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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062983
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】仮想鉄塔表示システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20230427BHJP
【FI】
G06T19/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173202
(22)【出願日】2021-10-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】八尾 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】牛本 卓二
(72)【発明者】
【氏名】相川 実
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茜
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA07
5B050BA06
5B050BA09
5B050BA11
5B050CA07
5B050CA08
5B050DA07
5B050EA04
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA05
(57)【要約】
【課題】鉄塔の建設予定場所の風景画像と仮想鉄塔オブジェクトの合成画像の修正が行いやすい仮想鉄塔表示システムを提供する。
【解決手段】携帯端末10は、鉄塔の大きさを含む属性情報及び鉄塔の建設予定位置情報の変更が可能に記憶するストレージ40と、鉄塔の建設予定の場所を含む現実の風景画像を取得する撮像部50を備える。携帯端末10は、現実の風景画像の取得時の撮像部50の位置を取得する位置取得部90と、現実の風景画像の取得時の撮像部50の向いた方位角を取得する方位角取得部23を備える。携帯端末10は、風景画像取得部の位置と、鉄塔の建設予定位置情報と、鉄塔の属性情報に基づいて作成部24が作成する。表示部60は建設予定位置情報、及び方位角を基準にして、仮想鉄塔オブジェクトを風景画像と重畳して表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の大きさを含む情報(以下、属性情報という)、及び前記鉄塔の建設予定位置情報の変更が可能に記憶する記憶部と、前記鉄塔の建設予定の場所を含む現実の風景画像を取得する風景画像取得部と、前記現実の風景画像の取得時の前記風景画像取得部の位置を取得する位置情報取得部と、前記現実の風景画像の取得時の前記風景画像取得部の向いた方位角を取得する方位角取得部と、前記風景画像取得部の位置と、前記建設予定位置情報と、前記属性情報に基づいて仮想鉄塔オブジェクトを作成する作成部と、前記建設予定位置情報、及び前記方位角を基準にして、前記仮想鉄塔オブジェクトを前記風景画像と重畳して表示する表示部と、を備える仮想鉄塔表示システム。
【請求項2】
前記仮想鉄塔オブジェクトは骨組で構成されていて、骨組間がシースルーである請求項1に記載の仮想鉄塔表示システム。
【請求項3】
前記風景画像取得部のロールまたはピッチの少なくともいずれか一方の回転を検出する検出部を備え、
前記表示部は、前記検出部の回転の検出に応じて表示の向きを変更する請求項1または請求項2に記載の仮想鉄塔表示システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記風景画像と重畳して表示する表示画面に設けられた第1入力操作部を有し、
前記第1入力操作部は、前記表示画面上に沿って移動操作されることに応じて、前記建設予定位置情報が変更されて入力されるものである請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の仮想鉄塔表示システム。
【請求項5】
前記仮想鉄塔オブジェクトの向きを操作する第2入力操作部を有し、
前記表示部は、前記第2入力操作部による前記仮想鉄塔オブジェクトの向きの変更に応じて、向きを変更した前記仮想鉄塔オブジェクトを前記風景画像と重畳して表示する請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の仮想鉄塔表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想鉄塔表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔を建設する際、鉄塔建設後の景観を確認するため、建設予定場所の風景画像と地図情報から合成画像を作成する手法があるが、時間と手間を要している。
