(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062818
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】作業機械の制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
E02F9/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172935
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 唯太
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA08
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】バケット振り動作を可能にし、かつ車体にかかる負荷を低減できる、作業機械の制御システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】作業機械の制御システムは、リアフレームと、リアフレームに対し屈曲動作可能に接続するフロントフレームと、フロントフレームに対し動作可能なバケットと、バケットを駆動するアクチュエータと、リアフレームとフロントフレームとの相対位置を検出するセンサと、アクチュエータを制御する作業機コントローラ10とを備えている。作業機コントローラ10は、センサの検出結果の入力を受け付け、センサの検出結果に基づいてアクチュエータの動作を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアフレームと、
前記リアフレームに対し屈曲動作可能に接続するフロントフレームと、
前記フロントフレームに対し動作可能なバケットと、
前記バケットを駆動するアクチュエータと、
前記リアフレームと前記フロントフレームとの相対位置を検出するセンサと、
前記アクチュエータを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記センサの検出結果の入力を受け付け、前記検出結果に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する、作業機械の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記検出結果に基づいて、前記アクチュエータの動作に制限を設ける、請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記バケットを振動させる動作の単位時間あたりの許容回数に制限を設ける、請求項2に記載の作業機械の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記リアフレームに対して前記フロントフレームが屈曲する角度が大きいほど、前記バケットを振動させる動作の単位時間あたりの許容回数を小さくする、請求項3に記載の作業機械の制御システム。
【請求項5】
前記アクチュエータは、作動油の供給を受けて前記バケットを駆動するバケットシリンダを含み、
前記コントローラは、前記バケットシリンダへ供給される作動油の流量の変化率を制限する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記リアフレームに対して前記フロントフレームが屈曲する角度が大きいほど、前記バケットシリンダへ供給される作動油の流量の変化率を小さくする、請求項5に記載の作業機械の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記バケットを振動させる動作の振幅に制限を設ける、請求項2に記載の作業機械の制御システム。
【請求項8】
前記バケットを動作させるために手動で操作可能な操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記操作装置の操作内容に対する前記アクチュエータの動作に制限を設ける、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の作業機械の制御システム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、作動油の供給を受けて前記バケットを駆動するバケットシリンダを含み、
前記コントローラは、前記操作内容に基づいて計算される作動油の流量よりも、前記バケットシリンダへ供給される作動油の流量を小さくする、請求項8に記載の作業機械の制御システム。
【請求項10】
前記作業機械は、前記リアフレームまたは前記フロントフレームに搭載され、オペレータが搭乗するキャブを備え、
前記操作装置は前記キャブ内に配置される、請求項8または請求項9に記載の作業機械の制御システム。
【請求項11】
前記作業機械は、前記リアフレームに取り付けられた後輪と、前記フロントフレームに取り付けられた前輪とを有する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の作業機械の制御システム。
【請求項12】
リアフレームと、前記リアフレームに対し屈曲動作可能に接続するフロントフレームと、前記フロントフレームに対し動作可能なバケットと、前記バケットを駆動するアクチュエータと、前記リアフレームと前記フロントフレームとの相対位置を検出するセンサと、を備える作業機械の制御方法であって、
前記センサの検出結果の入力を受け付けることと、
前記検出結果に基づいて前記アクチュエータの動作を制御することと、を備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前方にバケットを含む作業機を備える作業機械では、バケットを使用した作業時に、バケットに泥などが付着することがある。作業機械は、バケットから付着物を落とすために、バケットを素早く振動させる(以下、本明細書では「バケット振り」と称する)操作がされることがある。米国特許第10597845号公報(特許文献1)には、作業機を有する車両用の作業機振動システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械では、車体が不安定な状態でバケット振りをすると、車体にかかる負荷が高くなることがある。
【0005】
