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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062816
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】屋根構造及びカバーの取付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/00 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
E04D3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172932
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】503341996
【氏名又は名称】エバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】江原 正也
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS03
2E108AZ01
2E108BB01
2E108BN02
2E108CC01
2E108DF01
2E108EE01
2E108FF01
2E108FG01
2E108GG20
(57)【要約】
【課題】屋根材とカバーを容易且つ強固に固定できる屋根構造及びカバーの取付け方法を提供すること。
【解決手段】一態様に係る屋根構造は、第1の屋根材と、前記第1の屋根材の、第1方向一方側に配される第2の屋根材と、前記第1の屋根材の表面を覆う天板と、前記第1の屋根材の第1方向一方側に配される返し部と、を有する第1のカバーと、前記第2の屋根材の表面を覆う天板と、前記第2の屋根材の第1方向一方側に配される返し部と、を有する第2のカバーと、前記第1のカバーの前記返し部に係合するとともに、前記第2のカバーの前記天板に締結される固定具と、を備える。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屋根材と、
前記第1の屋根材の、第1方向一方側に配される第2の屋根材と、
前記第1の屋根材の表面を覆う天板と、前記第1の屋根材の第1方向一方側に配される返し部と、を有する第1のカバーと、
前記第2の屋根材の表面を覆う天板と、前記第2の屋根材の第1方向一方側に配される返し部と、を有する第2のカバーと、
前記第1のカバーの前記返し部に係合するとともに、前記第2のカバーの前記天板に締結される固定具と、
を備える、屋根構造。
【請求項2】
前記固定具は、前記第1の屋根材の第1方向一方側の端縁と、前記第1の屋根材を覆う前記第1のカバーの前記返し部との間に配置されるとともに前記返し部に係合する押さえ部を備える、請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記第2のカバーの前記天板は、前記第2の屋根材の表面側から前記第1の屋根材との段差を通り前記第1の屋根材の表面側に至って延び、
前記固定具は、前記第1の屋根材上に配され、前記第1の屋根材に締結されるベース片と、前記ベース片から第1方向一方側に延出し前記第1のカバーの前記返し部に配される係止部を有する押さえ部と、を一体に有する、請求項2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記固定具は、前記第1の屋根材の第1方向一方側の端縁と、前記第1の屋根材を覆う前記第1のカバーの前記返し部との間に配置され、前記返し部に係合する、請求項1に記載の屋根構造。
【請求項5】
前記返し部は、装着対象となる前記屋根材の裏面側に対向する底板と、前記天板と前記底板とを接続する側板と、を備え、
複数の前記屋根材は、前記第1方向及び、前記第1方向と交差する第2方向において、それぞれ複数列配列され、
前記第1方向に並ぶ複数の前記カバーのうち前記第2のカバーの前記天板と前記第1のカバーの前記底板とが少なくとも一部重ねて配置され、
前記固定具は、積層方向において、前記第1のカバーの前記天板と前記第2のカバーの前記天板との間に配され、前記第2のカバーの前記天板と、前記第2の屋根材と、前記第2の屋根材の下に設けられる野地板と、に締結される、請求項2に記載の屋根構造。
【請求項6】
前記固定具は、金属の板材が複数箇所で屈曲され、
前記第2のカバー上に配されるとともに締結部を有するベース片と、
前記ベース片の第1方向他方側に延出し、前記第1の屋根材の一方側の端縁を覆う屈曲部を有する第1押さえ片と、
前記ベース片の一方側に延出し、前記第1のカバーの前記返し部に配される係止部を有する第2押さえ片と、を一体に有する、請求項2に記載の屋根構造。
【請求項7】
前記固定具の前記締結部の裏面に配される防水テープを備える、請求項6に記載の屋根構造。
【請求項8】
前記係止部は、前記カバーの前記返し部の内側に配され、前記カバーに係合する、請求項6に記載の屋根構造。
【請求項9】
前記第1押さえ片の屋根材側の屈曲角は鈍角である、請求項6に記載の屋根構造。
【請求項10】
一部が積層されるとともに第1方向に配列される複数の屋根材を有する屋根構造において、
第1の屋根材の第1方向一方側において、前記第1の屋根材の一方側に配される第2の屋根材を覆う第2のカバーの積層方向表側に固定具を配し、互いに積層される前記第2の屋根材と、前記第2のカバーと、前記固定具と、を締結し、
前記第1の屋根材と前記固定具とを覆う第1のカバーを装着する、カバーの取付け方法。
【請求項11】
前記カバーは、前記屋根材の表面側に対向する天板と、前記屋根材の裏面側に対向する底板と、前記天板と前記底板とを接続する側板と、を備え、
前記第1のカバーを装着する際、前記第1のカバーの前記底板を、前記固定具と、前記第2のカバーの前記天板との間の隙間に挿入する、請求項10に記載のカバーの取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造及びカバーの取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住居等に用いられる建築物として、例えば、木造軸組、木造枠組、鉄筋造、RC造等の建築構造が用いられる技術が知られている。また、このような建築物は、屋根形状として、屋根面が平面である屋根により形成された屋根構造が知られている。このような屋根構造として、例えば、複数の板状の屋根材が野地板に緊結釘によって緊結される技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した屋根材は、経年劣化によって外観美が低下する。例えば、外観美を向上させる化粧カバーであるカバーによって屋根材を覆うことで、外観美を向上させる技術も知られている。このようなカバーは、屋根材の上面、端面及び底面を覆うための天板、側板、底板を有する。屋根材にカバーを取り付ける方法として、カバーを装着する前に、屋根材の表面に接着剤を供給することがある。カバー装着の対象となる屋根材の表面は、汚れが付着していることが多く、前処理として屋根材の表面を洗浄する必要がある。このため、多数の屋根材にカバーを取り付ける作業が煩雑となることから、屋根材を容易且つ強固に固定する技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-089541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、屋根材とカバーを容易且つ強固に固定できる屋根構造及びカバーの取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る屋根構造は、第1の屋根材と、前記第1の屋根材の、第1方向一方側に配される第2の屋根材と、前記第1の屋根材の表面を覆う天板と、前記第1の屋根材の第1方向一方側に配される返し部と、を有する第1のカバーと、前記第2の屋根材の表面を覆う天板と、前記第2の屋根材の第1方向一方側に配される返し部と、を有する第2のカバーと、前記第1のカバーの前記返し部に係合するとともに、前記第2のカバーの前記天板(及び前記第2の屋根材)に締結される固定具と、を備える。
【0007】
本発明の他の一態様に係るカバーの取付け方法は、一部が積層されるとともに第1方向に配列される複数の屋根材を有する屋根構造において、前記第1の屋根材の第1方向一方側において、第1の屋根材の一方側に配される第2の屋根材を覆う第2のカバーの積層方向表側に固定具を配し、互いに積層される前記第2の屋根材と、前記第2のカバーと、前記固定具と、を締結し、前記第1の屋根材と前記固定具とを覆う第1のカバーを装着する、カバーの取付け方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋根材とカバーを容易且つ強固に固定できる屋根構造及びカバーの取付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る屋根構造の構成を示す斜視図。
