(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063022
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】水変色性シート用筆記体セット
(51)【国際特許分類】
B43K 23/00 20060101AFI20230427BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20230427BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B43K23/00 100G
A63H33/22 K
B43K8/02 100
B43K8/02 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173259
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】染矢 優希
【テーマコード(参考)】
2C150
2C350
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C350GA04
2C350HA15
(57)【要約】
【課題】ペン先34におけるカビの発生やゴミの付着を防止しながら、ペン先34を保護することができ、更にペン3と一緒に複数の水変色性シート4を一纏めにした状態で携行することができる水変色性シート用筆記体セット1を得る。
【解決手段】ホルダー2が、下方に円弧部21aと、円弧部21aから上方へ向かい平行に延びる二つの直線部21bとを有した断面U字状の半筒部21が設けられ、半筒部21の一端側に複数の水変色性シート4を纏めるシートリング22が結合され、半筒部21の他端側の直線部に相対向する二つの係止部21eが形成された内鍔21dを有し、ペン2が、水を収容する容器31と、容器31に連通し水が浸透されるペン先34とを有し、容器31の前方に溝部3aを形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダーと該ホルダーに装着されるペンとで構成される水変色性シート用筆記体セットであって、
前記ホルダーが、下方の円弧部と該円弧部から上方へ向かい平行に延びる二つの直線部とを有した断面U字状の半筒部が設けられ、前記半筒部の一端側に複数の水変色性シートを纏めるシートリングが結合され、前記半筒部の他端側の直線部に相対向する二つの係止部が形成された内鍔を有し、
前記ペンが、水を収容する容器と、該容器に連通し前記水が浸透されるペン先とを有し、前記容器の前方に溝部が形成され、
前記ペンを前記ホルダーに挿着した際に、前記ペンのペン先が前記ホルダーの半筒部に収納されると共に、前記ホルダーの内鍔で前記ペンの溝部が支持され、且つ前記係止部で前記ペンを狭持して前記ペンが前記ホルダーに固定されることを特徴とした水変色性シート用筆記体セット。
【請求項2】
前記ホルダーにおける内鍔の二つの係止部が、該内鍔に形成した相対向する二つの凸部であることを特徴とした請求項1に記載の水変色性シート用筆記体セット。
【請求項3】
前記ホルダーの半筒部が、他端部側から一端部側に向かい漸次拡幅されることを特徴とした請求項1または2に記載の水変色性シート用筆記体セット。
【請求項4】
前記容器の溝部の後方に、前記ホルダーの半筒部の内巾より広く形成した大径部が設けられたことを特徴とした請求項1ないし3項のいずれか1項に記載の水変色性シート用筆記体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水変色性シート用筆記体セットに関する。更に詳細にはシート状の水変色体に水を付着させるペンと、そのペンを保持するホルダーとを有した水変色性シート用筆記体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を着色層上に配して水変色性シートを構成し、前記多孔質層の表面に筆記体等により水を付着させて任意の水変色像を形成し、下層の着色層を透視させて有色の筆記像を視覚させる試みは、周知であり、多数の提案(先行文献1(特公昭50-5097号公報など))が開示されており、玩具あるいは教習材として実用化されている。
【0003】
また、前述の水変色性シートでは、水を収容する容器と、その水が浸透されるペン先とを有したペンが用いられる。前記ペン先は、弾力性に富み水変色体の表面を傷つけ難いことから、例えばポリエステル繊維やポリアミド繊維の樹脂加工体、あるいは天然毛による毛筆や羊毛フェルト等により形成される。しかしながら、これらのペン先は、長期に渡り水分が付着し続けた場合や指などの汚れが付着した場合にはカビが発生する虞があり、また、水分によりホコリなどのゴミが付着し易くなることから、使用後は、ペンから水を抜き取ると共に、水が浸透したペン先を乾燥させることが望ましい。
【0004】
従って、ペン先の保護の観点では、キャップでペン先を被覆することが効果的ではあるが、ペン先全体を密封してしまうようなキャップを被せる構造は、カビの発生の点で適していない。この課題については、例えば先行文献2(国際公開第2019/230623号)でも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭50-5097号公報
【特許文献2】国際公開第2019/230623号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ペン先におけるカビの発生やゴミの付着を防止しながら、ペン先を保護することができ、更にペンと一緒に複数の水変色性シートを一纏めにした状態で携行することができる水変色性シート用筆記体セットを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
