(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062883
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】死角表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20230427BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20230427BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
B60R1/04 H
G02B5/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173042
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 和幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA07
2H042AA21
2H042CA17
(57)【要約】
【課題】障害物によって遮られる死角領域の像を表示する死角表示装置において、表示側の面の見た目の形状が曲面状となるようにする。
【解決手段】外景光は、死角表示装置1の入射面2aから導光部2eに入った後、表示側反射面3と死角側反射面2cで交互に反射されて複数のプリズム部4の並び方向に沿って入射面2aから遠ざかって進むことを繰り返しながら、徐々に当該外景光の一部をプリズム部4から表示側に透過させる。プリズム部4の表示側の先端部は、平面に沿わない立体的配置で配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物(92)によって生じる死角領域の像を表示する死角表示装置であって、
前記死角領域からの外景光が入射する入射面(2a)と、
前記入射面から入射する前記外景光を通す導光部(2e)と、
前記導光部に対して前記死角領域の反対側にあって前記導光部を進む前記外景光を反射する表示側反射面(3)と
前記導光部に対して前記死角領域の側にあって前記表示側反射面と対向し、前記導光部を進む前記外景光を反射する死角側反射面(2c)と、
前記導光部に対して前記死角領域の反対側にあって前記死角領域とは反対側の表示側に突出すると共に前記導光部を進んだ前記外景光を前記表示側に透過させる複数のプリズム部(4)と、を有し、
前記外景光は、前記入射面から前記導光部に入った後、前記表示側反射面と前記死角側反射面で交互に反射されて前記複数のプリズム部の並び方向に沿って前記入射面から遠ざかって進むことを繰り返しながら、徐々に当該外景光の一部を前記複数のプリズム部から前記表示側に透過させ、
前記複数のプリズム部の前記表示側の先端部は、平面に沿わない立体的配置で配置されている、死角表示装置。
【請求項2】
前記表示側反射面は、分離して前記複数のプリズム部の間に配置され、
前記複数のプリズム部の各々は、前記表示側反射面のうち当該プリズム部に隣り合う部分よりも前記表示側に突出しており、
前記表示側反射面は、平面に沿わない立体的配置で配置されている、請求項1に記載の死角表示装置。
【請求項3】
前記複数のプリズム部と前記表示側反射面は、全体として複数の表示側段(21~27)を有する階段状に形成されており、
前記複数の表示側段は、或る表示側段(21、22、23)と、前記或る表示側段に対して前記入射面から遠い側に隣り合うと共に前記或る表示側段よりも前記表示側に突出している次の表示側段(22、23、24)とを有し、
前記或る表示側段と前記次の表示側段とを繋ぐ斜面(21W、22W、23W)は、前記複数のプリズム部のうち前記或る表示側段において最も前記次の表示側段に近いプリズム部を前記表示側に透過する前記外景光が当該斜面を逸れるような傾きで配置されている、請求項2に記載の死角表示装置。
【請求項4】
前記或る表示側段と前記次の表示側段とを繋ぐ前記斜面は、前記複数のプリズム部のうち前記或る表示側段におけるプリズム部の前記入射面側の面と平行である、請求項3に記載の死角表示装置。
【請求項5】
前記複数のプリズム部と前記表示側反射面は、全体として複数の表示側段(21~27)を有する階段状に形成されており、
前記複数の表示側段は、或る表示側段(21、22、23)と、前記或る表示側段に対して前記入射面から遠い側に隣り合うと共に前記或る表示側段よりも前記表示側に突出している次の表示側段(22、23、24)とを有し、
前記或る表示側段と前記次の表示側段とを繋ぐ斜面(21W、22W、23W)は、前記外景光を透過し、
前記複数のプリズム部のうち前記或る表示側段におけるプリズム部を前記外景光が前記表示側に透過した後に前記外景光が前記斜面に入射するときの前記外景光の前記斜面に対する入射角が、前記外景光の前記入射面に対する入射角(θ1+Ψ)と同じになるよう、前記斜面が傾斜している、請求項2に記載の死角表示装置。
【請求項6】
前記斜面は、前記入射面に対して平行となる、請求項5に記載の死角表示装置。
【請求項7】
前記複数のプリズム部と前記表示側反射面は、全体として複数の表示側段(21~27)を有する階段状に形成されており、
前記複数の表示側段は、所与の表示側段(25、26、27)と、前記所与の表示側段に対して前記入射面に近い側に隣り合うと共に前記所与の表示側段よりも前記表示側に突出している前の表示側段(24、25、26)とを有し、
前記入射面、前記導光部、前記表示側反射面、前記死角側反射面、前記複数のプリズム部を含み、前記外景光に平行な断面において、前記表示側反射面のうち前記前の表示側段で最も前記所与の表示側段に近い部分の、前記表示側反射面のうち前記所与の表示側段において最も前記前の表示側段に近い部分に対する反突出方向の高さhは、前記前の表示側段と前記所与の表示側段とを繋ぐ斜面(24E、25E、26E)が前記反突出方向に対して成す鋭角である傾斜角度Ψ、前記外景光が前記導光部を通って前記表示側反射面に入射するときの前記外景光が前記反突出方向に対して成す鋭角である導光角Φ、および、前記複数のプリズム部のうち前記前の表示側段において最も前記所与の表示側段に近いプリズム部の前記反突出方向に直交する方向の幅Wseに対して、h≦Wse/{tanΦ×(1-tanΨ×tanΦ)}の関係になる、請求項2に記載の死角表示装置。
【請求項8】
前記死角側反射面は、複数の死角側段(31~34)を有する階段状に形成されることで、平面に沿わない立体的配置で配置されている、請求項2ないし7のいずれか1つに記載の死角表示装置。
【請求項9】
前記複数の死角側段の間を繋ぐ複数の死角側接続面(31E、32E、33E)を備え、
前記複数の死角側接続面は、前記複数の表示側段のうち最も前記入射面に近い表示側段と次に前記入射面に近い表示側段とを繋ぐ斜面と比べて、前記入射面からより遠い位置にある、請求項8に記載の死角表示装置。
【請求項10】
前記複数の表示側段のうち隣接する表示側段である表示側段ペアであって、前記表示側段ペアのうち前記入射面から遠い方の表示側段が他方の表示側段よりも前記表示側に配置される表示側段ペアの数は、前記複数の死角側段のうち隣接する死角側段である死角側段ペアであって、前記死角側段ペアのうち前記入射面から遠い方の死角側段が他方の死角側段よりも前記表示側に配置される死角側段ペアの数と、同じである、請求項8に記載の死角表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、死角表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、障害物によって遮られる死角領域の像を表示する装置として、特許文献1に記載の死角表示装置が知られている。この死角表示装置は、障害物に取り付けられ、互いに対向する半透過平面ミラーおよび平面ミラーを備え、更に半透過平面ミラーと平面ミラーの間に設けられた透光性部材を備え、更に半透過平面ミラーと視認者との間に設けられる複数のプリズムを備える。死角領域からの光は、透光性部材に入射した後で、半透過平面ミラーと平面ミラーとの間で反射を繰り返しつつ透光性部材に沿って進行し、その際、光の一部は半透過平面ミラーおよび複数のプリズムを透過して視認者がいる表示側に向けて進行する。これにより、視認者は、死角領域の像を視認することができる。複数のプリズムの視認者側の頂部は、同じ平面内に収まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、死角表示装置の取り付け先となる障害物の視認者側の表面が曲面で構成されている場合があり得る。そのような場合、特許文献1に示すような死角表示装置の形状では、死角表示装置の表示側の面の見た目の形状と障害物の視認者側の見た目の形状との間に大きなずれが生じ、その結果、美感が損なわれる可能性がある。本発明は上記点に鑑み、表示側の面の見た目の形状が曲面状となるような死角表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
障害物(94)によって生じる死角領域の像を表示する死角表示装置であって、
前記死角領域からの外景光が入射する入射面(2a)と、
前記入射面から入射する前記外景光を通す導光部(2e)と、
前記導光部に対して前記死角領域の反対側にあって前記導光部を進む前記外景光を反射する表示側反射面(3)と
前記導光部に対して前記死角領域の側にあって前記表示側反射面と対向し、前記導光部を進む前記外景光を反射する死角側反射面(2c)と、
前記導光部に対して前記死角領域の反対側にあって前記死角領域とは反対側の表示側に突出すると共に前記導光部を進んだ前記外景光を前記表示側に透過させる複数のプリズム部(4)と、を有し、
前記外景光は、前記入射面から前記導光部に入った後、前記表示側反射面と前記死角側反射面で交互に反射されて前記複数のプリズム部の並び方向に沿って前記入射面から遠ざかって進むことを繰り返しながら、徐々に当該外景光の一部を前記複数のプリズム部から前記表示側に透過させ、
前記複数のプリズム部の前記表示側の先端部は、平面に沿わない立体的配置で配置されている、死角表示装置である。
【0006】
このように、プリズム部の表示側の先端部が平面に沿わない立体的配置で配置されていることで、死角表示装置における表示側の面の見た目の形状が曲面状となる。