図2】同屋根構造の構成を示す斜視図。
図3】同屋根構造の構成を示す斜視図。
図4】同屋根構造の構成を示す断面図。
図5】同屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図6】同屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図7】同カバーの構成を示す斜視図。
図8】同固定具の構成を示す斜視図。
図9】同実施形態に係るカバーの取付け方法を示す説明図。
図10】同実施形態に係る屋根構造の構成を示す説明図。
図11】本発明の第2実施形態に係る屋根構造の構成を示す断面図。
図12】同屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図13】同固定具の構成を示す平面図。
図14】同固定具の構成を示す正面図。
図15】同固定具の構成を示す斜視図。
図16】同固定具の構成を示す側面図。
図17】本発明の第3実施形態に係る屋根構造の構成を示す断面図。
図18】同屋根構造の構成を示す説明図。
図19】同屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図20】他の実施形態に係る屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図21】他の実施形態に係る屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図22】他の実施形態に係る屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図23】他の実施形態に係る屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図24】他の実施形態に係る屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図25】他の実施形態に係る屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
図26】他の実施形態に係る屋根構造の構成を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下に、第1実施形態に係るカバー150を用いた屋根構造1の構成及びカバー150の取付け方法について、図1乃至図10を参照して説明する。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小又は省略して示す。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る屋根構造1の構成を示す斜視図である。図2は屋根構造1の構成であって、カバー150及び継手190の一部を省略して示す斜視図であり、図3は、屋根構造1の構成であって、カバー150の一部及び継手190の一部を省略して示す斜視図である。図4は、屋根構造1の構成を示す断面図である。図5及び図6は、屋根構造1の構成を拡大して示す断面図である。図7は、カバーの構成を示す斜視図であり、図8は、固定具の構成を示す斜視図である。図9は、カバーの取付け方法を示す説明図であり、図10は、屋根構造の構成を示す説明図である。
【0012】
次に、図1乃至図6を用いて屋根構造1について説明する。なお、屋根構造1は、棟11から軒先12に向かって傾斜する。なお、屋根構造1は一例として、けらば13を有する。
【0013】
屋根構造1は、野地板110と、下葺き材120と、複数の屋根材130と、複数の緊結釘140と、複数のカバー150と、継手190と、軒先水切170と、けらば水切180と、端部カバー200と、棟包220と、笠木と、を備える。なお、図1乃至図3において、下葺き材120を省略して示す。
【0014】
なお、屋根構造1は、野地板110と屋根材130との間に、遮熱シートや通風用の部材等の他の部材を有していてもよい。
【0015】
野地板110は、釘等によって垂木に留め付けられる。野地板110は、例えば、構造用合板により形成される。なお、野地板110は、MDF(Medium Density Fiberboard)、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board)であってもよく、また、杉ムク材等の一枚の板材であってもよい。
【0016】
下葺き材120は、防水性を有する所謂ルーフィングシートである。例えば、下葺き材120は、基材にアスファルトを含浸及び/又は塗布させることで形成される。下葺き材120は、例えば、野地板110に留め付けられる。具体例として、下葺き材120は、野地板110の表板上に設けられる。
【0017】
複数の屋根材130は、棟11から軒先12に向かう野地板110の傾斜方向(縦方向)である第1方向と、第1方向に直交又は交差する幅方向(横方向)である第2方向と、においてそれぞれ複数列配列される。例えば第2方向において隣り合う屋根材130の間には、継手190が配置される。なお、部位によっては傾斜していない場合もある。
複数の屋根材130は、棟11から軒先12に向かう傾斜方向(第1方向)で、一部が積層されて、下葺き材120が留め付けされた野地板110上に緊結釘140により緊結される。
【0018】
屋根材130は、板状に形成される。屋根材130は、例えば、野地板110の傾斜方向で中央側に、該傾斜方向と直交する方向に複数の下穴131を有する。下穴131は、緊結釘140の頭部141の外径よりも小径であって、且つ、緊結釘140の釘部142の外径よりも大径に形成される。即ち、下穴131は、緊結釘140の釘部142を挿通させる開口である。
【0019】
緊結釘140は、図4に示すように、屋根構造1において、例えば、屋根材130を野地板110に緊結するために用いられる。
【0020】
緊結釘140は、例えば、野地板110の厚さ方向、換言すると、野地板110の主面の面方向に直交する方向で、野地板110に打ち込まれる。なお、緊結釘140の打ち込み方向は、野地板110の厚さ方向に限定されない。
【0021】
緊結釘140は、例えば、頭部141と、釘部142と、を備える。
【0022】
頭部141は、円板状に形成される。
【0023】
釘部142は、頭部141の一方の主面に一体に成形される。釘部142は、円柱状に形成される。また、釘部142は、例えば、釘部142の軸方向(長手方向)に等間隔に複数形成されたリング状の突起142aを複数有する。
【0024】
複数の突起142aは、緊結釘140を野地板110に打ち込んだときに、屋根材130を野地板110に緊結する緊結力を向上させる。換言すると、複数の突起142aは、野地板110に打ち付けられたときに、野地板110から緊結釘140が抜ける方向の保持力である引張強度を向上させる。複数の突起142aは、例えば、野地板110及び屋根材130の緊結力を向上可能に、野地板110内に配置される部位に少なくとも設けられる。なお、突起142aの数及び形状は、緊結力を向上可能であれば適宜設定できる。
【0025】
カバー150は、同じ高さ位置にあり幅方向に並列された複数の屋根材130のうち単数又は複数の屋根材130を覆う。例えば、カバー150は、屋根材130が経年劣化等によって外観美が低下したときに、屋根材130を覆うことで外観美を向上させる化粧カバーである。なお、本実施形態において、カバー150は、軒先12に位置する屋根材130は覆わず、図4に示すように、軒先12に位置する屋根材130を端部カバー200が覆う構成を説明する。
【0026】
カバー150は、天板151と、側板152と、底板153と、を備える。カバー150は、例えば、厚さが0.35mm~0.5mm程度の、鋼板を曲げ加工することで、天板151、側板152及び底板153が一体に形成される。すなわち、天板151、側板152及び底板153はいずれも厚さ寸法が厚さ0.35mm~0.5mm程度に構成される。例えばカバー150は、天板151の軒先12側の端部から2箇所で屈曲された側板152と底板153とによって、固定具160の下端側を覆う返し部155を構成している。また、カバー150は、側板152及び底板153との稜部、又は、側板152の底板153側に、矩形状の水抜き孔154が複数形成される。カバー150は、耐水性や耐候性を有するとともに、外観美を得るために、塗装等が施される。カバー150は、例えば、単数又は複数の屋根材130に締結されて固定される。
【0027】
天板151は、屋根材130の上面の少なくとも外部に露出する領域を覆う。天板151の幅寸法は、一つの屋根材130の幅寸法よりも大きく設定される。また、天板151の奥行き寸法は、一つの屋根材130及び固定具160の奥行き寸法の合計と同じか、又は、若干小さく設定される。具体的には、天板151の奥行き寸法は、棟11から軒先12に向かう傾斜方向において積層される屋根材130のうち、下方の屋根材130にカバー150が配置されたときに、天板151の棟側の端部が上方の屋根材130に覆われる長さであれば適宜設定できる。なお、ここで、奥行きとは、屋根構造1における水下(軒先12)側及び水上(棟11)側となる方向を意味する。