「1.ホルダーと該ホルダーに装着されるペンとで構成される水変色性シート用筆記体セットであって、
前記ホルダーが、下方の円弧部と該円弧部から上方へ向かい平行に延びる二つの直線部とを有した断面U字状の半筒部が設けられ、前記半筒部の一端側に複数の水変色性シートを纏めるシートリングが結合され、前記半筒部の他端側の直線部に相対向する二つの係止部が形成された内鍔を有し、
前記ペンが、水を収容する容器と、該容器に連通し前記水が浸透されるペン先とを有し、前記容器の前方に溝部が形成され、
前記ペンを前記ホルダーに挿着した際に、前記ペンのペン先が前記ホルダーの半筒部に収納されると共に、前記ホルダーの内鍔で前記ペンの溝部が支持され、且つ前記係止部で前記ペンを狭持して前記ペンが前記ホルダーに固定されることを特徴とした水変色性シート用筆記体セット。
2.前記ホルダーにおける内鍔の二つの係止部が、該内鍔に形成した相対向する二つの凸部であることを特徴とした前記1項に記載の水変色性シート用筆記体セット。
3.前記ホルダーの半筒部が、他端部側から一端部側に向かい漸次拡幅されることを特徴とした前記1項または前記2項に記載の水変色性シート用筆記体セット。
4.前記容器の溝部の後方に、前記ホルダーの半筒部の内巾より広く形成した大径部が設けられたことを特徴とした前記1項ないし前記3項のいずれか1項に記載の水変色性シート用筆記体セット。」である。
【0008】
前記ホルダーの半筒部の直線部は、ペンを挿着した状態で、少なくともペン先が半筒部内に収まる寸法で形成する。ホルダーの半筒部の他端側に設ける内鍔は、ペンの溝部に係合するよう形成する。内鍔に形成される相対向する二つの係止部は、ペンを狭持する凸部や凹部などとする。尚、係止部を相対向する二つの凸部とする場合には、ホルダーにペンを挿着した状態で、二つの凸部でペンが狭持され、且つ円弧部に位置する鍔部でペンがホルダーに固定されるようにする。係止部を相対向する二つの凹部とする場合には、ホルダーにペンを挿着した状態で、二つの凹部がペンを狭持できるように、凹部の形状をペンの外形形状に合わせるとよい。円弧部の内径は、半筒部に挿着されるペンの外径より大きく形成する。円弧部から上方へ向かい平行に延びる二つの直線部の隙間は、挿着されるペンの前方の外径より大きいか若干小さく形成する。但し、若干小さく形成する場合には、互いに弾性変形しながら離間できるよう二つの直線部の長さを設定する。
シートリングの形状は特に限定されないが、例えば一部が離間する円環状に形成し、離間する両端部に係脱可能な係止爪と係止孔とを設け、前記両端部の反対側に位置するシートリングの中間部と、前記半筒部の一端側における円弧部の中間部とを結合させることで、結合部をコンパクトにすることが可能となる。
ペン先の形状は特に限定されないが、先端を丸めたり、先端が弾性変形するようにすると、水変色性シートが傷つき難く、また筆記し易くなる。
【0009】
ペン先の材質は、例えばポリエステル繊維やポリアミド繊維の樹脂加工体、あるいは天然毛による毛筆や羊毛フェルト等が挙げられる。
容器の材質は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネートなどの樹脂、あるいは金属やガラス等が挙げられる。
ホルダーの材質は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリカーボネート等が挙げられる。尚、半筒部へのペンの挿入や、シートリングの開閉時に柔軟に弾性変形し易くするには、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートが好適である。
【0010】
前記水変色性シートは、変色部が、多孔質層により構成される変色層であり、多孔質層が、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた層であり、支持体は、撥水層や変色部が形成可能な材質であれば特に限定されるものではなく、例えば、紙、合成紙、プラスチックフィルム(シート)や、編物、織物、不織布等の布帛、合成皮革、レザー、プラスチック(成形物)、金属、ガラス、陶磁器、木材、石材等が挙げられる。
前記支持体の形状は特に限定されるものではなく、平面形状、シート状の他、曲面や凹凸を有する形状であってもよい。
【0011】
前記多孔質層としては、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり吸液状態で透明化する層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0012】
前記低屈折率顔料は、屈折率が1.4~1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
尚、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03~10.0μmのものが好適に用いられる。また、前記低屈折率顔料は二種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
【0013】
前記珪酸は、乾式法により製造させる珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、珪酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
