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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063072
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/42 20060101AFI20230427BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20230427BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C08F8/42
C08L33/00
C08K5/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173350
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀典
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG031
4J002DH037
4J002EU096
4J002FD206
4J002FD207
4J100AL03P
4J100BA71H
4J100CA01
4J100FA18
4J100FA28
4J100HA61
4J100HB61
4J100HC33
4J100HC43
4J100HC48
4J100HC75
4J100HC77
4J100HC83
4J100HD07
4J100HD13
4J100HE05
4J100HE32
4J100HE41
(57)【要約】
【課題】硬化速度が速く、かつ安全性が向上した硬化物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る硬化物の製造方法は、1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、を含む硬化性組成物を40~180℃の温度領域で加熱する硬化工程を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、
熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、
を含む硬化性組成物を40~180℃の温度領域で加熱する硬化工程を有する、硬化物の製造方法。
【請求項2】
前記硬化工程における加熱時間が1~60分である、請求項1に記載の硬化物の製造方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下である、請求項1または2に記載の硬化物の製造方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)が有する前記加水分解性シリル基は、ジメトキシメチルシリル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項5】
前記熱塩基発生剤(B)は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンまたはその誘導体と、有機酸との塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項6】
前記硬化性組成物がリン酸塩含有熱酸発生剤(C)を含み、さらにアニオン界面活性剤(D)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項7】
前記アニオン界面活性剤(D)は、リン酸エステル塩である、請求項6に記載の硬化物の製造方法。
【請求項8】
前記硬化性組成物がさらにシランカップリング剤(E)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法によって硬化物を物品上に形成する封止工程を含む、硬化物によって封止された物品の製造方法。
【請求項10】
前記物品が電子部品である、請求項9に記載の物品の製造方法。
【請求項11】
1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、
熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、
を含む、40~180℃で加熱して、硬化させて使用するための硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加水分解性シリル基を有するポリマーを用いた接着剤等が開発されている(例えば、特許文献1および2)。さらに、このような加水分解性シリル基を有するポリマーを短時間で硬化させる技術としては、加熱硬化が挙げられる。例えば、特許文献3には有機錫系化合物を使用する加熱硬化の方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/051798号
【特許文献2】特開2011-84750号公報
【特許文献3】国際公開第2019/189664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術には硬化速度、あるいは安全性の観点から改善の余地があった。
【0005】
本発明の一態様は、硬化速度が速く、かつ安全性が向上した硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る硬化物の製造方法は、1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、を含む硬化性組成物を40~180℃の温度領域で加熱する硬化工程を有する。
【0007】
また、本発明の一態様に係る硬化性組成物は、1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、を含む、40~180℃で加熱して、硬化させて使用するための硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、硬化速度が速く、また、例えば有機錫系化合物を使用する必要がないため、安全性が向上した硬化物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。
【0010】
〔1.硬化物の製造方法〕
本発明の一態様に係る硬化物の製造方法(以下、本製造方法とも称する)は、1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、を含む硬化性組成物を40~180℃の温度領域で加熱する硬化工程を有する。
【0011】
上述したような、特許文献1および2に記載の技術は加水分解反応であるため、硬化時間が長いという課題があった。また、特許文献3に記載の技術は有機錫系化合物を使用するため、安全性の観点から改善の余地があった。
【0012】
本製造方法においては、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、錫を実質的に含まない熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)を縮合触媒として使用できる。そのため、触媒として有機錫系化合物を使用することなく、硬化性組成物を加熱により短時間で硬化させることによって硬化物を製造することができる。
【0013】
(硬化工程)
前記硬化工程における加熱温度は、40~180℃であり、好ましくは50~160℃、より好ましくは60~150℃であり、さらに好ましくは70~140℃である。加熱温度が40℃以上であれば、硬化性組成物が短時間で硬化しやすくなる。また加熱温度が180℃以下であれば、(メタ)アクリル系重合体(A)が熱によって分解されにくくなる。
【0014】
前記硬化工程における加熱時間は、好ましくは1~60分であり、より好ましくは5~50分であり、さらに好ましくは10~30分である。加熱時間が前記範囲であれば、硬化物が十分な強度を有し、かつ硬化に要する時間が短いと言える。
【0015】
以下、前記硬化性組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0016】
<1-1.(メタ)アクリル系重合体(A)>
(メタ)アクリル系重合体(A)は、1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する。「分子の末端近傍」とは、例えば、分子に含まれる全繰り返し単位の個数を100%として、分子の末端から数えて40%以下、30%以下または25%以下の繰り返し単位が位置している領域でありうる。線状の分子には末端が2個存在しているため、末端近傍も2箇所存在している。
【0017】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子の少なくとも一方の末端に加水分解性シリル基を有している。したがって、分子全体としては、1個または2個の加水分解性シリル基を有している。このような重合体は、例えば、後述する製造方法のうち、第1の態様によって製造できる。
【0018】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子の少なくとも一方の末端近傍に加水分解性シリル基を有している。1つの末端近傍領域には、1個以上の加水分解性シリル基が存在しうる。したがって、分子全体としては、1個以上の加水分解性シリル基を有しており、2個超の加水分解性シリル基を有しうる。このような重合体は、例えば、後述する製造方法のうち、第2の態様によって製造できる。この製造方法によれば、後述する(メタ)アクリル系重合体(A1)が得られる。
【0019】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子の両方の末端近傍に加水分解性シリル基を有している。1つの末端近傍領域には、1個以上の加水分解性シリル基が存在しうる。したがって、分子全体としては、2個以上の加水分解性シリル基を有しており、2個超の加水分解性シリル基を有しうる。このような重合体は、例えば、後述する製造方法のうち、第2の態様によって製造できる。この製造方法によれば、後述する(メタ)アクリル系重合体(A1)が得られる。
【0020】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子の少なくとも一方の末端近傍と、分子の末端近傍以外の領域との両方に、加水分解性シリル基を有している。一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子の少なくとも一方の末端に加水分解性シリル基を有しており、分子の末端以外の領域には加水分解性シリル基を有していない。
【0021】
上記の説明において、「末端近傍」とは、後述する(メタ)アクリル系重合体(A1)のXブロックでありうる。
【0022】
(メタ)アクリル系重合体(A)に導入されている加水分解性シリル基の数は、分子全体として、平均して1.0個以上である。一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)に導入されている加水分解性シリル基の数は、分子全体として、平均して1.0個より多い。一実施形態において、加水分解性シリル基の数は、好ましくは1.1個以上であり、より好ましくは1.2個以上である。別の実施形態において、加水分解性シリル基の数は、好ましくは2.2個以上であり、より好ましくは2.4個以上である。(メタ)アクリル系重合体(A)に導入されている加水分解性シリル基の数の上限は、10.0個以下が好ましく、8.0個以下がより好ましく、6.0個以下がさらに好ましい。加水分解性シリル基の数が上記の範囲であれば、(メタ)アクリル系重合体(A)を用いた硬化性組成物および硬化物の物性が良好となる。また、(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子の両方の末端(または末端領域)に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいる。(メタ)アクリル系重合体(A)の原料となる(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、特に限定されない。1種類のみの(メタ)アクリル酸エステルモノマーを用いてもよいし、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを組合せて用いてもよい。
【0024】