本開示では、バケット振り動作を可能にし、かつ車体にかかる負荷を低減できる、作業機械の制御システムおよび制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る作業機械の制御システムは、リアフレームと、リアフレームに対し屈曲動作可能に接続するフロントフレームと、フロントフレームに対し動作可能なバケットと、バケットを駆動するアクチュエータと、リアフレームとフロントフレームとの相対位置を検出するセンサと、アクチュエータを制御するコントローラとを備えている。コントローラは、センサの検出結果の入力を受け付け、センサの検出結果に基づいてアクチュエータの動作を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の作業機械の制御システムおよび制御方法によると、バケット振り動作を可能にし、かつ車体にかかる負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に基づく作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
【
図2】ホイールローダを含む全体システムの構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】アーティキュレート状態のホイールローダを平面視した模式図である。
【
図4】作業機コントローラの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】従来のバケット振り動作の制御を示す図である。
【
図6】実施形態のバケット振り動作の制御を示す図である。
【
図7】アーティキュレート角度に対する、バケットシリンダへ供給される作動油の流量の変化率を示す図である。
【
図8】バケット振り動作中にバケットシリンダへ供給される作動油の流量を示す図である。
【
図9】バケットを低速で振動させる動作中にバケットシリンダへ供給される作動油の流量を示す図である。
【
図10】第2実施形態の作業機コントローラの機能構成を示すブロック図である。
【
図11】第3実施形態における、アーティキュレート角度に対する、バケットシリンダへ供給される作動油の許容最大流量を示す図である。
【
図12】第3実施形態における、バケット振り動作中にバケットシリンダへ供給される作動油の流量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
[第1実施形態]
<ホイールローダ1の全体構成>
実施形態においては、作業機械の一例としてホイールローダ1について説明する。
図1は、実施形態に基づく作業機械の一例としてのホイールローダ1の側面図である。
【0011】
図1に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置7と、キャブ5とを備えている。車体フレーム2、キャブ5などからホイールローダ1の車体(作業機械本体)が構成されている。ホイールローダ1の車体には、作業機3および走行装置7が取り付けられている。
【0012】
走行装置7は、ホイールローダ1の車体を走行させるものであり、走行輪7A,7Bを含んでいる。ホイールローダ1は、車体の左右方向の両側に走行用回転体として走行輪7A,7Bを備える装輪車両である。ホイールローダ1は、走行輪7A,7Bが回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。
【0013】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平坦な地面上にあるホイールローダ1を平面視したときに前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0014】
車体フレーム2は、フロントフレーム2Aとリアフレーム2Bとを含んでいる。フロントフレーム2Aは、リアフレーム2Bの前方に配置されている。フロントフレーム2Aは、リアフレーム2Bに対し屈曲動作可能に接続されている。フロントフレーム2Aとリアフレーム2Bとにより、アーティキュレート構造の車体フレーム2が構成されている。ホイールローダ1は、フロントフレーム2Aとリアフレーム2Bとが連結されたアーティキュレート式の作業機械である。
【0015】
フロントフレーム2Aには、作業機3および左右一対の走行輪(前輪)7Aが取り付けられている。作業機3は、車体の前方に配設されており、ホイールローダ1の車体によって支持されている。作業機3は、ブーム32と、バケット31とを含んでいる。バケット31は、作業機3の先端に配置されている。バケット31は、掘削・積込用の作業具である。
【0016】
作業機3は、ブームシリンダ36を含んでいる。フロントフレーム2Aとブーム32とは、一対のブームシリンダ36により連結されている。ブームシリンダ36の基端は、フロントフレーム2Aに取り付けられている。ブームシリンダ36の先端は、ブーム32に取り付けられている。ブームシリンダ36は、ブーム32をフロントフレーム2Aに対し上下に動作させる油圧アクチュエータである。ブーム32の昇降に伴って、ブーム32の先端に取り付けられたバケット31も昇降する。
【0017】
作業機3は、ベルクランク33と、連結リンク34と、バケットシリンダ35をさらに含んでいる。ベルクランク33は、ブーム32のほぼ中央に、ブーム32に回転自在に支持されている。バケットシリンダ35は、ベルクランク33とフロントフレーム2Aとを連結している。連結リンク34は、ベルクランク33の先端部に連結されている。連結リンク34は、ベルクランク33とバケット31とを連結している。
【0018】
バケットシリンダ35の基端は、フロントフレーム2Aに取り付けられている。バケットシリンダ35の先端は、ベルクランク33の基端部に取り付けられている。バケットシリンダ35は、バケット31をブーム32に対し上下に回動させる油圧アクチュエータである。バケットシリンダ35は、バケット31を駆動する作業具シリンダである。バケット31は、ブーム32に対し動作可能に構成されている。バケット31は、フロントフレーム2Aに対し動作可能に構成されている。
【0019】
リアフレーム2Bには、オペレータが搭乗するキャブ5、および左右一対の走行輪(後輪)7Bが取り付けられている。箱状のキャブ5は、ブーム32の後方に配置されている。キャブ5は、車体フレーム2上に載置されている。キャブ5内には、オペレータが着座するシートおよび後述する操作装置などが配置されている。キャブ5は、フロントフレーム2Aに搭載されていてもよい。
