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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062906
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】自転車用スタンド
(51)【国際特許分類】
   B62H 3/06 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
B62H3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173085
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】500283310
【氏名又は名称】株式会社ユニコ
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】建部 広行
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来よりも安価な構成により、車輪のタイヤの左右揺動を規制して自転車を安定支持できる可搬式の自転車用スタンドを提供する。
【解決手段】自転車用スタンド1は、車輪を左右から支持する左右一対の枠体2と、枠体2の下端部同士を連結する前後一対の連結部材3とを備える。連結部材3は、左の枠体2が連結された左部材31と、右の枠体2が連結された右部材32と、左部材31と右部材32とを回動可能に結合するヒンジ部33とを有し、左部材31および右部材32はその上面に設けられて車輪のタイヤが載置される車輪載置部34を有する。車輪載置部34に載せられる車輪からの荷重によってヒンジ部33が下がり、枠体2および車輪載置部34がそれぞれ閉動作して車輪およびタイヤを左右から挟むように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車輪を支持する可搬式の自転車用スタンドにおいて、
前記車輪を左右から支持する左右一対の枠体と、
前記枠体の下端部同士を連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、左の前記枠体が連結された左部材と、右の前記枠体が連結された右部材と、これら左部材と右部材とを回動可能に結合するヒンジ部とを有し、
前記左部材および右部材は、前記車輪のタイヤが載置される車輪載置部と、前記ヒンジ部が下方に移動可能な空間を確保するための脚部とを有し、
前記車輪載置部に前記車輪が載せられたとき、該車輪の荷重によって前記ヒンジ部が下がると共に、前記枠体および前記車輪載置部が前記車輪および前記タイヤを左右から挟むように動作することを特徴とする自転車用スタンド。
【請求項2】
前記左部材および右部材は、樹脂成形品により構成され、前記枠体は、金属パイプの曲げ加工によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用スタンド。
【請求項3】
前記左部材および右部材は、前記車輪を前記車輪載置部に向けて案内するための傾斜部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の自転車用スタンド。
【請求項4】
前記連結部材は、スタンド非使用時に前記左右の枠体の上端部が開く方向に前記左部材および右部材を前記ヒンジ部の回りに回動付勢する付勢部材を備え、
前記車輪載置部は、スタンド非使用時に前後方向視で大径の円弧形状を成し、前記車輪が載置されたスタンド使用時に前記付勢部材による付勢に抗して前記左部材および右部材が回動して小径の円弧形状を成すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自転車用スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンドを備えていない自転車を自立駐輪させる可搬式の自転車用スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可搬式の自転車用スタンドとして、図8(a)に示す自転車用スタンド9Aが知られている。この自転車用スタンド9Aは、左右一対の門状部材91と、2つの門状部材91の前側および後側の下端に溶接された前後一対の脚部材92と、を備えている。脚部材92の各々は、左右の棒材を回動軸90によって回動自在に連結して構成されている。自転車用スタンド9Aは、回動軸90の上部に車輪を乗せると回動軸90部分が下がり、左右の門状部材91の上部が接近して左右両側から車輪を挟むように支持する。