【0007】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態における、運転席をアイポイントとするフロントピラー方向の光景を示す図である。
【
図3】
図2と同じ断面における外景光の経路を示す図である。
【
図4】
図2と同じ断面における射出面の拡大図である。
【
図5】
図2と同じ断面における外景光の経路を示す拡大図である。
【
図6】
図2と同じ断面における射出面の斜面およびその周囲の拡大図である。
【
図7】第2実施形態における死角表示装置の断面および外景光の経路を示す図である。
【
図8】第1実施形態と第2実施形態の比較のための図である。
【
図9】第3実施形態に係る死角表示装置の
図2と同じ断面における断面図である。
【
図10】
図9と同じ断面における外景光の経路を示す図である。
【
図11】傾斜面の角度と光線の隙間との関係を説明するための説明図である。
【
図12】傾斜面の角度による光線の隙間抑制を示す図である。
【
図13】第4実施形態に係る死角表示装置の
図9と同じ断面における断面図である。
【
図14】入射面の幅と光線の隙間との関係を説明するための説明図である。
【
図15】入射面の幅と光線の隙間との関係を説明するための説明図である。
【
図16】入射面の幅と光線の隙間との関係を説明するための説明図である。
【
図17】運転席をアイポイントとするフロントピラー方向の光景を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図1~
図6を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態の死角表示装置1は、
図1に示すように、車両の運転席側のフロントピラー92に取り付けられている。フロントピラー92は、車両の運転席側のサイドウインドウ93とウインドシールド94の間に配置され、その底部において車両のインストルメントパネル95に繋がっている。
【0011】
この死角表示装置1は、フロントピラー92によって生じる死角領域の像を表示する。例えば、
図1に示すように、歩行者96の一部が死角領域に入っても、それが死角表示装置1を透き通って見える。
【0012】
フロントピラー92によって生じる死角領域とは、車両の外部のうち、運転席に着座する乗員から見てフロントピラー92の反対側に隠れる領域をいう。フロントピラー92は、車両の剛性を確保する部材である一方、このような死角領域を生じる原因となる障害物にもなる。
【0013】
光学部材である死角表示装置1は、例えば
図2に示すように、入射面2aと、入射面2aとは異なる射出面2bと、射出面2bと対向する平滑な死角側反射面2cを有する。
図2は、車両の天地方向に直交する断面による死角表示装置1の断面図である。以下、単に断面と言えば車両の天地方向に直交する断面であるとする。死角表示装置1の断面形状は、車両の天地方向のどの位置における断面においても同じであってよいし、車両の天地方向の位置が変われば異なってもよい。
【0014】
死角表示装置1は、入射面2aから最も離れて射出面2bと死角側反射面2cを繋ぐ端面2dとを有する。また、死角表示装置1は、これら入射面2a、射出面2b、死角側反射面2c、端面2dに囲まれた透光性の導光部2eを有する。入射面2a、射出面2b、死角側反射面2c、端面2dは、導光部2eの表面に相当する。
【0015】
射出面2bは、導光部2eに対して死角側反射面2cの反対側にあって、複数の表示側反射面3と、複数のプリズム部4とを有している。複数のプリズム部4は、射出面2bに沿って入射面2aから端面2dの方向に並んで配置されている。表示側反射面3は、これら複数のプリズム部4の間に分離して配置されている。分離された表示側反射面3の各々は、平坦かつ互いに平行な平坦部3aである。
図2に示される断面は、入射面2a、射出面2b、死角側反射面2c、端面2d、導光部2eを含んでいる。
【0016】
死角表示装置1には、例えば
図3に示すように、死角領域から入射面2aに外景光L1、L2、L3が入射する。入射した後の外景光L1、L2、L3は、導光部2eの内部で導光されて進む。そして、表示側反射面3と死角側反射面2cで交互に反射されて複数のプリズム部4の並び方向に沿って入射面2aから遠ざかって進むことを繰り返しながら、徐々に当該外景光の一部を複数のプリズム部4から表示側に透過させる。表示側とは、導光部2eを規準として死角側とは反対側をいう。すなわち、表示側とは、観察者である運転者の視域に対向する側である。なお、死角領域からの外景光の一部は、入射面2aから入射して導光部2eを通って端面2dから死角表示装置1の外部に抜ける。なお、外景光L1、L2、L3は、
図2、
図3で示す断面内を、互いに平行に進む。
【0017】
導光部2eは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の樹脂材料やガラスなどの透光性の材料からなる。外景光L1、L2、L3が表示側反射面3および死角側反射面2cで全反射し、内部で導光されるように設計されている。具体的には、導光部2eは、その構成材料の屈折率をn1とし、導光部2eの外部媒質の屈折率をn2とし、外景光L1、L2、L3の表示側反射面3および死角側反射面2cに対する入射角度をΦとして、以下の(1)式を満たす設計となっている。なお、空気層の場合、n2=1である。
【0018】
sinΦ≧n2/n1・・・(1)
これにより、死角表示装置1は、半透過ミラーを有さずとも、入射面2aからの外景光L1、L2、L3の一部が表示側反射面3の各平坦部3aおよび死角側反射面2cで全反射し、射出面2bから外部に射出される構成となっている。
【0019】
具体的には、例えば
図3に示すように、外景光L1、L2、L3は、死角表示装置1の入射面2aから入射角θ1で入射して屈折し、最初に射出面2bに到達する。導光角Φで表示側反射面3の平坦部3aに到達した外景光L2、L3は、外部との界面で全反射し、外部に射出されることなく、導光部2e内を死角側反射面2cの側に進む。導光角Φで死角側反射面2cに到達した外景光L2は、再度、外部との界面である死角側反射面2cで全反射して導光部2e内を射出面2bの側に進む。そしてその一部がいずれかのプリズム部4の透過面4aで屈折して射出角θ2で外部に射出され、残部が平坦部3aにて全反射する。
【0020】
また、例えば
図3に示すように、入射面2aから入射する外景光L2のうち最初にプリズム部4の透過面4aに到達した部分は、屈折して射出角θ2で外部に射出される。平坦部3aおよび死角側反射面2cで繰り返し反射してもプリズム部4に到達しない外景光L3については、最終的に端面2dに到達し、残光として外部に射出される。このように、外景光L1、L2が、表示側反射面3と死角側反射面2cで交互に反射されて複数のプリズム部4の並び方向に沿って入射面2aから遠ざかって進むことを繰り返しながら、徐々に当該外景光の一部を複数のプリズム部4から表示側に透過させる。これにより、射出面2bの側における視域、すなわち射出された外景光をユーザである運転者が視認できる領域が広がる構成となっている。
【0021】
なお、「入射角θ1」とは、射出面2bのうち複数の平坦部3aに対する法線方向(以下「平坦部法線方向」という)と、入射面2aへの外景光L1、L2、L3の入射方向と、のなす角度を指す。「導光角Φ」とは、平坦部3aにおける外景光L1、L2、L3の進行方向と平坦部法線方向とのなす角度、あるいは死角側反射面2cにおける外景光L2、L3の進行方向と死角側反射面2cに対する法線方向とのなす角度を指す。平坦部3aと死角側反射面2cが平行である場合には、平坦部3aおよび死角側反射面2cにおける導光角Φは、反射回数に関わらず同一の値となる。「射出角θ2」とは、射出面2bから射出された外景光L1、L2の進行方向と平坦部法線方向とのなす角度を指し、入射面2aとプリズム部4の透過面4aとが平行である場合には入射角θ1と同一の値となる。なお、平坦部法線方向および入射面2aの法線方向が車両の水平面に平行になるよう、死角表示装置1の姿勢が決められている。しかし、他の例として、平坦部法線方向または入射面2aの法線方向が車両の水平面に対して傾いた方向を向くことは排除されない。
【0022】
なお、外景光L1、L2、L3は、死角領域から到来して入射面2aに入射する外景光の一部を例示しているに過ぎない。死角領域から到来して入射面2aに入射する外景光は、外景光L1、L2、L3に対して入射角θ1および導光角Φがずれているものもある。
各透過面4aから射出された外景光は、その一部または全部が、運転者のアイリプスELに到達する。つまり、外景光は、全体としては、ある幅を持った入射角θ1で入射面2aに入射し、ある幅を持った導光角Φで平坦部3a、死角側反射面2cにおいて全反射して、透過面4aを透過して表示側に射出され、アイリプスEL全体をカバーする範囲に到達する。
【0023】
ここで、導光角Φは、例えば、導光部2eに入射する外景光の最大入射角における導光角が基準とされてもよい。外景光の最大入射角とは、
図3に示すように、アイリプスELの中心から入射面2aの射出面2b側の端点まで伸びる仮想直線と、平坦部法線方向とのなす角度を指す。最大入射角を超える外景光は、ユーザが視認可能な領域からの光線を含むためである。あるいは、外景光のうち少なくとも一部が(1)式を満たす導光角Φを実現しているだけでもよい。その一部とは、アイリプスELに到達する外景光の全体を含んでいてもよいし、アイリプスが定義できない場合はアイリプスと無関係でもよい。これらのことは、後述するΦ、θ1、θ2を含む関係式すべてについて適用される。
【0024】
入射面2aは、外景光が入射する面であり、本実施形態では、射出面2bと交差している。入射面2aは、平坦部法線方向に対して傾斜角度Ψで傾斜している。つまり、入射面2aは、本実施形態では、平坦部3aとのなす角が鋭角になるように傾斜した状態となっている。入射面2aは、平坦部法線方向に対する傾斜角度Ψが、例えば
