(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063094
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/14 20060101AFI20230427BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
E06B7/14
E06B3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173386
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】石井 大佳之
(72)【発明者】
【氏名】平川 真也
(72)【発明者】
【氏名】水本 義則
(72)【発明者】
【氏名】▲節▼ 世名
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014FA07
2E014FB01
2E014FB11
2E036RA03
2E036RB03
2E036RC02
2E036TA05
(57)【要約】
【課題】水密性能を向上させることができる建具を提供すること。
【解決手段】建具1は、下框52を有する障子5を備え、下框52は、室内側の見付面を見込方向に貫通する空気導入孔575を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体内に配置され下框を有する障子と、を備え、
前記下框は、室内側の見付面を見込方向に貫通する空気導入孔を有する建具。
【請求項2】
前記下框は、前記空気導入孔よりも下方に配置され前記下框の内部に導入され水を外部に排出する排水孔を有する請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記障子は、下枠に設けられた気密材に当接した状態で、前記下枠に沿って横方向に移動可能に構成され、
前記空気導入孔は、前記気密材よりも室外側に配置される、請求項1又は2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下框に排水孔を設けた障子を備える建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。下框の内部に浸入した雨水は、排水孔を介して、下框の外部に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、強雨等により下枠に雨水が溜まり下框の排水孔が塞がれてしまった場合には、雨水を排水できなくなり、雨水が室内側に漏れて浸入する可能性がある。そのため、このような場合においても雨水を滞りなく排水できる建具が求められている。
【0005】
本開示は、下框内に溜まった雨水を滞りなく排水することで水密性能を高めた建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、枠体と、前記枠体内に配置され下框を有する障子と、を備え、前記下框は、室内側の見付面を見込方向に貫通する空気導入孔を有する建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態の建具を室内側から見た斜視図である。
【
図6】外障子の下框を斜め上方側から見た斜視図である。
【
図7】外障子の下框を斜め下方側から見た斜視図である。
【
図8】外障子の下框に浸入した水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。一実施形態の建具1について説明する。本明細書において、「見付方向」とは、建物の壁に形成された開口部に納められた建具1における面材の面方向を意味し、「見込方向」とは、上記面材の厚さ方向(即ち、奥行き方向)を意味する。「見込方向」は室内外方向でもある。「見付面」は、建具1における室外側及び室内側に面するそれぞれの面を意味し、「見込面」は、建具1において室内外方向に延びる面を意味する。図面において、建具1の室外側を室外側X1とし、建具1の室内側を室内側X2とする。また、外障子5の「横方向」を左右方向ともいう。
【0009】
建具1は、
図1に示すように、図示しない建物躯体の開口部に取り付けられる枠体2と、枠体2内に配置される方立3と、方立3の左右方向の一方側において枠体2内の室内側X2に配置されるFIX部4と、枠体2内の室外側X1において左右方向に移動可能に配置される外障子5と、枠体2内における方立3の左右方向の他方側において引き出し可能に室内側X2に配置されるプリーツ式網戸6(収納式網戸)と、を備える。
【0010】
枠体2は、上枠21、下枠22及び左右一対の縦枠23,24を矩形に枠組みすることによって構成される。
【0011】
上枠21は、
図2及び
図3に示すように、上枠本体211を有する。上枠本体211は、室外側X1に形成され下方に向けて開放される上枠室外側溝211aと、室内側X2に形成され下方に向けて開放される上枠室内側溝211bと、を有する。
【0012】
上枠室外側溝211aには、上枠21の室外側X1において、外障子5の上端部が配置される。上枠室外側溝211aは、外障子5の上端部の左右方向の移動をガイドする。
【0013】
上枠室内側溝211bは、左右方向の一方側(
図1における右側)に形成されるFIXガラス配置溝211d(
図3参照)と、左右方向の他方側(
