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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063052
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】複合体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20230427BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230427BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20230427BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
B32B7/022
D03D1/00 A
D04B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173313
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千田 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 大世
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩也
(72)【発明者】
【氏名】増田 恒夫
【テーマコード(参考)】
4F100
4L002
4L048
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AL09A
4F100BA02
4F100DC11A
4F100DD01B
4F100DG01B
4F100DG12B
4F100DG13B
4F100GB08
4F100GB33
4F100GB61
4F100GB66
4F100GB81
4F100GB87
4F100GB90
4F100HB00A
4F100HB31A
4F100JB16A
4F100JK08B
4L002AA05
4L002AA07
4L002AB02
4L002BA01
4L002BB01
4L002DA00
4L002EA05
4L002FA06
4L048AA20
4L048AA26
4L048AB06
4L048BA01
4L048CA01
4L048DA24
4L048DA41
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】身体への装着感に優れ、且つ樹脂成形品と繊維構造体との接着性に優れる複合体の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む樹脂成形品と、上記樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ破断伸度が50.0%以上である繊維構造体と、を備える、複合体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む樹脂成形品と、
前記樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ破断伸度が50.0%以上である繊維構造体と、
を備える、複合体。
【請求項2】
前記繊維構造体の前記樹脂成形品と接する表面における山頂点の算術平均曲率が、25.0mm-1以上である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記繊維構造体の前記樹脂成形品と接する界面の展開面積比が、0.070%以上である、請求項1又は請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂を含む樹脂成形品と、
前記樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす、繊維構造体と、
を備える、複合体。
(a)前記繊維構造体の前記樹脂成形品と接する表面における山頂点の算術平均曲率が、25.0mm-1以上である。
(b)前記繊維構造体の前記樹脂成形品と接する界面の展開面積比が、0.070%以上である。
【請求項5】
前記樹脂成形品が、三次元ラティス構造を少なくとも一部に含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
前記樹脂成形品を複数備え、
前記複数の樹脂成形品が、線状であり、並列することにより模様を形成する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリエステルから選択される1種以上の化合物を含む、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂成形品と、繊維構造体と、を備える複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元樹脂成形品を製造する方法として、金型内へ樹脂組成物を射出し、成形する方法(射出成形法)が知られている。
近年、三次元樹脂成形品には様々な特性が要求されており、優れた柔軟性、弾性等を有していることが求められる。
上記要求に対し、特許文献1~特許文献4では、特徴的な幾何構造を有する樹脂成形品が開示されており、これらの樹脂成形品が有する構造は、三次元ラティス構造とも呼ばれている。また、三次元ラティス構造を有する樹脂成形品によれば、樹脂成形品の軽量化を達成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10744914号明細書
【特許文献2】米国特許第10457175号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/076257号
【特許文献4】米国特許第10286821号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~特許文献4において開示される三次元ラティス構造を有する樹脂成形品では、身体に身に付ける用途への展開を考慮した際に、身体への「装着感」が悪いという課題があった。「装着感」とは、例えば、身体へのフィット性、肌触り、汗をかいた場合の不快感、さらには、身体を動かした場合の振動抑制において改善の余地があり、それらが原因で使用者に不快感を与えてしまうという課題があった。また、樹脂成形品と繊維構造体との接着性が悪く、時間が経つにつれて剥がれてきてしまうという課題があった。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、身体への装着感に優れ、且つ樹脂成形品と繊維構造体との接着性に優れる複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 熱可塑性樹脂を含む樹脂成形品と、
上記樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ破断伸度が50.0%以上である繊維構造体と、
を備える、複合体。
<2> 上記繊維構造体の上記樹脂成形品と接する表面における山頂点の算術平均曲率が、25.0mm-1以上である、上記<1>に記載の複合体。
<3> 上記繊維構造体の上記樹脂成形品と接する界面の展開面積比が、0.070%以上である、上記<1>又は<2>に記載の複合体。
<4> 熱可塑性樹脂を含む樹脂成形品と、
