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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063053
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173314
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 浩一
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001FA54
2E001GA12
2E001MA02
2E001MA17
2E001PA05
2E001PA11
(57)【要約】
【課題】目地カバー装置において、カバーの動作を確保しつつ、目地の交差部に生ずるカバー間の隙間を覆うことを可能にする。
【解決手段】目地カバー装置は、目地を介して互いに隣接する一方の建造物12から他方の建造物14側に差し出される遮蔽部材26と、遮蔽部材26の下側で他方の建造物14から差し出されるカバー34と、他方の建造物14側に設けられ、一方の建造物12側に張り出した張出し状態でカバー34を差出し状態に支持する支持部材と、二方向に延びる目地が交わる交差部において、付勢されてカバー34の端部から突出し目地の交差部のうち遮蔽部材26とカバー34で覆うことができない隙間を覆う隙間埋め部材20と、を有する。隙間埋め部材20は、対向する一方の建造物12に押圧されるとカバー34の内部に押し込まれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地を介して互いに隣接する一方の建造物から他方の建造物側に差し出され、前記目地を覆う遮蔽部材と、
前記遮蔽部材の下側で前記他方の建造物から前記一方の建造物側に差し出され、前記目地を覆うカバーと、
前記他方の建造物の側壁面側に設けられ、付勢されて前記一方の建造物側に張り出した張出し状態で前記カバーを差出し状態に支持し、前記一方の建造物に押圧されると前記一方の建造物側への張出しが減少し前記カバーを垂下状態にする支持部材と、
二方向に延びる前記目地が交わる交差部において、付勢されて前記カバーの端部から該カバーが設けられる前記目地の方向に突出し前記目地の前記交差部のうち前記遮蔽部材と前記カバーで覆うことができない隙間を覆い、対向する前記一方の建造物に押圧されると前記カバーの内部に押し込まれる隙間埋め部材と、
を有する目地カバー装置。
【請求項2】
前記隙間埋め部材は、前記交差部で隣り合う2つの前記カバーの前記端部にそれぞれ設けられ、
前記交差部で隣り合う前記カバーがそれぞれ差出し状態にあるとき、隣り合う前記隙間埋め部材同士が近接対向する、請求項1に記載の目地カバー装置。
【請求項3】
前記一方の建造物の入隅で隣り合う2つの前記遮蔽部材と、前記他方の建造物の出隅で隣り合う2つの前記カバーとを有し、
前記隙間埋め部材は、当該2つの遮蔽部材における前記他方の建造物側の端部と、当該2つのカバーの端部との間に形成される前記隙間を覆うように構成されている、請求項1又は請求項2に記載の目地カバー装置。
【請求項4】
前記カバーは、中空部を有し、
前記隙間埋め部材は、前記中空部の内部から付勢されて前記中空部を出入りするように構成されている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の目地カバー装置。
【請求項5】
前記カバーは、前記目地の方向に延びる複数のカバー要素が連結して構成され、
前記中空部は、前記カバー要素に設けられている、請求項4に記載の目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図13から図15には、互いに隣接する一方の建造物から他方の建造物側に差し出され一方の建造物と他方の建造物の間の目地を覆う遮蔽部材と、該遮蔽部材の下で他方の建造物から一方の建造物側に差し出されるカバーと、該カバーの直下に位置する回動支持部材とを有する目地カバー装置が開示されている。回動支持部材は、上部に水平状の支承杆部を備え、他方の建造物の側壁面に水平回動可能に連結され、常時は付勢手段の付勢力を介して他方の建造物の側壁面から斜め前方に突出する位置に保持されている。
【0003】
