(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062836
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】モータ装置、ワイパー装置、及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172965
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】大澤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】望田 淳史
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505EE55
5H505FF02
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ25
5H505JJ28
5H505KK06
5H505LL10
5H505LL41
5H505MM10
(57)【要約】
【課題】突発的な回転数の低下による動作停止を低減する。
【解決手段】モータ装置は、回転駆動するモータと、前記モータの駆動出力を示すデューティ比を、デューティ比上限値を超えないように制御し、前記デューティ比に応じた駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記駆動信号に基づいて、前記モータを回転駆動させる出力信号を出力するインバータと、前記モータの回転数を検出する回転数検出部と、前記モータが加速中か否かを検出する加速検出部と、前記モータの回転が加速中である場合に、前記デューティ比上限値を、予め設定されている第1上限値より高い第2上限値に変更する上限値設定部とを備えるモータ装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動するモータと、
前記モータの駆動出力を示すデューティ比を、デューティ比上限値を超えないように制御し、前記デューティ比に応じた駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
前記駆動信号に基づいて、前記モータを回転駆動させる出力信号を出力するインバータと、
前記モータの回転数を検出する回転数検出部と、
前記モータが加速中か否かを検出する加速検出部と、
前記モータの回転が加速中である場合に、前記デューティ比上限値を、予め設定されている第1上限値より高い第2上限値に変更する上限値設定部と
を備えるモータ装置。
【請求項2】
前記上限値設定部は、前記モータの回転数が閾値以下である場合に、前記第1上限値から前記第2上限値に変更する変更処理を無効にする
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記上限値設定部は、前記モータの回転数に応じて、前記第1上限値を複数段階に変更する
請求項1又は請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記上限値設定部は、前記モータの回転数に応じて、前記第2上限値を変更する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記上限値設定部は、前記モータの回転加速度の大きさに応じて、前記第2上限値を変更する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータ装置を備え、
前記モータ装置を用いて、ワイパー部材にウィンド面での払拭動作を行わせる
ワイパー装置。
【請求項7】
駆動信号に基づいて、インバータが出力する出力信号により回転駆動するモータを制御するモータ制御方法であって、
駆動信号生成部が、前記モータの駆動出力を示すデューティ比を、デューティ比上限値を超えないように制御し、前記デューティ比に応じた前記駆動信号を生成する駆動信号生成ステップと、
回転数検出部が、前記モータの回転数を検出する回転数検出ステップと、
加速検出部が、前記モータが加速中か否かを検出する加速検出ステップと、
上限値設定部が、前記モータの回転が加速中である場合に、前記デューティ比上限値を、予め設定されている第1上限値より高い第2上限値に変更する上限値設定ステップと
を含むモータ制御方法。
【請求項8】
前記モータの回転数が閾値以下である場合に、前記上限値設定部が、前記上限値設定ステップを無効にする上限値設定無効ステップをさらに含む
請求項7に記載のモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置、ワイパー装置、及びモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用のワイパー装置などに使用されるモータ装置では、磁石の減磁保護や過電流を防止するために、モータの回転数に応じて、モータの出力デューティを制限する機能を有するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなモータ装置では、例えば、ワイパー装置に使用する際に、モータの動作中に、ワイパーブレードへの強風や落雪などの突発的な負荷がかかり、モータの回転数が低下した場合に、上述した出力デューティの制限機能が働いてモータの動作が停止し、すぐに通常動作に復帰できないことがあった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、突発的な回転数の低下による動作停止を低減することができるモータ装置、ワイパー装置、及びモータ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、回転駆動するモータと、前記モータの駆動出力を示すデューティ比を、デューティ比上限値を超えないように制御し、前記デューティ比に応じた駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