このような(メタ)アクリル酸エステルモノマーの類型として、以下のものが挙げられる。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基を有しており、かつ、上記アルキル基は炭素数が1~5のアルコキシ基を有しているモノマー。アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、2が特に好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1~3が好ましく、1~2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が1~5であるモノマー。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が6~15であるモノマー。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ):(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が16~25であるモノマー。
【0025】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)の好ましいモノマー組成は、以下の通りである。なお、以下の割合は、(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準とする。このようなモノマー組成であることにより、(メタ)アクリル系重合体(A)は、良好な作業性、機械物性および耐候性を得ることができる。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)由来の繰り返し単位:0~20重量%が好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)および(メタ)アクリル酸モノマー(γ)由来の繰り返し単位の合計:45~96重量%が好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)由来の繰り返し単位:4~35重量%が好ましい。
【0026】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)の好ましいモノマー組成は、以下の通りである。なお、以下の割合は、(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準とする。このようなモノマー組成であることにより、(メタ)アクリル系重合体(A)の粘度をさらに低減できるので、作業性がさらに良好となる。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)由来の繰り返し単位:5~20重量%が好ましく、10~20重量%がより好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)由来の繰り返し単位:45~70重量%が好ましく、50~70重量%がより好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)由来の繰り返し単位:0~25重量%が好ましく、10~25重量%がより好ましい。
・(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)由来の繰り返し単位:15~25重量%が好ましく、15~20重量%がより好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)由来の繰り返し単位の含有率が上記の範囲ならば、低粘度で作業性の良好な硬化性組成物が得られる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)由来の繰り返し単位の含有率が上記の範囲ならば、耐久性に優れた硬化物が得られる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)由来の繰り返し単位の含有率が上記の範囲ならば、機械物性に優れた硬化物が得られる。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、特に限定されず、従来公知のものが使用できる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)の例としては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)の例としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)の例としては、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)の例としては、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシルが挙げられる。
【0029】
上述したモノマーの中で、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)としては、アクリル酸2-メトキシエチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(β)としては、アクリル酸n-ブチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(γ)としては、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸ドデシルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー(δ)としては、アクリル酸オクタデシルが好ましい。これらのモノマーを選択することにより、製造される(メタ)アクリル系重合体(A)は、粘度、耐候性、機械物性、耐久性が高水準でバランスよく達成されうる。
【0030】
一実施形態において、(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)は、下記(a)および/または(b)である。
【0031】
(a)(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基の炭素数が1~5個であるモノマー。ただし、「アルキル基の炭素数」には、当該アルキル基が有するアルコキシ基に含まれる炭素は含めない。
【0032】
(b)(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチルからなる群から選ばれる1つ以上のモノマー。
【0033】
(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれている(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、重合体(A)に含まれている全ての繰り返し単位を基準として、70重量%以上が好ましく、90%重量以上がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の含有率が70%以上であれば、製造される(メタ)アクリル系重合体(A)は、良好な耐候性、機械物性および耐久性が得られる。
【0034】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、アクリル酸n-ブチル由来の繰り返し単位を有している。アクリル酸n-ブチル由来の繰り返し単位の含有率は、(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。このような(メタ)アクリル系重合体(A)を用いると、低粘度で作業性が良好な硬化性組成物が得られる。
【0035】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量は、4,000~80,000が好ましく、10,000~50,000がより好ましい。数平均分子量が4,000以上ならば、(メタ)アクリル系重合体(A)の特性を充分に発揮させられる。数平均分子量が80,000以下ならば、粘度が高くなりすぎず、充分な作業性を確保できる。
【0036】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.8以下であり、以降、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下の順に好ましくなる。分子量分布が上記の範囲内ならば、低粘度で作業性の良好な硬化性組成物が得られる。
【0037】
重量平均分子量および数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。GPC測定には、移動相としてクロロホルム、固定相としてポリスチレンゲルカラムを用いることができる。また、これらの分子量は、ポリスチレン換算で算出できる。
【0038】
このように分子量分布の小さい(メタ)アクリル系重合体(A)は、例えば、リビング
ラジカル重合によって好適に製造できる。
【0039】
(加水分解性シリル基)
一実施形態において、加水分解性シリル基は、下記一般式(1)により表される。(メタ)アクリル系重合体(A)の1個の分子中に、一般式(1)で表される2種類以上の加水分解性シリル基が含まれていてもよい。
-[Si(R2-b(Y)O]-Si(R3-a(Y) (1)
式中、RおよびRは、独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または(R’)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基である(このとき、R’は炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、3個存在するR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)。1個の加水分解性シリル基の中にRまたはRが2個以上存在するとき、当該RまたはRの構造は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
Yは、炭素数1~20のアルコキシ基である。1個の加水分解性シリル基の中にYが2個以上存在するとき、当該Yは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは、0、1、2または3である。bは、0、1または2である。mは、0~19の整数である。ただし、a+mb≧1の関係を満たしている。
【0041】
一実施形態において、加水分解性シリル基は、下記一般式(2)により表される。(メタ)アクリル系重合体(A)の1個の分子中に、一般式(2)で表される2種類以上の加
水分解性シリル基が含まれていてもよい。
-Si(R3-a(Y) (2)
式中、R、Yの定義は上述の通りである。aは、1、2または3である。
【0042】
一般に、アルコキシ基は、炭素数が少ない方が反応性は高い。すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基の順に、反応性が低くなる。この性質を利用して、(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法および用途に応じて、具体的な加水分解性シリル基の構造を適宜決定できる。(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖に加水分解性シリル基を導入する方法は、公知の方法を採用してよい。
【0043】
加水分解性シリル基の具体例としては、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基が挙げられる。中でも硬化性組成物の硬化性の観点からは、ジメトキシメチルシリル基、ジメトキシメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が好ましく、特にジメトキシメチルシリル基が好ましい。
【0044】
((メタ)アクリル系重合体(A1))
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、XブロックおよびYブロックを有しており、分子中にXYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を含んでいる。Xブロックとは、加水分解性シリル基の含有量が相対的に多いブロックである。Yブロックとは、加水分解性シリル基の含有量が相対的に少ないYブロックである。このような(メタ)アクリル系重合体を、本明細書では、(メタ)アクリル系重合体(A1)と称する。なお、(メタ)アクリル系重合体(A1)の分子全体の構造は、XYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を含んでいれば特に限定されず、例えば、XYXYテトラブロック構造であってもよい。