【0020】
<システム構成>
図2は、実施形態に従うホイールローダ1を含む全体システムの構成を示す概略ブロック図である。ホイールローダ1は、作業機コントローラ10と、エンジン11と、Power Take Off(PTO:動力取出装置)12とを備えている。
【0021】
エンジン11は、作業機3を駆動するための駆動力を発生する駆動源であり、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン11の出力は、エンジン11のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより制御される。PTO12は、エンジン11の出力を、走行装置7を駆動する走行系と、作業機3を駆動する油圧装置系に分配する。エンジン11、PTO12および油圧装置系は、リアフレーム2Bの、キャブ5の後方に搭載されている。
【0022】
油圧装置系は、主に作業機3(たとえばブーム32およびバケット31)を駆動するための機構である。油圧装置系は、PTO12で駆動される作業機用の油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21の吐出回路に設けられた油圧パイロット式のバケット操作弁22およびブーム操作弁23と、バケット操作弁22の各パイロット受圧部に接続されたバケット用の電磁比例制御弁24,25と、ブーム操作弁23の各パイロット受圧部に接続されたブーム用の電磁比例制御弁26,27と、を備えている。
【0023】
作業機3は、油圧ポンプ21からの作動油によって駆動される。油圧ポンプ21は、エンジン11により駆動され、吐出する作動油によって作業機3を作動させる。ブームシリンダ36が油圧ポンプ21からの作動油の供給を受けて伸縮することによって、ブーム32が昇降する。バケットシリンダ35が油圧ポンプ21からの作動油の供給を受けて伸縮することによって、バケット31が上下に回動する。
【0024】
電磁比例制御弁24~27は、図示略のパイロットポンプに接続され、作業機コントローラ10からの制御信号に応じて、パイロットポンプからブーム操作弁23およびバケット操作弁22の各パイロット受圧部への作動油の供給を制御する。
【0025】
具体的には、電磁比例制御弁24は、バケットシリンダ35を縮めて、バケット31がダンプ方向(バケット31の刃先が下がる方向)に移動するように、バケット操作弁22を切り換える。また、電磁比例制御弁25は、バケットシリンダ35を伸ばして、バケット31がチルト方向(バケット31の刃先が上がる方向)に移動するように、バケット操作弁22を切り換える。
【0026】
電磁比例制御弁26は、ブームシリンダ36を縮めて、ブーム32が下がるようにブーム操作弁23を切り換える。また、電磁比例制御弁27は、ブームシリンダ36を伸ばして、ブーム32が上がるようにブーム操作弁23を切り換える。
【0027】
作業機コントローラ10には、操作装置と、ブーム角度センサ44と、バケット角度センサ45と、ブームボトム圧センサ46と、フレーム角度センサ47が接続されている。操作装置は、キャブ5に設けられている。操作装置は、ブーム操作レバー41およびバケット操作レバー42を含んでいる。操作装置はまた、図示しないステアリングハンドル、ステアリングレバー、アクセルペダルなどを含んでいる。
【0028】
ブーム操作レバー41は、たとえばキャブ5内のシートの右側に配置されている。ブーム操作レバー41は、レバー角度を検出するレバー角度センサを内蔵する。ブーム操作レバー41は、ブーム32を動作させるために、オペレータが手動で操作可能である。オペレータがブーム操作レバー41を操作すると、レバー角度センサは、操作量に応じたレバー角度を検出し、ブームレバー信号として作業機コントローラ10に出力する。
【0029】
バケット操作レバー42は、たとえばキャブ5内のシートの右側に配置されている。バケット操作レバー42は、レバー角度を検出するレバー角度センサを内蔵する。バケット操作レバー42は、バケット31を動作させるために、オペレータが手動で操作可能である。オペレータがバケット操作レバー42を操作すると、レバー角度センサは、操作量に応じたレバー角度を検出し、バケットレバー信号として作業機コントローラ10に出力する。
【0030】
ブーム操作レバー41とバケット操作レバー42とは、別々のレバーで構成されてもよい。または、1つのレバーがブーム操作レバー41とバケット操作レバー42との両方の機能を備えてもよい。たとえば、レバーの前後方向への操作がブーム32を上下動するための操作に設定され、レバーの左右方向への操作がバケット31を回動させるための操作に設定されてもよい。
【0031】
ブーム角度センサ44は、たとえば、ブーム32の車体フレーム2に対する取付部(支持軸)に設けられたロータリーエンコーダなどで構成され、ブーム32の中心線と水平線との間のブーム角度を検出し、検出信号を出力する。ここで、ブーム32の中心線とは、
図2のY-Y線であり、ブーム32の車体フレーム2に対する取付部(支持軸の中心)とバケット31の取付部(バケット支持軸の中心)とを結ぶ線である。
図2のY-Y線が水平線に沿っている場合、ブーム角度センサ44はブーム角度0度を出力する。ブーム角度0度の状態から、ブーム32の先端が上げられるとブーム角度センサ44はプラスの値を出力し、ブーム32の先端が下げられるとマイナスの値を出力する。
【0032】
バケット角度センサ45は、たとえば、ベルクランク33の回転軸に設けられたロータリーエンコーダなどで構成され、バケット31を接地した状態でバケット31の刃先が地上において水平となる位置であれば0度を出力し、バケット31をチルト方向(上向き)に移動するとプラスの値を出力し、バケット31をダンプ方向(下向き)に移動するとマイナスの値を出力する。
【0033】
ブームボトム圧センサ46は、ブームシリンダ36のボトム側の圧力(ブームボトム圧)を検出する。ブームボトム圧は、バケット31に荷が積まれた場合に高くなり、空荷の場合に低くなる。
【0034】
フレーム角度センサ47は、フロントフレーム2Aをリアフレーム2Bに対し屈曲させる屈曲機構に設けられている。フレーム角度センサ47は、リアフレーム2Bとフロントフレーム2Aとの相対位置を検出する。リアフレーム2Bに対するフロントフレーム2Aの屈曲は、フロントフレーム2Aとリアフレーム2Bとに連結されたアーティキュレートシリンダを伸縮させることで行われる。アーティキュレートシリンダは、油圧によって駆動され、フロントフレーム2Aのリアフレーム2Bに対する屈曲の角度を変更する油圧アクチュエータである。