また、回動支持部材毎に被押圧端が設けられている。被押圧端は、支承杆部の下方で該支承杆部の先端より前方に突出して他方の建造物の側壁面に当接可能である。地震時に目地幅が狭くなるのに伴って一方の建造物の側壁面に被押圧端が押圧されることによって、各回動支持部材が他方の建造物側に回動し、カバーが先端側から順次下方に垂下する。これにより、カバーと他方の建造物の側壁面との衝突を回避する。
【0004】
地震時に目地幅が大きく広がった場合には、遮蔽部材の自由端をカバーで支承すると共に、目地のうち遮蔽部材で覆うことができない領域をカバーで覆うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5231971号公報
【特許文献2】特許6322515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の従来例において、他方の建造物の周囲に目地が交わる交差部が存在し、地震時に一方の建造物が目地に対して斜めの方向に移動して交差部の目地が大きく広がった場合、遮蔽部材やカバーの寸法によっては、交差部に遮蔽部材とカバーの何れにも覆われない隙間が生じる場合がある。
【0007】
本発明は、目地カバー装置において、カバーの動作を確保しつつ、目地の交差部に生ずるカバー間の隙間を覆うことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る目地カバー装置は、目地を介して互いに隣接する一方の建造物から他方の建造物側に差し出され、前記目地を覆う遮蔽部材と、前記遮蔽部材の下側で前記他方の建造物から前記一方の建造物側に差し出され、前記目地を覆うカバーと、前記他方の建造物の側壁面側に設けられ、付勢されて前記一方の建造物側に張り出した張出し状態で前記カバーを差出し状態に支持し、前記一方の建造物に押圧されると前記一方の建造物側への張出しが減少し前記カバーを垂下状態にする支持部材と、二方向に延びる前記目地が交わる交差部において、付勢されて前記カバーの端部から該カバーが設けられる前記目地の方向に突出し前記目地の前記交差部のうち前記遮蔽部材と前記カバーで覆うことができない隙間を覆い、対向する前記一方の建造物に押圧されると前記カバーの内部に押し込まれる隙間埋め部材と、を有する。
【0009】
この目地カバー装置では、目地を介して互いに隣接する一方の建造物から他方の建造物側に差し出された遮蔽部材と、遮蔽部材の下側で他方の建造物から一方の建造物側に差し出されたカバーとにより、目地を覆う。カバーは、支持部材に支持されて差出し状態とされる。支持部材は、他方の建造物の側壁面側に設けられ、通常時は付勢されて一方の建造物側に張り出した張出し状態とされている。また、支持部材は、一方の建造物に押圧されると一方の建造物側への張出しが減少し、カバーを垂下状態にする。
【0010】
二方向に延びる目地が交わる交差部において、地震時に一方の建造物が目地に対して斜めの方向に移動して交差部の目地が大きく広がった場合、交差部に遮蔽部材とカバーの何れにも覆われない隙間が生じる場合がある。この目地カバー装置では、付勢された隙間埋め部材がカバーの端部から該カバーが設けられる目地の方向に突出しており、このような隙間の形成を抑制できる。
【0011】
また、隙間埋め部材は、対向する一方の建造物に押圧されるとカバーの内部に押し込まれることで、該一方の建造物とカバーとの干渉が抑制される。隙間が形成されないようにするためにカバーの範囲を広げて拡大部分を設けたのでは、地震時に該拡大部分と一方の建造物との干渉が生じる。この拡大部分をカバーから出入りする隙間埋め部材に置き換えることで、隙間の形成の抑制と、カバーと一方の建造物との干渉防止を両立させている。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係る目地カバー装置において、前記隙間埋め部材が、前記交差部で隣り合う2つの前記カバーの前記端部にそれぞれ設けられ、前記交差部で隣り合う前記カバーがそれぞれ差出し状態にあるとき、隣り合う前記隙間埋め部材同士が近接対向する。
【0013】
この目地カバー装置では、交差部で隣り合うカバーがそれぞれ差出し状態にあるとき、隣り合う隙間埋め部材同士が近接対向する。これにより、目地の交差部に生ずる隙間をより密に覆うことができる。
【0014】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る目地カバー装置において、前記一方の建造物の入隅で隣り合う2つの前記遮蔽部材と、前記他方の建造物の出隅で隣り合う2つの前記カバーとを有し、前記隙間埋め部材は、当該2つの遮蔽部材における前記他方の建造物側の端部と、当該2つのカバーの端部との間に形成される前記隙間を覆うように構成されている。