【0045】
ここで、「XYXトリブロック構造」とは、当業者間で一般に言われている「ABAトリブロック構造」を意味する。XYジブロック構造およびXYXトリブロック構造におけるX/Yの比は、(5/95)~(60/40)が好ましく、(15/85)~(40/60)がより好ましい。Xブロックは、分子に含まれる全繰り返し単位の個数を100%として、分子の末端から数えて40%以下、30%以下または25%以下の繰り返し単位が位置している領域でありうる。
【0046】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A1)は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位を有している。この加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Xブロックに相対的に多く含まれている。具体的には、Xブロックに含まれている加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で1.0個以上である。一方、Yブロックに含まれている加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0~3重量%である。したがって、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、(メタ)アクリル系重合体(A1)において、末端近傍に局在している。
【0047】
Xブロックに含まれている加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均して1.5個以上が好ましく、1.7個以上がより好ましい。同じく、Xブロックに含まれている加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、Xブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、3重量%超が好ましく、4.5重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましい。Yブロックに含まれている加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の上限値は、Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。Yブロックに含まれている加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位の下限値は、Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%超が好ましく、0重量%以上がより好ましい。
【0048】
[(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法]
(メタ)アクリル系重合体(A)の重合方法は特に限定されず、公知の重合方法を用いることができる(ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法など)。中でも、重合体分子の末端に官能基を導入でき、XYブロック重合体またはXYXブロック重合体を合成できることから、リビング重合法が好ましい。リビング重合法の例としては、リビングラジカル重合法、リビングカチオン重合法、リビングアニオン重合法が挙げられ、その中でもリビングラジカル重合法がアクリル酸エステルモノマーの重合に適している。リビングラジカル重合法の例としては、以下が挙げられる。
・原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization;ATRP(J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5614; Macromolecules. 1995, 28, 1721を参照))
・一電子移動重合(Single Electron Transfer Polymerization;SET-LRP(J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 14156; JPSChem 2007, 45, 1607を参照))
・可逆移動触媒重合(Reversible Chain Transfer Catalyzed Polymerization;RTCP(「有機触媒で制御するリビングラジカル重合」『高分子論文集』68, 223-231 (2011);特開2014-111798を参照))
・可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT重合)
・ニトロキシラジカル法(NMP法)
・有機テルル化合物を用いる重合法(TERP)法
・有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)
・有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP)
・ヨウ素移動重合法
重合体末端への(メタ)アクリロイル基を導入が容易であることから、リビングラジカル重合の中では、原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0049】
以下では、(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法の好ましい態様について、説明する。また、特開2005-232419号公報、特開2006-291073号公報などの記載を参照できる。
【0050】
(リビングラジカル重合に関する一般的事項)
リビングラジカル重合の中でも、原子移動ラジカル重合、一電子移動重合、および可逆移動触媒重合が好ましい。より好ましい製造方法としては、ATRPまたはSET-LRPを利用して、遷移金属または遷移金属錯体(遷移金属化合物と配位子とからなる)を触媒とする、ビニル系モノマーのリビングラジカル重合方法を挙げることができる。さらに、遷移金属類を触媒としないRTCPも挙げられる。
【0051】
遷移金属錯体を触媒とするリビングラジカル重合のメカニズムには、現在のところ、ATRPおよびSET-LRPの2通りの解釈がある。ATRPに基づいて解釈すると、リビングラジカル重合は、以下の2つの反応の平衡からなる(例として、銅錯体を使用する場合で説明する)。
(a)1価銅錯体は、重合体末端のハロゲンを引き抜いてラジカルを発生させ、2価銅錯体となる。
(b)2価銅錯体は、重合末端のラジカルにハロゲンを付加し、1価銅錯体となる。
【0052】
一方、SET-LRPに基づいて解釈すると、リビングラジカル重合は、以下の3つの反応の平衡からなる(例として、銅錯体を使用する場合で説明する)。
(a)0価の金属銅または銅錯体は、重合体末端のハロゲンを引き抜いてラジカルを発生させて、2価銅錯体となる。
(b)2価銅錯体は、重合末端のラジカルにハロゲンを付加して、0価銅錯体となる。
(c)1価銅錯体は、不均化して、0価および2価の銅錯体となる。
【0053】
本明細書に記載された製造方法は、いずれかのリビングラジカル重合系として解釈されうるが、本明細書では両者を特に区別しない。触媒に遷移金属または遷移金属化合物と配位子とを用いたリビングラジカル重合系であれば全て、本発明の範疇に含まれる。
【0054】
また、ATRPを改良した合成方法である、Activators Regenerated by Electron Transfer:ARGETも報告されている(Macromolecules. 2006, 39, 39)。この方法は、重合の遅延または停止の原因となる高酸化遷移金属錯体を、還元剤を用いて減らすことによって、遷移金属錯体が少ない低触媒条件においても、速やかに高反応率まで重合反応を進行させることができる。このARGETも、本発明では採用できる。
【0055】
以下、本発明の一実施形態における製造方法に使用できる各種の薬剤について、個別に説明する。これらの薬剤はいずれも、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。また、これらの薬剤自体を重合系に投入してもよいし、重合系内でこれらの薬剤が生成するようにしてもよい。
【0056】
(a.開始剤)
加水分解性シリル基を分子の末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)を得るためには(すなわち、後述する第1の態様においては)、開始剤として、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いることが好ましい。具体的に例示するならば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化1】
【0058】
【化2】
【0059】
一例としては、ジエチル-2,5-ジブロモアジペートが挙げられる。
【0060】
また、(メタ)アクリル系重合体(A1)を得るためには(すなわち、後述する第2の態様においては)、開始剤としては、分子内にハロゲン基を1つ有するラジカル開始剤を使用することができる。このような開始剤の例としては、2-ブロモイソ酪酸エチル、2-ブロモ酪酸エチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、(1-ブロモエチル)ベンゼン、アリルブロミド、2-ブロモプロピオン酸メチル、クロロ酢酸メチル、2-クロロプロピオン酸メチル、(1-クロロエチル)ベンゼンが挙げられる。
【0061】
また、開始剤として、加水分解性シリル基を有する開始剤を用いてもよい。あるいは、重合反応前または重合反応後などに、開始剤中に加水分解性シリル基を導入してもよい。このような方法によっても、加水分解性シリル基を少なくとも末端部に有する(メタ)アリル系重合体(A)を製造できる。
【0062】
(b.重合触媒)
還元剤を使用する場合も還元剤を使用しない場合も、ATRP系においては、周期表の7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体を用いることができる。その中でも、特に1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄を中心金属とする金属錯体が好適である。
【0063】
具体例を挙げると、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、酢酸第一銅、過塩素酸第一銅などがある。銅化合物を重合触媒として用いる場合には、触媒活性を高めるために、アミン配位子を重合系に添加することが好ましい。また、二価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も、触媒として好適である。この触媒を使用する場合は、触媒活性を高めるために、アルミニウム化合物(トリアルコキシアルミニウムなど)を重合系に添加することが好ましい。さらに、二価の塩化鉄のトリストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)も、触媒として好適である。
【0064】
上述した中では、銅触媒が廉価で好ましい。触媒活性が高めて生産性を高めるために、多座アミンと銅触媒とを組合せて使用することがより好ましい。
【0065】
(c.多座アミン)
配位子として使用されうる多座アミンの例としては、以下が挙げられる。
・二座配位の多座アミン:2,2-ビピリジン、4,4’-ジ-(5-ノニル)-2,2’-ビピリジン、N-(n-プロピル)ピリジルメタンイミン、N-(n-オクチル)ピリジルメタンイミン
・三座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N-プロピル-N,N-ジ(2-ピリジルメチル)アミン
・四座配位の多座アミン:ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン(MeTREN)、N,N-ビス(2-ジメチルアミノエチル)-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、2,5,9,12-テトラメチル-2,5,9,12-テトラアザテトラデカン、2,6,9,13-テトラメチル-2,6,9,13-テトラアザテトラデカン、4,11-ジメチル-1,4,8,11-テトラアザビシクロヘキサデカン、N’,N’’-ジメチル-N’,N’’-ビス((ピリジン-2-イル)メチル)エタン-1,2-ジアミン、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン、2,5,8,12-テトラメチル-2,5,8,12-テトラアザテトラデカン
