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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063000
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】インゴット供給装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/28 20060101AFI20230427BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20230427BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20230427BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B22D17/28 A
B22D45/00 Z
B22D46/00
F27D19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173227
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】513322693
【氏名又は名称】メイク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】幸重 裕治
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA05
4K056BB06
4K056CA04
4K056FA10
4K056FA17
(57)【要約】
【課題】 溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さ及び溶湯の温度を一定に維持することができるインゴット供給装置を提供する。
【解決手段】 インゴット供給装置は、ヒーターを有し金属を溶解させた溶湯を貯留する溶解保持炉に金属のインゴットを供給する。インゴット供給装置は、インゴットの一部を溶湯に浸漬するインゴット浸漬部と、溶湯の湯面に垂直な方向から溶湯の湯面に照射し、溶湯の湯面に反射された超音波を取得して湯面の現在の湯面高さを連続して測定する湯面高さ測定部と、制御部と、を有する。制御部は、湯面高さ測定部が測定した現在の湯面高さを連続して取得し、取得した現在の湯面高さが予め定められた基準湯面高さを維持するように、前記インゴットの一部を前記インゴット浸漬部によって前記溶湯に浸漬させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターを有し金属を溶解させた溶湯を貯留する溶解保持炉にインゴットを供給するインゴット供給装置であって、
前記インゴットを保持し、前記インゴットの一部を前記溶湯に浸漬するインゴット浸漬部と、
反射板を備え、発信回路によって連続して発信させた超音波を前記反射板によって反射して前記溶湯の湯面に垂直な方向から前記溶湯の湯面に照射し、前記溶湯の湯面に反射された前記超音波を取得し、取得した前記超音波に基づいて前記湯面の現在の湯面高さを連続して測定する湯面高さ測定部と、
測定された前記現在の湯面高さに基づいて前記インゴット浸漬部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記湯面高さ測定部が測定した前記現在の湯面高さを連続して取得し、取得した前記現在の湯面高さが予め定められた基準湯面高さを維持するように、前記インゴットの一部を前記インゴット浸漬部によって前記溶湯に浸漬させる、インゴット供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインゴット供給装置において、
前記湯面高さ測定部は、
前記溶解保持炉に対する前記反射板の位置を変更可能であるインゴット供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインゴット供給装置において、
前記湯面高さ測定部は、
前記溶湯の湯面に向けて、前記超音波のパルス波を連続して照射し、前記パルス波毎に前記現在の湯面高さを測定し、
前記制御部は、
所定期間内に前記湯面高さ測定部が測定した現在の湯面高さに基づいて平均湯面高さを算出し、算出した前記平均湯面高さが前記基準湯面高さを維持するように、前記インゴットの一部を前記インゴット浸漬部によって前記溶湯に浸漬させるインゴット供給装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のインゴット供給装置において、
前記制御部は、
前記基準湯面高さを変更可能である、インゴット供給装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のインゴット供給装置において、
前記湯面高さ測定部は、
前記発信回路から発信された前記超音波を前記反射板に向けて伝搬する導波管を有する、インゴット供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴット供給装置に関する。詳しくは、溶湯を保持する溶解保持炉に、金属のインゴットを供給するインゴット供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解保持炉は、金属のインゴットを溶解した溶湯を保持する。溶解保持炉が保持する溶湯は、鋳物の製造に用いられる。例えば、溶湯は、ダイカスト装置に給湯される。溶解保持炉の溶湯が減少した場合、インゴットが溶解保持炉に供給される。従来、溶解保持炉には、作業員が手作業でインゴットを投入したり、コンベアのようなインゴットを搬送する搬送装置によって、インゴットを投入したりしている。しかしながら、このような溶解保持炉へのインゴット投入方法は、作業の効率が悪く、インゴットの投入量を正確に制御できない問題があった。そこで、インゴットを自動で溶解保持炉に投入するインゴット投入装置が知られている。例えば特許文献1の如くである。特許文献1には、溶解保持炉にインゴットを自動供給するインゴット供給装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のインゴット供給装置は、予熱したマグネシウムインゴットを、予熱装置から溶解保持炉に供給する。インゴット供給装置は、インゴット供給手段を有する。インゴット供給手段は、予熱されたインゴットを把持して予熱されたインゴットを溶解保持炉内に供給する。