(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006284
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電線支持具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/02 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H02G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108811
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮古 尚
(72)【発明者】
【氏名】松村 悟史
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋史
【テーマコード(参考)】
5G367
【Fターム(参考)】
5G367DA01
5G367DB03
5G367DB11
5G367DC01
(57)【要約】
【課題】従来の電線支持具においては、電線を支持した状態を維持することが困難になる場合があるという課題があった。
【解決手段】電線81又は電線81を保持するための線条部材83である対象部材8に係合する係合部30を有し、電柱9に固定される支持具本体3と、対象部材8の表面と係合部30の表面とが接触しないように係合部30の表面と対象部材8との間に配置される介在部材5とを備える、電線支持具1により、電線を支持した状態をより長く維持することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線又は当該電線を保持するための線条部材である対象部材に係合する係合部を有し、電柱に固定される支持具本体と、
前記対象部材の表面と前記係合部の表面とが接触しないように前記係合部の表面と前記対象部材との間に配置される介在部材とを備える、電線支持具。
【請求項2】
前記介在部材は、自己潤滑性を有する樹脂製である、請求項1に記載の電線支持具。
【請求項3】
前記介在部材は、前記支持具本体とは別体に形成されており、前記対象部材に係合した状態で、前記支持具本体に対して変位可能に前記係合部に配置されている、請求項1又は2に記載の電線支持具。
【請求項4】
前記係合部は、両端が開放されている溝形状の支持溝部を含み、
前記支持溝部に対応する前記介在部材は、前記支持溝部に嵌め込み可能に形成された、両端が開放されており略U字状の横断面を有する半筒形状を有し、
当該介在部材の内側に、引き通される前記電線を配置可能である、請求項1から3のいずれかに記載の電線支持具。
【請求項5】
前記係合部は、前記支持具本体を貫通する孔部を含み、
前記孔部に対応する前記介在部材は、前記孔部を貫通可能に形成された、略U字状に湾曲した半筒形状を有し、
当該介在部材の内側に、前記孔部を貫通するように引き回される前記線条部材を配置可能である、請求項1から4のいずれかに記載の電線支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線支持具に関し、特に、電柱に取り付けられて電線を引き留めて又は引き通して支持する電線支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電柱には電線支持具が取り付けられ、この電線支持具により、引き留めた電線又は引き通した電線を支持するようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
このような電線支持具としては、回転自在の碍子のうち支持具本体などの他部材との接触面を釉薬で覆って滑らかにすることで、他部材が磁器碍子と擦れて摩耗するのを防止するようにしたものがある(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-27224号公報
【特許文献2】特開2019-204583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電柱間に架線した低圧線(例えば、屋外用ビニル絶縁電線)は、いわゆる引留グリップやいわゆる巻付バインドと呼ばれる保持部材により、電線支持具に支持される。すなわち、電線支持具による引留め箇所においては引留グリップで電線が支持される。また、電線支持具による引通し箇所においては巻付バインドで電線のうち引通し箇所を通る部位の近傍が支持される。
【0006】