【0015】
この目地カバー装置では、2つの遮蔽部材における他方の建造物側の端部と、2つのカバーの端部との間に形成される隙間を、隙間埋め部材により覆うことができる。
【0016】
第4の態様は、第1~第3の態様の何れか1態様に係る目地カバー装置において、前記カバーが中空部を有し、前記隙間埋め部材が、前記中空部の内部から付勢されて前記中空部を出入りするように構成されている。
【0017】
この目地カバー装置では、隙間埋め部材は、カバーの中空部の内部から付勢されて該中空部を出入りする。したがって、隙間埋め部材がカバーの外部に配置されている場合と比較して、隙間埋め部材と周囲の部位との干渉を抑制でき、カバーの厚さの増大も抑制できる。
【0018】
第5の態様は、第4の態様に係る目地カバー装置において、前記カバーが、前記目地の方向に延びる複数のカバー要素が連結して構成され、前記中空部は、前記カバー要素に設けられている。
【0019】
この目地カバー装置では、カバーが複数のカバー要素が連結して構成されており、隙間埋め部材は該カバー要素の中空部の内部から付勢されて、該中空部を出入りする。したがって、隙間埋め部材の配置の自由度を高め、遮蔽部材とカバーの何れにも覆われない隙間の範囲に応じて隙間埋め部材を適切に配置できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、目地カバー装置において、カバーの動作を確保しつつ、目地の交差部に生ずるカバー間の隙間を覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る目地カバー装置において、他方の建造物が目地の交差部の対角方向かつ一方の建造物から離れる方向に移動したときに形成される隙間が、隙間埋め部材により覆われた状態を示す平面図である。
図2図1の要部拡大平面図である。
図3】(A)は、本実施形態に係る目地カバー装置において、通常時の状態を示す断面図である。(B)は、(A)における3B部拡大図である。
図4】支持部材の構造を示す斜視図である。
図5】ローラが連結部材を押圧することで、一対の支持部材が他方の建造物側に折り畳まれた状態を示す斜視図である。
図6】カバー要素の中空部に設けられた隙間埋め部材を示す斜視図である。
図7】隙間埋め部材を付勢するための構造を示す斜視図である。
図8】複数のカバー要素の中空部にそれぞれ設けられた隙間埋め部材を示す斜視図である。
図9】本実施形態に係る目地カバー装置において、一方の建造物と他方の建造物とが目地の交差部の対角方向にある程度接近した状態を示す平面図である。
図10図9の要部拡大平面図である。
図11】本実施形態に係る目地カバー装置において、他方の建造物が紙面左方向に移動し、隙間埋め部材が一方の建造物に押圧されて押し込まれた状態を示す平面図である。
図12図11の要部拡大平面図である。
図13】(A)は、本実施形態に係る目地カバー装置において、他方の建造物が一方の建造物に接近し、一対の支持部材が一方の建造物側に折り畳まれ、カバーが下方に垂下し、遮蔽部材が一方の建造物の上に乗り上げた状態を示す断面図である。(B)は、(A)における13B部拡大図である。
図14】遮蔽部材とカバーの何れにも覆われない隙間を示す拡大平面図である。
図15】変形例1に係る目地カバー装置を示す拡大平面図である。
図16】変形例2に係る目地カバー装置を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0023】
図1から図3において、本実施形態に係る目地カバー装置10は、互いに隣接する一方の建造物12と他方の建造物14の間の目地16に設けられている。一方の建造物12は、例えば図示しない免震装置によって下部が支持された免震構造の建物である。目地16は、一方の建造物12の周囲に沿って所定幅で形成され、地震時における一方の建造物12とその周囲の建造物(他方の建造物14)との水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0024】
本実施形態に係る目地カバー装置10は、遮蔽部材26と、カバー34と、支持部材の一例としての複数の回動支持部材36と、隙間埋め部材20とを有している。