特許文献1に記載のインゴット供給装置は、フロート式の湯面検出部を有する。前記湯面検出部は、溶湯に浮かんでいるフロートの位置によって溶面高さを検出する。前記湯面検出部は、溶湯の湯面高さの定量高さを検出するスイッチと浸漬開始高さを検出するスイッチと、を有する。前記インゴット供給装置は、前記湯面検出部の信号に基づいて、予熱したマグネシウムインゴットをインゴット供給手段によってマグネシウム溶湯に浸漬する。前記インゴット供給装置は、湯面が前記浸漬開始高さであることを検出すると湯面が前記定量高さになるまでインゴットの浸漬動作が続行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-160050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶湯が使用されると、溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さが低下する。また、溶湯に浮かぶ不要物の除去作業がなされた場合、溶湯の湯面高さが低下する場合がある。溶湯の湯面高さを回復するには、インゴットを供給する必要がある。インゴットを一度に多量に供給した場合、溶湯の温度が大きく低下し、溶湯の温度上昇を待たなくてはならない。溶湯の湯面高さを一定で維持することにより、溶湯の大きな温度変化を防ぐことができる。
【0006】
特許文献1に記載のインゴット供給装置は、湯面が浸漬開始高さに到達したことを検出すると、インゴットを供給する。よって、前記インゴット供給装置では、湯面高さが定量高さと浸漬開始高さとの間で変動する。更に、前記インゴット供給装置では、浸漬開始高さ以上であって定量高さ未満の場合、湯面高さを検出できない。つまり、前記インゴット供給装置では、リアルタイムに湯面高さを検出できない。また、前記インゴット供給装置では、浸漬開始高さにおいてのみインゴットを投入するので浸漬開始高さでの溶湯の温度変化が大きくなる。また、特許文献1に記載のインゴット供給装置は、湯面検出部のフロートが溶湯及び溶湯の浮遊物と直接接するので、非接触で検知する場合に比べ、フロートの動作不良が生じやすい。このように、特許文献1に記載のインゴット供給装置では、溶湯の湯面高さ及び溶湯の温度を安定的に一定の値に維持できない。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さ及び溶湯の温度を一定に維持することができるインゴット供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインゴット供給装置は、ヒーターを有し金属を溶解させた溶湯を貯留する溶解保持炉にインゴットを供給する。前記インゴット供給装置は、前記インゴットを保持し、前記インゴットの一部を前記溶湯に浸漬するインゴット浸漬部と、反射板を備え、発信回路によって連続して発信させた超音波を前記反射板によって反射して前記溶湯の湯面に垂直な方向から前記溶湯の湯面に照射し、前記溶湯の湯面に反射された前記超音波を取得し、取得した前記超音波に基づいて前記湯面の現在の湯面高さを連続して測定する湯面高さ測定部と、測定された前記現在の湯面高さに基づいて前記インゴット浸漬部を制御する制御部と、を有する。前記制御部は、前記湯面高さ測定部が測定した前記現在の湯面高さを連続して取得し、取得した前記現在の湯面高さが予め定められた基準湯面高さを維持するように、前記インゴットの一部を前記インゴット浸漬部によって前記溶湯に浸漬させる。
【0009】
このように構成することで、インゴット供給装置の湯面高さ測定部は、超音波を溶湯の湯面に連続して発信するので、連続して現在の湯面高さの測定が可能である。つまり、インゴット供給装置は、即時に湯面高さの変化を算出することができる。インゴット供給装置は、測定した現在の湯面高さが基準湯面高さよりも低くなると、直ちに、インゴットの浸漬を開始する。インゴットは、湯面高さが基準湯面高さに回復する分だけ浸漬される。つまり、インゴット供給装置は、溶湯の減少に連動して連続的にインゴットを浸漬する。よって、インゴット供給装置は、溶湯の温度が低下する程度のインゴットを一度に浸漬することがない。インゴット供給装置は、溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さ及び溶湯の温度を一定に維持できる。
【0010】
また、インゴット供給装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記湯面高さ測定部は、前記溶解保持炉に対する前記反射板の位置を変更可能である。
【0011】
このように構成することで、インゴット供給装置は、湯面の測定に適切な位置に超音波を照射することができる。また、湯面高さ測定部は、溶湯をくみ出す作業の邪魔にならない位置に配置される。これにより、インゴット供給装置は、溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さ及び溶湯の温度を一定に維持できる。
【0012】
また、インゴット供給装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記湯面高さ測定部は、前記溶湯の湯面に向けて、前記超音波のパルス波を連続して照射し、前記パルス波毎に前記現在の湯面高さを測定する。前記制御部は、所定期間内に前記湯面高さ測定部が測定した前記現在の湯面高さに基づいて、平均湯面高さを算出し、算出した前記平均湯面高が前記基準湯面高さを維持するように、前記インゴットの一部を前記インゴット浸漬部によって前記溶湯に浸漬させる。
【0013】
このように構成することで、インゴット供給装置は、湯面における超音波の照射範囲にスラグのような浮遊物があっても、測定した複数の前記現在の湯面高さに基づいて前記平均湯面高さを算出することにより、浮遊物に起因する誤差が軽減される。これにより、インゴット供給装置は、溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さ及び溶湯の温度を一定に維持できる。
【0014】
また、インゴット供給装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は前記基準湯面高さを変更可能である。このように構成することで、インゴット供給装置は、溶解保持炉が保持する溶湯量が、溶湯の使用量に応じた適切な溶湯量に維持される。これにより、インゴット供給装置は、溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さ及び溶湯の温度を一定に維持できる。