記駆動信号に基づいて、前記モータを回転駆動させる出力信号を出力するインバータと、前記モータの回転数を検出する回転数検出部と、前記モータが加速中か否かを検出する加速検出部と、前記モータの回転が加速中である場合に、前記デューティ比上限値を、予め設定されている第1上限値より高い第2上限値に変更する上限値設定部とを備えるモータ装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、駆動信号に基づいて、インバータが出力する出力信号により回転駆動するモータを制御するモータ制御方法であって、駆動信号生成部が、前記モータの駆動出力を示すデューティ比を、デューティ比上限値を超えないように制御し、前記デューティ比に応じた前記駆動信号を生成する駆動信号生成ステップと、回転数検出部が、前記モータの回転数を検出する回転数検出ステップと、加速検出部が、前記モータが加速中か否かを検出する加速検出ステップと、上限値設定部が、前記モータの回転が加速中である場合に、前記デューティ比上限値を、予め設定されている第1上限値より高い第2上限値に変更する上限値設定ステップとを含むモータ制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、突発的な回転数の低下による動作停止を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態によるモータ装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態によるモータ装置のデューティリミット値の切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態によるモータ装置のデューティリミット値の切り替え動作の一例を説明する図である。
【
図4】従来技術のデューティリミット値に関する動作を示す図である。
【
図5】第1の実施形態によるモータ装置のデューティリミット値に関する動作の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態によるモータ装置のデューティリミット値の変更処理の無効化機能がない場合の動作の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態によるモータ装置のデューティリミット値の変更処理の無効化機能がある場合の動作の一例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態によるワイパー装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるモータ装置、ワイパー装置、及びモータ制御方法について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態によるモータ装置100の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、モータ装置100は、モータ2と、回転軸センサ30と、制御部40と、インバータ50とを備える。
本実施形態によるモータ装置100は、例えば、車両のウィンドウガラスを払拭するワイパー装置に利用される。
【0011】
モータ2は、例えば、3相4極形のブラシレスモータである。モータ2は、後述する駆動信号に基づいて、インバータ50が出力する出力信号により回転駆動する。
また、モータ2は、ステータ21と、ロータ22とを備える。
【0012】
ステータ21は、モータ2のケースの内周に固定されている。ステータ21は、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)を備える。ステータ21は、電機子コイル(21u、21v、21w)が巻装されている。例えば、3相の電機子コイル(21u、21v、21w)は、デルタ結線により接続される。
【0013】
デルタ結線において、電機子コイル21uと、電機子コイル21wとが、接続点21aにより接続され、電機子コイル21vと、電機子コイル21wとが、接続点21bにより接続され、電機子コイル21uと、電機子コイル21vとが、接続点21cにより接続されている。
【0014】
ロータ22は、ステータ21の内側に設けられている。ロータ22は、例えば、ロータ軸22aと、ロータ軸22aに取り付けた4極の永久磁石22bとを備える。モータ2のケース内には、複数の軸受(不図示)が設けられており、ロータ軸22aは、複数の軸受により回転可能に支持されている。
【0015】
回転軸センサ30は、ロータ22の回転に応じた信号を検出する。回転軸センサ30は、例えば、3つのホールIC(不図示)を備える。これらの3つのホールICは、ロータ22が回転すると、それぞれ互いに120度位相のずれたパルス信号を制御部40に対して出力する。すなわち、回転軸センサ30は、ロータ22の回転にともない、ロータ軸22aに配置されたセンサマグネット(不図示)の磁極の変化に基づいたパルス信号を発生し、制御部40に出力する。各ホールICは、それぞれ電気角で120°毎ずれた位置を検出する。
【0016】
制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、モータ装置100を統括的に制御する。制御部40は、PWM(Pulse With Modulation:パルス幅変調)制御を行い、目標のロータ22の回転出力(例えば、目標回転数TRPM)に応じたデューティ比を設定し、設定したデューティ比に応じた駆動信号をインバータ50に出力する。また、制御部40は、インバータ50を介して、例えば、矩形波通電によりモータ2の駆動を制御する。
また、制御部40は、位置検出部41と、回転数検出部42と、加速検出部43と、上限値設定部44と、指令生成部45と、駆動信号生成部46とを備える。