ところで、このように低圧線が電線支持具に対して堅固に固定されず、遊びを有するように保持されていることにより、低圧線が揺れて電線支持具と低圧線との擦れが発生するという問題がある。このような問題は、特に、低圧線の揺れを生じさせやすい強風が多く発生する地域において顕著である。このように低圧線と電線支持具との間で擦れが発生すると、電線が損傷することがある。具体的には、低圧線の被覆が摩耗減肉し、やがて低圧線の導体(金属)が露出する。損傷した電線と電線支持具とが擦れ合うと、電線支持具の一部が削られるなどして、電線支持具が損傷する。このように電線や電線支持具が損傷すると、電線の断線や電線支持具の破損などが発生し、電線を支持した状態を維持することが困難になる場合がある。
【0007】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、電線を支持した状態をより長く維持することが可能な電線支持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第一の発明の電線支持具は、電線又は電線を保持するための線条部材である対象部材に係合する係合部を有し、電柱に固定される支持具本体と、対象部材の表面と係合部の表面とが接触しないように係合部の表面と対象部材との間に配置される介在部材とを備える、電線支持具である。
【0009】
かかる構成により、電線を支持した状態をより長く維持することができる。
【0010】
また、本第二の発明の電線支持具は、第一の発明に対して、介在部材は、自己潤滑性を有する樹脂製である、電線支持具である。
【0011】
かかる構成により、対象部材や支持具本体の損傷を効果的に防止することができ、電線を支持した状態をより長く維持することができる。
【0012】
また、本第三の発明の電線支持具は、第一又は二の発明に対して、介在部材は、支持具本体とは別体に形成されており、対象部材に係合した状態で、支持具本体に対して変位可能に係合部に配置されている、電線支持具である。
【0013】
かかる構成により、支持具本体に対して電線が変位することによる電線の損傷を防止し、電線を支持した状態をより長く維持することができる。
【0014】
また、本第四の発明の電線支持具は、第一から三のいずれかの発明に対して、係合部は、両端が開放されている溝形状の支持溝部を含み、支持溝部に対応する介在部材は、支持溝部に嵌め込み可能に形成された、両端が開放されており略U字状の横断面を有する半筒形状を有し、介在部材の内側に、引き通される電線を配置可能である、電線支持具である。
【0015】
かかる構成により、電線の損傷を防止することができる。
【0016】
また、本第五の発明の電線支持具は、第一から四のいずれかの発明に対して、係合部は、支持具本体を貫通する孔部を含み、孔部に対応する介在部材は、孔部を貫通可能に形成された、略U字状に湾曲した半筒形状を有し、介在部材の内側に、孔部を貫通するように引き回される線条部材を配置可能である、電線支持具である。
【0017】
かかる構成により、線条部材の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による電線支持具によれば、電線を支持した状態をより長く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態の1つに係る電線支持具の分解斜視図
【
図2】同電線支持具を異なる方向から見た分解斜視図
【
図4】同電線支持具を用いて構成される電線の引留め箇所の一例を説明する斜視図
【
図5】同電線支持具を用いて構成される電線の引通し箇所の一例を説明する斜視図
【
図7】同電線支持具を用いて構成される電線の引通し箇所の一例を説明する底面図
【
図8】本実施の形態の一変形例に係る引留用部材を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、電線支持具等の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
なお、以下の説明において、図面において示される座標は、各図同士で共通している。座標のZ方向は、水平面に対して垂直な方向である。X方向は、Z方向に対して垂直な方向であり、通常、電線支持具により引き留められる電線が延びる方向である。Y方向は、Z方向に垂直な方向であって、X方向に垂直な方向である。Y方向は、通常、電線支持具に引き通される電線が延びる方向である。なお、Z方向を上下方向(原点から見てZ軸で正となる方向が上)ということがあり、X方向を前後方向(原点から見てX軸で正となる方向が前)ということがあり、Y方向を左右方向ということがある。以下において、このように各方向を示して各部の形状や位置関係を説明することがあるが、これらはあくまで説明の便宜のために定義したものであって、本発明に係る電線支持具の使用時における向きや姿勢などを限定するものではない。
【0022】
(実施の形態)
【0023】