【0015】
また、インゴット供給装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記湯面高さ測定部は、発信回路から発信された前記超音波を前記反射板に向けて伝搬する導波管を有する。
【0016】
このように構成することで、導波管は、発信回路から導波管を通過するまでの間での超音波の拡散を抑える。反射板には、導波管によって拡散が抑えられた超音波が照射されるので、導波管を用いない場合に比べて、溶湯の湯面への超音波の照射範囲を狭くすることが可能である。溶湯の湯面における超音波の照射範囲は、導波管を用いない場合に比べて狭くなる。これにより、前記湯面高さ測定部の利得が向上する。よって、湯面高さ測定部は、現在の湯面高さを正確に測定できる。
【0017】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるので
あって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。他に定義されない限り、本明
細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分
野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0018】
以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または
説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、インゴット供給装置は、溶解保持炉が保持する溶湯の湯面高さが一定に維持されるように、インゴットを供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態1に係るインゴット供給装置の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係るインゴット供給装置のブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係る湯面高さセンサの一例を示す。
図4図4は、実施形態1に係るインゴット供給装置の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態1に係る現在の湯面高さの算出の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態1に係るインゴットの供給制御の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態1に係るインゴット供給装置の湯面高さを維持する制御の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態1に係るインゴット供給装置の湯面高さを維持する制御の一例を示す図である。
図9図9は、変形例1に係る湯面高さセンサ2の一例を示す図である。
図10図10は、変形例2に係るインゴット供給装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
図1から図4を用いて、実施形態1に係るインゴット供給装置1を説明する。図1は実施形態1に係るインゴット供給装置1の一例を示す図である。図2は、実施形態1に係るインゴット供給装置1のブロック図である。図3は、実施形態1に係る湯面高さセンサ2の一例を示す。図4は実施形態1に係るインゴット供給装置1の一例を示す図である。
【0022】
(溶解保持炉)
図1に示すように、溶解保持炉100は、アルミニウムのインゴットWrを溶解した溶湯Wlを貯留する炉である。溶解保持炉100が貯留する溶湯Wlは、図示しないダイカスト装置に給湯される。溶湯Wlは、柄杓を用いて、ダイカスト装置に給湯される。給湯作業は、作業員が柄杓で溶湯Wlを掬ってもよいし、柄杓を保持するロボットが溶湯Wlを掬ってもよい。
【0023】
溶解保持炉100は、溶湯貯留槽101、及び、ヒーター102を有する。溶湯貯留槽101は、溶湯Wlを貯留する容器である。溶湯貯留槽101は、例えば筒状であり、上面が開口している。なお、本明細書において、上下方向とは、鉛直方向であり、水平面に設置した溶解保持炉100が保持する湯面Wsの高さ方向を意味する。上方とは鉛直上側の方向を、下方とは鉛直下側の方向を示す。
【0024】
ヒーター102は、溶湯貯留槽101内の溶湯Wlを加熱する。例えば、ヒーター102は、溶湯貯留槽101の底部に位置する。なお、ヒーター102の位置は、溶湯貯留槽101の底部に限られない。図示しない温度センサが検知する溶湯Wlの温度に基づき、ヒーター102は、溶湯Wlの温度を予め定められた温度に保つ。
【0025】
(インゴット供給装置)
インゴット供給装置1は、溶解保持炉100に金属のインゴットWrを供給する。インゴット供給装置1は、溶解保持炉100に取り付けられる。実施形態1に係るインゴット供給装置1は、既存の溶解保持炉100に取り付け可能である。図1及び図2に示すように、インゴット供給装置1は、湯面高さセンサ2、移動部3、及び、インゴット浸漬部4、及び、制御部5を有する。
【0026】
(湯面高さセンサ)
湯面高さ測定部である湯面高さセンサ2は、溶解保持炉100が貯留する溶湯Wlの湯面Wsの高さを超音波によって測定するセンサである。湯面高さセンサ2は、溶湯Wlの湯面Wsにて反射された超音波を受信する。
【0027】
湯面高さセンサ2は、溶湯Wlの湯面Wsの上方に位置する。湯面高さセンサ2は、センサ本体部21、導波管22、反射板23、第1水平器27、及び、第2水平器28を有する。
【0028】
図1に示すように、センサ本体部21は、演算回路21a、発信回路24、及び、受信回路25を収容する。演算回路21aは、発信回路24から照射した超音波が溶湯Wlの湯面Wsで反射して受信回路25が受信するまでの時間から、発信回路24から湯面Wsまでの距離を測定する。湯面高さセンサ2は、図示しないメモリを有する。前記メモリは、発信回路24から湯面までの距離と湯面高さの関係が定義された湯面高さデータを記憶している。センサ本体部21の演算回路21aは、測定した発信回路24から湯面Wsまでの距離と前記湯面高さデータとに基づいて、溶湯Wlの現在の湯面高さH2を測定できる。
【0029】
