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  • 特開-断熱部材の取付け装置、及びその方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063079
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】断熱部材の取付け装置、及びその方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/147 20060101AFI20230427BHJP
   F16L 51/02 20060101ALI20230427BHJP
   F16L 59/153 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
F16L59/147
F16L51/02
F16L59/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173358
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼山 典久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康介
(72)【発明者】
【氏名】三ツ屋 智弘
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC02
3H036AD03
3H036AE13
(57)【要約】
【課題】部材が備える固定部材に断熱部材を容易に取付ける装置、及びその方法を提供する。
【解決手段】第1治具80は、第1治具80の一方端を含んで形成され、先細先端部83、及び先細基端部84を有する先細部82、及び第1治具80の他方端を含んで形成され、少なくとも他方端の端面に設けられている開口部87、及び開口部87から一方端側に延びて接続部の内部に形成されている中空部88を有する接続部86を備えている。先細部82は、先細基端部84から先細先端部83に向かうにつれて、先細部82の第1治具80の長手方向に対し直角方向の外寸が連続的、又は断続的に縮小されて形成されている。先細先端部83の第1治具80の長手方向に対し直角方向の外寸は、第1、及び第2固定部材31、32の先端部である固定部材先端部35の第1、及び第2固定部材の長手方向に対し直角方向の外寸より小さく形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材に設けられている固定部材に断熱部材を固定する際に用いる第1治具であって、
前記固定部材は、棒状に形成され、前記固定部材の先端部には固定部材先端部が設けられており、
前記第1治具は、前記第1治具の一方端を含んで形成されている先細部、及び前記第1治具の他方端を含んで形成されている接続部を有し、
前記先細部は、前記先細部の先端部分である先細先端部、及び前記先細部の基端部分である先細基端部を有し、
前記接続部は、少なくとも前記他方端の端面に設けられている開口部、及び前記開口部から前記一方端側に延びて前記接続部の内部に形成されている中空部を有しており、
前記先細部は、前記先細基端部から前記先細先端部に向かうにつれて、前記先細部の前記第1治具の長手方向に対し直角方向の外寸が連続的、又は断続的に縮小されて形成されており、
前記先細先端部の前記第1治具の長手方向に直角方向の外寸は、前記固定部材先端部の前記固定部材の長手方向に対し直角方向の外寸より小さく形成されている、第1治具。
【請求項2】
前記先細先端部は、とがった形状、又は曲面を含む形状に形成されている、請求項1に記載の第1治具。
【請求項3】
前記接続部は、前記中空部の内周面に形成されており、前記固定部材先端部の外周面に設けられているねじ部に対応したねじ部を含んでいる、請求項1又は2に記載の第1治具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載されている前記第1治具、及び前記第1治具とともに用いられる第2治具を備える治具セットであって、
前記第2治具は、少なくとも一方端が開口されて内部に中空部を有し、
前記中空部は前記第1治具の少なくとも先細部が挿入可能に形成されている筒状部材である、
前記第1治具、及び前記第2治具を備える治具セット。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一項に記載の前記第1治具を用いて前記断熱部材を前記部材に取付ける方法であって、
前記固定部材先端部に前記第1治具を取付ける治具取付け工程、
前記第1治具の先細部に前記断熱部材の一方面側の所定位置をあて、前記先細部を通る前記第1治具の中心軸線と平行な線と前記断熱部材の他方面との交点の周囲に打撃工具で押圧力を加えて、前記断熱部材に前記第1治具により貫通孔を設け、前記第1治具が取付けられた前記固定部材を前記断熱部材に貫通した状態とする孔加工工程、及び
前記固定部材の先端部に取付けられた前記第1治具を取外す治具取外し工程、を備える、断熱部材の取付け方法。
【請求項6】
請求項5に記載の断熱部材の取付け方法であって、
少なくとも一方端が開口され、内部に中空部を有し、前記中空部は前記第1治具の少なくとも先細部が挿入可能な筒状部材である第2治具を用いる工程を含み、
前記孔加工工程において、前記先細部を通る前記第1治具の中心軸線と平行な線と前記断熱部材の他方面との交点を前記開口で囲むように前記第2治具の一方端を押し当て、前記第2治具の他方端に打撃工具で押圧力を加えて、前記断熱部材に前記第1治具により貫通孔を設け、前記第1治具が取付けられた前記固定部材を前記断熱部材に貫通した状態とする、断熱部材の取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱された流体を移送するダクト間に接続する伸縮継手が備える断熱部材の取付け方法、及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所、製鉄所、ゴミ焼却場等の燃焼装置から排出された排気等の流体を移送するダクトの連結部には、ダクトの熱膨張や振動等を吸収するために伸縮継手が設けられている。特許文献1に開示されている伸縮継手は、伸縮継手の両側のダクトにそれぞれ接続されている1対のフランジ、及び積層されている複数の断熱部材を備えている。断熱部材はフランジの周方向長さに相当する長さに形成されており、伸縮継手の1対のフランジ間において、フランジの周方向に沿って筒状に取付けられて流路の全周を囲っている。