まず、本実施の形態に係る電線支持具1を構成する各部材について説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態の1つに係る電線支持具1の分解斜視図である。
図2は、同電線支持具1を異なる方向から見た分解斜視図である。
図3は、同電線支持具1の支持具本体3の側面図である。
【0025】
電線支持具1は、支持具本体3と、介在部材5とを備える。支持具本体3は、後述するように、電柱9(
図4などに示す)に取り付けられて用いられる。介在部材5は、支持具本体3に引き通し(係合の一例)たり、支持具本体3により引き留め(係合の一例)たりする電線81と、支持具本体3との間に介在するように配置される部材である。本実施の形態において、介在部材5としては、電線81を引き通す場合に用いられる引通用部材50や、電線81を引き留める際に用いられる引留用部材60が用いられる。介在部材5として支持具本体3と共に用いられる部材は、引通用部材50と引留用部材60とのいずれか一方のみであってもよい。
【0026】
なお、通常、電線支持具1の用途が電線81の引通しであるか引留めであるかに応じて、支持具本体3とともに用いられる介在部材5の別が適宜選択される。すなわち、電柱9において電線81の引通し箇所を設けるためには、支持具本体3と、引通用部材50である介在部材5との組み合わせである電線支持具1が用いられる。他方、電柱9において電線81の引留め箇所を設けるためには、支持具本体3と、引留用部材60である介在部材5との組み合わせである電線支持具1が用いられる。支持具本体3は、いずれの用途においても共通して用いられ、電線支持具1を構成する。なお、必要がある場合などに、電線支持具1として、支持具本体3と共に、引通用部材50及び引留用部材60の両方が用いられるようにしてもよい。
【0027】
図1においては、引通用部材50を用いて引き通される電線81の一部や、引留用部材60を用いて電線81を引き留める際に用いられる引留グリップ(線条部材の一例)83の一部が、二点鎖線により、簡略化された形状で示されている。引留グリップ83は、図示しない両端部近傍部位が電線81に巻付けられて、両端部間の部位が電線支持具1に掛けられるようにして用いられる線条部材である。なお、引通用部材50を用いて引き通される電線81や、引留用部材60を用いて保持される引留グリップ83を、対象部材8と総称する場合がある。なお、対象部材8には、電線81に巻き付けて用いられる巻付バインド(線条部材の一例)85(
図5に示す)が含まれると解釈してもよい。巻付バインド85は、引通用部材50を用いて引き通される電線81に両端部が巻付けられ、かつ、端部間において後述する孔部33を貫通するように配置される線条部材である。
【0028】
支持具本体3は、係合部30と、バンド巻付部31とを有している。支持具本体3は、例えば、絶縁性を有する樹脂製の部材である。支持具本体3の材質は、これに限られない。例えば、硬質陶器であってもよいし、種々の材料が絶縁性を有する樹脂等でコーティングされているものであってもよい。支持具本体3は、左右方向において一定の厚みを有している。支持具本体3は上下方向の寸法よりも前後方向の寸法が若干大きくなるように形成されている。なお、支持具本体3の上下方向の寸法と前後方向の寸法との関係はこれに限られない。
【0029】
係合部30は、電線81又は引留グリップ83に係合する部位である。すなわち、係合部30は、対象部材8に係合する部位である。本実施の形態において、係合部30は、孔部33と、支持溝部35とを有している。
【0030】
孔部33は、支持具本体3を貫通するように形成されている。本実施の形態において、孔部33の開口部である両端部は、支持具本体3の左右の面にある。孔部33の開口部の各端部は、バンド巻付部31の前方にある。孔部33の開口部の各端部は、支持具本体3の略中央に位置している。孔部33は、例えば、支持具本体3を左右方向に貫通する。
図3に示されるように、本実施の形態において、孔部33は、略円形の穴である。なお、孔部33の内面は、支持具本体3の側面にかけて丸みを帯びた曲面である。すなわち、孔部33の内側から外側にかけて、緩やかに湾曲する面が設けられている。孔部33の形状はこれに限られず、例えば長穴形の穴であったり、多角形型の穴であったりしてもよい。また、孔部33の開口部の周縁部が、曲面ではなくてもよい。なお、孔部33の開口部の周縁部のうち、少なくとも前側の部位に、孔部33の内側から外側にかけて緩やかに湾曲する面が設けられていることが好ましい。
【0031】
支持溝部35は、本実施の形態において、支持具本体3の上部に設けられている。支持溝部35は、孔部33の上方にある。支持溝部35は、両端が開放されており、上方に開放する溝形状を有している。