発信回路24及び受信回路25は、センサ本体部21内に固定される。例えば、発信回路24及び受信回路25は圧電素子を有する。発信回路24は、超音波のパルス波を一定間隔で連続して発信する。パルス波とは、一定間隔で一定期間発信される矩形波である。例えば、パルス波は、超音波を繰り返し発信する50msの期間と、超音波の発信を停止する10msの期間を有する。発信回路24の圧電素子の超音波発信面は、導波管22の軸線方向に向いている。つまり、発信回路24は、導波管22の軸線方向に超音波を発信する。受信回路25は、超音波を受信する(破線矢印参照)。なお、発信回路24がパルス波を発信させる際の一定間隔は、想定される湯面Wsの最大変化速度においてインゴット浸漬部4によるインゴットWrの最小浸漬量に対応する現在の湯面高さH2の変化量を測定するために必要な間隔よりも十分小さい間隔をいう。つまり、湯面高さセンサ2は、切れ目なく継続して発信している超音波によって測定した現在の湯面高さH2に基づいてインゴットWrを浸漬する場合と変わらない精度でインゴットWrを浸漬可能な測定間隔で現在の湯面高さH2を測定している。このように、湯面高さセンサ2は、切れ目なく継続して超音波を発信している場合と変わらない精度でインゴットWrを浸漬可能な間隔で超音波を連続して発信している。
【0030】
導波管22は、超音波を伝搬させる管状部材である。導波管22は、内部を超音波が伝搬する。本実施形態において、導波管22は、直線状の管状部材である。導波管22の一端部は、センサ本体部21と接続されている。導波管22の他端部は、反射板23と対向する位置に接続されている。発信回路24から発信された超音波は、導波管22の一端部から導波管22の管内に照射される。超音波は、導波管22の管内を一端部から他端部に向かって伝搬される。導波管22の他端部に到達した超音波は、反射板23に向けて照射される。このように、導波管22は、発信回路24が発信した超音波を拡散させることなく一端部から他端部の方向に伝搬する。また、導波管22は、湯面Wsで反射した超音波を拡散させることなく他端部から一端部の方向に伝搬する。また、導波管22によって伝搬された超音波は、反射板23の近傍に位置する導波管22の他端部から一定の放射角で反射板23に放射される。つまり、超音波は、発信回路24よりも湯面Wsに近い位置から一定の放射角で拡散するので、湯面Wsにおける照射範囲が抑制される。
【0031】
反射板23は、超音波を反射する板材である。反射板23は、例えばステンレス製の板材から構成される。反射板23は、支持部材26を介して導波管22の他端部に支持されている。反射板23は、導波管の軸線方向に対して45度の角度を有するように位置している。よって、反射板23は、導波管22の軸線方向に対して90度の方向に超音波を反射させる。反射板23は、支持部材26によって、導波管22の軸線を回転中心として回転可能に支持されている。これにより、反射板23は、導波管22を伝搬してきた超音波の反射方向の調整が可能である。つまり、反射板23は、超音波の照射位置の調整が可能である。
【0032】
反射板23を支持する支持部材26には、第1水平器27及び第2水平器28が取り付けられる。例えば、第1水平器27及び第2水平器28は、支持部材26の上面に取り付けられる。第1水平器27は、導波管22の軸線が水平か否かを確認できる。第2水平器28は、反射板23及び支持部材26が導波管22の軸線回りにおいて水平か否かの確認ができる。つまり、第1水平器27及び第2水平器28は、導波管22を伝搬してきた超音波が湯面Wsに垂直に照射されるように反射板23の位置を調整することができる。
【0033】
反射板23を備える湯面高さセンサ2は、上下方向に見て反射板23が溶解保持炉100の開口部に重なる位置に設けられている。また、湯面高さセンサ2は、上下方向に見てセンサ本体部21が溶解保持炉100の開口部に重ならない位置に設けられている。また、湯面高さセンサ2は、反射板23によって反射された超音波が湯面Wsに対して垂直に照射されるように位置している。これにより、湯面高さセンサ2は、溶解保持炉100内の溶湯Wlからの輻射熱による演算回路21a、発信回路24及び受信回路25の損傷を防止しつつ、超音波を湯面Wsに対して垂直に照射できる。
【0034】
(移動部)
図1に示すように、移動部3は、湯面高さセンサ2を移動可能に支持する。移動部3は、第1支持部材31及び第2支持部材32を備える。
【0035】
第1支持部材31は、上方から見て、溶湯貯留槽101の外方に位置する。第1支持部材31は、溶解保持炉100の設置面から上下方向に延びる柱部材である。
【0036】
第2支持部材32は、第1支持部材31から水平方向に延びる柱部材である。第2支持部材32の一端部は、第1支持部材31の軸線を回転中心として、回転自在に支持されている。第2支持部材32の他端部には、湯面高さセンサ2が取り付けられる。
【0037】
このように構成される移動部3は、反射板23が水平方向に対して45度傾き、導波管22が水平方向に延びるように、湯面高さセンサ2を支持する。また、移動部3は、第1支持部材31を回転中心として湯面高さセンサ2を水平な周方向に移動させることができる。これにより、インゴット供給装置1は、超音波の照射位置を容易に移動できる。
【0038】
(インゴット浸漬部)
インゴット浸漬部4は、インゴットWrを保持し、インゴットWrの一部を溶湯Wlに浸漬する。図1及び図2に示すように、インゴット浸漬部4は、巻取ドラム41、ワイヤ42、チャック43、ガイド板44、及び、巻取モータ45を有する。
【0039】
巻取ドラム41は、ワイヤ42を巻き取る。巻取ドラム41は、溶湯貯留槽101の上方、かつ、溶湯貯留槽101を上方から見て溶湯貯留槽101の外方に位置する。巻取ドラム41は、回転可能に支持されている。巻取ドラム41には、ワイヤ42の一端が連結されている。ドラム41は、回転によりワイヤ42を巻取り可能に構成されている。
【0040】
チャック43は、インゴットWrを保持する。チャック43は、ワイヤ42の他端に連結されている。チャック43は、ワイヤ42を介して巻取ドラム41によって移動可能に構成されている。チャック43はインゴットWrの長手方向上端部を把持可能である。一方、インゴットWrの長手方向の下端側は、溶湯Wlの湯面Wsに向けられる。これにより、ワイヤ42は、チャック43が取り付けられたインゴットWrを吊るしている。
【0041】
ガイド板44は、インゴットWrを溶湯貯留槽101に案内する板である。ガイド板44は、溶湯貯留槽101の外周部分に設けられている。ガイド板44は巻取ドラム41の下方に位置する。ガイド板44は、下方に向かうにつれて溶湯貯留槽101の中心に向かう傾斜面を有している。傾斜面には、チャック43に把持されたインゴットWrが載置される。ガイド板44は、傾斜面によってインゴットWrを溶湯貯留槽101に案内する。