【0035】
図3は、アーティキュレート状態のホイールローダ1を平面視した模式図である。フレーム角度センサ47は、リアフレーム2Bに対してフロントフレーム2Aが屈曲する角度である
図3に示されるアーティキュレート角度を検出し、検出信号を作業機コントローラ10に出力する。ホイールローダ1が直進状態のとき、フレーム角度センサ47はアーティキュレート角度0度を出力する。
【0036】
<作業機コントローラ10の構成>
図4は、作業機コントローラ10の機能構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、作業機コントローラ10は、バケットシリンダ目標流量計算部51と、バケット振り周波数制限部52と、屈曲角度読取り部53と、EPC電流決定部54とを主に備えている。
【0037】
バケットシリンダ目標流量計算部51は、バケット操作レバー42のレバー角度センサから、バケット操作レバー42の操作量の検出結果を示すバケットレバー信号の入力を受ける。バケットシリンダ目標流量計算部51は、バケットレバー信号に基づいて、バケット31を駆動するためのバケットシリンダ35に供給される作動油の目標流量を計算する。バケットシリンダ目標流量計算部51は、計算した作動油の目標流量を、バケット振り周波数制限部52へ出力する。
【0038】
屈曲角度読取り部53は、フレーム角度センサ47から、リアフレーム2Bに対してフロントフレーム2Aが屈曲する角度であるアーティキュレート角度の検出結果を示す信号の入力を受ける。屈曲角度読取り部53は、フレーム角度センサ47から入力された信号に基づいて、アーティキュレート角度を読み取る。屈曲角度読取り部53は、アーティキュレート角度の検出結果を、バケット振り周波数制限部52に出力する。
【0039】
バケット振り周波数制限部52は、アーティキュレート角度の検出結果に基づいて、バケット操作レバー42の操作内容に対するバケットシリンダ35の動作を制御する。具体的に、バケット振り周波数制限部52は、アーティキュレート角度の大きさに応じて、バケット31の動きの制限値を変更する。より詳細には、バケット振り周波数制限部52は、アーティキュレート角度が大きいほど、バケット31を素早く振動させるバケット振り動作の単位時間あたりの許容回数を小さくする。バケット振り周波数制限部52は、バケット振り動作をさせるためにオペレータがバケット操作レバー42を操作可能な最高周波数を、アーティキュレート角度に応じて変更する。バケット振り周波数制限部52は、アーティキュレート角度の大きさに応じた、バケットシリンダ35へ供給される作動油の指令流量を決定し、EPC電流決定部54に出力する。
【0040】
EPC電流決定部54は、バケットシリンダ35へ供給される作動油の指令流量に応じた制御信号(EPC電流)を決定する。EPC電流決定部54は、バケット操作弁22に接続されたバケット用の電磁比例制御弁24,25に、EPC電流を出力する。
【0041】
<バケット振り動作の制御>
図5は、従来のバケット振り動作の制御を示す図である。
図5の横軸はアーティキュレート角度を示し、
図5の縦軸はオペレータがバケット操作レバー42を操作する周波数(1秒あたりの操作回数)を示す。
【0042】
図5中の破線は、バケット振りをすることでホイールローダ1の車体がロール方向に共振する限界の周波数を示す。フロントフレーム2Aがリアフレーム2Bに対し屈曲した状態でバケット振りをすると、バケット31からブーム32およびバケットシリンダ35とフロントフレーム2Aとを通して、リアフレーム2Bに対してロール方向の反力が加わり、リアフレーム2Bがロール方向に揺れる。
【0043】
ホイールローダ1では、車体が前後方向に長いのでピッチ方向の揺れの影響は小さく、車体の左右方向の幅が短いのでロール方向の揺れの影響が大きくなる。そのためホイールローダ1では一般に、ロール方向はピッチ方向よりも揺れに対する固有周波数が高くなる。ホイールローダ1の車体のロール方向の揺れがバケット31の振動の周波数と近いことで、バケット31の振動に対して車体が共振しやすくなる。その結果、ホイールローダ1の車体のロール方向の揺れが、ピッチ方向よりも大きくなりやすい。
図5に示されるように、アーティキュレート角度が大きいほど、バケット振りに対してホイールローダ1の車体がロール方向に共振する限界の周波数は小さい。
【0044】
図5中の実線は、オペレータがバケット操作レバー42を操作する周波数の、従来の制限値を示す。従来は、アーティキュレート角度の大きさに関わらず、バケットを振動させる動作の単位時間あたりの許容回数が一定に設定されている。アーティキュレート角度が十分に小さく共振が起こる可能性の小さい場合でもバケット31の動きが制限されるため、バケット振りによるバケット31から付着物を除去する作業が実施しずらく、作業性が低下していた。また、アーティキュレート角度が大きい状態では、共振が発生する限界の周波数よりも大きい周波数での操作が許容されていたため、車体がロール方向に大きく振動する可能性があった。
【0045】
図6は、実施形態のバケット振り動作の制御を示す図である。
図5と同様、
図6の横軸はアーティキュレート角度を示し、
図6の縦軸はオペレータがバケット操作レバー42を操作する周波数(1秒あたりの操作回数)を示す。
図6中の破線は、
図5と同様の、バケット振りをすることでホイールローダ1の車体がロール方向に共振する限界の周波数を示す。
【0046】
図6中の実線は、本実施形態における、オペレータがバケット操作レバー42を操作する周波数の制限値を示す。
図6に示されるように、本実施形態では、アーティキュレート角度の大きさに応じて、バケット31の動きの制限値が変更されている。バケット振りのためにバケット操作レバー42を操作可能な最大周波数が、アーティキュレート角度に応じて変更されている。具体的に、アーティキュレート角度が大きいほど、バケット振りの単位時間あたりの許容回数が小さくされている。バケット振りの許容回数は、共振を回避するため、
図6の破線で示される共振する周波数に対して余裕をみて、共振する周波数よりも小さく設定されている。
【0047】