上記樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす、繊維構造体と、
を備える、複合体。
(a)上記繊維構造体の上記樹脂成形品と接する表面における山頂点の算術平均曲率が、25.0mm-1以上である。
(b)上記繊維構造体の上記樹脂成形品と接する界面の展開面積比が、0.070%以上である。
<5> 上記樹脂成形品が、三次元ラティス構造を少なくとも一部に含む、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の複合体。
<6> 上記樹脂成形品を複数備え、上記複数の樹脂成形品が、線状であり、並列することにより模様を形成する、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の複合体。
<7> 上記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリエステルから選択される1種以上の化合物を含む、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の複合体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、装着感に優れ、且つ樹脂成形品と繊維構造体との接着性に優れる複合体を提供ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、本開示の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。
図3図3は、本開示の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。
図4図4は、本開示の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。
図5図5は、本開示の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。
図6図6は、本開示の複合体が備える樹脂成形品の一実施形態を示す斜視図である。
図7図7は、実施例において製造した複合体の模式断面図である。
図8図8は、実施例4-1で製造した複合体が備える網目状の三次元樹脂成形品を示す上面図である。
図9図9は、実施例において製造した樹脂成形品の三次元ラティス構造を構成する幾何構造を示す斜視図である。
図10図10は、実施例において作製した樹脂成形品の斜視図である。
図11図11は、実施例において作成した樹脂成形品の密度を横軸、ヤング率を縦軸とするAshby Mapを示す図である。
図12図12は、実施例において作製した樹脂成形品の斜視図である。
図13図13は、実施例において作製した樹脂成形品の斜視図である。
図14図14は、実施例において作成した樹脂成形品及び複合体の密度を横軸、ヤング率を縦軸とするAshby Mapを示す図である。
図15図15は、実施例において作成した樹脂成形品及び複合体の密度を横軸、ヤング率を縦軸とするAshby Mapを示す図である。
図16図14は、実施例において作成した複合体の密度を横軸、ヤング率を縦軸とするAshby Mapを示す図である。
図17図17は、実施例において作製した複合体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、合成例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
本開示にて示す各図面における各要素は必ずしも正確な縮尺ではなく、本開示の原理を明確に示すことに主眼が置かれており、強調がなされている箇所もある。
【0013】
<第1の実施形態に係る複合体>
第1の実施形態に係る複合体は、熱可塑性樹脂を含む樹脂成形品と、上記樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ破断伸度が50.0%以上である繊維構造体と、を備える
第1の実施形態に係る複合体は、樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ破断伸度が50.0%以上である繊維構造体を2つ以上備えていてもよい。
【0014】
第1の実施形態に係る複合体は、身体への装着感に優れ、且つ樹脂成形品と繊維構造体との接着性に優れる。
【0015】
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
第1の実施形態に係る複合体は、繊維構造体を備えており、繊維構造体が設けられた面を身体と接するように使用することにより、樹脂成形品のみを使用した場合に比べ、身体への装着感に優れると推測される。
また、第1の実施形態に係る複合体が備える繊維構造体は、破断伸度が50.0%以上であり、表面に凹凸構造が形成されている。破断伸度が50.0%以上である繊維構造体は、表面の微細凹凸の存在により表面積が大きくなり、樹脂に対する摩擦抵抗が大きくなり、且つ、樹脂成形品に対して適切なアンカー効果が生じるため、樹脂成形品と繊維構造体との接着性が良好となると推測される。
【0016】
樹脂成形品が保有する機能と繊維構造体が保有する機能とを複合化させることによって、樹脂成形品単独では得られない機能が得られること、さらに樹脂成形品単独で得られる機能を拡張できる可能性がある。
樹脂成形品は、用途に合わせて、構造体の形状及び含有される樹脂の種類等を変更することにより、例えば、吸音性、電磁波吸収性、柔軟性、衝撃吸収性、振動吸収性、圧力分散性、追従性、弾力性等の機能を有することができる。
上記した機能を有する樹脂成形品と繊維構造体とを複合化することにより、繊維構造体が保有する、吸水性、速乾性、撥水(はっ水)性、防水性、透湿防水性、花粉対策性、UVカット性、遮熱性、遮光性、抗菌防臭性、制菌性、帯電防止(静電・導電)性、保温性、高視認性、クッション性、形態安定性、嵩高性、吸音性、電磁波吸収機能、導電性、ずれ防止性、滑り防止等の機能付与が可能となる。
【0017】
本開示において、樹脂成形品と、繊維構造体とが接する状態とは、図1に示すように、樹脂成形品10と、繊維構造体11とが、積層されている状態のみならず、図2に示すように、樹脂成形品20を構成する樹脂組成物が、繊維構造体21を構成する繊維間に浸み込んだ状態も包含される。なお、図1において、複合体は符号12で示し、図2において、複合体は符号22で示す。
樹脂成形品と、繊維構造体とは、従来公知の接着剤により接着されていてもよいが、生産性の観点からは、接着剤を介することなく、樹脂成形品及び繊維構造体が接することが好ましい。
【0018】
第1の実施形態に係る複合体及び後述する第2の実施形態に係る複合体において、樹脂成形品と、繊維構造体とは少なくとも一部が接していればよい。
図3には、樹脂成形品30の一部と、繊維構造体31の一部とが接する複合体32を示す。
図4には、樹脂成形品40の全体と、繊維構造体41の一部とが接する複合体42を示す。
図5には、樹脂成形品50の一部と、繊維構造体51の全体とが接する複合体52を示す。
また、複合体において、樹脂成形品の全体と、繊維構造体の全体とが接していてもよい(図示せず)。
【0019】
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、第1の実施形態に係る複合体及び後述する第2の実施形態に係る複合体において、樹脂成形品と繊維構造体とが接する面積は、150mm以上であることが好ましく、250mm以上であることがより好ましい。