図1における左側)に形成される網戸配置溝211c(
図2参照)と、を有する。網戸配置溝211cには、
図2に示すように、網戸用アタッチメント211eが配置される。網戸配置溝211cは、網戸用アタッチメント211eを介して、プリーツ式網戸6の上端部の左右方向の移動をガイドする。FIXガラス配置溝211dには、
図3に示すように、FIX部4のガラスパネル41の上端が配置される。
【0014】
下枠22は、
図2及び
図3に示すように、下枠本体221を有する。下枠本体221は、室外側X1に形成され上方に向けて突出する下枠レール221aと、室内側X2に形成され上方に向けて開放される下枠室内側溝221bと、を有する。
【0015】
下枠レール221aには、下枠22の室外側X1において、外障子5の下端部が配置される。下枠レール221aは、外障子5の下端部の左右方向の移動をガイドする。
【0016】
下枠室内側溝221bは、左右方向の一方側に形成されるFIXガラス配置溝221d(
図3参照)と、左右方向の他方側に形成される網戸配置溝221c(
図2参照)と、を有する。網戸配置溝221cには、
図2に示すように、網戸用アタッチメント221eが配置される。網戸配置溝221cは、網戸用アタッチメント221eを介して、プリーツ式網戸6の下端部の左右方向の移動をガイドする。FIXガラス配置溝221dには、
図3に示すように、FIX部4のガラスパネル41の下端が配置される。
【0017】
方立3は、
図1に示すように、枠体2の室内側X2における左右方向の途中の中間部において、上下方向に延びて配置される。枠体2の開口は、方立3により、左右方向の途中で左右に区切られる。これにより、枠体2の左右方向の一方側には、FIX部4が形成され、枠体2の左右方向の他方側には、外障子5により開閉される開口部25が形成される。
【0018】
FIX部4は、
図1に示すように、枠体2内の方立3の左右方向の一方側(
図1における右側)において、面材としてのガラスパネル41が、方立3及び枠体2に固定されて構成される。FIX部4は、開閉不能な固定窓である。
【0019】
外障子5は、
図4に示すように、枠体2内の室外側X1において、枠体2内を左右方向(横方向)にスライド移動して開閉可能な障子である。外障子5は、FIX部4の他方側(
図1における左側)に形成される開口部25を開閉可能に構成される。外障子5は、室内外方向に見た場合に、開口部25に重なる場合に閉位置に位置し、左右方向に移動することで、FIX部4の室外側X1に移動された場合に開位置に位置する。
【0020】
外障子5は、
図2及び
図4に示すように、上框51、下框52、戸先側に配置される縦框53及び戸尻側に配置される縦框54を矩形に框組した框体50の内周側に、2枚のガラスからなる面材55が納められることによって構成される。
【0021】
戸先側に配置される縦框53には、
図1に示すように、ハンドル531が取り付けられている。ハンドル531は、
図4に示すように、外障子5の面材55よりも室内側X2において、縦框53の左右方向の内周側の見込面に取り付けられる。
【0022】
外障子5は、
図2に示すように、上端部が上枠21の上枠室外側溝211aに左右方向に移動可能に配置され、下端部が下枠22の下枠レール221aに左右方向に移動可能に係合する。下框52には、下枠22の下枠レール221a上を転動する複数の戸車56(
図6及び
図7参照)が設けられる。
【0023】
外障子5の下框52は、
図5に示すように、下枠22における室外側X1を向く見付面に設けられた気密材222に当接した状態で、左右方向に移動する。下枠22おける室外側X1を向く見付面に設けられた気密材222は、外障子5の下框52の室内側X2の見付面52aに当接する。
【0024】
次に、外障子5の下框52の排水構造について説明する。下框52は、
図5に示すように、金属框材57の室内側X2に、樹脂框材58を取り付けた複合構造を有する。金属框材57及び樹脂框材58は、
図6及び
図7に示すように、左右方向(横方向)に延びる。
【0025】
金属框材57は、
図5~
図7に示すように、中空部571aを有する方形筒状の中空枠571と、中空枠571の上側に形成され上方に向けて開放するガラス配置溝578(面材配置溝)と、中空枠571の室外側X1の端部から下方に延びる延出部579と、を有する。
【0026】
金属框材57の中空枠571は、
図5~
図7に示すように、左右方向の両端部側に形成される一対の上面戸車配置開口572(
図6参照)と、左右方向の両端部側に形成される複数の下面戸車配置開口573(排水孔)(
図5及び
図7参照)と、2つの上面排水導入開口574(
図5及び
図6参照)と、2つの空気導入孔575(
図5及び
図7参照)と、を有する。
【0027】
一対の上面戸車配置開口572は、
図6に示すように、金属框材57の中空枠571の上面板571bの左右方向の両端部側において、それぞれ、上下方向に貫通して形成され、左右方向に所定長さ延びる。上面戸車配置開口572は、左右方向に所定長さ延びる長方形状に開口して形成される。上面戸車配置開口572には、複数の戸車56の上部側が配置される。
【0028】
一対の上面戸車配置開口572は、複数の戸車56の上部側が配置されることに加えて、外障子5の下框52の室外側X1の上部側からガラス配置溝578に浸入した雨水を、金属框材57の中空枠571の上面板571bから、中空枠571の内部に導入する排水導入孔の機能も有する。
【0029】