【0017】
位置検出部41は、回転軸センサ30から供給されるパルス信号に基づいて、ロータ22の回転位置(θ)を検出する。位置検出部41は、検出したロータ22の回転位置を後述する駆動信号生成部46に出力する。
【0018】
回転数検出部42は、回転軸センサ30から供給されるパルス信号に基づいて、例えば、モータ2(ロータ22)の回転数(RPM)を検出し、検出したモータ2(ロータ22)の回転数を後述する加速検出部43、上限値設定部44及び指令生成部45に出力する。
なお、本明細書において、「回転数」とは、単位時間当たりの回転数を示す「回転速度」のことである。
【0019】
加速検出部43は、モータ2の回転が加速中であるか否かを検出する。加速検出部43は、例えば、回転数検出部42により所定時間毎に検出される回転数が、所定回数連続で増加した場合にモータ2が加速中であることを検出する。加速検出部43は、モータ2が加速中であるか否かの検出結果を、上限値設定部44に出力する。
【0020】
上限値設定部44は、モータ2の駆動出力を示すデューティ比(出力デューティともいう)の上限値であるデューティリミット値(デューティ比上限値)を設定する。デューティリミット値には、予め設定されている通常デューティリミット値(第1上限値)と、モータ2の加速中に使用する補正デューティリミット値(第2上限値)とがあり、上限値設定部44は、通常デューティリミット値(第1上限値)と、補正デューティリミット値(第2上限値)とを切り替えて出力する。
【0021】
通常デューティリミット値は、加速中以外の通常動作時に用いるリミット値である。上限値設定部44は、モータ2の回転数(以下、モータ回転数ということがある)に応じて、通常デューティリミット値を変更して設定する。上限値設定部44は、例えば、回転数が高い程、通常デューティリミット値を高い値に変更し、回転数が低い程、通常デューティリミット値を低い値に変更する。具体的に、上限値設定部44は、後述する
図3に示すように、通常デューティリミット値をモータ回転数に応じて変更する。
【0022】
上限値設定部44は、モータ回転数が第1の閾値より低い場合に、通常デューティリミット値を最小値で一定にし、モータ回転数が第2の閾値より高い場合に、通常デューティリミット値を最大値で一定にする。第2の閾値は、第1の閾値より高い。さらに、上限値設定部44は、モータ回転数が第1の閾値と第2の閾値との間である場合に、通常デューティリミット値をモータ回転数に応じて変更する。
なお、後述する
図3及び
図5において、第1の閾値と後述する回転数閾値(RPMth)とを同じ値としているが、本発明はこれに限られるものではなく、第1の閾値を回転数閾値より小さな値としてもよい。
【0023】
また、上限値設定部44は、モータ2の回転が加速中である場合に、デューティリミット値を、予め設定されている通常デューティリミット値より高い補正デューティリミット値に変更する。上限値設定部44は、例えば、加速検出部43から出力されたモータ2が加速中であるか否かの検出結果に応じて、通常デューティリミット値と、補正デューティリミット値とで切り替えて出力する。上限値設定部44は、例えば、後述する
図3に示すように、モータ2の加速中に、通常デューティリミット値(LMT1)から補正デューティリミット値(LMT2)へ切り替えて出力する。
【0024】
すなわち、上限値設定部44は、モータ2が加速中である場合に、補正デューティリミット値(LMT2)を、デューティリミット値(LMT)として、駆動信号生成部46に出力する。また、上限値設定部44は、モータ2が加速中でない場合(減速中、又は、等速駆動中である場合)に、通常デューティリミット値(LMT1)を、デューティリミット値(LMT)として、駆動信号生成部46に出力する。
【0025】
なお、上限値設定部44は、例えば、下記の式(1)に示すように、通常デューティリミット値に補正量(α)を加算して補正デューティリミット値を設定する。ここで、αは、予め定められた固定値である。
【0026】
補正デューティリミット値=通常デューティリミット値+α ・・・ (1)
【0027】
なお、式(1)により通常デューティリミット値に補正量を生成する場合、通常デューティリミット値が、モータ2の回転数に応じて変更されると、補正デューティリミット値も、モータ2の回転数に応じて変更されることになる。すなわち、上限値設定部44は、モータ2の回転数に応じて、補正デューティリミット値を変更することになる。
【0028】
また、上限値設定部44は、下記の式(2)に示すように、回転数に応じて、補正量を変更するようにしてもよい。
【0029】
補正デューティリミット値=通常デューティリミット値+α×回転数 ・・・ (2)
【0030】
この場合、(α×回転値)が補正値に対応する。なお、この場合、上限値設定部44は、回転数に応じて、補正量を変更するため、結果的に、モータ2の回転数に応じて、補正デューティリミット値を変更することになる。
【0031】
また、上限値設定部44は、モータ2の回転加速度の大きさに応じて、補正デューティリミット値を変更するようにしてもよい。この場合、上限値設定部44は、例えば、回転加速度が大きい程、上述した補正値を大きい値に変更する。
【0032】
また、上限値設定部44は、モータ2の回転数が閾値以下(回転数閾値以下)である場合に、通常デューティリミット値から補正デューティリミット値に変更する変更処理を無効にする。すなわち、上限値設定部44は、モータ2の回転数が低い場合に、加速中であっても補正デューティリミット値を用いずに、通常デューティリミット値を出力する制御を行う。
【0033】
指令生成部45は、モータ2の目標の回転出力(例えば、目標回転数TRPM)に応じた出力指令値(PWM制御の指令値)を生成する。指令生成部45は、例えば、位置検出部41から取得した現在のモータ2の回転数(RPM)と、目標回転数TRPMとに応じて、PWM制御の指令値であるデューティ比を生成し、生成した出力指令値を出力指令値(DT)として、駆動信号生成部46に出力する。