また、多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
尚、前記多孔質層の常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を調整するために、湿式法珪酸と共に、他の低屈折率顔料を併用することもできる。
【0014】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5~2質量部であり、より好ましくは、0.8~1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
【0015】
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂またはウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。また、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解ないし至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
【0016】
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂または油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、本発明においては水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分質量比率で30%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、更に皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質層の塗布量は5~50g/m2、好ましくは、10~30g/m2である。
5g/m2未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、また、50g/m2を越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
【0017】
尚、前記多孔質層中には、一般染料や蛍光染料、着色顔料を添加して色変化を多様化することができる。
前記着色顔料は、一般顔料や蛍光顔料の他、二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄-二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、グアニン、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性砒酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の金属光沢顔料を例示できる。
【0018】
前記変色層(多孔質層)と支持体の間(即ち変色層の下層)には、着色層を設けて、多孔質層が吸液状態のときときに、着色層の色相を視認可能に構成することもできる。
更に、前記変色層の上層や変色層の周囲の支持体上に絵柄等の着色像(図柄層)を配設して様相変化を更に多様化させたり、ゲーム玩具の装飾性を向上することもできる。前記着色像(図柄層)の像としては、絵柄の他、文字、記号、模様等が挙げられる。
【0019】
前記支持体上に形成される変色層(多孔質層)、着色層や図柄層は、いずれも公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により適宜形成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による水変色性シート用筆記体セットは、ペン先におけるカビの発生やゴミの付着を防止しながら、ペン先を保護することができ、更にペンと一緒に複数の水変色性シートを一纏めにした状態で携行ができるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態における水変色性シート用筆記体セットと、水変色性シートを示す斜視図で、ホルダーからペンを外した状態の図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における水変色性シート用筆記体セットと、水変色性シートを示す斜視図で、ホルダーにペンを挿着した状態であり、シートリングを係合させ水変色性シートを一纏めにした状態の図である。
【0022】
本実施形態を
図1と
図2に示す。
本実施形態の水変色性シート用筆記体セット1は、ホルダー2と該ホルダー2に装着されるペン3とで構成される。ホルダー2は、底面の円弧部21aと、円弧部21aから上方に向かい平行に延びる二つの直線部21bとが設けられ、開口部21cを上方に有した半筒部21が形成されている。また、ホルダー2は、半筒部21の一端側における中間部に、円環状のシートリング22が結合されている。シートリング22は、半筒部21との結合部23の反対側が離間しており、その両端部に係止爪22aと係止孔22bとを形成し、係脱可能としてある。
半筒部21の他端側には内鍔21dが形成され、内鍔21dの中間部には相対向する二つの凸部(係止部)21eが設けられている。
【0023】