【0020】
第1の実施形態に係る複合体のヤング率は、4250kPa以下であってもよく、4000kPa以下であってもよく、3500kPa以下であってもよい。
複合体のヤング率は、使用する樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂の種類、樹脂成形品の構造、使用する繊維構造体の種類等を変更することにより調整することができる。
【0021】
複合体のヤング率の測定は、押し込み型硬さ試験機を用いて行う。
より具体的には、押し込み硬さ試験機の定盤に複合体を、繊維構造体が定盤と接するように、配置し、複合体を構成する樹脂成形品の中央部を圧力センサーにより、荷重が5Nに達するまで、0.5mm/sの速度で荷重を加えることにより、複合体のヤング率の測定を5回行い、ヤング率の平均値を採用する。
なお、圧力センサーには、球面状のプローブ(30Φ)を取り付けた状態で上記ヤング率の測定を行う。
押し込み硬さ試験機としては、株式会社テック技販製のYAWASA MSE5021-1-SL又はこれと同程度の装置を使用することができる。
【0022】
(樹脂成形品)
樹脂成形品に含まれる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、(メタ)アクリル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリエーテルイミド及びポリエステルからなる群より選択される1種以上の化合物を含むことができる。
また、熱可塑性樹脂は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂を含んでいてもよい。
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリエステルから選択される1種以上の化合物(以下、特定熱可塑性化合物ともいう。)を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンを含む場合、ポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0023】
樹脂成形品の総質量に対する熱可塑性樹脂の含有率(熱可塑性樹脂の質量/樹脂成形品の総質量×100)は、特に限定されるものではないが、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の含有率の上限は、特に限定されるものではなく、99質量%以下とすることができる。

熱可塑性樹脂が特定熱可塑性化合物を含む場合、樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、熱可塑性樹脂の総質量に対する特定熱可塑性化合物の含有率(特定熱可塑性化合物の質量/熱可塑性樹脂の総質量×100)は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。特定熱可塑性樹脂の含有率の上限は、特に限定されるものではなく、99質量%以下とすることができる。
【0024】
樹脂成形品は、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
樹脂成形品の構造は、特に限定されるものではなく、複合体の用途に応じ、適宜変更することが好ましく、三次元構造を有することが好ましく、三次元ラティス構造を少なくとも一部に含むことがより好ましい。
三次元ラティス構造とは、直線、曲線または円から構成される、三次元の格子状単位体が連続的に繰り返される構造のことを意味する。
三次元ラティス構造を有する樹脂成形品の例を図6に単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子を基に作成した(a)~(g)の6種類示すが、これらに限定されるものではない。内部を分割する基本単位の繰り返し回数と,柱の太さをそれぞれ独立に変化させた形状であってもよい。
ラティス構造は、枝状に分岐した格子が周期的に並んだもののみではなく、広義に解釈される。
従来は中実であった構造物をこのようなラティス構造にすることによって、外形は元の形状を保ちつつ、軽量化を図ることができる。さらに、ラティス構造を変えることによって、ラティス構造を構成する素材を変えることなく、みかけの剛性やポアソン比などの材料挙動を制御することもできる。
ラティス構造を工夫することで、ソリッドな素材単体では実現のできない0.5を超えるポアソン比や、負の屈折率などの材料挙動を人工的に作り出すこともできることが知られている。ラティス構造を用いることで、素材固定の制約に縛られることなく用途に最適な材料挙動を設計することもできる。
【0026】
本開示の複合体は、樹脂成形品を複数備えていてもよく、複数の樹脂成形品が、線状であり、並列することにより模様を形成していてもよい。
樹脂成形品の構造は、各用途に求められる機能に合わせて設計することができる。
一実施形態において、本開示の複合体は、異なる色の顔料又は染料を含む、複数の樹脂成形品を備え、且つ樹脂成形品により模様が形成されていてもよい。
【0027】
樹脂成形品のヤング率は、4250kPa以下であってもよく、4000kPa以下であってもよく、3500kPa以下であってもよい。
樹脂成形品のヤング率は、樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂の種類、樹脂成形品の構造等を変更することにより調整することができる。
【0028】
樹脂成形品のヤング率の測定は、押し込み型硬さ試験機を用いて行う。
より具体的には、押し込み硬さ試験機の定盤に樹脂成形品を配置し、この樹脂成形品の中央部を圧力センサーにより、荷重が5Nに達するまで、0.5mm/sの速度で荷重を加えることにより、樹脂成形品のヤング率の測定を5回行い、ヤング率の平均値を採用する。
なお、圧力センサーには、球面状のプローブ(30Φ)を取り付けた状態で上記ヤング率の測定を行う。
押し込み硬さ試験機としては、株式会社テック技販製のYAWASA MSE5021-1-SL又はこれと同程度の装置を使用することができる。
【0029】
樹脂成形品の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1mm~10000mmとすることができる。
【0030】
樹脂構造体は、例えば、吸音性、電磁波吸収性、柔軟性、衝撃吸収性、振動吸収性、圧力分散性、追従性、弾力性などの機能を制御するための構造体設計が可能である。
【0031】
(繊維構造体)
本開示において、繊維構造体とは、少なくとも1種の繊維を含む構造体を意味する。
繊維構造体を構成する繊維は特に限定されず、合成繊維であってもよく、天然繊維であってもよく、無機繊維であってもよい。