特許文献1は、本件出願時の拡張現実システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-200519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記合成画像の鉄塔建設位置を変更したい場合、合成画像を再作成することがある。しかしながら、この合成画像の作成には、手間を要している。
なお、特許文献1で開示された拡張現実システムを利用して、再合成画像を作成することも考えられる。しかし、鉄塔のモデル画像の場合、鉄塔本体や、その配置位置の修正が含まれる場合もあり、特許文献1で開示されている拡張現実技術を単に利用することは難しい。
【0005】
本発明の目的は、鉄塔の建設予定場所の風景画像と仮想鉄塔オブジェクトの合成画像の修正が行いやすい仮想鉄塔表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明の仮想鉄塔表示システムは、鉄塔の大きさを含む情報(以下、属性情報という)、及び前記鉄塔の建設予定位置情報を変更が可能に記憶する記憶部と、前記鉄塔の建設予定の場所を含む現実の風景画像を取得する風景画像取得部と、前記現実の風景画像の取得時の前記風景画像取得部の位置を取得する位置情報取得部と、前記現実の風景画像の取得時の前記風景画像取得部の向いた方位角を取得する方位角取得部と、前記風景画像取得部の位置と、前記建設予定位置情報と、前記属性情報に基づいて前記仮想鉄塔オブジェクトを作成する作成部と、前記建設予定位置情報、及び前記方位角を基準にして、前記仮想鉄塔オブジェクトを前記風景画像と重畳して表示する表示部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、表示部は、鉄塔の建設予定の場所の風景画像と仮想鉄塔オブジェクトを重畳して表示する。この場合、記憶部が記憶する鉄塔の属性情報等が変更された場合、変更されたデータ等により、仮想鉄塔オブジェクトと風景画像との合成画像が作成されて表示部に表示される。
【0008】
また、前記仮想鉄塔オブジェクトは骨組で構成されていて、骨組間がシースルーであることが好ましい。
上記構成により、仮想鉄塔オブジェクトにおける骨組間の風景を、シースルーで見ることができる。
【0009】
また、前記風景画像取得部のロールまたはピッチの少なくともいずれか一方の回転を検出する検出部を備え、前記表示部は、前記検出部の回転の検出に応じて表示変更されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、風景画像取得部がロールまたはピッチの少なくともいずれか一方の回転した場合においても、前記表示部は、前記検出部の回転の検出に応じて風景画像と仮想鉄塔オブジェクトとの合成画像の表示変更ができる。
【0011】
また、前記表示部は、前記風景画像と重畳して表示する表示画面に設けられた第1入力操作部を有し、前記第1入力操作部は、前記表示画面上に沿って移動操作されることに応じて、前記建設予定位置情報が変更されて入力されるものとしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、表示画面上に沿って移動操作されることにより、第1入力操作部を介して、鉄塔の建設予定位置情報を容易に変更できる。
また、前記仮想鉄塔オブジェクトの向きを操作する第2入力操作部を有し、前記表示部は、前記第2入力操作部による前記仮想鉄塔オブジェクトの向きの変更に応じて、向きを変更した前記仮想鉄塔オブジェクトを前記風景画像と重畳して表示してもよい。
【0013】
上記構成によれば、風景画像と、向きが変更された仮想鉄塔オブジェクトとの合成画像を容易に表示できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、仮想鉄塔オブジェクトの属性情報や鉄塔の建設予定の場所が変更された場合においても、風景画像と仮想鉄塔オブジェクトとの合成画像の修正が容易に行われて表示できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の仮想鉄塔表示システムの全体構成図。
図2】仮想鉄塔オブジェクト合成プログラムが実行される際のフローチャート。
図3】仮想鉄塔オブジェクト合成プログラムが実行される際のフローチャート。
図4】鉄塔モデルと携帯端末の位置関係を示す説明図。
図5】鉄塔モデルと表示画面の位置関係を示す説明図。