【0003】
1対のフランジには、各々のフランジが対向している側の環状端部の周方向全周において、スタッドボルト類などの固定部材が等間隔に配置されている。断熱部材をフランジに取付ける際には、断熱部材の一方面側にスタッドボルトの先端部を押し当て、他方面側から断熱部材をハンマー等の打撃工具で打って、断熱部材にスタッドボルトで孔を開けて貫通させる。これを繰り返して、全てのスタッドボルトを断熱部材に貫通させて、断熱部材をフランジに固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-150561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、断熱部材は、柔軟な断熱材を網目状の繊維クロスと金属製デミスターとで包んだ構造のため、ハンマーでたたいて断熱部材にスタッドボルトの先端部で孔を開ける作業は容易ではなく、手間と時間がかかっていた。また、ハンマーによりスタッドボルトの先端部で強引に断熱部材に孔を開けるため、必要以上に大きな孔が開けられる場合があり、ダクト内部の熱が伝達されやすくなる可能性があった。さらに、スタッドボルトの頭を直接ハンマーで打つと、先端部が変形し、押さえ金具、ナットを取付けることができないといった懸念があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、部材に断熱部材を容易に取付けられる方法、及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部材に立設されている固定部材に断熱部材を固定する際に用いる第1治具は、第1治具が有する先細部が先細先端部、及び先細基端部を有しており、先細部は、先細基端部から先細先端部に向かうにつれて、先細部の第1治具の長手方向に対し直角方向の外寸が連続的、又は断続的に縮小されており、先細先端部の第1治具の長手方向に対し直角方向の外寸は、固定部材先端部の前記固定部材の長手方向に対し直角方向の外寸より小さく形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1治具の先細部の外寸は、連続的、又は断続的に縮小されて形成され、先細先端部の第1治具の長手方向に対し直角方向の外寸は固定部材先端部の外寸より小さく形成されている。そのため、断熱部材に孔加工する時に、第1治具を用いずに孔加工する場合に比べて、第1治具の先細部の小さい端面に打撃工具の打撃力が集中して付加され、打撃の効果を高めることができる。したがって、断熱部材に容易に貫通孔を設けることができる。よって、部材に断熱部材を容易に取付けることができる。
【0009】
また、本発明の第1治具の先細先端部は、とがった形状、又は曲面を含む形状に形成されていることが好ましい。
【0010】
第1治具の先細先端部がとがった形状、又は曲面を含む形状に形成されているので、断熱部材の外面に設けられている補強材の網目の孔に先細先端部を差し込ませ、打撃工具の連続する押圧力により網目の孔を拡大させるように貫通孔を設けることができる。したがって、断熱部材に容易に貫通孔を設けることができる。よって、部材に断熱部材を容易に取付けることができる。
【0011】
また、本発明の第1治具の接続部は、中空部の内周面に形成されており、固定部材先端部の外周面に設けられているねじ部に対応したねじ部を含んでいることが好ましい。
【0012】
本発明の作業治具の接続部はねじ部を含んでいるので、第1治具を固定部材の固定部材先端部に確実かつ容易に接続することができる。したがって、断熱部材に容易に貫通孔を設けることができる。よって、部材に断熱部材を容易に取付けることができる。
【0013】
また、本発明は、第1治具、及び第2治具の治具セットを備えており、第2治具は少なくとも一方端が開口されて内部に中空部を有し、中空部は第1治具の少なくとも先細部が挿入可能に形成されている筒状部材であることが好ましい。
【0014】
本発明は第1治具、及び第2治具の治具セットを備えているので、断熱部材に容易に貫通孔を設けることができる。よって、部材に断熱部材を容易に取付けることができる。
【0015】
また、本発明の断熱部材の取付け方法は、固定部材先端部に第1治具を取付ける治具取付け工程、第1治具の先細部に断熱部材の一方面の所定位置をあて、断熱部材の他方面に打撃工具で押圧力を加えて、前記断熱部材に前記第1治具により貫通孔を設け、固定部材を断熱部材に貫通した状態とする孔加工工程、及び第1治具を取外す治具取外し工程、を備えていることが好ましい。
【0016】
本発明の断熱部材の取付け方法は、治具取付け工程、孔加工工程、及び治具取外し工程を備えているので、第1治具を固定部材に容易に取付けられ、容易に貫通孔を加工でき、第1治具を固定部材から容易に取外すことができる。したがって、断熱部材に貫通孔を容易に設けることができる。よって、部材に断熱部材を容易に取付けることができる。
【0017】
また、本発明の断熱部材の取付け方法における孔加工工程は、第1治具の先細部に断熱部材の一方面側の所定位置をあて、先細部を通る第1治具の中心軸線と平行な線と断熱部材の他方面との交点を囲うように中空管で形成された第2治具の一方端を押し当て、第2治具の他方端に打撃工具で押圧力を加えて、前記断熱部材に前記第1治具により貫通孔を設け、第1治具が取付けられた固定部材を断熱部材に貫通した状態とすることが好ましい。
【0018】
本発明の断熱部材の取付け方法における孔加工工程は、第1治具に加え第2治具を用いるので、貫通孔を容易に設けることができる。よって、部材に断熱部材を容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明の実施の形態1に係る断熱部材の取付け方法、及びその装置が適用される伸縮継手を示す斜視図である。