ホイールローダ1が直進状態では、共振が発生しにくいので、高い周波数のバケット振りが許容される。これにより、バケット31から付着物を効率的に除去することが可能になる。フロントフレーム2Aがリアフレーム2Bに対して屈曲した状態でバケット振りをするとより低い周波数でリアフレーム2Bがロール方向に共振する可能性があるため、車体フレームの角度に応じてバケット振りが可能な周波数を下げてゆく。アーティキュレート角度が大きいときにバケット31の動きを制限することにより、車体の共振の発生を抑制できるので、車体にかかる負荷を低減することができる。
【0048】
図6に示される、アーティキュレート角度とバケット振り周波数との関係図は、作業機コントローラ10(
図2,4)に予め記憶されている。屈曲角度読取り部53は、フレーム角度センサ47から、フレーム角度センサ47の検出結果の入力を受け付ける。バケットシリンダ目標流量計算部51は、バケット操作レバー42から、バケット操作レバー42の操作量の検出結果の入力を受け付ける。バケット振り周波数制限部52は、予め記憶されている
図6に示される関係図から、アーティキュレート角度に基づく、バケット振りの単位時間あたりの許容回数を読み出す。バケット振り周波数制限部52は、バケット操作レバー42の操作内容に従うバケット振りの単位時間あたりの回数が、アーティキュレート角度に基づく許容回数よりも大きいときには、バケットシリンダ35の動作を制限して、バケット操作レバー42の操作内容よりもバケット31の振動の振幅が小さくなるようにする。
【0049】
図7は、アーティキュレート角度に対する、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率を示す図である。アーティキュレート角度に従ってバケット31の揺動の周波数の上限値を変更することは、たとえば、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率を制限することで、実現することができる。
【0050】
たとえば、
図7に示される、アーティキュレート角度が0度、20度および40度のときの、バケット振り可能周波数と、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率の許容値と、のテーブルを、作業機コントローラ10に予め記憶させておく。
【0051】
アーティキュレート角度が大きいほど、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率を小さくする。アーティキュレート角度が0度の直進状態のとき、バケット振り可能周波数を相対的に大きい「大」の値とし、作動油の流量の変化率の許容値も相対的に大きい「大」の値とする。アーティキュレート角度が中間の20度のとき、バケット振り可能周波数を中間の「中」の値とし、作動油の流量の変化率の許容値も中間の「中」の値とする。アーティキュレート角度が最大の40度のとき、バケット振り可能周波数を相対的に小さい「小」の値とし、作動油の流量の変化率の許容値も相対的に小さい「小」の値とする。
【0052】
実際には、0度、20度および40度のアーティキュレート角度に対する、バケット振り可能周波数および許容流量変化率の具体的な数値を、作業機コントローラ10に予め記憶させておく。アーティキュレート角度が0度超20度未満および20度超40度未満の場合は、線形補間することにより、バケット振り可能周波数および許容流量変化率の具体的な数値を決定する。なお、バケット振り可能周波数は、オペレータによるバケット操作レバー42の操作に関する設定値であるので、数ヘルツ程度の値とされる。
【0053】
図8は、バケット振り動作中にバケットシリンダ35へ供給される作動油の流量を示す図である。
図8の横軸は時間を示し、
図8の縦軸はバケットシリンダ35へ供給される作動油の流量を示す。
図8中の「0%」とは、バケット操作レバー42が中立であってバケット31が停止しており、バケットシリンダ35への作動油の供給が停止している状態を示す。
【0054】
図8の縦軸のプラス方向が、バケットシリンダ35のボトム側油室に供給されバケット31をチルト方向に移動させる作動油の流量を示す。
図8中の「+100%」は、バケット31をチルト方向に移動させるようにバケットシリンダ35に供給される作動油の流量の最大値である。
図8の縦軸のマイナス方向が、バケットシリンダ35のヘッド側油室に供給されバケット31をダンプ方向に移動させる作動油の流量を示す。
図8中の「-100%」」は、バケット31をダンプ方向に移動させるようにバケットシリンダ35に供給される作動油の流量の最大値である。
【0055】
図8中の破線は、オペレータによるバケット操作レバー42の操作で決定される作動油の目標流量を示す。
図8中の破線で示される作動油の目標流量は、バケットシリンダ目標流量計算部51で計算されバケットシリンダ目標流量計算部51からバケット振り周波数制限部52へ入力される、作動油の流量である。
【0056】
図8中の実線は、作動油の流量の変化率を制限した後の作動油の指令流量を示す。
図8中の実線で示される作動油の指令流量は、バケット振り周波数制限部52で制限をかけられバケット振り周波数制限部52からEPC電流決定部54へ入力される、作動油の流量である。
図8に示される指令流量に基づく制御信号が、EPC電流決定部54から、電磁比例制御弁24,25に出力される。
【0057】
バケット振りをするとき、オペレータは通常、バケット31をチルト方向に移動させるバケット操作レバー42の最大量の操作と、バケット31をダンプ方向に移動させるバケット操作レバー42の最大量の操作とを繰り返す。
図8では、オペレータは、中立位置にあるバケット操作レバー42のチルト方向への操作を時刻T1で開始する。オペレータは、時刻T2でチルト方向への最大の操作量に到達すると、直ちにチルト方向への操作量を減少させる。時刻T3でチルト方向への操作量がゼロになりバケット操作レバー42が中立状態になると、オペレータはそのままダンプ方向への操作を開始する。オペレータは、時刻T4でダンプ方向への最大の操作量に到達すると、直ちにダンプ方向への操作量を減少させる。
【0058】
図8に実線で示される作動油の指令流量は、破線で示される目標流量に近づくように制御される。バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率が制限されており、