図6】鉄塔の建設予定の場所の風景画像。
図7】鉄塔の建設予定の場所の風景画像と仮想鉄塔オブジェクトの合成画像。
図8】鉄塔の建設予定の場所に近接して撮像部の向きを斜め上向きとしたときの風景画像と仮想鉄塔オブジェクトの合成画像。
図9】鉄塔の建設予定の場所の風景画像と仮想鉄塔オブジェクトの合成画像。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態の仮想鉄塔表示システムを図1図9を参照して説明する。
図1に示すように、仮想鉄塔表示システム(以下、単にシステムという)は、携帯端末10からなる。携帯端末10は、スマートフォン、タブレット型、或いはウエアラブル型の端末であってもよい。ウエアラブル型の端末は、例えば眼鏡型、ヘッドマウント型等があるが、限定するものではない。
【0017】
携帯端末10は、コンピュータからなる。携帯端末10は、現実の鉄塔の建設予定の場所の風景を撮影する撮影機能と、取得された風景画像に仮想鉄塔オブジェクトKを重畳みした合成画像、すなわち、拡張現実空間を表す拡張現実空間画像を表示する表示機能を有している。
【0018】
仮想鉄塔オブジェクトKは、実際には現実空間には存在しないが、鉄塔の建設予定の場所の風景画像に重畳して合成画像が作成されることにより、あたかも鉄塔の建設予定の場所に存在するかのような印象を携帯端末10を見る者に与える。
【0019】
図1に示すように、携帯端末10は、制御部20、主記憶部30、ストレージ40、撮像部50、表示部60、タッチパネル70、センサ80、位置取得部90、及び通信部100を備える。
【0020】
制御部20は、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。制御部20は、CPU等からなる。制御部20は、後述する仮想鉄塔オブジェクト合成プログラムを実行することにより、自己位置推定部21、平面推定部22、方位角取得部23、作成部24及び表示制御部25等の機能を有する。
【0021】
主記憶部30は、携帯端末10を実現させるためのプログラム、制御部20から出力された演算結果等を記憶する。主記憶部30は、例えばROM又はRAM等により構成されている。ストレージ40は、主記憶部30よりも大量のデータを記憶することが可能な装置であって、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体によって構成されている。ストレージ40は、データの変更が可能、すなわち、書換可能である。ストレージ40は記憶部に相当する。
【0022】
ストレージ40は、仮想鉄塔オブジェクト合成プログラム、及び各種のデータとを記憶する。各種のデータとしては、鉄塔の大きさ、並びに、鉄塔の建設予定の場所の、緯度、及び経度(以下、建設予定位置情報という)である。鉄塔の大きさのデータは、鉄塔の属性情報に相当する。鉄塔は、送電線を支えるものであり、例えば、送電線が直線部分の鉄塔は「懸垂型」、送電線に角度がついた鉄塔は「耐張型」等の各種の鉄塔がある。鉄塔の大きさは、図4に示すように、高さh、根開きB等がある。本実施形態では、鉄塔の大きさは、高さh、根開きBとしているが、鉄塔の形状に応じて鉄塔を構成している部分の長さ等を含めてもよい。
【0023】
また、ストレージ40には、前記鉄塔の大きさに基づいて、骨組構造を有する各種の鉄塔モデルが記憶されている。前記鉄塔モデルは、三次元モデルであって、骨組構造を有していて、骨組間がシースルーとなっている。この鉄塔モデルは、クローズドポリゴン、或いはソリッドモデルが好ましい。この鉄塔モデルに基づいて、後述する仮想鉄塔オブジェクトKが作成される。仮想鉄塔オブジェクトKの色は、鉄塔が建設されたときの色が好ましいが、限定するものではない。
【0024】
撮像部50は、現実空間、すなわち、鉄塔の建設予定の場所の風景を撮像する装置である。撮像部50は、デジタルカメラからなる。撮像部50は単眼カメラでもよく、或いはステレオカメラでもよい。本実施形態では、撮像部50は単眼カメラである。撮像部50は、風景画像取得部に相当する。
【0025】
表示部60は、液晶表示装置等からなる。表示部60は、撮像部50により撮像された鉄塔の建設予定の場所の風景と仮想鉄塔オブジェクトKを含む拡張現実空間を表す合成画像を表示する。また、表示部60は、後述するタッチパネル70がタッチ操作を検出して、その検出時のコマンドに応じて制御部20が処理した結果を出力する出力インタフェースでもある。
【0026】
タッチパネル70は、表示部60の表示画面62上に設けられていて、ユーザの操作を受け付ける入力インタフェースである。タッチパネル70は、ユーザによるタップ操作、スワイプ操作、マルチタッチ操作等のタッチ操作を検出する。