図1B図1Aの伸縮継手を示す側面図である。
図2図1の伸縮継手のII-II断面図である。
図3図2の断熱部材の一部を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1の第1治具を示す側面断面図である。
図5図4の第1治具の取付け工程を示す概要図である。
図6】本発明の実施の形態1の取付け方法における孔加工工程を示す概要図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る第1治具を示す側面断面図である。
図8】実施の形態2の変形例に係る第1治具を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施の形態1>
本発明は、伸縮継手100が備える断熱部材の伸縮継手100への取付け方法、及びその装置である。本発明の実施の形態1を説明する前に、最初に添付図面を参照して本発明が適用される伸縮継手100を説明する。図1A、及び図1Bは、本発明の取付け方法、及びその装置が適用される伸縮継手の一例である断面円形の伸縮継手100である。また、図2は、図1BのII-II断面を示した断面図である。
【0021】
伸縮継手100は、火力発電所、製鉄所、ゴミ焼却場等の燃焼装置などから排出された排気等の流体を移送するダクトとダクトとの間を連結する装置である。伸縮継手100は、燃焼装置などから排出される高温で腐食性がある流体を流すことができるとともに、ダクトの熱収縮、及び振動を吸収できる継手である。伸縮継手100の寸法、及び形状は、接続されるダクトにあわせて決定される。伸縮継手100の直径は、例えば1m以下から10m、又はそれ以上である。図1A、及び図1Bに示されている伸縮継手100は、断面形状が丸形の伸縮継手100である。伸縮継手100は、接続されるダクトの接続部形状に合わせて、伸縮継手100は、断面形状が丸形、長方形を含む角形、又は異形形状から選択される。伸縮継手100はフランジ10、断熱部材61~65、及びベローズ90を備えている。また、フランジ10は、上流側ダクトに接続されるフランジ部材11、及び下流側ダクトに接続されるフランジ部材21を有している。
【0022】
図1A、及び図1Bに加えて図2を参照して、伸縮継手100の細部形状を説明する。上流側ダクトに接続されるフランジ部材11は、本体部材12、第2リブ37、及びバッフル38を有している。なお、図2には、フランジ部材11が接続される上流側ダクトのフランジLが示されている。
【0023】
本体部材12は、第1フレーム部材13、第2フレーム部材16、第1リブ19、第1固定部材31、第2固定部材32、及びカバー33を有している。
【0024】
第1フレーム部材13と第2フレーム部材16とは、組み合わされて環状のフレーム構造を構成している。第1フレーム部材13は、第1内面部14、及び環状に形成されている第1フランジ部15を有している。第1フランジ部15は、第1フランジ部15の内径側周端を第1内面部14の上流側の端部に、互いの中心軸線を一致させた状態で固定されている。また、第2フレーム部材16は、環状に形成されている第2垂直部17、及び第2フランジ部18を有している。第2フランジ部18は円筒形状に形成され、第2垂直部17の中心軸線と一致させた状態で、第2垂直部17の外径端部に円筒形状の下流側端部を固定されている。
【0025】
第2フレーム部材16は、第1フレーム部材13の第1内面部14の外周面上に、第2フレーム部材16の内径端部を接して溶接で固定されている。第1フランジ部15には、締結部材を固定する孔が周方向に一定間隔で設けられており、上流側ダクトのフランジLと締結部材で固定されている。第1フレーム部材13、及び第2フレーム部材16をつなぐように、両者に垂直に配置された平板状の第1リブ19が取付けられている。第1リブ19は、周方向一定間隔で複数配置されており、第1フレーム部材13、及び第2フレーム部材16に溶接されており、本体部材12を補強して、本体部材12の強度、剛性を向上させている。
【0026】
第1内面部14には、後述する断熱部材62~65を固定する第1固定部材31、及び第2固定部材32が設けられている。第1内面部14の流体流れ方向Xの下流側端部の外周面上には、第1固定部材31が第1内面部14の外周面に対して垂直に周方向一定間隔で設けられている。また、第1内面部14の内周面上には、第2固定部材32が第1内面部14の内周面に対して垂直に、周方向一定間隔で設けられている。一定間隔で環状に配置されている第2固定部材32は、流体流れ方向Xにおいて、第1内面部14の略中央付近、及び下流側端部付近のそれぞれに配置され、合計2列設けられている。
【0027】
固定部材である、第1固定部材31、及び第2固定部材32は、先端にねじ部36が設けられている。断熱部材62~65に設けられた貫通孔78に対応する第1固定部材31、又は第2固定部材32をそれぞれ通して、断熱部材62~65が保持される。第1固定部材31、及び第2固定部材32は、例えば、スタッドボルト、又はスタッドピンである。断熱部材62、63は、押さえ部材とナットで固定される。押さえ部材は、例えばワッシャ92、及びタイバンド93である。ワッシャ92は角形の板部材で形成され、ワッシャ92の流体流れ方向Xにおける両端部を下方、すなわち断熱部材62側に折り曲げて形成されている。タイバンド93は柔軟性がある金属製のロッドであり、断熱部材62の全周にわたって巻回するように配置され、断熱部材62を外面から押さえている。ワッシャ92は第1固定部材31に取付けられてタイバンド93を保持している。変形例として、押さえ部材は、断熱部材62を保持する平板状のワッシャのみで構成されてもよい。又は、第1固定部材31、及び第2固定部材32は、先端部のねじ部の代わりに、凹凸嵌合等による係合金具に対応する嵌合形状を有する係合部を設けられ、係合金具と対応する嵌合形状を嵌合するように構成されていてもよい。
【0028】