図3に示すように、入射面2aから入射した後の外景光L1、L2、L3の平坦部3aおよび死角側反射面2cに対する導光角Φよりも小さくなっている。このとき、屈折の条件よりΨ<π/2-Φであれば、外景光L1、L2、L3は、Φが外景光L1、L2、L3の入射角θ1よりも大きくなる方向に屈折し、射出面2bのより広い範囲に導光されることとなる。さらに、導光部2eは、Φが全反射角になるため、通常の透光性樹脂材料の屈折率が1.4以上であることから、n・sinΦ>1よりΦ>45.3となり、Φ>Ψを満たす構造となっている。
【0025】
射出面2bは、複数の平坦部3aから成る表示側反射面3と、複数のプリズム部4とを有する。また、射出面2bは、全体として複数の段を有する階段状に形成されている。これら複数の段の各々を、表示側段という。
【0026】
図2、
図3に示すように、複数の表示側段21~27の各々は、死角側反射面2cから表示側に突出する突出方向の位置が異なっている。本実施形態では、当該突出方向における死角側反射面2cからこれら表示側段までの距離は、表示側段毎に異なっている。ここで、表示側とは、死角側反射面2cを基準として、死角領域のある死角側とは反対側をいう。本実施形態においては、突出方向と平坦部法線方向とは平行になっているが、他の例としては、必ずしも平行でなくてもよい。
【0027】
なお、各表示側段の長手方向(すなわち、段が変化する方向に交差して同じ段が維持される方向)は、車両天地方向、すなわち、入射面2aから端面2dへ向かう方向にも平坦部法線方向にも交差する方向である。したがって、入射面2aから端面2dに向けて、複数の表示側段21~27が並ぶ。
【0028】
具体的には、射出面2bにおいては、表示側段21~27が、入射面2aに近い側から遠い側にこの順に並んでいる。そして、射出面2bは、表示側段21~27のうち隣り合う段の間に、斜面21W、22W、23W、24E、25E、26Eを有している。
【0029】
表示側段21よりも表示側段22の方が表示側に突出し、表示側段22よりも表示側段23の方が表示側に突出し、表示側段23よりも表示側段24の方が表示側に突出する。また、表示側段27よりも表示側段26の方が表示側に突出し、表示側段26よりも表示側段25の方が表示側に突出し、表示側段25よりも表示側段24の方が表示側に突出する。
【0030】
したがって、表示側段21、22間を繋ぐ斜面21W、表示側段22、23間を繋ぐ斜面22W、表示側段23、24間を繋ぐ斜面23Wは、入射面2aと端面2dのうち入射面2a側(すなわちウインドシールド94側)を向く斜面である。また、表示側段24、25間を繋ぐ斜面24E、表示側段25、26間を繋ぐ斜面25E、表示側段26、27間を繋ぐ斜面26Eは、入射面2aと端面2dのうち端面2d側(すなわち、後述するアイリプス側)を向く斜面である。
【0031】
表示側段21~27の各々には、複数の平坦部3aおよび複数のプリズム部4が配置されている。そして、各表示側段において、入射面2a側から端面2d側に、プリズム部4と平坦部3aが1個ずつ交互に配置されている。各表示側段内における複数の平坦部3aの突出方向の位置は同じである。また、表示段毎に、平坦部3aの突出方向の位置が異なる。また、表示段毎に、プリズム部4の突出方向の位置が異なる。
【0032】
これら表示側段21~27と斜面21W、22W、23W、24E、25E、26Eによって、仮想的な擬似曲面2fが形成される。擬似曲面は、複数の透過面4aの頂点の位置に概ね沿った平面でない立体的形状となっている。擬似曲面2fは、死角表示装置1の取り付け先であるフロントピラー92の外形に対して滑らかに沿っている。死角表示装置1がフロントピラー92に取り付けられた状態において、車内の乗員は、死角表示装置1の表示側の外形が、フロントピラー92に滑らかに沿った擬似曲面2fのように見える。したがって、死角表示装置1の視覚上の美感が高まる。
【0033】
表示側段21~27のいずれにおいても、当該表示側段に含まれる平坦部3aの一部または全部で、外景光が全反射する。また、表示側段21~27のいずれにおいても、当該表示側段に含まれるプリズム部4の透過面4aの一部または全部で、外景光が透過して表示側に射出される。
【0034】
なお、本実施形態では、表示側段21の入射面2aと交差する部分にプリズム部4が配置されている。また、射出面2bは、例えば、金型等を用いた公知のプラスチック成形方法により形成される。
【0035】
端面2dは、射出面2bと入射面2aとは反対側において死角側反射面2cとを繋ぐ面であり、例えば、所定の角度で傾斜した傾斜面となっている。端面2dからは、表示側反射面3および死角側反射面2cで繰り返し反射されてプリズム部4に到達しなかった、外景光一部が残光として外部に抜ける。なお、端面2dに図示しない光吸収膜を配置する等の遮光処理を施すことで、残光の射出を防止することが可能になる。これにより、残光の漏れ出しによるゴーストの発生を抑制することができる。
【0036】
各表示側段における複数の平坦部3aは、例えば
図3に示すように、平坦部3aに到達した外景光を全反射により死角側反射面2cの側に反射する反射面として機能する。これにより、導光部2eは、金属材料あるいは誘電体材料によりなる半透過ミラーを有さずとも、内部で外景光を導光可能であると共に、平坦部3aにおいて外景光の吸収による損失が生じない構成となっている。
【0037】
また、
図4に示すように、複数の平坦部3aは、その面に沿って入射面2aから端面2dに向かう方向を導光方向とし、導光方向における幅をWsとして、射出面2bにおける外景光の反射率が所定以上となる幅Wsとされる。具体的には、各表示側段において複数の平坦部3aが外景光を反射し、複数のプリズム部4が外景光を吸収および射出する。したがって、射出面2bの反射率Rwは、平坦部3aの割合で決まる。射出面2bの反射率Rwは、幅Wsの平坦部3aに隣接するプリズム部4の導光方向における幅をWpとして、以下の(2)式で表される。
【0038】
Rw=Ws/(Wp+Ws)・・・(2)
複数の平坦部3aは、Rw≧0.5、すなわち射出面2bにおける外景光の反射が射出以上となる幅WS、つまりWp/Ws≦1を満たす幅とされることが好ましい。この場合、死角表示装置1は、射出面2bにおいて外景光の半分以上を反射させて入射面2aから遠ざかるように導光する。したがって、射出面2bのより広い範囲で外景光を射出することとなり、射出面2bを透過して表示側に射出される外景光の明るさを確保することが可能となる。
【0039】
また、上記(1)式が満たされ、導光角Φが全反射角度である場合には、射出面2bにおける反射率Rwは、上記(2)式に示すように、平坦部3aとプリズム部4の幅の比のみにより定まる。つまり、反射率Rwは外景光の入射面2aへの入射角度や波長に依存しない。したがって、半透過ミラーを用いた従来の光学部材に比べて、プリズム部4を透過して外部に射出される外景光の色調や明るさの変化が抑制された構造となっている。
【0040】
複数のプリズム部4の各々は、射出面2bのうち、平坦部3aに隣接して配置され、平坦部3aに対して表示側に突出する部位である。各プリズム部4は、導光部2eを通った外景光の一部を外部に射出する透過面4aと、透過面4aに対向して透過面4aと交差する対向面4bとを有する。透過面4aは端面2d側の面であり、対向面4bは入射面2a側の面である。同じプリズム部4に属する透過面4aと対向面4bは、当該プリズム部4の突出側の頂点において互いに交差する。複数のプリズム部4の断面の形状は、互いに相似している。複数のプリズム部4の大きさは、すべて同じであってもよいし、異なるものがあってもよい。
【0041】
平坦部3aの突出方向の位置が表示側段21~27毎に異なることにより、複数のプリズム部4の頂点の位置も、表示側段21~27毎に異なっている。その結果、複数のプリズム部4の頂点の位置は、全体として、平面に沿わない立体的な配置となっている。なお、「平面に沿わない」とは、平面的な配置から加工上の不可避な誤差だけずれているような状態は除外する。「平面に沿わない」とは、例えば、ある基準平面Pに対する各プリズム部4の頂点の位置からの最短距離をdとすると、すべてのプリズム部4に亘る最短距離dの総和が最小になるように、当該基準平面Pが定められたとする。そのような場合に、すべてのプリズム部4に亘る最短距離dの平均値が、最長頂点距離Xの3%以上であれば、プリズム部4の頂点は全体として平面に沿わない立体的な配置であるとしてもよい。ここで、最長頂点距離Xは、すべてのプリズム部4のうちで最も離れている2つの頂点の間の距離をいう。
【0042】
また、表示段毎に、平坦部3aの突出方向の位置が異なるので、複数の平坦部3aの突出方向の位置は、全体として、平面に沿わない立体的な配置となっている。平面に沿わないことの意味は、プリズム部4と同様である。
【0043】
透過面4aの各々は、入射面2aと平行となっている。透過面4aが入射面2aと平行である場合には、透過面4aからの外景光L1、L2、L3の射出角θ2が入射角θ1と同じになるため、死角表示装置1は、外景光L1と同じ光線を射出面2bの側にいるユーザに視認させることができる。なお、平行とは、入射面2aと透過面4aとが平行である場合に加えて、導光部2eの加工精度の関係上、不可避の誤差により入射面2aと透過面4aとがおよそ平行となっている場合を含む。以下の本明細書における「平行」についても同様である。
【0044】
複数のプリズム部4の対向面4bは、例えば
図4に示すように、平坦部法線に対して傾斜角度δで傾斜し、透過面4aと交差している。各対向面4bは、不図示の光吸収膜で覆われており、導光部2e内を通る外景光の対向面4bにおける反射や射出面2b側からの外光の侵入が抑制されている。これにより、透過面4aから表示側に射出される外景光に表示側からの外光が重なって見えるゴーストを抑制することができる。また、導光部2eを進む外景光が対向面4bにおいて意図しない反射をしてそれが透過面4aから射出されることに起因するノイズを抑制することができる。なお、光吸収膜は、任意の遮光性の樹脂材料や金属材料などにより構成され、印刷や蒸着などの任意の工程により形成される。
【0045】
