などの全ての面において海外の模倣金型メーカーに負けない体制を作ることができるという顕著な効果を奏する。
【0064】
さらに、精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10によれば、選定部18の機能により、金型製造依頼の発注先である製造パートナー4が決定したときに、採用及び不採用のフィードバックメールが送信されるため、各製造パートナー4には改善すべきポイントなどを把握させることが出来る。
【0065】
このように、精密金型及び精密金属加工品製造管理システム10によれば、製造パートナー登録部12の機能により、インターネット情報からもパートナーの候補が次々にピックアップされて登録企業が増えていき、上記フィードバックメールにより、各パートナーの改善点を伝えることで、各製造パートナー4が切磋琢磨しながら互いにスキルが向上していくとともに、各製造パートナー4は、営業や品質管理などの煩雑な業務を行うことなく、得意の製造に特化することができる。これにより、海外の模倣金型メーカーに負けない体制を作ることができるため、技術力のある日本の中小企業などの力を存分に発揮することができるという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0066】
2 ネットワーク、3 顧客、4 製造パートナー、6 ファブレスメーカー、10 精密金型及び精密金属加工品製造管理システム、11 顧客登録部、12 製造パートナー登録部、14 設計データ登録部、16 見積依頼部、18 選定部、20 管理部、22 記憶部。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の製造を行う複数の製造パートナーに関する納期遵守率及び品質を登録する製造パートナー登録部と、
営業活動を通じて獲得した顧客から要望される製品に対応する設計データを登録する設計データ登録部と、
前記設計データに基づいて製造に適した前記製造パートナーの絞り込みを行い、絞り込まれた複数の前記製造パートナーに対して前記金型の製造の見積作成を依頼する見積依頼部と、
前記製造パートナーから受け取った見積データと、前記納期遵守率及び前記品質とに基づいて、発注先の前記製造パートナーを選定する選定部と、
前記選定部により選定された前記製造パートナーが製造した前記金型を用いて製作された前記製品の検査及び金型の検査、出荷の管理を行う管理部と、
を備えることを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、
前記製造パートナー登録部は、検索キーワードに基づいて、インターネット情報の中から前記製造パートナーの候補として適切な企業を抽出することを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、
前記見積依頼部は、
前記顧客から要望される前記製品の仕様が未定の段階で行う第1段階の概算原価見積と、
前記製品の仕様の概略が定まった段階で行う第2段階の出図前原価見積と、
前記製品の仕様が決定した段階で行う第3段階の正式原価見積と、
前記製品の仕様が確定した最終段階で行う第4段階の最終原価見積とを含む4段階の見積の中から各フェーズに応じた見積を選択して依頼することを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の精密金型及び精密金属加工品製造管理システムにおいて、
前記選定部は、前記見積データを受け取った複数の前記製造パートナーに対して、採用又は不採用の理由をフィードバックするためのデータを送信することを特徴とする精密金型及び精密金属加工品製造管理システム。