また、第2固定部材32は、後述する第1内面部14の内面側(流体側)に配置されている断熱部材65を保持した状態で断熱部材の外面を覆うカバー33を固定している。カバー33は、流路内を流れる高温及び腐食性の流体から断熱部材を保護する部材である。カバー33は金属製で、外周側が開放された断面直方体に形成されている。カバー33は、断熱部材にかぶせるように取付けられ、カバー33の内面側平面部34に設けられている貫通孔に第2固定部材32が通されて、断熱部材とともにナットで固定される。
【0029】
カバー33の内面側平面部34には、板状のバッフル38がバッフル38の上流側端部の平面部を接して取付けられている。バッフル38には、板状の第2リブ37がバッフル38の流体流れ方向Xにおける全長にわたって、バッフル38に対し垂直に固定されている。第2リブ37は、流体流れ方向Xに細長い多角形状に形成されている。板状の第2リブ37がカバー33の内面側平面部34に対し垂直に固定されている。第2リブ37は、流体流れ方向Xに細長い多角形状に形成されている。バッフル38は、伸縮継手100の中心軸線方向から外周面に向かう流体を遮る向きに固定され、伸縮継手100の内周面において周方向一定間隔で設けられている。バッフル38は、高温で腐食性の流体が、フランジ部材11、21間に配置されている断熱部材61~64にあたって損傷する可能性を低減させる。
【0030】
下流側ダクトに接続されるフランジ部材21は、本体部材22を有している。なお、図2には、フランジ部材21が接続される下流側ダクトのフランジMが示されている。本体部材22は、第1フレーム部材23、第2フレーム部材26、第1リブ29、第1固定部材31、第2固定部材32、及びカバー43を有している。
【0031】
第1フレーム部材23と第2フレーム部材26とは、組み合わされて環状のフレーム構造を構成している部材である。第1フレーム部材23は、第1内面部24、及び環状に形成されている第1フランジ部25を有している。第1フランジ部25は、内径端を第1内面部24の下流側の端部に互いの中心軸線を一致させた状態で固定されている。また、第2フレーム部材26は、環状に形成されている第2垂直部27、及び第2フランジ部28を有している。第2フランジ部28は円筒形状に形成され、互いの中心軸線を一致させた状態で第2垂直部27の外径端部に円筒形状の上流側端部を固定されている。
【0032】
第2フレーム部材26は、第1フレーム部材23の第1内面部24の外周面上に、第2垂直部27の内径端部を接して溶接で固定されている。第1フランジ部25には、締結部材を固定する孔が周方向に一定間隔で開けられており、下流側ダクトのフランジMと締結部材で固定されている。第1内面部24、及び第2垂直部27をつなぐように、両者に垂直に平板状の第1リブ29が取付けられている。第1リブ29は、周方向一定間隔で複数が溶接されており、本体部材22を補強して、本体部材22の強度、剛性を向上させている。
【0033】
第1内面部24には、後述する断熱部材を固定する第1固定部材31、及び第2固定部材32が設けられている。第1内面部24の流体流れ方向Xの上流側端部の外周面上には、第1固定部材31が第1内面部24の外周面に対して垂直に、周方向一定間隔で設けられている。また、第1内面部24の内周面上には、第2固定部材32が第1内面部24の内周面に対して垂直に、周方向一定間隔で設けられている。一定間隔で環状に配置されている第2固定部材32は、流体流れ方向Xにおいて、第1内面部24の略中央付近、及び上流側端部付近のそれぞれに配置され、合計2列設けられている。
【0034】
第2固定部材32は、後述する第1内面部24の内面側に配置されている断熱部材を保持した状態で断熱部材の外面を覆うカバー43を固定している。カバー43は、ダクト内を流れる高温及び腐食性の流体から断熱部材を保護する部材である。カバー43は金属製で、外周側が開放された断面直方体に形成されている。カバー43は、断熱部材にかぶせるように取付けられ、カバー43の内面側平面部44に設けられている貫通孔に第2固定部材32が通されて、断熱部材とともにナットで固定される。
【0035】
第1フレーム部材13、23の第2フランジ部18、28には、周方向一定間隔で締結具用孔が設けられており、締結具により取付け具52、52がそれぞれ固定されている。取付け具52、52は平面部同士が直角で接続された断面L字形状の部材であり、両方の平面部に締結具用孔が設けられている。取付け具52、52は、それぞれの一方の平面部を第2フランジ部18、28に当接し、他方の平面部を互いに隣接する側に配置されて固定されている。取付け具52、52のそれぞれの他方の平面部に設けられている締結具用孔には、シッピングボルト51の両端部がそれぞれ通されており、ナットにより締結されている。シッピングボルト51は、伸縮継手100が設置されるまでの間にフランジ部材11とフランジ部材21とを連結状態に保つボルトであり、フランジ部材11、21が接続されるダクトのフランジL、Mに接続されている状態では取外されている。
【0036】
次に、伸縮継手100に備えられている断熱部材61~65の配置を説明する。図2に示されているように、伸縮継手100は複数の断熱部材61~65を備えている。断熱部材61~65は、所定幅、かつフランジ部材11、21の周方向の全周長に相当する長さに形成されている。伸縮継手100の外周側には、第2垂直部17と第2垂直部27との間において、断熱部材61~63が積層されて配置されている。断熱部材61~63のうちの内側の断熱部材62、及び63は、断熱部材62、及び63の流体流れ方向Xに平行な方向における両端部において、あらかじめ設けられた貫通孔78に第1固定部材31が組み込まれている状態となるように取付けられて、ワッシャ等の押さえ部材及びナットで固定されている。断熱部材62の外周側には、断熱部材61が配置されている。断熱部材61の外周側には、ベローズ90が配置されて、断熱部材61の外周面全周を覆っている。断熱部材61~63の流体流れ方向Xに平行な方向における両端部は、周方向の全周にわたって第2垂直部17、及び第2垂直部27の互いに対向する面に隙間なく接している。そのため、断熱部材61~63と、第2垂直部17、及び第2垂直部27との間から熱が漏れないようにされている。
【0037】