【0028】
側板152は、天板151及び底板153と一体に接続する。側板152は、屋根材130の軒先12側の側面を覆う。側板152の幅寸法は、例えば、天板151の幅寸法と同一寸法に設定される。側板152は、天板151の軒先12側に配置される。側板152は、天板151側よりも底板153側が軒先12側となるべく、天板151の面方向に沿った面及び天板151に直交する方向に対して鋭角に、例えば、45°に傾斜する。
【0029】
換言すると、側板152は、天板151の下面(カバー150の内側の主面)に対する角度が鈍角、例えば135°に傾斜する。なお、ここで、天板151の面方向に沿った面とは、天板151の側板152側の端部から、天板151の面方向に沿って延びる仮想平面である。側板152と屋根材130の端縁との間には固定具160が配置される。
【0030】
底板153は、天板151と平行又はほぼ平行に設定される。よって、側板152の底板153に対する傾斜角度は、鋭角に、一例として45°に設定される。なお、天板151及び底板153の間隔は、屋根材130が配置可能な間隔に設定される。底板153の幅寸法は、天板151の幅寸法と同じ寸法に設定される。底板153の奥行き寸法は、天板151の奥行き寸法よりも短く設定される。より具体的には、底板153の奥行き寸法は、下方の屋根材130に取り付けられるカバー150の天板151の棟側の端部よりも軒側となる寸法に設定される。底板153は、側板152と所定距離離れた折り返し位置において板材が折り返されて二重構造を成す返し構造部153bを有している。底板153の返し構造部153bの側板152側の端縁153aと側板152との間の領域に、固定具160の第2押さえ片163の折返部163bの頂部163eが配置されることで、頂部163eが返し構造部153bの返し片の端縁153aに係止される。
【0031】
水抜き孔154は、カバー150の幅方向で複数箇所に設けられる。水抜き孔154は、カバー150内に浸入した水を抜く水抜き穴である。
【0032】
複数のカバー150は縦方向において一部を重ねて、隣接して配置される。一例として、各カバー150は横方向に並ぶ複数の屋根材の幅より大きいサイズ及び形状に形成される。図1及び図3に示す例では、例えば幅方向に並ぶ三枚の屋根材130に対して一枚のカバー150が取り付けられる。
一部が積層されるとともに縦方向に並ぶ一対の屋根材130において、棟11側の屋根材130を第1の屋根材130、軒先12側の屋根材130を第2の屋根材130として説明するとともに、棟11側のカバー150を第1のカバー150、軒先12側のカバー150を第2のカバー150として、説明する。第1の屋根材130には、少なくとも軒先12側の端部を覆う第1のカバー150が装着され、第2の屋根材130には少なくとも軒先12側の部位を覆う第2のカバー150が装着される。
【0033】
また、縦方向に並ぶ一対のカバー150は、軒側のカバー150の天板151の表面の中途部に、棟側のカバー150の底板153の棟11側の端部が位置する。また、軒側のカバー150の天板151の端縁151aは、棟側のカバー150の底板153の棟11側の端部より棟側に所定距離ずれた位置に配置される。
【0034】
各カバー150は、その天板151が、取付け対象となる屋根材130と、当該屋根材130の棟11側に隣接され一部が表側に積層して配置された屋根材130に装着されたカバー150の底板153との間に差し込まれて、組みつけられ、固定具160によって固定される。すなわち、第2のカバー150の天板151は第2の屋根材130の表側に積層され、さらに表側に配される固定具160とともに締結され、第1の屋根材130の裏側に至って配置される。そして、第2のカバー150及び第2の屋根材130に締結された固定具160と、当該固定具160の棟11側に配される第1の屋根材130とが、第1のカバー150によって覆われる。
【0035】
固定具160は、屋根材130の第1方向一方側の端縁と、当該屋根材130を覆うカバー150の側板152との間に配される。固定具160は、金属の板材が曲成され、ベース片161と、第1押さえ片162と、押さえ部としての第2押さえ片163と、を一体に連続して有する。固定具160は、各カバー150の、幅方向(第2方向)の両端部において、水抜き孔154の中央側に隣接する位置に、それぞれ配置される。すなわち、固定具160は、各継手190の両側に、それぞれ配置される。
【0036】
ベース片161は、例えば第1方向及び第2方向に沿って延出する平板状に構成され、中央部に座部161aを備える。座部161aは締結部材が貫通する締結部としての締結孔161bを有する。座部161aは締結孔161bの周囲が円形状の領域が表側に隆起して構成される。ベース片161は、例えば所定の幅寸法及び奥行き寸法を有する矩形の板状に構成される。固定具160のベース片161の裏面には、両面接着の防水テープ169が貼付けられている。すなわち固定具160は両面接着の防水テープを介して、カバー150に貼付けられる。
【0037】
第1押さえ片162は、ベース片161から、第1の屈曲部162cにおいて積層方向の表側に屈曲して延びる立板部162aと、立板部162aの端縁から第2の屈曲部162dにおいて屈曲して第1方向に沿って延出する押板部162bと、を一体に有する。ベース片161と押板部162bとの間は、2箇所の第1の屈曲部162c及び第2の屈曲部162dで屈曲することにより、段差が形成される。例えば第1の屈曲部162cの屈曲角度θ1、すなわちベース片161と立板部162aとの開度は、鈍角である。また、例えば第2の屈曲部162dの屋根材130側の開度である屈曲角度θ2、すなわち立板部162aと押板部162bとがなす開度は、鈍角である。一例としてθ1、θ2は135°とする。押板部162bは棟側の屋根材130の表面上に配される。屈曲部162dは棟側の屋根材130の端縁の角部分に対向配置される。
【0038】
第2押さえ片163は、ベース片161の軒先側に連続して形成される。第2押さえ片163は、ベース片161から、第3の屈曲部163cにおいて屈曲して積層方向の表側に立ち上がる立板部163aと、立板部163aの端縁から第4の屈曲部163dにおいて屈曲して屋根材130に向けて延び、さらに折り返されて積層方向表側に且つ棟11側に向けて延出する折返部163bと、を一体に有する。折返部163bの頂部163eはカバー150の側板152と底板153との間のコーナー部に係止される係止部となる。
【0039】
第3の屈曲部163cには、水抜き孔163fが設けられる。水抜き孔163fは固定具160の幅方向で複数箇所に設けられる。水抜き孔163fは、固定具160に溜った水を抜く水抜き穴である。
【0040】
固定具160は、軒先側のカバー150の天板151と、当該カバー150の棟側に一部を積層して並べて配されるカバー150の天板151と、の間に配置される。固定具160は、積層して配置されるカバー150の天板151と、屋根材130と、に締結される。すなわち、固定具160は、ある屋根材130(第1の屋根材)を覆うカバー150(第1のカバー)に係合するとともに、その軒先12側に隣接する次のカバー150(第2のカバー)及び当該カバーが装着される屋根材130(第2の屋根材)に締結される。
【0041】
締結部材165は例えばパッキン付きのビスである。締結部材165は例えば、カバー150を屋根材130に緊結するために用いられる。
【0042】
締結部材165は、例えば、円板状の頭部165aと、円柱状の釘部165bと、を一体に有するとともに、釘部165bの頭部側の基端部の外周に環状のパッキンが設けられる。釘部165bは、その外周面においてらせん状に形成された突条部を有する。
【0043】
継手190は、幅方向で隣り合うカバー150間に設けられる。継手190は、屋根材130の上方であって、且つ、カバー150の下方に配置される。継手190は、例えばカバー150の面に沿って形成され、天板、側板と、を備える。天板は、幅方向で隣り合うカバー150の天板151の端部と対向する。側板は、隣り合うカバー150の側板152の端部と対向する。
【0044】
軒先水切170は、例えば、軒先12の幅方向(第2方向)に沿って設けられる。軒先水切170は、例えば、軒先12における野地板110及び下葺き材120の間に配置される基部171と、基部171の軒先12側の端部から下方に垂下する水切板172と、を有する。水切板172は、下端の野地板110側に返し部を有する。
【0045】
けらば水切180は、例えば、各けらば13に配置される。けらば水切180は、例えば、笠木を介して野地板110に緊結される。けらば水切180は、けらば13から下方に垂下する水切板を有する。