対向面4bは、傾斜角度δが各透過面4aから射出される外景光の射出角θ2以上となっている。また、入射面2aと透過面4aが平行な場合には外景光L1の入射角θ1以上となっている。これにより、各透過面4aから射出される外景光は、対向面4bに遮られることなく、外部に射出される。また、各対向面4bは、傾斜角度δが隣り合う平坦部3aにおける導光角Φよりも小さいことが好ましい。これにより、導光部2e内を進む外景光が対向面4bに入射するという干渉が抑制される。よって、導光部2e内を進む外景光が対向面4bにおいて意図しない反射をする可能性が抑制され、ひいては、そのような意図しない反射に起因するノイズが抑制される。
【0046】
なお、複数の平坦部3aの幅Wsおよび複数のプリズム部4の幅Wpがすべて同一である場合、反射した光線にプリズム幅Wp分の隙間ができ、その隙間と後の部分のプリズム部4との関係が周期的変化を持つことで明るさムラ、すなわちモアレを生じる場合がある。このようなモアレを抑制する観点から、WsおよびWpは、分布を有することが好ましい。
【0047】
例えば、死角表示装置1におけるすべての平坦部3aのWsの標準偏差を平均値で除算した値が所定の範囲内であってもよい。当該所定の範囲の下限は0.2でも0.3でも0.5でも1.2でもよい。当該所定の範囲の上限は0.5でも0.8でも1.0でも1.5でも2.0でもよい。なお、すべての平坦部3aのWsは、平均値から平均値の±10%以内に収まっていてもよい。
【0048】
また例えば、死角表示装置1におけるすべてのプリズム部4のWpの標準偏差を平均値で除算した値が所定の範囲内であってもよい。当該所定の範囲の下限は0.2でも0.3でも0.5でも1.2でもよい。当該所定の範囲の上限は0.5でも0.8でも1.0でも1.5でも2.0でもよい。なお、すべてのプリズム部4のWpは、平均値から平均値の±10%以内に収まっていてもよい。
【0049】
このようにWsおよびWpの数値に分布があることにより、平坦部3aで反射する外景光の隙間とその後のプリズム部4との周期的な関係を回避し、モアレの発生を抑制することができる。
【0050】
射出面2bではプリズム部4の透過面4aのみから外景光が射出角θ2で射出されるため、ユーザに到達する外景光は、例えば
図5にハッチングで示すように、プリズム部4の幅Wpと平坦部3aの幅Wsの和を周期とした明暗のパターンを生じることになる。アイリプスELの中心を視点とする外景光のピッチPeは、以下の(3)式で表される。
【0051】
Pe=(Wp+Ws)×cosθ2・・・(3)
隣接する平坦部3aおよびプリズム部4は、表示側に射出される外景光のピッチPeが2mm未満となるように幅Ws、Wpが設計されることが好ましい。これは、明るい場所における人の最小瞳孔径が2mm以上であり、射出される外景光のピッチPeが2mm未満とされることで、ユーザが視認する外景光の光量が平均化され、ユーザの視点移動に伴う明暗の変化が抑制されるためである。
【0052】
なお、複数の平坦部3aおよび死角側反射面2cは、必ずしも完全に平行である必要はなく、ユーザに視認させたい死角領域の距離に応じて、これらの面が平行とならない形態であってもよい。
【0053】
具体的には、複数の平坦部3aおよび死角側反射面2cが平行である場合には、導光角Φが導光部2eにおける位置に関わらず一定となるため、射出される外景光の射出角θ2は一定となる。この状態は、ユーザの視点の位置が異なっても同じ射出角θ2の外景光が当該ユーザの眼に入ることとなるため、無限遠からの光線が人の眼に入る場合と同じ状態である。つまり、ユーザに視認させたい死角領域がユーザから所定以上の距離(例えば数十m~数百mなど)を隔てた位置である場合には、複数の平坦部3aおよび死角側反射面2cは平行であることが好ましい。
【0054】
一方、複数の平坦部3aおよび死角側反射面2cのうち一方の面が他方の面に対してわずかに傾いている場合には、導光角Φが導光部2eにおける位置に応じて変化する。この状態は、射出する外景光の射出角θ2がユーザの視点位置に応じて変化するため、例えば数m~数十mなどといった所定以下の有限距離からの光線が人の眼に入る場合と同じ状態である。つまり、ユーザに視認させたい死角領域がユーザから所定以下の有限距離に位置する場合には、複数の平坦部3aおよび死角側反射面2cは、平行でないことが好ましい。なお、この場合、複数の平坦部3aおよび死角側反射面2cは、入射面2aから遠ざかるほど対向するこれらの2つの面の距離が大きくなる方向、すなわちこれら2つの面が開く方向に配置される必要がある。これは、上記の逆方向、すなわち複数の平坦部3aおよび死角側反射面2cが2つの面が閉じる方向に配置された場合、射出する外景光が互いに離れる方向に射出されることとなり、人の両目で融像できなくなるためである。
【0055】
本実施形態によれば、入射面2aから入射する外景光が最初に到達する射出面2bを、複数の平坦部3aから成る表示側反射面3とプリズム部4とを有する構成とすることで、半透過ミラーを有さずとも、外景光の導光が可能となる。これにより、半透過ミラーを有する従来の光学部材よりも製造工程を簡素化でき、製造コストを低減することができる。また、外景光が平坦部3aおよびこれに対向する死角側反射面2cで全反射させるように死角表示装置1が構成されているため、導光部2eにおける光の吸収損失が抑制される。さらに、射出面2bにおける外景光の反射率Rwが隣接する平坦部3aの幅Wsおよびプリズム部4の幅Wpとの比により定まるため、反射率Rwが外景光の波長や角度に依存しない。そのため、導光部2eにおける光の損失を抑制しつつも、ユーザが射出面2bを通して視認する外景の明るさや色調の変化を抑制することができる。
【0056】
ここで、斜面24E、25E、26Eについて説明する。斜面24E、25E、26Eの各々は、入射面2a側に隣り合う表示側段(すなわち、或る段)における複数の透過面4aのうち一部または全部に平行となる。なお、当該斜面に対して入射面2a側に隣り合う表示側段24、25、26における複数の透過面4aのうち、当該斜面に属する透過面4aもあるが、その透過面4aは当該斜面と当然に平行である。そして、当該表示側段におけるそれ以外の透過面4aも、一部または全部が、当該斜面に平行になる。
【0057】
斜面24E、25E、26Eがこのような角度になっていることで、導光部2e内を進んで斜面24E、25E、26Eに到達した外景光(例えば外景光L2)は、斜面24E、25E、26Eを透過して表示側に射出される。
【0058】
そして、斜面24E、25E、26Eから射出された外景光は、当該斜面に対して入射面2a側に隣り合う表示側段24、25、26における複数の透過面4aの一部または全部から表示側に射出される光に対して平行になる。すなわち、斜面24E、25E、26Eから射出された外景光は、死角表示装置1の外部から入射面2aに入射する外景光と同じ角度で表示側に射出される。
【0059】
したがって、斜面24E、25E、26Eから射出された外景光により、視認者である運転者に外景と同じ光景を視認させることができる。
【0060】
また、斜面24E、25E、26Eの各々について、当該斜面に対して入射面2a側に隣り合う表示側段を前段とし、当該斜面に対して端面2d側に隣り合う表示側段を次段とする。この次段は所与の段に対応する。
【0061】
この場合、死角表示装置1の
図6に示す断面において、前段のうち最も後段に近い平坦部3aの、次段のうち最も前段に近い平坦部3aに対する反突出方向の高さhは、以下の(4)式で表される。反突出方向は、突出方向の反対方向である。
【0062】
h≦Wse/{tanΦ×(1-tanΨ×tanΦ)}…(4)
ここで、Ψは、前段と次段とを繋ぐ当該斜面が反突出方向に対して成す鋭角である。また、Φは、外景光が導光部2eを通って射出面2bに入射するときの外景光が反突出方向に対して成す鋭角すなわち導光角Φである。また、Wseは、前段において最も次段に近いプリズム部4の反突出方向に直交する方向の幅である。当該プリズム部4の透過面4aは、当該斜面の一部でもある。
【0063】
このようになっていることで、前段における最も当該斜面に近い平坦部3aのうち、最も当該斜面に近い位置で反射された外景光L4は、当該斜面に当たることなく、導光部2e内を死角側反射面2cに向けて進むことができる。したがって、外景光L4が当該斜面から死角表示装置1の外部に出てしまい、不要光となってしまうことを防ぐことができる。すなわち、不要光を発生させ難くすることができる。なお、
図6の断面は、
図2の断面と同じものである。
【0064】
次に、斜面21W、22W、23Wについて説明する。斜面21W、22W、23Wの各々は、遮光性の表面になっている。これは、例えば、斜面21W、22W、23Wの各々は、全体が不図示の光吸収膜で覆われることで実現されていてもよいし、他の手法で実現されてもよい。したがって、導光部2eから斜面21W、22W、23Wを透過して外景光が射出されることもないし、死角表示装置1の外部から斜面21W、22W、23Wを通って導光部2e内に不要な光が侵入することもない。
【0065】
そして、斜面21W、22W、23Wの各々について、当該斜面に対して入射面2a側に隣り合う表示側段を前段とし、当該斜面に対して端面2d側に隣り合う表示側段を後段とする。この前段は、或る段に対応する。
【0066】
斜面21W、22W、23Wの各々の傾きは、前段において最も次段側にある透過面4aを透過して表示側に射出される外景光が当該斜面を逸れるような傾きで、配置されている。より具体的には、当該斜面は、前段における複数の対向面4b(すなわち、入射側の面)の一部または全部と平行である。なお、この傾きは、当該透過面4aを透過して表示側に射出される外景光の少なくとも一部が当該斜面を逸れるような傾きである。例えば、この傾きは、当該透過面4aを透過して表示側に射出される外景光のすべてが当該斜面を逸れるような傾きであってもよい。あるいは、この傾きは、当該透過面4aを透過して表示側に射出される外景光の一部のみが当該斜面を逸れるような傾きであってもよい。例えば、この傾きは、当該透過面4aを透過して表示側に射出された後にアイリプスELの中心に到達する外景光の当該斜面を逸れるような傾きであってもよい。また例えば、この傾きは、当該透過面4aを透過して表示側に射出された後にアイリプスELの車両幅方向外側端に到達する外景光の当該斜面を逸れるような傾きであってもよい。
【0067】