【0003】
この自転車用スタンド9Aにおいては、車輪のタイヤが、これを接触支持する回動軸90の上部で左右に揺れ動く不安定性がある。この不安定性を改善するため、図8(b)に示す自転車用スタンド9Bが提案されている(例えば、特許文献1参照)。自転車用スタンド9Bは、車輪10のタイヤを挟んで支持するための部品である専用部材93を回動軸90の上方に備えている。専用部材93は、車輪10が載せられと車輪の荷重を受けて閉動作し、タイヤを挟むように変形してタイヤの左右動を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-107952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に示されるような自転車用スタンド9Bにおいては、専用部材93などの部品を追加したことなどにより、製造コストを下げるのが難しい。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、従来よりも安価な構成により、車輪のタイヤの左右揺動を規制して自転車を安定支持できる可搬式の自転車用スタンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の自転車用スタンドは、
自転車の車輪を支持する可搬式の自転車用スタンドにおいて、
前記車輪を左右から支持する左右一対の枠体と、
前記枠体の下端部同士を連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、左の前記枠体が連結された左部材と、右の前記枠体が連結された右部材と、これら左部材と右部材とを回動可能に結合するヒンジ部とを有し、
前記左部材および右部材は、前記車輪のタイヤが載置される車輪載置部と、前記ヒンジ部が下方に移動可能な空間を確保するための脚部とを有し、
前記車輪載置部に前記車輪が載せられたとき、該車輪の荷重によって前記ヒンジ部が下がると共に、前記枠体および前記車輪載置部が前記車輪および前記タイヤを左右から挟むように動作することを特徴とする。
【0008】
この自転車用スタンドにおいて、
前記左部材および右部材は、樹脂成形品により構成され、前記枠体は、金属パイプの曲げ加工によって形成されていることが望ましい。
【0009】
この自転車用スタンドにおいて、
前記左部材および右部材は、前記車輪を前記車輪載置部に向けて案内するための傾斜部を有することが望ましい。
【0010】
この自転車用スタンドにおいて、
前記連結部材は、スタンド非使用時に前記左右の枠体の上端部が開く方向に前記左部材および右部材を前記ヒンジ部の回りに回動付勢する付勢部材を備え、
前記車輪載置部は、スタンド非使用時に前後方向視で大径の円弧形状を成し、前記車輪が載置されたスタンド使用時に前記付勢部材による付勢に抗して前記左部材および右部材が回動して小径の円弧形状を成すことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自転車用スタンドによれば、車輪載置部に車輪が載せられたとき、車輪の荷重によってヒンジ部が下がると共に、枠体および車輪載置部が車輪およびタイヤを左右から挟むように動作するので、タイヤの左右揺動を抑制して自転車を安定支持できる。また、従来例におけるタイヤを挟むための専用部材を別途に備えることなく、連結部材に設けた車輪載置部によってタイヤを挟む構成としたので、より安価な自転車用スタンドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る自転車用スタンドに自転車の車輪を乗せる作業状態の斜視図、(b)は同自転車用スタンドに自転車の車輪が乗せられて支持された状態の斜視図。
図2】同自転車用スタンドの非動作状態の斜視図。
図3】同自転車用スタンドの連結部材の分解斜視図。
図4】同連結部材のヒンジ部の変形例を示す分解斜視図。
図5】(a)は同自転車用スタンドの動作前状態の正面図、(b)は同自転車用スタンドが自転車の車輪を支持する動作状態の正面図。
図6】同自転車用スタンドの分解斜視図。
図7】同自転車用スタンドの変形例を示す斜視図。