【0046】
図4に示すように、端部カバー200は、軒先12に配置された屋根材130を覆う。例えば、図4に示すように、軒先12において屋根材130は二枚積層されて配置されることから、端部カバー200は、二枚の屋根材130を覆う。また、端部カバー200は、軒先12において幅方向に複数配置された積層された屋根材130のうち、一組の又は複数組の積層された屋根材130を覆う。
【0047】
例えば、端部カバー200は、屋根材130が経年劣化等によって外観美が低下したときに、屋根材130を覆うことで外観美を向上させる化粧カバーである。図4に示すように、端部カバー200は、天板201と、側板202と、底板203と、を備える。端部カバー200は、例えば、鋼板を曲げ加工することで、天板201、側板202及び底板203が一体に形成される。また、端部カバー200は、側板202及び底板203との稜部、又は、側板202の底板203側に、矩形状の水抜き孔が単数又は複数形成されていてもよい。端部カバー200は、耐水性や耐候性を有するとともに、外観美を得るために、塗装等が施される。端部カバー200は、例えば、単数又は複数の屋根材130に締結されて固定される。
【0048】
棟包220は、棟11に設けられる。棟包220は、例えば、棟11及び棟11に配置された屋根材130の棟11側の端部を覆う。例えば、棟包220は、笠木を介して野地板110に緊結される。
【0049】
次に、本実施形態に係る屋根構造1の製造方法における、カバー150の装着方法を説明する。本実施形態に係るカバー150の装着方法は、軒先12側のカバー150と屋根材130に固定具160を締結する固定工程と、固定具160と棟11側の屋根材130にカバー150を被せる組付工程と、を備える。
【0050】
組付工程として、屋根材130に対して、カバー150を割り付ける。例えば本実施形態において、幅方向に並ぶ3つの屋根材130に対して1つのカバー150を装着する例を示す。組付工程において、軒先側の列から棟側の列に向かって順番に、一定幅ずつ、あるいは幅方向に延びる一列ずつ、カバー150を順次装着する。
【0051】
まず、最初に軒先12側の端に配列される屋根材130に端部カバー200を装着する(装着工程)。具体的には、端部カバー200の天板201と底板203との間の開口に、軒先12の屋根材130の端縁を配置させ、端部カバー200を棟11側に移動させることで、端部カバー200を装着する。そして、屋根材130の表側に配置された端部カバー200の天板201の上に、固定具160を配置し、防水テープ169で貼付けて仮固定し、締結する(締結工程)。このとき、端部カバー200が装着された軒先12側の屋根材130(第2の屋根材)の表側に一部が重ねて一列棟11側に配される屋根材130(第1の屋根材)の端部に、第1押さえ片162を被せ、屈曲部が棟11側の屋根材130の下端の角に対向するように、当接させて、固定具160を位置決めする。そして、互いに積層される固定具160の締結座部161aと、第2のカバー150の天板151と、第2の屋根材130と、第2の屋根材130の裏面に積層される野地板110を貫通するように締結部材165を螺合し、締結する。
【0052】
なお、軒先12側の端から2列目以降は、既に装着された軒先側のカバー200,150に固定具160を防水テープ169で貼付けて仮固定し、屋根材130とカバー200,150とを締結する(締結工程)。このとき、既にカバー150(第2のカバー)が装着された軒先12側の屋根材130(第2の屋根材)の、棟11側に配される屋根材130(第1の屋根材)の軒先12側の端部に、第1押さえ片162を被せ、屈曲部162dが棟11側の屋根材130の軒先側の角に対向するように、当接させて、固定具160を位置決めする。そして固定具160の締結後、軒先12側の屋根材130に締結された固定具160と棟11側の屋根材130とに、カバー150を装着する(装着工程)。このとき、棟11側のカバー150の底板153を、固定具160と軒先12側のカバー150との間に形成される隙間に、差し込みながら、装着する。以上により、縦方向に並ぶカバー150が、互いに一部を重ねて、配置される。
【0053】
以上の、締結工程と、装着工程を、軒先12側の列から棟11側の列へ順番に必要数繰り返すことで、屋根へのカバー150の装着が完了する。
【0054】
このように構成されたカバー150及び屋根構造1によれば、屋根材130が経年変化等によって劣化や外観の低下が生じた場合に、カバー150により屋根材130を覆うことで、外観を向上させることができる。
【0055】
また、上記実施形態に係る屋根構造1によれば、カバー150と屋根材130とを、締結により固定するため、取付けの強度が増し、耐風力も向上する。また、上記の屋根構造1によれば、カバー150の底板153と屋根材130との間に固定具160を配する構成とし、底板153と屋根材130との間が離間することにより、風の吹き上げや毛細管現象により雨水が浸入して屋根材130に至るのを防止できる。
【0056】
また、締結部材によって締結することにより、例えば汚れなどが付着しやすい屋根材の表面に接着剤を塗布して接着する場合と比べて、固定の強度を維持しやすく、また、予め塗布面を高圧洗浄するなどの前処理を省略することができ、工程数を減らすことができる。さらに、洗浄によって汚水が飛び散ることもないため、洗浄のための養生を省略できる。また、接着剤が塗布された状態で差し込み固定する場合と比べて、差し込み作業がしやすい。
【0057】
また、カバー150の天板151は薄い板状で構成され、屋根材130の上面に沿って配設することができ、屋根材130からの浮きが少ない。このため、例えば屋根構造1の既存の屋根材130と、屋根材130を覆って装着されている既存の軒先水切170、けらば水切180、棟包220等、のカバー用部材との間に差し込むことができ、装着作業が容易となる。
【0058】
また、上記実施形態において固定具160は金属板を曲げ加工して第1押さえ片162の段差を形成しているため、角度の調整がしやすく、周囲の材料との位置関係に追従して変形可能である。例えば第1押さえ片162は屋根材側が鈍角となる屈曲部162dを有することにより、屈曲部162dの開度を調整するように変形することができる。したがって、屋根材130の形状やサイズに合わせて第1押さえ片162の形状を変形させることができ、屋根材130の厚みに追従させることができる。また、固定具160が金属片で弾性変形可能に構成され、固定具160とカバー150とを嵌合させることができるため、装着性や作業性がよい。すなわち、第2押さえ片163が弾性変形可能であるため、第2押さえ片163の裏側にカバー150の底板153を挿入でき、且つ挿入後は第2押さえ片163によって底板153を屋根材130側に押圧することが可能となる。また固定具160の第1押さえ片を既存の屋根材130の端部に被せて締結させることで、屋根材130の端部を押さえ、反りやあばれを押さえることが可能である。また、締結部材によって締結することにより、全面で接着する方法と比べ、解体作業が容易であり、さらに分別作業も容易である。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係るカバー150を用いた屋根構造1の構成及びカバー150の取付け方法について、図11乃至図16を参照して説明する。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小又は省略して示す。本実施形態において、固定具1160の構造及び固定具1160のカバー150及び屋根材130に対する位置関係が異なるが、個々の屋根材130及びカバー150の構成は第1実施形態と同様であるため、同符号を付して共通する説明を省略する。
【0059】
本実施形態において、各カバー150は、その天板151が、取付け対象となる屋根材130と、屋根材130の表面上に配置された固定具1160とともに締結される。なお、隣接する一対の屋根材130は一部が積層されて配置され、棟側の第1の屋根材130と、第1の屋根材130の表面側に固定される固定具160と、その表面側を覆うカバー150の天板151と、第1の屋根材130の裏面側に差し込まれた第2のカバー150の天板151と、第2のカバー150の天板151によって覆われる第2の屋根材130とが、積層された状態で、締結部材165によって締結される。すなわち、軒側に配されるカバー150の天板151は、棟側に隣接するカバー150の底板153の裏側を通って、棟側の屋根材130の裏側に差し込まれている。
【0060】
固定具1160は、屋根材130と、当該屋根材130を覆うカバー150との間に配される。具体的には固定具1160はカバー150の側板152と底板153とで構成される返し部155の内側に配される。固定具1160は、金属の板材が曲成され、ベース片1161と、押さえ部としての第2押さえ片1163と、を一体に連続して有する。固定具1160は、補強や排水のために段差を有していてもよい。固定具1160は、各カバー150の、幅方向(第2方向)の両端部において、水抜き孔154の中央側に隣接する位置に、それぞれ配置される。すなわち、固定具1160は、各継手190の両側に、それぞれ配置される。