・五座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’-ヘプタメチルテトラエチレンテトラミン
・六座配位の多座アミン:N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン
・ポリアミン:ポリエチレンイミン。
【0066】
(d.塩基)
重合系中に存在または発生する酸を中和して、酸の蓄積を防ぐために、塩基を重合系に添加してもよい。塩基の例としては、以下が挙げられる。
・モノアミン:モノアミンとは、塩基として作用する部位が、1分子あたり1個ある化合物を指す。モノアミンの例としては、一級アミン(メチルアミン、アニリン、リシンなど)、二級アミン(ジメチルアミン、ピペリジンなど)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、芳香族系アミン(ピリジン、ピロールなど)、アンモニアが挙げられる。
・ポリアミン:ポリアミンの例としては、ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミンなど)、トリアミン(ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなど)、テトラミン(トリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミンなど)、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
・無機塩基:無機塩基とは、周期表の1族および2族に属する元素の単体または化合物を指す。周期表の1族および2族に属する元素の単体の例としては、リチウム、ナトリウム、カルシウムが挙げられる。周期表の1族および2族に属する元素の化合物の例としては、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、メチルリチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、フェノキシナトリウム、フェノキシカリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムが挙げられる。
【0067】
(e.還元剤)
銅錯体を触媒とするリビングラジカル重合においては、還元剤を併用することにより、重合活性が向上することが知られている(ARGET ATRP)。ARGET ATRPにおいては、重合反応の遅延または停止の原因となる高酸化遷移金属錯体(ラジカル同士のカップリングなどによって生じる)を、還元して減少させることにより、重合活性が向上すると考えられている。これによって、通常ならば数百~数千ppm必要な遷移金属触媒を、数十~数百ppmまで減少させることができる。本発明の一実施形態における製造方法では、還元剤を用いて、ARGET ATRPと同様の反応機構とすることができる。還元剤の例としては、以下が挙げられる。
【0068】
(銅錯体を還元する際に酸を発生させない還元剤)
・金属:金属の例としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、典型金属(アルミニウム、亜鉛など)、遷移金属(銅、ニッケル、ルテニウム、鉄など)が挙げられる。これらの金属は、水銀との合金(アマルガム)の形態で用いることもできる。
・金属化合物:金属化合物の例としては、金属塩、金属錯体が挙げられる。金属錯体に配位している配位子の例としては、一酸化炭素、オレフィン、含窒素化合物、含酸素化合物、含リン化合物、含硫黄化合物が挙げられる。より具体的な例としては、金属とアンモニア/アミンとの化合物、三塩化チタン、チタンアルコキシド、塩化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、塩化鉄、塩化銅、臭化銅、塩化スズ、酢酸亜鉛、水酸化亜鉛、カルボニル錯体(Ni(CO)、CoCOなど)、オレフィン錯体([Ni(cod)]、[RuCl(cod)]、[PtCl(cod)]など;codはシクロオクタジエンを表す)、ホスフィン錯体([RhCl(P(C]、[RuCl(P(C]、[PtCl(P(C]など)が挙げられる。
・有機スズ化合物:具体例としては、オクチル酸スズ、2-エチルヘキシル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレートが挙げられる。
・リンまたはリン化合物:具体例としては、リン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ヘキサメチルホスフォラストリアミド、ヘキサエチルホスフォラストリアミドが挙げられる。
・硫黄または硫黄化合物:具体例としては、硫黄、ロンガリット類、ハイドロサルファイト類、二酸化チオ尿素が挙げられる。ロンガリットとは、スルホキシル酸塩のホルムアルデヒド誘導体のことを指し、一般式:MSO・CHOで表される(式中、MはNaまたはZnである)。ロンガリットの具体例としては、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレートが挙げられる。ハイドロサルファイトとは、次亜硫酸ナトリウムおよび次亜硫酸ナトリウムのホルムアルデヒド誘導体を指す。
【0069】
(銅錯体を還元する際に酸を発生させる還元剤(水素化物還元剤))
・金属水素化物:具体例としては、水素化ナトリウム、水素化ゲルマニウム、水素化タングステン、アルミニウム水素化物(水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムナトリウム、水素化トリエトキシアルミニウムナトリウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなど)、有機スズ水素化物(水素化トリフェニルスズ、水素化トリ-n-ブチルスズ、水素化ジフェニルスズ、水素化ジ-n-ブチルスズ、水素化トリエチルスズ、水素化トリメチルスズなど)が挙げられる。
・ケイ素水素化物:具体例としては、トリクロロシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、ポリメチルヒドロシロキサンが挙げられる。
・ホウ素水素化物:具体例としては、ボラン、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリメトキシホウ酸ナトリウム、硫化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ-s-ブチルホウ素リチウム、水素化トリ-t-ブチルホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素テトラ-n-ブチルアンモニウムが挙げられる。
・窒素水素化合物:具体例としては、ヒドラジン、ジイミドが挙げられる。
・リンまたはリン化合物:具体例としては、ホスフィン、ジアザホスホレンが挙げられる。
・硫黄または硫黄化合物:具体例としては硫化水素が挙げられる。
・還元作用を示す有機化合物:具体例としては、アルコール、アルデヒド、フェノール類、有機酸化合物が挙げられる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。アルデヒドの例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ギ酸が挙げられる。フェノール類の例としては、フェノール、ハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロールが挙げられる。有機酸化合物の例としては、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステルが挙げられる。
【0070】
また、電解還元によって、還元剤を重合系中で生成させてもよい。電解還元においては、陰極で生じた電子が直接に(または、溶媒和した後で)、還元作用を示す。つまり、還元剤を、電気分解により生成させてもよい。
【0071】
(f.溶媒)
溶媒の例としては、以下が挙げられる。ただし、ATRPは、溶媒を用いない条件でも実施可能である。
・高極性非プロトン性溶媒:ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド (DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン
・カーボネート系溶媒:エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート
・アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール
・ニトリル系溶媒:アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル
・ケトン系溶媒:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン
・エーテル系溶媒:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン
・ハロゲン化炭化系溶媒:塩化メチレン、クロロホルム
・エステル系溶媒:酢酸エチル、酢酸ブチル
・炭化水素系溶媒:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン
・その他の溶媒:イオン性液体、水、超臨界流体。
【0072】
還元剤を用いるATRP(ARGET)系においては、遷移金属または遷移金属化合物、多座アミン、塩基、還元剤、モノマーおよび開始剤が重合系中で均一になっていることが、反応制御、重合反応速度、仕込みやすさおよびスケールアップリスクの点から好ましい。したがって、これらの物質を溶解させられる溶媒を選択することが好ましい。
【0073】
以下、(メタ)アクリル系重合体(A)のより具体的な製造方法について、2つの例を挙げて説明する。これらの例のうち、第2の態様によれば、(メタ)アクリル系重合体(A1)が製造できる。
【0074】
(第1の態様)
一例において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、特開2007-302749公報に記載の方法によって製造される。その中でも、アルケニル基を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下にて付加させる方法が、制御がより容易である点において好ましい。
【0075】
この方法では、以下のようにして加水分解性シリル基を(メタ)アクリル系重合体に導入する。
1.(メタ)アクリル酸エステル系モノマーをリビングラジカル重合し、(メタ)アクリル系重合体を得る。
2.1で得られた(メタ)アクリル系重合体に、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物(ジエン化合物)を反応させ、アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を得る。
3.2で得られたビニル系重合体に、加水分解性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下にて付加させる。
【0076】
より具体的には、上記の工程2は、リビングラジカル重合による(メタ)アクリル系重合体の製造において、重合反応の終期または所定モノマーの反応終了後に、ジエン化合物(1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエンなど)を反応させることにより実施される。
【0077】
加水分解性シリル基を有するヒドロシラン化合物は、特に限定されない。代表例としては、一般式(3)で示される化合物が例示される。
H-[Si(R2-b(Y)O]-Si(R3-a(Y) (3)
一般式(3)中、R、R、Y、a、b、mの定義は一般式(1)と同じである。
【0078】
これらヒドロシラン化合物の中でも、下記一般式(4)で表される化合物が、入手容易
な点から好ましい。
H-Si(R3-a(Y) (4)
一般式(4)中、R、Y、aの定義は一般式(1)と同じである。
【0079】
一例としては、メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等が挙げられる。