図8に実線で示される指令流量のグラフの傾きが制限されている。時刻T1でバケット操作レバー42の操作が開始され、作動油の指令流量も増加し始めるが、指令流量は目標流量よりも小さい。時刻T2でバケット操作レバー42の操作量が減少を開始しても、依然として指令流量が目標流量よりも小さいので、指令流量は増加を続ける。時刻T5で目標流量と指令流量とが一致するまで、指令流量は増加し続ける。時刻T5以降、目標流量が指令流量よりも小さくなるので、指令流量は目標流量に近づくように減少する。
【0059】
時刻T3でオペレータによるチルト方向への操作量がゼロになり、時刻T3以降も指令流量は減少を続ける。時刻T6でチルト方向への指令流量がゼロになった時点で、ダンプ方向へのバケット操作レバー42の操作がされておりダンプ方向の目標流量が計算されているので、作動油の指令流量もダンプ方向に増加し始める。時刻T4でバケット操作レバー42の操作量が減少を開始しても、依然として指令流量が目標流量よりも小さいので、指令流量は増加を続ける。時刻T7で目標流量と指令流量が一致するまで、指令流量は増加し続ける。時刻T7以降、目標流量が指令流量よりも小さくなるので、指令流量は目標流量に近づくように減少する。
【0060】
このように指令流量を制御することで、
図8に示される指令流量の振幅Aは、オペレータによるバケット操作レバー42の操作内容に基づいて計算される目標流量の振幅よりも小さくなっている。そのため、バケット31が動く量が小さくなっている。オペレータは、バケット31の動作の振幅が小さいことに気付いて、バケット操作レバー42の操作が早すぎることを認識できる。
【0061】
図9は、バケットを低速で振動させる動作中にバケットシリンダ35へ供給される作動油の流量を示す図である。
図8と同様に、
図9の横軸は時間を示し、
図9の縦軸はバケットシリンダ35へ供給される作動油の流量を示す。
図9中の破線は、オペレータによるバケット操作レバー42の操作で決定される作動油の目標流量を示し、
図8中の実線は、作動油の流量の変化率を制限した後の作動油の指令流量を示す。
【0062】
図8に示される例では、作動油の流量変化率の制限のために、作動油の目標流量と指令流量とに乖離が生じ、指令流量の振幅が減少したが、必ずしも目標流量と指令流量とに乖離が生じるとは限らない。作動油の流量変化率の制限は、変化率の上限を定めるものであるので、制限よりも小さい変化率にすることは許容される。
【0063】
図9に示される例では、オペレータによるバケット操作レバー42の操作が低速であり、バケット操作レバー42の操作内容に基づいて計算される作動油の目標流量の変化率が、指令流量の変化率の制限よりも小さい。この場合、流量変化率制限後の指令流量は、目標流量と等しくなる。
図9に示される指令流量の振幅A0は、目標流量の振幅と等しくなる。このように、オペレータのバケット操作レバー42の操作が低速であれば、オペレータの操作の通りにバケット31を往復移動させることが可能である。これにより、作動油の流量変化率を制限する制御が、掘削作業の妨げとならないようにされている。
【0064】
<作用および効果>
上述した実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。
【0065】
図4に示されるように、作業機コントローラ10は、リアフレーム2Bとフロントフレーム2Aとの相対位置を検出するフレーム角度センサ47の検出結果の入力を受け付ける。作業機コントローラ10は、リアフレーム2Bとフロントフレーム2Aとの相対位置の検出結果に基づいて、バケットシリンダ35の動作を制御する。作業機コントローラ10は、リアフレーム2Bとフロントフレーム2Aとの相対位置の検出結果に基づいて、バケットシリンダ35の動作に制限を設ける。
【0066】
リアフレーム2Bに対してフロントフレーム2Aが屈曲するアーティキュレート状態では、バケット31の動作に制限を加える。アーティキュレート角度の大きさに応じて、バケット31の動きの制限値を変更して、バケット31の振幅をより小さくする。これにより、リアフレーム2Bに作用する反力を小さくできるので、リアフレーム2Bのロール方向の揺れを小さくでき、バケット31の振動とリアフレーム2Bの揺れとが共振することを抑制できる。したがって、車体フレームおよび外装を含む構造物にかかる負荷を低減でき、構造物を長寿命化することができる。
【0067】
キャブ5はリアフレーム2Bに搭載されており、オペレータはキャブ5に搭乗してホイールローダ1の操作を行う。リアフレーム2Bのロール方向の揺れを軽減できることで、キャブ5内のオペレータの身体が左右に揺さぶられることを回避でき、オペレータの疲労を軽減することができる。
【0068】
一方、オペレータがホイールローダ1を遠隔操作する場合には、オペレータはキャブ5に搭乗していないので、車体がどれだけ揺れているかを体感しにくい。遠隔操作仕様の作業機械の場合でも、車体の構造物に負荷がかかるような早いバケット振りが実施されないように制限することができるので、構造物の寿命向上が可能となる。
【0069】
操作装置がフロントフレーム2Aをリアフレーム2Bに対して屈曲させるためのステアリングレバーを含み、オペレータがステアリングレバーを左右に傾けてフロントフレーム2Aを屈曲させる場合、リアフレーム2Bが左右に揺れるとステアリングレバーにも左右方向の加速度が加わる。このとき、リアフレーム2Bに対するフロントフレーム2Aの屈曲が意図せず変動することがある。また、バケット31の動作のためにオペレータがレバーを左右に傾ける操作をする場合、リアフレーム2Bが左右に揺れると当該レバーにも左右方向の加速度が加わり、オペレータの意図に反してバケット31の振動が継続してしまう可能性がある。リアフレーム2Bのロール方向の揺れを軽減できることで、レバーの左右方向の揺れを抑制できるので、オペレータの意図と異なるホイールローダ1の動作が発生することを抑制することができる。
【0070】
図6に示されるように、作業機コントローラ10は、リアフレーム2Bに対してフロントフレーム2Aが屈曲するアーティキュレート角度が大きいほど、バケット31を振動させる動作の単位時間あたりの許容回数に制限を設けて、単位時間あたりの許容回数を小さくしてもよい。これにより、アーティキュレート角度が小さい直進状態のときには、バケット振りを可能にしてバケット31から付着物を迅速に除去することができる。バケット振りのためにバケット操作レバー42の操作が可能な最大の周波数をアーティキュレート角度に応じて変更し、アーティキュレート角度が大きいときにバケット振りを制限することで、車体のロール方向の揺れを小さくして車体にかかる負荷を低減することができる。