図3に示されるように、支持溝部35の底部は、側方から見て略U字状をなすように形成されている。換言すると、側方から見て、支持溝部35は、ハーフパイプ形状をなすように形成されている。なお、支持溝部35の内面は、支持具本体3の側面にかけて丸みを帯びた曲面である。すなわち、支持溝部35の内側から外側にかけて、緩やかに湾曲する面が設けられている。なお、支持溝部35の開口部の周縁部は、曲面ではなくてもよい。
【0032】
本実施の形態において、支持溝部35には、係合突起37が形成されている。係合突起37は、引通用部材50が支持溝部35に嵌め込まれたまま保持されるように、引通用部材50に係合するように設けられている。
【0033】
本実施の形態において、係合突起37は、支持溝部35の内面のうち、前後の上端部近傍部位に設けられている。係合突起37は、左右方向において、略中央に設けられている。係合突起37は、支持溝部35の互いに対向する前後2つの垂直面から、前後方向において突出するように形成されている。なお、係合突起37の位置、形状、数等は、これに限られない。
【0034】
バンド巻付部31は、支持具本体3において後方寄りの位置に形成されている。バンド巻付部31には、後述のように電柱9に支持具本体3を取り付ける際に、バンド7が通される貫通孔である。バンド巻付部31は、例えば、支持具本体3を左右方向に貫通する。
【0035】
図1及び
図2に戻って、引通用部材50は、支持溝部35に嵌め込み可能な形状を有している。すなわち、引通用部材50は、支持溝部35に対応する介在部材5であるといえる。引通用部材50は、左右方向において第一端部51と第二端部52との2つの端部を有するようにして、支持具本体3に対して配置される。引通用部材50の内側に、引き通される電線81が配置可能である。引通用部材50は、電線81の表面と支持溝部35の表面とが接触しないように、支持溝部35の表面と電線81との間に配置される。
【0036】
本実施の形態において、引通用部材50は、例えばポリアセタール樹脂など、自己潤滑性を有する樹脂製である。引通用部材50は、自己潤滑性を有する樹脂製であるので、支持具本体3との摩擦力が小さくなっている。なお、引通用部材50の材質はこれに限られず、他の素材であってもよい。
【0037】
本実施の形態において、引通用部材50は、中央部から第一端部51及び第二端部52に近づくにつれて幅が大きくなるような溝形状の内側の支持面53を有している。また、支持面53は、中央部から第一端部51及び第二端部52に近づくにつれて高さが大きくなるような溝形状である。支持面53は、電線81に接触することで当該電線81を支持する面であるといえる。支持面53は、ハーフパイプ形状を有している。支持面53は、なめらかな曲面を有している。本実施の形態において、引通用部材50は、全体として略均一な厚みを有するように形成されている。すなわち、引通用部材50の外表面は、支持面53と同様に、ハーフパイプ形状を有している。換言すると、引通用部材50は、支持溝部35に嵌め込み可能であって、略U字状の横断面を有し両端部51,52が開放されている半筒形状を有している。
【0038】
本実施の形態において、引通用部材50のうち、引通用部材50は、凹部54と、突起係合部55とを有している。
【0039】
凹部54は、第一端部51と第二端部52とのそれぞれに設けられている。各凹部54は、左右方向において内側に窪むように形成されている。各凹部54は、左右方向において内側に窪む切り欠き部であるといってもよい。また、各凹部54は、横断面において、一部が欠けるように形成された凹部形状であるといってもよい。なお、凹部54の一方は、第一端部51下部の後寄りの位置にあり、凹部54の他方は、第二端部52下部の前寄りの位置にあるが、これに限られない。凹部54は、第一端部51と第二端部52とのいずれか一方にのみ設けられていてもよい。
【0040】
突起係合部55は、引通用部材50の上端縁から下方に窪むように形成された凹部である。突起係合部55は、引通用部材50の前側の壁部及び後側の壁部のそれぞれの、左右中央部に形成されている。換言すると、突起係合部55は、係合突起37に対応する位置に形成されている。突起係合部55は、係合突起37の左右方向の寸法よりも大きな幅寸法を有する凹部である。これにより、後述のように突起係合部55に係合突起37が係合している状態のままで、引通用部材50が支持具本体3に対して左右方向に若干量だけ変位可能となっている。
【0041】
引留用部材60は、孔部33を通るように形成された、全体として湾曲した形状を有している。すなわち、引留用部材60は、支持具本体3の左右両側に第一端部61と第二端部62とがそれぞれ位置するようにして、孔部33を貫通するように配置されて用いられる。引留用部材60は、孔部33に対応する介在部材5であるといえる。本実施の形態においては、引留用部材60は、孔部33を貫通可能に形成された、略U字状に湾曲した形状を有している。