【0080】
加水分解性シリル基を有するヒドロシラン化合物をアルケニル基に付加させる際には、通常、遷移金属触媒が用いられる。遷移金属触媒の例としては、白金系触媒が挙げられる。より具体的には、白金単体;担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラックなど)に白金固体を分散させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体;白金-オレフィン錯体;白金(0)-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金系触媒以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・HO、NiCl、TiClが挙げられる。
【0081】
(第2の態様)
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A)は、下記第1a工程および第2a工程、または、下記第1b工程および第2b工程、を含む製造方法によって製造できる。この製造方法ではブロック共重合体が製造されるので、得られる(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル系重合体(A1)である。この製造方法により得られる(メタ)アクリル系重合体(A1)は、重合体の粘度が低下している点において好ましい。
【0082】
なお、以下の記載において、「加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを0重量%含む」とは、「加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含まない」ことを意味する。
【0083】
(第1a工程)リビング重合開始剤によって、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを(好ましくは3重量%超)含む(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物を重合させる工程。
【0084】
(第2a工程)第1a工程後の反応系に、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを0~3重量%含む(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物を加えて重合させる工程。
【0085】
(第1b工程)リビング重合開始剤によって、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを0~3重量%含む(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物を重合させる工程。
【0086】
(第2b工程)第1b工程後の反応系に、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを(好ましくは3重量%超)含む(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物を加えて重合させる工程。
【0087】
以下、(メタ)アクリル系重合体(A1)の構造ごとに、各工程をより具体的に説明する。
【0088】
(重合体がXYジブロック構造である場合)
XYジブロック構造の分子である(メタ)アクリル系重合体(A1)は、上述の第1a工程および第2a工程によって、または第1b工程および第2b工程によって、製造できる。このとき、第1a工程および第2b工程によって、加水分解性シリル基が相対的に多く含まれるXブロックが形成される。一方、第2a工程および第1b工程によって、加水分解性シリル基が相対的に少なく含まれるYブロックが形成される。
【0089】
第1a工程においては、リビング重合開始剤によって、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合させる。リビング重合開始剤としては、例えば、分子内にハロゲン基を1つ有する開始剤を用いることができる。加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、開始剤の1モル当量に対して、1~10モル当量とすることができる。また、必要に応じて、加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを1~100モル当量、一緒に重合してもよい。好ましくは、第1a工程において反応系に加えられる加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、第1a工程において反応系に加えられるモノマー混合物の、3重量%超を占めている。
【0090】
第2a工程においては、第1a工程後の反応系に、加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを加えて重合させる。加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマーの投入量は、第1a工程で得られる重合物の1モル当量に対して、2~600モル当量でありうる。第2a工程において、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応系に加えてもよい。第2a工程において反応系に加えられる加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、第2a工程において反応系に加えられるモノマー混合物の、0~3重量%を占めている。
【0091】
第1b工程においては、リビング重合開始剤によって、加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合させる。リビング重合開始剤としては、第1a工程と同じものが利用できる。加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、開始剤の1モル当量に対して、2~600モル当量とすることができる。第1b工程において、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを反応系に加えてもよい。第1b工程において反応系に加えられる加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、第1b工程において反応系に加えられるモノマー混合物の、0~3重量%を占めている。
【0092】
第2b工程においては、第1b工程後の反応系に、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを加えて重合させる。加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、第1b工程で得られる重合体1モル当量に対して、1~10モル当量とすることができる。また、必要に応じて、加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを1~100モル当量、一緒に重合してもよい。好ましくは、第2b工程において反応系に加えられる加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、第2b工程において反応系に加えられるモノマー混合物の、3重量%超を占めている。
【0093】
上記の工程において、「加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマー」の例としては、上述した(メタ)アクリル酸エステルモノマー(α)、(β)、(γ)、(δ)が挙げられる。これは、以下の説明でも同様である。
【0094】
(重合体がXYXトリブロック構造である場合)
XYXトリブロック構造の分子である(メタ)アクリル系重合体(A1)は、上述の第1a工程および第2a工程の後、追加の重合工程(a)を経ることによって、製造できる。このとき、第1a工程および追加の重合工程(a)によって、加水分解性シリル基が相対的に多く含まれるXブロックが形成される。なお、この製造方法に関しては、特開2018-162394号の記載を参照することができる。
【0095】
追加の重合工程(a)では、第2a工程後の反応系に、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを加えて重合させる。加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの投入量は、第2a工程で得られる重合体の1モル当量に対して、1~10モル当量でありうる。また、必要に応じて、加水分解性シリル基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを1~100モル当量、一緒に重合してもよい。好ましくは、追加の重合工程(a)において反応系に加えられる加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの量は、当該工程において反応系に加えられるモノマー混合物の、3重量%超を占めている。
【0096】
(重合体が4つ以上のブロックを有する場合)
上述した第1a工程、第2a工程、第1b工程、第2b工程および追加の重合工程を適宜組み合わせることによって、4つ以上のブロックを有する(メタ)アクリル系重合体(A1)を製造できる。例えば、XYXYテトラブロック構造を有する(メタ)アクリル系重合体(A1)を製造できる。
【0097】
第2の態様に係る製造方法を採用した場合、(メタ)アクリル系重合体(A1)の分子の一端または両端(重合時における分子の伸長末端)に、ハロゲン原子が残存している場合がある。一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体(A1)は、重合時における分子の伸長末端1個あたり、平均して1個以上のハロゲン原子を有している。
【0098】
(第1の態様と第2の態様との比較)
第1の態様に係る製造方法では、(メタ)アクリル系重合体に導入できる加水分解性シリル基は、最大でも2個である。これに対し、第2の態様に係る製造方法は、(メタ)アクリル系重合体に2個以上の加水分解性シリル基を導入できる。また、第1の態様に係る製造方法は、加水分解性シリル基を有するヒドロシラン化合物を利用して、加水分解性シリル基を導入する。これに対し、第2の態様に係る製造方法では、加水分解性シリル基を有するアクリル酸エステルモノマーを利用して、加水分解性シリル基を導入する。
【0099】
<1-2.熱塩基発生剤(B)>
一実施形態において、本製造方法における硬化性組成物は、熱塩基発生剤(B)を含有している。硬化性組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)および熱塩基発生剤(B)を含む場合、加熱によって硬化する。
【0100】
熱塩基発生剤(B)の例としては例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(以降、DBUとも称する。)系の化合物、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(以降、DBNとも称する。)系の化合物、フェニルホスフィン誘導体塩、ウレア類、アミン類、アンモニウム塩類等が挙げられる。
【0101】
熱塩基発生剤(B)は、取り扱い性の観点から室温で液体、あるいは液体と固体の混合物であることが好ましい。そのような熱塩基発生剤(B)としては例えば、DBNの2-エチルヘキサン酸塩、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル、1,1'-[[3-(ジメチルアミノ)プロピル]イミノ]ビス(2-プロパノール)、トリエチルメチルアンモニウム 2-エチルヘキサン塩等が挙げられる。
【0102】
熱塩基発生剤(B)は(メタ)アクリル系重合体(A)との反応性が高く、硬化性組成物の硬化速度が向上する観点から、DBU系の化合物であることがより好ましく、DBUまたはその誘導体と、有機酸との塩であることがさらに好ましい。なお、DBUの単体は熱塩基発生剤であるとは言えない。
【0103】
前記DBUと有機酸との塩としては例えば、DBUのフェノール塩、DBUの2-エチルヘキサン酸塩、DBUのギ酸塩、DBUのo-フタル酸塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、DBUのネオデカン酸塩およびDBUのトリメリット酸塩が挙げられる。熱塩基発生剤(B)は市販品を用いてもよく、例えばDBUの2-エチルヘキサン塩であれば、サンアプロ社製の商品名:U-CAT SA102等を用いることができる。