【0061】
ベース片1161は、例えば第1方向及び第2方向に沿って延出する矩形板状に構成され、中央部に締結部材が貫通する締結部としての締結孔1161bを有する。ベース片1161は、例えば所定の幅寸法及び奥行き寸法を有する矩形の板状に構成される。固定具1160のベース片1161の裏面には、両面接着の防水テープ169が貼付けられている。すなわち固定具1160は両面接着の防水テープを介して、カバー150に貼付けられる。
【0062】
第2押さえ片1163は、ベース片1161の軒先側に連続して形成される。第2押さえ片1163は、天板151に沿うベース片1161の一方側が屈曲して第2の屋根材130に向けて屈曲して折り返される屋根押さえ1163aと、さらに屋根押さえ1163aの一方側が屈曲して返し部155に向けて屈曲して折り返される返し押さえ1163bと、を連続して一体に備える。返し押さえ1163bの頂部がカバー150の側板152と底板153との間のコーナー部に係止される係止部となる。
【0063】
固定具1160は、傾斜方向に隣接する一対の屋根材130の段差部であり、隣接して配置される一対のカバー150の天板151の間に、配置される。固定具1160は、積層して配置されるカバー150の天板151と、屋根材130と、に締結される。すなわち、固定具1160のベース片1161は、締結部材165によって、第1方向に一部が積層して並ぶ第1の屋根材130及び第2の屋根材130と、それらの間に差し込まれる第2のカバー150の天板151と、に締結されるとともに、第2押さえ片163が第1のカバー150の返し部155に係合する。
【0064】
締結部材165は例えばパッキン付きのビスである。締結部材165は例えば、カバー150を屋根材130に緊結するために用いられる。
【0065】
締結部材165は、例えば、円板状の頭部165aと、円柱状の釘部165bと、を一体に有するとともに、釘部165bの頭部側の基端部の外周に環状のパッキンが設けられる。釘部165bは、その外周面においてらせん状に形成された突条部を有する。
【0066】
次に、本実施形態に係る屋根構造1の製造方法における、カバー150の装着方法を説明する。本実施形態に係るカバー150の装着方法は、軒先12側のカバー150と屋根材130に固定具1160を締結する固定工程と、固定具1160と棟11側の屋根材130にカバー150を被せる組付工程と、を備える。
【0067】
組付工程として、屋根材130に対して、カバー150を割り付ける。例えば本実施形態において、幅方向に並ぶ3つの屋根材130に対して1つのカバー150を装着する例を示す。組付工程において、軒先側の列から棟側の列に向かって順番に、一定幅ずつ、あるいは幅方向に延びる一列ずつ、カバー150を順次装着する。
【0068】
まず、最初に軒先12側の端に配列される屋根材130に端部カバー200を装着する(装着工程)。具体的には、端部カバー200の天板201と底板203との間の開口に、軒先12の屋根材130の端縁を配置させ、端部カバー200を棟11側に移動させることで、端部カバー200を装着する。例えば端部カバー200の天板201は、端部の屋根材130とその棟側に重ねて並べられる2段目の屋根材130裏側に差し込まれる。端部カバー200は、装着対象の軒先12側の屋根材130(第2の屋根材)の表側に一部が重ねて一列棟11側に配される屋根材130(第1の屋根材)の裏側に、その一部が配置される。そして、2段目の屋根材130の表側に配置された端部カバー200の天板201の上に、固定具1160を配置し、防水テープで貼付けて仮固定し、締結する(締結工程)。このとき、一対の屋根材130が重なる段差部に、ベース片1161の一方側の端縁が配置されるように、固定具1160を位置決めする。そして、互いに積層される固定具1160のベース片1161と、第1の屋根材130と、第2のカバー150の天板151と、第2の屋根材130と、第2の屋根材130の裏面に積層される野地板110を貫通するように締結部材165を螺合し、締結する。
【0069】
なお、軒先12側の端から2列目以降は、既に装着された軒先側のカバー200、150に固定具1160を防水テープで貼付けて仮固定し、屋根材130とカバー200、150とを締結する(締結工程)。このとき、既にカバー150(第2のカバー)が装着された軒先12側の屋根材130(第2の屋根材)の、棟11側に配される屋根材130(第1の屋根材)の軒先12側の端部に、ベース片1161を被せ、締結部材165を締結する。そして固定具1160の締結後、固定具1160と棟11側の屋根材130とに、カバー150を装着する(装着工程)。このとき、棟11側のカバー150の底板153を、固定具1160と軒先12側のカバー150の天板151との間に形成される隙間に、差し込みながら、装着する。以上により、縦方向に並ぶカバー150が、互いに一部を重ねて、配置される。
【0070】
以上の、締結工程と、装着工程を、軒先12側の列から棟11側の列へ順番に必要数繰り返すことで、屋根へのカバー150の装着が完了する。
【0071】
このように構成されたカバー150及び屋根構造1によれば、屋根材130が経年変化等によって劣化や外観の低下が生じた場合に、カバー150により屋根材130を覆うことで、外観を向上させることができる。
【0072】
また、上記実施形態に係る屋根構造1によれば、カバー150と屋根材130とを、締結により固定するため、取付けの強度が増し、耐風力も向上する。また、上記の屋根構造1によれば、カバー150の底板153と屋根材130との間に固定具1160の一部を配する構成とし、底板153と屋根材130との間が離間することにより、風の吹き上げや毛細管現象により雨水が浸入して屋根材130に至るのを防止できる。
【0073】
また、締結部材によって締結することにより、例えば汚れなどが付着しやすい屋根材の表面に接着剤を塗布して接着する場合と比べて、固定の強度を維持しやすく、また、予め塗布面を高圧洗浄するなどの前処理を省略することができ、工程数を減らすことができる。さらに、洗浄によって汚水が飛び散ることもないため、洗浄のための養生を省略できる。また、接着剤が塗布された状態で差し込み固定する場合と比べて、差し込み作業がしやすい。
【0074】
また、上記実施形態において固定具1160は金属板を曲げ加工して段差を形成しているため、角度の調整がしやすく、周囲の材料との位置関係に追従して変形可能である。例えば第1押さえ片1162は屈曲部を有することにより、屈曲部の開度を調整するように変形することができる。したがって、屋根材130の形状やサイズに合わせて形状を変形させることができ、屋根材130の厚みや寸法に追従させることができる。また、固定具1160が金属片で弾性変形可能に構成され、固定具1160とカバー150とを嵌合させることができるため、装着性や作業性がよい。すなわち、第2押さえ片1163が弾性変形可能であるため、第2押さえ片1163の裏側にカバー150の底板153を挿入でき、且つ挿入後は第2押さえ片1163によって底板153を屋根材130側に押圧することが可能となる。また固定具1160のベース片1161を既存の屋根材130の端部に被せて締結させることで、屋根材130の端部を押さえ、反りやあばれを押さえることが可能である。また、締結部材によって締結することにより、全面で接着する方法と比べ、解体作業が容易であり、さらに分別作業も容易である。
【0075】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係るカバー1150を用いた屋根構造1の構成及びカバー1150の取付け方法について、図1乃至図3図17、及び図18を参照して説明する。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小又は省略して示す。本実施形態において、カバー1150の天板151は、棟側に一部重ねて並ぶ屋根材130の表面側に配置され、次のカバー1150とともに締結部材によって固定具1160とともに締結される。この他の構成については第2実施形態の屋根材130、カバー150及び固定具1160と同様に構成されている。
【0076】
屋根構造1は、野地板110と、下葺き材120と、複数の屋根材130と、複数の緊結釘140と、複数のカバー1150と、継手190と、軒先水切170と、けらば水切180と、端部カバー200と、棟包220と、笠木と、を備える。なお、図1乃至図3図17及び図18において、下葺き材120を省略して示す。
【0077】
なお、屋根構造1は、野地板110と屋根材130との間に、遮熱シートや通風用の部材等の他の部材を有していてもよい。
【0078】