【0025】
(遮蔽部材)
図3(A)に示されるように、他方の建造物14の側縁には、摺動受枠体24が配設されている。二方向に延びる目地16が略直交する交差部において、一方の建造物12の入隅部からは、遮蔽部材26が他方の建造物14側に差し出されている。
【0026】
遮蔽部材26は、摺動受枠体24の深さに一致する所定の厚みを備えた平板矩形状に形成されており、その基端が一方の建造物12の側縁に連結手段28を介して揺動可能に連結されている。該遮蔽部材26の先端側は自由端となっており、該自由端の外端には上下方向に若干揺動可能な端部遮蔽板30が突出して設けられている。
【0027】
図3(A)に示される通常時において、遮蔽部材26は、一方の建造物12から他方の建造物14側に差し出されて目地16を覆っており、自由端が摺動受枠体24上に摺動可能に載っている。また、自由端と、摺動受枠体24との間に生じる作動空隙32の上方が、端部遮蔽板30によって遮蔽されている。なお、「通常時」とは、後述する回動支持部材36が復帰状態にあることを意味する。
【0028】
(カバー)
図1から図3において、カバー34は、目地16を介して互いに隣接する他方の建造物14から一方の建造物12側に差し出され、目地16を覆う部材である。カバー34は、目地16に沿う方向に延在し、回動支持部材36によって下方から支持される。このカバー34は、基端部に位置する分割カバー板34Aと、複数の分割カバー板34Bを備えており、分割カバー板34A,34Bが目地16の幅方向に並列した状態で、その全体形状が略平板矩形状に形成されている。
【0029】
隣り合う複数の分割カバー板34Bの各端部相互は、上下方向に回動可能に連結されている。分割カバー板34Aと、該分割カバー板34Aの隣接する分割カバー板34Bも、上下方向に回動可能に連結されている。そして、基端部の分割カバー板34Aは、他方の建造物14側に取り付けられている。
【0030】
(回動支持部材)
図1図3(A)、図4図5において、回動支持部材36は、他方の建造物14の側壁面14A側に設けられ、付勢されて一方の建造物12側に張り出した張出し状態でカバー34を差出し状態に支持し、一方の建造物12に押圧されると一方の建造物12側への張出しが減少しカバー34を垂下状態にする部材である。
【0031】
本実施形態では、1つのカバー34に対し、2つの回動支持部材36が用いられている。回動支持部材36は、他方の建造物14の側壁面14A側に設けられた第1支点41に枢支されて水平回動可能とされている。換言すれば、1つの回動支持部材36に対し、1つの第1支点41が設けられている。第1支点41は、側壁面14Aに固定された取付フレーム48に設けられている。
【0032】
複数の回動支持部材36は、カバー34を支持する上辺部36Aをそれぞれ備えている。また各々の回動支持部材36は、上辺部36Aと、前枠部36Bと、軸部36Cと、下枠部36Dとにより略四角形の枠状に形成されている。上辺部36Aと前枠部36Bは、例えば丸パイプをL字形に折り曲げることで一体成形されている。前枠部36Bは、上辺部36Aの先端から湾曲部36Eを経て下方へ延びる部位である。軸部36Cは、上辺部36Aの基端側に結合され上下方向に延び第1支点41に枢支される部位である。下枠部36Dは、略水平方向に延び、軸部36Cの下端部と前枠部36Bとを連結する部位である。第1支点41は、軸部36Cの上端及び下端を枢支している。
【0033】
回動支持部材36の先端側にそれぞれ設けられた第2支点42同士は、連結部材44により枢支連結されており、これによって平行リンク機構46が構成されている。連結部材44は、前枠部36Bの延長上における下枠部36Dより下方に設けられている。また、連結部材44は、水平方向に延び、かつ平面視で他方の建造物14の側壁面14Aと平行に配置されている。
【0034】
一方の建造物12側の少なくとも連結部材44と対向する位置、例えば側壁面12Aには、押圧部材としてのローラ40が設けられている。一方の建造物12が他方の建造物14に対して相対的に接近した際に連結部材44を押圧する。ローラ40は、連結部材44に接触した状態において、回動支持部材36の回動による連結部材44との相対変位に伴い該連結部材44上を転動するようになっている。ローラ40が連結部材44から離れた状態において、一対の回動支持部材36は、平面視で側壁面14Aに対して同じ方向に同角度傾斜している。ローラ40が連結部材44を押圧したときに回動支持部材36が折り畳まれる方向にモーメントが発生するようになっている。