【0042】
巻取モータ45は、巻取ドラム41を回転させる。巻取モータ45は正逆回転自在である。巻取モータ45は、一方向に回転するとワイヤ42を繰り出す方向に巻取ドラム41を回転させる。また、巻取モータ45は、他方向に回転するとワイヤ42を巻き取る方向に巻取ドラム41を回転させる。本実施形態において、インゴット供給装置1は、巻取モータ45における一方向の回転によりインゴットを溶湯貯留槽101の湯面Wsに近づける方向に移動させる。
【0043】
(制御部)
制御部5は、制御回路51及び記憶部52を含む。例えば、制御回路51は、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部52は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)である。制御部5は、記憶部52が記憶するデータ及びプログラムを制御回路51が実行することにより、インゴット供給装置1の動作を制御する。例えば、制御部5は、PC(コンピュータ)である。また、記憶部52は、予め定められた基準湯面高さH1を記憶する。
【0044】
図2に示すように、湯面高さセンサ2と制御部5とは、電気的に接続される。制御部5は、湯面高さセンサ2が測定した溶湯Wlの現在の湯面高さH2を、湯面高さセンサ2から取得する。また、巻取モータ45と制御部5とは、電気的に接続される。制御部5は、巻取モータ45の回転方向、回転速度、及び、回転時間を制御する。
【0045】
制御部5は、湯面高さセンサ2から一定間隔毎に取得した現在の湯面高さH2が基準湯面高さH1を維持するように、インゴットWrの一部をインゴット浸漬部4の巻取モータ45によって溶湯Wlに浸漬させる。
【0046】
(入力デバイス及びディスプレイ)
図2に示すように、入力デバイス53とディスプレイ54とは、電気的に、制御部5に接続される。入力デバイス53は、例えば、マウス又はキーボードである。また、制御部5は、インゴット供給装置1に関する設定画面を、ディスプレイ54に表示させる。入力デバイス53を用いて、ディスプレイ54に表示された画面を操作して、インゴット供給装置1に関する設定が可能である。
【0047】
このように構成されるインゴット供給装置1は、移動部3によって溶湯貯留槽101上の任意の位置に移動可能な湯面高さセンサ2によって超音波を湯面Wsに垂直な方向から湯面Wsに照射可能である。インゴット供給装置1の制御部5は、湯面高さセンサ2によって湯面Wsに超音波のパルス波を連続して照射する。制御部5は、湯面高さセンサ2が所定期間内に複数のパルス波によって測定した発信回路24から湯面Wsまでの距離に基づいて、平均湯面高さA1を算出する。更に、制御部5は、算出した平均湯面高さA1が基準湯面高さH1を維持するように、インゴット浸漬部4によってインゴットWrを浸漬させる。
【0048】
図4を用いて、平均湯面高さA1を算出する理由の1つを説明する。図4に示す溶解保持炉100では、溶湯Wlの湯面Wsにスラグ等の浮遊物Wfが浮かんでいる。浮遊物Wfが浮かんでいる場合、湯面Wsには、浮遊物Wfによって凹凸ができる。浮遊物Wfに超音波が照射された場合、測定される現在の湯面高さH2は、浮遊物Wfの厚みの分だけ、高く測定される。そこで、制御部5は、所定期間内に複数のパルス波によって測定された現在の湯面高さH2に基づいて、平均湯面高さA1を算出する。制御部5が所定期間内に測定した複数の現在の湯面高さH2に基づいて平均湯面高さA1を算出するので、浮遊物Wfの影響が抑制される。
【0049】
(インゴットの供給制御)
次に、図5から図8を用いて、実施形態1に係るインゴット供給装置1でのインゴットWrの供給制御の一例を説明する。図5は、実施形態1に係る現在の湯面高さH2の算出の一例を示す図である。図6は、実施形態1に係るインゴットの供給制御の一例を示すフローチャートである。図7及び図8は、実施形態1に係るインゴット供給装置1の湯面高さを維持する制御の一例を示す図である。図7は、現在の湯面高さH2が基準湯面高さH1よりも低くなった状態の一例を示す。図8は、浸漬されたインゴットWrの一部が溶解している状態の一例を示す。
【0050】
なお、本実施形態において、インゴット供給装置1は、チャック43によってインゴットWrの長手方向一端部が連結されているものとする。また、インゴット供給装置1は、いつでも溶湯貯留槽101内にインゴットWrを浸漬可能な状態である。
【0051】
制御部5は、溶湯Wlの湯面高さが基準湯面高さH1に維持されるように、インゴットWrを溶解保持炉100に浸漬する。基準湯面高さH1は予め定められる。図1図4図7、及び、図8において、二点鎖線は、基準湯面高さH1の一例を示す。
【0052】
図5におけるグラフは、横軸が時間軸を示し、左側の縦軸が現在の湯面高さH2を示し、右側の縦軸がインゴットWrの累計浸漬量を示す。グラフの実線は、算出された平均湯面高さA1の推移の一例を示す。グラフの二点鎖線は、インゴットWrの累計の浸漬量の推移の一例を示す。
【0053】
図5に示すように、制御部5は、湯面高さセンサ2の所定時間内の測定値に基づいて平均湯面高さA1を算出する。制御部5は、時点t1において算出した湯面Wsの平均湯面高さA1が基準湯面高さH1よりも低くなると、インゴット浸漬部4によってインゴットWrを浸漬させる。制御部5は、平均湯面高さA1が基準湯面高さH1に到達した時点t2においてインゴットWrの浸漬を停止する。この結果、湯面Wsの平均湯面高さA1は、基準湯面高さH1を維持する。同様にして、制御部5は、時点t3、t5において湯面Wsの平均湯面高さA1が基準湯面高さH1よりも低くなるとインゴット浸漬部4によってインゴットWrの浸漬を開始する。制御部5は、平均湯面高さA1が基準湯面高さH1に到達した時点t4、t6においてインゴットWrの浸漬を停止する。このようにインゴット供給装置1は、インゴットWrの供給制御によって、湯面Wsの基準湯面高さH1を維持することができる。
【0054】
図6は、溶解保持炉100に貯留された溶湯Wlの湯面高さを基準湯面高さH1で維持するように、インゴットWrを供給する制御フローチャートを示す。図6を用いて、インゴットWrの供給制御の具体的な態様を説明する。制御部5は、湯面高さセンサ2によって超音波を湯面Wsに発信することにより、現在の湯面高さH2を測定する(ステップS601)。
【0055】