野地板110は、釘等によって垂木に留め付けられる。野地板110は、例えば、構造用合板により形成される。なお、野地板110は、MDF(Medium Density Fiberboard)、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board)であってもよく、また、杉ムク材等の一枚の板材であってもよい。
【0079】
下葺き材120は、防水性を有する所謂ルーフィングシートである。例えば、下葺き材120は、基材にアスファルトを含浸及び/又は塗布させることで形成される。下葺き材120は、例えば、野地板110に留め付けられる。具体例として、下葺き材120は、野地板110の表板上に設けられる。
【0080】
複数の屋根材130は、棟11から軒先12に向かう野地板110の傾斜方向(縦方向)である第1方向と、第1方向に直交又は交差する幅方向(横方向)である第2方向と、においてそれぞれ複数列配列される。例えば第2方向において隣り合う屋根材130の間には、継手190が配置される。なお、部位によっては傾斜していない場合もある。
【0081】
複数の屋根材130は、棟11から軒先12に向かう傾斜方向(第1方向)で、一部が積層されて、下葺き材120が留め付けされた野地板110上に緊結釘140により緊結される。
【0082】
屋根材130は、板状に形成される。屋根材130は、例えば、野地板110の傾斜方向で中央側に、該傾斜方向と直交する方向に複数の下穴131を有する。下穴131は、緊結釘140の頭部141の外径よりも小径であって、且つ、緊結釘140の釘部142の外径よりも大径に形成される。即ち、下穴131は、緊結釘140の釘部142を挿通させる開口である。
【0083】
緊結釘140は、図4に示すように、屋根構造1において、例えば、屋根材130を野地板110に緊結するために用いられる。
【0084】
緊結釘140は、例えば、野地板110の厚さ方向、換言すると、野地板110の主面の面方向に直交する方向で、野地板110に打ち込まれる。なお、緊結釘140の打ち込み方向は、野地板110の厚さ方向に限定されない。
【0085】
緊結釘140は、例えば、頭部141と、釘部142と、を備える。
【0086】
頭部141は、円板状に形成される。
【0087】
釘部142は、頭部141の一方の主面に一体に成形される。釘部142は、円柱状に形成される。また、釘部142は、例えば、釘部142の軸方向(長手方向)に等間隔に複数形成されたリング状の突起142aを複数有する。
【0088】
複数の突起142aは、緊結釘140を野地板110に打ち込んだときに、屋根材130を野地板110に緊結する緊結力を向上させる。換言すると、複数の突起142aは、野地板110に打ち付けられたときに、野地板110から緊結釘140が抜ける方向の保持力である引張強度を向上させる。複数の突起142aは、例えば、野地板110及び屋根材130の緊結力を向上可能に、野地板110内に配置される部位に少なくとも設けられる。なお、突起142aの数及び形状は、緊結力を向上可能であれば適宜設定できる。
【0089】
カバー1150は、同じ高さ位置にあり幅方向に並列された複数の屋根材130のうち単数又は複数の屋根材130を覆う。例えば、カバー1150は、屋根材130が経年劣化等によって外観美が低下したときに、屋根材130を覆うことで外観美を向上させる化粧カバーである。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様に、カバー1150は、軒先12に位置する屋根材130は覆わず、図4に示すように、軒先12に位置する屋根材130を端部カバー200が覆う。
【0090】
カバー1150は、天板151と、側板152と、底板153と、を備える。カバー1150は、例えば、厚さが0.35mm~0.5mm程度の、鋼板を曲げ加工することで、天板151、側板152及び底板153が一体に形成される。例えばカバー1150は、天板151の軒先12側の端部から2箇所で屈曲された側板152と底板153とによって、固定具1160の下端側を覆う返し部155を構成している。また、カバー1150は、側板152及び底板153との稜部、又は、側板152の底板153側に、矩形状の水抜き孔154が複数形成される。カバー1150は、耐水性や耐候性を有するとともに、外観美を得るために、塗装等が施される。カバー1150は、例えば、単数又は複数の屋根材130に締結されて固定される。
【0091】
天板151は、屋根材130の上面の少なくとも外部に露出する領域を覆う。天板151の幅寸法は、一つの屋根材130の幅寸法よりも大きく設定される。また、天板151の奥行き寸法は、棟11から軒先12に向かう傾斜方向において一部が積層されて隣接する一対の屋根材130のうち、軒側の屋根材130にカバー1150が配置されたときに、天板151の棟側の端縁151aが棟側の屋根材130の少なくとも一部を覆う長さに設定される。例えば天板151は、棟側の屋根材130に締結される固定具1160に至る長さに構成される。
【0092】
なお、ここで、奥行きとは、屋根構造1における水下(軒先12)側及び水上(棟11)側となる方向を意味する。天板151は、縦方向の中途位置において、幅方向に沿う段差151bが形成される。段差151bは、第2方向に沿って延びる傾斜面を有し、縦方向に隣接して一部が重ねて配される一対の屋根材130の境界部分に形成される段差に対応する形状に構成される。したがって天板151の形状は、屋根材130同士の境界部に形成される段差に沿っている。
【0093】
側板152は、天板151及び底板153と一体に接続する。側板152は、屋根材130の軒先12側の側面を覆う。側板152の幅寸法は、例えば、天板151の幅寸法と同一寸法に設定される。側板152は、天板151の軒先12側に配置される。側板152は、天板151側よりも底板153側が軒先12側となるべく、天板151の面方向に沿った面及び天板151に直交する方向に対して鋭角に、例えば、45°に傾斜する。
【0094】
換言すると、側板152は、天板151の下面(カバー1150の内側の主面)に対する角度が鈍角、例えば135°に傾斜する。なお、ここで、天板151の面方向に沿った面とは、天板151の側板152側の端部から、天板151の面方向に沿って延びる仮想平面である。側板152と屋根材130の端縁との間には固定具1160が配置される。
【0095】
底板153は、天板151と平行又はほぼ平行に設定される。よって、側板152の底板153に対する傾斜角度は、鋭角に、一例として45°に設定される。なお、天板151及び底板153の間隔は、屋根材130が配置可能な間隔に設定される。底板153の幅寸法は、天板151の幅寸法と同じ寸法に設定される。底板153の奥行き寸法は、天板151の奥行き寸法よりも短く設定される。より具体的には、底板153の奥行き寸法は、下方の屋根材130に取り付けられるカバー1150の天板151の棟側の端部よりも軒側となる寸法に設定される。底板153は、側板152と所定距離離れた折り返し位置において板材が折り返されて二重構造を成す返し構造部153bを有している。底板153の返し構造部153bの側板152側の端縁と側板152との間の領域に、固定具160の第2押さえ片1163の返し押さえ1163bの頂部が配置されることで、返し構造部153bの返し片に係止される。
【0096】
水抜き孔154は、カバー1150の幅方向で複数箇所に設けられる。水抜き孔154は、カバー1150内に浸入した水を抜く水抜き穴である。
【0097】
複数のカバー1150は縦方向において一部を重ねて、隣接して配置される。一例として、各カバー1150は横方向に並ぶ複数の屋根材の幅より大きいサイズ及び形状に形成される。例えば幅方向に並ぶ三枚の屋根材130に対して一枚のカバー1150が取り付けられる。
【0098】
一部が積層されるとともに縦方向に並ぶ一対の屋根材130において、棟11側の屋根材130を第1の屋根材130、軒先12側の屋根材130を第2の屋根材130として説明するとともに、棟11側のカバー1150を第1のカバー1150、軒先12側のカバー1150を第2のカバー1150として、説明する。第1の屋根材130には、少なくとも軒先12側の端部を覆う第1のカバー1150が装着され、第2の屋根材130には少なくとも軒先12側の部位を覆う第2のカバー1150が装着される。
【0099】
また、縦方向に並ぶ一対のカバー1150は、軒側のカバー1150(第2のカバー)の天板151の表面の中途部の表面に、棟側のカバー1150(第1のカバー)の底板153が重ねて配される。また、軒側のカバー1150の天板151の端縁151aは、棟側のカバー1150の底板153の棟11側の端部よりも棟側に所定距離ずれた位置に配置される。そして、軒側のカバー1150の天板151は棟側の屋根材130の表面側であって当該屋根材の装着される固定具1160のベース片1161の裏側に配される。言い換えると本実施形態に係るカバー1150の天板151は一部積層して並ぶ2枚の屋根材130の段差を乗り越えて、棟側の屋根材130の表面に至って延出している。
【0100】