【0034】
駆動信号生成部46は、指令生成部45が出力した出力指令値(DT)に基づいて、ロータ22の回転位置に応じた通電タイミングで、正弦波に基づく通電波形の電圧が3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加されるように、駆動信号を生成する。駆動信号生成部46は、例えば、回転位置(θ)に基づいて、3相の通電タイミング信号を生成し、出力指令値(DT)に基づくPWM制御により、後述するインバータ50のスイッチング素子(51a~51f)を駆動(導通/非導通)させる駆動信号(3相の駆動信号)を生成し、生成した駆動信号(3相の駆動信号)をインバータ50に出力する。
【0035】
また、駆動信号生成部46は、出力指令値(DT)が、上限値設定部44から出力されたデューティリミット値(LMT)より大きいデューティ比である場合に、出力指令値(DT)の代わりに、デューティリミット値(LMT)を用いて、PWM制御により駆動信号(3相の駆動信号)を生成する。このように、駆動信号生成部46は、モータ2の駆動出力を示すデューティ比を、デューティリミット値(LMT)を超えないように制御し、デューティ比に応じた駆動信号を生成する。
【0036】
インバータ50は、駆動信号生成部46が生成した駆動信号に基づいて、モータ2を回転駆動させる出力信号を出力する。すなわち、インバータ50は、駆動信号生成部46が生成した駆動信号に基づいて、スイッチング素子(51a~51f)を駆動させて、通電波形に基づく印加電圧を3相の電機子コイル(21u、21v、21w)に印加する。
なお、インバータ50は、バッテリ3から供給される直流電力により、印加電圧を生成する。
【0037】
インバータ50は、3相ブリッジ接続された6個のスイッチング素子51a~51fと、ダイオード52a~52fとを備える。
スイッチング素子51a~51fは、例えば、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、3相のブリッジ回路を構成している。
【0038】
スイッチング素子51aとスイッチング素子51dとは、バッテリ3の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、U相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51aは、ドレイン端子がバッテリ3の正極端子に、ソース端子がノードN1に、ゲート端子がU相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51dは、ドレイン端子がノードN1に、ソース端子がバッテリ3の負極端子に、ゲート端子がU相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN1は、モータ2の接続点21aに接続されている。
【0039】
スイッチング素子51bとスイッチング素子51eとは、バッテリ3の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、V相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51bは、ドレイン端子がバッテリ3の正極端子に、ソース端子がノードN2に、ゲート端子がV相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51eは、ドレイン端子がノードN2に、ソース端子がバッテリ3の負極端子に、ゲート端子がV相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN2は、モータ2の接続点21bに接続されている。
【0040】
スイッチング素子51cとスイッチング素子51fとは、バッテリ3の正極端子と負極端子との間に、直列に説明されて、W相のブリッジ回路を構成している。スイッチング素子51cは、ドレイン端子がバッテリ3の正極端子に、ソース端子がノードN3に、ゲート端子がW相の上側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、スイッチング素子51fは、ドレイン端子がノードN3に、ソース端子がバッテリ3の負極端子に、ゲート端子がW相の下側の駆動信号の信号線に、それぞれ接続されている。また、ノードN3は、モータ2の接続点21cに接続されている。
【0041】
また、ダイオード52aは、アノード端子がノードN1に、カソード端子がバッテリ3の正極端子に、それぞれ接続されている。また、ダイオード52dは、アノード端子がバッテリ3の負極端子に、カソード端子がノードN1に、それぞれ接続されている。
【0042】
また、ダイオード52bは、アノード端子がノードN2に、カソード端子がバッテリ3の正極端子に、それぞれ接続されている。また、ダイオード52eは、アノード端子がバッテリ3の負極端子に、カソード端子がノードN2に、それぞれ接続されている。
【0043】
また、ダイオード52cは、アノード端子がノードN3に、カソード端子がバッテリ3の正極端子に、それぞれ接続されている。また、ダイオード52fは、アノード端子がバッテリ3の負極端子に、カソード端子がノードN3に、それぞれ接続されている。
【0044】
バッテリ3は、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの直流電源であり、モータ2を駆動する電力を供給する。
【0045】
次に、図面を参照して、本実施形態によるモータ装置100の動作について説明する。
図2は、本実施形態によるモータ装置100のデューティリミット値の切り替え処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、制御部40の上限値設定部44の動作について説明する。