複数の下面戸車配置開口573は、
図7に示すように、金属框材57の中空枠571の下面板571cの左右方向の両端部側において、それぞれ、上下方向に貫通して形成され、左右方向に所定長さ延びる。複数の下面戸車配置開口573は、それぞれ、左右方向に所定長さ延びる長方形状に開口して形成される。
【0030】
複数の下面戸車配置開口573は、一対の上面戸車配置開口572の下側に形成される。下面戸車配置開口573には、複数の戸車56の下部側が配置される。複数の下面戸車配置開口573は、後述する空気導入孔575よりも下方に配置される。
【0031】
複数の下面戸車配置開口573は、複数の戸車56の下部側が配置されることに加えて、下框52の中空枠571の内部に導入された雨水を、外部に排出する排水孔の機能も有する。なお、本実施形態においては、下面戸車配置開口573を、雨水を外部に排出する排水孔として機能させているが、これに限定されない。下面戸車配置開口573とは別に、金属框材57の中空枠571の下面板571cに、排水用の排水孔を設けてもよい。
【0032】
2つの上面排水導入開口574は、
図5及び
図6に示すように、金属框材57の中空枠571の上面板571bの左右方向において、一対の上面戸車配置開口572それぞれの内側の位置に形成される。2つの上面排水導入開口574は、それぞれ、金属框材57の中空枠571の上面板571bを上下方向に貫通して形成される。2つの上面排水導入開口574は、それぞれ、外障子5の下框52の室外側X1の上部側から下框52のガラス配置溝538に浸入した雨水を、金属框材57の中空枠571の上面板571bから、中空枠571の内部に導入する。
【0033】
2つの空気導入孔575は、
図5及び
図7に示すように、金属框材57の中空枠571の室内側X2の縦板571dの室内側見付面571e(見付面)に形成される。2つの空気導入孔575は、外障子5の下框52が当接する下枠22に設けられた気密材222よりも室外側X1に配置される。
【0034】
次に、外障子5の下框52に雨水が浸入した場合の水の流れについて説明する。
図8に示すように、外障子5の下框52の室外側X1の上端から、下框52のガラス配置溝578に雨水が浸入した場合、上面排水導入開口574及び上面戸車配置開口572(
図6参照)を介して、金属框材57の中空枠571の内部に雨水が導入される。
【0035】
そして、中空枠571の内部に導入された雨水は、下面戸車配置開口573を介して下框52の下方側の外部に排出される。下框52の下方側の外部に排出された雨水は、下枠22に溜められて、下枠22に設けられた排水孔(図示せず)を介して、外部に排出される。
【0036】
ここで、例えば台風などの大雨により、下框52の上端から下面戸車配置開口573(排水孔)を介して中空枠571の内部に多量の雨水が浸入することがある。この場合、下枠22には排水しきれない雨水が溜まることで、下框52の下面戸車配置開口573(排水孔)は水没し、中空枠571に水が溜まっていく。
【0037】
このような場合、中空枠571の内部に外気を導入できなくなり、内部はやがて満水となり、室内側X2の圧力が室外側X1の圧力よりも低いことから、中空枠571の内部に溜まった水は、室内側X2に漏れて室内に浸入することがある。
【0038】
これに対して、本開示においては、金属框材57の中空枠571の室内側X2の縦板571dの室内側見付面571eに、空気導入孔575を設けた。これにより、
図8に示すように、水没しない位置において中空部571aに外気を導入し排水を促すことで、中空枠571の内部が満水になることを抑制できる。
【0039】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。本実施形態の建具1は、下框52を有する外障子5を備え、下框52は、室内側X2の見付面を見込方向に貫通する空気導入孔575を有する。これにより、空気導入孔575は、中空枠571の内部に室内側X2の外気を導入できる。よって、外障子5において、中空枠571の内部に外気が導入されて、中空枠571の内部が満水になることを抑制できる。従って、外障子5の室内側X2への水の浸入を抑制でき、水密性を向上できる。
【0040】
また、本実施形態においては、外障子5は、下枠22に設けられた気密材222に当接した状態で、下枠22に沿って左右方向に移動可能に構成され、空気導入孔575は、気密材222よりも室外側X1に配置される。これにより、気密材222により気密性能が確保された部分よりも室外側X1において、空気導入孔575より中空枠571の内部に外気を導入できる。よって、外障子5の水密性能を一層向上できる。
【0041】
以上、本開示の好ましい一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0042】
前記実施形態においては、建具を、複合サッシに適用したが、これに限定されない。複合サッシのみならず、金属製サッシ・アルミ断熱構造サッシ、樹脂サッシにも適用可能である。
【0043】
前記実施形態においては、下框52に複数の空気導入孔575を設けたが、空気導入孔の数及び配置には限定されない。空気導入孔の数及び左右方向の位置については、建具の窓の大きさ及び求めれる性能によって変わる。
【符号の説明】
【0044】
1 建具、5 外障子(障子)、22 下枠、52 下框、222 気密材、571e 室内側見付面(見付面)、573 下面戸車配置開口(排水孔)、575 空気導入孔