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  • 特開-モータ制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062896
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/22 20060101AFI20230427BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20230427BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20230427BHJP
【FI】
H02P3/22 A
H02P27/06
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173064
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 隆
【テーマコード(参考)】
5H501
5H505
5H530
【Fターム(参考)】
5H501FF04
5H501FF05
5H501HA05
5H501HB07
5H501JJ12
5H501JJ17
5H501LL22
5H501LL52
5H501MM01
5H501MM09
5H505BB06
5H505DD03
5H505EE48
5H505HA06
5H505HB01
5H505JJ12
5H505JJ17
5H505LL22
5H505LL55
5H505MM01
5H505MM12
5H530AA02
5H530CC20
5H530CC23
5H530CD32
5H530CE15
5H530DD03
5H530DD19
5H530EE01
5H530EE07
(57)【要約】
【課題】ダイナミックブレーキ回路の故障検出機能及びモニタリング機能を備えたモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置は、モータ1と、前記モータ1を駆動するインバータ回路2と、前記モータ1と前記インバータ回路2とを接続する第一配線L1と、前記モータ1と前記インバータ回路2とを接続する第二配線L2と、前記第一配線L1に流れる第一電流を検出する第一センサS1と、前記第二配線L2に流れる第二電流を検出する第二センサS2と、ダイナミックブレーキ回路3と、を備える。前記ダイナミックブレーキ回路3は、前記第一センサS1と前記モータ1の間と、前記第二センサS2と前記インバータ回路2の間に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと
前記モータを駆動するインバータ回路と、
前記モータと前記インバータ回路とを接続する第一配線と、
前記モータと前記インバータ回路とを接続する第二配線と、
前記第一配線に流れる第一電流を検出する第一センサと、
前記第二配線に流れる第二電流を検出する第二センサと、
ダイナミックブレーキ回路と、
を備え、
前記ダイナミックブレーキ回路は、前記第一センサと前記モータの間と、前記第二センサと前記インバータ回路の間に接続されている、モータ制御装置。
【請求項2】
前記モータ制御装置は、
アラーム表示部と、
アラーム表示制御部と、
をさらに備え、
前記ダイナミックブレーキ回路は、ダイナミックブレーキ抵抗を有し、
前記アラーム表示制御部は、前記第一センサによって検出された前記第一電流の電流値が、あらかじめ定められた第一閾値を超えたと判定した場合に、アラーム表示部に前記ダイナミックブレーキ回路の故障による前記インバータ回路の電流異常を示す第一アラームを表示し、
前記アラーム表示制御部は、前記第二センサによって検出された前記第二電流の電流値が、あらかじめ定められた第二閾値を超えたと判定した場合に、アラーム表示部に前記ダイナミックブレーキ抵抗の短絡による前記ダイナミックブレーキ回路の電流異常を示す第二アラームを表示する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記アラーム表示制御部は、前記第二電流の電流値から、前記ダイナミックブレーキ抵抗に発生する熱量を演算し、前記熱量があらかじめ定められた第三閾値を超えたと判定した場合に、アラーム表示部に第三アラームを表示する、請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記ダイナミックブレーキ回路は、ダイナミックブレーキリレーを有し、