【0042】
本実施の形態において、引留用部材60は、例えばポリアセタール樹脂など、自己潤滑性を有する樹脂製である。引留用部材60は、自己潤滑性を有する樹脂製であるので、支持具本体3との摩擦力が小さくなっている。なお、引留用部材60の材質はこれに限られず、他の素材であってもよい。
【0043】
本実施の形態において、引留用部材60は、半筒形状を有している。引留用部材60は、孔部33の表面に沿って湾曲する壁部を有している。壁部の内側に設けられている支持面63は、孔部33を貫通するように引き回される引留グリップ83を支持することができるようになっている。すなわち、引留用部材60は、引留グリップ83の表面と孔部33の表面とが接触しないように孔部33の表面と引留グリップ83との間に配置される。
【0044】
本実施の形態において、引留用部材60の第一端部61と第二端部62との両方には、引留グリップ83に掛けられるフック部64が形成されている。フック部64は、各端部61,62において、壁部の上端部から外側に延びるような形状を有している。すなわち、フック部64は、支持面63に沿って配置される引留グリップ83の上面に接触しうるように、引留用部材60の支持面63から外側に突出している。第一端部61と第二端部62とのいずれか一方にのみフック部64が形成されていてもよい。このように形成されたフック部64を引留グリップ83に掛かるようにして引留グリップ83を支持面63に配置することにより、引留用部材60が重力により引留グリップ83から下にずれることを防止することができる。
【0045】
このように、各介在部材5は、支持具本体3とは別体に形成されている。各介在部材5は、対象部材8に係合した状態で、支持具本体3に対して変位可能に係合部30に配置される。
【0046】
図4は、同電線支持具1を用いて構成される電線の引留め箇所の一例を説明する斜視図である。
【0047】
図4に示されるように、電線支持具1は、電柱9の側面に固定して用いられる。例えば、電柱9の外周面を囲むように配されるバンド7がバンド巻付部31を通して巻付けられることにより、電線支持具1が電柱9に直接に固定される。なお、電柱9への取付方法や取付姿勢等は、これに限られない。例えば、電柱9に対して固定された金具等に対して電線支持具1が固定されて、間接的に電柱9に固定されて用いられてもよい。また、電線支持具1は、電柱9ではない構造物に対して、直接的に又は間接的に取り付けられて用いられてもよい。
【0048】
引留め箇所においては、引留グリップ83が取り付けられた引留用部材60が、孔部33を貫通するようにして配置される。すなわち、引留用部材60は、引留グリップ83に係合した状態で、支持具本体3に対して変位可能に、孔部33に係合するようにして配置される。この状態において、引留用部材60は、支持具本体3の表面と引留用部材60の表面とが擦れ合いながら変位可能であり、引留グリップ83は支持具本体3に直接触れることがない。したがって、引留グリップ83と支持具本体3とが擦れ合うことによりそれぞれが損傷することが、防止される。引留用部材60は引留用部材60と支持具本体3との摩擦が小さくなるように構成されているので、各部材の損傷を防止し、電線を支持した状態をより長く維持することができる。また、本実施の形態においては、孔部33は内側から外側にかけて緩やかに湾曲する面を有しており、引留用部材60は当該湾曲面に対応するように略U字状に湾曲しているので、引留用部材60と支持具本体3とが接触する面積が大きくなっている。したがって、両者の間で局部的に擦れて摩耗減肉する箇所が生じることを防止することができ、各部材の寿命を長くすることができる。
【0049】
図5は、同電線支持具1を用いて構成される電線81の引通し箇所の一例を説明する斜視図である。
図6は、同電線支持具1の側断面図である。
図7は、同電線支持具1を用いて構成される電線81の引通し箇所の一例を説明する底面図である。
【0050】
引通し箇所においては、引通用部材50が支持溝部35に配置された電線支持具1が用いられる。
図6に示されるように、引通用部材50が支持溝部35に配置された状態において、係合突起37が突起係合部55に係合した状態となるので、引通用部材50が支持具本体3から上方に外れにくくなる。したがって、電線支持具1に電線81を引き通す作業を行う際の作業性を向上させることができる。なお、突起係合部55の左右方向の寸法が比較的大きく確保されているため、このように係合突起37が突起係合部55に係合した状態において、引通用部材50は支持具本体3に対して左右方向に変位可能となっている。
【0051】