【0046】
図2に示すように、上限値設定部44は、まず、モータ回転数が回転閾値より大きいか否かを判定する(ステップS101)。上限値設定部44は、回転数検出部42が検出したモータ回転数RPMを取得し、モータ回転数RPMが回転閾値より大きいか否か(モータ回転数RPMが回転閾値以下であるか否か)を判定する。上限値設定部44は、モータ回転数RPMが回転閾値より大きい場合(ステップS101:YES)に、処理をステップS102に進める。また、上限値設定部44は、モータ回転数RPMが回転閾値以下である場合(ステップS101:NO)に、処理をステップS104に進める。
【0047】
ステップS102において、上限値設定部44は、モータ2が加速中であるか否かを判定する。上限値設定部44は、例えば、加速検出部43が出力する検出結果により、モータ2が加速中であるか否かを判定する。上限値設定部44は、モータ2が加速中である場合(ステップS102:YES)に、処理をステップS103に進める。また、上限値設定部44は、モータ2が加速中でない場合(ステップS102:NO)に、処理をステップS104に進める。
【0048】
ステップS103において、上限値設定部44は、デューティリミット値に、補正デューティリミット値を選択する。すなわち、上限値設定部44は、補正デューティリミット値をデューティリミット値(LMT)として、駆動信号生成部46に出力する。ステップS103の処理後に、上限値設定部44は、処理をステップS101に戻す。
【0049】
また、ステップS104において、上限値設定部44は、デューティリミット値に、通常デューティリミット値を選択する。すなわち、上限値設定部44は、通常デューティリミット値をデューティリミット値(LMT)として、駆動信号生成部46に出力する。ステップS104の処理後に、上限値設定部44は、処理をステップS101に戻す。
【0050】
次に、
図3を参照して、本実施形態によるモータ装置100のデューティリミット値の切り替え動作について説明する。
図3は、本実施形態によるモータ装置100のデューティリミット値の切り替え動作の一例を説明する図である。
【0051】
図3において、横軸は、回転角を示し、縦軸は、モータ回転数、及び出力デューティを示している。
また、波形W1が、モータ回転数を示し、波形W2は、出力指令値である出力デューティを示している。また、破線LMT1が、通常デューティリミット値を示し、破線LMT2が、補正デューティリミット値を示している。また、破線RPMthは、回転数閾値を示している。
なお、
図3においては、モータ2は目標回転数に沿って駆動しているものとする。つまり、波形W1はモータ回転数であり、目標回転数でもあるとする。
【0052】
図3に示す例では、モータ装置100が、正常に動作する場合の一例を示しており、制御部40は、波形W1に示すように、モータ2を、停止から回転数を上昇させて所定速度で回転させた後に、減速して回転数を低下させて停止する制御を行っている。また、この場合に、制御部40の指令生成部45は、波形W2に示すような、出力指令値(DT)を出力する。
【0053】
図3におけるモータ装置100の動作をより詳細に説明する。まず、ポイントP1からポイントP2の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)以下である。この場合、制御部40の上限値設定部44は、モータ回転数に応じた通常デューティリミット値(LMT1)を生成する。また、上限値設定部44は、通常デューティリミット値(LMT1)を、デューティリミット値(LMT)として出力する。
【0054】
次に、ポイントP2からポイントP3の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)より大きく、且つ、加速中である。この場合、上限値設定部44は、デューティリミット値(LMT)を通常デューティリミット値(LMT1)から補正デューティリミット値(LMT2)に切り替えて出力する。
【0055】
次に、ポイントP3からポイントP4の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)より大きく、且つ、加速中でない。この場合、上限値設定部44は、デューティリミット値(LMT)を補正デューティリミット値(LMT2)から通常デューティリミット値(LMT1)に切り替えて出力する。
【0056】
また、ポイントP4からポイントP5において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)以下であり、且つ、加速中でない。この場合、上限値設定部44は、継続して通常デューティリミット値(LMT1)をデューティリミット値(LMT)として出力する。
【0057】
なお、
図3に示す例では、波形W2の示す出力指令値(DT)が、デューティリミット値(LMT=LMT1又はLMT2)より低いため、デューティリミット値(LMT)による制限がかからずに、駆動信号生成部46は、目標回転数(波形W1)のようにモータ回転数が変化するように、出力指令値(DT)に基づいて、駆動信号(3相の駆動信号)を生成する。
【0058】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施形態によるモータ装置100の突発的な負荷がかかった場合の動作について説明する。
図4は、比較のために、従来技術のデューティリミット値に関する動作を示す図である。すなわち、
図4は、デューティリミット値に、通常デューティリミット値のみを用いた場合の従来技術のモータ装置の動作を示している。
【0059】
図4において、横軸は、回転角を示し、縦軸は、モータ回転数、及び出力デューティを示している。
また、