合成繊維を構成するポリマーは、特に限定されるものではないが、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレ-ト(PMMA)、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル-メタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン-アクリレート共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド-3,4’-オキシジフェニレンテレフタラミド共重合体、ポリメタフェニレンイソフタラミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセテート、セルロース、ポリエチレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン(FVDF)、ポリウレタン(PU)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリビニルメチルケトン、ポリエチレンイミド(PEI)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリ臭化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリクロロプレン、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びその水添物、フィブロイン、天然ゴム、キチン、キトサン、コラーゲン、ゼインなどが挙げられ、これらは共重合したものであっても、混合物でもよい。
天然繊維としては、セルロース繊維、タンパク質繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、スチール繊維等が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、Y、ZrO、チタニア等のゾルゲル法により合成することができる無機材料から構成される無機繊維を使用してもよい。
繊維構造体を構成する繊維は、1種類であってもよく、2種以上であってもよい。
繊維は、フィラメント、混繊糸、紡績糸等として用いることができる。
繊維構造体は、用途に応じて機能付与することも可能であり、各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、撥水剤、吸水剤、安定剤、紫外線吸収剤、金属粒子、無機化合物粒子、香料、脱臭剤、抗菌剤、ガス吸着剤等が挙げられる。 また、撥水加工、防炎加工、難燃加工、抗菌加工などの機能加工を施してもよい。
繊維構造体の機能は、特に限定されるものではなく、例えば吸水性、速乾性、撥水(はっ水)性、防水性、透湿防水性、花粉対策性、UVカット性、遮熱性、遮光性、抗菌防臭性、制菌性、帯電防止(静電・導電)性、保温性、高視認性、クッション性等の機能を保有していることが好ましい。
【0032】
繊維構造体の形態は、特に限定されるものではなく、織物であってもよく、編物であってもよく、不織布であってもよい。上記した中でも、樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、編物が好ましい。
繊維構造体は、横編み(緯編)組織を有する編物であってもよく、経編み(経編)組織を有する編物であってもよい。
横編み組織としては、丸編(ダブルニット等)、平編(天竺編等)、リブ編(フライス、ゴム編等)、両面編(インターロック、スムース、ダブルリブ等)、パール編(リンクス編、ガーター編等)などを挙げることができる。また、これらの変化形として、タック編、ウェルト編、レース目編(レース編)、アイレット編、添え糸編、パイル編、インレイ編、ジャガード編、浮き編み等が挙げられる。
縦編み組織としては、デンビー編(シングルデンビー編等)、トリコット編、アトラス編、バンダイク編、シングルコード編、プレーンコード編、ベルリン編、二目編、ダブルデンビー編、サテン編などが挙げられる。
織物としては、平織組織を有する繊維構造体、リップストップ組織を有する繊維構造体、ツイル組成を有する繊維構造体等が挙げられる。
【0033】
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、繊維構造体の破断伸度は、50.0%以上であることが好ましく、70.0%以上であることがより好ましく、85.0%以上であることがさらに好ましく、100.0%以上であることが特に好ましい。
繊維構造体の破断伸度の上限は、特に限定されるものではなく、例えば、500%以下とすることができる。
繊維構造体の破断伸度は、繊維構造体を構成する繊維の種類、繊維構造体の組織等を変更することにより調整することができる。
【0034】
本開示において、繊維構造体の破断伸度は以下のようにして測定する。
まず、繊維構造体を幅25mm、長さ100mmとなるようにカットし、試験片を得る。
JIS-L-1015:2010に準拠し、引張試験機を使用して、試験片を破断するまで引張し、破断時の試験片の長さ及び試験片の引張試験前の長さを下記式に代入することにより、破断伸度を測定する。なお、破断伸度の測定において、チャック間距離は100mm、引張速度は50mm/分とする。また、引張試験機としては、株式会社島津製作所製のEZ-LX又はこれと同程度の装置を使用することができる。
破断伸度=(破断時の試験片の長さ-試験前の試験片の長さ)/試験前の試験片の長さ×100
【0035】
繊維構造体の破断強度は、特に限定されるものではないが、50N~500Nであることが好ましく、75N~400Nであることがより好ましい。
【0036】
本開示において、繊維構造体の破断強度は、以下のようにして測定する。
まず、繊維構造体を幅25mm、長さ100mmとなるようにカットし、試験片を得る。
JIS-L-1015:2010に準拠し、引張試験機を使用することにより、破断強度を測定する。測定条件は、破断伸度と同条件とする。
【0037】
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、繊維構造体の樹脂成形品と接する表面における山頂点の算術平均曲率(Spc)は、25.0mm-1以上であることが好ましく、30.0mm-1以上であることがより好ましく、35.0mm-1以上であることがさらに好ましく、45.0mm-1以上であることが特に好ましい。
繊維構造体の樹脂成形品と接する表面におけるSpcの上限は、特に限定されるものではないが、130mm-1以下であることが好ましく、110mm-1以下であることがより好ましい。
【0038】
Spcとは、表面の山頂点の主曲率の平均であり、半径の逆数で表わされる。繊維構造体のSpcは、繊維構造体を構成する繊維の種類、繊維構造体の組織等を変更することにより調整することができる。
【0039】
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、繊維構造体の樹脂成形品と接する界面の展開面積比(Sdr)は、0.070%以上であることが好ましく、0.100%以上であることがより好ましく、0.150%以上であることがさらに好ましい。
繊維構造体の樹脂成形品と接する表面におけるSdrの上限は、特に限定されるものではないが、0.900%以下であることが好ましく、0.800%以下であることがより好ましい。
【0040】
Sdrとは、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表し、完全に平坦な面のSdrは0となる。繊維構造体のSdrは、繊維構造体を構成する繊維の種類等を変更することにより調整することができる。
【0041】
本開示において、Spc及びSdrは、ISO25178に準拠し、形状解析レーザー顕微鏡を使用し、繊維構造体の表面の任意の5か所において測定したSpcの平均値及びSdrの平均値を指す。
なお、撮影倍率は40倍、走査範囲は横の長さが7.6mm、縦の長さが5.7mmの四角形とする。