【0035】
図3(A)に示されるように、回動支持部材36の上辺部36Aの高さ位置は、第1支点41側から第2支点42側に向かうにしたがって低くなっていてもよい。図示の例では、上辺部36Aは、第1支点41側から第2支点42側に向かうにしたがって下方へ直線的に傾斜している。これにより、復帰状態のカバー34が上方向に動く空間が確保されている。
【0036】
回動支持部材36は、中枠72を有している。中枠72は、上辺部36Aの中間部と下枠部36Dの中間部を上下に連結して、回動支持部材36を補強している。つまり、中枠72は補強部材の一種である。中枠72には、ばね受け64が取り付けられている。ばね受け64と取付フレーム48との間には、複数の引張りばね38が張設されている。引張りばね38は、回動支持部材36が復帰状態にあるとき、自由状態よりある程度引き延ばされた状態にあり、回動支持部材36を常時付勢している。これにより、回動支持部材36の無用な動きが抑制されている。
【0037】
(復帰補助装置)
図4図5において、連結部材44には、復帰補助装置74が設けられていてもよい。この復帰補助装置74は、補助回動部材76と、引張りばね78を有している。
【0038】
補助回動部材76は、連結部材44に枢支されて水平回動可能とされ、他方の建造物14側に差し出された、例えば一対のアングル材である。各々の補助回動部材76は、連結部材44の上面と下面に回動可能に取り付けられている。補助回動部材76の先端には、ローラ80が回転支持されている。ローラ80の軸方向は上下方向(鉛直方向)とされている。ローラ80の外周面は、補助回動部材76がどの角度位置にあっても、補助回動部材76の先端より他方の建造物14側に張り出すように取り付けられている。
【0039】
ローラ80が他方の建造物14の側壁面14Aから離れた状態において、一対の補助回動部材76は、平面視で連結部材44に対して同じ方向に同角度傾斜している。側壁面14Aがローラ80を押圧したときに補助回動部材76が連結部材44側に折り畳まれる方向にモーメントが発生するようになっている。
【0040】
引張りばね78は、補助回動部材76の先端と連結部材44との間に張設され、補助回動部材76を、該補助回動部材76の先端(ローラ80)が連結部材44から離れる方向に回転付勢する部材である。補助回動部材76が復帰状態にあるとき、引張りばね78は自由状態よりある程度引き延ばされた状態にあり、補助回動部材76を常時付勢している。これにより、補助回動部材76の無用な動きが抑制されている。
【0041】
(隙間埋め部材)
図1図2において、隙間埋め部材20は、二方向に延びる目地16が交わる交差部において、付勢されてカバー34の端部から該カバー34が設けられる目地16の方向に突出する部材である。また、隙間埋め部材20は、目地16の交差部のうち遮蔽部材26とカバー34で覆うことができない隙間Sを覆う部材である。遮蔽部材26は、一方の建造物12の入隅部から他方の建造物14の出隅部に差し出されている。目地16が大きく広がった場合、隙間Sは、一方の建造物12の入隅で隣り合う2つの遮蔽部材26のうち他方の建造物14側の端部(端部遮蔽板30)と、他方の建造物14の出隅で隣り合う2つのカバー34の端部との間に形成される。この隙間Sは、図14のハッチング部分に相当する。
【0042】
カバー34は、目地16の方向に延びる複数のカバー要素としての分割カバー板34A,34Bが連結して構成されている。分割カバー板34A,34Bは、中空部34Cをそれぞれ有している。本実施形態では、分割カバー板34A,34Bが全体的に中空に構成されているが、分割カバー板34A,34Bの一部に中空部34Cが設けられた構成であってもよい。
【0043】
図2図8に示されるように、隙間埋め部材20は、例えば3つの分割カバー板34Bにおける中空部34Cの内部から付勢されて、該中空部34Cをそれぞれ出入りするように構成されている。具体的には、図6において、分割カバー板34Bの中空部34Cには、案内軸52が固定された基部50が収納されている。基部50は、例えば各パイプであり、分割カバー板34Bにねじ固定されている。隙間埋め部材20は、例えば角パイプ54の両側面にアングル材56をそれぞれ固定して構成され、中空部34Cに挿入されている。
【0044】