図4において、波形W10は、目標回転数を示し、波形W11は、モータ回転数を示している。また、波形W21は、出力指令値である出力デューティを示している。また、破線LMT1が、通常デューティリミット値であるデューティリミット値を示している。また、破線RPMthは、回転数閾値を示している。
【0060】
さらに、ポイントP11は、従来技術のモータ装置に突発的な負荷がかかったタイミングを示している。また、ポイントP13は、従来技術のモータ装置への突発的な負荷が解消または軽減されたタイミングを示している。
【0061】
図4に示すように、従来技術のモータ装置では、ポイントP11において突発的な負荷がかかると、波形W10に示す目標回転数に対し、波形W11に示すモータ回転数が低くなる。そして、モータ回転数を目標回転数まで上昇させるために、波形W21に示す出力デューティが上昇する。しかし、従来技術のモータ装置への負荷が大きいと、出力デューティを上げてもモータ回転数が低下し続ける場合がある。このような場合、ポイントP12に示すように、モータ回転数の低下にともない、通常デューティリミット値(LMT1)が低下する。
【0062】
次に、ポイントP13において、モータ装置への負荷が解消または軽減され、一時的に従来技術のモータ装置が加速したとしても、波形W21に示す出力デューティが通常デューティリミット値(LMT1)に達して制限され、モータ回転数を継続して上昇できずに、モータ回転数がさらに低下する。この通常デューティリミット値(LMT1)の低下と、モータ回転数の低下との繰り返しにより、モータ回転数は、波形W10に示す目標回転数に復帰できずに停止する。
【0063】
これに対して、
図5は、本実施形態によるモータ装置100のデューティリミット値に関する動作の一例を示す図である。
図5において、横軸は、回転角を示し、縦軸は、モータ回転数、及び出力デューティを示している。
また、波形W10は、目標回転数を示し、波形W12は、モータ回転数を示している。また、波形W22は、出力指令値である出力デューティを示している。また、破線LMT1が、通常デューティリミット値を示し、破線LMT2が、補正デューティリミット値を示している。さらに、ポイントP23は、モータ装置100に突発的な負荷がかかったタイミングを示している。また、ポイント25は、モータ装置100への突発的な負荷が解消または軽減されたタイミングを示している。
【0064】
図5に示す例では、モータ装置100は、ポイントP23において突発的な負荷がかかると、上述した
図4に示す従来技術と同様に、波形W12に示すモータ回転数が低下するとともに、波形W22に示す出力デューティが上昇する。しかしながら、本実施形態によるモータ装置100では、ポイントP25以降に示すように、上限値設定部44が、モータ2の加速中に、デューティリミット値(LMT)を補正デューティリミット値(LMT2)に切り替えて変更する。そのため、モータ装置100は、デューティリミット値による制限を回避でき、波形W12に示すように、モータ回転数を再び上昇させて、正常動作に復帰させることができる。
【0065】
図5におけるモータ装置100の動作をより詳細に説明する。まず、ポイントP21からポイントP22の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)以下である。この場合、制御部40の上限値設定部44は、モータ回転数に応じた通常デューティリミット値(LMT1)を生成する。また、上限値設定部44は、通常デューティリミット値(LMT1)を、デューティリミット値(LMT)として出力する。
【0066】
次に、ポイントP22からポイントP24の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)より大きく、且つ、加速中である。この場合、上限値設定部44は、デューティリミット値(LMT)を通常デューティリミット値(LMT1)から補正デューティリミット値(LMT2)に切り替えて出力する。
【0067】
ここで、ポイントP23において突発的な負荷が発生したため、モータ回転数が下降する。よって、ポイントP24からポイントP25の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)より大きく、且つ、加速中でない。この場合、上限値設定部44は、デューティリミット値(LMT)を補正デューティリミット値(LMT2)から通常デューティリミット値(LMT1)に切り替えて出力する。
【0068】
次に、ポイント25において、モータ装置100への負荷が解消または軽減され、モータ回転数が上昇する。よって、ポイントP25からポイントP26の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)以下であり、且つ、加速中である。この場合、上限値設定部44は、デューティリミット値(LMT)を通常デューティリミット値(LMT1)から補正デューティリミット値(LMT2)に切り替えて出力する。これにより、出力デューティが上がり、モータ回転数を継続して上昇させることができる。
【0069】
次に、ポイント26からポイント27の直前において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)より大きく、且つ、加速中でない。この場合、上限値設定部44は、デューティリミット値(LMT)を補正デューティリミット値(LMT2)から通常デューティリミット値(LMT1)に切り替えて出力する。
【0070】