図8】(a)は従来の自転車用スタンドの斜視図、(b)は他の従来の自転車用スタンドに自転車の車輪が乗せられた状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る自転車用スタンドについて、図面を参照して説明する。図1乃至図3に示すように、自転車用スタンド1は、自転車の車輪10が載せられることにより、その自転車を支持する可搬式の自転車用スタンドであって、車輪10を左右から支持する左右一対の枠体2,2と、枠体2の下端部同士を連結する前後一対の連結部材3,3と、を備えている。以下、各部の詳細を説明する。
【0014】
枠体2は、車輪10の前寄りと後寄りに配置される2本の柱部材21と柱部材21の上端間を連結する桁部材22とを有し、その全体が門型形状となっている。枠体2は、例えば、棒状材料の特に金属製のパイプなどの曲げ加工によって、各柱部材21と桁部材22とを一体成形して製造される。桁部材22は、その表面に樹脂製や木製などの緩衝材22aを備えてもよい。塩化ビニールなどの樹脂で被覆した材料を用いて枠体2を形成してもよい。また、枠体2は、棒状材料の曲げ加工によらずに樹脂成形によるプラスチック成形品として製造してもよく、木製であってもよい。
【0015】
連結部材3は、左の枠体2が連結された左部材31と、右の枠体2が連結された右部材32と、これら左部材31と右部材32とを回動可能に結合するヒンジ部33とを有している。左部材31および右部材32は、車輪10のタイヤ10aが載置される車輪載置部34を有している。また、連結部材3は、自転車用スタンド1の非使用時に左右の枠体2,2の上端部が開く方向に左部材31および右部材32をヒンジ部33の回りに回動付勢する付勢部材35を備えている。
【0016】
本実施形態において、連結部材3を構成する左部材31および右部材32の各々は、樹脂成形品により構成される。左部材31および右部材32となる樹脂成形品は、例えば、同一の金型または同一形状の金型を用いて樹脂成形された同一構成の部品である。また、前後一対の連結部材3は、同一構成の2つの連結部材3である。従って、本実施形態の自転車用スタンド1は、同一構成の4つの樹脂部成形品を用いて構成される。以下において、左部材31および右部材32を代表して左部材31について主に説明し、右部材32については適宜に説明を加える。左部材31についての説明は、対応する部位の符号や回動方向の違い等を除き、右部材32についても同様に適用される。
【0017】
左部材31は、自転車用スタンド1の使用時の配置姿勢において、上下方向となる柱部311、その柱部311の側面から斜め外下方に伸びる脚部312、柱部311の側面から連結部材3の左右中央方向に伸びる腕部313、および柱部311の上部側面から腕部313の端部に向けて斜めに伸びる傾斜部314の構成を有する。
【0018】
柱部311には、枠体2における柱部材21の下端部が挿入される挿入孔311aと、挿入孔311aに挿入された柱部材21を固定して回転や上下動を防止するためのピンまたはねじを挿入固定する固定用孔311bと、が設けられている。挿入孔311aは有底または段付きの半有底でもストレートまたは先細りテーパ付きの貫通孔でもよい。挿入孔311aが有底または半有底の場合、中に任意高さの詰め物をして枠体2の高さ位置調整用としてもよい。
【0019】
柱部311の下部側面には、連結部材3の左右方向内方に向けて突出する板状のリブ315が設けられている。リブ315は、付勢部材35の一端を固定するための係止孔315aを有している。付勢部材35は、連結部材3における左右の脚部312を互いに接近させ、連結部材3の上部、より正確にはヒンジ部33の中心軸よりも上側に位置する部分を互いに離間させる方向に付勢する。付勢部材35は、例えば、コイルばね等の弾性体である。
【0020】
脚部312は、その下端が地面に接地し、自転車用スタンド1の使用時および使用直前の非使用時のいずれにおいても、脚部312以外の部分が接地しないように自転車用スタンド1を下方から支持する。左右の脚部312,322は、自転車用スタンド1の動作時に接地面上をすべりながら移動して開閉動作をする。脚部312,322は、ヒンジ部33が下方に移動可能となる空間を連結部材3の左右中央下方に形成する。
【0021】