各プリズム部4の対向面4bは、運転者のアイリプスの車幅方向中央側端に向かう外景光を遮らない角度に設定されている。すなわち、各プリズム部4の透過面4aから射出された外景光は、端面2d側に隣り合う対向面4bに遮られずに当該対向面4bを逸れる。
【0068】
これと同様、斜面21W、22W、23Wのそれぞれも、前段における複数の対向面4bの一部または全部と平行である。したがって、前段の透過面4aから表示側に射出された外景光が段差によって遮られる可能性が低減される。すなわち、前段の透過面4aから表示側に射出された外景光が段差を逸れて運転者のアイリプスに到達することができる。
【0069】
また、
図2、
図3に示されるように、表示側段21~27のうち最も表示側に突出している表示側段24およびそれよりも入射面2a側にある表示側段21、22、23の各々においては、入射面2a側の端部に、平坦部3aではなくプリズム部4が設けられている。このようになっていることで、当該プリズム部4において遮光性を有する対向面4bの存在により、死角表示装置1の外部から当該表示側段に入射してくる不要光の反射、透過を抑制することができる。
【0070】
また、最も表示側に突出している表示側段24およびそれよりも端面2d側にある表示側段25、26、27の各々においては、端面2d側の端部には、平坦部3aではなくプリズム部4が設けられている。そして、この端面2d側の端部にあるプリズム部4は、同じ表示側段にある他のどのプリズム部4よりも、突出方向に直交する方向の幅Wseが、大きい。このように幅Wseを大きくすることで、上述の(4)式に鑑みれば、当該斜面の反突出方向の高さhを大きくしても、不要光を発生し難くすることができる。
【0071】
また、斜面21W、22W、23Wの各々が、表示側に向かうほど入射面2aから遠ざかり端面2dに近付く傾きになっている。したがって、成形型を用いて導光部2eを一体成形する場合、型抜きが容易になる。
【0072】
以上説明した通り、複数のプリズム部4の表示側の先端部は、平面に沿わない立体的配置で配置されている。このようになっていることで、死角表示装置1における表示側の面の見た目の形状が曲面状となる。例えば、死角表示装置1における表示側の面の見た目の形状が、取り付け対象であるフロントピラー92の表面の形状に沿うように、プリズム部4を形成することができる。
【0073】
(1)また、表示側反射面3は、複数の平坦部3aに分離し、それら複数の平坦部3aが複数のプリズム部4の間に、複数のプリズム部4と互い違いに、配置される。そして、複数のプリズム部の各々は、表示側反射面3のうち当該プリズム部に隣り合う部分(すなわち隣り合う平坦部3a)よりも表示側に突出している。そして、表示側反射面3は、全体として、平面に沿わない立体的配置で配置されている。
【0074】
このように、表示側反射面3が立体的に配置されることで、プリズム部4の突出度合いのみで立体形状を実現する必要性が低下し、プリズム部4の突出度合いのばらつきを抑えることができる。ひいては、あるプリズム部4から表示側に透過した外景光が他のプリズムに遮られてしまう可能性を低減することができる
【0075】
(2)また、複数のプリズム部4と表示側反射面3を有する射出面2bは、全体として複数の表示側段21~27を有して階段状に形成されている。また、複数の表示側段21~27は、前段(或る表示側段に対応する)と、当該前段に対して入射面2aから遠い側に隣り合うと共に当該前段よりも表示側に突出している次段(次の表示側段に対応する)とを有する。そして、前段と次段とを繋ぐ斜面21W、22W、23Wは、複数のプリズム部のうち前段において最も次段側にあるプリズム部を表示側に透過する外景光が当該斜面を逸れるような傾きで配置されている。
【0076】
斜面がこのような傾きとなっていることで、斜面によって外景光の視認性が損なわれてしまう可能性を抑えつつ、死角表示装置の表示側の面の見た目の形状を曲面状とすることができる。
【0077】
(3)また、斜面21W、22W、23Wは、複数のプリズム部4のうち前段における少なくともいずれかのプリズム部の入射面2a側の面と平行である。斜面21W、22W、23Wによって外景光の視認性が損なわれてしまう可能性を、前段におけるプリズム部4の入射面2a側の面と同様に、抑えることができる。
【0078】
(4)また、入射面2a、導光部2e、表示側反射面3、死角側反射面2c、複数のプリズム部4を含み、外景光に平行な断面において、上述の(4)式が成り立つ。このように高さhが抑えられていることで、表示側反射面3のうち前段で最も次段に近い部分で反射した光が死角側反射面2cに当たる前に前段と次段とを繋ぐ斜面24E、25E、26Eに当たってしまう可能性を、低減することができる。ひいては、光利用効率が向上する。
【0079】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について、
図7、
図8を用いて、第1実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態の死角表示装置1においては、斜面21W、22W、23W、端面2dの形態が、第1実施形態と異なる。
【0080】
具体的には、
図7に示すように、斜面21W、22W、23Wの各々は、表示側(すなわち車両の内側)に向かうほど入射面2aに近づき端面2dから遠ざかる傾きになっている。より具体的には、斜面21W、22W、23Wの各々は、入射面2aと平行に形成された透光性の平面となっている。また、端面2dも、入射面2aと平行に形成された透光性の平面となっている。
【0081】
このように、斜面21W、22W、23Wの各々が入射面2aと平行になって透光性を有する。これにより、当該斜面に対して入射面2a側に隣り合う透過面4aから射出された外景光が、当該斜面に反射せずに垂直に近い入射角で入射する。例えば、外景光L1、L2、L3とは異なる角度で入射面2aに入射した外景光L7、L8、L9のうち、外景光L8、L9が、それぞれ、斜面21W、23Wに入射する。この入射角は、斜面21W、22W、23Wの各々が入射面2aと平行なので、θ1+Ψとなる。この入射角は、同じ外景光が入射面2aに入射するときの入射角、すなわち、当該外景光が当該入射面2aに対して成す鋭角であるθ1+Ψと同じになる。そして、当該斜面21W、22W、23Wから再入射した光は、遮光されずに再度導光部2e内を伝搬し、他の透過面4a等から射出されて乗員に到達する。これにより、入射面2aから射出された外景光が斜面21W、22W、23Wで反射して意図しない方向に進んでしまう可能性が低減される。しかも、当該斜面21W、22W、23Wから再入射して更に透過面4aから射出された外景光は、斜面21W、22W、23Wを通らず他の透過面4aから射出された外景光と、平行に進む。その結果、光利用効率が向上する。
【0082】
また、端面2dが入射面2aと平行になって透光性を有することで、導光部2e内を進んで射出面2b、死角側反射面2cで反射した後に端面2dに到達した外景光が、端面2dを透過して、死角表示装置1の外部に射出される。その際、端面2dから射出された外景光は、透過面4aから射出される外景光と同様、入射面2aに入射する外景光と平行に進む。したがって、外景光を視認できる視域がより広がる。
【0083】
なお、本実施形態においては、導光部2eを一体成型してもよいが、積層形成してもよい。すなわち、平坦部法線方向に対して交差する面を板面とする複数の薄板を成形し、それら薄板を死角表示装置1の突出方向に積層することで、導光部2eを形成してもよい。
【0084】
ここで、第1実施形態の死角表示装置1と第2実施形態の死角表示装置1との使い分けについて説明する。第1実施形態の死角表示装置1において透過面4aから射出された外景光のうち、斜面21W、22W、23Wで意図しない方向に反射され易いのが、運転者のアイリプスの車幅方向外側端(例えば右ハンドル車なら右端)に到達する外景光である。
図8に示すように、斜面21W、22W、23Wに対して入射面2a側に隣り合う透過面4aから射出され、当該アイリプスの車幅方向外側端に到達する外景光L6を、突出方向に対する角度θerとする。この角度θerが、対向面4bの突出方向に対する角度εよりも大きい場合、斜面21W、22W、23Wで意図しない方向に反射される可能性が高い。そのような場合は、第2実施形態を用いてもよい。
【0085】
また、本実施形態において、斜面21W、22W、23Wの各々に対して、入射面2a側に隣り合う前段のプリズム部4は、同じ段(すなわち前段)にある他のプリズム部4よりも、突出方向に直交する方向の幅Wseが、大きくなっていてもよい。このように幅Wseを大きくすることで、当該斜面の次段にある複数のプリズム部4の透過面4aに、当該斜面から入射した外景光を届けることができる。その結果、光利用効率が更に向上する。
【0086】
(1)また、前段(或る表示側段に対応する)と次段(次の表示側段に対応する)とを繋ぐ斜面21W、22W、23Wは、外景光を透過する。そして前段におけるプリズム部4を外景光が表示側に透過した後に外景光が斜面21W、22W、23Wに入射するときの外景光の斜面に対する入射角が、外景光の入射面2aに対する入射角θ1+Ψと同じになるよう、斜面21W、22W、23Wが傾斜している。
【0087】
このように、斜面21W、22W、23Wが傾斜していることで、前段におけるプリズム部4を表示側に透過した光が斜面21W、22W、23Wに入射しても遮光されずに再度、導光部2e内を伝搬する。したがって、斜面21W、22W、23Wによる外景光の反射による妨害(すなわち、ケラレ)が抑制され、光利用効率が向上する。
【0088】
(2)また、斜面21W、22W、23Wは、入射面2aに対して平行となる。このように、入射面2aに対して平行となるという形態により、上記(1)のような角度関係時が実現する。
【0089】
また、本実施形態の死角表示装置1において説明していない箇所については、第1実施形態の死角表示装置1と同様である。そして、第1実施形態と同様の構成からは、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の端面2dの形態は、第1実施形態にも適用可能である。
【0090】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について、