また、伸縮継手100の内周側には、第1フランジ部15から第1フランジ部25の間において、断熱部材64、及び断熱部材65、65が積層されて設けられている。断熱部材64の流体流れ方向Xに平行な方向における長さは、第1フランジ部15から第1フランジ部25間の寸法と同じ寸法に形成されている。断熱部材64、及び断熱部材65、65は、それぞれ第2固定部材32に対応して、第2固定部材32が挿入され、押さえ金具、及びカバー33、43がナットで固定されている。
【0038】
図2に加え、図3を参照して、断熱部材61~65を説明する。断熱部材61~65は複数の材料を含んでおり、断熱材71、第1補強材72、第2補強材73を含んでいる。なお、図3以降の断熱部材は代表として断熱部材63を記載する。
【0039】
断熱材71は耐熱性繊維であり、例えばグラスフェルトである。断熱材71に用いられる耐熱性繊維の材料の事例として、無機繊維では、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、ケイ酸アルカリ土類金属塩繊維、グラスウール、グラスファイバー、ロックウール、スラグウール、炭化ケイ素繊維、カーボン繊維、シリカアルミナマグネシア繊維、シリカアルミナジルコニア繊維、シリカマグネシアカルシア繊維、バサルト繊維、生体溶解性無機繊維、等が挙げられる。また、有機繊維では、アラミド繊維やPBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維、ポリイミド繊維、等が挙げられる。さらに金属繊維としてはボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ステンレス鋼繊維等が挙げられる。断熱材71の厚さは、伸縮継手100が適用される装置に応じて決定されるが、通常は20mm~100mmの範囲で形成される。
【0040】
断熱材71は、断熱材71を第1補強材72により包み込まれている。第1補強材72は、耐熱性ガラス繊維である。第1補強材72は、例えばガラスクロスである。第1補強材72は、断熱効果を有するとともに、伸縮継手100に取付けしやすいように、断熱材71をまとまった形状に維持している。第1補強材72の材料としては、断熱材71と同様な上記の無機繊維、及び有機繊維が挙げられる。第1補強材72の材料は、断熱材71の材料と同じでもよい。第1補強材72の厚さは、伸縮継手100が取付けられる装置に応じて決定されるが、0.3mm~5mmに形成される。好ましくは、第1補強材72の厚さは1.5mm~2mmである。シート状に形成された第1補強材72は、断熱材71を包み込んだ形態とされて、端部同士の全長が縫製処理等して接続されている。
【0041】
断熱部材61~65は、断熱材71を第1補強材72により包み込まれ、さらに第2補強材73で包み込まれている。第2補強材73は、例えばデミスターである。デミスターは、金属ワイヤを所定の形状で編んで形成されている。金属ワイヤは、伸縮継手100が取付けられる装置に応じて決定されるが、例えば、軟質ステンレス鋼線(SUS316L)が用いられる。金属ワイヤの線径は、0.1mm~0.3mmであり、好ましくは、φ0.12mm、又はφ0.25mmである。
【0042】
断熱部材61~65は、上記のように、断熱材71を第1補強材72により包み込み、さらに第2補強材73により包んで形成されている。このように形成された断熱部材61~65は、伸縮継手100の外周側(大気側)、及び内周側(流体側)において、積層されて固定されている。なお、断熱材71、第1補強材72、及び第2補強材73の形状、厚さ、枚数は、伸縮継手100が取付けられる装置に応じて適宜決定される。また、断熱材71を包み込む第1補強材72、及び第2補強材73は、流体の温度、流体内に含まれる粒子状物質の有無等により、必要に応じて何れか一方のみとしてもよい。
【0043】
図2を参照して、ベローズ90を説明する。ベローズ90は、最外層の断熱部材61の外側に配置されて、フランジ部材11、21間を伸縮自在に接続している。ベローズ90は、ベローズ90の流れ方向Xに平行な方向における両端部の周方向全周を、第2フレーム部材16、26の第2フランジ部18、28と、取付け具52との間にそれぞれ挟まれて固定されている。図2の実施例においては、ベローズ90は複数の部材が積層されて形成され、例えば、内周側(流体側)から外周側(大気側)に、PTFE、ガラスクロス、及びSUS編入ガラスクロスが順に積層されて形成されている。または、ベローズ90は上記部材の何れか1つにより形成されていてもよい。
【0044】
図4図6は、本発明の実施の形態1である、伸縮継手100の断熱部材61~65の取付けに用いる装置、及びその取付け方法を示している。本発明の実施の形態1において、貫通孔78を有する断熱部材62~65をフランジ部材11、21に取付ける際には、第1治具80、及び第2治具95が用いられる。なお図5図6では、図面を理解し易いように、断面形状が角形に形成された伸縮継手100の実施例を示しており、第1内面部14、24は円筒形でなく、角形の一辺を形成する平面部分として示されている。
【0045】
図4を参照して第1治具80を説明する。第1治具80は、断熱部材62~65をフランジ部材11、21に取付ける際に、断熱部材62~65に孔加工するための治具であり、第1固定部材31、及び第2固定部材32のねじ部36に係合されて使用される。第1治具80は、一方端側に先細部82を有する第1先端部81、及び他方端側に接続部86を有する第1後端部85を備えている。第1治具80の先細部82を除く部分は、断面が円形で外径一定の中心軸線Yを有する円柱で形成されている。又は、第1治具80の先細部82を除く部分の形状は、円柱の代わりに、角柱、例えば三角柱、四角柱、五角柱、又は六角柱の何れかであってもよい。
【0046】
なお、第1治具80を容易に回転させるために、接続部86の外面の全周に図示しない工具係合部が形成されていてもよい。工具係合部は、スパナ等の工具が係合可能な部位であり、例えばナットの外面と同様な断面六角形状部である。これにより、回転抵抗が大きい場合、又は素早く回転させたい場合に第1治具80の外面の工具係合部にスパナ、電動ツール、エアツール等の工具類を係合させて第1治具80を回転させることができる。なお、前記工具係合部は、第1治具80の先細部82を除く部分の何れかの位置に設けられる。特に、本取付け方法の工程中において工具類を脱着しやすいように、先細部82に隣接した第1治具80の外面に設けることができる。