前記アラーム表示制御部は、前記ダイナミックブレーキリレーのON回数をカウントし、前記ON回数があらかじめ定められた第四閾値を超えたと判定した場合に、アラーム表示部に第四アラームを表示する、請求項2または3に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ制御装置において、停電時やアンプが故障した際、モータの端子間を抵抗を介して短絡し、回転エネルギーを熱消費させて速やかに停止させる、ダイナミックブレーキ回路が知られている。さらに、リレーの溶着等によるダイナミックブレーキ回路の故障を検出する故障検出装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ダイナミックブレーキ回路に所定の直流電圧を印加し、ダイナミックブレーキ回路内に流れる電流値と閾値とを比較することで、ダイナミックブレーキ回路の故障の有無を判定する故障検出機能を備えたモータ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-144232号公報
【特許文献2】特開2011-217474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイナミックブレーキ回路が、電流検出抵抗や電流センサからなる電流検出回路よりもモータ側に配線されているため、モータの誘起電圧に起因するダイナミックブレーキ回路を流れるダイナミックブレーキ電流の電流値を測定することができない。したがって、ダイナミックブレーキ回路内の抵抗の短絡による故障検出や、ダイナミックブレーキ回路の状態監視(モニタリング)を行うことができないという課題があった。
【0006】
本開示は、ダイナミックブレーキ回路の故障検出機能及びモニタリング機能を備えたモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るモータ制御装置は、
モータと
前記モータを駆動するインバータ回路と、
前記モータと前記インバータ回路とを接続する第一配線と、
前記モータと前記インバータ回路とを接続する第二配線と、
前記第一の配線に流れる第一電流を検出する第一センサと、
前記第二の配線に流れる第二電流を検出する第二センサと、
ダイナミックブレーキ回路と、
を備え、
前記ダイナミックブレーキ回路は、前記第一センサと前記モータの間と、前記第二センサと前記インバータ回路の間に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ダイナミックブレーキ回路の故障検出機能及びモニタリング機能を備えたモータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るモータ制御装置の概略図である。
図2】本開示の実施形態に係るアラーム制御装置のブロック図である。
図3】ダイナミックブレーキ回路の故障検出のフローチャートである。
図4】ダイナミックブレーキ抵抗に発生する熱量のモニタリングのフローチャートである。
図5】ダイナミックブレーキリレーのON回数のモニタリングのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
(モータ制御装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係るモータ制御装置の概略図である。図1に示すように、モータ制御装置は、モータ1と、インバータ回路2と、モータ1とインバータ回路とを接続する第一配線L1、第二配線L2、第三配線L3と、第一センサS1、第二センサS2と、ダイナミックブレーキ回路3と、を備える。
【0012】
インバータ回路2は、モータ1を駆動する。インバータ回路2は、三相交流電流(U相、V相、W相)を出力する。インバータ回路2は商用電源から三相交流電流を生成する。インバータ回路2は、例えばU相の電流を第一配線L1に出力し、V相の電流を第二配線L2に出力し、W相の電流を第三配線L3に出力する。
【0013】
第一配線L1、第二配線L2、第三配線L3には、それぞれインバータ回路2から出力された三相交流電流が流れる。
第一配線L1に流れる電流を第一電流と呼ぶ。第二配線L2に流れる電流を第二電流と呼ぶ。第一配線L1には、第一電流を検出する第一センサS1が設けられている。第二配線L2には、第二電流を検出する第二センサS2が設けられている。第一センサS1、第二センサS2には、電流検出抵抗などの抵抗検出タイプ又はホール素子などの磁場検出タイプなどを採用できる。