各カバー1150は、その天板151が、取付け対象となる屋根材130の表側に配され、一対の屋根材130の段差を経て当該屋根材130の棟11側に隣接され一部が表側に積層して配置された屋根材130の表面上の位置に至り、締結部材165によって、積層される複数の屋根材130と固定具1160とともに、締結される。すなわち、第2のカバー1150の天板151は第2の屋根材130及び第1の屋根材130の一部の表側を覆う。そして、第2のカバー1150の天板151の棟側の端縁部分と、第1の屋根材130に締結された固定具1160と、第1の屋根材130とが、第1のカバー1150によって覆われる。
【0101】
固定具1160は、第2のカバー1150の天板151と、当該屋根材130を覆うカバー1150との間に配される。具体的には固定具1160は第1のカバー1150の側板152と底板153とで構成される返し部155の内側に配される。固定具1160は、金属の板材が曲成され、ベース片1161と、押さえ部としての第2押さえ片1163と、を一体に連続して有する。固定具1160は、補強や排水のために段差を有していてもよい。固定具1160は、各カバー1150の、幅方向(第2方向)の両端部において、水抜き孔154の中央側に隣接する位置に、それぞれ配置される。すなわち、固定具1160は、各継手190の両側に、それぞれ配置される。
【0102】
ベース片1161は、例えば第1方向及び第2方向に沿って延出する矩形板状に構成され、中央部に締結部材が貫通する締結部としての締結孔1161bを有する。ベース片1161は、第1の屋根材130上に配される第2のカバー1150の天板151と、第1の屋根材130を覆うカバー1150との間に配される。ベース片1161は、例えば所定の幅寸法及び奥行き寸法を有する矩形の板状に構成される。固定具1160のベース片1161の裏面には、両面接着の防水テープ169が貼付けられている。すなわち固定具1160は両面接着の防水テープを介して、カバー1150に貼付けられる。
【0103】
第2押さえ片1163は、ベース片1161の軒先側に連続して形成される。第2押さえ片1163は、天板151に沿うベース片1161の一方側が屈曲して第2の屋根材130に向けて屈曲して折り返される屋根押さえ1163aと、さらに屋根押さえ1163aの一方側が屈曲して返し部155に向けて屈曲して折り返される返し押さえ1163bと、を連続して一体に備える。返し押さえ1163bの頂部がカバー1150の側板152と底板153との間のコーナー部に係止される係止部となる。屋根押さえ1163aの一部は段差151cの傾斜面に沿って延びる。また、返し押さえ1163bの端縁側の部位は側板152に沿って延びる。
【0104】
固定具1160は、傾斜方向に隣接する一対の屋根材130の段差部であり、隣接して配置される一対のカバー1150の天板151の間に、配置される。固定具1160は、積層して配置される第2の屋根材130及び第1の屋根材130と、第1の屋根材130上に配された第2のカバー1150の天板151と、に締結される。すなわち、固定具1160のベース片1161は、締結部材165によって、第1方向に一部が積層して並ぶ第1の屋根材130及び第2の屋根材130と、第2のカバー1150の天板151と、それらの表側に重ねて配される第2のカバー1150の天板151と、に締結されるとともに、第2押さえ片163が第1のカバー1150の返し部155に係合する。
【0105】
締結部材165は例えばパッキン付きのビスである。締結部材165は例えば、カバー1150を屋根材130に緊結するために用いられる。
【0106】
締結部材165は、例えば、円板状の頭部165aと、円柱状の釘部165bと、を一体に有するとともに、釘部165bの頭部側の基端部の外周に環状のパッキンが設けられる。釘部165bは、その外周面においてらせん状に形成された突条部を有する。
【0107】
継手190は、幅方向で隣り合うカバー1150間に設けられる。継手190は、屋根材130の上方であって、且つ、カバー1150の下方に配置される。継手190は、例えばカバー1150の面に沿って形成され、天板、側板と、を備える。天板は、幅方向で隣り合うカバー1150の天板151の端部と対向する。側板は、隣り合うカバー1150の側板152の端部と対向する。
【0108】
軒先水切170は、例えば、軒先12の幅方向(第2方向)に沿って設けられる。軒先水切170は、例えば、軒先12における野地板110及び下葺き材120の間に配置される基部171と、基部171の軒先12側の端部から下方に垂下する水切板172と、を有する。水切板172は、下端の野地板110側に返し部を有する。
【0109】
けらば水切180は、例えば、各けらば13に配置される。けらば水切180は、例えば、笠木を介して野地板110に緊結される。けらば水切180は、けらば13から下方に垂下する水切板を有する。
【0110】
また、端部カバー200は、第1実施形態と同様に構成され、軒先12に配置された屋根材130を覆う。例えば、軒先12において屋根材130は二枚積層されて配置されることから、端部カバー200は、二枚の屋根材130を覆う。また、端部カバー200は、軒先12において幅方向に複数配置された積層された屋根材130のうち、一組の又は複数組の積層された屋根材130を覆う。
【0111】
例えば、端部カバー200は、屋根材130が経年劣化等によって外観美が低下したときに、屋根材130を覆うことで外観美を向上させる化粧カバーである。端部カバー200は、天板201と、側板202と、底板203と、を備える。端部カバー200は、例えば、鋼板を曲げ加工することで、天板151、側板202及び底板203が一体に形成される。本実施形態において、例えば端部カバー200の天板201は、端部の屋根材130とその棟側に重ねて並べられる2段目の屋根材130の表側に至って配置される。すなわち端部カバー200の天板201の傾斜方向の寸法は、端部の屋根材130の表面から、二段目の屋根材130の端縁を通り、二段目の屋根材130の表面に至る長さに設定される。一例として、天板201において、屋根材130の段差に対応する位置に、段差が形成されていてもよい。端部カバー200は、装着対象の軒先12側の屋根材130(第2の屋根材)の表側に一部が重ねて一列棟11側に配される屋根材130(第1の屋根材)の表面上に、その一部が配置される。また、端部カバー200は、側板202及び底板203との稜部、又は、側板202の底板203側に、矩形状の水抜き孔が単数又は複数形成されていてもよい。端部カバー200は、耐水性や耐候性を有するとともに、外観美を得るために、塗装等が施される。端部カバー200は、例えば、単数又は複数の屋根材130に締結されて固定される。
【0112】
棟包220は、棟11に設けられる。棟包220は、例えば、棟11及び棟11に配置された屋根材130の棟11側の端部を覆う。例えば、棟包220は、笠木を介して野地板110に緊結される。
【0113】
次に、本実施形態に係る屋根構造1の製造方法における、カバー1150の装着方法について説明する。本実施形態に係るカバー1150の装着方法は、軒先12側のカバー1150と屋根材130に固定具1160を締結する固定工程と、固定具1160と棟11側の屋根材130にカバー1150を被せる組付工程と、を備える。
【0114】
組付工程として、屋根材130に対して、カバー1150を割り付ける。例えば本実施形態において、幅方向に並ぶ3つの屋根材130に対して1つのカバー1150を装着する例を示す。組付工程において、軒先側の列から棟側の列に向かって順番に、一定幅ずつ、あるいは幅方向に延びる一列ずつ、カバー1150を順次装着する。
【0115】
まず、最初に軒先12側の端に配列される屋根材130に端部カバー200を装着する(装着工程)。具体的には、端部カバー200の天板201と底板203との間の開口に、軒先12の屋根材130の端縁を配置させ、端部カバー200を棟11側に移動させることで、端部カバー200を装着する。例えば端部カバー200の天板201は、端部の屋根材130とその棟側に重ねて並べられる2段目の屋根材130の表側に至って配置される。端部カバー200は、装着対象の軒先12側の屋根材130(第2の屋根材)の表側に一部が重ねて一列棟11側に配される屋根材130(第1の屋根材)の表面上に、その一部が配置される。そして、2段目の屋根材130の表側に配置された端部カバー200の天板201の上に、固定具1160を配置し、防水テープ169で貼付けて仮固定し、締結する(締結工程)。このとき、一対の屋根材130が重なる段差部に、ベース片1161の端縁が配置されるように、固定具1160を位置決めする。そして、互いに積層される固定具1160の締結座部161aと、第1の屋根材130と、第2のカバー1150の天板151と、第2の屋根材130と、第2の屋根材130の裏面に積層される野地板110を貫通するように締結部材165を螺合し、締結する。
【0116】