具体的に、湯面高さセンサ2は、発信回路24によって超音波を導波管22内に発信する。超音波は、導波管22を経由して反射板23に照射される。反射板23に照射された超音波は、導波管22の軸線方向に対して90度の方向に反射する。その結果、超音波は、溶湯Wlの湯面Wsに垂直な方向から照射される。
【0056】
溶湯Wlの湯面Wsに照射された超音波は、溶湯Wlの湯面Wsで反射される。反射板23は、溶湯Wlの湯面Wsにて反射されて戻ってきた超音波を導波管22の軸線方向に反射する。湯面高さセンサ2の受信回路25は、湯面Wsで反射されて戻ってきた超音波を、導波管22を介して受信する。
【0057】
上述したように、発信回路24は、1回のパルス波において、一定期間、超音波を発信する。受信回路25は、湯面Wsで反射されたパルス波を受信する。受信回路25は、受信したパルス波の周波数、強度に応じた電圧を出力する。演算回路21aは、受信回路25の出力電圧が1回のパルス波において予め定められた閾値を超えた回数を確認する。前記閾値を超えた回数が基準回数未満の場合、パルス波は、スラグ等によって、多くの超音波が乱反射している可能性がある。そこで、演算回路21aは、前記閾値を超えた回数が前記基準回数未満のパルス波を現在の湯面高さH2の測定に利用しない。前記基準回数は、例えば、前記発信期間に発信する超音波の数の1/2である。前記閾値を超えた回数が基準回数以上の場合、演算回路21aは、受信したパルス波に基づき、現在の湯面高さH2を測定する。
【0058】
制御部5は、湯面高さセンサ2が測定した現在の湯面高さH2を取得する(ステップS602)。なお、制御部5は、湯面高さセンサ2が現在の湯面高さH2を測定するごとに、湯面高さセンサ2から現在の湯面高さH2を取得する。制御部5は、現在の湯面高さH2を取得するごとに、新たに取得した現在の湯面高さを記憶部52に記憶させる(ステップS603)。
【0059】
制御部5は、所定期間内に取得した現在の湯面高さH2に基づき、平均湯面高さA1を算出する(ステップS604)。制御部5は、現在の湯面高さH2を取得するごとに、現在から所定期間さかのぼった期間における平均湯面高さA1を算出する。
【0060】
なお、平均湯面高さA1を算出する場合、複数の現在の湯面高さH2を測定し、取得していることが必要である。そのため、インゴットWrを供給する制御では、湯面高さセンサ2及び制御部5の電源投入後、少なくとも所定期間の間、湯面高さセンサ2によって連続して現在の湯面高さH2を測定する。制御部5は、少なくとも所定期間が経過した後、インゴットWrを供給する制御を開始する。
【0061】
具体的に、制御部5は、現在の湯面高さH2を取得した時点から遡って、所定期間内に既に取得した全ての現在の湯面高さH2に基づき、平均湯面高さA1を算出する。所定期間の長さは適宜定められる。例えば、10個の現在の湯面高さH2に基づいて平均湯面高さA1を算出する場合、所定期間は、少なくとも10個の現在の湯面高さH2の取得に要する時間である。なお、平均湯面高さA1は、10個以上の現在の湯面高さH2に基づき算出してもよいし、10個未満の現在の湯面高さH2に基づき算出してもよい。
【0062】
制御部5は、平均湯面高さA1が基準湯面高さH1よりも低いか否かを判定する(ステップS605)。
【0063】
平均湯面高さA1が基準湯面高さH1よりも低い場合(ステップS605のYes)、制御部5は、インゴット浸漬部4の巻取モータ45を回転させ、インゴット浸漬部4にインゴットWrを浸漬させる。(ステップS606)。制御部5は、インゴット浸漬部4によってインゴットWrを溶湯W1に向かって下降させる。
【0064】
一方、平均湯面高さA1が基準湯面高さH1以上の場合(ステップS605のNo)、制御部5は、インゴット浸漬部4によるインゴットWrの浸漬を停止させる(ステップS607)。巻取モータ45が回転している状態の場合、制御部5は、巻取モータ45を停止させる。その結果、インゴット浸漬部4は、溶湯W1へのインゴットWrの下降を停止する。一方、巻取モータ45が停止している状態の場合、制御部5は、巻取モータ45を停止した状態で維持する。
【0065】
ステップS606又はステップS607によって、図6のフローチャートが終了する。湯面高さセンサ2及び制御部5は、図6のフローチャートをステップS601から再実行する。このように、制御部5は、周期的に平均湯面高さA1を算出する。そして、制御部5は、平均湯面高さA1が基準湯面高さH1よりも下がったか否かを監視する。
【0066】
(基準湯面高さの設定)
次に、実施形態1に係るインゴット供給装置1での基準湯面高さH1の設定の一例を説明する。制御部5は、基準湯面高さH1を変更可能である。実施形態1に係るインゴット供給装置1は、インゴット供給装置1が取り付けられた溶解保持炉100の大きさ、及び、溶湯貯留槽101の深さに応じて、基準湯面高さH1を決定してもよい。また、インゴット供給装置1は、当日の業務量及び溶湯消費予定量に応じて基準湯面高さH1を調整してもよい。
【0067】
制御部5は、基準湯面高さH1の設定画面をディスプレイ54に表示させる。入力デバイス53は、変更後の基準湯面高さH1の設定を受け付ける。この場合、制御部5は、入力デバイス53に入力された基準湯面高さH1を記憶部52に記憶させる。以後、制御部5は、変更後の基準湯面高さH1を維持する。
【0068】
(変形例1)
次に、図9を用いて、変形例1に係るインゴット供給装置1を説明する。変形例1に係るインゴット供給装置は、湯面高さセンサ2aの反射板23aの構成が異なる点以外、実施形態1と共通する。以下の変形例1の説明では、実施形態1に係るインゴット供給装置1と共通する部分の説明は省略する。また、実施形態1に係るインゴット供給装置1と共通する部分には、同じ符号を用いる。
【0069】
図9は、変形例1に係る湯面高さセンサ2aの一例を示す。変形例1に係る湯面高さセンサ2aの反射板23aは、支持部材26を介して導波管22の他端部に支持されている。変形例1に係る反射板23aは、湾曲している。反射板23aは、導波管22から反射板23aに超音波を照射する方向に凹む凹曲面(放物面)を有する。導波管22の他端部は、反射板23aの焦点に位置する。湯面高さセンサ2aは、球面波である超音波を導波管22の他端部から、反射板23aの凹曲面に向けて照射する。
【0070】
反射板23aの凹曲面は、照射された超音波を、溶湯Wlの湯面Wsに向けて、鉛直方向に反射する。図9の破線は、反射板23aが導波管22から照射された超音波を反射する方向の一例を示す。反射板23aは、位相が揃った平面波を溶湯Wlの湯面Wsに照射する。反射板23aは、湯面Wsに垂直な方向に見て反射板23aと重なる範囲に超音波を照射する。つまり、反射板23aは、湯面Wsにおける超音波の照射範囲を限定する。このように、湯面高さセンサ2aは、反射板23aによって球面波を平面波に変換することで超音波の指向性を高めることができる。