電線81は、引通用部材50の支持面53に収容される。電線81には、左右中央部において孔部33を貫通するように配置された巻付バインド85が巻き付けられる。巻付バインド85は、孔部33の内側から、各端部51,52の凹部54の内側を経由して、電線81まで引き回される。したがって、巻付バインド85の位置がずれることが防止される。また、電線81が巻付バインド85によって支持具本体3に向けて押さえるので、電線81が引通用部材50に接触した状態が維持され、電線81が引通用部材50を介して支持具本体3に保持されている状態が維持される。
【0052】
このように電線81が引通用部材50を介して支持具本体3に保持されている状態において、引通用部材50は、支持具本体3の表面と引通用部材50の表面とが擦れ合いながら変位可能であり、電線81は支持具本体3に直接触れることがない。したがって、電線81と支持具本体3とが擦れ合うことによりそれぞれが損傷することが、防止される。引通用部材50は引通用部材50と支持具本体3との摩擦が小さくなるように構成されているので、各部材の損傷を防止し、電線を支持した状態をより長く維持することができる。また、本実施の形態においては、
図6に示されるように、支持溝部35の表面と、引通用部材50の外側の表面とは、緩やかに湾曲する面を有しており、互いに対応する形状を有している。引通用部材50と支持具本体3とが接触する面積が大きいので、両者の間で局部的に擦れて摩耗減肉する箇所が生じることを防止することができ、各部材の寿命を長くすることができる。
【0053】
なお、電線支持具において、介在部材は支持具本体に対して着脱可能である。介在部材と支持具本体とのうち一方に摩耗等が生じた場合は、当該部材のみを交換することにより、再び電線支持具として使用することが可能である。したがって、電線支持具は、寿命を迎えた部材を交換することにより、より長寿命化を図ることができる。本実施の形態においては、例えば、樹脂製である介在部材に摩耗等が生じた場合に介在部材のみを交換することにより、低コストで長期にわたって電線支持具を使用することができる。
【0054】
(変形例の説明)
【0055】
なお、例えば、上述の引留用部材60に代えて以下のような変形例に係る引留用部材260を用いてもよい。以下、引留用部材260について、上述の実施の形態に係る引留用部材60とは異なる点を説明する。
【0056】
図8は、本実施の形態の一変形例に係る引留用部材260を示す斜視図である。
図9は、同引留用部材260を示す斜視図である。
図10は、同引留用部材260を示す平面図である。
図11は、
図10のA-A線断面図である。
【0057】
図8に示されるように、引留用部材260は、全体としてU字状をなすように湾曲した形状を有している。引留用部材260は、支持具本体3の左右両側に第一端部261と第二端部262とがそれぞれ位置するようにして、孔部33を貫通するように配置されて用いられる。引留用部材260は、水平面に対して垂直な面に対して左右対称となる形状を有している。
【0058】
引留用部材260の支持面63は、孔部33の表面に沿って湾曲する壁部263bの内側に設けられている。壁部263bの横断面の形状は、支持面63を内側に有する半筒形状である。なお、半筒形状の部位は、壁部263bの一部のみであってもよい。また、半筒形状であるとは、支持面63に掛けられている引留グリップ83の上下少なくとも一方への変位を規制しうる形状であるといってもよい。本変形例において、引留用部材260は、壁部263bから第一端部261にかけて前方に伸びる平板状の板部267を有する。また、引留用部材260は、壁部263bから第二端部262にかけて前方に伸びる平板状の板部267を有する。
【0059】
本変形例において、第一端部261と第二端部262とのそれぞれには、引留グリップ83に掛けられるフック部264が形成されている。フック部264は、各端部261,262において、板部267の上端部から外側に延び、支持面63及び板部267に沿って配置される引留グリップ83の上面に接触しうるように外側に突出している。このように形成されたフック部264が引留グリップ83に掛かるようにして、引留グリップ83が支持面63に配置される。これにより、引留用部材260が重力により引留グリップ83から下にずれることが防止されている。
【0060】
本変形例において、第一端部261と第二端部262とのそれぞれにおいて、配置される引留グリップ83の外周面に接触するように突出する複数の凸部265が形成されている。例えば、フック部264を含む各端部261,262について、3つの凸部265が形成されている。引留グリップ83は、引留グリップ83の外周面に各凸部265に接触することで各端部261,262が若干弾性変形するような状態で、各端部261,262に配置される。したがって、引留グリップ83が引留用部材260に掛けられている状態が確実に保持される。引留グリップ83を電線支持具1に取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0061】