【0047】
また第1治具80を人手で容易に回転させて脱着するために、接続部86の外周面に図示しないすべり止め部を設けてもよい。すべり止め部の形成方法はローレット加工やブラスト処理、エッチング、レーザー加工、プレス加工、溶射、メッキ、微細孔加工、ケガキ加工等により表面に微細な凹凸を形成したり、微細な凹凸粒子や摩擦の大きい樹脂分を含むすべり止め塗料を塗布する方法や、接続部86の外周部の円周方向に凹部の溝を設けてゴムや樹脂のOリングやバンド、テープなどを溝にはめ込む等、あるいはこれらの方法の組み合わせにより、第1治具80の付け外しをするときに第1治具80がすべり難くする形状に形成されていてもよい。さらに滑り止め部が、接続部86の外周のすべり止め未加工部分と外観に差が出来ることを利用して、すべり止め部の外観形状を記号や数字あるいはバーコードの形としたり、Oリングや樹脂の色を変えることで、第1治具80の寸法や形状を判別できる状態とすれば、作業性をさらに向上させることが出来る。
【0048】
接続部86は、第1治具80の他方端の後端に開口部87、及び開口部87から第1治具80の第1先端部81側に延びている中空部88を有している。中空部88は、第1後端部85から第1治具80の中央部付近まで設けられている。中空部88の内径は、中空部88の全長に渡って一定に形成されている。図5に示されているように、第1及び第2固定部材31、32の先端部分である固定部材先端部35の外面には、ねじ部36が設けられている。また、中空部88の内周面には、中空部88の全長に渡って、固定部材先端部35のねじ部36に対応したねじ部89が設けられている。第1治具80は、第1治具80のねじ部89により、第1及び第2固定部材31、32のそれぞれの固定部材先端部35に固定される。
【0049】
又は、中空部88の内周面は、ねじ部89の代わりに平滑な内周面に形成され、固定部材先端部35が第1治具80の中空部88に挿入される構成であってもよい。その場合は、中空部88の内径は、固定部材先端部35の外径より若干大きく形成されて、中空部88に固定部材先端部35がスムーズに挿入できる寸法関係に形成される。固定部材先端部35は中空部88に挿入されて中空部88の奥の内壁面に突き当たり、第1治具80は第1固定部材31、又は第2固定部材32に保持される。
【0050】
第1治具80の外径は、第1及び第2固定部材31、32に形成されているねじ部の外径に対して、必要な肉厚分を加えた寸法に形成されている。例えば、中空部88の内径に対し、片側1mm~3mm程度の肉厚を含む外径に形成される。
【0051】
第1治具80の第1先端部81に形成されている先細部82は、第1先端部81の先端側の先細先端部83、及び第1治具80の先細先端部83に対し反対側の先細基端部84を有している。先細部82は、先細基端部84から先細先端部83まで、連続的、又は断続的に縮径されて形成され、先細先端部83の第1治具80の長手方向に対し直角方向の外寸Dは固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸より小さく形成されている。先細先端部83はとがった形状に形成され、先細部82は円錐形状である。先細先端部83は、円錐の先端部のように先細部82の外寸Dが徐々に小さくされた先端部である点として形成されている。第1治具80の第1先端部81がとがって形成されているため、ハンマー等の打撃工具Nによる押圧力が断熱部材62~65に集中して付加される。第1先端部81はとがっているため、断熱部材62~65の外面の第2補強材73の網目の孔に先細先端部83を差し込ませ、打撃工具Nによる押圧力により網目を拡げるように貫通孔78を形成することができる。よって、断熱部材62~65に貫通孔78を容易に設けることができる。
【0052】
又は、先細先端部83はとがった形状ではなく、平面から形成される端面も可能である。すなわち、先細部82は、円錐形状ではなく截頭円錐形状であってもよい、先細先端部83の外寸Dは、先細基端部84の第1治具80の長手方向に対し直角方向の外寸、及び固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸より小さく形成される。したがって、断熱部材62~65に孔加工する時に、先細先端部83の端面に打撃工具Nの押圧力が集中して付加されるため、打撃の効果を高めることができる。したがって断熱部材62~65に貫通孔78を容易に設けることができる。なお、先細先端部83の外寸Dは、固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸以下とされていてもよい。外寸Dが固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸と同じ寸法である場合、ねじ部36の保護、及びねじ部36への断熱部材62~65の絡みつき防止、等の効果が得られる。
【0053】
又は、先細先端部83はとがった形状ではなく、曲面で形成されていてもよい。すなわち、先細部82は、先細先端部83が曲面状に形成された円錐形状であってもよい。その場合、先細先端部83の外寸は、先細基端部84、及び固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸より小さく形成される。断熱部材62~65に孔加工する時に、先細先端部83に打撃工具Nの押圧力が集中して付加されるため、打撃の効果を高めることができる。したがって、断熱部材62~65に貫通孔78を容易に設けることができる。なお、先細先端部83の外寸Dは、固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸以下とされていてもよい。外寸Dが固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸と同じ寸法である場合、ねじ部36の保護、及びねじ部36への断熱部材62~65の絡みつき防止、等の効果が得られる。
【0054】