【0014】
ダイナミックブレーキ回路3が作動しない正常状態においては、インバータ回路2から、第一配線L1、第二配線L2および第三配線L3を介してモータ1に三相交流電流が供給される。このとき、第一センサS1により第一配線L1を流れる第一電流を測定できる。また、第二センサS2により第二配線L2を流れる第二電流を測定できる。
【0015】
ダイナミックブレーキ回路3は、直列接続されたダイナミックブレーキ抵抗R1とダイナミックブレーキリレーSW1を備える。ダイナミックブレーキリレーSW1がONになると、モータ1の端子間がダイナミックブレーキ抵抗R1を介して短絡する。つまり、モータ1から第一配線L1、ダイナミックブレーキ回路3、第二配線L2からなる回路にダイナミックブレーキ電流が流れる。これにより、モータ1の回転により生じた誘起電流がダイナミックブレーキ抵抗R1において熱エネルギーへと変換され、ダイナミックブレーキ回路3がダイナミックブレーキとして機能する。
【0016】
ところで本実施形態のダイナミックブレーキ回路3は、第一センサS1とモータ1の間の第一接点P1と、第二センサS2とインバータ回路2の間の第二接点P2に接続されている。このため、ダイナミックブレーキリレーSW1がONになると、モータ1から第一配線L1、第一接点P1、ダイナミックブレーキリレーSW1、ダイナミックブレーキ抵抗R1、第二接点P2、第二センサS2、第二配線L2からなる経路にダイナミックブレーキ電流が流れる。つまり、第二センサS2にダイナミックブレーキ電流が流れるので、ダイナミックブレーキリレーSW1がONのときにダイナミックブレーキ回路3に流れるダイナミックブレーキ電流を第二センサS2で測定できる。
また、ダイナミックブレーキリレーSW1を意図せずONになった状態のままインバータ回路を動作させた場合、例えばダイナミックブレーキリレーSW1の接点が溶着するなどして故障してしまった場合にも、ダイナミックブレーキリレーSW1が閉じてしまう。この場合にも、ダイナミックブレーキ回路3にインバータ回路電流が流れる。第一センサS1はこのダイナミックブレーキ回路3の故障時にダイナミックブレーキ回路3に流れるインバータ回路電流を測定できる。
【0017】
図2は、本開示の実施形態に係るアラーム制御装置のブロック図である。図2に示すように、アラーム制御装置は、アラーム表示制御部4とアラーム表示部10を備える。
【0018】
アラーム制御装置は、ダイナミックブレーキ回路3の故障検出モードとモニタリングモードの2種類の機能を有する。故障検出モードでは、ダイナミックブレーキリレーSW1の接点溶着による過電流やダイナミックブレーキ抵抗R1の抵抗短絡による過電流などの異常を検知する。モニタリングモードでは、ダイナミックブレーキ抵抗R1に発生する熱量やダイナミックブレーキリレーSW1のON回数を監視し、異常を検知する。異常を検知した場合、アラーム表示制御部4は、アラーム表示部10に所定のアラームを通知してユーザに表示させる。
【0019】
センサ制御部5は、第一センサS1によって検出された第一電流の電流値と、第二センサS2によって検出された第二電流の電流値を取得し、第二電流と第一電流の電流値を演算部7へ送信する。カウンタ6は、ダイナミックブレーキリレーSW1のON回数をカウントし、ON回数を演算部7へ送信する。演算部7は、センサ制御部5から受信した第二電流の電流値とカウンタ6から受信したON回数を基に、ダイナミックブレーキ抵抗R1に発生する熱量を演算し、第一電流の電流値と第二電流の電流値と演算した熱量を判定部8へ送信する。判定部8は、演算部7から第一電流の電流値と第二電流の電流値と演算した熱量とON回数を受信し、記憶部9から予め設定された閾値を読み出し、受信した値と読み出した閾値とを比較して、過電流、異常な熱量の発生、異常なON回数の有無を判定する。上記何れかの異常があると判定の場合は、判定部8はアラーム表示部10に所定のアラームを通知して表示させる。
【0020】
(故障検出モード)
図3は、ダイナミックブレーキ回路3の故障検出のフローチャートである。図2に示すアラーム表示制御部4の内部ブロックも参照しながら、故障検出モードの処理フローについて説明する。
【0021】