図9~
図12を用いて、第1実施形態との違いを中心に説明する。
図10では、死角表示装置1の導光部2e内における導光を分かり易くするため、外景光L11、L12、L13、L14が通る領域に、それぞれ異なるハッチングを施している。
【0091】
本実施形態の死角表示装置1は、例えば
図9、
図10に示すように、入射面2aと死角側反射面2cとの間に、導光部2eの表面である傾斜面6を有し、傾斜面6が死角側反射面2cから死角側に突出している点で、上記第1実施形態と相違する。まず、この相違点について主に説明する。
【0092】
死角側反射面2cと複数の平坦部3aとの平坦部法線方向における距離の最大値を高さT0とし、入射面2aのうち傾斜面6側の端部と複数の平坦部3aとの平坦部法線方向における距離を高さTdとすると、Td>T0の関係が成り立つ。
【0093】
このように傾斜面6が設けられることで、入射面2aの面積が第1実施形態と比べて大きくなっている。そのため、入射面2aから導光部2eに入射する外景光が射出面2bに最初に到達する領域が広く、より多くの光を導光することが可能であり、導光の隙間が低減される構成となっている。導光の隙間は、導光された外景光をユーザが視認できない領域であり、光線の隙間ともいう。導光の隙間が生じると、射出面2bにおいてユーザが導光された外景光の連続性、すなわち表示の連続性を確保することができない。
【0094】
傾斜面6は、意図しない外光の侵入や界面反射に起因するゴースト像の発生抑制のため、不図示の光吸収膜により覆われた状態である。具体的には、入射面2aに入射角θ1よりも小さい角度の光線が入射した場合、当該光線の一部は、傾斜面6に到達する。傾斜面6を覆う光吸収膜は、このように傾斜面6に到達する光を吸収し、死角側反射面2cとは異なる部位で反射した光などの意図しない光が射出面2b側に向かうことを防ぎ、ゴースト像の発生を抑制する役割を果たす。
【0095】
傾斜面6は、例えば
図9、
図10に示すように入射面2aの端部と死角側反射面2cの端部とを直線的に繋ぐ傾斜面となっている。傾斜面6は、平坦部法線方向に対する傾斜角度ξが、入射面2aからの外景光L1の導光において「光線の隙間」が生じない設計となっている。
【0096】
具体的には、例えば
図11に示すように、傾斜面6の傾斜角度ξが外景光L1の導光角Φよりも大きい場合には、光線の隙間が生じうる。
【0097】
具体的には以下の通りである。以下、説明の便宜上、入射面2aのうち死角側反射面2c側の端部を「第一端部2aa」と称し、外景光のうち第一端部2aaの近傍から入射した部分を「入射光L2a」と称する。また、死角側反射面2cのうち入射面2a側の端部を「第二端部2ca」と称し、外景光のうち第二端部2caの近傍で反射した部分を「入射光L2b」と称する。
【0098】
傾斜面6の傾斜角度ξ>導光角Φの場合、入射光L2aは、第二端部2caから離れた位置を通過することとなり、第二端部2ca近傍で反射した入射光L2bとの間に隙間が生じた状態となる。この入射光L2aと入射光L2bとの隙間が「光線の隙間」である。この光線の隙間が生じると、射出面2bを構成する複数のプリズム部4の一部に外景光が到達しないものが生じうる。この場合、導光の隙間が発生し、表示の連続性を確保することができなくなってしまう。
【0099】
そこで、傾斜面6は、傾斜角度ξ<導光角Φを満たす構成とされる。この場合、例えば
図12に示すように、入射光L2aは、第二端部2caの近傍を通過することとなり、入射光L2bとの間に隙間が生じない状態となる。その結果、導光部2eには光線の隙間、ひいては導光の隙間が生じず、死角表示装置1は、射出面2bにおける表示の連続性を確保することができる。
【0100】
また、傾斜面6は、外景光L1の入射角θ1がθ1±Δθ1、入射光L2a、L2bの導光角ΦがΦ±ΔΦのように広がりがある場合には、傾斜角度ξ<Φ-ΔΦを満たすことにより、θ1±Δθ1の範囲内において光線の隙間発生を抑制可能となる。
【0101】
なお、入射面2aは、傾斜角度Ψがπ/2-θ1よりも小さいことが好ましい。外景光L1の屈折面である入射面2aがΨ<π/2-θ1を満たす場合、屈折後の入射光L2a、L2bの導光角Φは、外景光L1の入射角θ1よりも大きくなる。これにより、導光部2eは、入射光L2a、L2bの最初の到達幅が広くなり、導光角がθ1であると仮定した場合よりも、導光幅すなわち死角側反射面2cの高さT0を小さく抑えた構成とされうる。
【0102】
次に、死角表示装置1の傾斜面6以外の構成について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。本実施形態の射出面2bは、第1実施形態と同様、全体として複数の表示側段を有する階段状に形成されている。具体的には、第1実施形態と同様の表示側段21、22、23、24、25、26を有しており、第1実施形態の表示側段27が廃されている。また、本実施形態の射出面2bは、第1実施形態と同様の斜面21W、22W、23W、24E、25Eを有しており、第1実施形態の斜面26Eが廃されている。
【0103】
また、本実施形態の死角側反射面2cは、複数の段を有する階段状に形成されることで、平面に沿わない配置、すなわち立体的配置で配置されている。これら複数の段の各々を、死角側段という。死角側段の各々は、死角側から表示側に突出する突出方向の位置が異なっている。
【0104】
具体的には、死角側反射面2cにおいては、死角側段31、32、33、34が、入射面2aに近い側から遠い側にこの順に並んでいる。死角側段31~34は、互いに平行である。そして、死角側反射面2cは、死角側段31~34のうち隣り合う段の間に、死角側接続面31E、32E、33Eを有している。
【0105】
死角側段31よりも死角側段32の方が表示側に突出し、死角側段32よりも死角側段33の方が表示側に突出し、死角側段33よりも死角側段34の方が表示側に突出する。したがって、死角側接続面31E、32E、33Eは、入射面2a側ではなく端面2d側に向いている。これら死角側段31~34と死角側接続面31E、32E、33Eによって、擬似曲面2gが形成される。擬似曲面2gは、死角側段31~34と死角側接続面31E、32E、33Eによって近似的に実現される曲面である。
【0106】
死角側段31~34の突出方向の位置が互いに異なることにより、死角側反射面2cは全体として、平面に沿わない立体的な配置となっている。なお、「平面に沿わない」とは、平面的な配置から加工上の不可避な誤差だけずれているような状態は除外する。「平面に沿わない」とは、例えば、ある基準平面Pに対する死角側段31~34の各々からの最短距離をdとすると、すべての死角側段に亘る最短距離dの総和が最小になるように、当該基準平面Pが定められたとする。そのような場合に、すべての死角側段に亘る最短距離dの平均値が、死角側反射面2cの最長距離Yの5%以上であれば、死角側反射面2cは全体として平面に沿わない立体的な配置であるとしてもよい。ここで、最長距離Yは、死角側反射面2cのうちで最も離れている2つの点間の距離をいう。
【0107】
これら死角側反射面2c、端面2dの形状により、導光部2eは全体として、死角側が擬似曲面2gに近似される形状で、表示側が擬似曲面2fに近似される形状の、メニスカス形状となる。このような形状により、取り付け対象であるフロントピラー92の内部にある物と死角表示装置1とが干渉する可能性が低減される。すんわち、死角表示装置1を取り付け対象に取り付けやすくなる。
【0108】
死角側段31~34の各々は、第1実施形態の射出面2bと同様、入射面2aから入射して平坦部3aで全反射された外景光を全反射する。そして、死角側接続面31E、32E、33Eは、図示しない光吸収膜で覆う等の遮光処理が施されていることで、遮光性を有してもよい。このようになっていることで、導光部2eを進む外景光が死角側接続面31E、32E、33Eを透過してフロントピラー92で反射してまた導光部2e内に侵入してしまう可能性を低減することができる。すなわち、フロントピラー92等の反射によるゴーストを低減することができる。あるいは、死角側接続面31E、32E、33Eは、遮光性を有しておらず、例えば光を透過させることができるようになっていてもよい。そのような場合であっても、フロントピラー92の内部の部材が、死角側接続面31E、32E、33Eに対向する部分において、遮光性を有していれば、死角側接続面31E、32E、33Eが遮光性を有する場合と同様の効果が得られる。
【0109】
ここで、死角側接続面31E、32E、33Eの位置について説明する。まず、
図9、
図10に示すように、死角側接続面31E、32E、33Eは、斜面21Wと比べて、入射面2aからより遠い位置にある。このようにすることで、死角側接続面31E、32E、33Eを、斜面21W、22W、23Wによってできる段差に起因する導光の隙間を低減するために活用することができる。例えば、
図10に示すように、外景光L11、L12は、それぞれ表示側段21、22で反射され、さらに死角側段31、32で再度反射されるように導光される。このとき、表示側段21、22で反射された際には外景光L11と外景光L12の間には隙間Pxが発生する。この隙間は、死角側段31、32間の段差によって低減(例えば完全にキャンセル)された上で、外景光L11、L12が次の表示側段に導光される。このようなことを実現するために、斜面21W、22W、23Wのうち、少なくとも最も入射面2aに近い斜面21Wは、すべての死角側接続面31E、32E、33Eよりも入射面2aに近い側に配置される。
【0110】
また、
図10に示すように、入射面2aから入射角θ1で入射した外景光のうち、最初に表示側段21の平坦部3aで全反射した外景光L11は、導光部2e内を進んだ後、死角側段31で更に全反射する。そして、死角側段31で更に全反射した外景光L11は、死角側接続面31Eに当たることなく死角側接続面31Eを逸れて、表示側段24に到達する。すなわち、死角側接続面31Eは、外景光L11を遮らない位置に配置される。
【0111】
また、入射面2aから入射角θ1で入射した外景光のうち、最初に表示側段22の平坦部3aで全反射した外景光L12は、導光部2e内を進んだ後、死角側段32で更に全反射して表示側段24に到達する。この際、外景光L12は、死角側接続面31Eに当たることなく死角側段32に当たる。