【0071】
図7に示されるように、バケット31を振動させる動作の単位時間あたりの許容回数を制限する手法として、作業機コントローラ10は、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率を制限してもよい。バケットシリンダ35を伸縮させるための作動油の流量の変化率を制限することで、バケット31の加速度を制限できるので、バケット振りを確実に制限することができる。
【0072】
図7に示されるように、作業機コントローラ10は、アーティキュレート角度が大きいほど、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率を小さくしてもよい。このようにすることで、アーティキュレート角度が大きいときにバケット振り動作を制限でき、車体のロール方向の揺れを確実に小さくすることができる。
【0073】
図2に示されるように、作業機コントローラ10は、バケット31を動作させるためのオペレータによるバケット操作レバー42の操作内容の入力を受け付ける。
図8に示されるように、作業機コントローラ10は、バケット操作レバー42の操作内容に対するバケットシリンダ35の動作に制限を設けてもよい。アーティキュレート状態で、オペレータによるバケット31を振動させようとする操作が急なときには、バケット操作レバー42の操作の通りにバケット31を動作させなくする。これにより、バケット振りを制限してバケット31の振幅を小さくすることができる。
【0074】
図8に示されるように、作業機コントローラ10は、バケット操作レバー42の操作内容に基づいて計算されるバケットシリンダ35への作動油の目標流量よりも、実際にバケットシリンダ35に供給される作動油の指令流量を小さくしてもよい。作動油の目標流量に追従するように指令流量を制御し、指令流量の変化率に制限を設けることで、バケット振りのときのバケット31の振幅を小さくすることができる。
【0075】
<その他の変形例>
実施形態の説明では、チルト方向の作動油の流量増加および流量減少、ならびに、ダンプ方向の作動油の流量増加および流量減少、の4通りの場合に、流量の変化率を等しく制限する例を示したが、流量の変化率の制限を異ならせてもよい。たとえば、チルト方向およびダンプ方向に作動油の流量が増加するときの流量の変化率の許容値を、チルト方向およびダンプ方向に作動油の流量が減少するときの流量の変化率の許容値よりも、小さくしてもよい。チルト方向およびダンプ方向の作動油の流量増加のときには流量の変化率を制限し、一方、チルト方向およびダンプ方向の作動油の流量減少のときには流量の変化率に制限を設けずにオペレータによるバケット操作レバー42の操作通りに作動油の流量を減少させてもよい。
【0076】
実施形態の説明では、バケット31を振動させる動作の単位時間あたりの許容回数を制限する手法として、作業機コントローラ10は、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率を制限する例を示したが、この例に限られるものではない。
図4に示されるバケット振り周波数制限部52に替えて、バケット操作レバー42の操作に対するローパスフィルタを適用してもよい。ローパスフィルタのカットオフ周波数をアーティキュレート角度に応じて変化させる、より具体的にはアーティキュレート角度が大きいほどカットオフ周波数を低くすることで、アーティキュレート角度が大きいときにバケット振り動作を制限でき、車体のロール方向の揺れを確実に小さくすることができる。
【0077】
または、バケット操作レバー42の操作の周期を計測し、一定以上の周波数での操作を検知したときにはバケット31を停止させる制御としてもよい。このバケット31を停止させるための閾値となるバケット操作レバー42の操作の周波数を、アーティキュレート角度に応じて変化させてもよい。アーティキュレート角度が大きいときにバケット31の操作可能な最大の周波数を制限することで、車体のロール方向の揺れを確実に小さくすることができる。
【0078】
本開示の思想を適用可能な作業機械は、ホイールローダに限られず、たとえば、旋回フレームに対してバケットが左右に移動可能なオフセットブーム仕様またはスイング式ブーム仕様の油圧ショベルなどの、他の種類の作業機械であってもよい。
【0079】
[第2実施形態]
第1実施形態では、オペレータがバケット操作レバー42を操作してバケット振り動作をする例について説明した。バケット振り動作によるバケット31からの付着物の除去を容易にするため、自動的にバケット振り動作をする制御がある。オペレータの、自動バケット振りを実行する操作が入力されると、作業機コントローラ10は、「予め決められた自動バケット振り周波数」でバケット振り動作が実現するようにバケットシリンダ35に対する指令流量を決定し、指令流量に基づきEPC電流を決定する。これにより作業機コントローラ10は、オペレータによるバケット操作レバー42の操作なしに、自動的にバケット振り動作を実現する。
【0080】
第2実施形態では、この「予め決められた自動バケット振り周波数」をアーティキュレート角度に応じて決定する制御について説明する。
図10は、第2実施形態の作業機コントローラ10の機能構成を示すブロック図である。第2実施形態の作業機コントローラ10は、自動バケット振り周波数決定部152と、バケットシリンダ指令流量決定部153と、屈曲角度読取り部53と、EPC電流決定部54とを備えている。
【0081】
図10に示される自動バケット振り入力部142は、たとえばスイッチまたはタッチパネルなどで構成される。オペレータは、自動バケット振り入力部142を操作することにより、自動バケット振り動作を実行する操作を入力する。
【0082】
屈曲角度読取り部53は、第1実施形態と同様に、フレーム角度センサ47からアーティキュレート角度の検出結果を示す信号の入力を受ける。屈曲角度読取り部53は、アーティキュレート角度の検出結果を、自動バケット振り周波数決定部152に出力する。
【0083】