案内軸52は、例えば丸パイプであり、隙間埋め部材20における角パイプ54の内側に挿入されている。隙間埋め部材20と基部50との間には、圧縮ばね58が設けられている。隙間埋め部材20は、該圧縮ばね58により、分割カバー板34Bの端部から突出する方向に付勢されている。また、隙間埋め部材20は、対向する一方の建造物12に押圧されるとカバー34の内部に押し込まれるようになっている。
【0045】
案内軸52の先端は、例えばカバー板34Bの端部付近まで延びているが、中空部34Cから突出はしていない。本実施形態では、3つの分割カバー板34Bにそれぞれ設けられた案内軸52の長さは共通とされている。案内軸52の長さは、最もストロークが大きい隙間埋め部材20がすべてカバー板34Bに押し込まれることを許容するように設定されている(図2)。
【0046】
図3(B)、図6図7に示されるように、カバー板34Bの端部には、隙間埋め部材20の突出量を規制するストッパ60が例えば2つ設けられている。両側のアングル材56には、ストッパ60と係合する引掛け部56Aがそれぞれ設けられている。隙間埋め部材20が所定量まで突出すると、引掛け部56Aがストッパ60に当接し、それ以上の隙間埋め部材20の突出が規制されるようになっている。
【0047】
図2に示されるように、隙間埋め部材20は、例えば目地16の交差部で隣り合う2つのカバー34の端部にそれぞれ設けられている。目地16の交差部で隣り合うカバー34がそれぞれ差出し状態にあるとき、隣り合う隙間埋め部材20同士がそれぞれカバー34の端部から突出して、例えば交差部の対角方向(線X)上で近接対向するようになっている。隙間埋め部材20の先端同士が対角方向(線X)上で近接対向するように、該先端が対角方向(線X)に沿って形成されている。換言すれば、隙間埋め部材20の先端が、隙間埋め部材20の伸縮方向に対して傾斜している。
【0048】
なお、図15に示される変形例1のように、隙間埋め部材20同士が互い違いに対向してもよい。また、図16に示される変形例2のように、目地16の交差部で隣り合う2つのカバー34のうち、一方のカバー34の端部からのみ隙間埋め部材20が突出するように構成してもよい。
【0049】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態では、目地16を介して互いに隣接する一方の建造物12から他方の建造物14側に差し出された遮蔽部材26と、遮蔽部材26の下側で他方の建造物14から一方の建造物12側に差し出されたカバー34とにより、目地16を覆うことができる。カバー34は、回動支持部材36に支持されて差出し状態とされる(図3(A))。回動支持部材36は、他方の建造物14の側壁面14A側に設けられ、先端部が一方の建造物12側に張り出す方向に付勢され、通常時は張出し状態とされている。また、回動支持部材36は、先端部が一方の建造物12に押圧されると一方の建造物12側への張出しが減少し、カバー34を垂下状態にする(図13(A))。
【0050】
図14に示されるように、二方向に延びる目地16が交わる交差部において、地震時に一方の建造物12が目地16に対して斜めの方向(矢印A方向)に移動して交差部の目地16が大きく広がった場合、交差部に遮蔽部材26とカバー34の何れにも覆われない隙間Sが生じる場合がある。本実施形態では、付勢された隙間埋め部材20がカバー34の端部から該カバー34が設けられる目地16の方向に突出しており、このような隙間Sの形成を抑制できる。
【0051】
隙間埋め部材20は、カバー34の中空部34Cの内部から付勢されて該中空部34Cを出入りする。したがって、隙間埋め部材20がカバー34の外部に配置されている場合と比較して、隙間埋め部材20と周囲の部位との干渉を抑制でき、カバー34の厚さの増大も抑制できる。
【0052】
また、カバー34が複数のカバー要素(分割カバー板34A,34B)が連結して構成されており、隙間埋め部材20は分割カバー板34Bの中空部34Cの内部から付勢されて、該中空部34Cを出入りする(図6図8)。したがって、隙間埋め部材20の配置の自由度を高め、遮蔽部材26とカバー34の何れにも覆われない隙間Sの範囲に応じて隙間埋め部材20を適切に配置できる。
【0053】
本実施形態では、交差部で隣り合うカバー34がそれぞれ差出し状態にあるとき、隣り合う隙間埋め部材20同士が近接対向するので、目地16の交差部に生ずる隙間Sをより密に覆うことができる。
【0054】