【0112】
すなわち、死角側接続面31Eは、死角側段31で反射した外景光L1を遮ることなく表示側段24に到達させ、かつ、外景光L12を遮ることなくすべて死角側段32に到達させる位置に、配置されている。つまり、死角側接続面31Eは、外景光L11も外景光L12も通らない非光線通過領域に配置される。
【0113】
もし死角側接続面31Eの位置がそのようになっていない場合、死角側接続面31Eに外景光L11および外景光L12のうち一方または両方が当たってしまう。その結果として、表示側段24の透過面4aから射出される外景光L1と外景光L2の間の導光の隙間が大きくなってしまう。
【0114】
したがって、死角側接続面31Eが外景光L11も外景光L12も通らない非光線通過領域に配置されることで、表示側段24の透過面4aから射出される外景光L1と外景光L2の間の導光の隙間が低減され、運転者が見る像の明暗のムラが抑えられる。死角側接続面32E、33Eについても同様である。
【0115】
また、
図9、
図10に示すように、最も端面2dに近い側にある表示側段24においては、平坦部3aが設けられずに複数のプリズム部4が隣接して連続的に配置されている。これは、最も端面2dに近い側にある表示側段24では、仮に外景光を全反射しても端面2dに当たってしまい、当該外景光が不要光となってしまうからである。表示側段24においてプリズム部4を隣接して連続的に配置させることで、それらプリズム部4の透過面4aから表示側に射出される外景光を増やすことで光の利用効率を上げ、端面2dでの不要光を低減することができる。
【0116】
また、隣接する表示側段において、運転者に近い(すなわち、入射面2aから遠い)方の表示側段が他方の表示側段よりも車両内側(すなわち、平坦部法線方向の表示側)に配置されるような表示側段のペアが存在する。そのようなペアを、表示側段ペアという。表示側段ペアは、表示側段21と表示側段22のペア、表示側段22と表示側段23のペア、および、表示側段23と表示側段24のペアの、3ペアある。
【0117】
また、隣接する死角側段において、運転者に近い(すなわち、入射面2aから遠い)方の死角側段が他方の死角側段よりも車両内側(すなわち、平坦部法線方向の表示側)に配置されるような死角側段のペアが存在する。そのようなペアを、死角側段ペアという。死角側段ペアは、死角側段31と死角側段32のペア、死角側段32と死角側段33のペア、および、死角側段33と死角側段34のペアの、3ペアある。
【0118】
このように、表示側段ペアの数と、死角側段ペアの数は、等しくなっている。表示側段ペアの数が死角側段ペアの数に比べて多いと、全反射で導光される外景光の間に導光の隙間が増大する。隙間の部分は、運転手からは暗部として視認されるので、外景光の明暗のムラが増大してしまう。一方、表示側段ペアの数が死角側段ペアの数よりも少ないと、隣り合う死角側段間の段差に相当する死角側接続面に入射して不要光となってしまう外景光が増大する。その結果、光の利用効率が低下する。そのため、表示側段ペアの数と、死角側段ペアの数が等しくなっていることで、そうでない場合に比べ、明暗のムラが低減され、光の利用効率が向上する。
【0119】
(1)以上説明した通り、死角側反射面2cは、複数の死角側段31~34を有する階段状に形成されることで、平面に沿わない配置、すなわち立体的配置で配置されている。このようになっていることで、死角表示装置の取り付け対象の内部にある物と死角表示装置とが干渉する可能性が低減される。
【0120】
(2)また、死角表示装置1は、複数の死角側段31~34の間を繋ぐ複数の死角側接続面31E、32E、33Eを有する。そして、、最も入射面2aに近い表示側段21と次に入射面に近い表示側段22とを繋ぐ斜面21Wと比べて、入射面2aからより遠い位置にある。このようにすることで、上述の通り、死角側接続面31E、32E、33Eを、斜面21W、22W、23Wによってできる段差に起因する導光の隙間を低減するために活用することができる。
【0121】
(3)また、表示側段ペアの数は、死角側段ペアの数と、同じである。このようになっていることで、表示側段ペアの数は、死角側段ペアの数が同じでない場合に比べ、明暗のムラが低減され、光の利用効率が向上する。
【0122】
また、本実施形態の死角表示装置1において説明していない箇所については、第1実施形態の死角表示装置1と同様である。そして、本実施形態において第1実施形態と同様の構成からは、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第1実施形態に対する第2実施形態の変更と同様の変更を、本実施形態に適用することも可能である。
【0123】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図13~
図17を用いて、第3実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態の死角表示装置1は、
図13に示すように、第3実施形態の死角表示装置1に対して、傾斜面6が廃され、入射面2aの位置が異なり、更に新たに斜面7が設けられている。また、射出面2bにおいては、斜面23W、表示側段24が廃され、死角側反射面2cにおいては、死角側接続面33E、死角側段34が廃されている。
【0124】
また、表示側段21の平坦部3aから死角側段31までの平坦部法線方向に沿った距離Tは、表示側段22の平坦部3aから死角側段32までの平坦部法線方向に沿った距離と同じである。また、表示側段21の平坦部3aから死角側段31までの平坦部法線方向に沿った距離Tは、表示側段23の平坦部3aから死角側段33までの平坦部法線方向に沿った距離と同じである。
【0125】
斜面7には、図示しない光吸収膜を配置する等の遮光処理を施されていてもよい。これにより、不要な光の入射、出射を抑えることができる。
【0126】
具体的には、本実施形態の入射面2aは、射出面2b、死角側反射面2cに平行かつ射出面2bから離れて配置されている。入射面2aの一端は、死角側反射面2cの入射面2a側端と段差なく接続しており、他端は、斜面7の一端に接続されている。斜面7の入射面2a側とは反対側の端は、射出面2bに接続されている。また、入射面2aは、射出面2bの表示側段21と対向して配置されている。
【0127】
また、入射面2aは、入射面2aの斜面7側端部(すなわち、ウインドシールド94側端部)から端面2dに向けて連続的に隣り合って配列された複数の入射プリズム部41を有している。
【0128】
入射プリズム部41の各々は、死角側に突出し、透光性を有する入射透過面41aと対向側面41bとを備える。入射透過面41aは、当該入射プリズム部41の端面2dから遠い側に配置され、対向側面41bは、当該入射プリズム部41の端面2dに近い側に配置される。
【0129】
入射透過面41aの各々は、各プリズム部4の透過面4aと平行に配置されている。すなわち、平坦部法線と入射透過面41aの成す鋭角である傾斜角度Ψは、平坦部法線と透過面4aの成す鋭角である傾斜角度Ψと同じである。これにより、入射透過面41aに入射した外景光が最終的に透過面4aから射出される場合、入射透過面41aに入射する外景光と、透過面4aから射出される外景光とが、平行になる。
【0130】
対向側面41bの各々には、図示しない光吸収膜を配置する等の遮光処理を施されていてもよい。これにより、対向側面41bを透過した不要な光の入射、出射を抑えることができる。
【0131】
ここで、入射面2aの位置がこのようになっていることの意義について説明する。このために、入射面2aから入射した後で導光部2eを通る外景光L21、L22、L23について、
図13を用いて説明する。
図13では、導光部2e内における導光を分かり易くするため、外景光L21、L22、L23が通る領域に、それぞれ異なるハッチングを施している。
【0132】
外景光L21は、入射面2aから入射した後で1回も平坦部3aで反射しないまま、表示側段21の透過面4aまたは表示側段22の透過面4aを透過して射出される。入射プリズム部41の入射透過面41aの並び方向は、表示側段21の透過面4aの並び方向と平行になっている。したがって、外景光L21は、複数の入射透過面41aのうちどれから入射しても、入射面2aから入射してから射出されるまでの光路長が同じである。なお、「射出されるまで」とは、「射出面2bよりも運転者の側において、平坦部法線方向に直交する1つの面に到達するまで」という意味である。
【0133】
外景光L22は、入射面2aから入射した後に平坦部3aで1回だけ反射し、更に死角側段31または死角側段32で1回だけ反射した後に、表示側段22または表示側段23の透過面4aを透過して射出される外景光である。外景光L22においては、表示側段21の平坦部3aで反射した外景光L22は死角側段31で反射され、表示側段22の平坦部3aで反射した外景光L22は死角側段32で反射される。上述の通り、平坦部法線方向に沿った表示側段21の平坦部3aから死角側段31までの距離は、平坦部法線方向に沿った表示側段22の平坦部3aから死角側段32までの距離と同じである。したがって、外景光L22は、複数の入射透過面41aのうちどれから入射しても、入射面2aから入射してから射出されるまでの光路長が同じである。
【0134】
外景光L23は、入射面2aから入射した後に平坦部3aで合計2回反射し、死角側段31、32または死角側段32、33で合計2回反射した後に、表示側段22または表示側段23の透過面4aを透過して射出される外景光である。外景光L23においては、表示側段21の平坦部3aで反射した外景光L22は死角側段31で反射され、表示側段22の平坦部3aで反射した外景光L22は死角側段32で反射される。更に、表示側段23の平坦部3aで反射した外景光L22は死角側段33で反射され。上述の通り、平坦部法線方向に沿った表示側段21の平坦部3aから死角側段31までの距離は、平坦部法線方向に沿った表示側段22の平坦部3aから死角側段32までの距離と同じである。同様に、平坦部法線方向に沿った表示側段21の平坦部3aから死角側段31までの距離は、平坦部法線方向に沿った表示側段23の平坦部3aから死角側段33までの距離と同じである。したがって、外景光L23は、複数の入射透過面41aのうちどれから入射しても、入射面2aから入射してから射出されるまでの光路長が同じである。