自動バケット振り周波数決定部152は、自動バケット振り入力部142から、自動バケット振り動作を実行する操作の入力を受けると、アーティキュレート角度の検出結果に基づいて、自動バケット振り動作をするときのバケット31の振動の周波数を決定する。具体的に、自動バケット振り周波数決定部152は、アーティキュレート角度の大きさに応じて、バケット31の動きの制限値を変更する。より詳細には、自動バケット振り周波数決定部152は、アーティキュレート角度が大きいほど、バケット31が単位時間あたりに振動する回数を小さくする。
【0084】
たとえば、アーティキュレート角度と、そのアーティキュレート角度に応じた自動バケット振り周波数の値との複数の組み合わせを、テーブルとして作業機コントローラ10に予め記憶させておく。そのテーブルに基づいて、自動バケット振り周波数決定部152は、屈曲角度読取り部53で読み取られたアーティキュレート角度に応じた自動バケット振り周波数を決定する。アーティキュレート角度がテーブルで定義している値と異なる場合には、線形補間することにより、自動バケット振り周波数の具体的な数値を決定する。
【0085】
バケットシリンダ指令流量決定部153は、アーティキュレート角度の大きさに応じた、バケットシリンダ35へ供給される作動油の指令流量を決定し、EPC電流決定部54に出力する。EPC電流決定部54は、バケットシリンダ35へ供給される作動油の指令流量に応じた制御信号(EPC電流)を決定し、バケット用の電磁比例制御弁24,25にEPC電流を出力する。
【0086】
[第3実施形態]
第1実施形態では、アーティキュレート角度が大きいときに早いバケット振り動作を実質的にできなくする制御の一例として、バケットシリンダ35へ供給される作動油の流量の変化率を制限する例を説明した。第3実施形態では、別の形態として、バケットシリンダ35へ供給される作動油の最大流量を制限する例について説明する。
【0087】
図11は、第3実施形態における、アーティキュレート角度に対する、バケットシリンダ35へ供給される作動油の許容最大流量を示す図である。
図11に示される、アーティキュレート角度が0度、20度および40度のときの、バケットシリンダ35へ供給される作動油の許容最大流量のテーブルを、作業機コントローラ10に予め記憶させておく。アーティキュレート角度が大きいほど、バケットシリンダ35へ供給される作動油の許容最大流量を小さくする。アーティキュレート角度が0度の直進状態のとき、作動油の許容最大流量を相対的に大きい「大」の値とする。アーティキュレート角度が中間の20度のとき、作動油の許容最大流量を中間の「中」の値とする。アーティキュレート角度が最大の40度のとき、作動油の許容最大流量を相対的に小さい「小」の値とする。
【0088】
実際には、0度、20度および40度のアーティキュレート角度に対する、作動油の許容最大流量の具体的な数値を、作業機コントローラ10に予め記憶させておく。アーティキュレート角度が0度超20度未満および20度超40度未満の場合は、線形補間することにより、作動油の許容最大流量の具体的な数値を決定する。
【0089】
図12は、第3実施形態における、バケット振り動作中にバケットシリンダ35へ供給される作動油の流量を示す図である。第1実施形態で説明した
図8と同様に、
図11の横軸は時間を示し、
図11の縦軸はバケットシリンダ35へ供給される作動油の流量を示す。
図11中の「0%」とはバケットシリンダ35への作動油の供給が停止している状態を示す。
図11の縦軸のプラス方向が、バケット31をチルト方向に移動させる作動油の流量を示す。
図11の縦軸のマイナス方向が、バケット31をダンプ方向に移動させる作動油の流量を示す。
【0090】
図11中の破線は、オペレータによるバケット操作レバー42の操作で決定される作動油の目標流量を示す。
図11中の実線は、作動油の流量を制限した後の作動油の指令流量を示す。
図11に示される指令流量に基づく制御信号が、EPC電流決定部54から、電磁比例制御弁24,25に出力される。
【0091】
オペレータは、中立位置にあるバケット操作レバー42のチルト方向への操作を時刻T1で開始する。オペレータは、時刻T2でチルト方向への最大の操作量に到達すると、直ちにチルト方向への操作量を減少させる。時刻T3でチルト方向への操作量がゼロになりバケット操作レバー42が中立状態になると、オペレータはそのままダンプ方向への操作を開始する。オペレータは、時刻T4でダンプ方向への最大の操作量に到達すると、直ちにダンプ方向への操作量を減少させる。
【0092】
第3実施形態では、バケットシリンダ35へ供給される作動油の許容最大流量が制限されている。時刻T11で、バケット操作レバー42の入力により決定される作動油の目標流量が、チルト方向への許容最大流量まで増加する。時刻T11以降、目標流量が許容最大流量よりも大きくなるが、その場合でも指令流量は許容最大流量に制限される。時刻T12で目標流量が許容最大流量まで減少するので、時刻T12以降、指令流量は目標流量と等しくされる。時刻T13で、目標流量がダンプ方向への許容最大流量まで増加する。時刻T13から時刻T14までの間は目標流量が許容最大流量よりも大きくなるが、その場合でも指令流量は許容最大流量に制限される。
【0093】
このように指令流量を制御することで、
図11に示される指令流量の振幅Aは、オペレータによるバケット操作レバー42の操作内容に基づいて計算される目標流量の振幅よりも小さくなっている。
【0094】
アーティキュレート角度が大きいときに、作動油の許容最大流量を制限してバケット31を振動させる動作の振幅に制限を設けることで、バケット31の最大速度を小さくできる。これにより、早い速度でのバケット振り動作を制限することができる。
【0095】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、2A フロントフレーム、2B リアフレーム、3 作業機、5 キャブ、7 走行装置、7A,7B 走行輪、10 作業機コントローラ、11 エンジン、21 油圧ポンプ、22 バケット操作弁、23 ブーム操作弁、24,25,26,27 電磁比例制御弁、31 バケット、32 ブーム、33 ベルクランク、34 連結リンク、35 バケットシリンダ、36 ブームシリンダ、41 ブーム操作レバー、42 バケット操作レバー、44 ブーム角度センサ、45 バケット角度センサ、46 ブームボトム圧センサ、47 フレーム角度センサ、51 バケットシリンダ目標流量計算部、52 バケット振り周波数制限部、53 屈曲角度読取り部、54 EPC電流決定部、142 自動バケット振り入力部、152 自動バケット振り周波数決定部、153 バケットシリンダ指令流量決定部。