【0027】
また、タッチパネル70は、表示画面62が設定モードとなっているときは、表示部60の表示画面62上にデータ入力領域が表示されて、前記データ入力領域に、前記鉄塔の大きさデータ、並びに、鉄塔の建設予定位置情報の入力が可能となっている。入力されたデータ等はストレージ40に記憶される。また、一旦、ストレージ40に記憶されたデータ、建設予定位置情報の書換も、この設定モードにおける入力操作により可能となっている。タッチパネル70にて入力された前記鉄塔の大きさ、並びに、鉄塔の建設予定位置情報は、前記ストレージ40に記憶される。鉄塔の建設予定位置情報は、具体的には、経度及び緯度である。
【0028】
センサ80は、携帯端末10の移動方向、移動量(変位量)、並びに、撮像部50が撮像時に向いた方位角θを検出するためのセンサである。センサ80は、地磁気センサ、ジャイロセンサ、及び加速度センサを含む。前記ジャイロセンサ及び加速度センサは慣性計測装置である。ジャイロセンサは、検出部に相当する。
【0029】
位置取得部90は、現実世界における携帯端末10の座標位置を取得するモジュールである。位置取得部90は、図示しない測位衛星用アンテナを介して測位衛星Stからの測位情報を含む信号を入力する。なお、測位衛星Stは、全球測位衛星システム(GNSS)の衛星であって、米国の全地球測位システム(GPS)、欧州連合(EU)の「ガリレオ」、ロシアの「グロナス」、中国の「北斗」、日本の「準天頂衛星」等を含む。
【0030】
位置取得部90は、携帯端末10が位置する緯度、経度を演算して携帯端末10の現在位置A(図4参照)を取得する。位置取得部90は、位置情報取得部に相当する。
通信部100は、通信ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータ通信が可能である。通信部100は、無線通信モジュール等により構成されている。
【0031】
(実施形態の作用)
次に、上記したシステムの作用を、図2及び図3のフローチャートを参照して説明する。図2及び図3は、仮想鉄塔オブジェクト合成プログラムが実行されているときのフローチャートである。ここでは、鉄塔の建設予定場所から離間した位置で、その鉄塔の建設予定の場所に撮像部50を向けて携帯端末10を移動しながら、撮像して風景画像を取得する。
【0032】
(S10)
このステップは、初期値取得の処理が制御部20によって行われる。図3は、初期値取得の処理のフローチャートである。
【0033】
(S11)
まず、携帯端末10を建設予定の場所が見通せる場所において、撮像部50にて、建設予定の場所を含めて複数箇所撮像する。動画撮像において、1フレーム毎に、携帯端末10の位置取得部90は、この間、測位衛星Stからの測位情報に基づいて、携帯端末10の現在位置A、すなわち、緯度、経度を取得するとともに、センサ80の地磁気センサにて、磁北を検出する。
【0034】
そして、方位角取得部23は、この磁北に基づいて、真北を算出する。すなわち、地磁気センサが検出した磁北は、真北とは、場所により異なる偏角が存在するため、方位角取得部23は、ストレージ40に記憶した偏角テーブルに基づいて、「真北=磁北+偏角テーブル値」により真北を算出する。
【0035】
次に、方位角取得部23は、ジャイロセンサの検出値に基づいて、方位角θを算出する。方位角θは、携帯端末10の撮像部50が、撮像するときの向きであり、仮想平面上における真北との成す角度である。上記携帯端末10の現在位置Aの取得、真北の取得、方位角θの取得は、S11のステップのみならず、撮像部50が風景を撮像した1フレームの画像毎に行われている。
【0036】
そして、S11では、自己位置推定部21により自己位置推定が行われる。具体的には、自己位置推定部21は、撮像部50が撮像した風景画像に基づいて、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)の方法により自己位置推定を行う。すなわち、画像内の特徴点を検出し、検出した特徴点を用いて三角視差測量を行って自己位置の変化を算出する。そして、加速度センサ、及びジャイロセンサの慣性計測装置からの慣性測定に基づいて、時間とともに、どのように位置と撮像部50が向いた方向が変化したかを推定する。なお、「Visual SLAM」の方法による自己位置の推定は、公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0037】
(S12)
S12では、平面推定部22は、前記特徴点の点群に基づいて、公知のRANSAC(random sample consensus)の方法により、地表面(水平面)を推定する。この地表面は、携帯端末10と、鉄塔の建設予定の場所とが同じ高さの地表面であることを前提としている。