【0104】
前記DBUの誘導体としては例えば、DBUベンジル変性体等が挙げられる。また、前記DBUの誘導体と有機酸との塩としては例えば、DBUベンジル変性体のテトラフェニルボレート塩が挙げられる。
【0105】
熱塩基発生剤(B)のさらなる具体例としては、例えば下記式で表される化合物も挙げられる。
【0106】
【化3】
【0107】
硬化性組成物における熱塩基発生剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましく、0.5~2重量部がさらに好ましい。熱塩基発生剤(B)の含有量が10重量部以下であれば貯蔵安定性が向上し、0.01重量部以上であれば、硬化速度が向上する。
【0108】
<1-3.リン酸塩含有熱酸発生剤(C)>
別の実施形態において、本製造方法における硬化性組成物は、リン酸塩含有熱酸発生剤(C)を含有している。硬化性組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)およびリン酸塩含有熱酸発生剤(C)を含む場合、加熱によって硬化する。リン酸塩を含まない熱酸発生剤を用いた場合には、後述する実施例にも示す通り硬化性組成物の硬化速度が低下する。
【0109】
リン酸塩含有熱酸発生剤(C)としては、スルホニウム塩型熱酸発生剤、ヨードニウム塩型熱酸発生剤が挙げられる。このようなリン酸塩含有熱酸発生剤(C)としては例えば、サンアプロ社製の商品名TA-100、IK-1等が挙げられる。また、リン酸塩含有熱酸発生剤(C)は、リンのオキソ酸を含むスルホニウム塩またはヨードニウム塩であってもよい。また、上記以外のリン酸塩含有熱酸発生剤(C)としては、例えば、楠本化成社製の商品名NACURE4000、NACURE4054J、NACURE4167等が挙げられる。
【0110】
リン酸塩含有熱酸発生剤(C)のさらなる具体例としては、例えば下記式で表される化合物も挙げられる。
【0111】
【化4】
【0112】
硬化性組成物におけるリン酸塩含有熱酸発生剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましく、0.5~2重量部がさらに好ましい。リン酸塩含有熱酸発生剤(C)の含有量が10重量部以下であれば貯蔵安定性が向上し、0.01重量部以上であれば、硬化速度が向上する。
【0113】
<1-4.アニオン界面活性剤>
本製造方法における硬化性組成物がリン酸塩含有熱酸発生剤(C)を含む場合、当該硬化性組成物はさらにアニオン界面活性剤(D)を含むことが好ましい。リン酸塩含有熱酸発生剤(C)を含む硬化性組成物にアニオン界面活性剤(D)を加えることにより、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0114】
アニオン界面活性剤(D)としては例えば、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルサルフェート、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェートなどのサルフェート類の塩、パラフィン(アルカン)スルホネート、α-オレフィンスルホネート、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、モノまたはジアルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート、リグニンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステルなどのスルホネート類の塩、脂肪酸、N-メチル-脂肪酸サルコシネート、樹脂酸、ヤシ脂肪酸などの脂肪酸類の塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンモノまたはジアルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)化フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルホスフェート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ホスファチジルコリンホスファチジルエタノールイミン(レシチン)、アルキルホスフェートなどのリン酸エステル塩などを挙げることができる。この中でも、硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する観点から、リン酸エステル塩であることが好ましい。アニオン界面活性剤(D)は例えば、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートアミン塩である竹本油脂製、商品名ニューカルゲンFS-3PGであってもよい。また、上記塩の種類は特に限定されないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩等であってもよい。
【0115】
本製造方法の硬化性組成物におけるアニオン界面活性剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、1~15重量部がより好ましく、5~10重量部がさらに好ましい。アニオン界面活性剤(D)の含有量が20重量部以下であれば硬化性組成物の硬化性が向上し、0.1重量部以上であれば、硬化性組成物の貯蔵安定性が向上する。アニオン界面活性剤(D)は1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0116】
<1-5.シランカップリング剤>
本製造方法における硬化性組成物は、シランカップリング剤(E)を含有していてもよい。シランカップリング剤(E)には、接着性付与剤としての機能がある。そのため、シランカップリング剤(E)を硬化性組成物に含有させることにより、硬化物の接着性を向上させることができる。
【0117】
シランカップリング剤(E)の具体例としては、イソシアネート基含有シラン類(γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなど);アミノ基含有シラン類(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランなど);メルカプト基含有シラン類(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなど);エポキシ基含有シラン類(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなど);カルボキシシラン類(β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(β-カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなど);ビニル型不飽和基含有シラン類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシランなど);ハロゲン含有シラン類(γ-クロロプロピルトリメトキシシランなど);イソシアヌレートシラン類(トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。また、シランカップリング剤を変性させた誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステルなども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0118】
<1-6.その他の成分>
本製造方法における硬化性組成物は、上述した(A)~(E)に加えて、以下に例示する成分を含んでいてもよい。
【0119】
(充填剤)
充填材の例としては、特開2005-232419号公報の段落0158に記載されている充填材が挙げられる。これら充填材の中では、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンおよびタルクが好ましい。
【0120】
強度の高い硬化物を得るためには、充填材として、結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレーおよび活性亜鉛華からなる群より選択される1種類以上を用いることが好ましい。とりわけ超微粉末状のシリカが好ましく、当該シリカの比表面積(BET吸着法)は、50m/g以上が好ましく、50~400m/gがより好ましく、100~300m/gがさらに好ましい。有機ケイ素化合物(オルガノシラン、オルガノシラザン、ジオルガノポリシロキサンなど)により、表面を疎水処理したシリカもまた好ましい。
【0121】
一方、硬化物の強度を抑制して伸びのある硬化物を得るためには、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛およびシラスバルーンからなる群より選択される1種類以上を用いることが好ましい。
【0122】
炭酸カルシウムは、比表面積が大きいほど、硬化物の破断強度、破断伸びの改善効果が大きくなる。硬化性組成物のチクソ性、硬化物の破断強度および破断伸びを改善する目的では、膠質炭酸カルシウムを用いることが好ましい。一方、硬化性組成物の増量およびコストダウンを目的とする場合は、重質炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0123】
表面処理加工を施した炭酸カルシウムは、より好ましく用いられる。表面処理炭酸カルシウムを用いると、硬化性組成物の作業性が改善され、貯蔵安定性効果が向上する。炭酸カルシウムの表面処理剤としては、例えば、特開2005-232419号公報の段落0161に記載された表面処理剤が挙げられる。この表面処理剤の配合量は、炭酸カルシウムの総重量に対して、0.1~20重量%が好ましく、1~5重量%がより好ましい。配合量が0.1重量%以上ならば、作業性の改善効果を充分に得られる。配合量が20重量%以下ならば、硬化性組成物の貯蔵安定性を低下させずに維持できる。
【0124】
充填材は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。充填材の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)を100重量部として、5~1000重量部が好ましく、20~500重量部がより好ましく、40~300重量部がさらに好ましい。配合量が5重量部以上であれば、硬化物の破断強度、破断伸び、接着性および耐候接着性の改善効果が充分に得られる。配合量が1000重量部以下ならば、硬化性組成物の作業性を低下させることがない。
【0125】
(微小中空粒子)
硬化性組成物には、充填材に加えて、微小中空粒子を配合してもよい。微小中空粒子の例としては、直径が1mm以下、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下の無機質あるいは有機質の材料から構成される中空体が挙げられる。特に、真比重が1.0g/cm以下である微小中空体が好ましく、0.5g/cm以下である微小中空体がより好ましい。微小中空粒子を配合することにより、硬化物の柔軟性および機械強度を損なうことなく、硬化物を軽量化させ、コストダウンさせることができる。
【0126】
無機系微小中空粒子の例としては、特開2005-232419号公報の段落0168~0170に記載されている微小中空粒子が挙げられる。分散性および硬化性組成物の作業性を改良するために、表面を表面処理剤で処理した微小中空粒子を用いてもよい。表面処理剤の例としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、ロジン、ロジン酸リグニン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤、ポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0127】
微小中空粒子は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。微小中空粒子の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部であり、さらに好ましくは0.1~30重量部である。配合量が0.1重量部以上であるならば、軽量化の効果を充分に得られる。配合量が50重量部以下であれば、硬化物の物性を充分に維持できる。比重が0.1以上の微小中空粒子に関しては、配合量は、好ましくは3~50重量部であり、より好ましくは5~30重量部である。