また、先細部82は、断面が円形の円錐形状として形成される代わりに、角錐形状、例えば、三角錐、四角錐、五角錐、六角錐、等に形成されていてもよい。すなわち、先細部82は、先細基端部84から先細先端部83に向かうにつれて、第1治具80の外寸Dが連続的、又は断続的に縮小されて形成されている角錐形状であってよい。先細部82が角錐形状である場合、先細先端部83は、上記のように、とがった形状、曲面を含む形状、又は平面を含む形状の何れかの形状であってよい。上記の何れの場合でも、先細先端部83の外寸Dは、先細基端部84の第1治具80長手方向に対し直角方向の外寸、及び固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸より小さく形成される。そのため、断熱部材62~65に打撃工具Nの押圧力が集中して付加されるため、打撃の効果を高めることができる。したがって断熱部材62~65に貫通孔78を容易に設けることができる。なお、先細先端部83の外寸Dは、固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸以下とされていてもよい。外寸Dが固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸と同じ寸法である場合、ねじ部36の保護、及びねじ部36への断熱部材62~65の絡みつき防止、等の効果が得られる。
【0055】
図6を参照して、第2治具95を説明する。第2治具95は、第1固定部材31、及び第2固定部材32に断熱部材62~65を取付ける際に、第1治具80とともに用いられる治具である。第2治具95は、少なくとも一方端が開口され、内部に中空部98を有する筒状の部材から形成されている。中空部98の内寸は第1治具80の外寸より大きく形成されている。そのため第1治具80の少なくとも先細部82が挿入可能である。第2治具95は、例えば両端が開口された金属製の中空管である。
【0056】
図5図6を参照して、本実施の形態1の断熱部材の取付け方法を説明する。以下の説明では、フランジ部材11の第1固定部材31に断熱部材63を取付ける場合として説明する。以下で説明する取付け方法は、上記以外の場合でも同じである。すなわち、断熱部材63の代わりに断熱部材62を取付ける場合、フランジ部材11の第1固定部材31の代わりにフランジ部材21の第1固定部材31に取付ける場合、並びに、フランジ部材11又はフランジ部材21の第2固定部材32に断熱部材64又は65を取付ける場合でも同じである。
【0057】
[治具取付け工程]
図5は、治具取付け工程を示している。図5は、上流側の第1固定部材31を下流側のフランジ部材21の斜め上方から見た斜視図である。治具取付け工程では、第1固定部材31に第1治具80の接続部86を接続する。第1治具80の接続部86の中空部88の内周面のねじ部89を、第1固定部材31の固定部材先端部35の外周面のねじ部36に係合させて固定する。固定部材先端部35のねじ部36に第1治具80を係合させることで、ねじ部36が破損していないか等、ねじ部36の健全性を確認することができる。
【0058】
[孔加工工程]
図6は、孔加工工程を示している。第1治具80の先細部82を断熱部材63の一方面側の所定位置にあて、先細部82を通る第1治具80の中心軸線Yと平行な線と断熱部材63の他方面との交点を囲うように中空管で形成された第2治具95の第2後端部97を押し当て、第2治具95の第2先端部96にハンマー等の打撃工具Nで押圧力を加えて、断熱部材63に第1治具80により貫通孔78を設け、第1治具80が取付けられた状態の第1固定部材31を断熱部材63に貫通した状態とする。上記孔加工方法によれば、一定の孔径の孔が得られ、必要以上の大きさの貫通孔78を開けることがない。したがって、貫通孔78の大きさは最小限ですみ、断熱部材62~65の貫通孔からの熱漏れが発生する可能性が低減される。また、長期間使用される断熱部材62~65の使用過程において、過大な貫通孔78が起点となって破損が広がる可能性が低減される。
【0059】
上記方法の変形例として、第2治具95を使わずに、先細部82を通る第1治具80の中心軸線Yと平行な線と断熱部材63の他方面との交点の周囲にハンマー等の打撃工具Nで直接押圧力を加えて、第1治具80が取付けられた状態の第1固定部材31を断熱部材63に貫通させてもよい。また打撃工具Nは、電動あるいは空気圧等を動力とする打撃工具を用いてもよい。このとき打撃工具Nと第2治具95の第2先端部96を嵌合させて使用することもできる。
【0060】
[治具の取外し工程]
孔加工がされ、貫通孔78に第1固定部材31が貫通したら、貫通孔78に挿入されている状態のそれぞれの第1固定部材31から第1治具80を回転させて取外す。その後は、上記と同様に断熱部材62も取付け、各第1固定部材31の固定部材先端部35に押さえ部材であるワッシャ92と、タイバンド93とを取付け、ナットで締め付けて断熱部材62、63を第1フレーム部材13に固定する。
【0061】
第2補強材73は強度が高い金属製ワイヤで形成されている。したがって、本実施の形態1は、断熱部材62~65が断熱材71を第1補強材72に加えて第2補強材73で包み込まれて形成されている場合に、特に効果が顕著である。よって、本実施の形態1は、特に、断熱材71、第1補強材72、及び第2補強材73を有する断熱部材62~65を取付ける時に用いるとよい。また、断熱部材63以外の断熱部材62、64、65の場合、フランジ部材21の場合、第2固定部材32の場合、及びそれらの組み合わせの場合でも、取付け方法は上記と同じである。第1治具80は繰り返し使用が可能であり、一度作製した第1治具80、及び第2治具95は半永久的に使用できるため、治具製造コストが低減できる。上記取付け方法により、作業時間は従来に比べて約2/3に減少させることができた。したがって、本発明によれば、作業工数を大幅に低減でき、工期短縮、及び関わる作業者数を低減することができる。
【0062】
<実施の形態2>