次に、ポイントP27からポイントP28において、モータ回転数は回転数閾値(RPMth)以下であり、且つ、加速中でない。この場合、上限値設定部44は、継続して通常デューティリミット値(LMT1)を、デューティリミット値(LMT)として出力する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によるモータ装置100は、回転駆動するモータ2と、駆動信号生成部46と、インバータ50と、回転数検出部42と、加速検出部43と、上限値設定部44とを備える。駆動信号生成部46は、モータの駆動出力を示すデューティ比を、デューティ比上限値を超えないように制御し、デューティ比に応じた駆動信号を生成する。インバータ50は、駆動信号に基づいて、モータ2を回転駆動させる出力信号を出力する。回転数検出部42は、モータ2の回転数を検出する。加速検出部43は、モータ2が加速中か否かを検出する。上限値設定部44は、モータの回転が加速中である場合に、デューティリミット値(デューティ比上限値)を、予め設定されている通常デューティリミット値(第1上限値)より高い補正デューティリミット値(第2上限値)に変更する。
【0072】
これにより、本実施形態によるモータ装置100は、上述した
図5に示す突発的な負荷がかかった場合でも、補正デューティリミット値(第2上限値)によって、デューティリミット値による出力制限を回避することができ、モータ回転数を再び上昇させることができる(
図5の波形W12を参照)。したがって、本実施形態によるモータ装置100は、突発的な回転数の低下による動作停止を低減することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上限値設定部44は、モータ2の回転数が閾値以下(回転数閾値RPMth以下)である場合に、通常デューティリミット値(第1上限値)から補正デューティリミット値(第2上限値)に変更する変更処理を無効にする。
【0074】
これにより、本実施形態によるモータ装置100は、例えば、低回転域でモータ挙動が不安定化した際にモータ回転数の変動を加速中と判定してしまい、デューティリミット値(LMT)が上昇してしまうことでモータ2に過電流が流れることを抑制することができる。ここで、
図6及び
図7を参照して、本実施形態によるモータ装置100の過電流の抑制効果について説明する。
【0075】
図6は、本実施形態によるモータ装置100のデューティリミット値の変更処理の無効化機能がない場合の動作の一例を示す図である。すなわち、
図6は、比較のために、上限値設定部44が、回転数閾値RPMthによるデューティリミット値の変更処理の無効化を行わない場合の一例を示している。
【0076】
図6において、横軸は、時間を示し、縦軸は、モータ回転数、モータ消費電流、及び出力デューティを示している。
また、
図6において、波形W3は、デューティリミット値(LMT)を示し、波形W4は、出力指令値(DT)を示している。また、波形W5は、モータ2の消費電流を示し、波形W6は、モータ回転数を示している。
【0077】
図6の範囲R1において、低回転域でモータ2の挙動が不安定になり(波形W6を参照)、モータ2が一時的に加速した場合、デューティリミット値の変更処理が働き、上限値設定部44が、デューティリミット値(LMT)を補正デューティリミット値に変更する。これにより、指令生成部45は、波形W4に示すように、出力指令値(DT)をさらに上昇させることが可能になるため、波形W5に示すように、過電流が流れる。
【0078】
これに対して、
図7は、本実施形態によるモータ装置100のデューティリミット値の変更処理の無効化機能がある場合の動作の一例を示す図である。すなわち、
図7は、比較のために、上限値設定部44が、回転数閾値RPMthによるデューティリミット値の変更処理の無効化を行う場合の一例を示している。
【0079】
図7において、横軸は、時間を示し、縦軸は、モータ回転数、モータ消費電流、及び出力デューティを示している。
また、
図7において、波形W31は、デューティリミット値(LMT)を示し、波形W41は、出力指令値(DT)を示している。また、波形W51は、モータ2の消費電流を示し、波形W61は、モータ回転数を示している。また、破線RPMthは、回転数閾値を示している。
【0080】
図7の範囲R2において、低回転域でモータ2の挙動が不安定になり(波形W61を参照)、モータ2が一時的に加速した場合であっても、モータ回転数が回転数閾値(RPMth)以下であるため、上限値設定部44は、デューティリミット値に、通常デューティリミット値を選択する。これにより、駆動信号生成部46は、波形W41に示すように、出力指令値(DT)の上昇を制限するため、波形W51に示すように、過電流の発生を抑制することができる。
このように、本実施形態によるモータ装置100は、例えば、低回転域でモータ挙動が不安定化した際に、モータ2に過電流が流れることを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態では、上限値設定部44は、モータ2の回転数に応じて、通常デューティリミット値(第1上限値)を複数段階に変更する。
これにより、本実施形態によるモータ装置100は、モータ2の回転数の状況によって、デューティリミット値を適切に設定することができる。
【0082】
また、本実施形態では、上限値設定部44は、モータ2の回転数に応じて、補正デューティリミット値(第2上限値)を変更する。
これにより、本実施形態によるモータ装置100は、モータ2の回転数の状況によって、デューティリミット値をさらに適切に設定することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上限値設定部44は、モータ2の回転加速度の大きさに応じて、補正デューティリミット値(第2上限値)を変更するようにしてもよい。
これにより、本実施形態によるモータ装置100は、例えば、回転加速度が大きい程、補正デューティリミット値(第2上限値)を大きく変更することで、加速の度合いに応じて、補正デューティリミット値(第2上限値)を適切に設定することができる。
【0084】