本実施形態のホルダー2は、ポリプロピレンで形成されており、半筒部21及びシートリング22が一体に形成されている。また、ホルダー2は、ペン3の軸心に沿った方向を長手として、半筒部21の長さを37mmとし、巾に関しては一端側で15.3mm、他端側で16.5mmとしている。直線部21bにおける内鍔21dの内寸法は13mmとしており、直線部21bにおける内鍔21dの中間部には二つの凸部21eを高さ0.9mmで形成してある。
【0024】
本実施形態のペン3は、水(不図示)を収容する容器31を、本体32と、該本体に係脱可能に螺合した先口33とで構成してある。容器31の前端部にはペン先34が配設されている。本体32と先口33との間には溝部3aを形成してある。
【0025】
本実施形態のペン3は、容器31を構成する本体32と先口33とがポリプロピレンで形成されており、ペン先34がポリアミド繊維で形成され容器31内の水が浸透するようにしてある。また、ペン3は、容器31の全長を108mmで形成し、本体32の前端及び先口33の後端の外径を13.5mmで形成し、溝部3aの谷部の外径をホルダー2の内鍔21dの内寸法と同じ13mmで形成してある。ペン先34は、先口33から7mm突出し、ペン3としての全長は115mmである。
【0026】
図2に示すように、ホルダー2にペン3を挿着した状態で、ペン3のペン先34がホルダー2の半筒部21に収納されると共に、ホルダー2の内鍔21dでペン3の溝部3aが支持され、且つホルダー2の二つの凸部21eが、ペン3における本体32の前端及び先口33の後端を狭持し、円弧部に位置する内鍔21dでペン3がホルダー2に固定される。このとき、ペン3の溝部3aにホルダー2の内鍔21dを差し込むようにして、スライドさせ挿着することにより、簡単に位置合わせを行いながら、ホルダー2にペン3を固定させることができる。
尚、本実施形態では、子供でも操作し易いように、ホルダー2に対しペン3を、20N以下の力で挿着できる設定にしてある。また、シートリング22が半筒部21の一端側にあることから、ペン3をホルダー2に挿着させる際、半筒部21の他端側の裏面を手で支えることができ、ペン3がホルダー2の二つの凸部21eを乗り越え易くなる。また、シートリング22が半筒部21の一端側にあることから、ホルダー2にペン3が挿着された状態であっても、係止爪22aと係止孔22bとの係脱がし易い。
また、携行時を考慮し、ホルダー2に対しペン3が2N以下の力で引っ張ったときに外れないように設定してあり、ホルダー2にペン3を挿着して軽く振っても自重でペン3が外れないようにしてある。
3枚の水変色性シート4の丸孔4aには、シートリング22が挿通され、係止爪22aと係止孔22bとが係合することで、水変色性シート4が一纏めになる。
本実施形態では、シートリング22の太さを4.5mmで形成し、外径を40mmで形成してある。
【0027】
本実施形態による水変色性シート用筆記体セット1は、ホルダー2にペン3を挿着した状態で、ペン先34は外部に露出するので、乾燥し易く、カビの発生やゴミの付着を防止しながら、ペン先34を保護することができ、ペン3と一緒に複数の水変色性シートを一纏めにした状態で携行することができ、利便性が優れる。
また、水変色性シート4にペン3で筆記したり筆記をやめたり、断続的にペン3を使用する場合、ペン3のペン先34は水が浸透した状態になっているが、ホルダー2にペン3を挿着することで、ペン3の周辺にあるものをペン先34の水で濡らしてしまうことが防止できる。
更に、ホルダー2の半筒部21が、他端部側から一端部側に向かい漸次拡幅されることから、特にペン先34側の内側が広くなって開放された状態となる。
また更に、容器31の溝部3aの後方に、ホルダー2の半筒部21の内巾より広く形成した大径部3bを設けたことから、ペン3は、
図2に示した状態と反対方向ではホルダー2に挿着できず、ペン3をホルダー2に挿着した状態では、確実にペン先34が半筒部21に収納されることとなり、ペン先34を保護することができる。
【0028】
本実施形態の水変色性シート4は、白色合成紙からなる支持体上に、青色顔料5部、アクリル酸エステルエマルジョン(固形分50重量%)50部、シリコーン系消泡剤0.2部、増粘剤3部、湿潤剤2部、レベリング剤1部、水10部、エポキシ系架橋剤2.5部を均一に混合、攪拌したスクリーン印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版によるスクリーン印刷を行って、着色層を形成した。次いで、前記着色層上に、湿式法により製造される微粒子状珪酸〔商品名:ニップシールE-200A、日本シリカ工業(株)製〕15部、バインダー樹脂として水性ウレタン樹脂〔商品名:ハイドランAP-10、ポリエステル系ウレタン樹脂、固形分30重量%、大日本インキ化学工業(株)製〕50部、水30部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ増粘剤3部、エチレングリコール1部、エポキシ系架橋剤2部を均一に混合、攪拌した白色スクリーン印刷用インキを用いて全面ベタ印刷を施して多孔質層を形成し、0.4mmの厚さで220mm×320mmの大きさの水変色性シート4を得た。水変色シート4は常態では白色を呈しているが、ペン3の水が浸透したペン先34で多孔質層上に筆記すると、水変色シート4に水を付着させ、青色の水変色像(文字)を形成することができる。
【符号の説明】
【0029】
1…水変色性シート用筆記体セット、
2…ホルダー、
21…半筒部、21a…円弧部、21b…直線部、21c…開口部、
21d…内鍔、21e…凸部、
22…シートリング、22a…係止爪、22b…係止孔、
23…結合部、
3…ペン、3a…溝部、3b…大径部、
31…容器、32…本体、33…先口、34…ペン先、
4…水変色性シート、4a…丸孔。