本変形例においても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、
図10に二点鎖線で示されるように、本変形例においては、引留用部材260に掛けられた引留グリップ83の両端部材が互いに巻付けられた場合に、引留グリップ83から締めつけられる力により、左右の端部261,262が互いに近づくように、2つの板部267が弾性変形し、湾曲する状態となる。すなわち、引留グリップ83に対して、2つの板部267の復元力による力が作用している状態となる。したがって、使用時において、引留グリップ83に対する引留用部材260の位置がよりずれにくくなり、引留用部材260と引留グリップ83との間で擦れが生じることを防止することができる。
【0062】
なお、
図9に示されるように、本変形例においては、支持面63の一部に、突出部269が設けられている。
図11に示されるように、突出部269は、配置される引留グリップ83の外周面(
図11において二点鎖線で示す)に接触するように、支持面63から突出している。突出部269は、支持面63の一部が隆起している部位であるといってもよい。突出部269は、平面視で第一端部261から第二端部262に至るまでの部位の2箇所において、上下に並ぶように設けられている。より具体的には、4つの突出部269は、引留用部材260の湾曲した部位に配置されていると表現することができる。なお、各突出部269は、なだらかに膨らんだ表面形状、すなわち丸みを帯びた表面形状を有しているが、これに限られるものではない。
【0063】
本変形例においては、支持面63の一部に突出部269が設けられている。そのため、引留グリップ83のうち支持面63に掛けられる部位に樹脂等の被覆が設けられている場合において、突出部269により当該被覆にへこみが形成される。換言すると、引留グリップ83の表面に、突出部269が食い込んだ状態となる。引留グリップ83と引留用部材260との接触面積が広くなるので、引留用部材260と引留グリップ83との摩擦抵抗が大きくなる。したがって、引留用部材260と引留グリップ83との両者間で滑りが生じることが防止され、支持具本体3に対して、引留用部材260と引留グリップ83とが共に動きやすくなる。なお、引留用部材260において、突出部269が設けられていなくてもよい。また、上述の実施の形態における引留用部材60において支持面63の一部に突出部269が設けられていてもよい。
【0064】
(その他)
【0065】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【0066】
電線支持具は、上述のような係合部が上下方向又は前後方向に複数並ぶようにして一体に形成された支持具本体を有する、多線用のものであってもよい。この場合、各係合部について、対象部材を係合する態様(例えば、引き通す、引き留める、など)に対応する介在部材が用いられるようにすればよい。
【0067】
支持具本体と介在部材との少なくとも一方の表面が、摩擦係数が低くなるように構成されていてもよい。例えば、各部材の材質そのものの摩擦係数が低くてもよいし、コーティング剤が配されたり表面処理が施されたりしていてもよい。これにより、上述と同様に、各部材の損傷を防止し、電線を支持した状態をより長く維持することができる。
【0068】
なお、電線支持具は、介在部材を併用せずに、支持具本体のみで用いられることがあってもよい。例えば、電線や引留グリップの揺れが生じにくいような環境下においては、介在部材を使用しないようにしてもよい。このような使用態様を許容する場合には、支持溝部の開口部の周縁部や、孔部の周縁部は、電線や引留グリップに接触しうる面積が広くなるような曲面であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかる電線支持具は、電線を支持した状態をより長く維持することができるという効果を有し、電線支持具等として有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 電線支持具、3 支持具本体、5 介在部材、7 バンド、8 対象部材、9 電柱、30 係合部、31 バンド巻付部、33 孔部、35 支持溝部、37 係合突起、50 引通用部材、51、61 第一端部、52、62 第二端部、53、63 支持面、54 凹部、55 突起係合部、60,260 引留用部材、64,264 フック部、81 電線、83 引留グリップ(線条部材の一例)、85 巻付バインド(線条部材の一例)