【0038】
RANSACの方法は、概略すると下記の(1)~(3)のように行われる。
(1)地表面の仮のモデル(今回の場合は水平面の式)を決定するのに必要な数のデータを特徴点の点群の中からランダムにサンプリングを行う。
【0039】
(2)所定基準で前記仮のモデルに合うデータがデータ群の中にいくつあるかを数える。
(3)上記(1)及び(2)の処理を繰り返す。
【0040】
そして、(2)で数えた数が一番多かった仮のモデルを採用する。
(4)そして、仮のモデル(水平面の式)で表される水平面をX,Y軸として、点群のZ軸の値を最小にするよう公知の最小二乗法で点群集の重心となる水平面に最適化する。
【0041】
(S13)
S13では、使用者は、タッチパネル70にて表示部60の表示画面62を設定モードにして、データ入力領域を表示させる。そして、使用者は、データ入力領域に、タッチ操作することにより、鉄塔の大きさデータ、並びに、鉄塔の建設予定位置情報の入力を行う。建設予定位置情報は、本実施形態では、緯度及び経度である。なお、本実施形態では、仮想鉄塔オブジェクトKのモデルの形状は、大きさデータが入力されると、一義的にその形状が決定されるものとなっている。
【0042】
タッチパネル70で入力された鉄塔の大きさデータ、並びに、鉄塔の建設予定位置情報は、ストレージ40に記憶される。このストレージ40に、鉄塔の大きさデータ、及び鉄塔の建設予定位置情報が記憶される際、同時に、仮想鉄塔オブジェクトKの回転角は、所定角度に設定される。所定角度は、例えば0度であるが、この角度に限定するものではない。回転角は、仮想鉄塔オブジェクトKが表示画面62に表示される場合に、見る側に向けられた仮想鉄塔オブジェクトKの向きである。この回転角は、後述する操作により、仮想鉄塔の高さ方向に延びる軸心を回転軸とした角度である。例えば、所定の側面が向いたときを正面とした場合において、その正面側が向いている場合を0度とする。なお、このS13のステップは、S11のステップの前のステップにして行ってもよい。
【0043】
S13で入力された鉄塔の建設予定位置情報は、具体的には、緯度及び経度である。この値は、鉄塔の初期座標である。前記初期座標、及び回転角は、初期値に相当する。
(S20)
次に、S20について説明する前に、表示画面62の説明を図6図9を参照して説明する。
【0044】
図6図9に示すように、仮想鉄塔オブジェクト合成プログラムが実行された場合、表示部60の表示画面62には、仮想鉄塔オブジェクトKの回転角、及び位置を変更するためのソフトウエアキー群110が表示される。ソフトウエアキー群110は、左右の方向を向いた矢印キー110a、110b及び上下の方向を向いた矢印キー110c、110d、並びに、矢印キー110a~110dをそれぞれ十字位置に位置させた二重リング円状の回転角操作キー110eからなる。
【0045】
矢印キー110a、110bは、押圧操作されている時間の間、仮想鉄塔オブジェクトKを表示画面62において、押圧操作される直前の表示位置を基準にして左方向または右方向へ移動させるコマンドキーとなっている。矢印キー110c、110dは、押圧操作されている時間の間、仮想鉄塔オブジェクトKを表示画面62において、押圧操作される直前の表示位置を基準にして画面上の奥の方向または手前方向へ移動させるコマンドキーとなっている。
【0046】
さらに、二重リング円状の領域において相互に隣接する矢印キー間は、押圧されると、前述した矢印キーがそれぞれ押圧された場合に移動する方向の中間の方向へ、表示画面62上において、仮想鉄塔オブジェクトKを移動させるコマンドキーとなる。
【0047】
矢印キー110a~110d、及び二重リング円状の領域において、矢印キー110a~110d間の相互に隣接する領域は、第1入力操作部に相当する。第1入力操作部は、表示画面62上に表示された矢印キー110a~110d、及び二重リング円状の領域に相対したタッチパネル70の部位を操作されることにより、機能するソフトキーとなっている。
【0048】
二重リング円状の回転角操作キー110eは、図6図9において、時計回り方向、または反時計回り方向へスワイプ操作した場合、スワイプ操作される直前の表示位置を基準にして、仮想鉄塔オブジェクトKの回転角を変更させるコマンドキーとなっている。本実施形態では、このスワイプ操作により、360度の仮想鉄塔オブジェクトKの回転角を変更させることが可能である。なお、スワイプ操作による仮想鉄塔オブジェクトKの回転角は、360度に限定するものではなく、他の角度であってもよい。回転角操作キー110eは、第2入力操作部に相当する。第2入力操作部は、表示画面62上に表示された二重リング円状の回転角操作キー110eの領域に相対したタッチパネル70の部位が操作されることにより、機能するソフトキーとなっている。