形状解析レーザー顕微鏡としては、株式会社KEYENCE製のVR-3000又はこれと同程度の装置を使用することができる。
【0042】
繊維構造体の厚さは、0.01mm~1000mmであることが好ましく、0.3mm~300mmであることがより好ましい。繊維構造体の厚さを上記数値範囲内とすることにより、複合体の身体への装着感をより向上することができる。
【0043】
<第2の実施形態に係る複合体>
第2の実施形態に係る複合体は、熱可塑性樹脂を含む樹脂成形品と、上記樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす、繊維構造体と、を備える。
第2の実施形態に係る複合体は、樹脂成形品と少なくとも一部が接し、且つ下記(a)及び(b)の少なくとも一方の要件を満たす繊維構造体を2つ以上備えていてもよい。
(a)前記繊維構造体の樹脂成形品と接する表面における山頂点の算術平均曲率が、25.0mm-1以上である。
(b)前記繊維構造体の樹脂成形品と接する界面の展開面積比が、0.070%以上である。
【0044】
第2の実施形態に係る複合体は、身体への装着感に優れ、且つ樹脂成形品と繊維構造体との接着性に優れる。
【0045】
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
第2の実施形態に係る複合体は、繊維構造体を備えており、繊維構造体が設けられた面を身体と接するように使用することにより、樹脂成形品のみを使用した場合に比べ、身体への装着感に優れると推測される。また、第2の実施形態に係る複合体は、繊維構造体を備えており、樹脂成形品単体に比べ、吸汗性及び速乾性に優れると推測される。
また、第2の実施形態に係る複合体が備える繊維構造体は、表面における山頂点の算術平均曲率が25.0mm-1以上及び界面の展開面積比が0.070%以上の少なくとも一方を満たす。上記繊維構造体は、表面の比表面積が高い傾向にあり、上記凹凸構造が樹脂成形品に対してアンカー効果を発揮することにより、樹脂成形品と繊維構造体との接着性が改善されると推測される。
【0046】
(樹脂成形品)
第2の実施形態に係る複合体が備える樹脂成形品は、第1の実施形態に係る複合体が備える樹脂成形品と同様のものを使用することができるため、ここでは記載を省略する。
【0047】
(繊維構造体)
繊維構造体を構成する繊維は、第1の実施形態に係る複合体が備える繊維構造体を構成する繊維と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0048】
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、繊維構造体の樹脂成形品と接する表面におけるSpcは、30.0mm-1以上であることが好ましく、35.0mm-1以上であることがより好ましく、45.0mm-1以上であることがさらに好ましい。
繊維構造体の樹脂成形品と接する表面におけるSpcの上限は、特に限定されるものではないが、130mm-1以下であることが好ましく、110mm-1以下であることがより好ましい。
【0049】
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、繊維構造体の樹脂成形品と接する表面におけるSdrは、0.100%以上であることが好ましく、0.150%以上であることがより好ましい。
繊維構造体の樹脂成形品と接する表面におけるSdrの上限は、特に限定されるものではないが、0.900%以下であることが好ましく、0.800%以下であることがより好ましい。
【0050】
樹脂成形品と繊維構造体との接着性を向上するという観点から、繊維構造体の破断伸度は、50.0%以上であることが好ましく、70.0%以上であることがより好ましく、85.0%以上であることがさらに好ましく、100.0%以上であることが特に好ましい。
繊維構造体の破断伸度の上限は、特に限定されるものではなく、例えば、500%以下とすることができる。
【0051】
繊維構造体の破断強度及び厚さの好ましい数値範囲は、第1の実施形態に係る複合体が備える繊維構造体と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0052】
<複合体の用途>
第1の実施形態に係る複合体及び第2の実施形態に係る複合体の用途は特に限定されるものではなく、身体と接する物品として好適に使用することができる。
身体と接する物品としては、義手、義足、義肢、コルセット、サポーター、パワーアシストスーツ等の医療器具及び医療機器、ヘルメット内装、プロテクター等の防護具、車両シート、車両ヘッドレスト、アームレスト等の自動車関連部品、靴、履物、椅子、ソファー、マットレス、枕等の一般用途、床材、壁材等の建築内装材などが挙げられる。
さらに、当該発明の繊維構造体はセンシング機能を有するものを使用することができ、当該複合体にセンシング機能を付与することも可能である。繊維構造体へのセンサー付与の方法は特に限定されるものではなく、繊維構造体にセンサーを貼付、あるいは繊維状センサーを織り込むことも可能である。
さらに、人工骨、人工関節、人工歯根、生体埋込治療材料、生体埋込医療機器、器具等としても好適に使用することができる。例えば、医療分野で用いられる部材では、生体適合性の観点から、安易に構成材料を変えることができないが、ラティス構造を用いることで、素材固定の制約に縛られることなく用途に最適な材料挙動を設計することができる。
【0053】
<複合体の製造方法>
第1の実施形態に係る複合体及び第2の実施形態に係る複合体は、繊維構造体と少なくとも一部が接するように、樹脂成形品を形成することにより製造することができる。
樹脂成形品の形成には、例えば、3Dプリンタ装置を使用することができる。
3Dプリンタ装置を使用することにより、通常は、製造が困難である、複雑な形状の樹脂成形品を容易に製造できる。例えば、複雑な曲面を持った部材や、複数の部材を接合しないと実現できなかったアセンブリパーツを製造することができる。
【0054】
より具体的には、以下のようにして、第1の実施形態に係る複合体及び第2の実施形態に係る複合体を製造することができる。
まず、3Dプリンタ装置の下に、繊維構造体を配置する。繊維構造体は、所望の大きさにカットされたものを使用してもよい。
次いで、3Dプリンタ装置が備えるノズルより、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を選択された位置に押出又は射出後、硬化させることにより、繊維構造体と少なくとも一部が接する樹脂組成物の第1硬化層が形成される。
第1硬化層上に、設計図面に基づいて、硬化層を繰り返し形成することにより、樹脂成形品が形成され、複合体が製造される。
【0055】
上記した複合体の製造方法によれば、樹脂成形品と繊維構造体との間に、接着剤からなる接着層を形成する必要がなく、複合体の生産性を向上することができる。
また、上記製造方法によれば、図2に示すような、樹脂成形品を構成する樹脂組成物が、繊維構造体を構成する繊維間に浸み込んだ状態の複合体が製造されるため、樹脂成形品と繊維構造体との接着性をより向上することができる。
【0056】
樹脂組成物を射出する際のノズル温度は、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上の温度であれば、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂の融点+5℃~融点+80℃であることが好ましく、融点+10℃~融点+50℃であることがより好ましい。