なお、軒先12側の端から2列目以降は、既に装着された軒先側のカバー200,1150に固定具1160を防水テープ169で貼付けて仮固定し、屋根材130とカバー200,1150とを締結する(締結工程)。このとき、既にカバー1150(第2のカバー)が装着された軒先12側の屋根材130(第2の屋根材)の、棟11側に配される屋根材130(第1の屋根材)の軒先12側の端部に、ベース片1161を被せ、締結部材165を締結する。そして固定具1160の締結後、固定具1160と棟11側の屋根材130とに、カバー1150を装着する(装着工程)。このとき、棟11側のカバー1150の底板153を、固定具1160と軒先12側のカバー1150の天板151との間に形成される隙間に、差し込みながら、装着する。以上により、縦方向に並ぶカバー1150が、互いに一部を重ねて、配置される。
【0117】
以上の、締結工程と、装着工程を、軒先12側の列から棟11側の列へ順番に必要数繰り返すことで、屋根へのカバー1150の装着が完了する。
【0118】
このように構成されたカバー1150及び屋根構造1によれば、屋根材130が経年変化等によって劣化や外観の低下が生じた場合に、カバー1150により屋根材130を覆うことで、外観を向上させることができる。
【0119】
また、上記実施形態に係る屋根構造1によれば、カバー1150と屋根材130とを、締結により固定するため、取付けの強度が増し、耐風力も向上する。また、上記の屋根構造1によれば、カバー1150の底板153と屋根材130との間に固定具1160を配する構成とし、底板153と屋根材130との間が離間することにより、風の吹き上げや毛細管現象により雨水が浸入して屋根材130に至るのを防止できる。
【0120】
また、締結部材によって締結することにより、例えば汚れなどが付着しやすい屋根材の表面に接着剤を塗布して接着する場合と比べて、固定の強度を維持しやすく、また、予め塗布面を高圧洗浄するなどの前処理を省略することができ、工程数を減らすことができる。さらに、洗浄によって汚水が飛び散ることもないため、洗浄のための養生を省略できる。
【0121】
また、上記実施形態において固定具1160は金属板を曲げ加工して第1押さえ片1162の段差を形成しているため、角度の調整がしやすく、周囲の材料との位置関係に追従して変形可能である。したがって、屋根材130の形状やサイズに合わせて固定具1160の形状を変形させることができ、屋根材130の厚みに追従させることができる。また、固定具1160が金属片で弾性変形可能に構成され、固定具1160とカバー1150とを嵌合させることができるため、装着性や作業性がよい。また固定具1160を屋根材130やカバー1150に被せて締結させることで、屋根材130の端部を押さえ、反りやあばれを押さえることが可能である。また、締結部材によって締結することにより、全面で接着する方法と比べ、解体作業が容易であり、さらに分別作業も容易である。
【0122】
また、カバー1150の天板151は薄い板状で構成され、屋根材130の上面に沿って配設することができ、屋根材130からの浮きが少ない。このため、例えば屋根構造1の既存の屋根材130と、屋根材130を覆って装着されている既存の軒先水切170、けらば水切180、棟包220等、のカバー用部材との間に差し込むことができ、装着作業が容易となる。
【0123】
また、本実施形態においては、第2の屋根材130に装着される第2のカバー1150の天板151の棟側の一部が、棟側に積層される第1の屋根材130の上面側に至って延びることで、屋根材130の積層部分の隙間から水が浸入するのを防止できる。
【0124】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0125】
例えばカバー150,1150の形状は上述した例に限られず、適宜変更可能である。例えば他の実施形態として図20に示す屋根構造1Aのように、底板153において折り返される板状部が所定の角度で表側に立ち上がるフック形状としてもよい。例えば底板153の折り返し角度が60~30°で傾斜していてもよい。この場合、返し形状部が固定具160に引っかかりやすいため、抜け止め効果が高く、固定が強固になる。
【0126】
また、複数の屋根材130の段差に渡って天板151,201が配される実施形態において、天板151,201に段差が形成される例を示したが、これに限られるものではない。例えば薄い平板状で変形可能に構成されていてもよい。すなわち、薄板で平板状に構成されたカバー150,200が段差に乗り上げ、段差の棟側の中途部において、固定具160を締結することで、各屋根材130の上面に沿って配設することができる。
【0127】
また、固定具160,1160の形状は上記実施形態に限られず、適宜変更可能である。例えば上記実施形態では第1押さえ片162の屈曲部162c,162dをそれぞれ鈍角としたが、これに限られない。例えば図21に示す屋根構造1Bのように、屈曲部162c,162dを直角としてもよい。あるいは図22に示す屋根構造1Cのように、屈曲部162cを直角とし、屈曲部162dを鈍角としてもよい。この場合にも、傾斜する押板部162bの位置をずらすことで、厚さや位置の変化に追従できる。また材料は、ZAM(高耐性メッキ鋼板)、ステンレス等の硬質の材料を用いてもよい。この場合、変形しにくいため、例えば第1押さえ片162は、立板部162aがベース片161に対して直角であり、押板部162bが立板部162aに対して鈍角の屈曲角度で屈曲して上方に延びる形状とすることで、厚さの変化に対応できるように構成してもよい。さらに、カバー150において押板部162bが配される部位を隆起させることで、位置調整可能に構成してもよい。
【0128】
また、図23に示す屋根構造1Dのように、第1押さえ片162の押板部162bを省略し、立板部162aのみで構成されていてもよい。例えば、屋根構造1Dにおいて、第1押さえ片162は、ベース片161から直角に屈曲して、屋根材130の端縁の端面に当接するように立ち上がる平板状に構成されている。また、第2押さえ片163の形状も、上記実施形態の例に限られない。例えば他の実施形態として図23に示す屋根構造1Dの第2押さえ片163は、折り返し形状ではなく、断面が弧状となるように、湾曲形状に隆起している。この場合、屋根材130に向かって延びる端縁部が係止部となる。
【0129】
また、他の実施形態として図24に示す屋根構造1Eにおいて、第2押さえ片163は、側板152に向けて斜めに立ち上がる平板状の第1立板部163gと、第1立板部163gの先端からさらに表側に屈曲して側板152の内側面に沿って延びる第2立板部163hと、を備える。本実施形態に係る屋根構造1Eによれば、第2押さえ片163と天板151との間の隙間が拡がるため、棟側に装着するカバーの底板153を差し込み易く、装着作業が容易となる。
【0130】
例えば、カバー150と屋根材130との締結に加え、屋根材130と各カバー150との間をさらに接着してもよい。例えば、屋根材130の表面にカバー150を被せて組み付ける前に、屋根材130の表面又はカバー150の天板の裏面の所定箇所に予め接着材を塗布しておくことで、各屋根材130と各カバー150とを接合してもよい。さらに、組付け後に、縦方向に隣接するカバー150の重なる部位の間に、接着剤を充填させて接合してもよい。
【0131】
また、上述した例では、天板151と底板153とが平行に延びるとともに、天板151と側板152との間が鈍角となり側板152と底板153との間が鋭角となるように、側板152が傾斜する例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図25図26に示す屋根構造1Fのカバー150F、1150Gのように、天板151と底板153とが平行に延びるとともに、側板152が天板151及び底板153に対して垂直に延びる構成であってもよい。この場合においても、互いに重ねて配されるカバー150F、1150G間に固定具160、1160を締結することで、カバー150F、1150Gを容易且つ強固に固定することができる。
【0132】
また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0133】
1…屋根構造、11…棟、12…軒先、13…けらば、110…野地板、120…下葺き材、130…屋根材、131…下穴、140…緊結釘、141…頭部、142…釘部、142a…突起、150…カバー、151…天板、151a…端縁、152…側板、153…底板、153a…端縁、154…水抜き孔、155…返し部、160,1160…固定具、161,1161…ベース片、161b,1161b…締結孔、162,1162…第1押さえ片、163,1163…第2押さえ片、190…継手、170…軒先水切、171…基部、172…水切板、180…けらば水切、200…端部カバー、201…天板、202…側板、203…底板、220…棟包。
図1
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