腕部313は、ヒンジ部33と車輪載置部34の一部とを形成するための構造体である。腕部313は、ヒンジ軸部品3aが挿入される軸孔33aを腕部313の端部近くに備えている。軸孔33aの中心軸位置は、左部材31および右部材32となる2つの樹脂成形品をヒンジ軸部品3aによって結合させ、連結部材3として形成したときの連結部材3の左右中央位置になる。腕部313,323は、中空円形パイプの構造体として例示しているが、外形が円形ではなくてもよく、またパイプでもなくてもよく、例えば、図4に示すように中実の角柱であってもよい。
【0022】
腕部313の軸孔33a周辺には、複数の切り欠きが形成されている。これらの切り欠きは、ヒンジ軸部品3aによって結合された左部材31および右部材32がヒンジ軸部品3aを中心にして互いに干渉することなく回動可能となるように形成されている(図5(b)参照)。切り欠きは、例えば、軸孔33aの中心軸を中心とする円弧状の断面外形を有し、凸端面と切欠凹面の2種類がある。連結部材3が組立形成された状態で、左部材31の凸端面(または切欠凹面)が、右部材32の切欠凹面(または凸面)に対向する。
【0023】
腕部313は、軸孔33a周辺の切り欠きにおける構造として、凸端面の途中における上向きの段部33bと、切欠凹面の途中における下向きの段部33cとを有する。これらは互いにストッパ構造を構成する。連結部材3が組立形成された状態で、左部材31の上向きの段部33bが右部材32の下向きの段部33cに当接することにより、それ以上の互いの回動が停止される。自転車用スタンド1は、このストッパ構造と付勢部材35とによって、使用前の待機状態が維持される。
【0024】
連結部材3は、左部材31および右部材32の腕部313,323の切り欠き構造と、ヒンジ軸部品3aとを用いて左部材31および右部材32を組み合わせることにより、連結部材3の左右上部の接近および離間動作を可能とするヒンジ部33が形成される。ところで、連結部材3における左右の枠体2の間隔は、柱部311に対するヒンジ部33の位置によって決まる。また、ヒンジ部33が柱部311に対して垂直方向に伸びる腕部313に形成されているので、ヒンジ部33の位置を柱部311に近づけたり離したりする設計変更は簡単である。つまり、自転車用スタンド1は、左右の枠体2の間隔の設計変更が簡単であり、例えば、幅広タイヤの自転車(ファットバイク等)に対応するなどの車種に応じた設計変更が簡単である。
【0025】
傾斜部314は、車輪載置部34の一部と車輪10を車輪載置部34に案内する案内機構とを形成するための構造体である。傾斜部314は、その上面が車輪載置部34に向けて低くなっている。傾斜部314は、この傾斜構造により、車輪10を車輪載置部34に載せる際に、車輪10を車輪載置部34の中央に向けて案内する案内機構として作用する。なお、車輪載置部34の中央は、上下方向視で、連結部材3の中央であり、ヒンジ部33の中央である。車輪10は、自転車用スタンド1における左右の枠体2の中央真上からつまり車輪載置部34の中央真上から直立状態で左右の枠体2間に挿入されるのが好ましいが、車輪10が左右に傾くか中心からずれて挿入されても、タイヤ10aが傾斜部314,324に接触して案内されるので容易かつ適切に車輪載置部34に載せられる。なお、傾斜部314は、腕部313の役割を兼ね備えてもよく、例えば、傾斜部314の下端にヒンジ部33を備えるようにしてもよい。
【0026】
次に、連結部材3における車輪載置部34について説明する。図5(a)(b)に示すように、車輪載置部34は、左部材31および右部材32の上面、具体的にはヒンジ部33と傾斜部314,324の上面に分布して形成されている。車輪載置部34の形状は、自転車用スタンド1の動作状態に応じて変化する。なお、車輪のタイヤ10aが、模式的に、円形断面によって図示されている。
【0027】
図5(a)は、車輪載置部34に車輪の荷重がタイヤ10aを通してかかっていないスタンド非使用時における非動作状態を示し、ヒンジ部33のストッパ構造による回動規制と付勢部材35による付勢力のもとで、左右の枠体2の上端部の間隔が、最も開いた状態にある。この非動作状態において、車輪載置部34の中央部は前後方向視で大径の円弧形状の大径凹部34aを形成している。図中の仮想円C1は大径凹部34aの形状に沿った円であり、仮想円C1の半径が、大径凹部34aの大域的あるいは平均的な曲率半径に対応する。
【0028】