ノズル温度を上記数値範囲内とすることにより、繊維構造体を構成する繊維間への樹脂組成物の浸み込みが促進されるため、樹脂成形品と繊維構造体との接着性をより向上することができる。
【0057】
3Dプリンタ装置としては、材料押出(熱溶解積層)式3Dプリンタ装置、液槽光重合(光造形)式3Dプリンタ装置、材料噴射式3Dプリンタ装置、結合剤噴射式3Dプリンタ装置、粉末床溶融結合式3Dプリンタ装置、シート積層式3Dプリンタ装置、指向性エネルギー体積式3Dプリンタ装置等を挙げることができる。
材料押出式3Dプリンタとしては、エス.ラボ株式会社製のGEM550D、FLASHFORGE社製のDREAMER等が挙げられる。
【0058】
繊維構造体は、上記したように、織物であってもよく、編物であってもよく、不織布であってもよく、その製造方法についても限定されるものはなく、従来公知の技術を利用することにより製造することができる。また、市販される繊維構造体を使用してもよい。
【実施例0059】
以下、実施例によって本開示の一実施形態を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
<使用した樹脂の詳細>
・ポリエステルエラストマー:帝人株式会社製、ヌーベラン(登録商標)TRB-EL2
・ポリアミドエラストマー:宇部興産株式会社製、UBESTA(登録商標)XPA
・ポリプロピレン:住友化学株式会社製、NOBLEN(登録商標)
【0061】
<使用した繊維構造体A~Eの詳細>
繊維構造体A~Eとしては、以下の繊維構造体を使用した。
・繊維構造体A:ポリエステル繊維と、ポリエステル繊維及びポリトリメチレンテレフタレートの複合繊維との混繊糸を含む、天竺編物
・繊維構造体B:ポリエステル繊維と、ポリウレタン繊維からなるダブルニット編物
・繊維構造体C:ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維からなるツイル織物
・繊維構造体D:帝人フロンティア株式会社製ウェーブロン(登録商標)繊維からなる平織物
・繊維構造体E:ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維からなるリップストップ織物
【0062】
<繊維構造体A~Eの破断伸度及び破断強度の測定>
上記のように作製した繊維構造体A~Eを、幅25mm、長さ100mmとなるようにレーザーカッター(GCC社製、LaserPro SPIRIT)によりカットし、試験片を得た。
JIS-L-1015:2010に準拠し、引張試験機(株式会社島津製作所製、EZ-LX)を使用して、上記試験片の破断伸度(%)及び破断強度(N)を測定した。
繊維構造体A~Eの破断伸度は、それぞれ、112.7%、238.5%、87.1%、40.7%、37.0%であった。
なお、破断伸度は、下記式により求めた。
破断伸度=(破断時の試験片の長さ-試験前の試験片の長さ)/試験前の試験片の長さ×100
【0063】
繊維構造体A~Eの破断強度は、それぞれ、114.4N、130.4N、321.3N、241.8N、145.0Nであった。
【0064】
上記破断伸度及び破断強度の測定条件は、以下の通りとした。
(測定条件)
・チャック間距離:100mm
・動作モード:単一動作
・引張速度:50mm/分
【0065】
<繊維構造体A~Eの表面における山頂点の算術平均曲率(Spc)及び界面の展開面積比(Sdr)の測定>
ISO25178に準拠し、形状解析レーザー顕微鏡(株式会社KEYENCE製、VR-3000)を使用して、繊維構造体A~E表面の任意の5か所における山頂点の算術平均曲率(Spc)及び界面の展開面積比(Sdr)の平均値を測定した。
なお、撮影倍率は40倍、走査範囲は横の長さが7.6mm、縦の長さが5.7mm四角形とした。
【0066】
繊維構造体A~Eの表面におけるSpcは、それぞれ、81.4mm-1、55.5mm-1、41.0mm-1、19.1mm-1、12.9mm-1であった。
繊維構造体A~Eの表面におけるSdrは、それぞれ、0.560%、0.154%、0.252%、0.044%、0.015%であった。
【0067】
[実施例1-1]
繊維構造体Aを上記レーザーカッターにより、幅25mm、長さ60mmにカットした。
【0068】
3Dプリンタ装置(エス.ラボ株式会社製、GEM550D)を使用して、上記繊維構造体Aとその一部が接するように、幅25mm、長さ60mm、厚さ2mmの板状(非網目状)の三次元樹脂成形品を形成し、複合体を得た。なお、繊維構造体は、Spc及びSdrを測定した繊維構造体Aの表面において、三次元樹脂成形品と接する。
図7に示すように、樹脂成形品70と、繊維構造体71とは、その一部が接し、接着部分の長さLは10mmとした。図7において、複合体は符号72で示す。
【0069】
ペレット樹脂(造形材料)としてポリエステルエラストマー(帝人株式会社製、TRB-EL2)を使用し、材料押出方式(MEX)の3Dプリンタ装置(エス.ラボ株式会社製、GEM550D)を用いて、上記三次元樹脂成形品を作成した。
なお、上記3Dプリンタ装置は、ホッパからペレット樹脂を投入、一軸押出機で溶融及び混練した後に、吐出孔ノズルから樹脂を吐出するものである。
吐出孔のサイズは1.0mmとし,ノズル付近のヒーター温度は235℃に設定した。ノズルから、熱電対式温度センサーを20mmまで差し込み、樹脂温度を測定したところ、224.4℃であった。
【0070】
[実施例1-2]
繊維構造体Aを、繊維構造体Bに変更した以外は、実施例1-1と同様にして、複合体を製造した。
【0071】
[実施例1-3]
繊維構造体Aを、繊維構造体Cに変更した以外は、実施例1-1と同様にして、複合体を製造した。
【0072】
[比較例1-1]
繊維構造体Aを、繊維構造体Dに変更した以外は、実施例1-1と同様にして、複合体を製造した。
【0073】
[比較例1-2]
繊維構造体Aを、繊維構造体Eに変更した以外は、実施例1-1と同様にして、複合体を製造した。
【0074】
[実施例2-1]
ペレット樹脂(造形材料)として、ポリアミドエラストマー(宇部興産株式会社製、UBESTA(登録商標)XPA)を使用し、ノズル付近のヒーター温度を170℃に変更した以外は、実施例1-2と同様にして、複合体を製造した。ノズルから、熱電対式温度センサーを20mmまで差し込み、樹脂温度を測定したところ、161.1℃であった。
【0075】
[比較例2-1]
ペレット樹脂(造形材料)として、ポリアミドエラストマー(宇部興産株式会社製、UBESTA(登録商標)XPA)を使用し、ノズル付近のヒーター温度を170℃に変更し、且つ繊維構造体Bを繊維構造体Eに変更した以外は、実施例1-2と同様にして、複合体を製造した。
【0076】
[実施例3-1]
ペレット樹脂(造形材料)として、ポリプロピレン(住友化学株式会社製、NOBLEN(登録商標)を使用し、ノズル付近のヒーター温度を240℃に変更した以外は、実施例1-2と同様にして、複合体を製造した。ノズルから、熱電対式温度センサーを20mmまで差し込み、樹脂温度を測定したところ、227.3℃であった。
【0077】
[実施例4-1]
3Dプリンタ装置(エス.ラボ株式会社製、GEM550D)を使用して、上記繊維構造体Bとその一部が接するように、図8に示す、幅25mm、長さ60mm、厚さ2mmの網目状の三次元樹脂成形品を形成し、複合体を得た以外は、実施例1-2と同様にして、複合体を製造した。
【0078】