図9図10に示されるように、一方の建造物12と他方の建造物14とが目地16の交差部の対角方向(線Xの方向)にある程度接近したとき、目地16は遮蔽部材26により覆われ、カバー34も遮蔽部材26に覆われており、上述の隙間Sは生じない。隙間埋め部材20はそれぞれカバー34の端部が突出しているが、遮蔽部材26に覆われているため上方には露出しない。
【0055】
図11において、地震により他方の建造物14が例えば矢印B方向に変位し、一方の建造物12に接近すると、ローラ40が連結部材44に接触し、該連結部材44を押圧して他方の建造物14の側壁面14A側へ変位させる。連結部材44と回動支持部材36は平行リンク機構46を構成しているので、連結部材44の変位により、複数の回動支持部材36が引張りばね38の付勢力に抗して他方の建造物14の側壁面14A側へ同期して水平回動し折り畳まれる。このとき、ローラ40が、連結部材44に当接した状態で、回動支持部材36の回動による連結部材44との相対変位に伴い該連結部材44上を転動する。このとき、復帰補助装置74のローラ80が他方の建造物14の側壁面14Aに押圧されることで、補助回動部材76も折り畳まれる。
【0056】
図11から図13において、回動支持部材36が水平回動して折り畳まれるにしたがい、カバー34がスムーズに下方に垂下する。これにより、カバー34と一方の建造物12との衝突が回避される。またこのとき、遮蔽部材26は摺動受枠体24に乗り上げる。この際、隙間埋め部材20は、対向する一方の建造物12に先端が押圧されるとカバー34の内部に押し込まれることで、該一方の建造物12とカバー34との干渉が抑制される。隙間Sが形成されないようにするために隙間埋め部材20を用いず、カバー34の範囲を広げて拡大部分を設けたのでは、地震時に該拡大部分と一方の建造物12との干渉が生じる。この拡大部分をカバー34から出入りする隙間埋め部材20に置き換えることで、隙間Sの形成の抑制と、カバー34と一方の建造物12との干渉防止を両立させている。
【0057】
一方の建造物12と他方の建造物14とが離間すると、回動支持部材36が引張りばね38の付勢力により同期して回動して、一方の建造物12側に向けて突出する(図3(A))。これに伴い、カバー34は、回動支持部材36によりスムーズに持ち上げられて、他方の建造物14から一方の建造物12側に差し出される。このように回動支持部材36が復帰し始めるときには、補助回動部材76も引張りばね78の付勢力により復帰し始める。補助回動部材76の復帰により回動支持部材36の復帰が促進される。これによって、目地16の幅が広く、カバー34の長さが比較的長く重い構造であっても、回動支持部材36の折り畳み時に垂下していたカバー34を持ち上げて一方の建造物12側に差し出すことができる。したがって、復帰補助装置74は、目地16の幅が比較的広い構造に好適である。目地16の幅が比較的狭い場合に、復帰補助装置74を省略してもよい。
【0058】
このように、本実施形態によれば、目地カバー装置10において、カバー34の動作を確保しつつ、目地16の交差部に生ずるカバー34間の隙間Sを覆うことができる。これにより、改善された目地カバー装置10を提供できる。
【0059】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10…目地カバー装置、12…一方の建造物、12A…側壁面、14…他方の建造物、14A…側壁面、16…目地、20…隙間埋め部材、24…摺動受枠体、26…遮蔽部材、28…連結手段、30…端部遮蔽板、32…作動空隙、34…カバー、34A…分割カバー板、34B…分割カバー板、34C…中空部、36…回動支持部材(支持部材)、36A…上辺部、36B…前枠部、36C…軸部、36D…下枠部、36E…湾曲部、38…引張りばね、40…ローラ、41…第1支点、42…第2支点、44…連結部材、46…平行リンク機構、48…取付フレーム、50…基部、52…案内軸、54…角パイプ、56…アングル材、56A…引掛け部、58…圧縮ばね、60…ストッパ、64…ばね受け、72…中枠、74…復帰補助装置、76…補助回動部材、78…引張りばね、80…ローラ、S…隙間、X…線
図1
図2
図3
図4
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図8
図9
図10
図11
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図16