大径凹部34aに対応する仮想円C1の直径は、例えば50mmであり、タイヤ10aの幅は、例えば25mmが想定されている。これは、自転車用スタンドを備えないロードレーサータイプの平均的な自転車が、タイヤ幅25mmのタイヤを有することによる。
【0029】
図5(b)は、車輪載置部34に車輪が載置されて車輪からの荷重がタイヤ10aを通してかかっているスタンド使用時の状態を示し、付勢部材35の付勢力に抗して左部材31および右部材32が回動し、連結部材3の下部が開動作し上部が閉動作して、左右の枠体2の上端部が互いに近づいて閉動作した状態にある。この閉動作状態において、車輪載置部34の中央部は、前後方向視で大径凹部34aの曲率半径よりも小さな曲率半径を有する小径の円弧形状の小径凹部34bを形成している。図中の仮想円C2は小径凹部34bの形状に沿った円であり、仮想円C2の半径が、小径凹部34bの大域的あるいは平均的な曲率半径に対応する。
【0030】
小径凹部34bに対応する仮想円C2の直径は、例えば30mmである。小径凹部34bは、幅25mmのタイヤ10aに対して左右の揺動を十分に規制することができ、揺動規制凹部として効果的に機能することができる。
【0031】
小径凹部34bから成る揺動規制凹部を形成できる車輪載置部34を有する自転車用スタンド1は、ロードレーサータイプの平均的な自転車に対して好適に用いられる。また、小径凹部34bは、車輪載置部34に形成されることにより、平均的なロードレーサータイヤの太さに合わせて、直径30mmの円に対応するアールを有する。ロードレーサータイプの自転車は、タイヤが細く、自転車用スタンドの真中に乗せないと安定が悪いが、乗せた車輪が真中にくるように傾斜部314,324によって案内することにより容易に真中に乗せられ安定性を確保できる。なお、この自転車用スタンド1は、ロードレーサータイプの自転車に限られず、種々の自転車についても、各部の寸法を適宜設計して対応することができる。また、自転車用スタンド1は、自重でスポークを挟み込んで自転車の車輪を固定するので、自転車が重いほど安定して固定できる。従って最も軽いロードレーサータイプの自転車で安定して固定できるように設計することにより他種の自転車にも使用できる。
【0032】
また、自転車用スタンド1は、非使用時に、付勢部材35による付勢力の作用によって左右の枠体2が開いており、車輪を載せたときだけ枠体2が閉じるので、自転車用スタンド1の使い勝手がよい。また、段部33b,33cによるストッパ構造の配置位置の設計変更によって、または調整可能なストッパ構造を備えることによって、左右の枠体2の開き具合を平行にしたり、平行な状態よりも広げたりすることができる。
【0033】
次に、自転車用スタンド1の組み立てについて説明する。図6に示す自転車用スタンド1は、枠体2(2個)、左部材31および右部材32を構成する樹脂成形品(4個)、ヒンジ軸部品3a(2個)、ナットセット3b,3c(2組)、付勢部材35(2個)、緩衝材22a(2個)、および止めねじ3d(4個)を部品として備えている。
【0034】
自転車用スタンド1における基本部品は、枠体2と、左部材31および右部材32を構成する樹脂成形品とからなる2種類の部品である。この基本部品以外の部品については、自転車用スタンド1の設計上の対応によって、ヒンジ軸部品3aその他の部品を、市販の一般的で安価な部品を用いる設計にするか、または、部品そのものを使用しない設計にすることによって対応してもよい。
【0035】
自転車用スタンド1の組み立て工程において、例えば、最初に、ヒンジ軸部品3aおよびナットセット3b,3cを用いて左部材31および右部材32を一体化させて連結部材3が形成される。連結部材3を2つ組み立てて前後一対の連結部材3とする。連結部材3には、係止孔315a,325a(不図示)を用いて付勢部材35が取り付けられる。
【0036】
次に、左右の枠体2の前後の柱部材21下端(全部で4つある)を、前後の左部材31の挿入孔311aと前後の右部材32の挿入孔321aに挿入することにより、左右一対の枠体2を前後一対の連結部材3に組み込んで、自転車用スタンド1の基本形状が完成する。
【0037】
自転車用スタンド1のユーザには、製造段階で付勢部材35が取り付けられた2つの連結部材3、2つの枠体2、およびその他の部品を梱包した状態で渡すようにすれば、平面的な梱包状態で輸送することができる。ユーザは、連結部材3の挿入孔311a,321aに枠体2のパイプ(柱部材21)を突っ込むだけで、平面的な形状から立体的な形状に、簡単に組み立てることができる。また、ユーザにすべての組み立てを任せれば、もっとコンパクトな梱包状態にできる。