<<身体への装着感評価>>
上記実施例1-1~実施例1-3及び比較例1-1~比較例1-2において製造した複合体の繊維構造体及び樹脂成形品が接着部分の繊維構造体側表面の身体への装着感と、これら複合体を構成する樹脂成形品表面の身体への装着感とを比較したところ、上記実施例1-1~実施例1-3及び比較例1-1~比較例1-2において製造した複合体のほうが身体への装着感に優れていた。
上記実施例2-1及び比較例2-1において製造した複合体の繊維構造体及び樹脂成形品が接着部分の繊維構造体側表面の身体への装着感と、これら複合体を構成する樹脂成形品表面の身体への装着感とを比較したところ、上記実施例2-1及び比較例2-1において製造した複合体のほうが身体への装着感に優れていた。
上記実施例3-1において製造した複合体の繊維構造体及び樹脂成形品が接着部分の繊維構造体側表面の身体への装着感と、これら複合体を構成する樹脂成形品表面の身体への装着感とを比較したところ、上記実施例3-1において製造した複合体のほうが身体への装着感に優れていた。
上記実施例4-1において製造した複合体の繊維構造体及び樹脂成形品が接着部分の繊維構造体側表面の身体への装着感と、これら複合体を構成する樹脂成形品表面の身体への装着感とを比較したところ、上記実施例4-1において製造した複合体のほうが身体への装着感に優れていた。
【0079】
<<接着性評価>>
上記3Dプリンタ装置を使用して、幅25mm、長さ100mm、厚さ2mmの上記実施例1-1等において使用したポリエステルの板状(非網目状)の三次元樹脂成形品を作製した。
JIS-L-1015:2010に準拠し、上記引張試験機を使用して、上記樹脂成形品の破断強度(N)を測定したところ、205.2Nであった。
同様にして、実施例2-1において使用したポリアミドの三次元樹脂成形品、及び実施例3-1において使用したポリプロピレンの板状(非網目状)の三次元樹脂成形品を作製し、破断強度を測定したところ、共に500N以上あった。
同様にして、実施例4-1において使用したポリエステルの網目状の三次元樹脂成形品を作製し、破断強度を測定したところ、65.8Nであった。
【0080】
上記破断強度の測定条件は、以下の通りとした。
(測定条件)
・チャック間距離:100mm
・動作モード:単一動作
・引張速度:50mm/分
【0081】
上記実施例1-1~実施例1-3、実施例2-1、実施例3-1、実施例4-1、比較例1-1~比較例1-2及び比較例2-1において製造した複合体の接着強度を上記破断強度の測定と同様の方法により測定した。
なお、接着強度は、複合体が備える繊維構造体及び三次元樹脂成形品の接着部分が剥離した時点、又は繊維構造体若しくは三次元樹脂成形品が破断した時点の強度とした。
【0082】
繊維構造体の破断強度又は三次元樹脂成形品の破断強度に対する複合体の接着強度の比(複合体の接着強度/繊維構造体の破断強度又は三次元樹脂成形品の破断強度、以下、強度比ともいう)を求め、下記評価基準に基づき評価し、表1~表4にまとめた。なお、表1~表4には、複合体の接着強度についても合わせてまとめた。
なお、上記比の算出において、分母における繊維構造体の破断強度及び三次元樹脂成形品の破断強度の選択は、破断強度の低い一方を採用することにより行った。
なお、実施例1-1、実施例1-2及び実施例2-1においては、接着部分の剥離よりも先に繊維構造体の破断が起こった。
(評価基準)
A:強度比が、0.500以上であった。
B:強度比が、0.500未満であった。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
表1及び表2から、破断伸度が50.0%以上である繊維構造体を備える実施例の複合体は、破断伸度が50.0%未満である繊維構造体を備える比較例の複合体に対し、繊維構造体及び三次元樹脂成形品の接着性に優れていることが分かる。
表1及び表2から、表面における山頂点の算術平均曲率が25.0mm-1以上及び界面の展開面積比が0.070%以上の少なくとも一方を満たす繊維構造体を備える実施例の複合体は、これら条件を共に満たさない繊維構造体を備える比較例の複合体に対し、繊維構造体及び三次元樹脂成形品の接着性に優れていることが分かる。
実施例1-1、実施例1-2、実施例2-1及び実施例4-1においては、接着部分の剥離よりも先に繊維構造体の破断が起こったことから繊維構造体及び三次元樹脂成形品の接着性に特に優れていることが分かる。
【0088】
[三次元ラティス構造を含む樹脂成形品を備える複合体の製造例]
<使用した樹脂の詳細>
・ポリエステルエラストマー:帝人株式会社製、ヌーベラン(登録商標)TRB-EL2(図中においては、TRB-EL2と記載する。)
・ポリエステルエラストマー混合物:ポリエステルエラストマー(帝人株式会社製、ヌーベラン(登録商標)TRB-EL2)と、ポリエステルエラストマー(ポリプラスチックス株式会社性、ジュラネックス(登録商標))との混合品(図中においては、TRB-EL2改と記載する。)
【0089】
<使用した繊維構造体の詳細>
・繊維構造体:ポリエステル繊維と、ポリウレタン繊維からなるダブルニット編物
【0090】
<三次元ラティス構造について>
三次元ラティス構造を構成する幾何構造は、熱溶解積層方式(材料押出法)による造形が可能と確認されている4パターンの幾何学構造を基本として、新たに単純立方格子と面心立方格子に基づく構造を加え、それぞれについて全体を囲むフレーム及び梁の有無を整理した、図9に示す6パターンの幾何学構造とした。
なお、幾何構造は主に単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子を基に作成した。
【0091】
図10に示すように、作製する樹脂成形品は、内部を分割する基本単位の繰り返し回数(Lattice period)を5種類(4回、6回、8回、10回又は12回の繰り返し回数)、柱の太さ(thicknessを4種類(1.0mm、1.5mm、2.0mm又は2.5mmの太さ)をそれぞれ独立に変化させた形状の三次元ラティス構造を含む。
なお、上記樹脂成形品のサイズは30mm×30mm×30mmとした。
【0092】
<使用した3Dプリンタの詳細>
3Dプリンタは、材料押出式3Dプリンタである、エス.ラボ株式会社製、GEM550D(ノズル径0.5mm、1.0mm)を使用した。
【0093】
<ヤング率及び密度の測定方法>
複合体又は樹脂成形品のヤング率の測定は、押し込み型硬さ試験機(株式会社テック技販製のYAWASA MSE5021-1-SL)を用いて行った。
より具体的には、押し込み硬さ試験機の定盤に、繊維構造体が定盤と接するように複合体を配置し、又は樹脂成形品を配置し、樹脂成形品の中央部を圧力センサーにより、荷重が5Nに達するまで、0.5mm/sの速度で荷重を加えることにより、複合体又は樹脂成形品のヤング率の測定を5回行い、ヤング率の平均値を採用した。
なお、圧力センサーには、球面状のプローブ(30Φ)を取り付けた状態で上記ヤング率の測定を行った。
【0094】
樹脂成形品の密度の測定は、樹脂成形品の重量を電子天秤(エー・アンド・デイ社、EW-1500I)を用いて質量を測定し、電子ノギス(Mitutoyo社製、CD-15AX)により3辺の外径寸法の計測を行った結果から積を求め,空隙を含んだ嵩密度を算出することにより行った。
【0095】
<樹脂成形品の製造>
上記3Dプリンタを用いて、上記ポリエステルエラストマーの樹脂成形品A(30mm×30mm×30mm)を得た。なお、樹脂成形品Aの構造は、最密充填構造とした。