【0071】
溶湯Wlの湯面Wsに照射された超音波は、溶湯Wlの湯面Wsで反射される。反射板23aは、溶湯Wlの湯面Wsにて反射されて戻ってきた超音波を反射する。図9に示すように、反射板23aは、湯面Wsで反射されて戻ってきた超音波を導波管22に集束させる。つまり、反射板23aは、湯面Wsで反射されて戻ってきた超音波を効率よく受信回路25に受信させる。このように、湯面高さセンサ2aは、反射板23aによって利得を高めることができる。
【0072】
(変形例2)
次に、図10を用いて、変形例1に係るインゴット供給装置1を説明する。図10は、変形例2に係るインゴット供給装置の一例を示す図である。変形例2に係るインゴット供給装置は、実施形態1に係るインゴット供給装置1と、移動部3Aの構成が異なる点以外共通する。以下の変形例2の説明では、実施形態1に係るインゴット供給装置1と共通する部分の説明は省略する。
【0073】
実施形態1のインゴット供給装置1では、移動部3Aは1つの回転軸を用いて、湯面高さセンサ2を移動させる。変形例2の移動部3Aは、3軸方向で湯面高さセンサ2を移動可能である。
【0074】
なお、変形例2の説明では、説明の便宜上、鉛直方向をZ方向、ある水平方向をY方向、Z方向とY方向の両方と直交する方向をX方向として説明する。図9において、各方向をX,Y,Zとして示す。
【0075】
変形例2の移動部3Aは、湯面高さセンサ2を移動可能に支持する。移動部3Aは、Z軸ガイドレール33、Y軸ガイドレール34、X軸ガイドレール35を備える。
【0076】
Z軸ガイドレール33は、溶解保持炉100の設置面からZ方向に延びる柱部材である。Z軸ガイドレール33は、Z軸スライドテーブル33aを有する。Z軸スライドテーブル33aは、Z軸ガイドレール33の一面に取り付けられ、前記一面上を、Z方向に移動可能である。
【0077】
Y軸ガイドレール34は、Y方向に延びる柱部材である。Y軸ガイドレール34は、Y軸スライドテーブル34aを有する。Y軸スライドテーブル34aは、Y軸ガイドレール34の一面に取り付けられ、前記一面上を、Y方向に移動可能である。Y軸ガイドレール34の一端は、Z軸スライドテーブル33aに固定される。
【0078】
X軸ガイドレール35は、X方向に延びる柱部材である。X軸ガイドレール35は、X軸スライドテーブル35aを有する。X軸スライドテーブル35aは、X軸ガイドレール35の一面に取り付けられ、前記一面上を、X方向に移動可能である。X軸スライドテーブル35aには、湯面高さセンサ2が取り付けられる。X軸ガイドレール35の一端は、Y軸スライドテーブル34aに固定される。
【0079】
Z軸スライドテーブル33aをスライドさせることにより、湯面高さセンサ2をZ方向に移動可能である。Z軸ガイドレール33は、スライド後のZ軸スライドテーブル33aの位置を保持する。Y軸スライドテーブル34aをスライドさせることにより、湯面高さセンサ2をY方向に移動可能である。Y軸ガイドレール34は、スライド後のY軸スライドテーブル34aの位置を保持する。X軸スライドテーブル35aをスライドさせることにより、湯面高さセンサ2をX方向に移動可能である。X軸ガイドレール35は、スライド後のX軸スライドテーブル35aの位置を保持する。
【0080】
変形例2の移動部3Aは、反射板23が水平方向に対して45度傾き、導波管22が水平方向に延びるように、湯面高さセンサ2を支持する。また、移動部3Aは、湯面高さセンサ2を3軸方向に移動させることができる。これにより、湯面高さセンサ2の超音波の照射位置の移動が容易である。湯面高さセンサ2の位置合わせの自由度が高い。また、湯面高さセンサ2の位置調整が容易である。
【0081】
このようにして、実施形態1、変形例1及び変形例2に係るインゴット供給装置1は、ヒーター102を有し金属を溶解させた溶湯Wlを貯留する溶解保持炉100にインゴットWrを供給する。インゴット供給装置1は、インゴットWrを保持し、インゴットWrの一部を溶湯Wlに浸漬するインゴット浸漬部と、反射板23を備え、超音波を反射板23によって反射して溶湯Wlの湯面Wsに垂直な方向から溶湯Wlの湯面Wsに照射し、溶湯Wlの湯面Wsに反射された超音波を取得し、取得した超音波に基づいて溶湯Wlの現在の湯面高さH2を連続して測定する湯面高さ測定部(湯面高さセンサ2)と、測定された現在の湯面高さH2に基づいてインゴット浸漬部4を制御する制御部5と、を有する。制御部5は、湯面高さ測定部が測定した現在の湯面高さH2を連続して取得し、取得した現在の湯面高さH2が予め定められた基準湯面高さH1を維持するように、インゴットWrの一部をインゴット浸漬部4によって溶湯Wlに浸漬させる。
【0082】
インゴット供給装置1の湯面高さ測定部は超音波を溶湯Wlの湯面に連続して発信するので、連続して現在の湯面高さH2の測定が可能である。インゴット供給装置1は、測定した現在の湯面高さH2が基準湯面高さH1よりも低くなると、直ちに、インゴットWrの浸漬を開始する。インゴットWrは、湯面高さが基準湯面高さH1に回復する分だけ浸漬される。つまり、インゴット供給装置1は、溶湯Wlの減少に連動して連続的にインゴットWrを浸漬する。よって、インゴット供給装置1は、溶湯Wlの温度が低下する程度のインゴットWrを一度に浸漬することがない。これにより、インゴット供給装置1は、溶解保持炉100が保持する溶湯Wlの湯面高さ及び溶湯Wlの温度を一定に維持できる。
【0083】
また、インゴット供給装置1は、超音波を用いて現在の湯面高さH2を測定する。インゴット供給装置1は、溶湯にフロートを浮かべて現在の湯面高さH2があるレベルになったことを検知するセンサを用いる場合に比べて現在の湯面高さH2を即時に精度よく測定できる。また、インゴット供給装置1は超音波を用いて現在の湯面高さH2を測定するので、フロートに付着した付着物の除去のようなメンテナンスの作業が必要なフロートを用いるセンサに比べて、メンテナンスの作業負担が少ない。
【0084】
湯面高さセンサ2は、超音波を用いて現在の湯面高さH2を測定する。超音波は、空気の振動によって伝搬されるので、蒸発した溶湯が反射板23に付着していても付着物に影響されることなく反射板23によって反射する。よって、湯面高さセンサ2は、正確に現在の湯面高さH2を測定可能である。仮に、現在の湯面高さH2を測定するためのセンサに光センサを用いた場合、測定光は、付着物によって乱反射するので、反射板の付着物を除去する作業が必要である。従って、超音波によって現在の湯面高さH2を測定する湯面高さセンサ2は、光センサを用いる場合に比べてメンテナンスの作業負担が少ない。