また、本実施形態によるモータ制御方法は、駆動信号に基づいて、インバータ50が出力する出力信号により回転駆動するモータ2を制御するモータ制御方法であって、駆動信号生成ステップと、回転数検出ステップと、加速検出ステップと、上限値設定ステップとを含む。駆動信号生成ステップにおいて、駆動信号生成部46が、モータ2の駆動出力を示すデューティ比を、デューティリミット値(デューティ比上限値)を超えないように制御し、デューティ比に応じた駆動信号を生成する。回転数検出ステップにおいて、回転数検出部42が、モータ2の回転数を検出する。加速検出ステップにおいて、加速検出部43が、モータ2が加速中か否かを検出する。上限値設定ステップにおいて、上限値設定部44が、モータ2の回転が加速中である場合に、デューティリミット値(デューティ比上限値)を、予め設定されている通常デューティリミット値(第1上限値)より高い補正デューティリミット値(第2上限値)に変更する。
これにより、本実施形態によるモータ制御方法は、上述したモータ装置100と同様の効果を奏し、突発的な回転数の低下による動作停止を低減することができる。
【0085】
また、本実施形態によるモータ制御方法は、モータ2の回転数が閾値以下である場合に、上限値設定部44が、上限値設定ステップを無効にする上限値設定無効ステップをさらに含む。
これにより、本実施形態によるモータ制御方法は、例えば、低回転域でモータ挙動が不安定化した際にモータ回転数の変動を加速中と判定してしまい、デューティリミット値(LMT)が上昇してしまうことでモータ2に過電流が流れることを抑制することができる。
【0086】
[第2の実施形態]
次に、図面を参照して、第2の実施形態によるワイパー装置200について説明する。
図8は、第2の実施形態によるワイパー装置200の一例を示す構成図である。
【0087】
図8に示すように、ワイパー装置200は、車両1のウィンドウガラス10のウィンド面に対して、払拭動作を行う。ワイパー装置200は、モータ装置100と、リンク機構11と、2本のワイパーアーム12と、各ワイパーアーム12の先端部に装着されたワイパーブレード13とを備える。
【0088】
モータ装置は、上述した第1の実施形態のモータ装置100であり、ここではその詳細な説明を省略する。
ワイパーアーム12は、モータ装置100の回転駆動により、ウィンドウガラス10のウィンド面を動作し、先端部に装着されたワイパーブレード13により払拭動作を行う。
2つのワイパーアーム12は、リンク機構11により連結されている。
【0089】
ワイパーブレード13は、ワイパーアーム12によって、ウィンドウガラス10に押し付けられるようにして設けられている。
ワイパーブレード13は、ワイパーアーム12の先端部に装着されるブレードホルダに保持されるブレードラバー(不図示)を備えている。ワイパーブレード13は、モータ装置100によってワイパーアーム12が揺動されると、ウィンドウガラス10の外表面上の払拭範囲を往復動し、ブレードラバー(不図示)によってウィンドウガラス10を払拭する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によるワイパー装置200は、モータ装置100を用いて、ワイパー部材(ワイパーアーム12及びワイパーブレード13)にウィンド面での払拭動作を行わせる。
これにより、本実施形態によるワイパー装置200は、上述したモータ装置100と同様の効果を奏し、突発的な回転数の低下による動作停止を低減することができる。本実施形態によるワイパー装置200は、例えば、突発的に、ワイパー部材(ワイパーアーム12及びワイパーブレード13)に強風が吹きつけた時、雪が落下してきた時、ウィンドウガラス10に付着した大きな異物(虫、鳥糞など)を払拭しようとした時などにより、負荷が大きくなった場合であっても、強風が止んだ時、雪や異物が除去された時に再加速して、通常の払拭動作に復帰することができる。
【0091】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、モータ2の3相の電機子コイル(21u、21v、21w)は、デルタ結線により接続される例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、スター結線などの他の結線であってもよい。
【0092】
また、上記の実施形態において、上限値設定部44が、通常デューティリミット値に補正量(α)を加算して補正デューティリミット値を設定する例を説明したが、これに限定されるものではなく、通常デューティリミット値に係数値を乗算する等、他の手法により、補正デューティリミット値を設定してもよい。
【0093】
また、上記の実施形態において、モータ装置100が、ワイパー装置200に用いられる例を説明したが、これに限定されるものではなく、モータ装置100は、他の用途に利用されてもよい。
【0094】
なお、上述したモータ装置100が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したモータ装置100が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述したモータ装置100が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0095】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…車両、2…モータ、3…バッテリ、10…ウィンドウガラス、11…リンク機構、12…ワイパーアーム、13…ワイパーブレード、21…ステータ、21u,21v,21w…電機子コイル、22…ロータ、22a…ロータ軸、22b…永久磁石、30…回転軸センサ、40…制御部、41…位置検出部、42…回転数検出部、43…加速検出部、44…上限値設定部、45…指令生成部、46…駆動信号生成部、50…インバータ、51,51a~51f…スイッチング素子、52,52a~52f…ダイオード、100…モータ装置、200…ワイパー装置