【0038】
また、枠体2の桁部材22には、適宜に緩衝材22aが固定される。緩衝材22aは、上方から桁部材22に装着する方法に限られず、内側横向から桁部材22に装着するようにしてもよい。緩衝材22aは車輪のスポーク部分に接して車輪を支持できる耐久性と機能を有する任意の物性や断面形状を有するものを用いればよく、緩衝材22aを用いない構成でもよい。
【0039】
枠体2は、左部材31の柱部311の側面に設けられた固定用孔311bと止めねじ3dとを用いて、適宜に連結部材3に固定される。枠体2の柱部材21を左部材31に固定する構造には、種々の構造を用いることができる。例えば、柱部材21に、止めねじ3dを挿通するキー孔を設ける。止めねじ3dを固定用孔311bに通して、このキー孔に挿入すればよい。止めねじ3dのねじは、止めねじ3dそのものを固定できればよい。柱部材21の回転と上下動とを防止できるねじのないピンを止めねじ3dに替えて用いてもよい。
【0040】
柱部材21に設けるキー孔は、上下の複数位置に設けることにより、枠体2の高さ位置の調整に用いてもよい。これにより、枠体2の桁部材22が車輪のスポーク部分を左右から挟んで支持する高さ位置を調整できる。
【0041】
挿入孔311aの内部における柱部材21の回転を防止しなければ、自転車用スタンド1を上方から見て4本の柱部材21を頂点とする90度の角を有する長方形が任意の平行四辺形に変形する。この回転による変形を防止する他の構造として、柱部材21の下端から上方に適宜のスリット(切り割)または凹溝を設け、このスリットまたは凹溝にはまるように挿入孔311aの内面に上下方向の凸条(挿入孔311aに突出した単一または複数のピンやねじでもよい)を設ければよい。この場合、ユーザは挿入孔311aに枠体2のパイプを突っ込むだけで回転防止固定ができる。
【0042】
また、自転車用スタンド1が上方から見て長方形から変形した平行四辺形になるのを防止するには、前後の連結部材3,3間の(最短距離で定義される)距離を一定に保てればよく、例えば、前後の連結部材3,3を一体化するボルト・ナットや構造体を用いてもよい。なお、枠体2の柱部材21を左部材31および右部材32に固定する構造は、柱部材21下端を挿入孔311a,321aに挿入することに限られず、任意の固定構造を用いてもよい。
【0043】
ヒンジ部33の構成は、左部材31および右部材32が緩みのない回転動作をする構造に限られず、互いにガタ(適宜の位置自由度)のある状態で回動する構成であってもよい。例えば、ヒンジ軸部品3aが挿通される軸孔33aが左右方向の長孔断面を有する形状の軸孔であってもよい。これは、大きな獲物をくわえるためあごを外す関節ずらし構造である。このようなヒンジ部301の自由度によって、自転車用スタンド1は、タイヤが種々の幅を有する車輪に対しても自在に対応できる。
【0044】
付勢部材35は、その配置位置にかかわらず、付勢部材35の付勢力の作用点の位置がヒンジ部33の中心位置(回転中心の位置)よりも下方にあることにより左右の枠体2が開いた状態に付勢され維持される。このことは、自転車用スタンド1の操作性、利便性を高めるために用いられている。ところで、小径凹部34b(揺動規制凹部)を閉じる力は車輪10からの荷重によって与えられている。そこで、付勢部材35を備えることなく使用前の枠体2を開いた状態に維持できるように、ヒンジ部33の動きを適宜に重くしてもよい。ユーザは、使用前に枠体2を開けばよい。
【0045】
また、付勢部材35による付勢力の作用点の高さ位置を、左右の枠体2が開いた状態ではヒンジ部33の中心より下方であって中心高さに近い高さに設定することにより開状態を維持し、閉じた状態では作用点が中心高さよりも上方に移動して閉状態を維持するようにしてもよい。付勢部材35の本体は、車輪10と干渉しない位置に配置すればよい。この場合、付勢部材35は上下2か所に安定した張力状態を有することになる。このように、2つの安定状態を取り得るように付勢部材35を取り付ける構造によれば、小径凹部34bを閉じる力として、車輪10からの荷重に加えて付勢部材35による付勢力を用いることができる。これは、ヒンジ部33の関節ずらし構造にも適用できる。なお、開から閉の状態遷移は車輪の荷重で行われるが、車輪が載った閉状態から車輪を外す場合は、ユーザ等からの別途の外力と操作が必要になる。