【0128】
(酸化防止剤)
酸化防止剤の例としては、p-フェニレンジアミン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。また、二次酸化防止剤(リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など)も、酸化防止剤に含まれる。酸化防止剤の一例として、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0129】
酸化防止剤は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。酸化防止剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部であり、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0130】
(可塑剤)
可塑剤の例としては、特開2005-232419号公報の段落0173に記載された可塑剤が挙げられる。これらの中では、粘度の低減効果が顕著であり、耐熱性試験時における揮散率が低いという点から、ポリエステル系可塑剤、ビニル系重合体が好ましい。
【0131】
また、高分子可塑剤を配合することも好ましい。高分子可塑剤は、低分子可塑剤と比較して、初期の物性を長期にわたり維持できる。高分子可塑剤の数平均分子量は、500~15,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000がさらに好ましい。数分子平均量が500以上であれば、加熱または液体との接触による、可塑剤の流出を防止できる。数平均分子量が15,000以下ならば、粘度の上昇を抑制し、作業性を担保できる。
【0132】
高分子可塑剤の分子量分布は、1.8未満が好ましく、以降、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下の順に好ましくなる。
【0133】
(メタ)アクリル系重合体(A)との相溶性、耐候性および耐熱老化性の観点から、高分子可塑剤としては、ビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中では、(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。アクリル系重合体は、溶液重合または無溶剤型の合成方法によって製造できる。無溶剤型の合成方法によって製造されるアクリル系可塑剤は、溶剤および連鎖移動剤を使用せず高温連続重合法にて作製される(米国特許第4,414,370号、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号などを参照)。無溶剤型の合成方法によって製造されるアクリル系可塑剤の具体例としては、東亞合成品UPシリーズなどが挙げられる。
【0134】
他の好ましいアクリル系重合体としては、リビングラジカル重合により得られる重合体が挙げられる。リビングラジカル重合(特に好ましくは、原子移動ラジカル重合)により得られるアクリル系重合体は、分子量分布が狭く、粘度が低い点において好ましい。
【0135】
可塑剤は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。一実施形態においては、高分子可塑剤および低分子可塑剤の両方を配合してもよい。(メタ)アクリル系重合体(A)の製造時に、可塑剤を配合してもよい。
【0136】
可塑剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは1~100重量部であり、より好ましくは5~50重量部である。配合量が1重量部以上ならば、可塑剤としての効果が充分に発現する。配合量が100重量部以下ならば、硬化物の機械強度を低下させることがない。
【0137】
(反応性稀釈剤)
硬化性組成物には、可塑剤に加えて、反応性稀釈剤を配合してもよい。反応性稀釈剤としては、常圧における沸点が100℃以上である有機化合物が特に好ましい。このような有機化合物は、硬化性組成物を硬化させる際に揮発しないため、硬化前後における形状変化および環境への悪影響を抑制できる。反応性稀釈剤の具体例としては、1-オクテン、4-ビニルシクロヘキセン、酢酸アリル、1,1-ジアセトキシ-2-プロペン、1-ウンデセン酸メチル、8-アセトキシ-1,6-オクタジエンが挙げられる。
【0138】
反応性希釈剤は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。反応性稀釈剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対し、好ましくは0.1~100重量部であり、より好ましくは0.5~70重量部、さらに好ましくは1~50重量部である。
【0139】
(光安定剤)
光安定剤の例としては、[猿渡健市 他『酸化防止剤ハンドブック』大成社、1976年][大沢善次郎 監『高分子材料の劣化と安定化』シーエムシー、1990年、235-242ページ]などに記載された物質が挙げられる。
【0140】
好ましい光安定剤としては、紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾトリアゾール系化合物(チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213など);トリアジン系化合物(チヌビン1577など);ベンゾフェノン系化合物(CHIMASSORB81など)、ベンゾエート系化合物(チヌビン120など)が挙げられる。他の好ましい光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。ヒンダードアミン化合物の例としては、特開2006-274084号公報に記載された化合物が挙げられる。紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系化合物を組合せて配合する態様も、相乗効果を発揮することがあるため、好ましい。
【0141】
光安定剤および上述した酸化防止剤を組合せて配合する態様は、相乗的に効果を発揮し、特に耐候性が向上することがあるため、好ましい。光安定剤および酸化防止剤の両方を含む製品(チヌビンC353、チヌビンB75など)を配合してもよい。
【0142】
光安定剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましい。配合量が0.1重量部以上であれば、耐候性の改善効果が得られる。配合量が10重量部を超えても得られる効果には大差がないので、10重量部以下が経済的に好ましい。
【0143】
(接着性付与剤)
接着性付与剤の例としては、極性基を有するビニル系単量体が挙げられ、酸性基含有ビニル系単量体が好ましい。より具体的な物質の例は、特開2005-232419号公報の段落0184に記載されている。
【0144】
極性基を有するビニル系単量体の例としては、カルボキシ基含有単量体およびそのエステル、スルホン酸基含有単量体、リン酸基含有単量体が挙げられる。カルボキシ基含有単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸およびその誘導体が挙げられる。カルボキシ基含有単量体のエステルの具体例としては、マレイン酸エステル、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルキシエチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。スルホン酸基含有単量体の具体例としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン類、およびこれらの塩が挙げられる。リン酸基含有単量体の具体例としては、2-((メタ)アクリロイルシエチルホスフェート)、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロプロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェートが挙げられる。これらの中では、リン酸基含有単量体が好ましい。また、これらの単量体は、2個以上の重合性基を有してしても構わない。
【0145】
極性基を有するビニル系単量体以外の接着性付与剤の例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0146】
接着性付与剤は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。接着性付与剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100重量部に対して、0.01~20重量部が好ましく、0.1~10重量部がより好ましく、0.5~5重量部がさらに好ましい。配合量が0.01重量部以上であれば、接着性の改善効果が充分に得られる。配合量が20重量部以下であれば、硬化物の物性を低下させにくい。
【0147】
(溶剤)
溶剤の例としては、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレンなど);エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブなど);ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなど)が挙げられる。これらの溶剤は、(メタ)アクリル系重合体(A)の製造時に用いられたものであってもよい。
【0148】
(その他の縮合触媒)
本製造方法における硬化性組成物は、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)以外の縮合触媒を含有していてもよい。縮合触媒としては例えば、金属化合物、アミン、リン酸エステルが挙げられる。この中でも、硬化性組成物の貯蔵安定性の観点から、アミンおよびリン酸エステルが好ましい。また、縮合触媒として有機錫系化合物を含む錫系硬化触媒を含んでもよいが、上述した通り安全性の観点からは含まないほうが好ましい。
【0149】
((メタ)アクリル系モノマー)
本発明の一態様に係る硬化性組成物は、(メタ)アクリル系モノマーを含有していてもよい。(メタ)アクリル系モノマーは多官能であってもよいし、単官能であってもよい。多官能(メタ)アクリル系モノマーは、硬化物の機械物性を向上させる機能を有している。また、多官能(メタ)アクリル系モノマーは硬化物表面のタック性(べたつき)を抑えることもできる。一方単官能(メタ)アクリル系モノマーは、硬化性組成物の粘度を調節する機能を有している。そのため、単官能(メタ)アクリル系モノマーを含有する硬化性組成物は取扱いが容易である。
【0150】
(その他の添加剤)
その他の添加物の例としては、難燃剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤が挙げられる。その他の添加剤は、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。このような添加物の具体例は、例えば、特公平4-69659号公報、特公平7-108928号公報、特開昭63-254149号公報、特開昭64-22904号公報などに記載されている。
【0151】
〔2.硬化物によって封止された物品の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る硬化物によって封止された物品の製造方法は、本製造方法によって硬化物を物品上に形成する封止工程を含む。封止工程は、上述の硬化性組成物を物品に塗布する塗布工程と、前記硬化性組成物が塗布された物品を40~180℃の温度領域で、1~60分加熱する加熱工程とを有していてもよい。なお、前記加熱工程については、〔1.硬化物の製造方法〕において説明した事項を適宜援用できる。
【0152】
前記封止工程において、硬化物はポッティング材、接着剤、コーティング材、ディッピング材、モールディング材として用いられてもよい。この中でも、硬化物が強度および伸びに優れ、かつ耐熱性にも優れる観点から、特にポッティング材として用いられることが好ましい。
【0153】