上記樹脂成形品Aのヤング率及び密度を測定し、表1にまとめた。
また、ポリエステルエラストマーを、ポリエステルエラストマー混合物に変更し、同様にして樹脂成形品Bを製造し、ヤング率及び密度を測定し、表5にまとめた。
ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品は、ポリエステルエラストマーの樹脂成形品に比べ、ヤング率が、約1.2倍高いことが分かる。
【0096】
【表5】

【0097】
<三次元ラティス構造を含む樹脂成形品の製造>
上記3Dプリンタを用いて、上記ポリエステルエラストマーの樹脂成形品(30mm×30mm×30mm)を得た。樹脂成形品は、繰り返し回数(Lattice period)を5種類(4回、6回、8回、10回又は12回の繰り返し回数)、柱の太さ(thickness)を4種類(1.0mm、1.5mm、2.0mm又は2.5mmの太さ)及び三次元ラティス構造を構成する幾何構造の少なくとも1つを変更した樹脂成形品45種を製造した。
【0098】
上記3Dプリンタを用いて、上記ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品(30mm×30mm×30mm)を得た。樹脂成形品は、繰り返し回数(Lattice period)を5種類(4回、6回又は8回の繰り返し回数)、柱の太さ(thickness)を4種類(1.0mm又は1.5mmの太さ)及び三次元ラティス構造を構成する幾何構造の少なくとも1つを変更した樹脂成形品22種を製造した。なお、ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品は、ポリエステルエラストマーの樹脂成形品に比べ、ヤング率が高い傾向にあるため、やわらかさの付与のためにヤング率を低くコントロールすることを目的とし、多くの格子内に空隙を保有する構造とした。
【0099】
上記のようにして製造した三次元ラティス構造を含む、上記ポリエステルエラストマーの樹脂成形品及び上記ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品について、密度及びヤング率を測定し、Ashby Mapへのマッピングを行った。結果を図11に示す。
【0100】
図11の結果から、上記ポリエステルエラストマーの樹脂成形品は、0.65g/cm程度の密度において、三次元ラティス構造を変化させることにより、ヤング率を692kPa~4264kPaの範囲で変化させることができることを確認した。
ヤング率692kPaの樹脂成形品及びヤング率4265.5kPaの樹脂成形品を図12に示す。なお、図12中、左側の樹脂成形品が、ヤング率692kPaの樹脂成形品であり、右側の樹脂成形品が、ヤング率4265.5kPaの樹脂成形品である。
【0101】
図11の結果から、上記ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品は、0.60g/cm程度の密度において、三次元ラティス構造を変化させることにより、ヤング率を728kPa~2113kPaの範囲で変化させることができることを確認した。
ヤング率728kPaの樹脂成形品及びヤング率2113kPaの樹脂成形品を図13に示す。なお、図13中、左側の樹脂成形品が、ヤング率728kPaの樹脂成形品であり、右側の樹脂成形品が、ヤング率2113kPaの樹脂成形品である。
【0102】
上記結果から、同じ密度においても、樹脂成形品の三次元ラティス構造を変えることにより、ヤング率のコントロール範囲を広げられる可能性があることが示唆された。
【0103】
<三次元ラティス構造を含む樹脂成形品を備える複合体の製造>
上記3Dプリンタを用いて、上記繊維構造体上に、上記ポリエステルエラストマーの樹脂成形品(30mm×30mm×30mm)を形成し、複合体を得た。樹脂成形品は、繰り返し回数(Lattice period)を5種類(4回、6回、8回、10回又は12回の繰り返し回数)及び柱の太さ(thickness)を4種類(1.0mm、1.5mm、2.0mm又は2.5mmの太さ)の少なくとも一方を変更した樹脂成形品45種を製造した。
【0104】
上記のようにして製造した複合体について、密度及びヤング率を測定し、Ashby Mapへのマッピングを行った。結果を図14及び16に示す。
また、複合体を構成する樹脂成形品について、密度及びヤング率を測定し、Ashby Mapへのマッピングを行った。結果を図14に示す。
【0105】
上記3Dプリンタを用いて、上記繊維構造体上に、上記ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品(30mm×30mm×30mm)を形成し、複合体を得た。樹脂成形品は、繰り返し回数(Lattice period)を5種類(4回、6回又は8回の繰り返し回数)及び柱の太さ(thickness)を4種類(1.0mm又は1.5mmの太さ)の少なくとも一方を変更した樹脂成形品22種を製造した。
【0106】
上記のようにして製造した複合体について、密度及びヤング率を測定し、Ashby Mapへのマッピングを行った。結果を図15及び16に示す。
また、複合体を構成する樹脂成形品について、密度及びヤング率を測定し、Ashby Mapへのマッピングを行った。結果を図15に示す。
【0107】
図14及び図15から、ポリエステルエラストマー及びポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品は、共に、ヤング率が高くなるに従い、複合体のヤング率との差異が顕著となっていることがわかる。
図14及び図15から、繊維構造体を備える複合体は、ヤング率が低い傾向にあり、柔らかさを付与できることが示された。
一方で、元々ヤング率の低い樹脂成形品を備える複合体ではヤング率に顕著な差は見られなかった。
【0108】
図16から、ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品を備える複合体は、ポリエステルエラストマーの樹脂成形品を備える複合体に比べ、同じヤング率を、より低密度で達成できる可能性があることがわかった。
例えば、約2000kPaのヤング率を達成するために、ポリエステルエラストマー混合物の樹脂成形品を使用した場合、樹脂成形品の密度を1.08g/cmとする必要があるのに対し、ポリエステルエラストマーの樹脂成形品を使用した場合、樹脂成形品の密度は0.63g/cmでよいことがわかった。
なお、図17に製造した複合体の一例を示す。
【0109】
熱可塑性樹脂の種類、ラティス構造の種類及び繊維構造体の種類を組み合わせて設計を複合体の行うことにより、やわらかさの指標であるヤング率を変えるのみならず、軽量化の設計指針も見いだせる可能性があると考える。
また、目的とするアプリケーションに合わせた複合体の提案が可能となり、繊維構造体を付加することにより、樹脂成形品単独では得られない肌触りの良さや、繊維構造体の機能、例えば吸水・速乾等の機能性をも付与することが可能となる。複合体は、例えば身体に密着するような箇所への使用、ヘルスケア用途などへの展開が期待される。
【符号の説明】
【0110】
10、20、30、40、50、70:樹脂成形品、11、21、31、41、51、71:繊維構造体、12、22、32、42、52、72:複合体、
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