【0085】
上述の実施形態及び各変形例は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
【0086】
(その他の実施形態)
前記実施形態1では、溶解保持炉100が貯留し、インゴット供給装置1が供給する金属はアルミニウムである。しかし、溶解保持炉が貯留し、インゴット供給装置が供給する金属は、アルミニウム以外の金属でもよい。例えば、金属は、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金、スズ合金、鉛合金でもよい。
【0087】
前記実施形態1では、ワイヤ42、巻取ドラム41、及び、巻取モータ45を用いて任意の量のインゴットを溶湯Wlに浸漬する。しかし、インゴット浸漬部は、溶湯の湯面高さの変動に基づいてインゴットの浸漬量を任意に設定できる構成であればよい。例えば、インゴット浸漬部は、ボールねじ機構によってインゴットを移動させる構成でもよい。また、インゴット浸漬部は、インゴットをコンベアで浸漬する構成でもよい。また、インゴット浸漬部は、ロボットアームがインゴットを把持し、溶湯に浸漬する構成でもよい。
【0088】
前記実施形態1では、湯面高さセンサ2には、センサ本体部21に導波管22によって反射板23が連結されている。しかし、湯面高さセンサは、センサ本体部と反射板が別体でもよい。
【0089】
前記実施形態1では、制御部5は、複数の現在の湯面高さH2を用いて算出した平均湯面高さA1が基準湯面高さH1よりも低い場合に、インゴットWrの一部をインゴット浸漬部4によって溶湯Wlに浸漬させる。しかし、制御部は、直近に取得した現在の湯面高さが基準湯面高さよりも低い場合に、インゴットの一部をインゴット浸漬部によって溶湯に浸漬させてもよい。
【0090】
前記実施形態1では、制御部5は、所定期間内の全ての現在の湯面高さH2の平均値を用いて平均湯面高さA1として求める。しかし、制御部は、所定期間内の複数個の現在の湯面高さの中央値を求め、ステップS605において、中央値が基準湯面高さよりも低いか否かを判定してもよい。
【0091】
前記実施形態1では、制御部5は、所定期間内に取得した全ての現在の湯面高さH2の平均値を平均湯面高さA1として求める。しかし、制御部は、所定期間内の複数個の現在の湯面高さのうち、前回求めた平均湯面高さA1と比較して、変動率が基準変動率以上の現在の湯面高さを合算の対象から除外してもよい。
【0092】
前記実施形態1では、制御部5は、所定期間内の複数の現在の湯面高さH2の算術平均によって平均湯面高さA1を求める。しかし、制御部は、荷重平均、又は、調和平均によって、平均湯面高さを求めてもよい。
【0093】
また、制御部は、複数個の測定値のそれぞれに対応する湯面高さについて、最小二乗法によって直線又は曲線の係数を求めてもよい。制御部は、係数を求めた直線又は曲線に基づき、平均湯面高さとして求めてもよい。例えば、制御部は、複数の取得した現在の湯面高さのうち、係数を求めた直線又は曲線との差が基準値以内の現在の湯面高さの平均値を平均湯面高さとして求めてもよい。
【0094】
また、制御部は、複数個の測定値のそれぞれに対応する湯面高さについて、標準偏差を求めてもよい。制御部は、求めた標準偏差に基づき、平均湯面高さを求めてもよい。例えば、制御部は、複数の取得した現在の湯面高さのうち、標準偏差との差が閾値以内の現在の湯面高さの平均値を平均湯面高さとして求めてもよい。
【0095】
前記実施形態1及び変形例2において、湯面高さセンサ2は、移動部3によって任意の位置に移動可能に構成されている。しかし、インゴット供給装置は、湯面高さセンサが溶解保持炉に対して固定されている構成でもよい。
【0096】
前記実施形態1では、制御部5は、基準湯面高さH1を変更可能である。しかし、制御部は、基準湯面高さを変更できなくてもよい。つまり、基準湯面高さは固定の値であってもよい。
【0097】
前記実施形態1では、インゴット供給装置1は、1つのインゴット浸漬部4を有する。しかし、インゴット供給装置は、インゴット浸漬部を複数有してもよい。複数のインゴット浸漬部を有するインゴット供給装置は、複数のインゴット浸漬部のうち、少なくとも1つのインゴット浸漬部によってインゴットを溶湯に浸漬する。前記インゴット供給装置は、少なくとも1つのインゴット浸漬部が湯面に浸漬しているインゴットの累積浸漬量が上限値に達した場合、湯面に浸漬しているインゴットを溶湯から取り出すとともに、複数のインゴット浸漬部のうち、他のインゴット供給装置によってインゴットを前記溶湯に浸漬する。
【0098】
このように構成することで、インゴット供給装置は、一のインゴット浸漬部にインゴットを取り付けている際、他のインゴット浸漬部によってインゴットを浸漬する。よって、インゴット供給装置は、インゴット浸漬部にインゴットを取り付ける時間を確保することできる。これにより、インゴット供給装置は、インゴット浸漬部が1つの場合に比べ、溶湯の高さの基準湯面高さでの維持が容易である。
【0099】
前記実施形態1では、作業員またはロボットが柄杓用いて、溶湯Wlをダイカスト装置に供給する。しかし、溶湯は、溶湯移送管とポンプによって溶解保持炉から供給してもよい。
【符号の説明】
【0100】
100 溶解保持炉
101 溶湯貯留槽
102 ヒーター
1 インゴット供給装置
5 制御部
51 制御回路
52 記憶部
53 入力デバイス
54 ディスプレイ
2、2a 湯面高さセンサ(湯面高さ測定部)
21 センサ本体部
22 導波管
23、23a 反射板
24 発信回路
25 受信回路
26 支持部材
27 第1水平器
28 第2水平器
3 移動部
31 第1支持部材
31a 回転軸
32 第2支持部材
3A 移動部
33 Z軸ガイドレール
33a Z軸スライドテーブル
34 Y軸ガイドレール
34a Y軸スライドテーブル
35 X軸ガイドレール
35a X軸スライドテーブル
4 インゴット浸漬部
41 ドラム
42 ワイヤ
43 チャック
44 ガイド板
45 巻取モータ
5 制御部
51 制御回路
52 記憶部
53 入力デバイス
54 ディスプレイ
A1 平均湯面高さ
H1 基準湯面高さ
H2 現在の湯面高さ
Wl 溶湯
Ws 湯面
Wf 浮遊物
Wr インゴット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10