故障検出モードの開始後、アラーム表示制御部4は、予めユーザが指定した第一閾値、第二閾値を揮発性メモリなどで構成される記憶部9にロードし、初期化の設定を行う(S100)。第一閾値、第二閾値は予めユーザによって不揮発性メモリなどに記録されている。次に、センサ制御部5は、第一センサS1から第一電流の電流値を、第二センサS2から第二電流の電流値を取得する(S101、S102)。取得した第一電流の電流値、第二電流の電流値は、センサ制御部5から演算部7を経由して判定部8へ送信される。判定部8は、第一電流の電流値が記憶部9から読み出した第一閾値を超えているか判定し(S103)、超えている場合にはアラーム表示部10に第一アラームを通知して表示させる(S104)。次に、判定部8は、第二電流の電流値が記憶部9から読み出した第二閾値を超えているか判定し(S105)、超えている場合にはアラーム表示部10に第二アラームを通知して表示させる(S106)。S101~S106の工程を定期的に繰り返すことで、第一電流の電流値、第二電流の電流値を監視し、ダイナミックブレーキリレーSW1の接点溶着による過電流やダイナミックブレーキ抵抗R1の抵抗短絡による過電流を検知する。
【0022】
上記処理フローによって、ダイナミックブレーキリレーSW1の融点接着によるインバータ回路電流の短絡と、ダイナミックブレーキ回路3稼働時のダイナミックブレーキ抵抗R1の短絡を判定し、ユーザにアラーム通知することができる。
【0023】
(モニタリングモード)
図4は、ダイナミックブレーキ抵抗R1に発生する熱量のモニタリングのフローチャートである。図2に示すアラーム表示制御部4の内部ブロックも参照しながら、故障検出モードの処理フローについて説明する。
【0024】
モニタリングモードの開始後、アラーム表示制御部4は、予めユーザが指定した第三閾値を記憶部9にロードし、初期化の設定を行う(S200)。次に、センサ制御部5は、第二センサS2から第二電流の電流値を取得する(S201)。取得した第二電流の電流値は、センサ制御部5から演算部7へ送信される。演算部7は、第二電流の電流値からダイナミックブレーキ抵抗R1に発生する熱量を演算する(S202)。ここで「熱量」とは、単位時間当たりに発生する熱量であってもよいし、今まで発生したトータルの熱量であってもよい。演算部7は、上記演算した熱量を判定部8に送信する。次に、判定部8は、送信された熱量が記憶部9から読み出した第三閾値を超えているか判定し(S203)、超えている場合にはアラーム表示部10に第三アラームを通知して表示させる(S204)。S201~S204の工程を定期的に繰り返すことで、ダイナミックブレーキ抵抗R1に発生する熱量を監視し、回路異常を検知する。
【0025】
図5は、ダイナミックブレーキリレーSW1のON回数のモニタリングのフローチャートである。図2に示すアラーム表示制御部4の内部ブロックも参照しながら、故障検出モードの処理フローについて説明する。
【0026】
モニタリングモードの開始後、アラーム表示制御部4は、予めユーザが指定した第四閾値を記憶部9にロードし、初期化の設定を行う(S300)。次に、カウンタ6は、ダイナミックブレーキリレーSW1がONされるかを監視し(S301)、ONされた場合にはON回数のカウンタをカウントアップする(S302)。カウントアップされたON回数は、カウンタ6から演算部7を経由して判定部8に送信される。次に、判定部8は、送信されたON回数が記憶部9から読み出した第四閾値を超えているか判定し(S303)、超えている場合にはアラーム表示部10に第四アラームを通知して表示させる(S304)。S301~S304の工程を定期的に繰り返すことで、ダイナミックブレーキリレーSW1のON回数を監視し、ダイナミックブレーキの作動回数の異常を検知する。
【0027】
上記処理フローによって、ダイナミックブレーキ抵抗R1に発生する熱量から、ダイナミックブレーキ抵抗R1が故障する前に、ユーザにアラーム通知することができる。また、ダイナミックブレーキリレーSW1のON回数から、ダイナミックブレーキリレーSW1が故障する前に、ユーザにアラーム通知することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0029】
1 モータ
2 インバータ回路
3 ダイナミックブレーキ回路
4 アラーム表示制御部
5 センサ制御部
6 カウンタ
7 演算部
8 判定部
9 記憶部
10 アラーム表示部
L1 第一配線
L2 第二配線
L3 第三配線
S1 第一センサ
S2 第二センサ
P1 第一接点
P2 第二接点
R1 ダイナミックブレーキ抵抗
SW1 ダイナミックブレーキリレー
図1
図2
図3
図4
図5