前記物品としては例えば、自動車部品、列車部品、家電製品、機械部品、建材、電気部品、電子部品、電池部品等が挙げられる。これらの中でも、前記物品は、電子部品であってもよい。電子部品としては例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、有機TFTディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、プリント基板、プリント基板上の実装部品等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
前記封止工程は、周知の方法により硬化性組成物を物品上に塗布してから実施してもよい。塗布方法の具体例としては、スプレー、浸漬、シリンジ、刷毛、ディスペンサー、コーター等を用いた塗布等が挙げられる。これらの方法は塗布する物品によって適宜選択することができる。例えば、上述したフラットパネルディスプレイ等に塗布する場合は、塗布時および塗布後におけるタレの防止および異物の混入防止の観点からは、ディスペンサーを用いる方法が好ましい。また、プリント基板、プリント基板上の実装部品にコンフォーマルコーティングを施す場合は、生産性の観点からスプレーまたは浸漬が好ましい。
【0155】
〔3.硬化性組成物〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、を含み、40~180℃で加熱して、硬化させて使用する。硬化性組成物については、〔1.硬化物の製造方法〕および〔2.硬化物によって封止された物品の製造方法〕において説明した事項を適宜援用できる。
【0156】
前記硬化性組成物は加熱して硬化させることにより、強度、伸び、耐熱性に優れる硬化物とすることができる。また、前記硬化性組成物は触媒として有機錫系化合物を含む必要がないため、安全性においても優れている。そのため、前記硬化性組成物を硬化させた硬化物は、例えば電子部品等のポッティング材として用いることができる。
【0157】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0158】
〔4.まとめ〕
本発明には、以下の態様が包含される。
<1>
1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、を含む硬化性組成物を40~180℃の温度領域で加熱する硬化工程を有する、硬化物の製造方法。
<2>
前記硬化工程における加熱時間が1~60分である、<1>に記載の硬化物の製造方法。
<3>
前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、分子量分布(Mw/Mn)が1.8以下である、<1>または<2>に記載の硬化物の製造方法。
<4>
前記(メタ)アクリル系重合体(A)が有する前記加水分解性シリル基は、ジメトキシメチルシリル基である、<1>~<3>のいずれかに記載の硬化物の製造方法。
<5>
前記熱塩基発生剤(B)は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンまたはその誘導体と、有機酸との塩である、<1>~<4>のいずれかに記載の硬化物の製造方法。
<6>
前記硬化性組成物がリン酸塩含有熱酸発生剤(C)を含み、さらにアニオン界面活性剤(D)を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の硬化物の製造方法。
<7>
前記アニオン界面活性剤(D)は、リン酸エステル塩である、<6>に記載の硬化物の製造方法。
<8>
前記硬化性組成物がさらにシランカップリング剤(E)を含む、<1>~<7>のいずれかに記載の硬化物の製造方法。
<9>
<1>~<8>のいずれかに記載の硬化物の製造方法によって硬化物を物品上に形成する封止工程を含む、硬化物によって封止された物品の製造方法。
<10>
前記物品が電子部品である、<9>に記載の物品の製造方法。
<11>
1分子当たり平均して1.0個以上の加水分解性シリル基を分子の末端または末端近傍に有する(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)と、を含む、40~180℃で加熱して、硬化させて使用するための硬化性組成物。
【実施例0159】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0160】
〔合成例1:(メタ)アクリル系重合体(A)の合成〕
(重合工程)
100重量部のアクリル酸n-ブチルを用意し、脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、0.84重量部の臭化第一銅、40重量部のアクリル酸n-ブチルを加え、加熱攪拌した。8.79重量部のアセトニトリルおよび3.51重量部のジエチル-2,5-ジブロモアジペート(開始剤)を加えて混合した。混合液の温度を約80℃に調節した後、ペンタメチルジエチレントリアミンを加え、重合反応を開始させた。残る60重量部のアクリル酸n-ブチルを逐次加えて、重合反応を進めた。重合反応の途中で、適宜ペンタメチルジエチレントリアミンを追加で加え、重合速度を調節した。重合工程を通して使用したペンタメチルジエチレントリアミンの総量は、0.15重量部であった。重合工程においては、重合熱により系内が過熱されるのを防ぎ、系内温度は約80~約90℃に調節した。重合反応率が約95%以上となった時点で、揮発分を減圧脱揮して除去し、(メタ)アクリル系重合体を得た。
【0161】
(ジエン反応工程)
重合工程を経て得られた(メタ)アクリル系重合体に、21重量部の1,7-オクタジエン、35重量部のアセトニトリル、および0.68重量部のペンタメチルジエチレントリアミンを加えた。系内温度を約80℃~約90℃に調節した状態で数時間加熱攪拌して、重合体の末端に1,7-オクタジエンを反応させた。アセトニトリルおよび未反応の1,7-オクタジエンを減圧脱揮して除去し、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得た。
【0162】
(粗精製工程)
ジエン反応工程を経て得られた末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体をトルエンで稀釈した。1重量部の濾過助剤、0.5重量部の吸着剤(キョーワード700SEN、協和化学工業株式会社製)、および0.5重量部のハイドロタルサイト(キョーワード500SH、協和化学工業株式会社製)を加え、80~100℃程度に加熱攪拌した後、固形成分を濾別した。濾液を濃縮し、粗精製物を得た。
【0163】
(精製工程)
粗精製工程を経て得られた粗精製物に、0.2重量部の熱安定剤(スミライザーGS:住友化学株式会社製)、および吸着剤(キョーワード700SENおよびキョーワード500SH)を加えた。得られた混合物を減圧脱揮および加熱攪拌をしながら、系内を昇温させた。約170~約200℃の高温状態にて、数時間程度、減圧脱揮および加熱攪拌した。次に、吸着剤(キョーワード700SENおよびキョーワード500SH)、およびトルエン(重合体に対して約10倍の重量)を加え、約170~約200℃の高温状態にて、さらに数時間加熱攪拌した。得られた処理液をトルエンで稀釈し、吸着剤を濾別した。濾液を濃縮し、精製物(末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体)を得た。
【0164】
(シリル化工程)
精製工程を経て得られた精製物に、3.2重量部のメチルジメトキシシラン、1.6重量部のオルト蟻酸メチル、0.0010重量部の白金触媒(ビス(1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のイソプロパノール溶液)を混合し、約100℃にて加熱攪拌した。1時間程度加熱攪拌した後、未反応のメチルジメトキシシランなどの揮発分を減圧留去し、分子の末端にジメトキシメチルシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)を得た。
【0165】
得られた重合体(A)の、数平均分子量は約13,800であり、分子量分布は1.3であった。重合体(A)に導入されたジメトキシメチルシリル基の数は、1分子あたり平均で約1.8個であった(H NMR分析で測定した)。
【0166】
〔実施例および比較例で使用した材料〕
以下の実施例および比較例で使用した(メタ)アクリル系重合体(A)以外の材料は、以下の通りである。
【0167】
熱塩基発生剤(B):U-CAT SA102(サンアプロ製、DBUと2-エチルヘキサンとの塩)
リン酸塩含有熱酸発生剤(C):NACURE4167(KING INDUSTRIES製、リン酸ブロック触媒)
アニオン界面活性剤(D):ニューカルゲンFS-3PG(竹本油脂製、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートアミン塩)
強塩基:DBU(東京化成製)
リン酸塩非含有熱酸発生剤:NACURE2500(KING INDUSTRIES製、p-トルエン酸ブロック酸触媒)
〔実施例1~3〕
表1の組成(重量部)となるように、各成分を混合した。具体的には、ディスポカップに(メタ)アクリル系重合体(A)および熱塩基発生剤(B)を加えて、スパチュラで攪拌した。さらに、あわとり練太郎ARE-310(シンキー製)で、撹拌(1,600rpm×1.5分)および脱泡(2,200rpm×3分)を行い、硬化性組成物を得た。
【0168】
〔比較例1〕
熱塩基発生剤(B)を、強塩基に変更したこと以外は実施例1~3と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0169】
〔実施例4、5〕
表2の組成(重量部)となるように、各成分を混合した。具体的には、ディスポカップに(メタ)アクリル系重合体(A)、アニオン界面活性剤(D)を加えて、スパチュラで攪拌した。次に、リン酸塩含有熱酸発生剤(C)を加えて再びスパチュラで攪拌した。さらに、あわとり練太郎ARE-310(シンキー製)で、撹拌(1,600rpm×1.5分)および脱泡(2,200rpm×3分)を行い、硬化性組成物を得た。
【0170】
〔実施例6〕
アニオン界面活性剤(D)を加えなかったこと以外は実施例4、5と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0171】
〔比較例2〕
リン酸塩含有熱酸発生剤(C)をリン酸塩非含有熱酸発生剤に変更したこと以外は実施例4、5と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0172】
〔硬化性組成物の物性の測定方法〕
(硬化性の評価)
得られた硬化性組成物を深さ2mmになるように、サンプル瓶に加えた。表1または2中に記載の温度および時間に従い、オーブンで加熱した後、硬化性を評価した。皮張りは、加熱した組成物の表面をスパチュラで触り評価した。組成物がスパチュラに付着せず、表面にできた硬化物の層がスパチュラの引きはがしによって破れない場合は〇、組成物が付着せず、表面の硬化物の層がスパチュラの引きはがしによって破れる場合は△、未硬化であり、組成物がスパチュラに付着する場合は×とした。また、深部硬化は、硬化物にスパチュラを突き刺し、硬化物内部の硬化性を確認した。完全に硬化が進行し、ゴム状態になっている場合は〇、硬化は進行しているが、完全に硬化した状態に比べて柔らかいゴム状態である場合は△、硬化していない場合は×とした。
【0173】
(貯蔵安定性の評価)
硬化性組成物の作製直後および作製から3日後に、E型粘度計(東機産業製)で粘度を測定することによって評価した。硬化性組成物の反応が進行し、硬化しているために粘度が測定できない場合はゲル化と記載する。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
〔結果〕
表1より、熱塩基発生剤(B)を使用した実施例1~3はいずれも、強塩基であるDBU単体を縮合触媒として用いた比較例1よりも硬化速度が速く、短時間で深部まで硬化していた。さらに、表2より、実施例4~6のいずれも加熱により短時間で深部まで硬化したが、リン酸塩非含有熱酸発生剤を用いた比較例2は加熱しても硬化しなかった。加えて、実施例4および5は3日間保存してもゲル化しなかった。
【0177】
以上のことから、(メタ)アクリル系重合体(A)と、熱塩基発生剤(B)またはリン酸塩含有熱酸発生剤(C)とを使用することにより、有機錫系化合物を使用することなく、短時間で深部まで硬化することを実現可能であると言える。また、リン酸塩含有熱酸発生剤(C)を使用した場合には、アニオン界面活性剤(D)を加えることで、貯蔵安定性を向上できると言える。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の一態様に係る製造方法により製造される硬化物は、ポッティング材、接着剤、コーティング材などに利用できる。