【0049】
図2のS20では、上記したソフトウエアキー群110のいずれかが操作されたか否かを制御部20が判定する。
ソフトウエアキー群110が操作されたか否か、すなわち、仮想鉄塔オブジェクトKの位置等の変更があるか否かを判定する。ソフトウエアキー群110が操作されていない場合は、仮想鉄塔オブジェクトKに変更はないとしてS30に移行し、変更がある場合は、S40に移行する。
【0050】
(S30)
S30は、仮想鉄塔オブジェクトKの初期値(初期座標、及び回転角)、及び、携帯端末10(撮像部50)が取得している各種データに基づいて表示画面62上における1フレーム毎の仮想鉄塔オブジェクトKが作成されるステップである。また、同ステップでは、前記仮想鉄塔オブジェクトKと、1フレーム毎の風景画像とが重畳されて表示される。以下、詳説する。
【0051】
まず、図4に示すように、作成部24は、携帯端末10(撮像部50)の前記地表面上の現在位置Aから、目標位置Tに向けての真北からの「方位角θ+α」方向に、実際の大きさの仮想鉄塔オブジェクトK0を立てた場合を1フレーム毎に想定する。目標位置Tは、鉄塔の建設予定の場所である。現在位置Aは(x1,y1,z1)の座標である。目標位置Tは、(xt,yt,zt)の座標である。なお、x軸、y軸、z軸は、視点を原点にした左手系である。z軸は、初期の携帯端末10の向きである。
【0052】
ここで、方位角θは、携帯端末10の地磁気センサを通過する基準点を通過して真北を指向する軸と、前記基準点を通過して初期座標を指向する軸との成す角度である。図4では、前記基準点は、携帯端末10の表示画面領域の中央点としている。
【0053】
図4において、前記初期座標を指向する軸の方向の真北からの方位角θは、S10の処理を行ったときにおいて、撮像部50の向いた方向を示している。また、αは、S30の処理が開始されたときの最初のフレームにおいて、鉄塔の建設予定の場所の目標位置Tと、前記初期座標を指向する軸との成す角度である。
【0054】
図5に示すように、作成部24は、「方位角θ+α」方向に位置する実際の大きさの仮想鉄塔オブジェクトK0の三次元座標を、表示画面62を投影面とした仮想鉄塔オブジェクトKの二次元座標に座標変換する。この座標変換は、例えば、視点と、実際の大きさの仮想鉄塔オブジェクトK0との間に、表示画面62を置いた場合において、表示画面62に投影される仮想鉄塔オブジェクトKの二次元座標を透視投影法によって算出する。なお、透視投影法に限定するものではなく、他の方法であってもよい。
【0055】
表示制御部25は、作成部24が二次元座標に変換した仮想鉄塔オブジェクトKを1フレーム毎の風景画像に重畳して表示画面62に表示する。
また、携帯端末10のロールまたはピッチの少なくとも一方が回転された場合、ジャイロセンサでそのときの傾き(向き)を取得する。表示制御部25は、その傾き(向き)に応じて、作成部24が作成した仮想鉄塔オブジェクトKを1フレーム毎の風景画像に重畳して表示画面62に表示する。
【0056】
また、携帯端末10が移動して撮像しているときは、加速度センサにて、その移動が検出されるとともに、移動方向は、ジャイロセンサにて検出される。この移動にともない、目標位置Tの表示画面62上の相対移動がある。表示制御部25は、その相対移動量が表示画面62上では加算または減算した状態で、作成部24が作成した仮想鉄塔オブジェクトKを1フレーム毎の風景画像に重畳して表示画面62に表示する。この1フレームにおける処理が終了すると、S50に移行する。
【0057】
(S40)
S40に移行すると、S30と同様に、「方位角θ+α」方向に位置する実際の大きさの仮想鉄塔オブジェクトK0の三次元座標を、表示画面62を投影面とした仮想鉄塔オブジェクトKの二次元座標に座標変換する。この座標変換は、透視投影法による。
【0058】
そして、表示制御部25は、矢印キー110a、または矢印キー110bが操作されている場合には、押圧操作されている時間の間、仮想鉄塔オブジェクトKを表示画面62において、押圧操作される直前の表示位置を基準にして左方向または右方向へ移動させる。
【0059】
表示制御部25は、矢印キー110c、または矢印キー110dが操作されている場合、押圧操作されている時間の間、仮想鉄塔オブジェクトKを表示画面62において、押圧操作される直前の表示位置を基準にして画面上の奥の方向または手前方向へ移動させる。
【0060】