【0135】
なお、外景光L21が入射面2aから入射してから射出されるまでの光路長、外景光L22が入射面2aから入射してから射出されるまでの光路長、外景光L23が入射面2aから入射してから射出されるまでの光路長は、それぞれ異なっている。
【0136】
このように、射出面2bにおいて、外景光L21が射出される比較的広い範囲、外景光L22が射出される比較的広い範囲、外景光L23が射出される比較的広い範囲の各々において、光路長が一定となる。したがって、射出する光線によって視認される外景像の歪みの発生を、概ね、外景光L21が射出される範囲と外景光L22が射出される範囲の境界近傍と、外景光L22が射出される範囲と外景光L23が射出される範囲の境界近傍に、限定できる。
【0137】
このようになっておらず、例えば外景光L21が射出される範囲内で透過面4aの入射面2aからの距離に応じて光路長が異なっている場合、死角表示装置1に対して車両水平面に対して傾いた方向から入射面2aに外景光が入射したとする。その場合、入射面2aへの入射時には車両天地方向の高さが同じであった外景光L21が、射出面2bよりも運転者の側における平坦部法線方向に直交する1つの面においては、車両天地方向の位置が、異なっている。これにより、外景光の歪みが発生してしまう場合がある。例えば、上記のような外景光L21が無限遠から到来する場合において、外景光L21の車両天地方向の到達位置が死角表示装置1に起因する光路長の異なりにより入射面2aへの入射時とアイリプスELへの到達時とで変化してしまったとする。その場合でも、入射面2aと透過面4aの角度関係が車両天地方向の各位置で同じに維持されていれば、光路長が異なっていても外景光L21の歪みは発生しない。外景光L21が入射面2aの全面に平行光として入射するからである。しかし、外景光L21が有限距離から到来する場合は、車両天地方向の位置が入射面2aへの入射時には同じであっても両眼のアイリプスELへの到達時には異なってしまうと、外景光の像の位置が天地方向にシフトしてしまうため、外景光L21の歪みが発生する。人はある注視点を見るときに、左右の眼を繋ぐ直線方向に視差がある場合は、眼の輻輳角を調整することで融像できる。この直線方向は、多くの場合車両水平方向に概ね一致する。しかし、車両天地方向に視差がある場合は、眼の輻輳角で調整することが困難なため、上述の外景光L21の歪みによって視認性が劣化しやすくなる。なお、これは、平坦部法線方向および入射面2aの法線方向が車両の水平面に平行になるよう、死角表示装置1の姿勢が決められている場合の例である。
【0138】
そのような例でなく、例えば上記の死角表示装置1の姿勢に対して平坦部法線方向を軸として0°以上90°未満で回転した姿勢になっている例についても説明する。すなわち、死角表示装置1が斜めに置かれている例についても説明する。この例においては、車両水平方向から入射面2aに外景光L21が入射したとする。このような例において、外景光L21が射出される範囲内で透過面4aの入射面2aからの距離に応じて光路長が異なっている場合、入射面2aと透過面4aが平行になっていれば、入射面2aに入射した外景光L21は、透過面4aから車両水平方向に射出される。しかし、死角表示装置1が斜めに置かれているので、入射面2aにおける外景光L21の屈折により、車両天地方向のシフトが発生する。すなわち、外景光L21が入射面2aに入射したときの車両天地方向の位置に対して、外景光L21が透過面4aから出射するときの車両天地方向の位置が、シフトする。このシフト量は光路長が長いほど増大するので、外景光L21が射出される範囲内で光路長が異なっていると、外景光L21の歪みすなわち車両天地方向の視差が発生する。これに対し、本実施形態のように外景光L21が射出される範囲内で透過面4aの入射面2aからの距離によらず光路長が一定となっていれば、入射した外景光の車両天地方向の視差が低減される。
【0139】
なお、表示側段23においては、外景光L22が射出される範囲においては、プリズム部4と平坦部3aが交互に配置され、外景光L23が射出される範囲においては、平坦部3aが配置されず、複数のプリズム部4が連続的に隣り合って配置されている。これは、外景光L23が射出される範囲では、外景光L23を反射せずすべて透過面4aから射出した方が、光利用効率が高まるからである。
【0140】
また、入射面2aに配列された複数の入射プリズム部41(すなわち、プリズムアレイ)の、並び方向の幅Wは、2T×tanΦと同じかあるいはそれよりもわずかに異なっている。例えば、幅Wは、2T×tanΦに対して誤差±5%の範囲内にある。ここで、Φは入射角θ1で入射した外景光の導光角である。
【0141】
このようにすることの理由について、
図14、
図15、
図16を用いて説明する。
図13では、導光部2e内における導光を分かり易くするため、外景光が通る領域にハッチングを施している。
図14は、W=2T×tanΦの場合における外景光の光路を示している。この場合、入射面2aのうちウインドシールド94に最も近い側(すなわち、端面2dから最も遠い側)の入射透過面41aから入射した外景光L31は、表示側段21におけるウインドシールド94に最も近い側の平坦部3aで反射される。そして更に外景光L31は、死角側段31におけるウインドシールド94に最も近い側で更に反射され、死角側段31(または死角側段32)の透過面4aに向かう。この場合、入射面2aのうちウインドシールド94から最も遠い側(すなわち、端面2dに最も近い側)の入射透過面41aから入射して死角側段31(または死角側段32)の透過面4aに向かう外景光L32と上記外景光L31との隙間が、ほとんどない。すなわち、外景光の明暗のムラを低減できる。
【0142】
図15は、幅Wが2T×tanΦよりも小さい場合を示している。この場合、外景光L32と上記外景光L31との隙間が大きくなってしまい、すなわち、外景光の明暗のムラが大きくなってしまう。
【0143】
図16は、幅Wが2T×tanΦよりも大きい場合を示している。この場合、入射面2aのうちウインドシールド94に最も近い側の入射透過面41aから入射した外景光L31は、表示側段21におけるウインドシールド94に最も近い側の平坦部3aで反射された後、入射面2aの対向側面41bに当たってしまう。対向側面41bが透光性を有している場合は外景光L31が導光部2eの外に出てしまい、対向側面41bが遮光性を有している場合は外景光L31が対向側面41bで遮られてしまう。すなわち、外景光のロスが発生してしまう。なお、
図16のように幅Wが2T×tanΦよりも大きい場合では、外景光の隙間が殆どないので、外景光のロスを問題としなければ、W≧2T×tanΦという範囲において、外景光の明暗のムラを低減できるという効果が得られる。
【0144】
また、本実施形態において、第3実施形態で説明した表示側段ペアは、表示側段21と表示側段22のペア、および、表示側段22と表示側段23のペアの、2ペアある。また、第3実施形態で説明した死角側段ペアは、死角側段31と死角側段32のペア、および、死角側段32と死角側段33のペアの、2ペアある。これにより、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、表示側段ペアの数と、死角側段ペアの数は、等しくなっていることで、そうでない場合に比べ、明暗のムラが低減され、光の利用効率が向上する。
【0145】
図17は、本実施形態の死角表示装置1が車両のフロントピラー92に取り付けられた状態を示す。この状態において、フロントピラー92の隠された死角領域に入射面2aが対向して配置される。
【0146】
また、本実施形態の死角表示装置1において説明していない箇所については、第1~第3実施形態の死角表示装置1と同様である。そして、本実施形態において第1~第3実施形態と同様の構成からは、第1~第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0147】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0148】
(変形例1)
上記各実施形態では、射出面2bのうち表示側反射面3は、分離して複数のプリズム部4の間に互い違いに配置される複数の平坦部3aを有しており、この複数の平坦部3aにおいて外景光が死角側反射面2cに向けて全反射するように構成されている。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、外景光を死角側反射面2cに向けて全反射する反射部は、プリズム部4の間に配置されているのではなく、特許文献1のように、プリズム部4と死角側反射面2cの間の位置に配置されていてもよい。
【0149】
(変形例2)
また、上記各実施形態において、射出面2bは複数の表示側段を有し、各表示側段における平坦部3aの表示側への突出度合いが、他の表示側段と異なっている。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、すべての平坦部3aの表示側への突出度合いが同じであってもよい。その場合でも、複数のプリズム部4の表示側への突出度合いが異なっていれば、これらプリズム部4の表示側の先端部は、平面に沿わない立体的配置で配置され得る。
【0150】
(変形例3)
上記実施形態において、平坦部3aは必ずしも平坦でなくてもよい。また、死角側反射面2cは必ずしも平滑でなくてもよい。
【0151】
(変形例4)
本実施形態の死角表示装置1は、車両のフロントピラー92に取り付けられているが、取り付け先は必ずしも車両のフロントピラー92でなくてもよく、例えば、車両前後方向中央のピラーであってもよい。あるいは死角表示装置1は、車両以外の場所に取り付けられていてもよい。例えば、死角表示装置1は、建物のドアに取り付けられても、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0152】
1 死角表示装置
4 プリズム部
2a 入射面
2e 導光部
21~27 表示側段
31~34 死角側段
92 フロントピラー