【0046】
上述のような実施形態の自転車用スタンドによれば、連結部材3における車輪載置部34を、車輪10からの荷重を受けてヒンジ部33とともに下がることにより閉動作してタイヤ10aを左右から挟んでタイヤ10aの揺動を規制するように構成したので、車輪載置部34におけるタイヤ10aの左右動を抑制して自転車を安定支持できる。また、連結部材3の上面に設けた車輪載置部34によってタイヤを挟む構成としたので、従来例におけるタイヤを挟むための専用部材などを別途の構造体として備える場合よりも、安価な自転車用スタンド1を実現できる。また、自転車用スタンド1は、枠体2と、左部材31および右部材32となる樹脂成形品との2種類の部品を基本部品とするので、例えば、樹脂成型金型は1種類で済ますことができ、基本部品の製造、保存、管理は、2種類の部品について行えばよいので、従来の自転車用スタンドに比べて、より安価な自転車用スタンドを実現できる。
【0047】
次に、自転車用スタンド1の変形例を説明する。図7に示す変形例は、1つの連結部材3によって構成されている点において上述の実施形態と相違する。連結部材3は、左部材31と右部材32となる同一構成の樹脂成形品を用いている。連結部材3の上面に形成されている車輪載置部34には、車輪の最下端が載置される。そこで、車輪載置部34は、車輪がその転がり方向において安定載置されるように前後方向に適宜の長さにわたって形成され、前後方向の中間部は凹形状または車輪の最下端が当たらない孔あき形状とされている。この構造により、車輪の外周を前後の2か所で下方から支持する。
【0048】
左部材31は2本の脚部312を有し、右部材32も2本の脚部322を有し、連結部材3全体としては4本の脚部312,322を有する。自転車用スタンド1と車輪10の荷重を広い面積に分散して安定化させるため、これらの4本の脚部312,322は、四方の外向きに設けられている。
【0049】
この変形例の自転車用スタンド1においては、図5(a)(b)に示した車輪載置部34の構成と同様の構成を有している。例えば、前後に長い車輪載置部34の前後の両端部に、図5(a)(b)に示した、車輪が載置されてない状態では円弧状の大径凹部となり、車輪が載置された状態では大径凹部よりも小さな曲率半径を有する小径凹部となる構成を備えればよい。
【0050】
また、車輪載置部34の他の構成として、前後に長い車輪載置部34の両端部は、車輪10の荷重を受けることを主たる目的とする構成とし、車輪載置部34の前後方向の中央に、車輪10の荷重を受けずに左右揺動を抑えることを主たる目的として、タイヤ10aを左右から挟むだけの構成を設けてもよい。このような車輪載置部34の構成は、前後の両端部で下から車輪の荷重を受ける機能と、前後の中央部で左右から車輪の左右揺動を抑える機能とを、異なる部位で分担する構成であり、設計上の自由度があり、形状の異なるより多くの種類の車輪を支持できる自転車用スタンド1を実現できる。例えば、前後の中央部で左右から車輪の左右揺動を抑えるための構造は、タイヤ10aの直径に合わせたアール形状を有する必要がなく、タイヤ10aの幅寸法にかかわらず、左右からタイヤ10aに当接する構造とすることができ、例えば、単純な平面計上で、タイヤ10aを挟む構造とすることができる。
【0051】
このような変形例の自転車用スタンド1によれば、コンパクトな構成とすることができ、また、部品点数を減らすことができる。例えば、単一の連結部材3によって構成されているので、柱部材21の回転を防止する構造は不要である。枠体2の形状は、例えば、車輪10のスポーク部分を左右から挟んで支持できる適宜の前後方向の幅があればよい。また、枠体2は、板状部材であってもよい。本発明は、上記の図1から図7を参照して説明した実施形態や変形例の構成に限られることなく種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 自転車用スタンド
10 車輪
10a タイヤ
2 枠体
3 連結部材
31 左部材
32 右部材
311,321 柱部
312,322 脚部
313,323 腕部
314,324 傾斜部
33 ヒンジ部
34 車輪載置部
34a 大径凹部(大径の円弧形状)
34b 小径凹部(小径の円弧形状、揺動規制凹部)
3a ヒンジ軸部品
35 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8