また、二重リング円状の領域において、相互に隣接する矢印キー間が操作されている場合は、押圧操作されている時間の間、表示制御部25は、前述した矢印キーがそれぞれ押圧された場合に移動する方向の中間の方向へ仮想鉄塔オブジェクトKを移動させる。
【0061】
また、回転角操作キー110eが、その上を、図6図9において、時計回り方向、または反時計回り方向へスワイプ操作された場合、スワイプ操作される直前の表示位置を基準にして、表示制御部25は、仮想鉄塔オブジェクトKの回転角を変更させる。この場合、仮想鉄塔オブジェクトKは、高さ方向に延びる中心軸を回転中心にして回転されて、表示画面62を見る者に対してその向きが変更される。前記各種のキー操作が終了した場合には、S50に移行する。
【0062】
(S50)
S50では、携帯端末10に設けられた図示しない終了ボタンが操作されたか否かを判定し、操作されていない場合には、S20に戻る。
【0063】
図6は、表示画面62に、鉄塔の建設予定の場所を撮像部50で撮像した風景画像を表示した図である。図7は、図6と同じ鉄塔の建設予定の場所の風景画像と仮想鉄塔オブジェクトKの合成画像を表示した図である。図7に示すように、鉄塔の建設予定の場所の風景と仮想鉄塔オブジェクトKとの合成画像を表示画面62に表示することにより、鉄塔を建設した場合の景観の状況を提示することができることになる。
【0064】
図8は、携帯端末10を鉄塔の建設予定の場所に近づいて、鉄塔を見上げるように撮像部50を上向きにした場合に、表示画面62上で表示された仮想鉄塔オブジェクトKの例が示されている。このようにして、仮想鉄塔オブジェクトKを表示した仮想現実空間を得ることができる。
【0065】
図9は、2つの鉄塔建設予定場所を含む風景画像と2つの仮想鉄塔オブジェクトKの合成画像を表示画面62に表示した例である。同図に示すように、複数の仮想鉄塔オブジェクトKと風景画像が合成された仮想現実空間を得ることも可能である。
【0066】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の携帯端末10は、鉄塔の大きさを含む情報(属性情報)、及び鉄塔の建設予定位置情報の変更が可能に記憶するストレージ40(記憶部)と、鉄塔の建設予定の場所を含む現実の風景画像を取得する撮像部50(風景画像取得部)を備える。携帯端末10は、現実の風景画像の取得時の撮像部50(風景画像取得部)の位置を取得する位置取得部90(位置情報取得部)と、現実の風景画像の取得時の撮像部50の向いた方位角θを取得する方位角取得部23を備えている。携帯端末10は、風景画像取得部の位置と、鉄塔の建設予定位置情報と、鉄塔の属性情報に基づいて仮想鉄塔オブジェクトKを作成する作成部24を備えている。携帯端末10は、建設予定位置情報、及び方位角θを基準にして、仮想鉄塔オブジェクトKを風景画像と重畳して表示する表示部60を備える。
【0067】
この結果、表示部60は、鉄塔の建設予定の場所の風景画像と仮想鉄塔オブジェクトKを重畳して表示する。この場合、ストレージ40(記憶部)が記憶する仮想鉄塔オブジェクトKの属性情報や鉄塔の建設予定の場所の少なくともいずれか一方が変更された場合も、風景画像と仮想鉄塔オブジェクトKとの合成画像の変更が容易に行われて表示できる。
【0068】
(2)本実施形態の携帯端末10では、仮想鉄塔オブジェクトKが骨組で構成されていて、骨組間がシースルーとしている。この結果、仮想鉄塔オブジェクトKにおける骨組間の風景を、シースルーで見ることができる。
【0069】
(3)本実施形態の携帯端末10は、風景画像取得部のロールまたはピッチの少なくともいずれか一方の回転を検出するジャイロセンサ(検出部)を備えて、前記表示部が前記検出部の回転の検出に応じて表示変更するようにしている。
【0070】
上記構成によって、風景画像取得部がロールまたはピッチの少なくともいずれか一方の回転した場合においても、センサ80のジャイロセンサの回転の検出に応じて表示部60は、風景画像と仮想鉄塔オブジェクトKとの合成画像の表示変更ができる。
【0071】
(4)本実施形態の携帯端末10の表示部60は、表示画面62に設けられた矢印キー110a~110d、及び二重リング円状の領域において、矢印キー110a~110d間の相互に隣接する領域(第1入力操作部)を有する。これら矢印キー等が、表示画面62上に沿って移動操作されることに応じて、鉄塔の建設予定位置情報が変更されて入力される。上記構成によれば、表示画面62上に沿って移動操作されることにより、これら矢印キー等を介して、鉄塔の建設予定位置情報を容易に変更できる。
【0072】
(5)本実施形態の携帯端末10は、仮想鉄塔オブジェクトKの向きを操作する回転角操作キー110e(第2入力操作部)を有する。表示部60は、回転角操作キー110eによる仮想鉄塔オブジェクトKの向きの変更に応じて、向きを変更した仮想鉄塔オブジェクトKを風景画像と重畳して表示するようにしている。