図7を参照して実施の形態2に係る第1治具110を説明する。第1治具110は、実施の形態1に係る第1治具80に対し、複数の部材で構成されている点が異なっている。第1治具110を用いての断熱部材の取付け方法は、実施の形態1に係る第1治具80を用いた場合と同等である。第1治具110は、一方端側に第1先端部81、及び他方端側に第1後端部85を備えている。また、第1治具110は、第1先端部81側に先細部111、及び第1後端部85側に接続部116を備えている。両者はそれぞれ異なる部材で形成されており、両者の中心軸線Yを同軸にして一体的に組立てられて、第1治具110を形成している。
【0063】
先細部111は、先細部111の第1先端部81側に形成されている第1先細部112、先細部111の第2後端部85側に形成されている第3先細部114、及び第1先細部112と第3先細部114との間に形成されている第2先細部113を有している。
【0064】
第1先細部112は、第1先端部112の先端側の先細先端部83、及び第1治具110の先細先端部83に対し反対側の先細基端部84を有している。第1先細部112は、先細基端部84から先細先端部83に向かうにつれて、第1治具110の長手方向に対し直角方向の外寸Dが連続的、又は断続的に縮小されて形成され、先細先端部の外寸Dは固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸より小さく形成されている。先細先端部83はとがっており、第1先端部112は円錐形状に形成されている。先細先端部83は、円錐の先端部のように第1先細部112の外寸Dが徐々に小さくされた点として形成されている。
【0065】
又は、先細先端部83はとがった形状ではなく、平面から形成される端面となっていてもよい。すなわち、第1先細部112は、円錐形状ではなく截頭円錐形状であってもよい。又は、先細先端部83は、曲面を含んで形成されていてもよい。すなわち、第1先細部112は、先細先端部83が曲面を含んで形成された円錐形状であってもよい。なお、先細先端部83の外寸Dは、固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸以下とされていてもよい。 外寸Dが固定部材先端部35の第1、第2固定部材31、32の長手方向に直角方向の外寸と同じ寸法である場合、ねじ部36の保護、及びねじ部36への断熱部材62~65の絡みつき防止、等の効果が得られる。
【0066】
又は、第1先細部112の断面が円形の円錐形状ではなく、断面が多角形の角錐形状、例えば、三角錐、四角錐、五角錐、六角錐、等に形成されていてもよい。
【0067】
第2先細部113は、第1先細部112と第3先細部114とを接続している円柱状の部材である。第2先細部113、及び接続部116は、第1治具110の長手方向に対し直角方向のそれぞれの外寸が略同等に形成されており、両者の外面同士は段差なく接続されている。
【0068】
第3先細部114は、先細部111が接続部116と接続している部分である。第3先細部114の第1治具110の長手方向に対し直角方向の外寸は、接続部116の中空部88の内径と略同じである。第3先細部114の外面には、ねじ部115が形成されている。
【0069】
接続部116は、一方端側の前端部117、及び他方端側の後端部118にそれぞれ開口部119、119と、両開口部119、119を連通する中空部88と、を有する円筒状の部材である。接続部116は、中空部88の内面にねじ部89を有しており、接続部116の前端部117の開口部119には、第3先細部114のねじ部115が接続されている。また、接続部116の後端部118の開口部119は、第1固定部材31、又は第2固定部材32のねじ部36が接続可能である。接続部116の前端部117の開口部119と、後端部118の開口部119とは同じ内径であり、ねじ部89はねじ部89の全長にわたって一定である。又は、前端部117の開口部119の内径と、後端部118の開口部119の内径は、各々に接続される部材の外径に応じて異なる内径に形成されていてもよい。
【0070】
第2先細部113、及び接続部116の少なくとも何れか一方は、円柱でなく角柱、例えば三角柱、四角柱、五角柱、又は六角柱の何れかに形成されていてもよい。
【0071】
また、第1治具110を容易に回転させるために、第2先細部113、及び接続部116の何れか一方、又は両者の少なくとも一部の外面には、図示しない工具係合部が形成されていてもよい。工具係合部は、スパナ、電動ツール、エアツール等の工具が係合可能な部分であり、例えばナットの外面と同様な六角形の断面形状部である。また、第1治具110を人手で容易に回転させて脱着するために、第2先細部113、及び接続部116の少なくとも何れか一方の外面に、図示しないすべり止め部を設けてもよい。
【0072】
第1治具110は加工に手間がかかる止まり穴を含まないので、容易に形成することができる。したがって、第1治具110を、より安価に形成できる。
【0073】
なお、図8に示されているように、実施の形態2の変形例として、先細部121を第2先細部113を含まない態様とし、第1先細部112と第3先細部114とを直接接続するように形成して、第1部材120を形成してもよい。先細部121が第2先細部113を含まないので、外寸、及び長さ寸法を小さくすることができる。したがって、第1治具120を、より安価に形成できる。
【0074】
なお、本発明の断熱材の取付け方法は、伸縮継手以外に、建築物の壁、構造部材、等、スタッドボルト等の棒状の固定部材により固定される断熱部材の取付けに適用可能である。
【0075】
本発明によれば、伸縮継手が備える断熱部材を容易に取付ける方法、及びその装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0076】
31 第1固定部材、 32 第2固定部材、 35 固定部材先端部、 36 ねじ部、 61~65 断熱部材、 78 貫通孔、 80,110,120 第1治具、 82,111,121 先細部、 83 先細先端部、 84 先細基端部、 86,116 接続部、 87,119 開口部、 88 中空部、 89 ねじ部、 95 第2治具、 100 伸縮継手。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8