【0073】
この結果、風景画像と、向きが変更された仮想鉄塔オブジェクトとの合成画像を容易に表示できる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
【0074】
本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・前記実施形態では、ストレージ40には、タッチパネル70にて入力された鉄塔の大きさに関するデータが記憶されるようにした。これに代えて、外部のサーバから、通信部100及びインターネット等の通信ネットワークを介して、予めダウンロードされることにより、記憶されていてもよい。また、鉄塔の大きさに関するデータのストレージ40への記憶方法は、これらに限定するものではなく、さらに他の方法であってもよい。
【0075】
・前記実施形態の属性情報は、鉄塔の大きさとしたが、大きさと形状をそれぞれ独立したデータとしてもよい。この場合、形状は、鉄塔の種類に応じて各種のモデルが用意され、それぞれの種類毎に大きさデータとリンク付けするものとする。
【0076】
・前記実施形態では、データの入力をタッチパネル70で行うようにしたが、タッチパネル70に限定されることなく、データの入力をキーボード等の他の入力装置で行ってもよい。タッチパネル70、キーボード等は入力部に相当する。
【0077】
・前記実施形態では、携帯端末10が位置する地表面を推定して、その地表面を基準に、仮想鉄塔オブジェクトKと風景画像との合成画像を表示するようにした。これに代えて、下記のようにしてもよい。
【0078】
位置取得部90は、複数(4つ以上)の測位衛星Stからの測位情報に基づいて、携帯端末10の現在の位置、すなわち、緯度、経度、及び高度を算出する。なお、前記高度は、WGS84という測地系で決められた回転楕円体上での値であって、標高ではない。標高は、ジオイド面からの高さであるため、位置取得部90は、算出された緯度及び経度が含まれるジオイドデータに基づいて当該位置におけるジオイド高を求め、当該位置における標高を、「標高=回転楕円体上での高度-ジオイド高」を算出する。
【0079】
なお、前記ジオイドデータは、ストレージ40に記憶するようにする。ジオイドデータは、全地球を、例えば100kmタイルにした、ジオイドモデルにおいて、各タイル毎にジオイド高が記述されている。このようにすると、携帯端末10が位置する場所の地表面の高度を求めることができる。また、鉄塔の建設予定場所の地表面の高度は、既知の地図データから予め求めることができる。この両者の地表面の高度を基準に、仮想鉄塔オブジェクトKと風景画像との合成画像を携帯端末10(システム)で作成して表示するようにしてもよい。
【0080】
この変形例の場合、鉄塔の建設予定位置情報は、具体的には、経度、緯度及び高度である。
・前記実施形態では、合成画像を携帯端末10の表示部60の表示画面62に表示したが、表示画面62の代わりに、図1に示すウエアラブル端末200に送信して、ウエアラブル端末200の画面に表示するようにしてもよい。図1では、ウエアラブル型の端末として眼鏡型が示されている。
【0081】
・前記実施形態では、第1入力操作部及び第2入力操作部をソフトウエアキーとした。第1入力操作部及び第2入力操作部は、ソフトウエアキーに限定されるものではなく、ハードキーに変更してもよい。前記ハードキーは、例えば、携帯端末10の表示部60とは別体化した入力装置に設けてもよく、或いは、表示部を搭載するケースとは別体のケースに設けてもよい。
【0082】
・前記実施形態では、ジャイロセンサにより、風景画像取得部のロールまたはピッチの少なくともいずれか一方を検出するようにした。これに代えて、ジャイロセンサにより、風景画像取得部のロールまたはピッチのいずれか一方のみを検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…携帯端末(システム)
20…制御部
21…自己位置推定部
22…平面推定部
23…方位角取得部
24…作成部
25…表示制御部
30…主記憶部
40…ストレージ(記憶部)
50…撮像部
60…表示部
62…表示画面
70…タッチパネル
80…センサ
90…位置取得部
100…通信部
110a…矢印キー(第1入力操作部)
110b…矢印キー(第1入力操作部)
110c…矢印キー(第1入力操作部)
110d…矢印キー(第1入力操作部)
110e…回転角操作キー(第2入力操作部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9